健常成人男性における非荷重位および荷重位での中殿筋前・中・後部線維の作用比較
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(2) 68. 理学療法学 第 45 巻第 2 号. 位での各線維の関節運動に及ぼす影響を検討しており,. 荷重位での課題では深層組織の方が有意に先行して収縮. 前部線維・中部線維はともに,内旋方向のモーメント. していたと報告している。一方 Cowan らは,健常者群. アームベクトルを有しているが,後部線維は外旋方向の. と膝蓋大. モーメントアームベクトルを有していると述べてい. 前部線維と後部線維の収縮のタイミングを比較している. る. 12). 。また Bremker らは,MRI を使用して中殿筋の. 部痛症候群患者群において,階段を昇る際の. が,どちらの群でも線維間で有意差はなかったと報告し 19). 。. 扇状の走行を考慮した 3D モデルを計算し,解剖学的肢. ている. 位での中殿筋全体が関節運動に及ぼす影響を検討してい. 以上のように中殿筋の各線維の活動については様々な. る. 13). 。その結果,内転方向に働く線維はほとんど存在. 議論がなされているが,一定の見解は得られていない。. しないものの,屈曲へ働く線維と伸展に働く線維が存在. 特に荷重位では動作課題による比較・検討が多く,股関. し,内旋に働く線維と外旋に働く線維が中殿筋内に混在. 節の運動方向に主眼を置いた研究は渉猟した限り見当た. していることが示されている。小栢らも股関節中間位に. らない。そこで今回の研究目的は,表面筋電図を使用し. おける中殿筋の各線維の関節運動へ及ぼす影響を,数学. て非荷重位および荷重位での運動方向による,股関節中. 的モデルを使用して検討しており,前部線維は屈曲トル. 間位での中殿筋各線維の活動を明らかにすることとした。. ク,後部線維は伸展トルクを有していると報告してい る. 14). 。生体においても,筋電図を使用して中殿筋の各. 対象と方法. 線維の関節運動へ及ぼす影響が報告されており,非荷重. 1.対象. 位では Dwyer らが,股関節中間位での,股関節外転運. 対象は整形外科的疾患の既往がない健常成人男性 20. 動,外旋運動,内旋運動における各線維の活動を比較し. 名とした。対象者の平均年齢(範囲)は 25.8 (23 ‒ 32)歳,. ている. 15). 。その結果,全ての線維が外旋運動と比較し. て外転運動,内旋運動で有意に高い活動を示したと報告. 身長および体重の平均値(標準偏差)は 171.4(5.8)cm, 体重 65.0(7.6)kg であった。. している。Semciw らも同様に,股関節外転運動,内旋 運動,伸展運動,内旋位での外転運動,開排運動におい. 2.表面筋電計の電極の貼付. て各線維の活動を比較しており,その結果,股関節外転. 測定は非荷重位での課題を行う実験 1 と荷重位での課. 運動,内旋運動,伸展運動,開排運動において各線維が. 題を行う実験 2 を行った。測定に先立ち,表面筋電計(日. 16). 。具体的には. 本光電社製,多チャンネルテレメータシステム WEB-. 外転運動では前部線維と比較して後部線維の活動が有意. 1000)の電極を各被験者の左側の中殿筋前部線維・中部. に高く,内旋運動においては後部線維と比較して前部線. 線維・後部線維に貼付した(図 1) 。電極の貼付部位は. 維の活動が高く,伸展運動では後部線維と比較して中部. Sullivan ら. 線維が高く,開排運動では前部線維と中部線維と比較し. 維は上前腸骨棘と大転子の中点,中部線維は腸骨稜と大. て後部線維が高く,前部線維と比較して中部線維が高. 転子の中点とした。後部線維は,寛骨後部と大転子の間. かったと報告している。