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指導に生かすための研究

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Academic year: 2021

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(1)指導に生かすための研究 河野 俊之. 【キーワード】第二言語習得研究、基礎研究、実践研究、音声教育、話す. 0.はじめに  西原(1999)は、研究を「基礎研究」と「応用研究」に分け、以下のよう に説明している。.    基礎研究:研究テーマに関する知識を深めることを基本的な目標と.        するもの    応用研究:実社会のニーズに応えることを目指すもの.  第二言語としての日本語の習得研究は日本語教育現場での指導に対する 基礎研究とされることが多い。しかし、現在の習得研究は、日本語教育現 場での指導に対する基礎研究となっているのであろうか。そこで、本研究 では、日本語教育現場での指導に対する基礎研究について考える。そのた め、 「話す」技能の習得研究の成果を指導にどう生かすかを具体例として 述べる。. 1. 「話す」技能と言語習得 坂本他(2004)は、345本の目本語に関する習得研究の和文論文リストをま. とめているが、それを見ると、〈発話、コミュニケーション能力〉には、 以下の2本しかない。 福留伸子・山元啓史(1994)「日本語学習者のコミュニケーション能力習.   得の一考察:インドシナ難民の日本語学習環境に関するケーススタ   ディ」『筑波大学留学生教育センター日本語教育論集』9,185−193,.   筑波大学留学生教育センター. 藤i長かおる(1996)「初中級日本語学習者のコミュニケーション能力につ.   いて:話し手としてのコミュニケーション・ストラテジーの観察」    『日本語国際センター紀要』6,51−69,国際交流基金日本語国際セ. 一95一.

(2)    ンター..  ちなみに、他の技能は、<読解>12本、<聴解>10本、<作文>12本であ. る。また、〈文法〉とされたもの(一般、文法性、構文、使役、可能、授 受、助詞、テンス/アスペクト、引用・伝聞、否定、て形、疑問文、コソ ア、視点、動詞、敬語)は合計83本である。金子(2004)は、 「話す」は言語. の四技能を代表するスキルであり、第二言語習得研究においても、興味が 持たれる諸問題(:L1習得と:L2習得の関連や、言語習得と、学習者の年齢、. 教師による指導、教室での言語活動、学習ストラテジーとの関係など)の 研究にあたって、習得の過程や程度を測る尺度としてスピーキングが用い られてきており、スピーキング自体に焦点を置いた研究よりも、むしろス. ピーキングを熟達度の証として、相関関係を見るための変数とする研究に カが注がれてきたとしている。 「話す」は言語の四技能を代表するスキル であることは、例えば、native speakerと言うことはあっても、native listener、 native writer、 native readerと言うことはなく、しかし、 native speakerと言っ. ても、それが「話す」だけを指すわけではないことからもわかる。四技能 を代表するスキルであるからこそ、習得の過程や程度を測る尺度としてス ピーキングが用いられてきていて、スピーキング自体に焦点を置いた研究 よりも、むしろスピーキングをその外国語の熟達度の証として、相関関係 を見るための変数とする研究にカが注がれてきたのだろう。確かに、日本 語でも、OPI(Oral Pr面ciency Interview)は、研究としては、スピーキング. そのものの研究というよりも、このレベルでは、この文法項目が習得でき ていない、ということを調査するための尺度として使われることのほうが 圧倒的に多いように思われる。.  では、「話す」の指導に直接生かすことができる習得研究とはどのような ものであろうか。. 2.習得研究とは  まず、第二言語習得研究とは何を指すかが曖昧であるように感じられる。. 第二言語習得研究とは、第二言語学習者の言語能力とコミュニケーション 能力を記述し、いかにしてそのような能力を身に付けていくかを説明する 研究である(Ellis 1994,坂本(2001))。しかし、その中には、中心的な. 一96一.

(3) 研究とそうでないものがあると思われる。そこで、『日本語教育』115∼ 125号に掲載された、寄稿を除いた、合計101本の研究論文、調査研究、実. 践報告について、習得研究に詳しい10名に、習得研究と思うかどうかを調 査した。各論文要旨を読み、それらが、第二言語習得研究であるかどうか について、「○…第二言語習得研究の中心的研究である」「△…どちらと も言えない」「×…第二言語習得研究ではない」で回答し、さらに、「△」. と回答した場合、第二言語習得研究にどのくらい近いかについて、「A… 第二言語習得研究の中心的研究により近い」「B…第二言語習得研究の中 心的研究により遠い」で回答することを求めた。表1に、その調査結果を 示す。また、表2に、回答者別の回答数を示す。. 一97一.

