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若年健常者における聴覚刺激がクエン酸誘発性咳嗽反射閾値および咳衝動に及ぼす影響の検討

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 304 45 巻第 5 号 304 ∼ 308 頁(2018 年) 理学療法学 第 45 巻第 5 号. 研究論文(原著). 若年健常者における聴覚刺激がクエン酸誘発性咳嗽反射閾値 および咳衝動に及ぼす影響の検討* 金. 雅 史 1)# 古川菜々美 1) 太田垣沙和 1) 沖 中 郁 美 1). 要旨 【目的】聴覚刺激がクエン酸誘発性咳嗽反射閾値および咳衝動に及ぼす影響を検討することである。 【方法】健常大学生 15 名を対象として実施した。クエン酸誘発性咳嗽反射閾値は 1 分間の吸入中に 2 回も しくはそれ以上咳が誘発される最低クエン酸濃度(C2)と 5 回以上咳が誘発された最低濃度(C5)の双 方で定義した。さらに,咳衝動ボルグスコアがはじめに 1 を示した最小クエン酸濃度を Cu と定義した。 【結果】クエン酸誘発性咳嗽反射閾値において,聴覚刺激条件におけるクエン酸誘発性咳嗽反射閾値(C2) は,sham 条件と比較して統計学的有意に高値を示した。同様に,聴覚刺激条件におけるクエン酸誘発性咳 嗽反射閾値(C5)においても,sham 条件と比較して統計学的有意に高値を示した。聴覚刺激条件における Cu は sham 条件と比較して統計学的有意に高値を示した。 【結論】本研究の結果から聴覚刺激は有用な咳嗽 ケア手段になることが示唆された。 キーワード 聴覚刺激,咳嗽反射,咳衝動. れ,fMRI による脳イメージングの研究結果で見られた. はじめに. 部 位 の 血 中 酸 素 濃 度 依 存 信 号(blood oxygen level.  咳嗽は気道に侵入した異物や病原体を物理的に排出す. dependent signal:BOLD 信号)と有意な相関関係が認. る生体防御機構のひとつである。この機序において,気. められている. 道や肺に分布する咳受容体が機械的刺激や酸やカプサイ. 弓の重要な一部として咳嗽の regulation に関与するこ. シンなどの化学的刺激によって惹起され,その求心性入. とが知られている。. 1). 4). 。したがって,上記脳部位は咳嗽の反射. 力が中枢に伝達される 。咳嗽はこれまで延髄孤束核を.  日常診療において咳嗽は呼吸困難と同様に患者が医療. 中枢とする反射(咳嗽反射)として考えられてきたが,. 機関を受診する理由となる主要な呼吸器症状である。咳. 麻酔や睡眠時には低下することが知られ. 2)3). ,脳幹だけ. 嗽を伴う呼吸器疾患は多彩であるが,日本呼吸器学会は. で な く 皮 質 レ ベ ル の 関 与 が 考 え ら れ て き た。 事 実,. 時間軸上で発症から 2 週間未満の咳嗽を急性咳嗽,3 週. Mazzone らは fMRI(functional magnetic resonance imag-. 間以上を慢性咳嗽と定義している. ing)を用いてカプサイシン誘発性咳嗽における脳機能. 主因としたものが多く,感染による気道炎症による咳受. への影響を検討し,島皮質をはじめとした脳部位が活性. 容体の過敏や過剰な分泌物による機械的刺激によって湿. 4). 5). 。前者には感染症を. 5). 化することを報告した 。咳嗽時かそれ以前に生じる不. 性咳嗽が誘発されやすい. 快に感じる呼吸感覚は咳衝動(urge-to-cough)と呼ば. よる頻度は低くなり,最多の咳喘息に続いて,胃食道逆. *. Effect of Distractive Auditory Stimuli on the Cough Reflex Threshold and Urge-to-Cough Induced by Citric Acid in Healty Never-smokers 1)姫路獨協大学医療保健学部理学療法学科 (〒 670‒8524 兵庫県姫路市上大野 7‒2‒1) Masashi Kanezaki, PT, MSc, PhD, Nanami Furukawa, PTS, Sawa Otagaki, PTS, Ikumi Okinaka, PTS: Faculty of Health Care Sciences, Department of Physical Therapy, Himeji Dokkyo University # E-mail: kmasashi@gm.himeji-du.ac.jp (受付日 2017 年 12 月 15 日/受理日 2018 年 7 月 5 日) [J-STAGE での早期公開日 2018 年 9 月 5 日]. 。一方,慢性咳嗽では感染に. 流(gastro esophageal reflux disease:GERD) ,副鼻腔 気管支炎などの多彩な疾患が原因となりやすい。これら の慢性咳嗽の診断と治療において,Irwin が提唱する咳 受容体と求心性知覚神経線維の解剖学的局在に基づく系 6) 統的アプローチ(anatomic diagnostic protocol) が本. 邦を含め海外でも用いられ,慢性咳嗽のトリガーとなる 責任病態を想定した治療を試み , その結果から臨床診断 と治療が展開される。しかしながら,主要な原因疾患に.