一方松木らは股関節中間位にお. の,寛骨後部側 33%の位置とし,寛骨後部のランドマー. 異なった活動を示したと報告している. 6). ,Dwyer ら 15)の研究を参考にし,前部線. いて,非荷重位での股関節外転運動に対するリニアラン. クは,腸骨稜と L4/L5 棘突起間の腸骨稜側 20%の位置. プ負荷課題を行い,外転運動の強度による各線維の活動. とした。バンドパスフィルターは 30 ∼ 350 Hz,サンプ. 比率を検討したところ,負荷の変化による活動比率の変. リング周波数は 1,000 Hz とした。中殿筋後部線維は上. 化はなかったと報告している. 17). 。. 後腸骨棘からも起始しているため,深層の線維は大殿筋. 荷重位では Sullivan らは,複合的なトレーニング課. に覆われており,表面筋電図による評価の妥当性が問わ. 題 3 種(wall squat,pelvic drop,wall press) で の 中. れているが,今回の実験では超音波画像診断装置(日立. 殿筋の各線維の活動を比較しており,全ての課題で前部. アロカメディカル社製,Noblus)を使用して中殿筋後. 線維と比較し,中部線維と後部線維の活動が高かったと. 部線維が大殿筋に覆われていないことを確認して電極を. 6). 。Semciw らは,健常者の歩行時の中殿. 貼付した。また土田は屍体解剖の肉眼的な観察から,中. 筋各線維の活動を比較しており,最大振幅および,平均. 殿筋後部線維が他の筋に覆われていない部位の存在を報. 振幅に線維間の差はなかったものの,初期接地から最大. 告している. 振幅に至るまでの時間が,前部線維と比較して中部線維. するために,電極を貼付した状態で股関節の屈伸運動と. 報告している. が有意に短かったと報告している. 16). 。Dieterich らは,. 20). 。さらにクロストークの影響を最小限と. 回旋運動を被験者に行ってもらい,中殿筋の前部線維,. 超音波画像診断装置を使用して,後部線維部分である深. 中部線維,後部線維が異なる活動を示したことを確認し. 層組織と,前部線維,中部線維部分である浅層組織の課. た。これらのことから今回の実験での,表面筋電図によ. 18). る中殿筋後部線維の活動の評価の妥当性が保たれている. 題における収縮のタイミングの相違を検討している. 。. その結果,非荷重位での課題と比べて,重心移動を伴う. と考える。.
(3) 非荷重位および荷重位での中殿筋各線維の作用比較. 69. 図 2 実験 2(外転条件)の測定肢位. 図 1 ランドマークと各線維の表面電極の貼付位置 ―…ラ ン ド マ ー ク 腹 側: 上 前 腸 骨 棘 頭 側: 腸 骨 稜 尾側:大転子 ●…電極位置 腹側から前部線維,中部線維,後部線維の測 定位置. 3.実験 1 の測定条件. 図 3 実験 2(外旋条件)の測定肢位. 実験 1 では等速性筋力測定装置(Medica 社製,CYBEX NORM)と表面筋電計を使用して,非荷重位での中殿 筋前部線維・中部線維・後部線維の股関節外転運動・外. に変化がなく,17.8N および 26.7N の抵抗では姿勢の変. 旋運動・内旋運動の最大静止性収縮時(Maximum Vol-. 化によって,活動が異なっていたことから,後者の抵抗. untary Contraction:以下,MVC)の筋電積分値を測定. 量になって初めて中殿筋が姿勢制御に参加すると述べて. した。測定肢位は外転運動については左側を上とした側. いる. 臥位とし,股関節中間位・膝関節中間位とした。外旋運. 抵抗量に耐え切れずふらつく被験者が多かったことか. 動と内旋運動については腹臥位とし,股関節中間位・左. ら,本実験での抵抗量は,片脚立位の保持に中殿筋が参. 膝関節 90°屈曲位とした。測定時は代償運動を極力軽減. 加すると考えられる 20N に設定した。