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01紀要【浜セ研・研S】0323表紙・目次

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研究紀要

H28-6

「主体的な学習」の在り方を見直すための一研究(2年次)

島根県教育センター浜田教育センター 研究・研修スタッフ 共同研究

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目 次

Ⅰ はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1 子どもに求められる資質・能力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2 研究主題設定の理由・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 Ⅱ 研究目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 Ⅲ 研究仮説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 Ⅳ 研究計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 Ⅴ 研究内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1 1年次の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 (1)「主体的」・「主体性」とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 (2)「主体的な学習」にするための取組分類表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 (3)実態調査とその分析、考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 2 「主体的」についての捉え直し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 (1)答申、学習指導要領等の時代背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 (2)答申、学習指導要領等の変遷からみた教育の基本方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 (3)学習指導要領総則答申、学習指導要領等の趣旨の整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 (4)「取組分類表」の要素と関連する、答申、学習指導要領等の「主体的」に関わる記述・・・・・・・・12 (5)本研究で示す取組分類表の授業実践に向けて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 3 「授業づくりチェックシート」の作成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 (1)はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 (2)チェックシートの各取組の内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 (3)「授業づくりチェックシート」の活用について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21 Ⅵ 成果と課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 Ⅶ おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 【引用文献・参考文献】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 【資料】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 【研究の概要】 「何を教えるか」から「どのように学ぶか」へと教育の変革が求められている。「主体的に学習 に取り組む態度」を養うために授業改善は進められているところであるが、「主体的な学習」につ いて教師が共通のイメージをもって授業づくりをしているとは言い難い。そこで、その在り方を 見直し、「主体的な学習」にしていくための手立てを提案する。これまでの答申、学習指導要領等 から「主体的」に関する記述の変遷を整理し、「主体的な学習」を進めるための「授業づくりチェ ックシート」を作成した。 【キーワード】 主体的な学習 初任者研修 授業改善 主体的な学習にするための取組分類表 「授業づくりチェックシート」

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「主体的な学習」の在り方を見直すための一研究(2年次)

島根県教育センター浜田教育センター 研究・研修スタッフ 共同研究 Ⅰ はじめに 1 子どもに求められる資質・能力 現代は、知識を有しているだけではなく、そこから新しい価値の創造が求められる知識基盤社 会として、変化が速く複雑で、これまで以上に未来の予測のつきにくい社会となった。そのよう な社会の変化に伴い、子どもを取り巻く状況も変わり、学校教育で求められる力も変化している。 すでに、次期学習指導要領の改訂に向けて、平成 28 年 12 月 21 日に発表された中央教育審議会 答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な 方策等について」においては、これから求められる学校教育の方向性が示されたところである。 そこで触れられたように、これまでは「何を学ぶか」が議論の中心であったが、次期学習指導要 領の改訂では、「主体的・対話的で深い学び」として子どもの学びについて「どのように学ぶか」 にも焦点が当てられ、様々に議論がなされている。子どもに身に付けるべき資質・能力について も、平成 20 年1月の中央教育審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校 の学習指導要領等の改善について」で示したものを、新たに「生きて働く知識・技能(の習得)」 「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力(の育成)」「学びを人生や社会に生かそう とする学びに向かう力・人間性等(の涵養)」と捉え直し、この3つをバランスよく育むことが大 切であるとしている。それは「第2期しまね教育ビジョン」が、「知識や技能などを身に付けたり それらを活用したりする『学んだ力』」を高めるには、「主体的に学ぼうとしたり、向上しようと したりする『学ぶ力』」が支えとなると述べ、この「学んだ力」と「学ぶ力」が互いを高めていく 原動力となるような好循環を確立することが大切だとしているところと重なる。また、これらは、 子どもの主体的に学ぼうとする姿勢なくして、真に実生活や社会で生きて働く学力としての定着 につながらないことを示している。 2 研究主題設定の理由 本県の新任教職員研修における教諭対象研修(以下初任者研修)では、「授業づくり研修」のね らいの一つに「児童生徒を主体とした授業」を挙げ、子どもが主体的に取り組む授業とはどうい うものかを考える場を設定している。「主体的」という言葉は頻繁に用いることが多いが、果たし て子どもが「主体的」に学習する授業がなされているだろうか。また、真に子どもが「主体的」 に学習に取り組むような授業づくりを目指しているだろうか。これらを踏まえると、我々はこれ まで以上に子どもが自ら進んで学びに向かうような授業がなされるべきではないかと考え、授業 改善のためのキーワードの一つとして「主体的」を取り上げ、それを軸にした授業改善の視点を 提案できないかと研究主題を設定した。 そのような折、中央教育審議会の「主体的・対話的で深い学び」という授業改善の視点が示さ れ、これから目指すべき「主体的・対話的で深い学び」を実現していくために「主体的」という

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- 2 - キーワードはさらに外せないものとなった。この3つには順序性はないといわれるが、「主体的」 に学習に取り組むことについての捉えを整理し直し、その在り方を見直すことで、今後ますます 求められる子どもの「主体的な学習」を進めるための一助となり、授業改善の視点を提案しよう とするものである。 Ⅱ 研究目的 「主体的な学習」の在り方を明らかにし、「主体的な学習」を実現するための「授業改善」の視 点を提案する。 Ⅲ 研究仮説 「主体的な学習」とは何かをこれまでの学習指導要領等、国の指針から整理することで、「主体 的な学習」をする子どもの姿がより明確になるであろう。また、そのことで「主体的な学習」に するための手立ても示せるであろう。 Ⅳ 研究の計画 本研究は、島根県教育センター浜田教育センター研究・研修スタッフの共同研究として2年間 で実施する。 1年次 「主体的」な学習を行っている姿を整理するために、文献・先行研究等で「主体的」「主体 性」について整理し、「主体的な学習」にするための取組を分類した。また、「主体的な学習」 にするための取組状況の実態調査、分析を行った。 2年次 2年次は、「主体的」な学習について各答申、学習指導要領でどのように捉えられてきたか を昭和 52 年学習指導要領まで遡り整理した上で、1年次に作成した取組分類表をさらに具体 化し、「主体的な学習」を進めるための授業改善の視点をまとめ、成果物として提案する。 Ⅴ 研究の内容 1 1年次の概要 (1) 「主体的」・「主体性」とは 「主体的」とは、「ある活動や思考などをなす時、その主体となって働きかけるさま。他のも のによって導かれるのではなく、自己の純粋な立場において行うさま。」(『広辞苑』第6版)と ある。また、「主体性」は「主体的であること。また、そういう態度や性格であること。」(同) とある。辞典では他者とは切り離された全く純粋な己の立場のみでの活動や思考を指している。 しかし、学校教育の場は、集団生活の場であること、ねらいや願いを持って意図的に子ども に教育を行う場であることから、自己の純粋で自由な選択によって思考したり行動したりする ことばかりではない。先行研究においても「主体性」が他者から全く影響を受けずに、純粋に 自己の立場だけで行動することだけを示さないことを示唆し、他者との関わりという側面でも 主体性を捉えている。 これらから、本研究では「主体的」とは「他者と関わり認め合いながらも、問題解決的思考