(2) 聴覚刺激がクエン酸誘発性咳嗽反射閾値に及ぼす影響の検討. よる慢性咳嗽患者の 40% で,原因治療でさえ咳嗽は難 治性であることが報告され. 7). ,このような慢性咳嗽患者. 305. 路獨協大学生命倫理委員会の承認(姫獨生 15-04)を得 て実施し,すべての被験者から研究への同意を得た。. では身体的だけでなく精神心理状態の悪化も伴って QOL(quality of life)が低下していることが明らかに 8). 2.研究プロトコル. 。また,慢性咳嗽患者の 91%で咳嗽の際.  まず 1 日目は,すべての被験者は事前に作成した乱数. にきわめて強い咳衝動を伴い,咳衝動の強度が咳嗽に特. 表を基に,疑似条件(sham)と聴覚刺激(distractive. 異 的 な QOL 質 問 票 で あ る Leicester Cough Question-. auditory stimuli:DAS)条件に単純無作為化し,クエ. naire(LCQ)の総得点と有意な因果関係にあることが. ン酸誘発性咳嗽検査を測定した。2 日目はクロスオー. 9) 報 告 さ れている 。一方,Irwin が提唱する anatomic. バー法を用いて,1 日目と異なる条件にて実施した。. されている. diagnostic protocol に照らし合わせると. 6). ,咳衝動に関. 与する皮質レベルを標的として過剰な咳嗽を抑制する介. 3.クエン酸誘発性咳嗽反射閾値と咳衝動の評価. 入方法は限られている。また慢性咳嗽患者では冷気吸.  咳嗽反射閾値の評価は安静換気の下で超音波ネブライ. 入,運動,高湿度環境などが咳嗽のトリガーになりやす. ザー(NE-U17, Omron Co. Ltd., Kyoto, Japan)を用い. いため. 10). ,理学療法や身体活動時に生じる咳衝動およ. て評価した. 16)17). 。ネブライザーは 5.4 µ m の平均粒子径. び咳嗽の調節方法の新たなエビデンスの立証はきわめて. を 2.2 ml/min で噴霧した。クエン酸は生理食塩水で希. 重要であると考えられる。. 釈して,0.7 から 360 g/L までの 2 倍の漸増濃度を使用.  不快な呼吸感覚への非薬物療法において,聴覚刺激は. し,各濃度でのクエン酸の吸入時間は 1 分間とした。咳. 先行研究でもっとも使用された呼吸困難の非薬物療法の. の回数は,研究の目的や被験者の情報を知らない検査者. ひとつである。聴覚刺激の種類は音楽だけでなく,雑音. が咳嗽時の呼出と咳嗽音から記録した。検査者はクエン. も含まれるが,これまで,主として音楽を用いた聴覚刺. 酸吸入中に咳嗽を故意にしたり我慢したりしないよう被. 激による運動時呼吸困難に対する有効性が報告されてい. 験者に指示した。5 回またはそれ以上咳がでるまで,濃. 11). 。音楽による呼吸困難の緩和効果は,注意が呼吸. 度を漸増し,各濃度間の休憩時間は 2 分間とした。咳嗽. 困難から音楽へ向くことによって発現することが考えら. 