第6回群馬血栓症研究会
日 時:平成 20年 2月 15日 (金) 場 所:群馬ロイヤルホテル 代 表:野島 美久(群馬大院・医・生体統御内科学) 当番世話人:竹吉 泉(群馬大院・医・臓器病態外科学)一般演題>
座長 岡田 秀一(群馬大院・医・病態制御内科学) 1.急性期脳梗塞に対する rt-PA静注療法 佐々木奈都,田中 志岳,本多 文昭 橋場 康弘,藤巻 広也,朝倉 宮﨑 瑞穂(前橋赤十字病院 脳神経外科) 水島 和幸,針谷 康夫 (同 神経内科) 当院は高度救命救急センターで 24時間撮影可能な CT・MRI を備え,脳神経外科 6名・神経内科 2名の 24時 間体制で年間約 250例の脳梗塞診 療 に 携 わって い る. 2005年 10月に rt-PA 静注療法が適応となって以来, 急 性期脳梗塞治療の改善に大きな期待がもたれるように なった. 当院で 2005年 11月∼2007年 6月の 1年 8ヶ月 間に急性期脳梗塞で入院加療を行った 414例のうち, rt-PA 静 注 療 法 を 行った 症 例 は 23例, 全 症 例 中 5.6%で あった. 来院時 NIHSSは平 14.7点 (4∼32点), 病型 は心原性 12例, アテローム血栓性 10例, ラクナ梗塞 1 例と診断され, 責任血管は中大脳動脈 14例, 内頚動脈 5 例, 脳底動脈 3例, 穿通枝 1例であった. 退院時 mRS0 2 の転帰良好例は 8例 (34.8%), NIHSS4点以上改善した 有効例は 6例 (26.1%) で, 全体の 60.9%に治療効果を認 めた. 早期来院」するよう市民への啓蒙, 適正な医療機 関の選定」・「早期搬送」を意識したプレホスピタルケア, 来院から治療開始までの時間短縮が今後必要と えた. 2.脳塞栓症を契機に診断された左心耳内血栓がワー ファリンによる抗凝固療法により消失した持続性心房 細動の一例 太田 昌樹,金古 善明,根岸 一明 齋藤 章宏,新井 昌 ,長谷川 昭 倉林 正彦 (群馬大院・医・臓器病態内科学) 61歳女性. 1995年より持続性心房細動に対し近医よ りジゴキシン, ワーファリンを投与されていた. 2006年 1月に心室細動発作出現し, AED により除細動された. 心室細動既往例として除細動器移植術を予定していた. しかし,当院転院時より書字・読字・手指失認を認め,頭 部 MRI で左側頭葉を中心に多発性脳梗塞を認め Gerst-mann 症候群と診断した.ワーファリン 4 mg/日服用して いたが入院時には PT-INR 1.16とコントロール不良で, FDP 24.4μg/ml,D-ダイマー 14.6μg/mlと上昇していた. 経食道エコーにて左心耳内に 19.1×14.5mmの血栓を認 め た た め, 脳 塞 栓 症 と 診 断 し た. ワーファリ ン 2.0 ∼4.5mg とパラミジン 1Capの併用投与により PT-INR 2.0以上にコントロールした. 血栓は徐々に縮小し, 抗凝 固療法強化 3ヶ月後に血栓は消失した. 持続性心房細動 症例におけるワーファリンによる至適コントロールの重 要性が再認識されたとともに, 左心耳血栓の消失までの 経過を観察し得た貴重な症例であった. 3.最近当院で経験した術後のヘパリン起因性血小板減 少症の2例 内海 英貴,馬渡 桃子,野島 美久 (群馬大院・医・生体統御内科) 家坂 直子,平川 隆 ,峯岸 敬 (同 生殖再生 化科学) 家田 敬輔,中島 正信,加藤 広行 桑野 博行 (同 病態 合外科学) 【はじめに】 ヘパリン起因性血小板減少症 (Heparin In-duced Thrombocytopenia: HIT) はヘパリンと血小板第 4因子 (PF-4) の複合体に対する抗体が生じることで, 血 小板減少や血栓症を合併する疾患である. 最近ヘパリン の 用頻度が増加するにつれ, HIT の報告も増えており, 当院でも術後に HIT を生じた症例を経験したので報告 する. 【症例1】 57歳, 女性. 卵巣癌疑いにて当院産婦 人科にて手術を予定していたが, 下肢が重いとの訴えで 来院. CT にて肺血栓塞栓症, 両側下 の深部静脈血栓症 が認められ入院となった. 第 1病日から第 6病日までヘ パリン投与され, 第 7病日に卵巣摘出術施行. 第 8病日 よりヘパリン再開したところ, 第 15病日に急激な血小 333 Kitakanto Med J 2008;58:333∼334板減少を認め当科にコンサルト. HIT と診断し, 即座に ヘパリンを中止し, 同日よりアルガトロバンによる抗凝 固療法を開始. 新規の血栓症の合併なくワーファリンの 内服に移行し退院した. 【症例2】 60歳, 男性. 食道癌 の手術目的にて当院第一外科に入院. 第 8病日に食道全 摘術, 胃管再 , 3領域リンパ節郭清を施行. 術後血栓症 予防のため第 12病日よりヘパリン投与開始. 第 15病日 に急激な血小板減少を認め, 当科コンサルト. HIT と診 断し, 即座にヘパリンを中止し, 同日よりアルガトロバ ンによる抗凝固療法を開始した. FDP, D-dimerの上昇 が認められ,血栓検索 CT を行ったところ,下行大動脈に 壁在血栓を認めた. 同様にアルガトロバンの投与とその 後 に ワーファリ ン の 投 与 を 行 い 退 院 と なった. 【結 語】 血栓症予防ガイドラインが広く普及し, 術後の血 栓予防のヘパリンの 用頻度は益々増えていくと思われ る. 医療従事者はヘパリン 用時の血小板数のモニター を行い, 重大な副作用である HIT が生じた際には病態の 認識と適切な対処が望まれる. 4.血栓検出における MRI拡散強調画像の有用性の検 討 天沼 誠,岡内 研三,清水 晶子 掘底 絵里,徳江 浩之,岩宗奈津美 対馬 義人,遠藤 啓吾 (群馬大学画像診療部・核医学) 【目 的】 血栓検出における MRI 拡散強調画像の有用 性の基礎検討. 【方 法】 ボランティアより得た静脈 血を 用した. 血液, ヘパリン添加血液, 50%希釈血液を 採血後 30 から 30日後までの 15point で MRI 撮像を 行い,見かけの拡散係数 (ADC) の変化を観察した.同時 に T2緩和時間, TI 強調画像での信号雑音比の推移を観 察した. 実験は 1.5T MRI で行った. 【結 果】 いずれ も採血後短時間から著明な拡散の低下がみられた. 血液 で 2時間後,ヘパリン加血液で 12時間後より ADC が 0. 5×10 mm /s以下となり,拡散強調画像で容易に検出可 能と えられた. また, 生理食塩水と血液のコントラス トは b値とともに増加し,b=1000s/mm 程度での撮像が 臨床応用上妥当と えられた. 【結 語】 急性期, 亜急 性期の血栓検出に対し拡散協調画像が有用であることが 示唆された.