(4) 1. 」」. 葛. 任 賀 奪 1ト. e. 轟 萎. e. 昧 怒 淘. 墨 鞍. l. 1. 憩. § 細ロ. Q 坦. Q. e 目 i. e. 毫 画. 綱・. 羅. 2. 二. e. Q 思 る. lト. A⊆\. 灸 思. I. 孟 へ. 藝 蓮 驚. 魅 署 謹 趣 醸 騨. e. 素. 卑 響 暴 爲 灘 寵. 理 §. ぞ. 藁. 患. 謬 選. 叢. 自. 萎 輩. 董. 心 鴬. 韓. ゐ. £. 避. 客. 難 亜 聖. 慧. 昼 賢. ま 塵. 麗. 鷲. 覇. !lll. 含. 期. 禦. Q 丁. Q. 目 ゆ % 息. ム. 聴. 1ト、. 癖. 皿. 雛 雲 醤. 難. 9 蟹. 龍. 寒. 誉. 鵠. 響. 警 悪 ギ 駆 藍 寒. 肇. 蘂. 婁. Q 一 一. 刃 ∬. ご. 監. 鷲 韻. 賠 賠 龍. 慰. 愚 君. 魯 鴇. 患. £. 醤. 華. 唄. 鷲. 一く. 詣. ミ. 羅. 1. 這. 嚢. 馨. 雛. £. 墓. 襲. ・嚢. !卜. 岩. e. 11. 撃. 賠 皿. 灘 益. 雪. 8. 圃 量. 糖 総. 羅 寵 誉 1. お 書. 塁. 聲 灘 溢. 鬼. 轟. 慧. 禦. 醤. 賠. 疎. 豊. 慧. 無呈 11110. 雛. 鷺. 2 2 e. 輩. 罷 と. 器. 卦. 翠. 鷺. §. 駐. 賠. §. む. 羅. 龍. e. ゆ. 展. ㌣. 當. 奪 ・寅. 寧 鰻 墨 智. 羅. ゆ. 11110. き. 譲. ト ミ. 塞. 龍. 響. 総. 霧. 監. 蓑. 婁. 尽. 霧. 轟. 達. 龍 母. 思. 撃. 1. 素 軽 §. 藷. 岱. 琶. 壷. 8. くロ. 謬 畏 雲. 瀧 當. ゆ. ㊤. ◎り. ゆ. ㊤. ゆ. N. QO. ヨ. 雪. 曾. 爲. 舘. 曾. 鶉. 蕊. 輯. 鵠. ×. o o o o o o o. 目. o H o H o H H. 口q. o o o o o o o o o H H H. <. o o o o H. 〈. o o o o H H H o. ○. 自. lI. H. お 壽. 遷. 寵 1111且. 窟. 鷲. 憲. 1卜. §. 量. 醤. 罵. 3>∼. Q. ≧. 轟. 轟 誘 蕊. くロ. 去. 心 嚢. ウ. 逼. 1. 弼 餐. 欝. §. 駅 奮. 髪. 皿. K. ∼ト、. 1長. 皮. ㌣. 『ぐ. 覧. 繧. 工. よ. ム. 這 な. 知. 賠. で. 轡. 灸. 髪. y. 秦. ロ恥. 卜. 卜. o◎. ゆ. 卜. Φ. 雪. 碍. 雪. 雪. 曽. 雪. H H H H H H H H H H H H H H H. 自. 9. 自. ①. 州. ①. H o N o N. ①. 一98一. ①. ◎○. o q. 目. H. ◎○. H. ㎝. H. ◎◎. N. 寸. ◎○. ◎う. qQ. Q◎. 卜. 卜. ㊤. り. ㊤.

