五
井
蘭
洲
﹃
萬葉集詰﹄下︵翻刻︶
北
谷
幸
冊
萬葉集詰七八終 ニウ︶
︵内扉題︶ いきなへて 態 藝 事 爲 いしうら 石占と有。石にて占ふ也。灰占なとのこ 以 いはひふし いは発語。鹿は前足を折てふすものな とし。 一 り。うやくしきをいふことは。鶉も草陰をは いつきいます 人死して神としまつるなり。 69ひまはる故に、うつらなすいはひもとをりとい いゑさかり 吾家にとをさかるなり。 一 ふ。又いはひふすらめと云を契説に、鹿を射ふ いさよひ いさなふ也。やそとものを﹀めしあつめ せる也、いはひもとをりとは鶉を射て首をもと いさよひたまひと有。 らし置といへり。前後矛盾せり。まへの説をよ いゆきさたくみ たくみは路崎嘔たるをいふなり。 しとすへし。 いたとりよりて いは発語。手にとりよりてなり。 いはかくれます 人死して土石中におさむるなり。 いたはしけれは 疾病なり。 い はねさくみ 契云、岩根のゆかみまはりたるをふ いたき疵に辛塩そ㌔く みこゆる事かと。 いむ 斎の字也。かみさひていむと有。又、ゆふか いさり 潜の字を用ひたり。 けていみし 五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶
五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶ ︵ ニオ︶ あらそふをみるなり。こxは材木をはこふを見 や しろとも有。いはひ祭るこ﹀ろ也。是を人を るなり。 忌 きらふにかけてもいへり。 いよせたて㌔し いは発語也。借と竪と也。こxは い こしてうえし 梅をおこして吾宿に植たる也。い 弓をよせつたてつなり。 は発語。 いのねられぬ 不能寝也。 いたみく 物をおもへはつらくうれふる故なり。 いゆきさくみて ゆきなやむ也。さくみは崎嘔たる いさなみに 人をいさといさなふなり。 道也。それを直に行なやむに用るなり。 い つ かりませは いは発語也。つかりは袋のくちを いそはへ いは発語。そはへは戯なり。
錬のことくぬふを云と契説なり。しからはか﹀ ︵三オ︶ 一 りの事なり。かxりてひもを一所によせる也。 いなもうも いなはいや也。否也。うは諾也。契云 70
男女の一所によりあふ也。ひものをのいつかり 俗にいやおうと云也。 一 あひとも、つかりあひは相親しむ也。 いらなけく 勢のなき也。いさみなきなり。 いゑて 家出也。僧となるなり。 いきとほる 恨也。 い
もかいは﹀は
いこきわしらひ見安云、むつへる心也。季云、師 ︵ ニウ︶ 説こきは舟を漕よるなり。いは発語。わしらひ いきためかたく 息をためて居かたきなり。 は奔をいふ也。奔を妾とすとあれは私に夫婦と い む れ て おる 群居なり。 なるなりといへり。いか﹀あらん。 いさりつり 漁釣なり。 いふかしみ おほつかなく心もとなき也と、季説。 いそはくみる いそはくは、争ふなり。人のいそき いみしみ 忌きらふなり。いさはれ 禁し呵する也。しかりいましめらる﹀な 羽の下に置をく﹀むといふ。 り。 はり すみのえの岸を田にはりと有。墾の字也。田 い ふ せ し こ﹀うもとなきと、季説。いふせくもあ をすきかへす也。 るかの寄にては通せす。つらく苦しむごxうな はなしひ しは助字也。鼻ひる也。くさめ也。こふ るへし。 る人にあはんとては鼻ひる也。又、鼻しはなし ︵三ウ︶ ひとも。重ねことはにも貧窮の寄に出たること いきためかたき 息するまもなきなり。 はとあはせ考ふへし。 い は ひ ひもとかすいはひてまてとも、君か来ぬと はつとかり はしめての鳥猟也。萩を合せよめり。 なり。このいはひは後の事を兼ていのりいはふ 契云、大鷹のとや出したるをはしめてつかひそ 也。慶の字の心ならす祝のこxうなり。 むる也。小たかかりにはあらす。 71 は はひしてませは 火葬にして灰にするなり。 はやす さの﹀茎立おりはやすとあり。賞する也。 一 はふり 魂はふりと有。葬送なり。 仁 にくxあらは きらふごxろ也。にくxあらは也。 はひたもとをり みとりこのはひたもとをりとあ にふxにみえて にこくとわらふなり。 り。はひもつれるなり。 ︵四ウ︶ はつく事のおほからぬをいふ。稀に人にあふを になひあへぬかも荷澹を得せぬなり。 はつくにあひみてといふ。 にほはさましを 季云、にほふはあそふごxろ也。 はくxめ 吾子はくxめと有。鳥の子を育るより出 あそはしめんとなり。七夕寄にほひにゆかなと る詞也。 ある言も遊戯に行んといふ事と。 ︵四オ︶ にゐも新しき喪也。今死したることくといふこと 五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶
五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹂下︵翻刻︶ はなり。にゐものこともねなきつるかもとつ﹀ とりとxこほり 衣手にとりと﹀こほりと有。もつ く。 れ離れぬ也。 ほ ほころへと 誇り高ふるなり。又、ほこりとも有。 とかり 鳥を取猟なり。 鯛つりほこりと有は鯛をおほくつりてほこりよ ︵五ウ︶ ろこふなり。人にひけらかすならん。傲慢とは とものそめき 朋友つれ行てさはき楽しむなり。 か はれり。 とのこもり 殿にこもる也。こ﹀は人の死して電安 ほ つ て のうらへ ほつては帆手也。帆の綱也。うら に有をいふ。 へは占なり。手の占といふことある故にかく ち ぢはひたまひ祝ひたまひ也。季云、誓ひてなり。 つ xく、又、うらえをかた ちつにふし ︵五オ︶ ちはふ たまちはう、祝也。たまはほむる詞也。神 72
や きとは、昔鹿骨をぬき占ふ事ある故いふ也。 を尊ひいはふ也。 一 や きは焼也。いつれも火にてやきて占ふなり。 奴 ぬかつく 頓首也。[①ロ ほとくしにき わらひよろこふ見也。季云、ほと ぬる夜おちす 一夜もかけすあふこと也。 んと死にきと解り。 ぬすまはむ 霜食と書。いはすいひしと吾ぬすまは ほとけとも 長流云、欲する心也。見安云、ほとめ んとあり。言を食ふといふことし。いはぬこと けとも也といふ。さまくとするなり。 をいふと云、いひしことをいはぬといふなり。 反 へなりて 隔也。山川を中にへなりてと有。 を おもやめつらし 珍らしく封面するなり。 と とのゐ 侍宿と書。 ︵六オ︶ とひさくる 問ひ来る也。 お﹀し 雄壮なるなり。
