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呼吸器感染症 ーコロナ禍でも彼らはやってくるー

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Academic year: 2021

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(1)

呼吸器感染症

ーコロナ禍での一般呼吸器診療ー

総合診療科 吉田つばさ 2021/02/04

(2)

32歳男性

2日前からの倦怠感、昨日から咳・鼻汁・咽頭痛

風邪

(3)

28歳女性

2日前から頭痛と倦怠感

昨日から咳・鼻汁

本日から関節痛・筋肉痛

3日前まで大阪に出張

インフルエンザ

2年前まで一発診断

(4)

2年前(研修医1年目)の今頃、指導医に言われ続けた言葉

そのインフルエンザ迅速抗原検査、

本当に必要?

(5)

COVID-19感染拡大に伴い、呼吸器感染症診療は一変… でも従来の呼吸器感染症が無くなったわけではない

(6)

目次

1. 「かぜ」とは

2. 「かぜ」への抗菌薬適正使用 3. インフルエンザ

(7)

「かぜ(普通感冒)」とは

咳・のど・はなが… • 同時に同程度 ⇨ 狭義の「かぜ」、ウイルス性上気道炎 • 咳症状メイン • のど症状メイン • はな症状メイン ほとんどがウイルス感染症 →細菌性かどうかに注目

(8)

狭義の「かぜ」

かぜ診療マニュアル第2版 日本医事新報社 2017年

「かぜ」じゃない! 改めてfocusを検索

(9)

はな症状メイン

• 急性副鼻腔炎:くしゃみ、鼻汁、鼻閉 7日以内に軽快 • 痰が絡む場合はカルボシステイン、発熱はアセトアミノフェン 場合によっては小青竜湯 • 抗生剤はいらない 細菌性副鼻腔炎:二峰性の悪化(7-10日後に再燃) 膿性鼻汁、顔や歯の痛みが7日以上継続 →抗生剤投与を考慮(オーグメンチン+サワシリンetc)

(10)

咳症状メイン

• 急性気管支炎:咳は2-3週間続く 発熱や痰はないこともある • 3週間以上:後鼻漏、咳喘息、感染後咳嗽、GERD 呼吸困難、頻呼吸、SpO2低下などのバイタル異常に注意! ⇨ 肺炎、心不全、肺塞栓、結核 • 基礎疾患のない若年者では、38℃異常の発熱や頻呼吸がなく胸 部聴診の異常がなければ胸部X線の必要はない

(11)

• 急性気管支炎:経過観察 抗生剤はいらない • 慢性咳嗽:リン酸コデイン • 後鼻漏:抗ヒスタミン薬(アレルギー性鼻炎) • 咳喘息:吸入薬 • 感染後咳嗽:経過観察、場合によって咳止め • GERD:PPI • 去痰薬:カルボシステイン • 発熱:アセトアミノフェン • 漢方:麦門冬湯(乾性咳嗽)

(12)

のど症状メイン

• 急性咽頭炎・扁桃炎 →アセトアミノフェン、NSAIDs トラネキサム酸、カルボシステイン 溶連菌以外は抗生剤を使わない • 嚥下時痛、食事で改善 伝染性単核球症様症候群(EBV, CMV, 風疹, HIV)

(13)

Killer sore throat

• 感染症:急性喉頭蓋炎、扁桃周囲膿瘍、咽後膿瘍、Ludwig’s angina(口腔底蜂窩織炎)、Lemierre症候群(血栓性頸静脈 炎) • アレルギー:アナフィラキシー • 外的要因:外傷、異物、熱傷 • 心筋梗塞などACS、大動脈解離

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Red flag sign

急性喉頭蓋炎、扁桃周囲膿瘍がターゲット • 人生最悪の痛み • 開口障害 • つばを飲み込めない(流涎) • tripod position(両手をついて顔を前に出した三脚様の姿勢)

(15)

コロナ禍の自験例①

【症例】31歳女性 【社会歴】事務職、夫と二人暮らし 【病歴】1日前から38℃台の発熱、悪寒、咽頭痛、全身倦怠感。 咳、鼻汁はない。 本日、少しおさまったので他院の予定受診に行ったら検温で引っ かかり、内科かかりつけの当院を受診。 本人は県外への移動はないが、夫が仕事で数日前に大阪に出張。 【身体所見】 BT38.6℃ 咽頭発赤あり、扁桃に白苔付着あり、前頸部リンパ 節腫脹あるが圧痛なし

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Centor criteria

38℃以上の発熱 1点 圧痛を伴う前頸部リンパ節腫脹 1点 白苔を伴う扁桃の発赤 1点 咳嗽なし 1点 15歳未満 1点 45歳以上 ー1点 ・4点以上:抗菌薬治療 ・1点以下:検査なしには抗菌薬治療なし

(17)

BT38.6℃、咽頭発赤あり、扁桃に白苔付着あり、前頸部リンパ 節腫脹あるが圧痛なし、咳嗽なし

→Centor criteria 3点 →溶連菌迅速(+)

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A群溶連菌咽頭炎

• 春〜夏に流行 • 咽頭痛が強い(左右差があることも) • 咳嗽、鼻汁がない • 食事で改善しないことが多い • 伝染性単核球症、アデノウイルス感染症と鑑別が難しい 【治療】 アモキシシリン 10日間+アセトアミノフェン(±トラネキサム酸) ※伝染性単核球症が否定できなければセファレキシン

