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チャネル構造をもたない分子性ホスト結晶による難分離性混合物からの選択的包接 -ゲスト適用性の拡大と分離への応用-

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Academic year: 2021

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(1)

チャネル構造をもたない分子性ホスト結晶による難

分離性混合物からの選択的包接 -ゲスト適用性の

拡大と分離への応用-著者

三好 幾子

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

11301甲第19264号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00130536

(2)

みよし いくこ

三 好 幾 子

研究科,専攻の名称 東北大学大学院工学研究科(博士課程)バイオ工学専攻

学 位 論 文 題 目

チャネル構造をもたない分子性ホスト結晶による難分離性混合物

からの選択的包接 -ゲスト適用性の拡大と分離への応用-

論 文 審 査 委 員

主査 東北大学教授 服部 徹太郎 東北大学教授 壹岐 伸彦

東北大学教授 笠井 均 (環境科学研究科)

論文内容要約

第 1 章 緒論 蒸留や再結晶では分離の難しい有機混合物の分離や光学分割法の開発は,工業的な有機化合物生 産の効率化において重要な役割を担う。近年では,エネルギーコスト削減の観点などから,多孔性固体材料を用 いた有機分子の捕集や分離が注目を集めており,活発に研究が行われている。ゼオライトに代表される一般的な 多孔性固体材料は,剛直で特異なチャネル構造を有する。また,ナノポーラス分子結晶 NMC は,ホストどうし の分子間相互作用により構築され,その多くが同様にチャネル構造を有する。従来,こうしたチャネル構造の分 子ふるい効果やゲスト分子との親和性の差を利用して,分子認識が達成されてきた。一方,NMC の中には,チ ャネル構造をもたず,結晶の構造変化を伴って有機分子を取り込むものも存在する(非チャネル型 NMC)。我々 は,この非チャネル型 NMC を用いることにより,包接結晶の格子エネルギーの差(熱力学的因子)だけではな く,結晶の構造変化に必要な活性化エネルギーの差(速度論的因子)をも利用して,ホストとゲストの単分子的 な相互作用では実現が難しい精密な分子認識が達成できることを見出した。例えば,p-tert-ブチルチアカリックス [4]アレーン(1)の結晶が,構造やサイズが類似し,分離困難な有機混合物から,一つ の化合物を高選択的に包接することを報告している。しかし,そのゲスト適用性および 定量性には課題がある。本研究では,第三成分による 1 の包接結晶の構造制御や,キラ ルな環状ホスト(-シクロデキストリン)および 1 の部分構造をもつ鎖状ホストの利用 により,ゲスト適用性を拡大する方法論の確立を目指した。また,分離への応用を指向し,定量性の獲得につい て検討した。 第 2 章 チアカリックス[4]アレーンのジエチルアミン塩の結晶を用いたアルカン,アルケン,およびアルコール の包接 直鎖/分岐アルカンの分離は,石油化学において重要である。1 は,メタノールとエタノールなど,ゲ ストの炭素鎖一つの違いを識別できるが,分子空孔が小さく,大きなアルカンは包接できない。1 は,アミンや カルボン酸の会合体で架橋された exo-型錯体を形成し,これが自己包接した結晶を与える。この結晶がゲスト包 接時に架橋構造を維持したままカプセル型構造などに変化すれば,その分子空孔を利用して,大きなアルカンな どを包接できると考えた。そこで,1 とジエチルアミンとの exo-錯体結晶 1·Et2NH を用いてアルカン,およびア 1

(3)

ルケン,アルコールの包接を検討した。1∙Et2NH の粉末結晶を,ジエチルアミンを添加したゲストまたはゲスト 混合液中に懸濁させた。この懸濁液を室温で 24 時間攪拌した後,1 H NMR で分析し,ホスト 1 分子あたりのゲス トの平均包接数(包接比) を算出した。1∙Et2NH は,1 のみの結晶では包接できない多くのゲストを包接比約 0.5 で包接した。また,1∙Et2NH は,ヘキサンとメチルペンタン,ヘプタンとメチルヘキサンなどの競争条件下で, 直鎖アルカンのみを 100%の選択性で包接した。粉末 X 線回折により,生成する包接結晶にはゲストの種類によ り 2 種類の構造があることがわかった。異なる構造をもつヘキサンおよびヘプタン包接結晶の X 線構造解析を行 った。ヘキサン包接結晶では,1∙Et2NH の結晶構造が維持されており,4 つの自己包接構造に囲まれた隙間にヘキ サンが包接されていた(クラスレート型)。一方,ヘプタン包接結晶では,期待したように,exo-錯体の自己包接 構造がカプセル型構造に変化し,その分子空孔にヘプタンが包接されていた。X 線結晶構造解析と,配座空間探 索プログラム CONFLEX を用いた分子力学法 MMFF94 による計算の結果から,カプセル型構造は主鎖長 C7–C9 の直鎖・分岐鎖アルカンを,クラスレート型構造は C7 以下の直鎖アルカンを包接でき,このため,上述の競争 実験で高い選択性が発現したことがわかった。本系のように結晶構造を第三成分により制御する方法は,非チャ ネル型 NMC を用いる包接において,ゲスト適用性を拡大する有用な手法となりうる。 第 3 章 -シクロデキストリンによるアミノ酸の不斉選択的包接 鏡像異性体の分離は,医薬品の製造などに欠 かせないプロセスである。鏡像異性体は,物理的性質のほとんどが全く同じであるため,分離には高い技術が必 要とされ,分離材料の開発が注目を集めている。これまでにも有機結晶による鏡像異性体の不斉選択的包接に関 する研究例はあるが,いずれもホスト結晶内のチャネル構造を利用したものであり,非チャネル型 NMC を用い た例はない。そこで,キラルな環状ホスト分子である CD に着目した。CD は,その不斉識別能について多くの 報告がなされているが,結晶中での不斉識別の例は少ない。この原因として,CD が多様な結晶系をとること, CD の分子空孔がゲストに対して大きく,鏡像異性体間で包接による安定性の差が生じにくいことが挙げられる。 当研究室では,-CD 結晶がロイシン(Leu)とピレン-1-スルホン酸(PyS)の 1:1 塩を,91.6%ee (L)の選択性で 包接することを見出しているが,そのゲスト適用性は十分に調べられていない。そこで,本手法の適用性と不斉 選択性発現機構について検討した。包接実験は,-CD の粉末結晶を,ラセミ体アミノ酸のスルホン酸塩の溶液 中に懸濁させ,30 ○C で 24 時間攪拌して行った。包接されたアミノ酸のエナンチオマー過剰率(ee%)は HPLC