お もひやる 思ふ心をやりすつる也。想像にはあら おもやはみえん 面影のみえんなり。 す。おもひをすこすもおなし。 おもへりしくし契云、日本紀に色の字をおもふと お か したまひて 置給ふ也。 よめり、おもひのいうに出る也。しくしは助語 お はせる みむろのや神のおはせるはつせ川と有。 なり。
帯にせるなり。 をのかむきくをのか様くといふことし。人
お もわすれ 人の面をみわするるなり。 くのむかひゆくさまなり。 お もかくし 恥る模様なり。 をやしときは 常なり。 お もふえに 契云、えは縁也と、愚説おもふゆへの ︵七オ︶ 暑語ならん。 おもふそら なけくそらとも有。 をつめ 小集楽と書。宴会の楽しひなり。 おほみこと 天子の勅言なり。 73 おりあかし 坐して夜をあかす也。こよひはのまん おほのひ 寛なることなり。 一 と有。時鳥に、こよひはなけといのるこ︾うか。 おるらくの おくかもしらすと有。居也。おくかは ︵六ウ︶ おく所なり。 おくりまをして 送り申て也。契云、古今集のはせ をしねり やき太刀のたかひおしねりと有。太刀を を拾遺集のこをはいの類也。愚案、契沖かな遣 押ひねりなり。又、おしにきるとも。 ひ にくxられてかくいふ也。はせをこをはいと おとつれ 音便也。凡の義と別なるか。 書か正なり。言葉にいふことくかけとならは此 おくてなる 人倫門に出。 とほり也。うの字にては言とちかふなり。 和 わかゆきは 吾行は也。旅行をいふ。 おもひたはみて こ㌔ろの屈するなり。 わきはさむ 児とつxく。 五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹂下︵翻刻︶五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶ わかへましけり 人のとしよらす若くみゆるをい 書。見安云、舟人の樟寄の声なり。 ふ。 かゆきかくゆき 彼往此去と書。 ︵七 ウ︶ かきはきて 塵を掃除する也。 わかxへり 弱反と書。又、わかゆとも有。石綱の かたちつくほり わか﹀へりと有。 かきわたり いかきわたりと有。いは発語也。かい わさとつくれる 吾職業としてつくる也。 にて水をかきてわたるなり。 わらはことする 老人の童子のことくなるをいふ。 かきかそふ かきは助詞、かそゆる也。 われしく 吾もく俗のわれめかす也。 か﹀うか﹀ひ か﹀うは、今云かけ合也。か﹀いは
わかせんひろをみもひともかも 本注に擢歌と書て、東俗語日賀我比と有。しか 一 わ れくれと らは、寄を人く 74
わひしみせんと 只わふる也。 ︵八ウ︶ 一 わ れ て 水 の 岩にふれてわれてそおもふと有。季云 かけ合にうたふ事也。契沖・季吟共にいやしき わ れ ては、わりなくてといふ。愚案、わかれて 寄の曲也と。 ママ の 中暑なり。岩にふれて水のふたつにわかるx かすかく 水の上にかくかくと有。 を吾さへらる﹀事ありてわかれたるにたとへて かたまりをる か﹀まり居る也。蟹にていへり。 い へるならんか。われてを かたまけて物の両方そろはぬ也。一方はかりまう ︵八 オ︶ けたる也。ゆふかたまけてと有は、晩にかたま わりなくてとはみかたし。 ちする也。晩に恋のこ﹀うます故なり。又、ま か か﹀い ゆふなきにか﹀いの音きこゆと有。擢合と たもあひみん秋かたまけてと有。秋をまつこ﹀
ろ也。時をまちまうくる也。いまたいたらぬ故 かとあらぬ 髭かきなてxと有。仙云、かとはよし 片といへり。 といふこと也。よくもなきと云事也といへり。 かりそけ むはらかりそけと有。苅除く也。 愚案上のしの字を取て か へりにたにも うち行立かへりになりともゆかん ︵九ウ︶ と也。 しかとあらぬにてはなきか。 か へ るまの かへる時の間なり かれ 衣手かれて独ねんかもと有。離也。ひとつに ︵九 オ︶ 寝し人のかへりて吾ひとりねんと也。 か つ らくは かつらにすらくは、柳を折て也。 かきつらね 季云、かいつらぬる也。夫婦うちつれ か ﹀ふり 蒙り也。御言か﹀ふりと有。 て也。 一 かなるましつみ 鹿の鳴く間猟者の静まりてゐる かxたぬ 人をかこたぬなり。 75
也。 かたはむ 人かたはんかもと有。季云、かとはかす 一 かくさう 隠し障ゆる也。こxには浪にて藻をかく 也。しかれは人のぬすみとる也。 す也。 与 よこもり よくこもる也。猪とつx<。猪はふしと か へさまに 今云かへさま也。却てといふごxろ也。 をよくこんもりとつくる故なり。 かまけ 負也。かは発語也。今東国に事おほきにく﹀ よこす 議の字也。人言のよこすを聞てとあり。 らるxをかまけといふ。 よすか 身をよするすみかなり。 かたらひ草俗にいふはなしのたね也。萬世のかた ︵一〇オ︶ らひ草と有。 よはひ 人の国によはひ行てと有。結婚と書。 からまる 君とつx︿。男女相なる﹀也。纒綿也。 よたち 後彼と書。えたちの事なり。 五 井蘭洲﹁萬葉集詰﹄下︵翻刻︶
五井蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶ よしをなみ 風流の二字よしとよめり。常に用る由 をありのま﹀にいふとなり。不詳。季云、君か の字の心ならす。畢寛みことになきをいふ。 ありさまなり。 よなき みとりこのよなきと有。嬰児夜哺也。 たかねて こしにたかねてと有。又、手束杖たかね よけくをみれば よくみれはなり。 てとあり。つかねて也と、愚案つかへてならん、 よここと 横さまの言也。かきほなす人のよこ﹀ 杖をつきはるなり。 と﹀有。 たxはてに 直に舟のとまりつくなり。
よそり恐れ也。又、外へよる也。わき道をせす来 ︵=オ︶
