目 次 Ⅳ-1 サンゴ幼生供給規模拡大技術の開発・実証 1 海域実証による面的拡散特性の把握 ··· Ⅳ-1-1-1 1.1 はじめに ··· Ⅳ-1-1-1 1.2 技術開発手法 ··· Ⅳ-1-1-1 1.3 幼生保持タイプの放流試験の実施方法 ··· Ⅳ-1-1-4 1.4 放流試験結果 ··· Ⅳ-1-1-10 1.5 結果の考察 ··· Ⅳ-1-1-13 1.6 今後の課題 ··· Ⅳ-1-1-17 1.7 次年度の目的及び検証項目 ··· Ⅳ-1-1-18 1.8 次年度のアプローチ方法 ··· Ⅳ-1-1-18 1.9 次年度のスケジュール ··· Ⅳ-1-1-21 2. 幼生収集装置の高度化 ··· Ⅳ-1-2-1 2.1 効率化実験 ··· Ⅳ-1-2-1 2.1.1 はじめに ··· Ⅳ-1-2-1 2.1.2 実験内容 ··· Ⅳ-1-2-2 2.1.3 結果 ··· Ⅳ-1-2-6 2.1.4 考察 ··· Ⅳ-1-2-13 2.1.5 課題 ··· Ⅳ-1-2-14 2.1.6 次年度の計画案 ··· Ⅳ-1-2-15 2.2 耐久性実験 ··· Ⅳ-1-2-16 2.2.1 はじめに ··· Ⅳ-1-2-16 2.2.2 実験内容 ··· Ⅳ-1-2-16 2.2.3 結果 ··· Ⅳ-1-2-20 2.2.4 考察 ··· Ⅳ-1-2-24 2.2.5 課題 ··· Ⅳ-1-2-24
Ⅳ-1-1-1
Ⅳ-1 サンゴ幼生供給基盤及び幼生供給規模拡大技術の開発・実証
1 海域実証による面的拡散特性の把握
1.1 はじめに 漁場環境の保全の観点から、大規模に衰退したサンゴの効率的・効果的な保全・回復を 図るため、サンゴ礁の面的な保全・回復技術の開発・実証を行った。 本試験では、サンゴ礁域へサンゴ幼生を大量に供給できるサンゴ幼生供給手法として、 幼生収集装置に収集したサンゴの幼生を、着底能力を有した産卵4 日後に放流する手法を 検討した。 平成31 年 4 月~令和元年 5 月に石垣島崎枝湾及び浦底湾において、幼生保持タイプの 幼生収集・拡散試験を実施した。 1.2 技術開発手法 (1)実証海域の選定(平成 30 年度) 【実証試験精度に係る必要事項】 ①天然の幼生供給が少なく、実証試験に影響 しない ②波浪・流況が穏やかで、幼生の拡散・流出 が小さい ③対象サンゴ種の成育適地である ④赤土流入等の実証試験への影響因子が小さ い 【事業運営上の考慮事項】 ⑤地元漁協の協力が得られる ⑥調査・試験の拠点施設がある ⑦実証に必要な親サンゴが確保できる (2)サンゴ礁の幼生供給力を高める面的な保全・回復技術の実証方法について サンゴの幼生供給力を高める技術の実証手法は、平成 30 年度に図-Ⅳ.1.1.2 に示すとお り2 つのタイプについて実証方法を計画した。 「自然放流タイプ」はサンゴ幼生供給基盤から、産卵直後に幼生を放出する技術であり、 幼生が広範囲に拡散するため、幼生の着底密度は低くなるが、人力による幼生収集作業の 手間が不要な技術である。 上記より、条件に合致する石垣島北部(崎枝湾、浦底湾)を実証海域とした 拠点施設 (西海区水産研究所 亜熱帯研究センター) 想定場所 (崎枝湾) 想定場所(浦底湾) 【石垣島周辺海域】 図-Ⅳ.1.1.1 実証試験の選定場所Ⅳ-1-1-2 「幼生保持タイプ」はサンゴ幼生収集装置で幼生を保持し、幼生が着底期になるまで拡 散移動を抑えたのち、装置周辺に幼生を放出する技術であり、幼生収集作業の手間がかか るが、拡散範囲は狭いため幼生密度が高く、高確率で着底が期待される技術である。 このうち、沖縄沿岸域における実証試験では5 ヶ年計画のうち、1 年目~4 年目までに 比較的確実にサンゴ幼生の着底が期待できる「幼生保持タイプ」の技術確立を行い、その 間、「自然放流タイプ」で効果的に拡散させるシミュレーションによる拡散範囲の予測技術 を開発及び自然放流が適する海域を選定し、5 年目に実証を行う計画とするものである。
Ⅳ-1-1-3 図-Ⅳ.1.1.2 サンゴの幼生供給力を高める技術の実証手法(2 タイプ) 100m 1ha ■:サンゴ幼生供給基盤 ▲:サンゴ幼生着床・育成基盤 ■:サンゴ幼生供給基盤 ▲:サンゴ幼生着床・育成基盤 ① 適地に幼生供給 基盤を設置 ② 産卵後、幼生は 自然流下する ③ 周辺のノルや幼 生 着 床 ・ 育 成 基 盤に着生、成育 ④ ① 適地に幼生供給 基盤を設置 ② 幼 生 収 集 装 置 に よ り 卵 ・ 幼生を収集、 着生直前まで 保持 ④ 幼生の拡散シミュレーション (広範囲に拡散するため、幼 生 の 着 底 密 度 は 低 く な る が、人力による幼生収集作 業の手間が不要) 自然放流タイプ:サンゴ幼生供給基地から産卵直後に幼生を放出 ③ 着生直前に幼 生収集装置か ら 幼 生 を 放 流、流下させ、 周辺に高密度 で着生させる
幼生保持タイプ
:サンゴ幼生収集装置で幼生を保持し移動を抑える 幼生の拡散シミュレーション (幼生収集作業の手間がか かるが、拡散範囲は狭いた め幼生密度は高く、高確率 で着底が期待される) 100m 1haⅣ-1-1-4
1.3 幼生保持タイプの放流試験の実施方法
大量のサンゴ幼生を効率的に供給できるサンゴ幼生供給手法を開発するため、実海域に おいてサンゴ幼生の放流実証試験を実施し、幼生の拡散効率等の実証を行った。(1) 平成 30 年度の放流試験結果の課題
昨年度は、海底(基盤)より1m の高さから、350 万の幼生を放流した結果、図-Ⅳ.1.1.3 に示すように、直下に高密度(数千~2 万個体/m2)で着底した。着底数の目標は100 個 体/m2であり、密度を低減させつつ、拡散面積を広げることが課題であった。 図-Ⅳ.1.1.3 昨年度の幼生着底数の等値線図及び放流試験のイメージ(2) 平成 31 年度放流実証試験の方針
平成31 年度は、表-Ⅳ.1.1.1 の 5 ヶ年計画に則り 2 ケースの試験を実施することとした。 平成 30 年度試験結果より、放流地点直下の幼生着床密度を低減し、より広範囲に拡散 させるため、放流高さを変更して実施した。 放流高さと流れの異なる海域での実験により、これらの要素を変更した際の着床範囲へ の応答を把握することが出来る。また、数値シミュレーションの再現ケースが増えること により、どのような海域条件にも対応できるモデルの構築が可能となる。10m
-5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 m m 10m サンゴ幼生収集 放流装置 放流高さ 1mⅣ-1-1-5 表-Ⅳ.1.1.1 5 年目までの放流実証試験計画概要 年度 放流 タイプ 放流試験規模 検証内容 H30 年度(1 年目) 幼生保持 10×10m(0.01ha) 海底上1m からの放流による着 底量・着底範囲を検証 H31(R1)年度(2 年目) 幼生保持 ①崎枝湾30×30m (約 0.1ha) ②浦底湾30×30m (約 0.1ha) ①放流高さを海底上 3m に変更 し 、 そ れ 以 外 の 条 件 を 極 力 H30 年度と同様にして、放流 高さによる拡散効果を検証。 ② 小 規 模 試 験 と し て 幼 生 数 は 50 万個体とし、放流高さは 3m とする。また、幾分流れのあ る海域での試験を行うことに より、流れによる拡散効果を 検証する。 R2 年度(3 年目) 幼生保持 0.2ha 程度 1~2 年目の結果を受けて検討 する。 R3 年度(4 年目) 幼生保持 1ha 程度 R4 年度(5 年目) 自然放流 1ha 程度
Ⅳ-1-1-6
(2) 放流試験の実施箇所
試験箇所は、波・流れの穏やかな崎枝湾及び浦底湾の湾奥地点(図-Ⅳ.1.1.4)とした。 【崎枝湾】 【浦底湾】 崎 枝 湾 図-Ⅳ.1.1.4 崎枝湾・浦底湾における幼生保持タイプによる放流試験箇所Ⅳ-1-1-7