反射閾値は 1 分間の吸入中に 2 回もしくはそれ以上咳が. る. れている。この概念に基づいて,慢性閉塞性肺疾患にお. 誘発される最低クエン酸濃度(C2)と 5 回以上咳が誘. いて呼吸困難に対する音楽の効果をみた報告の中では選. 発された最低濃度(C5)の双方で定義した. 曲を被験者自身で行い,音楽による運動誘発性呼吸困難.  咳衝動の評価は各濃度のネブライザー吸入直後に修正. への緩和効果が示されている. 12)13). 。一方,Reychler ら. は被験者自身の選曲ではない環境音楽では運動誘発性呼 吸困難に影響を与えないことを報告しており. 14). ,被験. ボルグスケールを用いて行った. 16)17). 。. 18). 。スケールはまった. く咳をしなくていい(スケール0)から最大限咳をした い(スケール 10)までの範囲のものを使用した. 18). 。咳. 者において,選択する音楽が注意をひくものかどうかが. 衝動のスケールは被験者の前に配置し,数値を指さして. 呼吸困難の緩和に重要であることが考えられている。. もらい,検査者が記録した。咳衝動の強さを評価するた.  これまで,咳衝動および呼吸困難は,責任神経経路が. めに,被験者には息切れや喉がヒリヒリした感覚や,イ. 共有することや同様の生理学的特徴を有することが報告. ガイガするような他の感覚は無視するように指示をし. されている. 15‒17). 。特に,不快な身体感覚である咳衝動. た。また被験者にクエン酸吸入中に咳衝動の感覚が増え. や呼吸困難における皮質レベルでの神経経路において,. たか,減ったか,もしくは変わらないかを尋ね,修正ボ. 不快な感覚の産生に関連する島皮質や帯状回皮質などの. ルグスケールに反映させるように指示を加えた. 部位が共通しており,聴覚刺激が呼吸困難への抑制効果. さらに,咳衝動ボルグスコアがはじめに 1 を示した最小. と同様に咳嗽や咳衝動にも影響を及ぼすことが想定され. クエン酸濃度を Cu と定義した. 15‒17). 。. 19). 。. る。ゆえに,本研究では,健常者を対象にクエン酸吸入 を適用して咳嗽を誘発し,その閾値と咳衝動に及ぼす聴. 4.聴覚刺激. 覚刺激の影響を明らかにすることを目的とした。.  聴覚刺激は両耳にイヤホンを装着して行った。曲は被. 対象および方法. 験者自身が興味を引くものであり,歌詞がおもに日本語 の邦楽を使用した。音量は周囲の音が聞こえない程度で. 1.対象者. 被験者に調節させた。sham 条件は聴覚刺激条件と同様に.  健康大学生 15 名を対象とした。また,呼吸器疾患の. イヤホンを耳に装着した状態で行った。咳嗽反射の測定. 既往,4 週間以内に呼吸器感染症を示唆する症状や季節. において,聴覚刺激に使用する曲が咳嗽検査の途中で終. 性アレルギーの者は被験者から除外した。また被験者は. 了した場合 , 同様の楽曲を被験者にあらかじめ選定させた. すべて常用薬剤を使用していない者とした。本研究は姫. ものから使用した。曲のテンポは概ね 90 ∼ 130 beats/.