るをよそりなく通ふといへり。 たちあさり 立挙り也。又、たちをとりとも有。 太 たけはぬれ たけは手にたくる也。ぬれは髪の濡て た、こえのこのみち ますくにごゆる道也。山路也。 一 すへくとする也。たかねはいもかなかき髪と たまとをり 又、たもとをりとも。俳徊也。たちも 76有。仙云、ぬれはまとはるx也。 とをりなり。 一 ︵一〇ウ︶ たなしらす 契云、たなは軽の字を用ゆ、身もたな たけは、あくるなり。 しらすと有。身命をかろんして君に仕ふるこx た てまたす 君に仕ふる也。 ろ也。身をたなしりてとも、又、身ある事をも たむけ 地理門に委し。 しらす女子にまとふも同し事也。 たまつさのことくにつけす ふみをもおこさぬ也。 たつさいて 人々につれ立行也。たつさはりとも有。 たつきをしらに たよる方をしらぬなり。しらには たかいをしねり しらすなり。わつきもしらすと有心おなし。 たとくし たとる也。覚束なき也。たつくしと たxか 君かた﹀かと有。まさかと同し。君かこと も。たとるは手に物をとりゆくなり。
たまあへは たまは心也。人と吾とこxろのよくか たはことxかも 妄語也。戯言なり。 なふ也。 た﹀さにもかにもよこさも たつにもよこにもいか ︵ニウ︶ さまにも也。かにもを中へ入たるなり。 又、むつたまあへやとも有。 たx目にみけん 直視なり。 たかくに 来んと有。 たつらくの たつきもしらすと有。立なり。 た﹀ま 謀なり。 たきそなへ 契云、かすをかそふる也。たきは書あ − たちのいそき 旅立のいそき也。水鳥のたちのさは つむるなり。草花を多く植るをいふなり。手寸 きともあり。水鳥の水よりたつはさはかしきも 十名相と有。季説には
の故なり。又、さき守のた﹀んさはきとも有。 ︵一ニウ︶ 一 たちしなふ 立る容のしなかやなるなり。 童蒙抄を引て、手もすまと有。さは讃かたし。 77
たはxさ 戯の態なり。 たきそなへは仙点なり。仙説は、分明ならす。 一 たつる みつきと有。奉るなり。 曽 そくる かりそくると有。草を苅除る也。 たかてらす 吾日の本、又、吾日のみことつ﹀<。 つ つまひく 梓弓つまひくと有。つまむはつまをとる 天下に臨御し給ふなり。 也。弦と矢を指にてつまむ故也。季云、弦打の ︵一ニオ︶ こxろ也と云是なり。 たてまたす 遣使と書。 つまつく うかくありきてつまつくと有。 たゆたふ ためらふ也。猶豫と書。 つかみか﹀る いつこの恋そつかみか﹀ると有。人 たはやめのまとひ 女色の迷ひなり。 にとりつく也。こひのやつこのつかみか﹀りて たx た﹀にみわたすとあり。直になり。 とも。 五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶
五 井 蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶ つ まわかれ 妻別る﹀なり。 ︵=ニゥ︶ つ て こと 傅言なり。 なひき寝 人と共にいねたるなり。 つ ﹀む あまつxみ也。雨をつ﹀しむと契沖いふ。 なかきけ 長息の歎也。此詞になけくとほむる詞と 愚案には雨を の二義あり。 ︵ 一 三オ︶ なつさひ行馴れ行也。さそふ心也。鳥の群てゆく ふ せ くことか。 にいふ也。又、なすさひわたりと有。たつさへ つ ﹀まはす と﹀こほらぬ也。見案云、無志也。 て行なり。又、なつさふとも。 つ けなへて かくさす告るなり。 なxかしそね 泣ことなかれなり。 つ れもなき つれなき也。こ﹀うつよきなり。 なり 産業也。稼稿也。なりわひとも。 つくをり 形つくをりと有。形のくつをれをとろふ なかこと 間言也。人のなかこときけるかもと有。 78
る也。 二人の間のことをあしさまにいふなり。 一 祢 ねとりする ねとりと有。笛の曲也。又、うそふく なみしおもは﹀ 人並におもふなり。 声 をたとへて云。 ︵一四オ︶ ね の み や なかん あしすりのねのみやなかん。 なつむ 苦しむ也。煩の字をよめり、又、とxこふ ね らひ さつをのねらひと有。鹿をねらひ射る也。 る心にもきこゆ。 うかねらひとも有。うか﹀ひねらひなり。 なわひ わふる事なかれ也。うれふるなと也。 奈 なこす 和らくる也。ちはやふる神をなこすとあり。 なつかしみ せよとつ﹀く。垂替愛と云心也。 なつみくる 雪消の道をなつみ来ると有。しのき来 なつけにし 馴れしたしむ也。 るなり。 なくる 慰むる也。あそひなくると有。
なぞへ つ﹀みんとつ﹀<。なそらへてみんと也。 うつたをり 妹かてをとりて引よちうつたをりと なふる 大宮人はいまもかも人なふりのみこのみた 有。 るらんといへり。女子を男のたはふれいとむ事 うからふ 窺ふなり。 也。すへていはく今の人のいひなふるこ﹀うな ︵一五オ︶ るへし。 うそむき うそは虚也。むきは吹也。口をむなしく 武 むけ たいらくと有。平也。重ね詞也。敵をうち平 ふきいたす息なり。 くるなり。 うまいもねすて 不熟睡也。うまくもねすしてなり。 ︵一四ウ︶ うけひ いのるなり。又、誓ひともみるへし。呪な 宇 うちなひき いもねられすとつx︿。打解てのこ﹀ り。 一 ろ也。又、こやしぬれと有。へつたりと打臥也。 うなける うなかせると同し。飾るこ﹀ろ也。 79
又、やとる旅人ともつ﹀く。路にくたひれたる うらさひくらし 心さひしく也。又、うらかなしと 一 事とみえたり。 も。 うらなけをれは 心中になけきおるなり。 うはへなき 実情まてもなし。うはへ、おもてむき うらふれくらし 葉のしほれてたれたるをいふこと の心もなきなり。 は也。これを人のおもひになつみたるによせて うつてxは 打すて﹀なり。 い ふなり。 うれたきや なけかはしきなり。 ママ うつし 凡もの﹀色をおろしうつす也。水をもてす うつろはうき萩の花のうつろふをおしみて憂しと れは露をもみちのうつし。 ︵一五ウ︶ うかねらひ うか﹀ひねらふ也。 いふなり。 五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶
五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶ うらもなく いにし君と受たり。[②︺ のる 名はのるてしをと有。我名をいふ也。今名の
うへくな諾の字を用ゆ。けにもくといふご﹀ るといふか如し。
ろ也。 のれ いふ也。又、罵をもいふ。 うちはめて 吾身其事にうちこんてなり。 のませる 酒を飲む也。令飲と書たれと飲しむると うはふ 奪也。雪の色をうはひて咲る梅の花とあり。 いふにあらす、只のむなり。 うらまけて うらは心なり。まけては設けて也。こ﹀ のまん おりあかしこよひはのまんと有。郭公を待 うに思ひまうけてなり。 寄なり。のまんはいのる也。鳴声きかんといの うへはなさかり うへは表の字を用。外也。なさか る也と季云。 りは遠さかるな也。寝とこより外へのり出るな ︵一六ウ︶ ママ といふ也。 久 くも、おちす 隈々のこさぬ也。 80 うらさして 母はとふとも其名はいはしとあり。季 くに見 登高して眺望するなり。 一 云、今いふうらとふて見ると云ことのことし。 くちやます おもふ事を得いひやまぬ也。 ︵ 一 六オ︶ くりた﹀み たくりよせた﹀みよする也。道のなは うたこつ わかせと有。寄うたふ也。海中にてやる てをくりた﹀みと有。道をたくりてた﹀みよせ 方なく寄うたひなくさむ也。季云、ひとりこつ んと也。縮地といふことし。 と云詞のことし。 くそとをくまれ 大便を遠方へ行てせよ也。まれは、 うましもの よろこふへき物を見て、すへてうまし 便するをいふ。 ものと云。橘をさしてもいへり。 くすり猟 五月のほとのくすり猟と有。見安云、夏 及 のみ 神にごひのみと有。のみは祈る也。 の鹿狩なりと云。きそひかりも用し。くれしおもひ 欝の字を用ゆ。其心也。こ﹀ろのは は岩かくれといふ。 つ や 山かくれ 人の死也。山に葬る也。 ︵ 一 七オ︶ やまは﹀すへな 病はせんすへなきと也。 きりとせぬなり。 やさかのなけき 八尺の歎と有。なけきの多きなり。 くれく はるくのこxろ也。 杖たらぬやさかのなけきとは、八尺は丈にたら くすしみ くるしき也。あやにくすしみと有。 ぬなり。 くれしおもひ かきくらしおもふ也。心もくもりあ やさしみ 恥かしき也。君をやさしみと有。君を恥 きらかならぬなり。 るなり。 くもかくれ 雲隠と書。人死するを日月なとに比し 末 まくはし くはしく見る也。 一 て其よせを以て雲かくれといふはさも有へし。 まうらかなし 真に心悲しき也。 81
大津皇子臨終の寄に、 まつろはぬ 不順なり。 一 百 つたふいはれの池になく鴨を今日のみ見てや まねくゆかは 間無く行なり。 雲 かくれぬる ︵一八オ︶ 是等は何のよせもなし。元来雲かくれは隈かく まちつけ 待つxくなり。 れ なり。日本紀にやそくまちにかくれんとある まゆ根をいたつらにかく 又、まゆかゆみと有。こ 詞よりおこりて ふる人にあはんとて眉のかゆきなり。 ︵ 一 七 ウ︶ またす 人にをくるもの也。遣の字を用ゆ。 土 中にかくるx也。隈は土也。山に葬れは山か まいはせん 人に財宝を送るなり。 くれ、洲に葬れはしまかくれ、石中にほほむれ まろ寝 ひとりいぬる也。紐をとかぬゆへかくいふ。 五井蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶
五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹂下︵翻刻︶ まつりたす 奉り出す也。 さまと まけのまくく 大王のまけのまくくと有。まけ ︵一九オ︶ は任地。まくくは、まにく也。大君の臣下 いふ心にていつ方にも通すと也。 に任するに随ひて職をつとむる也。 まつかへり しゐにてあれかもと有。仙云、またれ まきたまふ 任也。君より任したまふなり。 てかへることたゆたひてあるかもと也。此解聞 ︵ 一 八 ウ︶ えす。愚案に、此寄は鷹のそれたる時の寄なり。 まきを﹀し 草木のたねをまきてはやす也。 鷹をまつもかへるといふも皆証言にてあれかし まゆすひ まむすひの事也。死結をいふ。 実に無き事にせまほしきと云こxうか。 まきて 岩ねしまきて死なましと有。まきてはまく まいる 入り来る也。なつみまいると有。まいいり 一 らにして也。枕といふもまくこxろ也。 とありて朝参と書。朝廷に出仕也。まい﹀りの 82 まかことかさかさまことか 狂言逆語也。わかき﹀ 君かすかたとあり。出仕の体也。吾はまいこん 一 つるまかこと﹀有。仙云、まかれるよし也。よ ともあり、参り来んとなり。 の つ ね に 人 の いまふことをまかくしといふ是 け けなかき 歎息するなり。長大息のこ﹀ろ。 也 といへり。 けや こxうもけやにおもふと有。心のきやくと まかひ 交る也。もみちのちりのまかひと有。 するなり。 またせは 君にまたせはと有。衣を君におくらはと ︵一九ウ︶ い ふ ご﹀ろ也。またすは奉の字を用ゆ。又、遣 不 ふりたるきみ 季云、久しく中絶たる人をいふと有。 の字をもよむへし。 しかるに振の字を用ゆ。吾をふりすてたる人と まさか 君かまさかを人の告つると也。季云、あり いふことならん。
ふきなす 吹鳴らすなり。 こやしぬれ こやは臥也。ふしぬれはと云心也。 ふりさけ 頭をあけてのそむ也。さけは遠き也。ふ ご﹀ろくしめくしもなし 心目ともにいやになき りさけて三か月みれはと有。 也。愛する心なり。 ふ たゆく うつせみの世やふたゆくと有。再往也。 こひしけは 恋のしけきなり。 死 してふた﹀ひ此世に行やと也。又、あふ夜あ ことxひ 言疾く也。はやくいひかはす也。 はぬ夜ふたゆくならんとも有。一筋ならぬによ ︵二〇ウ︶ りて也。季云、ふた行の詞をよませと讃、古点 ことさけは わさくと人をさくるなり。 なるよし也。 こひくさ 草にあらす、只恋の事也。
ふ ね たき やふねたきと有。浪風のあやうきを舟に ことなくは あふことのなきを琴にかけていへり。 一 て凌く也。いくたひもある故八たひといふなり。 ことたく こちたくとも有。世の人の言のおほき也。 83