表面筋電図を用. するために,骨盤と反対側下肢を付属のベルトを用いて. いた片脚立位での中殿筋の評価の信頼性は Norcross ら. 固定し,さらに検者が被験者の体幹を徒手にて固定し. によってなされており,実施中の関節角度および,筋活. た。MVC は各課題で 5 秒間を 2 回行い,平均値を採用. 動に高い信頼性が報告されている. した。各課題の測定する順番はランダムとし,筋疲労の. ベルト(箱田織物工場社製,2-way セラベルト)を被験. 影響を除くため,測定間に 3 分の休憩を設けた。筋電図. 者の骨盤部に固定し,接続部が右上前腸骨棘と右上後腸. から測定された生波形は全波整流し,筋電図波形が安定. 骨棘の中間となるよう,牽引負荷を調節できるプーリー. している 1 秒間の筋電積分値を算出した。全ての線維で. マシン(Rojer 社製,Mobile speed pulley)とベルトを. 股関節外転運動時の筋電積分値を 100%として正規化. 接続し,テンションメーターで確認しながら牽引するこ. し,他の課題での各線維の% MVC を算出した。. とで行った。. 21). 。予備実験において,30N 以上の負荷量では,. 荷重位で左大. 22). 。骨盤への抵抗は. 骨が固定された状態で,右骨盤が尾側. に動くことで左股関節の内転が,腹側に動くことで左股. 4.実験 2 の測定条件 21). を参考に,右骨盤へ. 関節の内旋が,背側に動くことで左股関節の外旋が生じ. の抵抗に対して左片脚立位を保持した時の各線維の. るため,抵抗方向はこれらの運動に拮抗するよう設定し. %MVC を測定した。Schmits らは,この時の中殿筋の. た。すなわち設定した 6 条件は,右骨盤に抵抗を加えな. 活動を,抵抗量と肢位を変化させて測定している。その. い抵抗なし条件,尾側方向に抵抗を加える外転条件(図. 結果 8.9N の抵抗では姿勢を変化させても中殿筋の活動. 2),腹側方向に抵抗を加える外旋条件(図 3) ,尾側か. 実験 2 では Schmits らの実験.
(4) 70. 理学療法学 第 45 巻第 2 号. 1 と同様に処理し,筋電図波形が安定している 1 秒間の 筋電積分値を算出した。実験 1 で得られた股関節外転運 動の筋電積分値を 100% として正規化し,各条件での各 線維の %MVC を算出した。 5.統計解析 実験 1 の課題では,運動方向 2 水準(外旋運動・内旋 運動)と各線維の %MVC3 水準(前部線維・中部線維・ 後部線維)を 2 要因とした反復測定による分散分析を 図 4 実験 2(外転かつ外旋条件)の測定肢位. 行った。検定に先立って各変数が正規分布に従うことを シャピロ・ウィルク検定で確認した。反復測定による分 散分析の結果,交互作用が認められた要因に関して,事 後検定として運動方向の比較には対応のある t 検定,各 線維の比較には多重比較法(Tukey 法)を行った。 実験 2 の課題では,抵抗条件 6 水準(抵抗なし・外転 条件・外旋条件・外転かつ外旋条件・内旋条件・内旋か つ外転条件)と各線維の %MVC3 水準(前部線維・中 部線維・後部線維)を 2 要因とした反復測定による分散 分析を行った。検定に先立って,各変数が正規分布に従 うことをシャピロ・ウィルク検定で確認した。反復測定 による分散分析の結果,交互作用が認められた要因に関 して,事後検定として多重比較法(Tukey 法)を行った。. 図 5 実験 2(内旋条件)の測定肢位. 全ての統計学的分析には IBM SPSS Statistics,version 22,日本 IBM 社製を使用し,有意水準は 5% とした。 6.説明と同意ならびに倫理的配慮 本研究は,首都大学東京研究安全倫理委員会の承認を 受けて実施した(承認番号 14108)。