(3) 306. 理学療法学 第 45 巻第 5 号. 図 1 クエン酸誘発性咳反射閾値(C2)を示す.C2 は咳が 2 回もしくはそれ以上誘発される最小クエン酸濃度を示す.白 丸は平均値をエラーバーは標準偏差を示している.●は各被 験者の C2 を示している.DAS は聴覚刺激条件を意味する. P 値は Wilcoxon の符号付順位検定より算出した.. 図 2 クエン酸誘発性咳反射閾値(C5)を示す.C5 は咳が 5 回もしくはそれ以上誘発される最小クエン酸濃度を示す.白 丸は平均値をエラーバーは標準偏差を示している.●は各被 験者の C5 を示している.DAS は聴覚刺激条件を意味する. P 値は Wilcoxon の符号付順位検定より算出した.. min までの範囲であった。 5.統計解析  データは平均値±標準偏差で表記し,クエン酸誘発性 咳嗽反射閾値(C2 と C5)およびクエン酸誘発性咳衝動 閾値(Cu)は Log 変換した。咳嗽反射閾値(C2 および C5), 咳 衝 動(Cu) に お け る 介 入 条 件 間 の 比 較 は Wilcoxon の符号付順位検定を使用した。有意水準は 5% とした。統計解析は SPSS version 18 を使用した。 結   果  すべての被験者において副作用を有する者はいなかっ た。咳嗽反射閾値である C2,C5 および咳衝動の指標で ある Cu の聴覚刺激条件と sham 条件の比較を図 1 ∼ 3 に 示 し た。C2 は, 聴 覚 刺 激 条 件:1.39 ± 0.41 g/l, Sham 条件:1.81 ± 0.48 g/l(図 1) ,C5 は,聴覚刺激条. 図 3 クエン酸誘発性咳衝動閾値(Cu)を示す.Cu は咳衝 8) 動ボルグスコア= 1(とても軽い) を誘発する最小クエン 酸濃度を示す.白丸は平均値をエラーバーは標準偏差を示し ている.●は各被験者の Cu を示している.DAS は聴覚刺激 条件を意味する.P 値は Wilcoxon の符号付順位検定より算 出した.. 件:1.47 ± 0.37 g/l,sham 条件:1.95 ± 0.41 g/l(図 2) , Cu は,聴覚刺激条件:1.23 ± 0.37 g/l,sham 条件:0.69 ± 0.62 g/l であり(図 3) ,いずれも聴覚刺激条件の方. 覚刺激条件において,統計学的有意に高値を示した。さ. が有意に高値を示した(p < 0.001) 。また,聴覚刺激に. らに,聴覚刺激はクエン酸誘発性咳衝動を低下させるこ. よりクエン酸誘発性咳嗽反射閾値また咳衝動が増加した. とを明らかにした。. 対象者は C2 では 13 人(86.7%)であり,C5 では 12 人.  本研究では聴覚刺激がクエン酸誘発性咳反射を抑制す. (80.0%),Cu においては 12 人(80.0%)であった。一方,. ることをはじめて報告した。我々の結果は聴覚刺激が運. 聴覚刺激によりクエン酸誘発性咳嗽反射閾値また咳衝動. 動時呼吸困難への抑制効果と概ね一致している。筆者ら. が不変であった対象者は C2 で 2 人(13.3%),C5 では 1. のグループ. 人(6.67%),Cu においては 1 人(6.67%)であった。. 運動時呼吸困難への聴覚刺激の即時効果を検討した。そ. 考   察. 12). は高齢 COPD 患者 16 名に対して低負荷. の結果,聴覚刺激は対照条件と比べて,統計学有意に運 動時呼吸困難を低下させることが明らかになった. 12). 。.  本研究において,聴覚刺激がクエン酸誘発性咳嗽反射. また,聴覚刺激による運動時の分時換気量や心拍数,酸. 閾値および咳衝動に及ぼす影響を検討した。その結果,. 素消費量に変化が認められていないことから. クエン酸誘発性咳反射閾値である C2 および C5 は,聴. 刺激の有無で運動時の呼吸仕事量や自律神経活動への影. 12). ,聴覚.