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- 3 - 要素 項目 を持ち、自己の判断によって、選択、行動していくさま」と定義し、「主体的な学習」を「他者 と関わり認め合いながら、問題解決的思考を持ち、自己の判断によって、選択、行動し、学ぶ こと」と捉えた。 (2) 「主体的な学習」にするための取組分類表 子どもが「主体的な学習」を行っている姿は、どのような姿なのか整理するために、先行研 究に主体性について要素を求めた。浅海・野島氏の研究によると、子どもの主体性について5 つの要素が設定されており、細川氏(2007)の研究ではそれぞれについて以下のように説明さ れている。 これらの要素と、島根県教育センター研修における「授業力」の四つの構成要素(「情熱・使 命感」「構想力」「生徒理解力」「指導力・統率力」)の「構想力及び生徒理解力」に属する3項 目(学習のねらい、学習過程、学習評価)を学習課題、学習過程、学習評価に置き換え、マト リックスにした。その後、文献及び学習指導要領等を参考に研究・研修スタッフの協議から導 いた具体的な授業場面における取組を表1の(1)~(14)の取組(以下取組)を当てはめて 整理し、「主体的な学習にするための取組分類表」とした。 【表1】 「主体的な学習」にするための取組分類表 浅海・野島による5つの要素 細川によるその内容 積極的な行動 自らが主体となって積極性を強調する 自己決定力 自分が決める 自己を方向付けるもの 自身の中での方向性を進める 自己表現 自分を表現する 好奇心 自らが関心をもっていることをやってみる 学習課題 学習過程 学習評価 好奇心 (自らが関心をもって いることをやってみ る) (1) 児童生徒の興味・関心を生か した学習課題を設定する。 (5) 児童生徒の興味・関心を生か した自主的・自発的な学習活 動を設定する。 (11) 児童生徒が新たな疑問や興 味・関心をもつことができる自 己評価を行う。 自己を方向付けるも の (自分の中での方向 性をもつ) (2) 児童生徒の現在及び将来の 生活や社会とのつながりを意 識した学習課題を設定する。 (6) 学習の見通しを立てたり、学 習したことを振り返ったりする 学習活動を設定する。 (12) 児童生徒が自らの活動を点 検・確認し、改善・調整してい く自己評価を行う。 (7) 対象と直接関わる学習活動 (実験、実習、調査、観察、見 学、体験等)を設定する。 (8) 対象と間接的に関わる学習活 動(学校図書館・情報通信 ネットワーク等の活用)を設定 する。 自己決定力 (自分が決める) (4) 児童生徒が自分の意思で学 習課題を設定する。 (9) 基礎的・基本的な知識・技能 を活用し、自ら課題を解決する 問題解決的な学習活動を設定 する。 (13) 児童生徒が自らの活動の内 容や結果から目標の達成度を 評価する自己評価を行う。 自己表現 (自分を表現する) (10) 他者との対話を通して自らの 考えを明確にし、自らを表現 し、互いの考えを共有する学 習活動を設定する。 (14) 知識・技能を総合して使いこな すことが求められるパフォーマ ンス評価(例:レポート、作品、実 演、口頭発表、壁新聞等)を行う。 構想力及び生徒理解力 積極的な行動 (自らが主体となって 積極性を強調する) (3) 様々な知識・技能を総合して 使いこなす(活用する)ことが 求められる学習課題を設定す る。 主 体 性

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- 4 - (3) 実態調査とその分析、考察 島根県の初任者研修では、「授業づくり研修」の折に「児童生徒を主体とした授業」について 何が大切か、受講者で協議し理解を深める場を設定していることもあり、初任者研修該当者(以 下初任者)を対象に実態調査を行った。 以下、調査項目についての分析、考察を挙げる。 ① 子どもが主体的に学習している姿の捉え 初任者の捉える子どもの「主体的に学習している姿」(自由記述)からは、学習者の学習状 況の文字や音声などでの表出(発表・話し合う・ワークシート等への記述など)・無表出(子 どもの表情・態度)に寄らず、学習者の学習課題への取組状況から主体的な姿を捉えている ことが分かる。その他の出現語句関連記述からも、「主体的に学習している姿」を態度や行動、 言動などを基に捉えている記述が多く見られた。 ② 「主体的な学習」の実現状況 子どもの学習が「主体的な学習」になっているか実現状況を問う設問に対し、肯定的な回 答は約6割であった。ただし、回答の 95%以上が「どちらかと言えば(そう思う・そう思わ ない)」の尺度であり、初任者は、子どもの学習が「主体的な学習」になっているか明確に判 断しにくい傾向があると考える。 ③ 「主体的な学習」に対する意識・知識・行動 初任者は、子どもの学習を「主体的な学習」にしようと意欲を持って授業づくりに取り組 んでいると9割が回答しているが、「主体的な学習」にするための手立てに関する知識につい ては肯定的な回答は6割にとどまった。 ④ 「主体的な学習」にするための取組 取組分類表の取組について、初任者の結果の傾向を高低で整理した。 (※肯定的な回答の割合の平均は 59.8%) ア 取組度が高い取組(肯定的な回答の割合が 80%以上) (1)児童生徒の興味・関心を生かした学習課題を設定する (6)学習の見通しを立てたり、学習したことを振り返ったりする学習活動を設定する (10)他者との対話を通して自らの考えを明確にし、自らを表現し、互いの考えを共有する学習 活動を設定する イ 取組度が低い取組(肯定的な回答の割合が 40%未満) (4)児童生徒が自分の意思で学習課題を設定する (11)児童生徒が新たな疑問や興味・関心を持つことができる自己評価を行う 学習課題、学習過程、学習評価という3項目間の偏重は見られなかった。しかし、学校種 別に見ると、子どもの発達段階のためか取組度に差が出るものも見られた。一方で学習評価 については、学校種による取組の傾向の違いはあまり見られなかった。また、学習評価につ いては、他の2項目(学習課題・学習過程)と比較して肯定的な回答の割合が5割程度にと どまった。 ⑤ 子どもの学習を「主体的な学習」にするための効果的な手立てと課題 初任者が、子どもの学習を「主体的な学習」にするために効果的と感じている手立てと課 題について、記述を以下の5項目に分類整理した結果が表2・3(次ページ)である。ここ