︵二〇オ︶ ことのなくさ 俗にいふ口なくさみ也。人をなくさ 一 ふ しこえ 伏超従と書。ゆかまし物とつx<。 むるまてにおもふなとxいふまて也。 ふさへしに おさへなり。一国の鎮、まもり也。国 ことうえく 百済とつx<。くたらの人は言語通せ の守の役也。 ぬによりて、うえくといふ。契云、さえくなり。 ふさたおり ふさはおほき也。多くたおる也。又、 これらの説皆々今のうなるといふご﹀ろ也。 ふさすとも有。稲の穂の多をふさなりといふ。 こほしき 恋しきなり。 己 ことはかり よくせよと有。思慮計較也。 ことさへく 言ひさはくなり。 こち かよひ来ねと有。乞の字を用ゆ。我方へ来れ ︵二一オ︶ とねかふなり。 ころふせは ころひふす也。轄臥なり。 五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶
五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶ こxろふりおこし ますらおのこxろふりおこしと こ﹀うなく 心慰なり。 有。こxろをきつとはけます也。 こき 梅花を袖にごき入ると有。 ことむけ 帰服せしむる也。ちはやふる神をことむ ことのをのへす 言に得いひのへぬ也。口より言の け。 いつるにて緒といふ。緒よりのへるといふ詞成。 こきこな 契云、乞の字をこと讃り。萬葉集中乞を ことはたなゆひ 言のかろき也。たなは軽の字を用、 い て とよむ事多し。これもこきいてなといふ 契沖説也。 こxうかと云。 こちふり うちふり也。うちは策なり、策を打ふる こxうす㌔むな 心にいそく事なかれ也。こ﹀ろく なり。
きとも、又、くみとも。 ことはさけみさくる 契云、ことはさけはかたりさ 一 こひまろひ 契云、こひはこやしとも云。臥也。ふ けと讃へし。 84
しまろひ也・ 三ニオ︶ 一
ことてしは 言ひはしめたる也。 ともにかたりともにあひ見て愁をさくる也。 こ﹀ろくx 契云、︿xは含也。こ㌔うにふくみお こ﹀は田舎故其人なしと也。 もふ也。こ﹀ろくしとも。 こもにしは 篭りしは也。 ︵ 二 一ウ︶ ことx 事 と書。国の守にていは﹀其政績也。 こきのす﹀み 大舟のこきのす﹀み。進みこく也。 こつみ こすとつ﹀<。人の集りこぬことに見安に こちたみ 人の言にくるしむ也。人ことをしけみこ 解り。 ちたみとあり。 こ﹀うたらひに 心のま﹀也。こ﹀うに足るなり。 こxろゆも 心つよくもなり。 こきはてん 舟を漕ゆきてとまらんと也。こ﹀ろあること あたし心也。但萬葉集内にある寄 をぬくと也。又、うえし萩ともつ﹀けり。 に て 也。 てにすへ 鷹を手にすゆるなり。 ことたまのたすくる国 見安云、ことたまは詞也と。 ︵二三オ︶ 此 心 なれはた﹀ことはにあらす祝詞の事と聞ゆ てを折て 指を折てかそふる也。 る也。鬼神門に別の説あり、合せ考ふへし。又 てらさひあるけと 人にひけらかしありく也。針袋 説に来年の吉凶を見ん をさける事にていふ。 ︵二 ニウ︶ あ あちさはふ 季云、甘をあまき辛をからきとしるは とて岡にのほりて吾家をみるにことたまを詠 誠なれは、まことxいふまくらことは也、とい
り。この時は吉凶をことたまといふかことし。 へり。見安云、あちはふるにて、さは助字なら 一 江 えまひふるまひ 笑語起坐をいふ。又、えまひまゆ ん。又、夜昼とつ﹀く。麦の季注云、よきこと 85
ひ きとも有。 にいふことはなり。よと受て夜昼といふ也。又、 一 えたす 課役なり。揺役也。えたすはたらはと有。 目にはあけともとあり、季云、目に味はふ也。 課 役を多くはたりとる也。 しかれは、目に見あくなり。 えにかきとらん画に書とらん也。人のすかたをう あへきつ﹀ 喘声。 つすなり。 あてかをし あてかはし也。擬の字也。あて㌔見る 天 てふり都のてふりと有。都人の風もやう也。是よ といふ也。すみなはをあてるなり。 り言にも通して云。契沖夷曲をもて注するは分 ︵二三ウ︶ 明ならす。 あしすり 足をするなり。 てもすまに すまには隙なき也。手の隙なくつはな あきしこり あきは商也。しこりはしきり也。商實 五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶
五 井蘭洲﹁萬葉集詰﹂下︵翻刻︶ をしきりにする也。又、あきかはりと有。責買 しき也。 して半に変改するなり。 あふさはに 逢ことのおほき也。古注也。契云、大 あないきつかし患へ気つかはしきなり。 方と同し。おほなはともありといへり。 あえる 饗也。宴なり。 あたらし 惜むへきなり。 あせかき なけきねとりするうそむきのほりおのう ありなみ 一所にありならふ也。 へ を。山にのほるに汗をかき笛ふくことく息を ︵二四ウ︶ ふ き出すなり。 あくまてに 心にあきたるまて也。
あらかへは争へはなり。 あめしられん人の死するをいふ。魂の天にのほれ
あしうら 足をもて吉凶を占なふなり。 は、天にしらる﹀なり。 一 あかう 命はいもかためと有。贈なり。 あふりほす 雨にぬれたる衣をあふりほす也。火を 86 あむさん 湯をあひせんなり。 以てほす也。 一 ︵ 二 四オ︶ あもりまし 天神の下り坐ますなり。 あはすまにして 不逢して也。こりすまなとの類也。 あひき [③] あそふさかり 遊楽の最中なり。 あひたはけ[④] あひしえみて 相笑語也。ともくに楽飲する也。 あともひ 皇軍をあともひたまひと有。いさなふ心 あてさはす 契云、わつらはさすといふご﹀うか、 也。誘の字也。季云、あつむ也と。又、たてx 民 を累はさぬ也。季注同し。 ともつ﹀く。季云、今はた思ひたちてなり。又、 あとりかまけり 国めくるあとりかまけりと有。 てとなかりも有。跡思と書。いにしへをおもふ ありかてまし 在かねまし也。吾身こxに得をるま ならん。愚案には、ともなふへきか。あは発語也。ともなふの暑成へし。契云、誘 に海人とか見らん ︵二五オ︶ とあれは、此あさりは遊行の事也。