(3) 放流試験の実施内容
実施項目と詳細の内容を表-Ⅳ.1.1.1に示す。 表-Ⅳ.1.1.1 幼生保持タイプによる放流試験の実施計画と内容 実施項⽬ 内 容 ①幼生放流地点の選定及び 基盤の浸漬(4 月) ・崎枝湾及び浦底湾において、波・流れの穏やかな箇所 で、幼生収集装置を設置可能な水深5m 前後の地点を 選定。 ・幼生の着床基盤に着底できるよう、石灰藻を付着させ るため角筒型着床具及びサンゴ着床育成基盤の FRP 製基盤を海中に浸漬。 ②成熟サンゴのサンプリン グ (5 月上旬日) ・幼生放流用の実証海域産の健全な親サンゴをサンプリ ング⇒確実な産卵と幼生収集を行うため。 ③幼生収集装置組み立て・設 置(5 月中旬日) ・産卵直前に幼生収集装置を組み立て、幼生収集試験箇 所に設置 ④流速計設置・観測(5 月上 旬~5 月下旬) ・幼生収集放流箇所付近の1 地点・箇所、海底+0.5m で 産卵前から産卵8 日後まで、流向・流速を観測 ⇒幼生収集・保持期間の観測は収集・保持期間の装置へ の外力把握のため。 ⇒放流時の観測は幼生着底までの流れと着底範囲の関 係を把握するため。 ⑤産卵チェック及び誘発(産 卵 予 定 時 期 5 月 満 月 付 近:自然産卵しない場合) ・産卵可能性が高い期間に毎朝、産卵チェックを行う。 自然産卵しない場合、産卵誘発(過酸化水素水を用い た方法)を行う。 ⇒確実に幼生収集・放流を行うため。 ⑥サンゴの産卵、幼生保持 ・サンゴの産卵を確認、バンドルが浮遊し、装置内で 3 日間保持されるか確認。 ⑦幼生放流試験(産卵 4 日 後)・着生状況調査(産卵8 日後) ・産卵4 日後に幼生収集装置から幼生を放流 ⇒幼生が着底行動時期となる産卵4 日後に幼生収集装置 から放流が行えるかの確認 ・産卵8 日後(放流 4 日後)着床具回収、着生数確認 ⇒着生範囲、着床具、着床具設置箇所の基盤の違いによ る着生密度の違いを把握するため。Ⅳ-1-1-8
(4) 試験に用いた幼生収集放流装置
幼生保持タイプによる放流試験に用いる装置は、これまで幼生保持の実証実績がある、 図-Ⅳ.1.1.5 に示す浮体型を用いた。
Ⅳ-1-1-9
(5) 着底確認用の着床具配置(崎枝湾、浦底湾)
昨年度の着床基盤の配置計画では、中心から離れた同心円上で幼生が着底する機会が少 ないと考えられ、着底範囲の把握精度を上げるため、 16 方位方向で、離れた同心円上に 着床基盤を増やすこととした。 また、対照点を、試験の影響を受けない50m 以上離れた箇所に 1 点設置した。 幼生着底確認用の着床具配置図を図-Ⅳ.1.1.6 に示す。 図-Ⅳ.1.1.6 幼生着底確認用の着床具配置図N
NNE
NE
NE
E
ESE
SE
SSE
S
SSW
SW
WSW
W
NW
NNW
5m
10m
20m
30m
2.1m×2.1m実証用基盤
(崎枝湾のみ設置)着底数確認用の
角筒型着床具
*対照点を、試験の影響
を受けない50m以上離
れた箇所に1点設置
・着床具1セット当り9個 ⇒円内 45セット×9個 =405着床具 半径30mの円の中心 より放流を行い、拡 散・着床状況を把握WNW
崎枝湾放流試験 箇所の実証基盤 着床具設置状況 放流地点 崎枝湾の実証用基盤は 放流地点から、想定した 主流向側に設置Ⅳ-1-1-10
1.4 放流試験結果
(1)幼生保持タイプの幼生収集・放流試験実施結果の概要
幼生収集保持タイプの幼生収集・放流試験は表-Ⅳ.1.1.2 及び図-Ⅳ.1.1.6 のとおり 実施した。 採捕したサンゴに産卵の兆候が見られなかったため崎枝湾は令和元年 5 月 17 日、浦 底湾は 5 月 18 に産卵誘発を実施し、崎枝湾は 5 月 18 日、浦底湾は 5 月 19 日に産卵し た。 崎枝湾では、3 日令の幼生サンプリング(5 月 21 日)で、放流計画の幼生 350 万に対し、 約 47 万であることが判明し、浦底湾で 20 日、21 日に産卵した計 150 万を追加すること とした。したがって、最も産卵の遅い 21 日産卵幼生が 3 日令となる 5 月 24 日に幼生放 流を行った。 浦底湾では、放流計画の幼生 50 万に対し、4 日令サンプリングにおいて 13 万個体で あることが判明し、3~4 日令幼生を追加して、5 月 23 日に約 19 万の幼生放流を行った。 表-Ⅳ.1.1.2 幼生収集・放流試験の実施結果 項 目 崎 枝 湾 浦 底 湾 親サンゴ 採集、産卵 誘発 5/10:崎枝湾の天然サンゴ (ウスエダミドリイシ)を採集 ・実験架台上に配置 ・350万想定を準備 5/17 産卵誘発 5/11:浦底湾の天然サンゴ (ウスエダミドリイシ)を採集 ・西海区研究所の水槽に確保 5/18 産卵誘発 産卵、幼生 収集 5/18:19:30~21:00頃 産卵、幼生収集装置に収集 ・装置内の観察では 昨年度の350万よりも 産卵数が少ないと予想 5/19:19:30~20:30頃 水槽内で採卵 ・計165万(15万、50万、100万) の受精卵を小サイズ装置3基 に投入 幼生サンプリ ングと対応 5/21:3日令幼生サンプリング ・幼生数は約47万個体。計画放流数として不足する ため、西海区水産研究所で20日、21日に産卵した 約150万個体を翌日(5/22)に追加した。 5/23:放流前日幼生サンプリング ・当初の6日令、追加した3~4日令幼生は合計で 約200万個 5/20~22:1~3日令幼生サンプリング ・3日令の合計幼生は約25万個体。計画放流数として不足 するため、西海区水産研究所の水槽で19日、20日に産 卵した約6万個体を放流時(5/23)に追加することとした。 5/23:4日令幼生サンプリング ・合計幼生数は約13万個体。当初 の4日令、追加した3~4日令幼生 は合計で約19万個体 幼生放流 個体数 5/24:13:30 約200万個体を放流 5/23:10:30 約19万個体を放流 着床具回収・ 着底数計数 5/28(放流4日後):着床具を回収 ・着床具への着底数の顕鏡・計数 5/27(放流4日後):着床具を回収 ・着床具への着底数の顕鏡・計数 親サンゴの産卵準備状況 サンゴの産卵、収集状況 幼生収集装置からの放流状況 サンゴの採卵状況 水槽内のサンゴの産卵状況 幼生サンプリング状況 幼生収集装 置 の高 度 化 試 験 幼生放流試験Ⅳ-1-1-11
(2)サンゴ幼生着底結果
1) 崎 枝 湾 崎枝湾において幼生放流3 日後に着床具を回収し、着床具に拡散、着底した幼生を計 数し、1m2当りに着底した幼生数に換算した着底分布図を図-Ⅳ.1.1.7 に示す。 ・着底地点は放流地点周辺N 方向に確認された。 ・着底量の最大値を抑えていない可能性があり、過小評価かもしれないが、試験箇所に 面的に着床具を敷き詰めたと仮定すると、幼生の全着底数の概算は、 5m ピッチに置いた場所の着底数: (207+207+414+138)個/m2×東西5m×南北 5m =24,150 個 10m ピッチに置いた場所の着底数: (69+69)個/m2×東西10m×南北 10m =13,800 個 合計:37,950 個 ・崎枝湾では、直径60m の円内の約 300m2に4 万個体(2%)が着底した結果と見積 ることができる。 図-Ⅳ.1.1.7 着床具設置位置における 1m2当り着底数及び等値線図(崎枝湾) ※ 着 床 具 は 1 つ 当 り 4cm マ ス の 9 個 ユ ニ ッ ト で 、 上 か ら の 投 影 面 積 0.12m × 0.12m=0.0144m2であるため、9 個ユニット着底数に 1m2換算で着底数を69 倍している。 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 m m 207 207 414 138 69 69 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 control N 0 図中の□内の数字の単位は、 着底(個体/m2)で示す。 