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- 5 - に見られるように、全校種ともに効果があると感じている手立てについては、「導入・課題・ ねらいに関すること」であり、授業や単元(題材)の導入や、課題設定に関わる場面での記 述が多く見られた。一方で全校種とも「導入・課題・ねらいに関すること」を課題だと感じ ている者が多く、記述からは、子どもの実態を考慮した発問や学習課題の設定、興味・関心 を持たせる授業の工夫に関わる記述が多く見られた。 【表2】「主体的な学習」にするための効果的な手立て 5項目分類による内容出現回数 分類項目 学習環境・教材教具に 関すること 導入・課題・ねらいに 関すること 学び合い・協働に 関すること めあてと振り返りに 関すること その他 小学校 22 70 57 10 14 中学校 11 20 33 4 13 高等学校 14 16 13 0 8 特別支援学校 6 27 9 1 6 【表3】「主体的な学習」にするための課題 5項目分類による内容出現回数 分類項目 学習環境・教材教具に 関すること 導入・課題・ねらいに 関すること 学び合い・協働に 関すること めあてと振り返りに 関すること その他 小学校 3 56 34 7 32 中学校 4 29 16 7 19 高等学校 5 14 3 3 28 特別支援学校 2 18 1 3 14 調査結果から、初任者は「主体的な学習」にしようと意欲を持って取り組んではいるが、 手立てに関する知識が不足しているという姿が伺えた。それは、⑤の自由記述において、効 果的な手立てと課題として捉えている内容との重なりが多く見られることからも推察できる。 効果があると分かっているが授業場面においてどのように実践したらよいか具体的には分か らないという知識の不足を示すと考えられる。 具体的には、「導入・課題・ねらいに関すること」が挙げられる。全校種ともこれについて 効果的な手立てと感じると回答する一方で、課題だと感じる初任者が多い。内容を詳細に見 ると、子どもの実態を考慮した発問や学習課題の設定、興味・関心を持たせる授業の工夫に 関わることについての記述が多く見られた。これらについて実際の授業場面では悩みながら 実践を行っている様子が伺えた。 「めあてと振り返りに関すること」については、表2・3で示すように効果的な手立てで あり、課題であると答えている一方で、学習評価の項目の自己評価に関する取組度が5割程 度にとどまったことから、注視したい項目である。本調査からは初任者が「めあてと振り返 り」をどのように実践しているか、その内容はどういったものか、という具体は捉えられて いない。しかしながら、めあてに関わる項目の取組度や効果的な手立てと感じる記述数の数 値は比較的高いことから、「めあて」の提示については高い意識を持って取り組んでいても、

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- 6 - 「振り返り」については、その効果や内容、方法についての認識が十分深まらないまま行っ ている可能性があると考えられる。指導は評価と表裏一体のものであること、その評価は、 単なる振り返りではなく、授業改善のスパイラルの中の一部であり、これを機能させること、 さらには、子どもにおいても自分の学びを確認する大切な活動であることを初任者にも認識 させていくことが求められていると考える。 また、初任者の主体的に学習している姿の捉えの回答は、作成した「主体的な学習」にす るための取組分類表の取組にあてはまらない捉えが多く挙がり、初任者のイメージする「主 体的な学習」の捉えが多様であることが分かった。今後、授業改善につなげるためには、研 修等において「主体的な学習」の捉えを共通のものにしていくことが一つの手がかりになり、 またそれぞれの取組を授業場面における具体的な姿にして示すことで初任者のイメージを助 け、授業改善につながると考えた。 2 「主体的」についての捉え直し 次期学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」を授業改善の視点としている。本研修で 明らかにしたい「主体的」にも関わることである。当然、次期学習指導要領の改訂における「主 体的」と我々が目指すものが乖離していてはならない。しかしながら、改訂を重ねる学習指導要 領の中では、幾度も「主体的」という語彙は使われ、教育現場においても「主体的」な姿や「主 体的に学ぶ授業」を目指してきた。そこで、2年次の研究内容として、過去の「主体的」の捉え や学習指導要領や答申等で如実に表れる「主体的」が何を求めているか、次期学習指導要領等を 紐解き整理する必要があると考えた。 よって、本研究(1年次)「主体的な学習にするための取組分類表」に示した「主体的な学習に 向けた具体的な姿」と、次期学習指導要領が目指す「主体的な学び」の「主体的」とが“ほぼ同 義”であることを明らかにするために次の(1)~(4)の視点から整理し考察したい。はじめ に、これまでの各答申や学習指導要領等を見直し、そこに示された内容から時代と共に我々教員 に求められていることの変容を探ることとする。 (1) 答申、学習指導要領等の時代背景 ここでは、時代背景と共に、これまでの改訂の編成と学力観等について簡単に確認しておき たい。(以下この項における下線部は、「学齢期の学力と発達を考える研究会」“学習指導要領の 変遷と学力観”http://www.eonet.ne.jp/~gakuhatuken/からの引用による) ① 新しい学力観に立つ「学力」 昭和 52 年当時の学力の捉えとしては「基礎的・基本的な事項を確実に身に着けさせること を通して、児童の創造的な能力の育成を図られるようにする」ものであった。しかしながら、 「高度経済成長」の終焉と同時に、物質的な生活の豊かさの問題点や科学技術の発展と資本 の増大は、情報化、国際化、価値観の多様化などが拡大・加速化していく。臨時教育審議会 「教育改革に関する第1次答申」(昭和 60 年9月)を受け、教育課程審議会答申(昭和 62 年 12 月)では、次の4つのねらい「①道徳教育の充実、②自己教育力の育成、③基礎・基本 の重視と個性教育の推進、④文化の伝統の尊重と国際理解の推進」に即して「改善」の基本 方針が示された。平成元年に告示された学習指導要領では、「4つのねらい」が具体化され、 平成3年に改訂された小・中学校の指導要録では、評価の構成要素が「関心・意欲・態度」 「思考・判断」「技能・表現」「知識・理解」の順になり、知識軽視の印象を与え、誤解と混

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- 7 - 乱が生まれた。 この新しい学力観に立つ「学力」の捉え方は「自分の課題を見つけ、自ら考え、主体的に 判断したり、表現したりして、よりよく解決することができる資質や能力の育成を重視する。」 「そのような教育を実現するために、子どもたちの内発的な学習意欲を喚起し、自ら学ぶ意 欲や、思考力、判断力、表現力などを学力の基本とする学力観に立って教育を進める」(教育 課程審議会答申 昭和 62 年)としている。 ② 「ゆとり教育」から「確かな学力」へ 平成元年学習指導要領改訂から新しい学力観に立った教育が進められる一方で、子どもた ちを取り巻く状況は、受験競争の過熱化、いじめや不登校の問題、学校外での社会体験の不 足など、豊かな人間性を育むべき時期の教育に様々な問題が生じ、これらの課題に適切に対 応していくことがこれからの教育に求められた。また、21 世紀に向けて、国際化、情報化、 科学技術の発展、環境問題への関心の高まり、高齢化・少子化等の様々な問題面で大きく変 化した時代を見込まれ、これらの変化を踏まえた新しい教育の在り方が問われていた。この ような背景の下に中央教育審議会第一次答申(平成8年7月)においては、これからの学校 教育の在り方として「ゆとり」の中で自ら学び自ら考えるなどの「生きる力」の育成を基本 とし、平成 10 年の学習指導要領改訂により、「生徒の学習も受け身になりがちであることが 指摘されているが、このような現状を改め、生徒が主体的に学び、自分の考えを持ちそれを 的確に表現することができるようにする教育へと質的転換を図ることがこれからの学校教育 の課題である」(中学校学習指導要領(平成 10 年 12 月)解説-総則編-)としている。そし て、学校完全5日制実施、授業時数の3割削減、「総合的な学習の時間」が新設された。また、 平成 13 年の学習指導要録改訂で、評価評定は絶対評価になり、学力についての記述も、知識 の多少によって捉えるのではなく、学習指導要領に示す基礎的・基本的な内容を確実に身に 付けることはもとより、自ら学び自ら考えるなど『生きる力』が育まれているかどうかによ って捉え、知識や技能だけでなく、自ら学ぶ意欲や思考力、判断力、表現力などの資質や能 力などまで含めて学力と捉えており、学力の質の向上を図ることをねらいとしている。 平成 15 年 12 月「学習指導要領の一部改正」では、「生きる力」を知の側面から捉えた「確 かな学力」育成が主眼とされた。「確かな学力」とは「知識技能に加え、自分で課題を見つけ、 自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力」とし ている。 ③ 現行学習指導要領の理念 平成 18 年2月 13 日「審議経過報告」は、基礎的・基本的な知識・技能を身に付けさせ、 自ら学び自ら考える力などの「生きる力」を育むという学習指導要領のねらいの実現のため の具体的な手立てを講じること、基礎的・基本的な知識・技能の育成(いわゆる習得型の教 育)と自ら学び自ら考える力の育成(いわゆる探究型の教育)とは、対立的あるいは二者択 一的に捉えるべきものではなく、この両方を総合的に育成することが必要であり、そのため の手立てとして、言葉と体験などの学習や生活の基盤づくりを重視することが必要であると している。平成 18 年 12 月教育基本法の改正、平成 19 年6月に公布された学校教育法の一部 改正により、教育基本法の改正を踏まえて、義務教育の目標が具体的に示されるとともに、 小・中・高等学校等においては、「生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識

