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情報遭遇型会話システム

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Academic year: 2021

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情報遭遇型会話システム

Information Encountering Conversation System

林 哲 則

Tetsunori Kobayashi

早稲田大学 理工学術院

Faculty of Science and Engieering, Waseda University

Abstract: The conversation system which provides more useful/enjoyable messages than the users expect

is called information encountering conversation system (IECS). In this talk, we introduce two types of IECS. One can add subjective opinions to normal answer. The other can convey congeries/mass of the information with good tempo/rhythm. Both of them base their features on the idea "it's a fun to face unexpected information". We show the basic behaviors of the systems and discuss about their properties.

1. はじめに

音声会話システムの開発と実用化が進んでいる。 高度化された音声認識技術と情報検索技術が相俟っ て,利便性の高い「情報検索型」会話システムが実 現されている[1][2]。また,一方で会話を継続するこ とを主目的とした雑談型の会話システムの開発も進 んでいる[3][4]。しかし,これらは,ユーザの求めに 応じて短文で表現できる程度の単純な回答を繰り返 す,一問一答型の会話を実現するにとどまっている。 そこで提供される情報に,ユーザの期待を良い意味 で裏切るような新鮮味があることは少ない。 本講演では,我々がこれまで開発してきた「情報 遭遇型」の会話システムをふたつ選んで紹介する。 ひとつは,質問に応える際,関連する付加情報を次々 と提供するタイプの会話システム[5],もうひとつは, 新聞記事のようなまとまった量の情報を,自動生成 されたシナリオに従ってリズムよく伝えるタイプの 会話システムである[6]。共に共通する点は,「思い がけない情報を得る行為は楽しい」という前提に立 って,ユーザの要求以上の情報提供を,一問一答を 超えた会話の枠組みの中で実現する点にある。

2. 主観的意見を添える

聞かれたことにしか答えない「ぶっきらぼうな人」 と会話をしていてもつまらない。我々が開発したシ ステム[5]は,ユーザの興味を引きそうな情報を適宜 添えて会話を進めることができる。システムは,映 画,レストラン,宿泊施設など,レビューサイトを 持つ話題を対象にしている。レビューサイトには, 単なる「事実」にとどまらず,レビューアーの主観 的意見が比較的整理された形で含まれ,興味深い情 報のソースとして有用である。 システムは,レビュー記事にある,評価対象の描 写,評価対象への主観的な意見に相当する部分を抽 出した上で,a.文長が適度であること(話しにくくな らない程に短く,十分な情報を持つ程に長いこと), b.使用されている名詞の話題への関連度が高いこと, c.使用されている形容詞の数が多いこと,d.使用され ている形容詞の関連文書への出現頻度が低いことを 指標として提供する情報としての適切性をランキン グする。c.,d.は,それぞれ,多くの形容詞を使って いる文,珍しい形容詞(=低頻度の形容詞)を使ってい る文は情報に富むという考え方にもとづいている。 開発されたシステムは,会話エンタテインメント システム[7]にも組み入れられて,会話相手を喜ばせ るのに役立っている。

3. 情報の塊を伝える

システムが伝えたい情報は,単純なひとつの文で 表現できるとは限らない。ニュースや WEB 記事に は,多くの情報が含まれるが,それら全体を伝える ことが必要がある。まず要約を伝えて,Q/A を通じ て 細 部 を 補 足 す る タ イ プ の 会 話 シ ス テ ム も あ る [8][9]が,ここで実現したシステムは,要約の説明中 にもダイナミックにユーザの状態を捉えて情報を補 足する機能を持ち,会話らしいテンポ/リズムのよ いインタラクションが可能になっている[6]。 まとまった量の情報を伝える際の問題は,伝え手 が伝えたい量と,受け手が受けたい量のバランスを 人工知能学会研究会資料 SIG-SLUD-B505-05 ― 27 ―