コントロール地点は試験区の 北側 50m 地点に設置。Ⅳ-1-1-12 2) 浦 底 湾 浦底湾において幼生放流3 日後に着床具を回収し、着床具に拡散、着底した幼生を計 数し、1m2当りに着底した幼生数に換算した着底分布図を図-Ⅳ.1.1.8 に示す。 ・着底地点は放流地点からN 方向 5m と SE 方向 10m 地点で確認された ・浦底湾の着底結果より、試験箇所に面的に着床具を敷き詰めたと仮定すると、幼生の 全着底数の概算は、 ・10m ピッチに置いた場所の着底数: (69+69)個/m2×東西10m×南北 10m=合計:6,900 個の着底数 ・浦底湾では、直径60m の円内の約 300m2に7,000 個体(約4%)が着底した結果と 見積ることができる。 図-Ⅳ.1.1.8 着床具設置位置における 1m2当り着底数及び等値線図(崎枝湾) ※ 着 床 具 は 1 つ 当 り 4cm マ ス の 9 個 ユ ニ ッ ト で 、 上 か ら の 投 影 面 積 0.12m × 0.12m=0.0144m2であるため、9 個ユニット着底数に 1m2換算で着底数を69 倍している。 図中の□内の数字の単位は、 着底(個体/m2)で示す。 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 m m 0 207 69 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 control N 0 0 0 0
Ⅳ-1-1-13
1.5 結果の考察
(1)当初予測と結果の違いについて;崎枝湾
昨年度のシミュレーションによる予測結果を図-Ⅳ.1.1.9 に示す。崎枝湾で 3m 高さか ら放流したケースで、着底数が100 個体/m2 となる拡散範囲は 30~32m と予測した。 今年度の放流試験結果を図-Ⅳ.1.1.10 に示すが、100 個体/m2となる拡散範囲は 10~ 15m と、予測の約半分の拡散範囲であった。 図-Ⅳ.1.1.9 昨年度計画時における幼生拡散シミュレーション予測結果 図-Ⅳ.1.1.10 放流試験結果による幼生拡散・着底範囲 0 100 200 300 400 500 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 着底 数( 個 体 /m 2) 放流中心からの距離(m) 沿岸(N-S)方向着底数分布 S方向着底数 N方向着底数 目標着底数100個体/m2 沿岸方向の拡散範囲 の距離:約15m N方向 S方向 0 100 200 300 400 500 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 着底 数( 個 体 /m 2) 放流中心からの距離(m) 岸沖(E-W)方向着底数分布 W方向着底数 E方向着底数 E方向(岸側) W方向(沖側) 岸沖方向の拡散範囲 の距離:約10m 目標着底数100個体/m2 目標着底数100個体/m2 目標着底数100個体/m2 y = 2652.7e0.1308x R² = 0.7466 y = 5134.6e-0.187x R² = 0.8442 10 100 1,000 10,000 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 平 均着底 数( 個 体 ) 中心からの距離(m) 岸沖方向平均着底数(海底上3m) 岸側方向予測着底数 沖側方向予測着底数 岸側方向近似線 沖側方向近似線 目標着底数100個体/m2 12m 20m 岸沖方向の拡散範囲の距離:30~32m 幼⽣放流200万個体で計算した場合 18mⅣ-1-1-14
(2)昨年度との着底分布の違い;崎枝湾
昨年と今年の1m2当り着底データから、試験範囲内で着底数の等値線を補間して描画、 同スケールで比較したものを図-Ⅳ.1.1.11 に示す。 ・昨年度は放流直下に 1~2 万個/m2の着底量があったが、今年度は最大 400 個体/m2 の着底量であった。 ・100 個体/m2以上の面積は、昨年度より50m2程度(約7 割)縮小したが、幼生放流数 が150 万個体(昨年の約 6 割)と少なかったことに留意する必要がある。 ・着底数の等値線の推定より、放流高を高くすることで、薄く広く着底する可能性があ ると考えられる。 (a) 平成 31 年度放流試験の着底量分布図 (a) 平成 31 年度放流試験の着底量分布図 図-Ⅳ.1.1.11 昨年度と今年度の幼生着底量の面的な等値線図 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 m m 10m四方内を1m ピッチで着底計測 放流地点から4方向 に20m地点でも着底 計測(結果はゼロ) 2018年放流条件:放流幼生数350万個体、放流高さ1m 放流地点 100個体/m2以上の 着底面積:188m2 直下に1~2万個/m2 程度の着底量 -30 0 30 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 -30 0 30 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 m m 60m 60m 2019年放流条件:放流幼生数200万個体、放流高さ3m 放流地点 直径60m円内を5~10m ピッチで着底計測 100個体/m2以上の 着底面積:135m2 2018年の100個 体/m2の等値線Ⅳ-1-1-15
(3)今年度の推定着底分布;浦底湾
今年の 1m2当り着底データから、試験範囲内で着底数の等値線を補間して描画、同ス ケールで比較したものを図-Ⅳ.1.1.12 に示す。崎枝湾と同様に今年の 1m2当り着底デー タから、試験範囲内で着底数の等値線を補間推定して描画した。 ・100 個体以上の面積は約 30m2と小さかった。 ・放流幼生数が19 万個体と少なかったのが要因と考えられる。 図-Ⅳ.1.1.12 浦底湾の幼生着底量の面的な等値線図 -30 0 30 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 -30 0 30 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 m m 2019年放流条件:放流幼生数19万個体、放流高さ3m 放流地点 直径60m円内を5~10m ピッチで着底計測 100個体/m2以上の 着底面積:30m2 60m 60mⅣ-1-1-16
(3)試験条件と着底結果データの整理;崎枝湾 浦底湾