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- 8 - 及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判 断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意 を用いなければならない」と定められた。 現行学習指導要領は、これらの法改正を十分踏まえ、従来から規定されていた個人の価値 の尊重、正義と責任などに加え、新たに、公共の精神、生命や自然を尊重する態度、伝統や 文化を尊重し、我が国と郷土を愛するとともに、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養 うことなどが規定された。このような観点から、伝統や文化に関する教育や道徳教育、体験 活動の充実、環境教育などを重視し、道徳のほか、社会や理科、音楽や美術、特別活動とい った教科等の具体的な教育内容の改善が求められた。また、改正教育基本法や学校教育法の 一部改正は、「生きる力」を支える「確かな学力」、「豊かな心」、「健やかな体」の調和を重視 するとともに、学力の重要な要素は、①基礎的・基本的な知識・技能の習得、②知識・技能 を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等、③学習意欲、であるこ とを示している。 (2) 答申、学習指導要領等の変遷からみた教育の基本方針 次に答申等からその時代で目指す「教育の基本方針」等を整理したい(表4 p.24)。ただ、 人間性や国際理解等に関わることを含め総合的に子どもの指導に当たることは言うまでもない が、ここでは各学習指導要領改訂年度別にし、「学び方や資質・能力に関わること」に特化した。 ① 昭和 52 年 ・学校教育が知識の伝達に偏る傾向があるとの指摘を受け、この「自ら考え正しく判断出 来うる力をもつ児童生徒の育成」の一文があると仮定できる。 ・答申中では、これからの学校教育においては人間性豊かな子どもの育成が強調され、そ のためには「自ら考える力を養い創造的な知性と技能を育てること」の一文がある。さ らに、「小学校及び中学校についてはおおむね基礎的・基本的な内容を共通に履修させる 段階として位置付け」と示されている。 ② 平成元年 ・S62 答申では、「自ら学ぶ意欲と主体的に対応できる能力の育成を重視すること」とし、 「児童生徒の発達段階に応じて必要な知識や技能を身に付けさせることを通して、思考 力、判断力、表現力などの能力の育成を学校教育の基本に据えなければならない。とり わけ、新たな発想を生み出すもとになる論理的な思考力と想像力、直観力などを重視す るとともに、科学技術の進歩や情報化の進展に対応するために必要な基礎的な能力の育 成にも留意しなければならない。また、生涯にわたる学習の基礎を培うという観点に立 って、自ら学ぶ目標を定め、何をどのように学ぶかという主体的な学習の仕方を身に付 けさせるように配慮する必要がある。その際、自ら学ぶ意欲を育てることが特に大切で あり、幼児児童生徒に活動や学習への適切な動機を与え、学ぶことの楽しさや成就感を 体得させるように配慮しなければならない。」と示しており、それに関して、学習指導要 領では「体験的な学習を重視するとともに、生徒の興味や関心を生かし、自主的、自発 的な学習が促されるよう工夫すること」を示している。 ③ 平成 10 年 ・これらの社会の変化とそれに伴う子どもの生活や意識の変容に配慮しつつ、改善が行わ

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- 9 - れている。 ・答申では「これからの激しい変化が予想される社会を生きていく子どもの教育の在り方 を考える時、多くの知識を一方的に教え込む教育を転換することが重要である」と述べ られている。学習者である子どもの立場に立って、子どもに自ら学び自ら考える力を育 成することは極めて重要であり、そのためには、知的好奇心・探究心を持って、自ら学 ぶ意欲や主体的に学ぶ力を身に付けるとともに、試行錯誤をしながら、自らの力で論理 的に考え判断する力、自分の考えや思いを的確に表現する力、問題を発見し解決する能 力を育成し、創造性の基礎を培い、社会の変化に対応し行動できるようにすることを重 視した教育活動を積極的に展開していく必要がある。そして、知識と生活の結び付き、 知の総合化の視点を重視し、各教科等で得た知識・技能が生活において生かされ、総合 的に働くようにすることに留意した指導も重要で、「総合的な学習の時間」などにおいて、 体験的な学習、問題解決的な学習、調べ方や学び方の育成を図る学習の重視、自ら調べ・ まとめ・発表する活動、話し合いや討論の活動などが活発に行われることが望まれ、学 習指導要領にもそのことが「体験的な学習を重視するとともに、生徒の興味や関心を生 かし、自主的、自発的な学習が促されるよう工夫すること」として示されている。 ・総合的な学習の時間について、そのねらいや配慮事項を総則に位置付けている。 ④ 平成 20 年 ・「知識基盤社会」の時代と言われる中、幅広い知識と柔軟な思考力に基づく新しい知識や 価値を創造する能力が求められるようになった。答申では「自ら学び自ら考える力の育 成」といった「生きる力」の理念は、基礎的・基本的な知識技能の習得を重視した上で、 思考力・判断力・表現力等を育むことを目標としている。H20 学習指導要領では「変化 の激しい時代を担う子どもたちには、あえて、基礎的・基本的な知識・技能の習得とこ れらを活用する思考力・判断力・表現力等をいわば車の両輪として相互に関連させなが ら伸ばしていくこと」としている。ここでは「各学校で子どもたちの思考力・判断力・ 表現力等を確実にはぐくむために、まず、各教科の指導の中で、基礎的・基本的な知識・ 技能の習得とともに、観察・実験やレポートの作成、論述といったそれぞれの教科の知 識・技能を活用する学習活動を充実させることを重視する必要がある。」とし、思考力・ 判断力・表現力等の基盤となる言語の能力の育成をうたっている。 また、「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」(平成 22 年 3 月 24 日)では、 「改正教育基本法においては、学校教育において自ら進んで学習に取り組む意欲を高め ることを重視することが示されるとともに、学校教育法及び学習指導要領の改正等によ り、主体的に学習に取り組む態度が学力の3つの要素の 1 つとして示されている。また、 我が国の児童生徒の学習意欲について課題がある状況を踏まえると、学習評価において、 児童生徒が意欲的に取り組めるような授業構成と継続的な授業改善を教師に促してい くことの重要性は高い。さらに、主体的に学習に取り組む態度は、それをはぐくむこと が基礎的・基本的な知識・技能の習得や思考力・判断力・表現力等の育成につながると ともに、基礎的・基本的な知識・技能の習得や思考力・判断力・表現力等の育成が当該 教科の学習に対する積極的な態度につながっていくなど、他の観点に係る資質や能力の 定着に密接に関係する重要な要素でもある。」としており、主体的に学習に取り組む態