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いかにとるかにある。この機能を,a.記事の要約と 会話主計画の作成;b.ユーザ応答の予想と対応する 会話副計画の作成;c.非明示的情報要求行動の理 解;d.段落単位での音声合成;の4つの副機能によ って実現した。a.は,会話の基本的な流れを作るた めのもので,記事の重要なポイントを把握し,枝葉 を切って会話のデフォルトのシナリオを用意するも のである。b.は,ユーザの反応に即時的に対応する ためのもので,予想されるユーザの反応に対し,予 め対応と主計画への戻り方を準備しておくものであ る。c.は,ユーザの明示的な反応に加え,ユーザが パラ言語の表出で行なう非明示的な情報提示要求を 受け付ける[10][11]ためのものである。d.は,まとま った連続する文を合成する際,わかり易く内容を伝 えるためのものである。このうち,c.の非明示的な 情報提示要求は,対面音声会話特有の現象で,これ に適切に応えることは,リズムある生き生きとした インタラクションを実現するうえで重要とされてい る[10]。 これらの技術により,ニュースが伝える情報のう ち,ユーザが興味を持った情報を過不足なく伝える 会話技術が実現されている。

4. むすび

筆者が開発に携わった音声会話システムのうち, 情報遭遇に係るものをふたつ紹介した。多くの会話 システムが,ユーザが主体的に行なう要求に応じて 情報を提供するのに対し,ここで紹介したシステム は,どちらもシステムが主体的に伝える情報を選ん でいることに特徴を有する。 人間の情報獲得に関する情報行動は,大きく,能 動的な行動で構成される情報探索と,受動的な行動 で実現される情報遭遇に分けられるとされる[12]。 従来,会話システムを含む情報技術関連の多くの研 究は情報検索に重きを置いており,情報遭遇に係る 研究は偶発性の要素が大きいとして傍らに置かれて きたようだ。しかし,我々の日常の情報行動の実際 をみれば,両者の区別は必ずしも明白ではなく,質 の高い情報獲得は,これら情報検索と情報遭遇をバ ランスよく織り交ぜながら進むと考えるのが自然で ある[13]。音声会話は,このふたつのモードを自由 に行き来しながら情報にアクセスできる利便性の高 いメディアである。今後,単なる情報検索や会話の 継続のみを目的とするに留まらず,質の高い情報遭 遇を保証した上で,自由度高い情報行動のモード遷 移やその活性化を行なう会話システムの実現が望ま れている。

参考文献

[1] Siri, http://www.apple.com/jp/ios/siri/. [2] しゃべってコンシェル, https://www.nttdocomo.co.jp/ service/shabette_concier/. [3] りんな, http://rinna.jp/. [4] 大西可奈子,吉村健,”コンピュータとの自然な会話を 実現する雑談対話技術,” NTT DOCOMO テクニカ ル・ジャーナル, 21(4), pp.17-21 (2014).

[5] Y. Matsuyama, A. Saito, S. Fujie and T. Kobayashi, "Automatic Expressive Opinion Sentence Generation for Enjoyable Conversational Systems", IEEE/ACM Transactions on Audio, Speech, and Language Processing, 23(2), pp.313-326 (2015).

[6] S. Fujie, I. Fukuoka, A. Mugita, H. Takatsu, Y. Hayashi, T. Kobayashi, “A Spoken Dialog System for Coordinating Information Consumption and Exploration,” Proc. CHIIR (Conference on Human Information Interaction and Retrieval), pp.253-256 (2016).

[7] Y. Matsuyama, I. Akiba, S. Fujie, T. Kobayashi, “Four-participant group conversation: A facilitation robot controlling engagement density as the forth participant,” Computer Speech & Language, 33(1), 1-24, 2015. [8] 吉野幸一郎,森信介,河原達也, “述語項の類似度に基

づいてニュース記事の案内を行う音声対話システム,” 人工知能学会研究会資料, SLUD-B102-08 (2011). [9] D. Traum, K. Georgila, R. Artstein, A. Leuski,

“Evaluating Spoken Dialogue Processing for Time-Offset Interaction,” The 16th SIGdial Meeting on Discourse and Dialogue (2015).

[10] S. Fujie, et al., “Spoken dialogue system using recognition of user’s feedback for rhythmic dialogue,” Proc. Int. Conf. Speech Prosody 2006, OS2-4 (2006). [11] T.Kobayashi, and S. Fujie, “Conversational Robots: An

Approach to conversation protocol issues that utilizes the paralinguistic information available in a robot-human setting,” Acoust. Sci. & Tech., 34(2), 64-72, 2013. [12] D.O. Case: Looking for Information, A Survey of

Research on Information Seeking, Needs, and Behavior, Second Edition, Academic Press (2007).

[13] S. Erdelez: Information encountering, In [3], pp.179–184, (2005).

[14] K.E. Fisher, S. Erdelez, and L.E.F. EmKechinie(Eds), Theories of Information Behavior, Information Today, Inc. (2005).

参照

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