(5) 1. と. 1. 愛. 署. 食. 罷. e. 鷺. 思. 以. 翠 楓 縣. Q. 裾 陥 採 1. 斜皿. y. む. 享. 暮 羅. 遷. 甑 謹 ゆ %. 2. 胆. 餌. 尼. 禦 趣. 認. 賠. R. 怠. 皿. 藝 曲. 隈皿. く. Q. 圃. 蛭. e. 騒. §. 想. 簿. ぞ. 議. ム. 麟. 龍 窒. e 龍. 1. 旧. 1. 息. R. 笥 然. 玉. 1!. 奪 £. ト 1. 麗. ミ. 嚢. 1. λ 1. 咽. e. 聲. 喜. 息. $. ゆ % 息. 籠 l蝋. 竃. 賠. さ. ゆ. 簑. 匝. 慧. 駐 糾. 窓 ζ 変. 鉛. Q ミ て. 息. ム. 黛 任. 増. 梶. 濫. 娼. 1. 熊. ミ 逃. 撫 l. ラ. 春. e. 轟 選 謹 龍 雲 醤. 旺. 霞. 棉. 憂. 簑. 眞. 蓄 蟹. 巡. 離 饗. む 思. 豊. 簿. 齢. 球 蒋 蘇 撃. e. コ. お. 一. 昌 噴. 壽. δ. 細 虫 く 圃 量. 韓. 畏. 自. Q. I. 陰. 8 岩. 一く. £. 8 宅. 爬. 蘇. 皿. 覚. 哩 啖 図. 薯 璽 喜. e 脚 卦 1. e. Q 二. 思. 醤 ズ 弐. 督. 溜 懸. 窒 」. 湯. む. 量 長. 昆. 息. 畔. む. ム. 量 衷. 1ト. 写. 駐. 秦. ゆ. 膨. 隈{且. 1旨. 一. 認. 一. e. ゆ. む. 麩. Q 息. 寵 捨. 玉. 郵. e. 薗. 如. き. ざ. 潟 曾 雰 侵. 1. ’自. 窪 詰 署. ⊃. 尋 霧. 2. 1. e. 智. 難 龍 捨 ミ. Q. $. ’i二. §. 1. 紐 圃. τ. 馨. 1 くロ. .自. 渕. 蟹 粧. 巴. 診. A⊆\. 縮 眠. 壁. 貫. 瀧 総 藻. 思. 逃. 灸. $. 魯. 1. 誤. 志. ぎ. 牽. 套. 思. 轟. 長. 畢. 翼. 轟. e. 醤. 寂 攣 〒. さ. 龍. 蕊. 1. 窒. 麩. 雛. 1. 蝋. 智. 轟. 駕. 叢 垂. e. 駅. 騒. 亜. 曇. 1 1. 誉. 鷺. 離. 冥 ヂ. 幽 諏. I. 龍 皿. e 脚 卦 糎. 紐 皿. く 圃. ㍗. 賠. 片. 益 皿. 喜. 矧. 皿. ①. H. 寸. ⑩. QO. αo. ゆ. ①. ○○. ①. 寸. c覇. 卜. 卜. 卜. ㎝. N 9. 旨. 囲. 雲. 震. 爲. 震. 萬. 曽. 爲. 爲. 日. 扇. 曾. 袋. 呂. 鵠. 雪. 肖. H. 曾. H H 目. 斜. 龍. H. 以. H H H. o o N. 目. H. H. 肖. H. H H N N. 皿. 目. H H. H H. ◎り. oり. H. ◎り. ◎○. 寸. ゆ. H. eミ. N. ㎝. e澗. H H. H. 目. N. H. 寸. QO. c『. 目. H. c満. N. 寸. oう. oり. o N o. 寸. ◎○. ◎○. 目. o. N H. oり. QO. 目. H. 斜. N N. oり. N. ゆ. ゆ. ◎Q. oO. oO. ゆ. ゆ. 寸. 寸. ◎○. ◎○. ㊤. 寸. 寸. oり. c唖. ⑩. ⑩. ゆ. ゆ. の. ゆ. ゆ. 寸. 寸. 寸. 寸. 寸. 寸. ◎○. ◎り. ◎Q. oO. oり. 一99一.