対象者には,実験 開始前に研究内容および超音波画像診断装置による侵襲 についての説明を十分に行い,書面にて同意を得た後に 実験を開始した。 結 果 1.実験 1 の課題について. 図 6 実験 2(外転かつ内旋条件)の測定肢位. 外旋運動および,内旋運動時の中殿筋各線維の %MVC の平均値と標準偏差を表 1 に示した。反復測定による分 散分析の結果,各線維と運動方向に交互作用が認められ. つ腹側方向に均等に抵抗を加える外転かつ外旋条件(図. た。そのため運動方向の比較に対応のある t 検定,各線. 4),背側方向に抵抗を加える内旋条件(図 5) ,尾側か. 維の比較に多重比較検定を行った。. つ背側方向に均等に抵抗を加える外転かつ内旋条件(図. その結果,運動方向による比較は全ての線維において,. 6)とした。. 内旋運動が外旋運動と比較して,有意に高値を示した。. 測定肢位は裸足で,両股関節中間位・左膝関節中間. 線維間の比較では,外旋運動においては中部線維,後. 位・右膝関節 90°屈曲位で,両上肢を胸の前で組んだ片. 部線維の活動が,前部線維と比較して有意に高値を示し. 脚立位とした。測定中に下肢・骨盤・体幹の代償運動が. た。内旋運動においては,前部線維,中部線維の活動が,. 起きないよう,被験者は測定前に十分な練習を行った。. 後部線維と比較して有意に高値を示し,前部線維の活動. 測定は 5 秒間を 2 回行い,平均値を採用した。測定する. が,中部線維と比較して有意に高値を示した。. 順番はランダムとし,被験者の疲労の影響を除くため に,測定間に 3 分の休憩を設けた。得られた波形は実験.
(5) 非荷重位および荷重位での中殿筋各線維の作用比較. 71. 表1 前部線維. 中部線維. 後部線維. 多重比較 (p < 0.05 のみ記載). 外旋. 7.4(3.6). 11.9(8.2). 13.5(5.8). 中部 > 前部 後部 > 前部. 内旋. 112.8(39.1). 96.6(41.2). 60.5(25.4). 前部 > 中部 > 後部. 多重比較 (p < 0.05 のみ記載). 内旋 > 外旋. 内旋 > 外旋. 内旋 > 外旋. 表2 前部線維. 中部線維. 後部線維. 多重比較 (p < 0.05 のみ記載). 抵抗なし. 21.2(10.4). 16.9(9.2). 15.2(9.3). 前部 > 中部 前部 > 後部. 外転. 24.3(11.2). 20.0(8.0). 18.4(7.8). 前部 > 中部 前部 > 後部. 外旋. 11.7(4.4). 13.5(7.4). 16.0(7.0). 後部 > 前部. 外転かつ外旋. 15.7(9.7). 15.8(8.3). 17.8(8.1). ―. 内旋. 40.2(19.6). 30.3(16.8). 19.3(11.4). 前部 > 中部 > 後部. 外転かつ内旋. 33.8(17.0). 24.7(11.8). 17.1(7.1). 前部 > 中部 > 後部. 多重比較 (p < 0.05 のみ記載). 外転 > 外旋 内旋 > 抵抗なし 内旋 > 外転 内旋 > 外旋 内旋 > 外転かつ外旋 外転かつ内旋 > 抵抗なし 外転かつ内旋 > 外旋 外転かつ内旋 > 外転かつ外旋. ― 内旋 > 抵抗なし 内旋 > 外転 内旋 > 外旋 内旋 > 外転かつ外旋 ― 外転かつ内旋 > 外旋 外転かつ内旋 > 外転かつ外旋. ―. 2.実験 2 の課題について. た。内旋条件と外転かつ内旋条件においては,前部線維,. 各条件における中殿筋各筋線維の %MVC の平均値と. 中部線維,後部線維の順に高値を示し,それぞれ有意差. 標準偏差を表 2 に示した。反復測定による分散分析の結. があった。外転かつ外旋条件においては全ての線維で有. 果,各線維と条件の間に交互作用が認められたため多重. 意差はなかった。. 