(4) 聴覚刺激がクエン酸誘発性咳嗽反射閾値に及ぼす影響の検討. 307. 響は少ないことが想定される。したがって,聴覚刺激に. もしれない。しかし,それは本研究において不明であり,. よる呼吸困難への奏功機序として,脳幹より高位の脳機. 今後検討する必要がある。また本研究のサンプルサイズ. 能が関与していることが示唆された。. が少ないため,クエン酸誘発性咳嗽反射閾値および咳衝.  様々なタイプの呼吸困難や咳衝動のような呼吸感覚. 動における聴覚刺激への反応性への検討はできていな. は. 20). ,大脳皮質や皮質下の神経経路の活性化によって. 生じる。これら経路の一部は固有の経路がある一方で, 共有する経路があるとされる. 14). 。多様な誘発手法によ. る呼吸困難に関する多くの脳イメージング研究がある が,異なる呼吸困難の誘発方法にもかかわらず,島,蓋, 前頭皮質領域,前帯状回皮質,後帯状回皮質,小脳,視 床,扁桃が有意に神経活動を起こすことが一貫して報告 されている 4). 21)22). 。一方,Mazonne らの fMRI による研. い。特に慢性咳嗽において咳嗽が長期化するほど,情動 的要素が咳衝動や咳嗽反射閾値に深く関与することが考 えられるため,今後聴覚刺激の咳嗽への反応性の検討が 望まれる。 結   論  過剰な咳嗽は運動療法の進行や QOL において負の障 壁をなすため,理学療法士が実施可能な簡便な咳嗽ケア. カプサイシンの吸入により島,前帯状回皮質,. の新規開発は重要な選択肢のひとつにつながると考えら. 一次感覚野,眼窩前頭皮質,補足運動野や小脳において,. れる。本研究において,聴覚刺激の利用は慢性咳嗽患者. 神経活動による酸素動態の変化を意味する BOLD 信号. や COPD,肺がん患者における新たな咳嗽の鎮静方法. が変化することが示されている。さらに,聴覚刺激では ,. になることを示唆している。. 究では. 一次聴覚野,二次聴覚野や島皮質が活性化されることが 報告されている. 23). 。これらのことを考慮すると,呼吸. 困難と咳衝動によって活性化される脳部位として,島, 前帯状回および小脳が共通していることが示唆され,ま た聴覚刺激と咳嗽ではそれらの中で島皮質を経路として 共有することが考えられる。一方,島皮質は不快な呼吸 感覚の産生に関与していることが報告されており. 22). ,. 聴覚刺激による咳衝動への奏功機序において,島皮質へ の影響が重要な役割をもつことが考えられた。  2 つの神経インパルスが共通の神経上に生じた場合, 結果として得られる反応の強度は,2 つのインパルスの 総和は予想される強度よりも低くなることが認識されて いる。この現象は neural occlusion と呼ばれており. 24). ,. 事実,呼吸困難と咳衝動との間の干渉作用も認められて いる. 15). 。したがって,聴覚刺激とクエン酸吸入による. 咳嗽誘発時の島皮質での反応は neural occlusion によっ てそれぞれの反応が低下した可能性がある。しかし,本 研究では,脳機能イメージングや脳波の測定を行ってい ないため,詳細なメカニズムは明らかではない。  本研究の限界において,対象者が健常者であることか ら,急性および慢性咳嗽に対しての聴覚刺激の有効性は 不明であり,今後の検討が望まれる。さらに,感染症に よる急性咳嗽や慢性副鼻腔炎による慢性咳嗽は湿性咳嗽 が主体であるが,湿性咳嗽における主たる治療は基本的 に咳嗽反射の鎮静ではなく去痰である。したがって,湿 性咳嗽を伴う患者に対する理学療法において,運動前の 排痰が重要であり,聴覚刺激による咳嗽反射閾値の亢進 は気道分泌物の貯留を増大させる可能性があるかもしれ ない。一方,注意機能が低下した高齢者においては,聴 覚刺激により咳衝動への干渉とともに歩行中の障害物に 対する注意も低下することが考えられ,聴覚刺激の利用 は転倒予防のために監視下にて使用する方が安全なのか. 利益相反  開示すべきものはない。 文  献 1)Kanezaki M, Ebihara S, et al.: Effect of cigarette smoking on cough reflex induced by TRPV1 and TRPA1 stimulations. Respir Med. 2012; 106: 406‒412. 2)Canning B J, Mazzone SB, et al.: Identification of the tracheal and laryngeal afferent neurones mediating cough in anaesthetized guinea-pigs. J Physiol. 2004; 557: 543‒558. 3)Nishino T, Hiraga K, et al.: Laryngeal and respiratory responses to tracheal irritation at different depths of enflurane anesthesia in humans. Anesthesiology. 1990; 73: 46‒51. 4)Mazzone SB, McLennan L, et al.: Representation of capsaicin-evoked urge-to-cough in the human brain using functional magnetic resonance imaging. Am J Respir Crit Care Med. 2007; 176: 327‒332. 5)日本呼吸器学会 咳嗽に関するガイドライン第 2 版作成委 員会(編) :咳嗽に関するガイドライン(第 2 版).メディ カルレビュー社,大阪,2012. 6)Irwin RS, Rosen MJ, et al.: Cough. A comprehensive review. Arch Intern Med. 1977; 137: 1186‒1191. 7)Haque RA, Usmani OS, et al.: Chronic idiopathic cough: a discrete clinical entity? Chest. 2005; 127: 1710‒1713. 