(6) 1. 「】. 茎. 案. 繋. 『甲. 衰. e 数. 寒. 轟. 盤. †. 二 響. 業 ≧. 蟹 雫. q. 難. 麸. ll. よ. 購. }空. 編. 襲. 甘. 鳥. ト. 禦 饗 鴛 豊 門. Q. I. 響. 羅. 集 禦. 葦 1. β. 物. I. [[工. e. ニ. e. l. 姥. 細 圏 く 圃. 畑 甑 恥 ⊃. 鐙. む. 皿. 毒. 羅. 仔. 三. ゆ. 量. 槍. 著. 1. e 却. 赴 思. e. 4. 渕. 翠 坦. e. 垂 需 課. 寵 ロ. e. ド姻. 2 e 駆 11110. e. ヱ. L 1. 紹. e 昆. oO. H. oo. 卜. ㊤. ⑩. σ○. 雪. 曽. 日. ヒ. 呂. 爲. 目. 持. H H H. 曽. N. 。『. σり. oり. ゆ. N. ◎り. N. oり. 寸. oO. oO. ㊤. ㊤. N N. 甑 コ. i. 尽. 相. 9. 亜. 羅. 餐. 羅. 旺. 爲. e. 怠. 然. 督. \. 奮. よ. む. 幽. 奮 零. §. 鶯 駐. 蓉・. ロ. 撃. 薯. 翼. ミ. 龍. と. 藁. 11. 齢. e. 違. 1. Q. 畑. 製. i111巨. 一 1. 製. £. 濯. ゆ. 瓢 卦. 空. Q. 皿. 一. 報 曄. 翰. 婁. i. 窪. 郵. 思 々. 霞 悉. ζ. な. 堂. H. 二. e. 轟. 姦. I. 捨. 島. 拶. 1. 誕. ,. 1. 1. o. 笥. く 圃. 図. 畑. 塾. 醤. 皿. 細. 趨. 雰. 紐. 淘. ζ. 判. 山. 気. R 髪. 鎌. 蓮. ム. 蚤 皿. 9. 如. ミ. 禦. ユ. 無 龍. 」. 羅. 筆. よ. 編. 讃. 書. 慧 叶. 3. 捜. 膣 匙 趣. 愛. 旱. 息. 叢. 製. 羅. 奮. §. 慧. 1. セ. 賠. 二 ざ. ⊃. 茎. 羅. 禦. 愛. 1. 1. 慮. 旦 一. I. 瞳. 島. Q. あ. 皿. 溜. 催. 賛. 襲. 慰. 思. 藻. 公 思. 蘇. 塞. 謹. 慧. 餐. 瀟. 華. Q. 照 裟. 一. ミ. 迦. 1ミ. 一. 謡. 食 1. 総. 褒 一. b鴛. 緊 写ト、. 翌 騒. 器. 口. 口. 誤. 憩. 2 賠. 之 よ. 長. 溢. 3. ①. oO. H. ①. 寸. H H. 震. 曽. 震. 苺. 曾. H. H. くK. 姻. 職. ◎○. 寸. 爲. 雷. 日. 扇. 雪. 回. H. 鶉. H H. H. ゆ. ゆ. ゆ. ㊤. り. 卜. 卜. QO. ゆ. ゆ. ㊤. ㊤. ㊤. N. ◎り. 寸. 寸. ◎り. ◎Q. H. c苅. o. oO. 寸. c『. N. 『◎○. ㎝. N. H. o o o o H o H. c澗. H N. ㎝. H. ぬ. 鴎. 寸. 寸. 寸. 寸. ゆ. ゆ. 寸. 寸. 寸. 斜. N H. 目. H. 目. H. H. ◎○. ◎○. H. H. 一100一. H H H. N. 斜. 祠. H H o o o o o. H.

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(9) 1. 1. I. 愛. ソ. o. 薪. さ. 皿. 鷹. 昆. 智. 下. 垂. 戸. 濫. 翼 継. 撫 息. 魯 ℃ ;. 樋. 二. ゆ. e. 〇. 息. 1ド. 又. 9. 雇. ) 兵. 息. 仔. ・翼. 二. 羅. 2. 灸. 駅. 堅 寵. Q. e. 息 紅皿. 謁. 一. 日. , 島. 置 ど. ヨ \. む. ℃. 役. 二. 3. 渕. e. 一. 一. 挫. 思. ⊃. 組. κ\. フ. ゆ. む. 淘. 息. H. く肛 尽日. 一. 1 一. 射. 窮 乏. 蛋. 受. 1. 髪. 叢. e. 論. 薄色. ♪. 削. 即 一. 寵 る. 孟. 一 ∼. 愛 薩. 一. 髄 漕. e. e. フ. 皿. 塁1. 髄. ∼. 間. 寵. 魯. Q. 饗. 顧. 撫. 鎚ロ. 一. 1. e. 1. 一. 卦 ≦. 1 ゆ. 樋. e. 賠 圃. e π. 溢. 愛 日. e. 畦. 萌 仔. さ. 明く. ∼. くK. ㌍1. L. 一. ◎り. 寸. H N. 寸. 鴫. ①. ゆ. り. N. 猫. o◎. ㎝. 寸. 雪. 曾. 呂. 呂. .呂. 呂. 爵. 爵. 震. 雷. 謂. 旨. 鵠. ヨ. ヨ. ヨ. 9 9 9 9 9 9. 呂. H H H H ヨ. 自. ヨ. 目. 9 9. H H H H H H H H H. o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o o. 一103一.