昨年度の試験結果を含めた、幼生放流条件と幼生着底状況の結果を整理したものを表 -Ⅳ.1.1.3 及び図-Ⅳ.1.1.13 に示す。 表-Ⅳ.1.1.3 放流試験結果による着底状況の比較 図-Ⅳ.1.1.13 浦底湾の幼生着底量の面的な等値線図 ・100 個体/m2以上着底した面積は、昨年度の放流高さ1m と比較して、今年度の 3m で は面積が約7割程度にとどまった。 ・ただし、今年度の幼生放流条件の違いは、以下の、a~c の条件の違いがあったことか ら、崎枝湾における昨年度との放流高さの違いによる着底状況、面積が単純に比較で きない。 a. 崎枝湾では、昨年と計画した放流数が 350 万ではなく 200 万(約6割)であった。 b. 今年の試験では、放流幼生の日令が 3、4、6 日令と混在している。 c. 一部の放流幼生が塊状ものと、単体の幼生が混在していた。 ・今年度の崎枝湾と浦底湾の放流数の違いから、放流数を1 オーダー少なくすると 100 個体/m2以上の着底面積は小さくなった。 幼生放流数 (個体) 放流幼生の 日令 放流高さ (m) 放流期間平均 流速(cm/s)※1 推定全着底量 (個体) 100個体/m2以上 の着底面積(m2) 3,500,000 4日令のみ 1 1.0 300,000 188 2,000,000推測値 4日令のみ 1 1.0 - 124 2019 崎枝湾 2,000,000 6日令,4日令,3日令 3 0.9 40,000 135 2019 浦底湾 190,000 4日令、3日令 3 1.9 6,900 30 ※1:底上0.5mの流況観測結果の平均値を示している。 ※2:グレー着色欄の着底面積は、350万の放流数に対する着底数に、200万の割合(0.57)の着底数として面積を計算したもの。 試験年度 試験箇所 幼生放流条件 2018 崎枝湾 幼生着底の結果 0 50 100 150 200 250 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 1 0 0 個体/ m 2以上 幼生着底 面積( m 2) 放流高さ(m) 放流高さと100個体/m2以上着底した面積 350万個放流 200万個放流 19万個放流 放流数が異なるため、一概に 小さくなったとはいえない。 放流数を1オーダー小さくすると顕著 に面積が小さくなる。 200万個の 割合で推測Ⅳ-1-1-17
1.6 今後の課題
前述の放流試験結果及び結果の考察から、幼生放流試験に係る課題を以下に整理した。 課題1:今年度の崎枝湾で放流した幼生は、47 万が 6 日令、150 万が 3~4 日令であり、 日齢ごとに沈降や拡散の動きが異なっていた可能性があるため、放流幼生の日 齢を 4 日令以降に合わせることが望まし い。 課題2:放流時に装置内で幼生が塊状となってい るものと、単体の幼生が混在し、それぞ れで沈降、拡散の挙動が異なると考えら れる。放流直前に塊状の幼生を攪拌して なくすようすべきである。今後の放流方 法、予測・検証では留意する必要がある。 課題3:着底数を把握するための着床具の配 置は、適正に着底分布を把握できるよ う、適切な配置が必要である。 課題4:幼生放流量・流況・放流高の条件と、 幼生拡散分布・着底量との関係を明ら かにするためには、データを蓄積した うえで分析を行う必要があり、関係性 を把握できるような、放流方法の検討 を行う必要がある。 課題5:今後、100 個体/m2程度の着底をより広範囲に広げる放流手法の検討を行う必 要がある。 ⇒固定式とは異なる放流方法の検討が必要。 課題6:崎枝湾において放流約7 ヵ月後に着床・育成基盤に着床していた、稚サンゴは、 設置海域の成育環境が良くなかったため、中央基盤で4 個体と少なかった。 ⇒放流・着底後の稚サンゴの生残率を把握するためには、成育環境(水温、光 量、濁り、付着藻類)に配慮する必要がある。 塊状の幼生 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 m m 207 207 414 138 69 69 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 control N 0 隙間が あったため 着底分布 を過小評 価している 可能性あ り。 →密に配 置するべき 図-Ⅳ.1.1.14 幼生放流時の塊状 の幼生の沈降状況 図-Ⅳ.1.1.15 幼生着底確認用 着床具の配置の課題Ⅳ-1-1-18
1.7 次年度の目的及び検証項目
(1) 次年度の目的 幼生放流数と放流条件と着底量の関係性を把握すること及び、広範囲に放流範囲を広げ るための放流方法の検討する必要があるため、「固定方式」と「移動方式」の2ケースの放 流実験を行い、効率的で、効果的な面的拡散手法の検討を行う。 (2) 次年度検証項目 ケース1:固定方式放流実験の検証項目;浦底湾 ① 幼生放流量、条件(高さ・流況)と 100 個体/m2以上の着底範囲の検証② 放流時間による放流数の検証(移動しながら固定放流<Stop & Go>放流方式-の方法 確認) ケース2:移動方式放流実験の検証項目;浦底湾 ① 幼生放流量、移動範囲・速度と 100 個体/m2以上の着底範囲の検証 ② 放流しながら装置を移動させる方法の確認、検証
1.8 次年度のアプローチ方法
(1) 幼生放流実証実験海域 ・ 実験海域は、R2 年度に実験に必要な産卵・幼生数が期待できる、浦底湾とする。 計画準備幼生数:親サンゴ200 群体×10 万産卵=2,000 万幼生 ・ 放流時に、幼生が速い流れで逸散しないよう、流れの弱い湾奥部とする。 ・ 平均流速は 1cm/s 程度(H31 年 5 月観測) 図-Ⅳ.1.1.16 次年度(令和 2 年度)の放流試験箇所位置図 300m 0 浦 底 湾 西海区研究所 N R2年度 放流試験箇所Ⅳ-1-1-19 (2) 実証実験方法 ケース1:固定方式放流;浦底湾 1) 放流数:幼生数500 万(約 150 万、約 350 万の 2 回分想定) 2) 放流幼生の日齢:4 日令以降 3) 放流高さ:基盤から1m 4) 放流方法:放流装置底部を 10 分ずつ2、3回開閉し、最後は幼 生がなくなるまで放流。 5) 放流量の確認方法:放流前後に 装置内を採水(採取)し、幼生数 を計数することにより、1 回あた り放流量を確認する。 6) 放流 3 日後の幼生着底数確認: 周辺に着床具を配置し、着底数を 把握する。 (試験規模:40m×40m=0.13ha× 2 箇所) 図-Ⅳ.1.1.18 ケース1:固定式放流実験の着床具配置図(2 箇所) (格子基盤は平型と同じもの) 60~70cm 60~70cm 10~15cm 1.8~2.1m 1.8~2.1m 0.5m 補強部材:丸鋼 脚(φ50mm以下)丸鋼 着床基盤 留め具 吊り鉄筋 2.16m 2.16m 72cm 72cm Φ36mm丸鋼 15cm Φ36mm丸 鋼 放流高1m 放流直前、毎 回放流後に幼 生採取して放 流数を把握 放流前にエ アレーション で攪拌する 10分ずつ2,3回程度、底部を 開閉して放流 50m程度離れた2箇所で 放流実験を実施 図-Ⅳ.1.1.17 ケース1:固定方式放流の イメージ
N
NNE
NE
ENE
E
ESE
SE
SSE
S
SSW
SW
WSW
W
NW
NNW
2.1m×2.1m実証用基盤 着底数確認用の 角筒型着床具 *対照点を、試験の影響 を受けない50m以上離 れた箇所に1点設置 ・着床具1セット当り9個 ⇒円内 57セット×9個 =513着床具 半径20mの円の中心 より放流を行い、拡 散・着底状況を把握WNW
実証用基盤 着床具(1セット) 放流地点 5m 10m 15m 20m 50m程度離れた場 所で2つの放流・着 底実験区を準備Ⅳ-1-1-20 ケース2:移動方式放流;浦底湾 1) 放流数:幼生数1,500 万個体 2) 放流幼生の日齢:4 日令以降 3) 放流高さ:基盤から直近(平均して0.25m 程度) 4) 放流方法:装置をゴムボートまたは人力により400m 曳航し、曳航時に収集装置の 上部開放部より海水を流入させ、6~9 箇所の放流孔より幼生放流を行う。 図-Ⅳ.1.1.19 ケース2:移動式放流実験のイメージ 5) 放流量の確認方法:放流前、中間時(100m ごとに停止して 3 回)、終了時に装置内 を採水(採取)・幼生数を計数、および放流口の流速を計測することにより、放流距 離ごとに放流した量を確認する。 6) 放流 3 日後の幼生着底数確認:移動放流経路方向に20m 間隔、直交方向に 2m 間隔 で着床具を配置し、着底数を把握する。(試験規模:200m×10m=0.2ha) 図-Ⅳ.1.1.20 ケース2:移動式放流実験の着床具配置図 (格子基盤は平型と同じもの) 60~70cm 60~70cm 10~15cm 1 8~2 1m 1.8~2.1m 0.5m 補強部材:丸鋼 脚(φ50mm以下)丸鋼 着床基盤 留め具 吊り鉄筋 2 16m 2.16m 72cm 72cm Φ36mm丸鋼 15cm Φ36mm丸鋼 放流高基盤直近 主曳航ロープ 副曳航ロープ 海水流入 着床具20m間隔 放流孔(9箇所) ゴムボート または人力 2.1m×2.1m実証用基盤 着底数確認用の 角筒型着床具 放流 始点 放流 終点 200m (着床具20m間隔×11列) 1 0 m ( 着 床 具 2 m間 隔 × 6 列 ) ・着床具1セット当り9個 ⇒実験区内 66セット×9個 =594着床具 延長200mを放流 しつつ往復