尤湾廻とか のこ﹀うもこもれり、あともへかへるとある。 けり。 季 注は、哀れとおもへといへり。寄を通て解を 左 さもらへと 侍へるとなり。 なすなり。 さかしらす かしこたてをする也。又、さし出かま あさり 島廻とも書。求食とも、朝入とも書。季云、 しきともみるへし。 朝すなとりするをあさりと云と、此説いかxあ さひつxをらん 淋しくおらんなり。 らん。求食と書たるあさりは鶴にていへは鳥の さとれさはかり 長流云、人の心にかはりて神の能 食 を求る也。其他のあさりは別議あらん。萬葉 さとり給へと也。分明ならす。 矛七、 さけひをらひ さけひおめくなり。 87 黒 牛の海紅匂ふも﹀しきの大宮人しあさりすら さねかには いぬるからはといふ心。さは発語、ね 一 しも は寝なり。 なとあるは、た﹀海邊にあそふ事とみえたり。 さかみつき 酒宴也。あそひなくさむとつ﹀く。 朝入りと書り。又、やまのへにあさる薩男と有。 ︵二六オ︶ 童 蒙抄云、あさるは狩也と。これによれは魚に さはえなすさはく 五月の蝿のことくおほくさはく ても禽獣にても取る事をあさるといふ也。射去 なり。 と書。仙点はいゆく也。又、十八巻に、 さやき さはく也。戦也。 ︵二五ウ︶ さわたる さは助字也。月の雲間を行をいへり。愚 ふち浪をかりほにつくりあさりする人とはしら 案さはやきなり。雲間の月は早く行ことし。 五井蘭洲﹃萬葉集詰﹂下︵翻刻︶
五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶ さね わすられすと有。さねは実也。まことにわす てを季説に央過なり年の半過て老しなり、とい られぬなり。草木の種の中に根となるへきちひ へり。 さきもの有。是をさねといふ。小根也。これか 幾 きそへとも 衣を著襲ふなり。 根 本 となりて草木の芽は生する也。人のまこと ︵二七オ︶ の こ﹀ろは人の根本ゆへ人にていへはまこと きるみなみ 錦繍ありて著る人のなき也。 也。故に、中庸に誠物之終始不誠無物とみえた きかみたけひ 牙をかみたけりいかる也。 り、ありかたき事也。 きそひ猟 くすり狩の事也。四五月の間にするなり。 さしまくる 指向ふなり。 き﹀のかしこく 耳におそれきくなり。
︵二六ウ︶ きほひて 雪にきほひて梅の花さく也。あらそふ也。 一 さやり 擬り。さ﹀えらる﹀なり。 まけしとはりあふなり。 88 さよとふわかせ 夜中に来りとふ吾夫なり。 由 ゆくさくさ 往来也。又、ゆくさもくさもと有。 一 さた ことそさたおほきと有。さたは人の言也。今 ゆうけとひ 夕衡占問と書。ゆふへのつしうらなり。 いふ沙汰の俗言は是よりいつるか。さたの訓い 又、あしうらともつ﹀<。 か xならん。未考。愚案、貞浦の此さたすきて ゆくさ 行さき也。又一説、ゆくさまなり。 後 こひんかもと有、さたはさは也。言ひさはく ゆきあひ 道にて両方より行あふなり。 る里人のいひさはく事のやみて後にごひんかと ︵二七ウ︶ 也。季云、師説にさたは甚也といへり。通せす。 ゆめのあひ 夢に人にあふなり。 見 安 云、人に沙汰せらるるといへり。沙汰の字 ゆきちう 行といふ也。ゆきちう人とつ﹀く。 をあつるはいかx、沙汰はえらむ也。さたすき ゆめのわた ことにしありけりとつxく。
ゆふとりして 契云、して﹀は鎮する也。神の慮を 禮とみるな也。季云、あやしくもみるななりと。 なくさめしつむるなり。それをすくにゆふの名 めをほり 見んことを欲する也。人をこふるに云。 の ことくにもすと也。愚案、して﹀はしけき心 鹿を欲するにもいへり。 ならんか。 めすらめや 呼召なり。 ゆきふり 道行ふりと有。道を行折から也。 ︵二八ウ︶ ゆxしく おそれいむへきといふ心也。いみはxか めならはす 人の目おほきをめならふと云。しかれ る也。 は是は、吾ひとりのこと也。又、あしき絹を買 ゆるうときなく ゆるす時なく也。おこたらぬなり。 たるなれは目き﹀を得せぬことか。みる事に習 ゆり 寄を謡ふ時声のゆる也。百合にいひかけたり。 ひのなきならん。 ゆかしみ 情欝恒と書。心のうつとうしきなり。 めくまんと 愛する也。恵得と書たる故、季云よし 89
︵ 二 八オ︶ えやしと一本に讃るを善といへり。又、めく﹀ 一 ゆきのす﹀み ますらおのゆきのす﹀みと有。男子 や君かと有。慰の字を用ゆ。めつる也。恵の心 の 勇壮をいふ。ゆきは靭をいひかけたり。 にあらす。 ゆきとりさくり 泣子なすゆきとりさくりと有。泣 めかりしほやき 草木部に出。 子 の 人 にとりつくならん。季云、ゆきを靭とい 美 みことかしのみ すへらきのみことかしこみと有。 ふ は誤ならん。 天子の命をつ﹀しむなり。 女
めかれす絶すみるなり。 みおもひさきの人の思ひをおもんする詞也。
めさす 召上るなり。 みたまたまひて みたまは、御賛也。たまものをた めくしも見るな みくるしと見るなといふ心也。無 まふなり。 五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶五 井蘭洲﹁萬葉集詰一下︵翻刻︶ ︵二九オ︶ みけ 御食と書。食する也。仙点にめして也と有。 御 恩を下したまはり也。 みかてり 山の上のみ井をみかてり 又、穂むきみ みゆき 君と時くみゆきしてあそふと有。これは かてりと有。見かてら也。検税使なとの稲の出 人磨明日香皇女をいたむ寄也。みゆきは、天子 来を見てから也。 に か きらぬことはとみえたり。 みつれにみつれ 身のつかる﹀也。契云、日本紀顧 宮にゆく宮仕に行なり。 の字をみつれとよめり。季云、みたれ也、みた み か ほし 山もみかほしと有。見まくほしき也。一 れ思ふ也。又、おくらんいもはみつれてもある 云、山のしけりたる也。 かと有。吾を思ひやつれてもあるかなり。季云、 み かさらん 身をかさりけさうする也。女子にて云。 此説分明ならす、師説とてみえるにてもあらん 一 み のり 御法也。官禁也。法令なり。 か也といふ、誤れり。 90 みなうら 水占也。石占、足占なと也。水にて心の ︵三〇オ︶ ﹁ 占をする也。 みたま まへに注す。 み や て 官府に出て仕ふる也。しりふりとつ﹀く。 之 しきます 天下を治むる也。 しりふりは しこりこめやも 人のしきりに来れやと也。 ︵ 二 九ウ︶ しまかくれ 人の死して嶋上に埋むをいへり。 官府の事を能しるなり。 しはふれつくれ 地にふしてといふごxろ也。つく みくさ すへらみくさと有。皇軍也。くさは、軍管 れは、告る也。 也。 しゐにてあれや 又、まつかへりしゐにてあれやと みたちせし 御立也。貴人のたち給ふ所也。 有。