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- 10 - 度を育むことの重要性を述べている。これらのことを踏まえれば、「関心・意欲・態度」 について学習評価を行い、それを育んでいくことは、主体的に学習に取り組む態度を育 成する視点からも引き続き重要である。 ⑤ 次期学習指導要領等 ・次期学習指導要領に向け、論点整理、審議のまとめ、答申(平成 28 年 12 月 21 日)が示 された。そこでは、将来の予測が難しい社会の中でも、伝統や文化に立脚した広い視野 を持ち、志高く未来を創り出していくために必要な資質・能力を子どもたち一人一人に 確実に育む学校教育の実現を目指すとしており、現行学習指導要領でも示されている「生 きる力」とは何かを問うために、資質・能力の三つの柱に沿って具体化、再整理してい る。 ・子どもたちが「どのように学ぶか」に着目して、学びの質を高めていくためには、「学び」 の本質として重要となる「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指した「アクティブ・ ラーニング」の視点から、授業改善の取組を活性化していくことが必要と示されている。 (3) 学習指導要領総則、学習指導要領等の趣旨の整理 学習指導要領総則編(総則に関係する「指導書」を含む)に示される一般方針については大 きく①教育課程に関して②道徳教育に関して③体育(健康)に関しての3項目に、H20 からは 総合的な学習の時間に関しても、分けて示されている。加えて、指導計画作成の配慮事項等と して指導に当たる留意点も示されている。この「教育課程に関して」及び「配慮事項」からは 次のことが伺える(表5 p.25 参照。なお表中の記述は小学校総則のもの)。 ① 「教育課程に関して」 地域や学校の実態及び児童の心身の発達の段階や特性を十分考慮して適切な教育課程を編 成することに加え、H1改訂では「自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の 育成を図るとともに、基礎的・基本的な内容の指導を徹底し、個性を生かす教育の充実に努 めなければならない。」H10 改訂では、「児童に生きる力をはぐくむことを目指し、創意工夫 を生かし特色ある教育活動を展開する中で、自ら学び自ら考える力の育成を図る」に加え、 「基礎的・基本的な内容の確実な定着」と示された。また、H20 改訂では「基礎的・基本的 な知識及び技能を確実に習得させ、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、 判断力、表現力その他の能力をはぐくむとともに、主体的に学習に取り組む態度を養い、個 性を生かす教育の充実に努めなければならない。その際、児童の発達の段階を考慮して、児 童の言語活動を充実するとともに、家庭との連携を図りながら、児童の学習習慣が確立する よう配慮すること」と、学校教育法第 30 条を受け、学力の三要素が加えられた。 この総則第1に示された内容は、H1からは2文に示され、育てる資質・能力に関しては 「自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力」→「児童に生きる力をはぐくむこ とを目指し、創意工夫を生かし特色ある教育活動を展開する中で、自ら学び自ら考える力」 →「思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくむとともに、主体的に学習に取り組む態 度」とキーワードを盛り込み変容している。また、「基礎的・基本的」に関する事項は、「指 導を徹底」→「確実な定着」→「確実に習得させ、これらを活用して課題を解決」と変化し ている。 ② 「配慮事項」(昭和 43 年学習指導要領(カッコ内数字)を軸に述べる)

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- 11 - ・S43 総則にある7項目を基にH20 までの総則に示された項目の内容変化は次の通りで ある。また、S43 改訂で7項目であったものがS52 が 4 項目になっているものの、H 1からは改訂の度に項目が増えている。 ・配慮事項1にはS43~H20 まで一貫して「各教科等及び各学年相互間の関連を図り、系 統的、発展的な指導ができるようにする」ことが示されており、重視すべきこととして 示している。さらに、総合的に資質・能力をはぐくむ視点の強化や、教科横断による指 導の視点から、次期学習指導要領に向けた答申等で示される「カリキュラム・マネジメ ント」の重要性が見えてくる。 ア 児童の興味や関心を重んじ、自主的、自発的な学習をするように指導すること。 【表5(1)】 ・H20 まで「興味・関心を生かした自主的自発的な学習の促進」が一貫して示されて いる。 ・S52 ではこの項目に関しての記述は見られない。この年の答申により「ゆとり教育」 の出現が関係していると考えられる。 ・H1「体験的な活動の重視」、H10「問題解決的な学習の重視」、H20「基礎的・基 本的な知識及び技能を活用した問題解決的な学習」が加えられた。 ・「各教科の指導に当たって」で始まる項目は改訂ごとに1項目加えられ、H1「学習 内容の確実な定着のための個に応じた指導などの指導方法の工夫改善」、H10「学校 や児童の実態に応じ、個別指導やグループ別指導、繰り返し指導、教師の協力的な 指導など指導方法や指導体制を工夫改善」「学習課題や活動の選択、自らの将来につ いて考える機会の設定」、H20「児童が学習の見通しを立てたり学習したことを振り 返ったりする活動を計画的に取り入れる」「個別指導やグループ別指導、繰り返し指 導、学習内容の習熟の程度に応じた指導、児童の興味・関心等に応じた課題学習、 補充的な学習や発展的な学習などの学習活動を取り入れた指導、教師間の協力的な 指導など指導方法や指導体制の工夫改善」がそれぞれ示されている。 イ 教師と児童および児童相互の人間関係を深めるとともに、日常生活の基本的行動様 式の指導の徹底を図ること。 【表5(2)】 ・S43 に示されている「日常生活の基本的行動様式の指導」が、改訂ごとに「信頼関 係・相互理解の基盤の上に成り立つ生徒指導の充実」へと変化している。 ウ 教科書その他の教材・教具を活用し、学校図書館を計画的に利用すること。 なお、 学校の実態に即して視聴覚教材を適切に選択し、活用して、指導の効果を高めること。 【表5(3)】 ・H10 の改訂から「ICT機器の活用」と「学校図書館の活用」に分けて示される。 学校図書館活用については「児童の主体的・意欲的な活動」に向けてその機能の活 用を図ることが示されるようになった。 エ 指導の効率を高めるため、教師の特性を生かすとともに、教師の協力的な指導がな されるようにくふうすること。 【表5(4)】 ・S43 年にはこの項目があったが、S52 にはこの項目は削除されている。H1には再 び「教師の協働による指導」が示されている。