Ⅳ-1-1-21 7) 着底数の試算:
1.9 次年度のスケジュール
4 月上旬 :①着底確認用の着床具、育成基盤の着床基盤の浸漬 4 月中旬 :②種苗生産親サンゴ(架台)の実験箇所への移動 4 月下旬 :③親サンゴの成熟確認調査、着床・育成基盤の設置工事、流向・流速計設置 5 月初旬 :④幼生収集装置、着床具の設置 5 月上旬 :⑤親サンゴ産卵予定⇒幼生収集 5 月中旬(産卵から 4 日後以降):⑥幼生放流実験(2ケース) ⇒放流3 日後に着底量の計数 ※産卵が1 ヵ月遅れた場合、④~⑥を 1 ヵ月延期 6 月~10 月:放流実験結果のとりまとめ、検証・考察 12 月:着床・育成基盤の稚サンゴ生残、生育状況の確認 11 月~R2 年 1 月 :R3 年度の放流実験計画検討 R2 年 1 月~2 月 :R3 年度の放流実験のシミュレーション、詳細計画 放流高さ:h 0.25m 幼生収集装置体積:V 9.080m3 放流口使用最大数:mmax 9放流口 曳航速度:U 0.25m/s 表-Ⅳ.1.1.4 放流条件(ケース2) 項目 計算式 単位 0~100m 区間 100~200m 区間 200~300m 区間 300~400m 区間 備考 収集装置内幼生量:N 個体 15,000,000 12,185,023 9,898,318 7,111,964 収集装置内幼生密度:n N÷V= 個体/m3 1,651,982 1,341,963 1,090,123 783,256 流入口面積:ain m2 0.319 曳航速度:U m/s 0.25 流入口流量:Qin m3/s 0.08 放流口1口当り流量:Qout m3/s 0.00071 事前実験の実測値 放流口数:m 口 6 6 9 9 200mで口数を多くする 放流口面積:aout m2 0.047 0.071 1sec当り幼生放流数:Xs n×Qout×m= 個体/s 7,037 5,717 6,966 5,005 1m進行方向当り放流数:Xm Xs÷U= 個体/m 28,150 22,867 27,864 20,020 横方向拡散幅:B m 5 放流高さ0.25mの場合 1m進行方向当りの体積:L B×h×1m= m3 1.25 1.25 1.25 1.25 放流された体積 1m3当り幼生放流数密度:q Xm÷L 個体/m3 22,520 18,294 22,291 16,016 着底率:r % 2 R1年度着底率を参考 1m2当り着底数予測:R q×r= 個体/m2 450 366 446 320 100m区間放流量:H Xs×100m÷U= 個体 2,814,977 2,286,705 2,786,354 2,002,002 表-Ⅳ.1.1.5 各 100m 区間の着底数試算Ⅳ-1-2-1
2. 幼生収集装置の高度化
2.1 効率化実験
2.1.1 はじめに
浦底湾で 100m2程度の範囲に配置されている約 300 群体から卵を集める必要があり、 事業5 年目の最終年には最大で約 8,000 万個体の幼生を得られる見込みである。 具体的には下記の検討事項が挙げられる。 (1)複数基盤からの集約的なバンドル収集手法の確立(崎枝実験) <2018 年度> 幼生供給基盤を覆う囲い網(スカート部)と、浮体型装置(バンドル収容部)の 分離方式を開発し、直径 3m(約 7m2)の範囲から約 200 万の幼生を集めることに 成功した。1,000 万以上の幼生を集めるためには、30 m2以上の範囲から収集するこ ととなる。作業性を考慮すると、スカート型の囲い網は直径 3m 程度が限度と想定 されるため、大型化するよりも基数を増やし、複数箇所から収集する方が効率的で あると推察された。 <2019 年度> 崎枝湾において複数基盤からの集約的なバンドル収集方法を確立することを目的 とした。実験では、幼生供給基盤を想定した 4 基の架台に特別採捕許可を得て採集 した親サンゴを配置した。各架台上にスカート型の囲い網を設置し、産卵・捕集し たバンドルは接続されたホースを介して浮体型装置内へ集約的に収集される仕組み となる。このような複数基盤からの分離方式について、設置手法や耐久性等の実証 を行うとともに、装置直下から各基盤の中心距離が異なるケース(0m、4m、8m)を 設定し、距離によるバンドル収集状況を把握した。 (2)サンゴ幼生の最大収容密度の検証(浦底実験) <2019 年度> 特別採捕許可のもと確保できる産卵数には制限があり、1,000 万個以上の産卵数を 確保することが困難であった。そこで、従来サイズ(直径1.7m)よりも小さいサイズ の装置を用いて、幼生の収容密度の把握実験を行い、最大幼生収容数を概算する必 要があった。 実験は浦底湾で行い、従来用いている装置(直径1.7m・高さ 4m)の 1/23 の容積と なる小型の装置(直径50cm・高さ 2m)を用いて、幼生の収容密度の異なる 3 ケース で比較実験を行い、最大幼生収容数を概算した。Ⅳ-1-2-2
2.1.2 実験内容
(1)実験フロー 実験フローを図-Ⅳ.1.2.1 に示す。 図-Ⅳ.1.2.1 幼生の着生、生残に適した基盤条件の調査・検討フロー ②幼⽣収集装置組み⽴て・設置 ③⾃然産卵の確認および産卵誘発(⾃然産卵し ない場合のみ) ① 実験準備︓成熟サンゴのサンプリング ④産卵確認、幼⽣収集状況の確認 ⑤幼⽣数サンプリングⅣ-1-2-3 (2)実験箇所位置図 崎枝湾および浦底湾において実験を行った。実験位置を図-Ⅳ.1.2.2 に示す。 図-Ⅳ.1.2.2 実験位置(崎枝湾・浦底湾) 浦底湾実験箇所位置図 浦底湾実験箇所 西海区水産研究所 浦底湾 300m 崎枝湾実験箇所位置図 崎枝湾 川平石崎 崎枝湾 実験箇所 300m 底 地 ビ ー チ 石垣島 3km 崎枝湾 浦底湾
Ⅳ-1-2-4 (3)実験方法 1)方法【複数基盤からの集約的なバンドル収集方法の検証・崎枝実験】 崎枝湾にて、スカート部とバンドル収容部の分離方式(図-Ⅳ.1.2.3 左図)による装 置を設置し、複数基盤からの集約的なバンドル収集を実証した。 幼生収集装置を起点に、D.L.-11m に幼生供給基盤を 0m(直下)、4m、8m に配置 した(図-Ⅳ.1.2.3 右図)。距離 4m のみ 2 箇所設置し、そのうちの 1 箇所は幼生供 給基盤を2 架台設置した。 ホースの角度(図-Ⅳ.1.2.4)の違いによるバンドルの滞留状況や収集状況を把握す るために、次の4 項目を計測した。 <計測項目> 各距離におけるホースの平均的な傾きを計測 各距離のホース内にバンドルが滞留していないか目視観察 各距離のホース出口(装置内)に無人カメラを取り付けバンドルの通過状況を撮影 バンドル収集部に収容できた幼生数を計測 距離 4m のホース角度 距離 8m のホース角度 8m 0m(直下) 4m 4m 収集装置 11m 4m 1m 0.5m 5.5m 54° 2m 11m 8m 1m 0.5m 34° 8.5m 5.5m 2m 図-Ⅳ.1.2.4 スカート部とバンドル収容部とをつなぐホース角度のイメージ 図-Ⅳ.1.2.3 幼生収集装置のイメージ(崎枝湾)