(10) 表2回答者別の回答数 回答数. 回. 答. ○. △. A. B. ×. a. 6. 20. 6. 14. 75. b. 23. 36. 12. 24. 42. C. 25. 25. lI. 14. 51. d. 11. 22. 15. 7. 68. e. 20. 14. 7. 7. 67. f. 24. 23. 12. 11. 54. 9. 29. 12. 6. 6. 60. h. 12. 7. 0. 7. 82. i. 27. 12. 4. 8. 62. j. 40. 22. 14. 8. 39. 21.7. 19.3. 8.7. 10.6. 60. 者. 平均.  表2から、何を習得研究と見なすかについては非常に個人差が多いと思 われるが、表1から、習得研究は以下の要素を満たしているものであると 考えられていると推測される。. 1 学習者について扱っていること. 習得研究は学習者の習得のメカニズムを扱っているので、これは当然で あろう。. 2.習得要因を明らかにしようとしていること 語用論、プロトタイプ性、有標性、環境、ストラテジーなどの観点を用い. る。例えば、プロトタイプ性が習得しやすさに関係しているか、どのよう. な環境になると習得が進むか、習得のためにどのようなストラテジーを用 いているかなどである。. 3.学習者の日本語能力のレベルについて配慮していること  中級など、レベルを1つに限定したり、複数のレベルを扱うことで、縦断 的調査を行い、習得過程を明らかにしようとするものもある。. 一104一.

(11) 4.学習者の母語について配慮していること  学習者の母語を1つだけに限定したり、母語別に調査・考察したりする。. 母語別ではなく、例えば、母語に進行形があるかどうかなど、もう少し大 きな括りで分けることもある。.  これらの要素を満たしながら、同時に、 「話す」の指導に直接生かせる. 研究というのはなかなか難しく、存在しえないのかもしれない。例えば、2 について、プロトタイプ性とは、語彙や文法に関することなので、直接「話 す」を扱うのではなく、語彙や文法に関する項目を扱わなければならない。. また、4について、母語よりもやや大きな括りを用いる場合、その括りの基 準となるのは、やはり文法などにならざるをえないだろう。  しかし、 「話す」の指導に直接生かせる第二言語習得研究が少ないから                      ニ と言って、その研究の成果のいい、悪いを判断することがあってはならな い。若林(2004a)は、 「外国語習得のメカニズムを探る「習得研究」と、外. 国語の勉強や教育の方法を考える「外国語教育研究」とは別のものなので す」と述べている。また、若林(2004b)は、「第二言語を習得する時に、学. 習者の頭の中で何が起こっているかを見る」ことが、第二言語習得研究の 第一の目的であり、言語習得研究と言語教育研究は、互いに関連しながら も、全く異なる目的で行われる別の分野であると述べている。例えば、対 照研究がある言語の現象をより明らかにすることができているだけのもの でもよい研究であると言え、また、それが外国語教育に役立たないからと いってよくない研究だとは言えないのと同じである。逆に言うと、現在、’. よくある期待、つまり、第二言語習得研究は外国語教育に生かすために存 在していて、外国語教育に生かせない研究は、よくない研究であるという 考え方は誤っているということは共通理解を持つ必要があるように思われ る。. 3.規範的研究  では、第二言語習得研究に限定せず、広く、日本語教育における研究は何 を目指すべきなのであろうか。. ネウストプニー(2000)は、言語研究を行う際の研究者の活動には記述的な. 面と規範的な面があり、記述的研究は準備の段階、規範的研究は直接問題. 一105一.

(12) 解決への措置を対象としている段階であるが、規範的研究こそが真の目標 であると述べている。また、規範的研究が批判される理由として、多くの 規範的研究では十分に記述的なベースができ上がらないうちにすでに規範 的な判断が提出されがちだったことと、規範的な判断の場合に種々の基準 が適用されるが、このような基準が明瞭にされていないだけではなく、そ の妥当性が疑わしいということであると述べている。  しかし、教師は、目の前にいる学習者に対し、十分に記述的なベースがで. き上がらないうちは規範的な判断ができないので教えない、ということは できない。日本語教師の体験知に基づく暫定的な規範的な判断を、今ある 記述的なベースなどを基に行い、行動し、観察し、振り返り、改善してい くということが必要である。そのときの規範的な判断はもちろん唯一絶対 のものではない。試行錯誤の中で規範的な判断を修正していけばよい。そ して、その中で、どのような研究が必要であるかを考えなければならない。. 学習者や教師、教室活動が見えないような研究は必ずしも貢献できないだ ろう。現在の習得研究は「習得研究のための習得研究」になってしまって いないだろうか。.  例えば、フィクションであるが、以下のような習得研究もありえる。. 目的:アクセント型の聴取能力の習得順序を明らかにする 被験者:ソウル方言話者30名(OPIにおいて初級一中10名、中級一中10名、上 級一下10名). ③ ②       カ「エル  カエ「ル  カエル「. 刺激音声:① .      ズ「ボン  ズボ「ン  ズボン. 方法:刺激音声をランダムに呈示し、回答用紙にアクセントの下がり目を  記入させる.      例: カ エ’ル 結果:②→③→①の順に習得される(1%水準で有意差あり)  この研究は、上の習得研究の要素と考えられるものは満たしている。し かし、実際の教室活動にどうつながるのだろうか。例えば、以下のような ことが考えられる。. A)②→③→①の順で教えると、習得順序にのっとっているので、無理な  く効率的に学ばせることができる。. 一106一.