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コロナ禍の自験例②

【症例】64歳 女性 【病歴】 前日の夕方から左下顎痛、発熱、喘鳴があり横になれなかった。 当日朝に喘鳴は改善したが下顎痛があり、内科①→歯科→内科② を受診し喘を疑われて当院を紹介された。歯科では抗生剤をも らった。 嚥下時痛が強く、水分摂取困難。開口障害は軽度あり。 【既往】糖尿病 【身体所見】BT38.3℃ SpO2 88%(ra) 起坐呼吸、喘鳴なし、嗄声あり、咽頭発赤軽度

(20)
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(22)

【経過】 CTで気道狭窄像あり。 耳鼻科的緊急疾患と考え、酸素吸入しながら耳鼻咽喉科常勤医の いる他院に救急搬送。 到着後ただちに喉頭ファイバーを施行。 【診断】急性喉頭蓋炎 【経過】セフェム系抗生剤・ステロイドで、気管切開せずに軽快

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急性喉頭蓋炎

• 流涎、喘鳴、tripod position • 咽頭痛が強いわりに咽頭所見が乏しい • 診断は喉頭ファイバーでの直接観察 ⇨ 耳鼻咽喉科コンサルト • Aの異常をきたしやすいため気道確保の準備 • 原因菌:インフルエンザ桿菌、肺炎球菌etc ⇨ CTRXなど • ステロイドも併用するがエビデンスは微妙

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米国内科学会(ACP)気道感染症ガイドライン2016

①肺炎を疑わない限り、急性気管支炎に抗菌薬の適応はない ②A群溶連菌咽頭炎が確定した場合のみ抗菌薬投与

③細菌性を疑う急性副鼻腔炎にのみ抗菌薬投与 ④普通感冒に抗菌薬を処方するべきではない

Harris AM, et al. Ann Intern Med. 2016;164:425-34.

のど

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「かぜ」への抗生剤

• ほぼウイルス感染症 ⇨ 細菌性を疑う場合のみ処方 • 不安なとき:Delayed Antibiotic Prescription

=様子を見て良くならなかったら抗生剤を検討 ⇨具体的な見通し・再診指示

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インフルエンザ

• 流行期に38℃以上の発熱と咳があれば可能性大 • 発熱+咳+急性発症 → 特異度95% • 抗原検査:発症後24〜72時間の検出率が高い 鼻咽頭ぬぐい液だと感度83%、特異度95% • タミフルは有症状期間を半日〜1日程度短縮 • 麻黄湯も適応 • 小児はNSAIDs禁忌(Reye脳症)、タミフルは解禁 • 2020/21シーズン 793人(1/24現在 厚生労働省発表)

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成人肺炎診療ガイドライン

発症の場や病態から市中肺炎と院内肺炎、医療・ 介護関連肺炎に大別する

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市中肺炎の重症度の判断

quick sequential organ failure assessment (quick SOFA)

1) 呼吸数 22回 / 分以上 2) 意識変容 3) 収縮期血圧 100mmHg以下 A-DROP A (Age): 男性70歳以上、女性75歳以上 D (Dehydration):BUN 21mm/dl以上または脱水 あり

R (Respiration):SpO2 90%以下(PaO2 60 Torr以下) O (Orientation):意識変容あり

P (Blood Pressure):血圧(収縮期)90 mmHg以下

軽症 0点, 中等症 1-2点, 重症 3点, 超重症 4-5点 ショックがあれば超重症

(29)

細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別

1)年齢60歳未満 2)基礎疾患がない、あるいは軽微 3)頑固な咳がある 4)胸部聴診上所見が乏しい 5)痰がない、あるいは迅速診断法で原因菌が証明されない 6)末梢血白血球数が10,000/μL未満である 成人肺炎診療ガイドライン 2017 4項目以上で非定型肺炎が疑われる(感度 78%, 特異度93%) 1〜5の5項目中3項目以上で非定型肺炎が疑われる(感度 84%, 特異度87%)

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院内肺炎/医療・

介護関連肺炎

誤嚥性肺炎のリスクの判断 年齢 長期臥床や低栄養 脳血管障害の既往、神経変性疾患 認知症の存在 胃切除後状態 口腔異常(咬合不全、義歯不適合、 口腔乾燥など) 鎮静薬・睡眠薬・抗コリン薬の使用 山本寛. 日本臨牀 2018;76(7): 277-281.

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耐性菌リスク ①過去90日以内の経静脈的抗菌薬使用歴 ②過去90日以内に2日以上の入院歴 ③免疫抑制状態 ④活動性の低下(PS≧3、Barthel Index <50、歩行不能、経管栄養または中心静脈栄養法 のうち2項目以上で耐性菌の高リスク群と判定

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誤嚥性肺炎

• 術後の併存症としての肺炎とフレイルの(不顕性)誤嚥によ る肺炎 • 夜間の誤嚥の有無が参考になる。 • 原因菌:肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、黄色ブドウ球菌、 嫌気性菌、歯周病菌など • 抗菌薬:ABPC/SBT、CTRX • 嚥下リハビリテーションや口腔ケアが必須 • フレイルが原因の場合、抗菌薬を使用しても予後が改善しな いことがある

(33)

肺炎を治療しない選択

• 易反復性の誤嚥性肺炎のリスクを有する状態 • 癌などの併存疾患終末期や老衰の状態 救命・延命には抗菌薬治療や入院は有用だが、 著しいQOLの低下を伴う 本人の望む生き方 ⇨ ACP

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Take home message

• 「かぜ」は意外と奥が深い

• 「かぜ」に潜むcriticalな疾患を意識して • 抗菌薬は賢く使いましょう

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参考文献

かぜ診療マニュアル第2版 日本医事新報社(2017) ジェネラリストのための内科外来マニュアル第2版 医学書院 (2017) ジェネラリストのための内科診断リファレンス 医学書院 (2016) 成人肺炎診療ガイドライン2017 日本呼吸器学会

参照

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