しみにし心 馴染たるこ﹀ろ也。 三=オ︶ しひ言と 人にしゐす﹀むる言也。 しくひあひ 季云、男女のしくみあへるなり。 しゐてはまうせ 契云、しゐやはまうす也。いをて しなへ 君にごひしなへうらふれと有。しなひとお とよめるは旧点の誤り也。移をやとよめる事お なし文字にていは﹀萎の字也。やはらかにへた ほし。こ﹀は、いをやとよむへし。 くとしたる事也。君をこひて形のくたひれて ︵ 三 〇ウ︶ ちからなき也。ちからなき貞と注するか、とこ しな﹀とおもふ 死なんとおもふ心也。 へも通してよし。諸説言葉の根本をせんきせす したうれしけん 心中にうれしくおもふなり。 其所によりて注するゆへ不通の所あるなり。 しふ しはくしふと有。強るこ﹀ろ也。 比 ひつちなく 土をうちた﹀ひて泣也。契云、泪にぬ しこ ほとΣきすと有。しかることはなり。みたく る︾なり。 91
もなきといふ俗言なり。 ひけかきなて﹀ 髪掻撫也。此句の寄、上二一二句と 一 しめゆう 季云、領し置こxろ也。 もに通せす。 しはふかひ しはふき也。せきはらひ也。しはふれ ひとときさけて 衣のひもをむすふ間もなき也。又、 つくれと有。鷹のそれたるをめいわくしてせき ひもの緒ときといふは、こxろをゆるすことな はらひはかりするなり。 り。 した夜の恋 色に出す下に夜おもふ恋也。 ︵一一=ウ︶ しなひ 私はきのしないと有。たをやかにしなひた ひりひてゆかな 玉を拾ひてゆかんなり。 るなり。女子の上へかけて、やさしく見ゆるな ひきのまにく ますらおのひきのまにくと有。 り。 婦人の夫に従ふなり。ひきはひきゆる也。 五 井蘭洲﹁萬葉集詰﹂下︵翻刻︶
五 井 蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶ ひ もときまけて ひもときてまうけまてなり。 ふごxろ也。 ひともねの 季云、人の思ひの根といふ事かといへ もころを 同しさまなるをいふと也。分明ならす。
り。いかxあらん。ひとりねの誤りなるか。 世せてうゐてこす水のせてうと有。季云、せは諾の
ひ ﹀しひしにし 季云、上のひは鼻の字なれは、は 字也。川浪の瀬と受て心得たりといへとも、と なと讃てはなひる事といへり。しからははなひ かくにあはぬと也。せといふにもなり。 しとよみて、下のひしは術文なるか。 ︵三ニウ︶ ひりひとり いもにやらんとひりひとり袖にはいれ すへをしらす と﹀あり。反寄に、白玉ひりへれと有。ひろへ すなとれる もふしつか鮒と有。 れ と也。拾ひ取也。 す﹀ろひて うちす﹀ろひてと有。す﹀り飲む也。 ︵三 ニオ︶ すたく 集る也。鳥はすたくと有。 92 毛 もえす 心はもえすと有。こ﹀ろのもたゆる也。 す﹀しきをい 進み競ひ争ふ也。 ﹁ もなくゆかん もは喪の字を用ゆ。わさはひをいふ。 すりなく 静なる心もなく也。こ﹀ろの落つかぬな 志なく行也。人の死するもわさはひなる故に、 り。 もといふ。 すえのたねから 季云、末を先と見て先世の宿業ゆ も﹀ひしなへて 思ひなへて也。 へといへり、いかxあらん。見安云、こ﹀ろの もたもあらん 黙する也。ものいはすあらん。無事 たねからといへるもいふかし。 なるをいふ。 ︵三三オ︶ もたえあらす 黙不也。いはすしてあらす也。又、 もたあらしとあり。かくのみにてはやましとい 盧詞助辞以 いさ 縦の字を用ひたり。縦然の心なれはたとひと 注也。季云、いと﹀しく也。 同し。契云、是をいさと讃は誤也。よしと讃へ いさ﹀め いさxか也。又、かりそめと云にも通す しといへり。必しもしからす。いさといひて、 と契云。 よしの心になる也。尤此いさは、さの字 にこ いちしろく 色のはつきりと白き也。 るへからす。又、不知のこxうにあらす。さを いくたもあらす いくたひもあらぬ也。まもなき也。 にこれは誘ふ也。不知の心あるは如何也。かと いつきく つきく也。相績不絶也。いは発語。 さと通すれはなり。 いさとをきこす わかなはつけなとつx<。契説不 いさ ごよひの雪にいさぬれなあけんあしたにけな 分明也。
はおしけん。このいさは率也。人をさそふ也。 ︵三四オ︶ ﹁ いまた 未なり。 いなをかも いな、さにはあらぬかなり。 93
いつもく 契云、こ﹀はいつ也ともといふ心。よ いかにせる 如何なるといふことは也。 一 のつねの心に非す。 いたみ 甚也。あゆみをいたみと有。あゆは東風也。 ︵三三ウ︶ 東風のはなはたしきなり。 いましはと 今はとての心也。又、今しはしとも有。 いやしけれと 雨にぬれていやしけれと也。しほた いふかし 不審也。又、別の心のいふかし有。欝々 れむさき心。 とし不楽のこxうに用。 いさなみ 率の字を用ゆ。季云、すみやか也。 いて 乞ふ心也。又、発語のことは。 いはみて 満ζておほき也。 いとのきて 最ぬきん出て也。又、毛なとのぬけた 者 はしきやし 又、はしけやし、又、はしけよし、皆 るをもいへり。又、いと﹀の心にも用。己上契 同し。諸説おほし。はつきりと見事といふにて 五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶
五 井蘭洲﹃萬葉集話﹄下︵翻刻︶ 大概通すへきか。愛の字を用ゆ。愛しめつる也。 のすへもすへなさ 契云、はしきよし也と。しかれは寄によりてう ︵三五オ︶ るはしきとも、みこととも、愛するとも、 はしきやししかある恋にもありしかも君にをく ︵三 四ウ︶ れて恋しき思へは めつるとも、心を取へきか。日本紀の釈には端 はしきやし翁の寄にお﹀をしきこ﹀ののこをや 清と書て褒美のことはと有。 かまけてをらん はしきやしまちかき里を雲ゐにや恋つxをらん はしきよし吾家のけもxもとしけく花のみ咲て 月もへなくに ならさらめかも 此 季 注、喜撰式に女をいふと俊頼髄脳、椅語 はしけやし家をはなれて 抄、奥義抄等此説を用。袖中抄に、物をよし 此季注、よしとほむる詞也。王命にて家を離 94 とほむることは也。皆寄によるへしといへり。 れ新羅に行をほむる心にや。一説、はしけく 一 又、はしきこと有。女をほめていへり。 と同し。日本紀私記に哀といふ語と。 はしきやし誰すへてかも玉棒の道わすられてき 右此寄等にて見れは、うるはしきはさきの物に み か 来 まさぬ ついていふ也。愛の字の心なれは、吾こxうに あすか川萬代まてにはしきやし吾大君のかたみ 愛するものなり。 はこ﹀に 又、はしきとはかりも、 石 はしるたるみの水のはしきやし君か恋ふらく 昔こそ鯨所にも見しかわきもこかおきつきと思 吾 心 か ら へははしきさほ山 はしきやしかくのみからにしたひこしいもか心 ︵三五ウ︶
玉 松かえははしきかも はら﹀にうきてといふ。俗に、はらりといふ。 此 注にうるはしき也。愛の字を用ゆ。 二 にほす にほはす也。香をあらしむる也。 又、季注に袖中抄を引て、萬葉抄帝のもとへ来 にきひにし 契云、和する心也。家ともつ﹀<。す るをいふ也と。今案するに、是は朝来と書ては みなれし家にてと云。季説、饒はひし也と。 しきよしとよみたれはいふなめり。 本 ほの 朝きりのほのとつ﹀<。霧にて物の見えかた はしき 右に注す。 き也。ほのかにおほろなるこ﹀ろ也。 はしこやし 本文よしえやしとよみ、文字は級子八 ︵三六ウ︶ 師と書。契云、是はよしえやしとよめとも誤な ほとくしけに 殆の字を用。又、ほとくとはか りといひて、はしこやしの解はなし。 りも。 はし あらそふはし也。間の字を用ゆ。争ふ間にな ほとろく はたらくと同し。はたらは、またら 95
り。 也。斑也。あは雪のほとろと有。雪のある所、 一 はし はしたといふ心也。人に交はらす独居るは人 なき所あるをいふ。 に封せす ほのめかし 朝霧のほのめかしと有。髪髭の字を用 ︵三 六オ︶ ゆ。人の死して精神の髪髭たるをいふ。 はしたになる也。 反 へつかうこと 契云、隔つるなり。 はた 将也。はたやこよひも。 へなり 天漢へなりと有。へた﹀る也。 はなやかに 紫の練の蔓のはなやかにと有。 止 ときしく 季云、時なく也。又、とこしなへ也。垂 はろく 遙ζなり。 仁紀不時香菓をときしくのかくのみとあり。 はら﹀ はなれく也。舟のあちこちうかめるを、 ともし 少き也。紀人ともし、又、みれはともしと 五 井蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶
五 井 蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶ は、見たらぬ也。紀人ともしの季注面白しとい 有。 ふ 也と、またとのしくとも有、 ︵三七ウ︶ ︵ 三 七 オ︶ とこなつに 常也。なつは助語也、義なし。ふりを 乏き也。 ける雪のとこなつにけすてわたると有。 ママ とをよる 遠さかる也。 とをらふ 見んはたあり。とをく見る也。 とをしろし 大なる事なり。 千 ちえのひとへ 千の内のひとつも也。 とさまかくさま 曲ζと書。是を契沖、つはらく ちふ 手にまかんちふと有。てふと同し。といふの と讃へしと。 合せたる也。 とこよ 只常也。よに義なし。又、とこしくともい を おそ たはれおと有。契云、おそは東俗の語也。き 一
と﹀誘賢;⋮によする浪と蔓回霞霞遵懸蕾索が︰↓
とxとはかりも、馬足の音にいへり。馬の音の と云は、うそ也といふ心也。お﹀うといふ例多 とxともすれはとあり。 し。常世辺に住可物を剣刀さかこxうからおそ と﹀なふ 事の成就するを云、今もいふ詞也。鹿の やこのきみ、とあり。是は浦島か常世にて箱を 妻 と﹀なふと詠り。をのかこふるつまにあひた 授りし時、これをひらくなといへるをうけかひ る也。 たるに、故郷へかへりて其約誓を変し とよ 鳴るひ﹀き也。いな山とよに行水とあり。と ︵三八オ︶ よみの暑也。 て箱をひらきたれは、老人となりて死したるを ともしきに 常ζ頻≧也。ともしきにみつ﹀過行と よめる寄也。おそは、実なき也。ひらくましとちかへる箱をひらくは実なき也。是己かこ﹀ろ おほのひに 大きにのひやかなり。 からもとの凡骨になりて死したるなり。宗紙説 お﹀りにお﹀り 春されはお﹀りにお﹀り。季注上 に、そらこと﹀いふに同しといへり。愚説と暗 りにのほり也と。鶯の高きにのほる也といへり。 に か なへり。或云、おしむのこ﹀うといふ一説。 おきまへて 契云、とをき深きをいふ。をくまへて お ほ つ か な とよむへしと。おきまけてともあり。おく深き お ほ ﹀しく 覚束なき也と旧解に有。文字は欝恒と こ﹀ろ也。 あれは心のうちとけすうれふる義也。又、不分 おそや 心のおそき也。遅鈍をいふ。 明白ハ。 おくかなき 又、おくかもしらすとも有。季云、そ お ほ 凡の字也。又、疎の字をも用ゆ。よそに見な ごゐもしらすと同。 すをおほに見しと有、契沖説。 ︵三九オ︶ 97 およつれか 凡そ也。 おやし 同し也。こxろはおやしと有。 一 ︵三 八 ウ︶ おつつ 現也。今のをつ﹀とつxく。眼前の事をい おそろ 仙云、空言也。東語也。しからはうそとい ふ。 ふ事也。ろは助語、うそ也。をそのたはれをお おきうなき 深からぬを云。海の沖もふかき故なり。 もひ合すへし。 おほなは 八雲云、おほかたといふご﹀ろ。 おき末の事をいふ。おくとも有。今より末のこと おもやは 見安云、よもや也。おもやは見えんと有。 也。 まつ人のよもや来らんとなり。 お ﹀うかに おろそか也。おろかにそ吾は思ひしと をうか をうかにそ吾は思ひしと有。疎也。愚にあ 有。 らす。 五井蘭洲﹃萬葉集詰﹄下︵翻刻︶