(13) B)③を習得している学習者は②を習得済みなので、②は教えなくてよく、  時間の無駄が避けられる。. C)①がなかなかできないことに対して、習得順序が遅いから仕方がない  と考えることで、教師・学習者のストレスが避けられる。  しかし、それぞれについて、例えば、以下の疑問が考えられる。. A)②→③→①の順で教えると、本当に無理なく効率的に学ばせることが  できるのか。.  実験結果は、あくまでも正用順序(迫田(2000))であり、その順で教え. ると、無理なく効率的に学ばせることができることと直接結びつくとは言 えない。無理なく効率的に学ばせることができるかどうかは実際に教え、 その結果を分析してみない限りは明らかにならないはずである。 B)③を習得している学習者については、本当に②は教えなくてよいのか。  実際に教師は本当に②を教えないのか。また、②について確認すること  が本当に時間の無駄になるのか。.  研究結果を基に、③を習得しているからといって、実際に学習者1人ひ とりについて確認することなしに、②は習得済みだと考えるのは教師にと ってはかなり抵抗があるだろう。また、②を習得しているかどうかを確認. する活動がそれほど時間の無駄になるとは考えられない。また、学習者が 習得している③②を扱わず、習得していない①をいきなり扱うのは、いき なり難しいものを扱うことになり、学習者は心理的障壁を作ってしまうお それがある。③②を扱うことによって、学習者にとって「できた」という 経験がさらなる学習へと動機付けることは十分に期待できる。. C)②がなかなかできないことについては、厳しく対処するべきなのか。  教師の「資質」として、「根気強さ」「学習者への配慮」が挙げられるこ. とが多い。なかなかできないことに対して、習得順序が遅いから仕方がな いと考えることで、教師が根気強く見守ることは必ずしも問題ないだろう。 しかし、逆はどうだろうか。②がなかなか習得できない学習者に対し、「な. ぜ、簡単なことができないんだ!」と学習者を叱責するのは大きな問題が あり、やはり、人事を尽くして根気強く見守るべきであろう。.  以上のように、上の研究結果を直接的に指導に生かすのは難しいと考え. られる。しかレさらに問題なのは、研究結果を生かした活動が想定でき ないことである。. 一107一.

(14)  例えば、②が最も習得が早いから、まず、それを練習する.として、その                   ヨ             ヨ. 練習とはどのような練習だろうか。 「カエル」 「ズボン」などをただ聞. かせるのではないだろう。①②③をランダムに聞かせ、②かどうかを判断 させる練習だろうか。筆者には、上の研究結果を生かした具体的な活動を 想定し、その活動をより効果的にするためには、上の研究結果をどのよう に生かしたらよいかがわからない。 「習得研究の成果を指導に生かす」と いうことだけでなく、 「指導に生かすために習得研究を行う」ということ が必要だと考えられる。. 4.音声教育に生かすための研究  小河原(1997)は、日本語教育における発音矯正場面を想定して、学習者. はどのように教師のモデル発音を聞き取って発音しているかなどを調べ、 ノぞ〃じょ/の言い分けが正しくできる韓国人日本語学習者は、各人が以下. のような独自の基準を意識的に持っていることがわかった。 1.. 口の中で舌の位置を変える。. 2.. /ぞ/は歯茎、/じょ/はそれよりも広く舌をつけて発音する。. 3.. /じょ/は舌が下がっている感じで発音する。. 4.. /ぞ/は舌にカを入れ、/じょ/は普通にする。. 5.. /じょ/は力が入るが、/ぞ/は入らない。. 6.. /ぞ/は「ず」から/ぞ/へ、/じょ/は「し」から/じょ/へ発音を移 行させる。. 7.. /ぞ/は「そそ」から/ぞ/に移行させる。.  どの独自の基準を持っている学習者も正しく/ぞ/と/じょ/が言い分けられ. ていることから、どれも有効な独自の基準である。教師の役割は、学習者 が自身の発音をモニターして評価し、正しい発音の基準を作ることを支援 することだと言える。『 小河原(1998)は、韓国語話者のクラスで、/ざ/と/じゃ/を材料として、自. 己モニターを促進する活動を行った。 「A」を書いた札と「B」を書いた. 札を学習者に1枚ずつ用意し、まず、クラス外の韓国人学習者の正しい発. 一108一.