比較検定を行った。. 考 察. 抵抗条件による比較では,前部線維においては内旋条 件が最も高く,抵抗なし条件,外転条件,外旋条件,外. 1.非荷重位での課題について. 転かつ外旋条件と比較して有意に高値を示した。次に外. 実験 1 の結果より,中殿筋の各線維は回旋方向により. 転かつ内旋条件が高く,抵抗なし条件,外旋条件,外転. 作用が異なり,内旋運動時においては前部線維,中部線. かつ外旋条件と比較して有意に高値を示した。さらに外. 維,後部線維の順に活動が高く,外旋運動時においては. 転条件は外旋条件と比較して有意に高値を示した。中部. 前部線維と比較し,中部線維と後部線維の活動が高いこ. 線維においても内旋条件が最も高く,抵抗なし条件,外. とが明らかとなった。先行研究では中殿筋は単一の筋と. 転条件,外旋条件,外転かつ外旋条件と比較し有意に高. してではなく,前部線維・中部線維・後部線維に分類し. 値を示した。次に外転かつ内旋条件が高く,外旋条件,. て評価すべきと述べられており,その根拠として神経支. 外転かつ外旋条件と比較して有意に高値を示した。後部. 配. 線維は全ての条件で有意差はなかった。. 量などの特徴の差異. 線維間の比較における比較では,抵抗なし条件と外転. 点では,Blemker らが MRI を用いて中殿筋の扇状の走行. 条件においては,前部線維が最も高く,中部線維,後部. を考慮してモーメントアームを計算しており,股関節中. 線維と比較して有意に高値を示した。外旋条件において. 間位では中殿筋全体として,内旋に作用する線維と外旋. は,後部線維が,前部線維と比較して有意に高値を示し. に作用する線維が存在することを述べている. 7)8). や,生理学的筋横断面積,腱の長さ,羽状角,質 9). が報告されている。筋の走行の観. 13). 。本研究.
(6) 72. 理学療法学 第 45 巻第 2 号. の結果はこれらの先行研究を支持するものとなった。. かつ内旋条件においては,前部線維が中部線維と後部線. 各線維による回旋方向については,Dostal らは屍体. 維よりも有意に高い活動を示したが,外旋条件において. を用いて,筋の起始停止を直線状に結んだモデルを使用. のみ,後部線維が前部線維よりも高い活動を示した。こ. 12). 。それによる. れは,前部線維は荷重位においても,その走行から股関. と,解剖学的肢位において前部線維・中部線維は内旋方. 節の外転と内旋作用を強くもち,外旋作用が乏しいため. 向にモーメントアームベクトルを有しているが,後部線. と考える。その結果,外旋条件では中殿筋の筋活動は相. 維は外旋方向にモーメントアームベクトルを有している. 対的に後部線維が優位に活動し,荷重条件である立位姿. と報告されている。生体での実験では Dwyer らが,股. 勢を保持していたと考える。. 関節中間位での股関節外転運動,外旋運動,内旋運動に. 次に抵抗条件による違いでは,前部線維と中部線維に. して関節運動への影響を検討している. 15). 。その結果,内. おいては内旋条件が,抵抗なし,外転,外旋,外転かつ. 旋運動時は前部線維・中部線維・後部線維の順に活動が. 外旋条件と比較し有意に高値を示した。このことから. 高かったが,全ての線維において内旋運動が外旋運動と. も,前部線維と中部線維は荷重位において,股関節内旋. 比較して,有意に高い活動を示したと報告している。. 作用を強くもち,外旋作用に乏しいことが示された。一. Semciw らも同様に,股関節外転運動,内旋運動,伸展. 方後部線維は非荷重位での課題と異なり,全ての条件で. 運動,内旋位での外転運動,開排運動において各線維の. 有意な筋活動の差はなかった。この点について Dieterich. 活動を比較しており,その結果,内旋運動においては後. らは,関節を安定化させる作用は他の筋活動に先立って. 