により算出した。メチオニン(Met)とノルバリン(Nva)の PyS 塩の包接において,溶液中に PyS を添加する

0.50 a–

1·Et2NH

0.29 a– 1·Et2NH

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とアミノ酸の包接比は減少するが,不斉選択性が向上することがわかった。Leu/PyS 塩の包接について, およ び ee%の経時変化を調べたところ,どちらも時間経過とともに増加し,熱力学的支配により不斉選択性が発現し ていることが示唆された。また,溶液中における-CD と両鏡像異性体との会合定数は小さく,ほとんど差がな かった。したがって,高不斉選択的な包接は,結晶中でのみ起こることがわかった。結晶中の限られた空間で, PyS がアミノ酸の配座を効果的に固定することで,不斉選択性が発現したと考えられる。第三成分を利用して結 晶中でのゲスト分子の配座空間を制御する方法論には,ゲスト適用性の拡大と選択性の向上の両面から期待がも たれる。 第 4 章チアカリックスアレーンの部分構造をもつ直鎖型ホスト分子によるアミン異性体の包接 アミン類の異性 体は,沸点の近さ,極性の高さ,反応性の高さなどの理由で,蒸留による分離が困難である。環状ホスト分子は, 包接可能なゲストのサイズが分子空孔により限定されるが,直鎖型ホスト分子で環状ホスト分子に類似した包接 空間を構築できれば,ゲスト適用性の拡大が期待できる。このような考えのもとに,当研究室では,トルイジン 異性体をゲストのモデルとして,1 の部分構造をもつ直鎖型のホスト分子 2 および 3 をデザインした。そこで,2 および 3 のアミン類(メチルピリジン, メチルキノリン,4-メチルシクロヘキサンアミン)に対するゲスト識別能を 評価した。また,包接結晶からのゲストの分離・回収を検討した。包接実験 は,ホストと等モルずつのゲスト異性体を含む溶液にホスト結晶を加え,所定の温度で攪拌して行った。2 およ び 3 は,ゲスト溶液に一旦溶解した後に包接結晶として析出した。検討した 3 つのアミン異性体は,いずれも高 い異性体選択率(S%)および収率で 2 または 3 と包接結晶を与えた。X 線結晶構造解析から,2 および 3 のアミ ン包接錯体は,ホスト分子が 1 の cone や 1,2-alternate 配座に相当する構造をもつ 2:2 錯体を形成することがわか った。メチルピリジン,4-メチルシクロヘキサンアミンの包接結晶は,それぞれヘキサン,MeCN/H2O 中に懸濁 させることで S%を向上できた。包接結晶を溶媒に溶かし,アルミナカラムに通すことで 4-メチルピリジン(純 度 89%),2-および 6-メチルキノリン(94%,94%)を,硫酸を加えて塩として析出させることで trans-4-メチル シクロヘキサンアミン(87%)を回収できた(Scheme 3)。 -CD crystals ⊃ 92 %ee (L) Leucine salt ⊃ 86 %ee (L) Methionine salt (1 eq.)

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第 5 章 総括 従来,分離材料のもつチャネル構造を利用して多くの分子認識が達成されてきたが,高い選択性 と広いゲスト適用性の両立は困難であった。本研究は,分子性結晶による選択的包接のゲスト適用性を拡大する 新たな方法論を提示し,高選択性とゲスト適用性の両立が可能であることを示した。 selective inclusion 78%(trans-) 87% purity Host 3 (1 eq.) Recovery cis- trans-2·trans-4-methylcyclohexylamine trans-MeCN-H2O (1:2) 86%(trans-) Scheme 3 Isomer separation of 4-methylcyclohexanamine by inclusion with host 3

参照

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