(15) 音と正しくない発音を事前にランダムに編集した音声テープを提示して、 「/ざ/として正しいか」などを札で示す活動を行った。さらに、学習者が. 自身の発音が正しいかどうかの評価をし、次に、他の学習者の発音が正し いかどうかの評価をする活動を行った。以上の結果、/ぞ//じょ/の発音の. 能力が向上したのはもちろん、 「自分で自分の発音を自己評価しながら学 習する」という意識を高め、 「日本語の発音が上手になるために努力した. い」という気持ちを高め、グループ活動によって、クラス内の緊張を和ら げることができたとしている。この、自己モニターを促進する活動は、ひ じょうに大ざっぱに述べると、以下のような手順になると考えられる。 1./ざ//じゃ/の音声を提示し「/ざ/として正しいか」等を判断させる。. 2.モデル音声について発音し、正しい発音ができたときは、独自の基  準を考えさせる。このとき、他者の独自の基準を参考にさせてもよ  い。. 3.独自の基準に合わせて発音できているかどうかを評価しながら発音  させる。.  上の活動を実際に教室などで効果的に行うことを考えたとき、さまざま な問題が出てくる。そのひとつとして、 「どのような順序で音声項目を提. 出したらよいか」がある。提出順については、もちろん、実践の中で確立 するべきであるが、習得順序の研究もその参考になるだろう。  「発音は気になるものだけを指導するべきである」という話をよく聞く。し. かし、例えば、自分が担当する学習者が/つ/の発音が苦手なので、この活 動を使って、/つ/の正しい発音ができるようになるようにしょうとしたと しても、効果はないかもしれない。単音の習得順序の中で/っ/は、かなり 遅いのではないかと考えられ、いきなり、この活動を行っても、なかなか/ つ/ができるようにならず、この活動についてマイナス評価を下すだけにな. ってしまうおそれが大きい。そこで、単音の習得順序を明らかにし、それ を参考にして、カリキュラムを組むことが必要であろう。.  なお、ここで言う習得順序は、発達順序でなければならない。発達順序 とは、ある1つの項目を習得する場合に、必ず通る普遍的な習得の道筋、 流れをいう(迫田(2002))。また、学習者の習得過程を解明しなければな. 一109一.

(16) らない。青木(2001)は、 「教える」という教師の行為と「学ぶ」という学. 習者の行為との関係について、「「教えたのにできない」とか「教わった けど忘れた」とか言っている人たちは、「教える」という言葉を、おそら く「言う」とか「見せる」とかいう意味で使っているのだと思われます」 と述べている。「教えた」と「聞かせた」「見せた」「言った」が最も異 なるのは、音声教育ではないだろうか。例えば、文法教育について、意識 的か無意識的か、「教える」=「説明する」とする研究がひじょうに多い。 確かに、文法教育では、「説明する」ことで、学習が起こることも多いが、. 音声教育では、調音点・調音法・声帯振動の有無について、 「説明する」. だけでは、発音できないことが多い。さらに、聞き取りに関しては、「説 明する」こと自体が不可能であるとも言える。筆者は、小河原・河野(2005) において、以下のように述べた。.   習得研究は、学習者1人ひとりを見ることにその価値があり、楽しみ  があると、第一人者のお一人から聞いたことがあります。習得に関する 研究をするなら、言語だけでなく、さまざまな習得要因を考え、そのう  ちの自分はどこを特に見ていくのかを考えていく必要があるでしょう。 習得に関する研究が教育からどんどん離れてしまっている気もします。.                               うた  第二言語習得研究が、従来の教師主導から学習者主体への転換を謳う のならば、実験によって得られた言語データなどだけを用いて研究するの は、その信条に反するのではないだろうか。また、それでは、実際の教育 に生かすことはほとんどできない。ある音を習得するときには、学習者の 頭の中で何が起こるのかがわかれば、教師はそれを支援すればよいという ことになる。もちろん、その支援方法を身につけるのは簡単ではないだろ うが、何かを習得するときには、学習者の頭の中で何が起こるのかを明ら. かにすることが習得研究の最も重要な物の1つであると考える。. 5.おわりに  筆者は、共著で、プロソディーを対象とした教科書(河野・築地・串田・ 松崎(2004))を作成した。その教科書では、フレージングに関する音声学. の研究成果や個々の音よりもプロソディーのほうが、また、アクセントよ. 一110一.