Ⅳ-1-2-5 2)方法【サンゴ幼生の最大収容密度の検証・浦底実験】 幼生の最大収容数を試算するための最大収容密度を検証した。 小スケール(現行より 1/23 に小型化)の装置を用いた幼生最大収容密度を把握し、 目標値とする2,000 万個体の幼生を収集できる可能性を検証した。 目標値・幼生収容数は、以下の考え方をもとに3 ケースを設定した(表-Ⅳ.1.2.1)。 <ケース設定理由> 水槽下の実績では、幼生の最適な飼育密度の目安は1,000 個体/L であった。幼生 収集装置の容積は約9,000L であることから、1,000 万個体程度を収容できる可能 性があると考えられた。 収容密度の比較ケースとして1,000 万個体程度を設定 → 容積 1/23 では約 50 万個体 2,000 万個体程度であれば、海域ということを考慮すると期待できる水準と推察 されるものの、実海域において検証する必要がある。 収容密度の比較ケースとして2,000 万個体程度を設定(目標値) → 容積 1/23 では約 100 万個体 対照実験区として、昨年度に実績のある350 万個体程度を設定 → 容積 1/23 では約 15 万個体
現行サイズ
1/23 サイズ
1.7m 4.0m 0.5m 2.0m <比較条件> ケース1 ケース2 ケース3 1/23サイズ装置の 幼生収容数(個体) 150,000 500,000 1,000,000 幼生収容密度(個体/㎥) 380,000 1,270,000 2,550,000 現行サイズ装置の 概算幼生収容数(個体) 3,450,000 11,500,000 23,000,000 表-Ⅳ.1.2.1 幼生収容数の比較条件 図-Ⅳ.1.2.5 幼生収集装置の小スケール化のイメージⅣ-1-2-6
2.1.3 結果
(1)結果【複数基盤からの集約的なバンドル収集手法の確立・崎枝実験】 1)実施状況 実験の実施手順および実施状況を図-Ⅳ.1.2.6 に示す。 実施手順 実施状況 図-Ⅳ.1.2.6 実施手順および実施状況 1.装置の組み立て 今年度新たに開発されたバンドル 収集装置を陸上にて組み立てる。 2.装置の設置 崎枝湾の予定箇所にて装置を設 置する。 3.産卵誘発処理 過酸化水素水を用いた産卵誘発 処理を海中で行う。 4.バンドル収集状況の確認 ホースの傾き、およびバンドル の通過、収集状況の確認。 バンドル収集の確認状況 実施日【5 月 18 日】 実施日【5 月 13 日】 収集装置の組み立て状況 実施日【5 月 17 日】 産卵誘発処理実施状況 実施日【5 月 14 日】 収集装置の 設置状況Ⅳ-1-2-7 2)幼生供給基地および浮体型装置の設置 幼生供給基地および浮体型装置の設置概略図を図-Ⅳ.1.2.7、設置状況を図-Ⅳ.1.2.8 に示 す。 装置本体となるバンドル収容部と幼生供給基盤を覆うスカート部を分離し、揚水ポンプ 等に使用される硬質なホースで接続した。最大2m 程度の潮位変動に対応するため、バン ドル収容部とホースの接続部は固定せずに可動式とし、満潮時に挿入したホースが装置か ら抜け出ないよう考慮した長さとした。 装置と4 箇所の幼生供給基盤の中心距離が、それぞれ 0m、4m(2 基)、8m とした。 図-Ⅳ.1.2.8 収集装置の設置状況 幼生供給基盤 スカート内(幼生供給基盤) 浮体型装置(水面) バンドル収容部とホース部の接続 ホース部 距離 4m 距離 4m 距離 0m (直下) 距離 8m 距離 4m 距離 0m (直下) スカート部 図-Ⅳ.1.2.7 バンドル収集装置の設置概略図 8m 0m(直下) 4m 4m 浮体型装置(バンドル収容部) 収集装置 幼生供給基盤 10m 幼生供給基盤
Ⅳ-1-2-8 3)ホースの傾き(角度)によるバンドルの滞留状況 装置から基盤の中心距離ごとのホースの傾きを表-Ⅳ.1.2.2、バンドル収集、通過状況を 図-Ⅳ.1.2.9 に示す。 スカート部直上ではバンドルが浮上し易いように、ホースをできる限り鉛直方向に立ち 上げる必要があった。また、特に装置からの基盤の中心距離が最も長い8m では、ホース 中央部でS 字状に湾曲するとバンドルが滞留する恐れがあった。そこで、ホースの複数箇 所にペットボトルブイを取り付けて浮力調整を行い、バンドル浮上を妨げるS 字状になら ないように角度が0~90°を保つよう調整した。 ホースの傾き(角度)は距離0m(直下)では 74~85°(理論値 90°)、距離 4m で は33~75°(理論値 48°)、距離 8m では 25~70°(理論値 29°)であった。 いずれのケースにおいてもバンドルの滞留は確認されなかった。しかし、距離 8m ではホース内をバンドルが逆流する様子が確認されたことから、当該ホース内でバ ンドルの浮力を上回る程度の鉛直下向きの流れが生じたことが示唆された。 スカート頂部のバンドル収集状況 ホース内のバンドル通過状況 表-Ⅳ.1.2.2 装置からの基盤の中心距離ごとのホースの傾き(角度)(崎枝湾) 図-Ⅳ.1.2.9 バンドル収集・通過状況(崎枝湾) 下 上 中 スカート部 装置 90° 0° イメージ図 計測位置 0m(直下) 4m① 4m② 8m 上 (装置挿入部付近) 中 (ホース中央部) 下 (スカート直上) 平均的なホース傾き (理論値) 90° 29° 装置からの基盤の中心距離 85° 60° 75° 25° 74° 53° 33° 37° 80° 71° 71° 70° 48°
Ⅳ-1-2-9 4)基盤の距離によるバンドルのホース通過状況 基盤距離ごとのバンドル通過状況を表-Ⅳ.1.2.3、カメラ設置およびバンドル通過状況を 図-Ⅳ.1.2.10 に示す。 装置からの基盤の中心距離別(0m(装置直下)、4m①・②、8m)に、装置内に挿入した ホース先端部に無人カメラを取り付け、各ホースからのバンドル通過状況を概略的に把握 した結果、ホース通過率は、0m(装置直下)で 41.9%、4m②で 62.5%、8m で 7.7%であっ た。 4m②の架台上の親サンゴ量は、他ケースの約 2 倍であった。一般的に親サンゴ量とバン ドル量は比例するため、バンドル通過率は単純比較できない。4m②が他ケースと同程度の 親サンゴ量であったと仮定すると、バンドル通過率は62.5%の半数程度(30%)になると推 察された。 バンドルの通過のし易さ(通過率)は、基盤距離によるホースの傾きに影響することが考 えられた。 無人カメラ 水面から装置内を望む ホース先端部 ホース出口 バンドル 図-Ⅳ.1.2.10 ホース先端部のカメラ設置状況およびバンドル通過状況(崎枝湾) 距離 解析対象 ※1 写真枚数 解析対象※2 時間(分) 通過率(%) ※ 3 備 考 0m(直下) 2,209 73.6 41.9 4m① 579不鮮明な画像が多いため比較対象外とした(解析時間が20分未満) 4m② 1,953 65.1 62.5親サンゴ量は他の架台の2倍 8m 1,386 46.2 7.7 ※1) 2秒間隔で撮影した画像のうち、不鮮明な画像は除外した。 注 ) さらに、対象時刻はサンゴの産卵開始前(19:30)~全ケースの産卵終了後(20:50)に統一した。 ※2) 解析対象枚数×2秒 ※3) 解析対象枚数(秒数)のうち、対象ホース先端を通過した可能性が高いと推察されるバンドルが 注 ) 映り込んだ画像の割合を通過率とした。 表-Ⅳ.1.2.3 基盤距離ごとのバンドル通過状況(崎枝湾)
Ⅳ-1-2-10 5)収集した幼生数 水面のバンドル収集状況を図-Ⅳ.1.2.11 に示す。 5 月 21 日に北原式プランクトンネットを用いて、3 日令幼生をサンプリングした。室内 で幼生数を計数した結果、装置内の幼生は約47 万個体であった。計画では、350 万個(天 然サンゴ25kg:約 20 群体相当、500 万個のうち 7 割程度が産卵)の収集を計画していた ものの、実際の収集量は1 割程度の約 50 万個に留まった。 収集量が少なかった要因として、2019 年の親サンゴの産卵のタイミングにばらつきがあ り、産卵誘発による一定の効果はみられたものの、収集予定日より前に産卵してしまった 群体や、誘発後に産卵しなかった群体がいたために、想定より産卵数が少なくなったこと が考えられた。 図-Ⅳ.1.2.11 水面のバンドル収集状況(崎枝湾)