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- 12 - ・H20 には各教科の指導に当たる事項の中に盛り込まれた。学校がその機能を十分発 揮し一体となって教育を行っていくためにも指導体制の工夫改善が必要であること とされた。 オ 指導の成果を絶えず評価し、指導の改善に努めること。 【表5(5)】 ・この項目に示される「指導と評価の改善」についてはH20 改訂まで継続して示され ている。H1では「学習の課程や評価」を行い「学習意欲の向上に生かす」ことが 加えられている。また、H10 以降では「よい点や進歩の状況などを積極的に評価」 が加わった。 ・評価に関しては、S23 から導入された相対評価から、H13 より目標に準拠した評価 (いわゆる絶対評価)が導入されている。そこでは、学習指導要領の目標に準拠し、 評価規準を明確にした質的な評価を行うこととしている。 カ 学業不振の児童については、特別の配慮のもとに指導を行なうこと。 【表5(6)】 キ 心身に障害のある児童については、児童の実態に即した適切な指導を行なうこと。 【表5(7)】 ・H10 からは、特別支援学級、通級指導教室の利用、関係教育機関等と連携した教育 支援について加えられた。このことは、H1より別項目として示される家庭や地域 社会との連携に関する項目にも示されていく。 また、S52 より「言語」に関する項目が第1番目に示される。ただし、S52~H10 では「言 語活動の適正化」であったのに対し、H20 では学校教育法第 30 条を受け「児童の思考力、 判断力、表現力等をはぐくむ観点から、基礎的・基本的な知識及び技能の活用を図る学習活 動を重視」が加わっている。またこれは、(1)で述べた各時代の学力観を踏まえると、言語 活動を指導の中で「どう捉え指導していくのか」といった変容と考えられる。 (4) 「取組分類表」の要素と関連する、答申、学習指導要領等の「主体的」に関わる記述 ここでは、本研究で示す「取組分類表」の各取組に、各年度の答申及び学習指導要領(総則 等)から伺える「主体的」という語彙及び「主体的」に関連する記述を当てはめたものが表6 である。例えば、要素「好奇心(興味・関心等を生かし、児童生徒が主体的に学習に取り組む こと)」に関して表6のように整理した。 【表6】要素「好奇心」について(1)(5)(11)の取組に関連する記述一覧 学習課題 学習課程 学習評価 (1)児童生徒 の興味・関 心を生かし た学習 課題を設 定する。 (5)児童生 徒の興味・ 関心を生 かした自主 的・自発 的な学習活動を設定する。 (11)児童生徒が新たな疑問や興味・関心をもつこと ができる自己評価を行う。 平 成 1 0 年 各学校段階を通 じて、幼児 児童生徒の 興味・ 関心等を 生かし、主体的 な学習の充 実を図ると ともに 、個に応 じた指導の一層 の工夫改善 を図ること が大切 であると 考える。【10 答申ゆとりある教育活動】 今回創設され る「総合的 な学習の 時間」にお いて生徒 の興味・関心 を生かした 主体的な 学習活動が 行われる ことなどを考 慮し、部活 動が一層 適切に行わ れるよう 配慮しつつ、 廃止するこ ととする 【10答申 クラブ活 動の廃止】 児童が一層自 分の思いや 願いを生 かし、主体 的に活動 することがで きるように するため 、内容の取 扱いにお いて、国語、 音楽、図画 工作など をはじめと した他教 科等との合科的・関連的な指導を一層推進【H10 答申】 広い視野に立 って我が国 の国土や 歴史、社会 生活を成 り立たせてい る政治や経 済などに 関する理解 を深める とともに、生 徒の特性等 に応じて 主体的な学 習が展開 できるように することを 重視して 、次のよう な改善を 図る。【H10 答申】

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- 13 - 平 成 2 0 年 これからの学 校教育にお いては、 変化の激し いこれか らの社会を考 えたとき、 また、生 涯にわたる 学習の基 礎を培うため 、基礎的・ 基本的な 知識・技能 の確実な 定着とともに 、それらを 活用して 課題を解決 するため の思考力・判 断力・表現 力等の育 成を重視し た教育を 行うことが必 要であり、 児童がこ れらを支え る知的好 奇心や探究心 をもって主 体的に学 習に取り組 む態度を 養うことは極めて重要である。【H20 総則】 評価に当たっ ては、児童 の実態に 応じた多様 な学習を 促すことを通 して、主体 的な学習 の仕方が身 に付くよ うに配慮する とともに、 児童の学 習意欲を喚 起するよ うにすること が大切であ る。その 際には、学 習の成果 だけでなく、 学習の過程 を一層重 視する必要 がある。 特に、他者と の比較では なく児童 一人一人の もつよい 点や可能性な どの多様な 側面、進 歩の様子な どを把握 し、学年や学 期にわたっ て児童が どれだけ成 長したか という 視点 を大 切に する こと が重 要であ る 。【H20 総 則】 平 成 2 8 年 ( 論 点 整 理 ・ 審 議 の ま と め 等 ) 単元等を通した 学習過程の 中で動機付 けや方 向付けを 重視する[第2部、社会、地歴・公民] 生活科では、子 供の生活圏 である学校 、家庭 、地域を 学習の対象や場 とし、対象 と直接関わ る活動 を行うこ とで、興味や関 心を喚起し 、自発的な 取組を 促してき た。こうした点 に加えて、 表現を行い 伝え合 う活動の 充実を図ることが必要である。[第2部、生活] 情報科における「主体的な学び」とは、・・・個々の興 味・関心や能力 ・適性に応 じてより進 んだ課 題に取り 組んだりすることなどであると考えられる。[第2部、 情報] 学ぶことに興 味や関心を 持ち、自 己のキャリ ア形成の 方向性と関連 付けながら 、見通し を持って粘 り強く取 り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主 体的な学び」が実現できているか。[第1部、「主体 的・ 対話的で深い学び」の実現] 単元等を通し た学習過程 の中で動 機付けや方 向付けを 重視する[第2部、社会、地歴・公民] ・「主体的な学び」は、運動の楽しさや健康の意義等を 発見し、運動や健康についての興味や関心を高め、・・・。 各種の運動の 特性や魅力 に触れた り、自他の 健康の保 持増進や回復 を目指した りするた めの主体的 な学習を 重視するものである。[第2部、体育、保健体育] 問題解決の過 程を振り返 り、より よく解決し たり、新 たな問いを見 いだしたり するなど の「主体的 な学び」 を実現することが求められる。[第2部、算数・数学] ・ 理科において「主体的な学び」を実現していくため には、例え ば、・・・c)得られた知識や技能を基に、 次の課題を発見したり、・・・する学習場面を設けるこ となどが考えられる。[第2部、理科] ・学習活動の 成果や過程 を表現し 、振り返る ことで得 られた手応え や自信は、 自らの学 びを新たな 活動に生 かし挑戦して いこうとす る子供の 姿を生み出 す。こう したサイクル が「学びに 向かう力 」を育成す るものと して期待することができる。[第2部、生活] ・・・学んで いること、 学んだこ との意味や 価値を自 覚するととも に、音や音 楽を生活 や社会に生 かそうと する態度を育 成すること となる。 このことが 次の学び につながっていく。[第2部、音楽] 「主体的な学び」の視点からは、・・・各教科で学んだ こと、体験し たことから 道徳的価 値に関して 考えたこ とや感じたこ とを統合さ せ、自ら 道徳性を養 う中で、 自らを振り返 って成長を 実感した り、これか らの課題 や目標を見付 けたりする ことがで きるよう工 夫するこ とが求められる。[第2部、道徳] 平 成 元 年以 前 に は 該 当 す る 記 述 が 見 ら れ な か っ たた め 割 愛 以上から、主に次について分析できる。 ・興味・関心等を生かし、子どもが主体的に学習に取り組むことに関してH1には記述は見 られない。また、H28 までに各要素に当てはまる記述が増えている。また、各教科等に関 してどのようなことを行うことで動機付けや方向付けを喚起するのか、より具体的な内容 が示されている。 ・学習評価に関する記述については平成 13 年に導入された「目標に準拠した評価」から、H 20 の学習指導要領等に明確に反映されている。中でも「児童の学習意欲を喚起するような 学習評価」が総則には示され、次期学習指導要領に向けて「学びを活かそうとする」ため に自己の学びを振り返ることでどのような姿を目指すのかが示されている教科も見られる。 ・「主体的」の記述は、H10 では「興味関心を生かした主体的な指導」として、H20 では「知 的好奇心や探究心をもって主体的に学習に取り組む態度」として記述が見られる。 ・H28 には学習課程の中での動機付けや方向付けに関して「主体的」に関連する記述が多く 見られる。 ・評価については、「児童の学習意欲を喚起するようにすること(H20)」、「問題解決の過程 を振り返り、新たな問いを見出す(H28)」といった記述が見られ、ここから「課題発見→ 取組→振り返り→新たな課題発見」というスパイラルの実現を示していることが伺える。 主体的に学習に取り組むために、子どもの興味・関心を生かした学習を行い、その原動力と してはじめに子どもたちの好奇心をいかに高める課題や活動を行うか常に大切な視点である。