部線維と比較して前部線維の活動が高かったと報告して. 生じるという仮説から,超音波画像診断装置を使用し. おける各線維の活動を比較している. いる. 16). 。. て,中殿筋の後部線維部分である深層組織と,前部線. 中殿筋の後部線維については,本研究の結果や Dwyer. 維・中部線維部分である浅層組織に分割し,課題におけ. らの実験では外旋運動よりも内旋運動時に高い筋活動を. る収縮のタイミングを検討している. 示しているものの,各線維間の活動を比較すると,外旋. 荷重位での課題と比べて,重心移動を伴う荷重位での課. 運動時は前部線維よりも高い活動を示した。これらのこ. 題では,深層組織の方が有意に先行して収縮していたと. とから,股関節中間位においては中殿筋前部線維は外旋. 報告している。また Gottschalk は,前部線維・中部線. 運動に作用する線維をほとんどもたないが,後部線維は. 維は床面に対して垂直方向に走行しているのに対し,後. 外旋運動に作用する線維を有していると考える。. 部線維は大. 中殿筋の筋力低下は多くの下肢関節疾患の特徴. 1‒5). 18). 。その結果,非. 骨の頸部軸と平行に走行していることを報. 告し,このことから,後部線維は大. 骨を臼蓋へ引きつ. であり,筋力の向上がパフォーマンスや痛みの改善につ. け,関節を安定化させる作用をもつ可能性があると述べ. ながるといった報告は多い。しかし本研究の結果によ. ている. り,中殿筋は線維により異なる関節運動を引き起こすた. 本研究の結果により,中殿筋の後部線維は非荷重位と. め,中殿筋内で線維間のインバランスを生じる可能性が. 荷重位で作用が異なり,荷重位では運動方向によらず収. ある。そのため前部線維の筋力が低下し,後部線維が過. 縮することが明らかとなった。先行研究を踏まえると,. 活動を生じている症例には,股関節内旋運動を伴った外. この要因のひとつとして中殿筋後部線維は,非荷重位に. 転運動を,後部線維の筋力が低下し,前部線維が過活動. おいては他の線維と同様に大. を生じている症例には股関節外旋運動を伴った外転運動. 引き起こす作用を有するが,荷重位では運動方向によら. を,それぞれ処方する必要があると考える。. ず収縮し,身体重心のわずかな変位に対応するために, 常に大. 8). 。. を引き上げ,関節運動を. 骨頭を臼蓋窩へ引きつける作用を有している可. 2.荷重位での課題について. 能性が示唆された。以上のことから今回得られた結果. 実験 2 の結果により荷重位においても,中殿筋の各線. は,荷重位においても中殿筋の線維間のインバランスが. 維は運動方向により作用が異なることが明らかとなっ. 生じる可能性を示すだけでなく,荷重条件による中殿筋. た。我々が渉猟する限り,荷重位で中殿筋を 3 線維に分. 後部線維の活動様式の差異を示したと考える。. けて運動方向による作用を比較・検討した研究は見当た らない。Sullivan らは,荷重位での複合的なトレーニン. 3.理学療法研究としての意義. グ課題 3 種(wall squat,pelvic drop,wall press)での. 本研究により,健常男性における非荷重位および荷重. 中殿筋の各線維の活動を比較しているが,課題が複合的. 位での運動方向による中殿筋の 3 線維の作用が示され. であり,関節肢位も一定でない。そのため今回の研究は. た。このことは下肢関節疾患患者に対する科学的根拠に. 荷重位での中殿筋トレーニングにおける重要な示唆を得. 基づいた中殿筋トレーニングの一助となると考える。ま. たと考える。. た荷重位で運動方向による中殿筋の各線維の作用を検討. まず線維間の比較では,抵抗なし,外転,内旋,外転. した研究は本研究が初めてであり,中殿筋トレーニング.