(17) りもフレージングや文末・句末のイントネーションのほうが日本語らしさ. に大きく関わるという音声教育についての研究をその理論的基盤の一部 とした。また、現在も、自己モニターを促す活動を中心とした教科書を作 成中である。それは、教材がなければ何も教えることができないというこ とではなく、教材のような具体物を以ってディスカッションすることが、. 教育の改善に最もつながることの1つだと考えるからである。さまざまな 研究の成果を生かした教材の出現を望んでいる。 謝辞:調査にご回答くださった皆さんに感謝いたします。. 注:筆者は、第15回第二言語習得研究会全国大会(2005年12月10・11日、. 於・大阪外国語大学)におけるパネルディスカッション「四技能の習得と 指導一習得研究の成果を指導にどう生かすか一」のパネリストを務めた。 そこで、 「話す」技能の習得研究の成果を指導にどう生かすかについて、. 話題提供することを求められた。本論は、その発表について大幅に加筆修 正したものである。. 参考文献 青木直子(2001)「教師の役割」青木直子・尾崎明人・土岐哲編『日本語教   育学を学ぶ人のために』世界思想社,182−197.. 岡秀夫(1994)「スピーキングとオーラル・コミュニケーション」SLA研究   掌編『第二言語習得研究に基づく最新の英語教育』大修館書店. 小河原義朗・河野俊之(2005)「音声教育について考える一音声教育研究の   テーマー」『月刊日本語』2005年6,月号,アルク,40−43.. 金子朝子(2004)「スピーキング」小池生夫『第二言語習得研究の現在一こ   れからの外国語教育への視点』大修館書店. 金子朝子(2005)「スピーキング」JACET SLA研究会編『文献からみる第二   言語習得研究』開拓社.. 河野俊之(2004)「音声教育で必要な研究について」『日本人は何に注目し.   て外国人の日本語運用を評価するか』平成12年度∼平成15年度科学研   究費補助金 基盤研究(B)(2)研究成果報告書,研究代表者:小林ミナ.. 一111一.

(18) 河野俊之・築地伸美・串田真知子・松崎寛(2004)『1日10分の発音練習』   くろしお出版.. 河野俊之・小河原義朗(2006)「音声教育を考えよう1」『日本語教師のた   めの「授業力」を磨く30のテーマ。』アルク,180−187. 小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエー   ネットワーク. 坂本正(2001)「第二言語習得研究の歴史」青木直子・尾崎明人・土岐哲編『日.   本語教育学を学ぶ人のために』世界思想社,136−157.. 坂本正・迫田久美子・小林ミナ・Yasuhiro Shirai(2004)『日本語指導と.   習得』2004年日本語教育国際研究大会ワークショップ・セッションお   土産資料.. 迫田久美子(2002)『日本語教育に生かす第二言語習得研究』アルク.. 西原鈴子(1999)「入門日本語教育研究1 なぜ日本語教育研究が必要なの   か」『月刊日本語』1999年4,月号,アルク. ネウストプニー,J. V.(2000)「ネットワーク:規範性とインタレストの問.   題」『日本語教育における教授者の行動ネットワークに関する調査研   究一最終報告一』日本語教育学会,37−52.. 松崎寛・河野俊之(2005)『日本語の音声H』アルク. 若林茂則(2004a)「コラム③ 第二言語習得研究と第二言語教育(その1)   一研究の応用の難しさ」『英語習得の「常識」 「非常識」』大修館書   店.. 若林茂則(2004b)「コラム④ 第二言語習得研究と第二言語教育(その2)   一研究を外国語教育に役立てる」 『英語習得の「常識」 「非常識」』   大修正書店. Ellis, R. (1994) 1乃θ 51オαoケof 5θoo/74.乙∂刀8・α∂8θノ望。〈7θゴ3ゴオ∫o/2, 0xford.     University Press.. 一112一.

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参照

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