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- 14 - H10 は「主体的な学習の充実、学習の展開」とし、H20 では「知的好奇心や探究心をもって主 体的に学習に取り組む態度、思考力・判断力・表現力等の育成」とし、H28 では「問題解決の 過程を振り返り、新たな問いを見出す」としている。このことから、徐々に「教師側から与え る課題に対していかに興味関心を持って主体的に取組むか」から「学習過程の中で子どもたち 自らが課題を発見することで、好奇心を喚起させるような課題設定へ」と指導観の変容が見て 取れる。 以上「好奇心」のみを取り上げ述べたが、全体として、先に述べた答申や学習指導要領等か らは、主体的という言葉は多くは表出されないものの、学力観が変わったH1より指導者側の 指導ではなく「何を育むか」といった学習の主体者である子どもの側に立った学びへの変容を 見ることができる。このことを受け、答申や学習指導要領等の記述と本研究で示す取組と比較 して考察する。また、本研究が「主体的な学習」であることから「主体的」に主眼を置き、出 現数も踏まえると、次のように言える。 【学習課題】 ・子どもの興味・関心等を生かした学習課題の設定については、改訂ごとに、各教科等に関 してより具体的にどのようなことを行うことで動機付けや方向付けを喚起するのか具体的 な内容になっている。 ・課題設定において、子どもの漠然とした興味・関心の対象から、より明確な学習課題の設 定へと焦点化することを求めている。 【学習過程】 ・どの改訂においても、「学習課程」に関する記述は多い。また、H28 では教科ごとに主体 的な学びの具体的な提示がなされている。 ・どのように指導するのか、といった、指導者の授業への構えのような示し方から、何のた めに何を育むのか、といった資質・能力の育成に関する記述が増えている。 ・H20 では言語活動の充実を図ることを受け、体験を介し言語として表現することを通して 学びの獲得に向かうことを示しているが、H28 では、さらに、自らが課題を選択しその課 題解決に向けた情報の獲得、情報の獲得を受け、自分でどのように表現していくかといっ た探究までを求めている。 【学習評価】 ・「見通し」「振り返り」に関してはH20 より答申等で示されてきたが、「子どもの過程を評 価する」といった教師側の視点として重視され、次期学習指導要領では、子ども自身も単 なる振り返りではなく「これまでの自分の学習に関する自己調整や次時への課題の発見」 が重視されている。 ・H20 より評価に関する記述の出現頻度は多く、また、「子どもの学習意欲の喚起」から「課 題発見→取組→振り返り→新たな課題発見」というスパイラルの実現を、評価を通して目 指していることが伺え、審議のまとめにある「意志的な側面を捉えて評価することが求め られる」ことからも、過程からどのような思考であったのかを見取ることに視点を当てて いることが見て取れる。 (5) 本研究で示す取組分類表の授業実践に向けて 上述した(1)~(4)からは、改訂ごとに、「主体的」という言葉の記述の出現は多くなり、

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- 15 - 取組分類表に当てはまる項目は多くなっている。これは、次期学習指導要領において「主体的・ 対話的で深い学び」を目指すことからも、「主体的」の出現数やそれに伴う記述が多くなること は必然と考える。さらに、年々取組分類表の要素に当てはまる項目が増えていることから、総 則での示し方として、指導に求める内容がより具体的になっている。時代の要請から、学力観 が教師主体から子ども主体に変わってきていることや、知識・技能の注入ではなく、子どもた ちに生きて働く力を育むことを国では求めていると推察できる。 また、我々が作成した「取組分類表」の一つの取組に当てはめた答申や学習指導要領等の記 述は、別の項目や取組に当てはまるものもある。しかしながら、この取組に当てはめた子ども の姿は、取組ごとに異なると考える。当然、そのための活動も同じでありながら育む資質・能 力やそこで表出させたい思考も違う。このことを受け、習得・活用・探究という学びの過程を 「深まり」と見るのであれば、項目に当てはめた活動も繰り返すうちに深まっていくものでな くてはならない。よって、取組分類表として活動を当てはめただけではなく、要素がそれぞれ つながり、前の活動を踏まえて次に向かうといったスパイラルの形成の中で学びは深まり、主 体的な姿も高次になっていくものではないかと捉える。これは、H28 答申に示された「深い学 び」と合致するものであり、本研究で示した取組分類表は主体的な姿として作成したが、取組 を行うことも次期学習指導要領で求められている学びの姿とも言える。 以上考察から、次期学習指導要領が目指すものとの方向性と、本研究で示す取組分類表の授 業実践(目指したい教師の指導)は、遠くはない。よって取組分類表を用いることで今後の学 習について授業改善の手立てになると考えられる。