(7) 非荷重位および荷重位での中殿筋各線維の作用比較. における有用な示唆を得たと考える。 4.本研究の限界と今後の課題 本研究の限界は,各線維の機能的な差異を検討するこ とに着目しているため,全て股関節中間位での静的な評 価であった点である。そのため股関節肢位の変化による 筋活動の変化については加味されておらず,動的な評価 や実際の動作との関連は言及することができない。その ため今後は,関節角度による中殿筋各線維の活動の変化 や,動的な課題での比較が必要と考える。 また,対象者についても健常男性を対象としているた め,今後は下肢関節疾患患者を対象に行い,より臨床に 有益な研究を行っていく必要があると考える。 結 論 健常成人男性を対象に表面筋電図を用いて,非荷重位 および荷重位での運動方向による中殿筋各線維の活動を 解析し,その作用が明らかとなった。非荷重位の内旋運 動では前部線維が,外旋運動では後部線維が最も高い活 動を示した。荷重位では,前部線維と中部線維が,後部 線維と比較して外転,内旋,外転かつ内旋運動時に高い 活動を示すが,外旋運動時は,後部線維が前部線維に対 して高い活動を示すことが明らかとなった。また荷重位 での後部線維の活動は非荷重位と異なり,運動方向によ らず一定に活動することが明らかとなった。 利益相反の開示 本研究における開示すべき利益相反はない。 文 献 1)Loureiro A, Mills PM, et al.: Muscle Weakness in Hip Osteoarthritis: A Systematic Review. Arthritis Care Res. 2013; 65(3): 340‒352. 2)Fredericson M, Cllkingham CL, et al.: Hip abductor weakness in distance runners with iliotibial band syndrome. Clin J Sport Med. 2000; 10: 169‒175. 3)Santos FG, Carmo CM, et al.: Chronic Low Back Pain in Women: Muscle Activation during Task Performance. J Phys Ther Sci. 2013; 25(12): 1569‒1573. 4)Dingenen B, Janssens L, et al.: Lower extremity muscle activation onset times during the transition from doubleleg stance to single-leg stance in anterior cruciate ligament injured subjects. Hum Mov Sci. 2015; 44: 234‒ 245. 5)Brindle TJ, Mattacola C, et al.: Electromyographic changes in the gluteus medius during stair ascent and. 73. descent in subjects with anterior knee pain. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2003; 11: 244‒251. 6)O’Sullivan K, Smith SM, et al.: Electromyographic analysis of the three subdivisions of gluteus medius during weight-bearing exercises. Sports Med, Arthrosc, Rehabil, Ther Technol. 2010; 2‒17. 7)Al-Hayani A: The functional anatomy of hip abductors. Folia Morphol. 2009; 68(2): 98‒103. 8)Gottschalk F, Kourosh S, et al.: The functional anatomy of tensor fasciae latae and gluteus medius and minimus. J Anat. 1989; 166: 179‒189. 9)Horsman MDK, Koopman HFJM, et al.: Morphological muscle and joint parameters for musculoskeletal modelling of the lower extremity. Clin Biomech. 2007; 22: 239‒247. 10)Sahrmann SA: Chapter 4 股関節の運動機能障害症候群: 運動機能障害症候群のマネジメント─理学療法評価・MSI アプローチ・ADL 指導─(第 1 版).竹井 仁,鈴木 勝 (監訳),医歯薬出版,東京,2010,pp. 121‒171. 11)Conneely M, O’Sullivan K: Gluteus Maximus and Gluteus Medius in pelvic and hip stability: isolation or synergistic activation? Physiother Irl. 2010; 29(1): 6‒10. 12)Dostal WF, Soderberg GL, et al.: Actions of Hip Muscles. Phys Ther. 1986; 66: 351‒359. 13)Blemker SS, Delp SL: Three-Dimensional Representation of Complex Muscle Architectures and Geometries. Ann Biomed Eng. 2005; 33(5): 661‒673. 14)小栢進也,建内宏重,他:関節角度の違いによる股関節周 囲筋の発揮筋力の変化─数学的モデルを用いた解析─.理 学療法学.2009; 38(2): 97‒104. 15)O’Dwyer C, Sainsbury D, et al.: Gluteus Medius Muscle Activation During Isometric Muscle Contractions. J Sport Rehabil. 2011; 20(2): 174‒186. 16)Semciw AI, Pizzari T, et al.: Gluteus medius: An intramuscular EMG investigation of anterior, middle and posterior segments during gait. J Electromyogr Kinesiol. 