Ⅳ-1-2-11 (2)結果【サンゴ幼生の最大収容密度の検証・浦底実験】 1)幼生の最大収容数の概算 実験の実施手順および実施状況を図-Ⅳ.1.2.12 に示す。 実施状況 実施手順 装置設置状況(海中) 幼生投入状況 幼生サンプリング状況(5 月 21 日) 装置設置状況 採卵状況 1.装置の設置 従来用いている装置(直径 1.7m・高さ 4m)の 1/23 の容 積となる小型の装置(直径 50cm・高さ 2m)3 基分を組 み立て式フロートに取り付 け、海域に設置する。 2.幼生の採卵、投入 西海区水産研究所内の水 槽で計 165 万個を採卵後、 比較条件別(15 万、50 万、 100 万個)に装置内に投入 する。 3.幼生のサンプリング 北原式採水器を用いて装 置内の海水を定量採取し、 1 日令から 4 日令までの幼 生数および幼生の生残率 を計数する。 実施日【5 月 15 日】 実施日【5 月 19 日】 実施日【5 月 20~23 日】 図-Ⅳ.1.2.12 幼生収集・放流実験の実施手順および実施状況 幼生の計数状況(5 月 21 日)
Ⅳ-1-2-12 2)幼生の生残状況 各ケースにおける1 日令から 4 日令まで幼生の生残率および生残数を図-Ⅳ.1.2.13 に示 す。 1 日令の生残率は 100 万ケースで 90%程度、50 万ケースで 70%程度であった。15 万ケースは測定誤差が大きく、生残率が200%程度となったため、欠測とした。 2 日令の生残率は 100 万ケースで 20%程度、50 万および 15 万ケースで 40%程度で あり、いずれのケースでも大幅に低下した。 3 日令の生残率は 50 万ケースで 20%程度、100 万および 15 万ケースで 15%程度で あり、いずれのケースでもさらに低下した。 4 日令の生残率はいずれのケースでも 10%未満にさらに低下した。 高い生残率を保持した実績のある 15 万ケースでも生残率が低下したことから、今 回の実験では幼生収容密度による生残への影響を評価することは困難であった。 0 50 100 150 200 250 1日令 2日令 3日令 4日令 生残 率(%) 15万(対照区) 50万 100万 手引き実績値 ※ 受精卵 投入数 ※ 15万の1日令幼生の生残率は200%程度となり、 測定誤差が大きいため参考値とする。 (4日令で90%) 図-Ⅳ.1.2.13 幼生の生残率および生残数 0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1日令 2日令 3日令 4日令 生残数 (個体) 幼生日令 15万(対照区) 50万 100万 受精卵投入数 <比較条件> ケース1 ケース2 ケース3 1/23サイズ装置の 幼生収容数(個体) 150,000 500,000 1,000,000 幼生収容密度(個体/㎥) 380,000 1,270,000 2,550,000 現行サイズ装置の 概算幼生収容数(個体) 3,450,000 11,500,000 23,000,000
Ⅳ-1-2-13
2.1.4 考察
(1)複数基盤からの集約的なバンドル収集手法の確立(崎枝実験) 【卵(バンドル)の収集量が少なかった要因について】 産卵数が想定より少なかったことが主な要因と考えられる。今年は親サンゴの産卵 タイミングにばらつきがあり、産卵誘発はある程度効いたものの、収集予定日より前 に産んでしまったものや、誘発後に産まなかったものもいたと推察される。また、複 数基盤からのバンドル収集については、特に距離8m の基盤からの収集が計画通り機 能しなかったことが考えられる。現地では距離8m のホース内でバンドルが逆流して いる様子が確認されたことから、ホースを通して装置外へ緩やかな下降流が発生した ことが示唆された。 【装置からの基盤距離・ホース角度について】 水深10mでは、距離 4m 以内(ホース角度の理論値 48°)であれば、複数の幼生供給 基盤(スカート部)からホースを通って装置内にバンドルを収集可能であることが確認 された。一方、距離 8m(ホース角度の理論値 29°)では、バンドルがスムーズに通過 できず、バンドルが滞留しないように角度を保持する浮力調整作業も非効率であった。 装置とスカート部を連結するホースの角度を概ね 50°以上に保持できる範囲に基盤 を設置することが現実的と推察される。 図-Ⅳ.1.2.14 バンドル収集が可能なホース角度の目安のイメージⅣ-1-2-14 (2)サンゴ幼生の最大収容密度の検証(浦底実験) 【2 日令以降の生残率低下の要因について】 要因1 装置への受精卵投入時には、作業効率化のために投入用の密閉バケツを最小限の個 数(12L バケツ×4 個)で運搬したものの、海象条件の影響により想定よりも 30 分程 度時間を要した。1 日令幼生の計数時には、正常に発生が進んでいない小型胚が散見 されたことから、受精卵投入に時間を要したことにより、受精卵の発生過程に悪影響 が及んだ可能性がある。 要因2 装置を小型化した影響として、幼生収容時の密度増加や、ネットに接触する頻度が 増すことによる生残率の低下が考えられる。特に、1 日令(5/20 午後)から 2 日令(5/21) にかけての幼生はまだ多くが水面に位置している時期であるため、水面付近の幼生密 度は高くなったと考えられる。さらに、気象庁の風向風速記録によると、同時期に実 験箇所周辺では、北寄りの強い風が吹いていた(5.0~7.0m/s)。 装置投入時の卵の状態が正常であったと過程すると、卵投入後のネットへの接触や 高密度によるストレスが複合的に影響し、生残率低下を助長した可能性がある。 まとめ 対照区の 15 万ケースでも生残率が低下したため、幼生収容密度による生残への影 響を評価することは困難である。しかし、少なくとも1 日令までは 100 万ケースで高 い歩留まりを維持したことから、従来の直径1.7m サイズで 2,000 万以上を収容した 場合において、発生時に全滅することはないと推察される。
2.1.5 課題
(1)複数基盤からの集約的なバンドル収集手法の確立(崎枝実験) 効率的にバンドル収集が可能なホース角度の目安(50°以上)や、その角度が保持できる 装置直下からの範囲に関する知見は得られた。 今後は、得られた知見を踏まえて、収集可能な幼生供給基盤の最大面積を検証する必要 がある。 (2)サンゴ幼生の最大収容密度の検証(浦底実験) 今年度実験では、装置を小型化した影響などにより、幼生収容密度による生残への影響 を評価することは困難であった。 今後、装置1 基で保持可能な幼生の最大収集量の実証実験においては、高い幼生生残率 を保持する実績のある現行サイズの装置(φ1.7m、H4.0m)を用いる必要がある。Ⅳ-1-2-15
2.1.6 次年度の計画案
サンゴ幼生を大量かつ効率的に収集可能な装置の開発するため、幼生収集装置の更なる 高度化実験を行うことが望ましい。2015 年に幼生収集装置により生産した 5 才令種苗(400 群体程度)を親サンゴとして活用し、「幼生供給基盤の最大収容面積」や「幼生の最大収容 量」を把握することを提案する。 (1)検証項目 ①幼生供給基盤(親サンゴ)の最大収容面積の検証 ②装置1基で保持可能な幼生の最大収集量(密度)の実証 (2)方法 上記2 項目について次の 2 ケースのような実証実験が想定される。 図-Ⅳ.1.2.15 次年度実験の実施イメージ 装置からの中心距離 4~5m 収集 装置 水深8-10m 架台4基/スカート部 収集 装置 水深8-10m 装置からの中心距離 4~5m 架台4基/スカート部ケース1.