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- 16 - 3 「授業づくりチェックシート」の作成 (1) はじめに この「授業づくりチェックシート」の主な目的は、初任者が授業を構想する際や、初任者が 授業を振り返る際に活用して授業改善を進めることにある。また、初任者以外の教員が授業に おいて活用したり、学校が校内研究で主体的な学習や子どもの主体的な姿について考える際の 参考にしたりすることも期待している。 そのために、校種や教科を超えて活用できる汎用性を持たせること、初任者でも活用できる よう、具体的な子どもの姿や教師の手立てがイメージしやすいこと、これまでの国の答申等が 根拠となっていることを念頭に置いて作成した。 作成方法として、前述のように、まず各答申等に現れる「主体性」「主体的な学習」に係わる 記述を洗い出し、平成 27 年度の研究で作成した取組分類表の各取組に当てはめていった。次に 各答申等の記述を基に、初任者が確認しやすいように各取組の中の具体的なチェック項目を考 えた。その際に、取組相互の重複部分の整理、イメージしにくい表記・用語の簡素化、一部の 教科にしか当てはまらないものの統合、チェック項目の表記から具体的な授業場面を想起でき るかの検討等を重ねた。それに伴い、表1の取組分類表の各取組の表記を、「児童生徒」から「子 ども」へ、「自己評価を行う」から「工夫して評価を行う」へ、などの変更を行ったり、表1に おいて斜線で示された枠についても再検討し新たに付け加えたりしている。 さらに、平成 28 年度初任者 50 人に対してチェックシートを活用して授業を振り返る体験を してもらうとともに、シートの取組について、分かりやすさや答えやすさの視点で意見をもら った。その結果に基づいて再度取組の文章表現を精査した。【表7~表9】 (2) チェックシートの各取組の内容 一つの取組に当てはめた内容は、別の取組と大きく関連する。従って重複するように見える 取組があっても、そこには、育む資質・能力やそこで表出させたい思考の違いや、習得・活用・ 探究という学びの過程の中で学びの深さの違いがある。よって、授業者が取組どうしの関連を 意識し、つながりを持たせて取組を設定することで、子どもが主体的に学習する姿はより高ま ったものになると考える。 以下に、島根県教育センター研修における「授業力」の構成要素に属する「学習課題」、「学 習過程」、「学習評価」の3つについて、各取組及びチェック項目の内容や根拠等について示す。 (各答申については、「中央教育審議会答申」(平成 10 年 7 月 29 日)以下「H10 答申」、「中央教育審議会答申」(平成 20 年 1 月 17 日)以下「H20 答申」、「学習指導要領総則」(平成 20 年)以下「H20 総則」「中央教育審議会答申」(平成 28 年 12 月 21 日)以下「H28 答申」を参考にしている。) ① 「学習課題」【表7 取組(1)~(5)】(p.17~p.18) 単元(題材)や授業の始めに設定される学習課題は、それ以降の学習における子どもの主 体性を左右する大きな要因である。 子どもの興味・関心を生かした学習課題を設定する 「興味・関心を生かす」についてはH10 答申から継続して出てくる文言である。子どもが 主体的に学習に取り組むために、興味・関心を高め、課題解決への意欲を持たせることは大 切である。そのために、日常生活との関連、既習の知識や経験と教材との矛盾を活用するこ と、解決への必要感、学習対象への期待感を持たせること等の方法が考えられる。*1 *1 H10 答申、H28 答申第2部「生活」「情報」参照

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- 17 - 子どもが自分で方向性を持ち、学びたいと思えるような学習課題を設定する 学んでいることがどのように社会とつながっているか、また、現在及び将来の自分とどの ようにつながっているかを意識させることで、子どもは課題を自分のこととして考えるよう になり、より主体的に学習すると考えられる。*2 様々な知識・技能を総合して使いこなす(活用する)ことで学習が深まるような学習課題を設定する それまでに獲得した知識や技能、経験を活用する必然が生じる課題を設定することは、子 どもが課題解決の見通しを明らかにしたり、自力解決を可能にしたりすることにつながり、 子どもが教員の支援をあまり必要とせず自ら課題に向き合う姿が予想される。また、子ども が各々の個性を生かして自己の考えを表現する課題が設定されることで、より積極的に活動 することが考えられる。*3 子どもの興味・関心やこれまでの学習の振り返りをもとに子どもが自分で学習課題を設定する 子ども自身が学習課題を設定することで主体性が高まると考えられる。自然の事物・現象 や社会の問題、自己の課題から問題を見出して子どもが自らの意思で学習課題を設定する場 合や、これまでの学習の振り返りから自分が探究したい学習課題を子ども自身が設定する場 合が考えられる。*4 子どもが獲得した学習内容を整理し、表現するための学習課題を設定する 単元(題材)や授業の最後に学んだ内容を様々な方法で他者に伝えることをめあてとして 設定することは広く行われている。その際に、子どもが自分に合った学習方法や表現手段を 知り、最も適切な方法や手段を自ら設定することや、子どもに表現活動(書く、話す、まと める、図に表す等)の目的を明確に持たせることで主体的に活動する姿が期待できる。*5 *2 H28 答申第1部「「主体的・対話的で深い学び」の実現」参照 *3 H28 答申第2部「理科」参照 *4 H10 答申「ゆとりある教育活動」、H20 総則、H28 答申第2部「理科」「特別活動」参照 *5 H28 答申第2部「外国語」参照 学習課題 好 奇 心 ( 自 ら が 関 心 を も っ て い る こ と を や っ て み る ) (1)子どもの興味・関心を生かした学習課題を設定する 課題設定のきっかけ □子ども自身の課題として必要感のある課題にするなど学習の動機付けを工夫する □生活の中の身近なことを取り上げるなど子どもの日常の生活との関連を図った学習課題を設定する □子どものこれまでの考えとの「ずれ」や「隔たり」を学習課題の設定に利用する □対象への「あこがれ」や「可能性」を感じさせる工夫をし、子どもの願いや気付きから学習課題を設定 する 既習事項とのつながり □⑤子どもの経験や既習知識を踏まえ、子どもの思いや願い、考えなどをもとに学習課題を設定する 方 向 付 け (自 分 の 中 で の 方 向 性 を も つ ) (2)子どもが自分で方向性を持ち、学びたいと思えるような学習課題を設定する 社会や将来の生活とのつながり □学んでいることが社会でどのように生かされているのかつながりがわかる学習課題を設定する □自分の事として考えられるよう、子どもが現在及び将来の生活や社会とのつながりを意識できるような 学習課題を設定する □自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を 振り返って新たな課題を設定できるようにする 積 極 的 な 行 動 (自 ら が 主 体 と な っ て 積 極 性 を 強 調 す る ) (3)様々な知識・技能を総合して使いこなす(活用する)ことで学習が深まるような学習課題を設定する 他教科等の学びやこれまでの経験を活用 □課題を解決するために既習の知識や技能、経験、他教科等の学びなどを活用する必要感のある学習課題 を設定する □自分の考えを表現する必要感のある学習課題を設定する 【表7】「授業づくりチェックシート」 学習課題

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