2013; 23: 858‒864. 17)松木儀浩,大西秀明,他:股関節肢位の違いによる股関 節外転筋群の筋電図学的解析.理学療法学.2004; 31(1): 9‒14. 18)Dieterich A, Petzke F, et al.: Differentiation of gluteus medius and minimus activity in weight bearing and nonweight bearing exercises by M-mode ultrasound imaging. Man Ther. 2015; 20: 715‒722. 19)Cowan SM, Crossley KM, et al.: Altered hip and trunk muscle function in individuals with patellofemoral pain. Br J Sports Med. 2008; 43: 584‒588. 20)土田将之,柴田昌和,他:中殿筋線維束についての肉眼解 剖学的考察.日本基礎理学療法学雑誌.2013; 17(1): 42. 21)Schmitz RJ, Riemann BL, et al.: Gluteus Medius Activity During Isometric Closed-Chain Hip Rotation. Sport Rehabil. 2002; 11: 179‒188. 22)Norcross MF, Blackburn JT, et al.: Reliability and inter pretation of single leg stance and maximum voluntary isometric contraction methods of electromyography normalization. J Electromyogr Kinesiol. 2010; 20: 420‒425..
(8) 74. 理学療法学 第 45 巻第 2 号. 〈Abstract〉. Comparison of Activity of Anterior, Middle and Posterior Fibers of the Gluteus Medius in Non-weight-bearing and Weight-bearing Positions in Healthy Men. Atsushi ENDO, PT, MSc Sonoda Third Hospital Sonoda Medical Institute Tokyo Spine Center Kodai IMADA, PT, MSc Mejiro Orthopedics and Internal Medicine Clinic Hitoshi TAKEI, PT, PhD Department of Physical Therapy, Graduate School of Human Health Sciences, Tokyo Metropolitan University. Purpose: To compare and examine the activity of the subdivisions of the gluteus medius (anterior, middle, and posterior fibers) in non-weight-bearing and weight-bearing positions using surface electromyography. Methods: We enrolled healthy men. In the non-weight-bearing position, the motor task was maximum voluntary external and internal hip rotation. In the weight-bearing position, the motor task was to stand on the left leg standing under six right pelvic conditions (non-pressure, abduction, external rotation, abduction-external rotation, internal rotation, and abduction-internal rotation). The activity of the subdivisions of the gluteus medius was measured using electromyography. Result: In the non-weight bearing position, the anterior fibers showed the highest activity during internal rotation. The middle and posterior fibers showed significantly higher activity than the anterior fibers during external rotation. In the weight-bearing position, the posterior fibers showed significantly higher activity than the anterior fibers during external rotation only. The activity of the posterior fibers did not vary significant between the conditions. Conclusion: In non-weight and weight-bearing positions, the subdivisions of the gluteus medius showed different activity depending on the direction of movement. However, in the weight-bearing position, only the posterior fibers were constantly active regardless of the direction of hip movement. Key Words: Gluteus Medius, Electromyography, Weight-bearing, Non-weight-bearing.
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