①基盤収容面積:
36m
2程度(スカート部×9基)
②幼生収集量:
最大1,500万(約300群体)
➡親サンゴ架台×36基
ケース2.
①基盤収容面積:
24m
2程度(スカート部×6基)
②幼生収集量:
500~1,000万(約100群体+α)
➡親サンゴ架台×12基
+ 天然サンゴ
スカート部には4m2の 親サンゴ架台を配置可能 ス カート部 ( バンドル捕集ネット) 注)半数程度が1群体あたり10万個を産卵する想定 2020 年 5 月で 5 歳齢となる親サンゴ育成場Ⅳ-1-2-16
2.2 耐久性実験
2.2.1 はじめに
沖ノ鳥島の産卵時期の荒天時の波高に耐えうる浮体型装置に改良するため、浮体型装置 を用いて、耐久性や設置方法等の実証試験を行った。2.2.2 実験内容
(1)目的 目的および実施内容を表-Ⅳ.1.2.4 に示す。また、実験スケジュールを表-Ⅳ.1.2.5 に示す。 表-Ⅳ.1.2.4 目的および実施内容 表-Ⅳ.1.2.5 実験スケジュール 年月 日 曜日 潮 午前 午後 午前 午後 午前 午後 午前 午後 午前 午後 午前 午後 午前 午後 設置 点検 点検 点検 点検 回収 12 13 14 2019年5月 15 16 11 10 小潮 長潮 若潮 中潮 中潮 小潮 小潮 月 火 水 木 金 土 日 幼生収集装置 幼生収集装置設置 3 4 5 6 1 2 1 2 3 4 波浪観測 潜水作業 5 6 〇 〇目的
実施内容
浮体型の幼生収集装置の耐久 性・設置方法を沖ノ鳥島で実証 する。 ・浮体型の幼生収集装置の耐久性・設置方法を沖ノ鳥島 のサンゴ増殖試験基盤で実証した。 ・沖ノ鳥島のサンゴ産卵期における礁内の荒天時の波高 を海象条件の目標とするため、実証期間の波浪観測を 実施した。Ⅳ-1-2-17 (2)実験位置 耐久性実験は図-Ⅳ.1.2.16 に示す位置で実施した。 図-Ⅳ.1.2.16 耐久性実験位置 (3)方法 沖ノ鳥島のサンゴ増殖試験基盤に浮体式の幼生収集装置(図-Ⅳ.1.2.17 参照)を 6 日間 設置し、耐久性実験を行った。 固定方法はサンゴ増殖試験基盤を活用した。サンゴ増殖試験基盤の配置を踏まえ図 -Ⅳ.1.2.18 のように固定した。 設置時、点検時、撤去時に浮体型装置の設置状態を写真に撮影した。点検時、撤去時は、 設置状況を確認した。破損箇所がみられる場合は、その箇所を記録し、破損箇所がみられ る場合には、その対策について検討する予定であったものの、破損は認められなかった。 幼生収集装置の設置期間における波高を把握するため、実証期間に圧力計(水位計)を設 置した。圧力計(水位計)の設定条件を表-Ⅳ.1.2.6 に、設置状況を図-Ⅳ.1.2.19 に示す。 中間育成施設 コンクリート型 じゃかご型 ※ コンクリート型基盤内で実施 コンクリート型 20°25′16.5″,136°05′27.7″ じゃかご型 20°25′17.6″,136°05′27.0″ 対照区 20°25′16.8″,136°05′33.2″ 第2フェーズ (試験基盤) 北緯 東経 稚サンゴの移植場所
Ⅳ-1-2-18 図-Ⅳ.1.2.17 浮体式装置 図-Ⅳ.1.2.18 浮体型装置の設置イメージ 海面 ステンレス製リング ステンレス製リング (二重構造)
ロープ
設置位置 コンクリ-ト型試験基盤 装置 人工基盤に固定 人工基盤に固定 フロート 2.75m φ0.8mⅣ-1-2-19 表-Ⅳ.1.2.6 圧力計(水位計)の設定条件 項目 設定 使用機器 高精度小型メモリー圧力計 DEFI-DHG(JFE アドバンテック製) 観測間隔 連続観測 詳細設定 1 秒間隔 図-Ⅳ.1.2.19 圧力計(水位計)の設置状況 圧力計(水位計)
Ⅳ-1-2-20
2.2.3 結果
(1)幼生収集装置耐久性実験 1)実験状況 設置時の状況を図-Ⅳ.1.2.20 に示す。 サンゴ増殖試験基盤を活用して幼生収集装置を固定した。 なお、干潮時・満潮時に限らず幼生収集装置を安定させるため、4 方向のサンゴ増殖礁 にロープを繋ぐとともに、1 方向につきサンゴ増殖礁と装置の上下のリングをそれぞれ繋 いで固定した。 図-Ⅳ.1.2.20 収集装置の設置時の状況(沖ノ鳥島:5 月 10 日) 設置前の幼生収集装置 設置後の状況(海上) 設置後の状況(近景) 設置後の状況(遠景)Ⅳ-1-2-21 2)破損箇所の記録・対策 点検時、撤去時の状況を図-Ⅳ.1.2.21、図-Ⅳ.1.2.22 に示す。 調査中に幼生収集装置に機能を損なうような破損はみられなかった。 時化への対策としては、幼生収集装置の流出や破損につながる恐れがあるため、幼生収 集装置の回収が必要である。 図-Ⅳ.1.2.21(1) 収集装置の点検時の状況(沖ノ鳥島:5 月 12 日) 設置 1 日後(5 月 11 日)の状況(近景) 設置 1 日後(5 月 11 日)の状況(遠景) 設置 2 日後(5 月 12 日)の状況(近景) 設置 2 日後(5 月 12 日)の状況(遠景)
Ⅳ-1-2-22 図-Ⅳ.1.2.21(2) 収集装置の点検時の状況(沖ノ鳥島:5 月 15 日) 設置 5 日後(5 月 15 日)の状況(近景) 設置 5 日後(5 月 15 日)の状況(遠景) 設置 4 日後(5 月 14 日)の状況(近景) 設置 4 日後(5 月 14 日)の状況(遠景)
Ⅳ-1-2-23
図-Ⅳ.1.2.22 収集装置の撤去時の状況(沖ノ鳥島:5 月 16 日)
撤去時の状況(遠景) 撤去時の状況(近景)
Ⅳ-1-2-24 (2)波浪観測 装置の設置期間中における水位時系列を図-Ⅳ.1.2.23 に示す。また、設置期間中におけ る有義波の波高・周期の時系列を図-Ⅳ.1.2.24 に示す。 設置期間中の有義波高は5~25cm 程度、有義波高周期は 4~14s 程度であった。このこ とから、幼生収集装置設置期間中は静穏であったことが確認された。
2.2.4 考察
設置期間中の有義波高・有義波高周期の関係性を確認すると、有義波高周期は満潮時に 短く、干潮時に長い傾向であった。 本調査の幼生収集装置設置期間中は礁内が静穏だったため、高波浪による幼生収集装置 の耐久性の確認は未完であるが、幼生収集装置に機能を損なうような破損はみられなかっ たことから、本調査で用いた幼生収集装置は次年度以降も使用可能である。2.2.5 課題
今年度の調査期間における波浪条件は極めて静穏であり、沖ノ鳥島のサンゴ産卵期にお ける礁内の荒天時の波高は確認されなかった。 このため、次年度以降も沖ノ鳥島における耐久性実験を実施することが望ましい。Ⅳ-1-2-25 図-Ⅳ.1. 2. 2 4 設置期間中の有義波 の波高・周 期の時系列 (青:有義 波高、赤: 有義波高周 期) 図-Ⅳ.1. 2. 2 3 設置期間中の水位時 系列 0 4 8 12 16 20 0 10 20 30 40 50 5/ 10 5/11 5/ 12 5/ 13 5/1 4 5 /1 5 5/1 6 5 /1 7 有義波高周期(s) 有義波高(cm )