8)Birring SS, Brightling CE, et al.: Idiopathic chronic cough: association with organ specific autoimmune disease and bronchoalveolar lymphocytosis. Thorax. 2003; 58: 1066‒ 1070. 9)Hilton E, Marsden P, et al.: Clinical features of the urgeto-cough in patients with chronic cough. Respir Med. 2015; 109: 701‒707. 10)Patel AS, Watkin G, et al.: Improvement in health status following cough-suppression physiotherapy for patients with chronic cough. Chron Respir Dis. 2011; 8: 253‒258. 11)Lee AL, Desveaux L, et al.: Distractive Auditory Stimuli in the Form of Music in Individuals with COPD: A Systematic Review. Chest. 2015; 148: 417‒429. 12)Shingai K, Kanezaki M, et al.: Distractive Auditory Stimuli Alleviate the Perception of Dyspnea Induced by.

(5) 308. 理学療法学 第 45 巻第 5 号. Low-Intensity Exercise in Elderly Subjects with COPD. Respir Care. 2015; 60: 689‒694. 13)Lee AL, Dolmage TE, et al.: The Impact of Listening to Music During a High-Intensity Exercise Endurance Test in People with COPD. Chest. 2017. 14)Reychler G, Mottart F, et al.: Influence of ambient music on perceived exertion during a pulmonary rehabilitation session: a randomized crossover study. Respir Care. 2015; 60: 711‒717. 15)Gui P, Ebihara S, et al.: Urge-to-cough and dyspnea conceal perception of pain in healthy adults. Respir Physiol Neurobiol. 2012; 181: 214‒219. 16)Gui P, Ebihara S, et al.: Gender differences in perceptions of urge to cough and dyspnea induced by citric acid in healthy never smokers. Chest. 2010; 138: 1166‒1172. 17)Kanezaki M, Ebihara S, et al.: Perception of urge-to-cough and dyspnea in healthy smokers with decreased cough reflex sensitivity. Cough. 2010; 6: 1. 18)Gui P, Ebihara T, et al.: Gender differences in the effect of urge-to-cough and dyspnea on perception of pain in. healthy adults. Physiol Rep. 2014; 2. 19)Dicpinigaitis PV, Bhat R, et al.: Effect of viral upper respiratory tract infection on the urge-to-cough sensation. Respir Med. 2011; 105: 615‒618. 20)Davenport PW, Vovk A: Cortical and subcortical central neural pathways in respiratory sensations. Respir Physiol Neurobiol. 2009; 167: 72‒86. 21)von Leupoldt A, Dahme B: Cortical substrates for the perception of dyspnea. Chest. 2005; 128: 345‒354. 22)von Leupoldt A, Sommer T, et al.: The unpleasantness of perceived dyspnea is processed in the anterior insula and amygdala. Am J Respir Crit Care Med. 2008; 177: 1026‒1032. 23)Mitterschiffthaler MT, Fu CH, et al.: A functional MRI study of happy and sad affective states induced by classical music. Hum Brain Mapp. 2007; 28: 1150‒1162. 24)Eldridge FL, Millhorn DE, et al.: Input-output relationships of the central respiratory controller during peripheral muscle stimulation in cats. J Physiol. 1982; 324: 285‒295.. 〈Abstract〉. Effect of Distractive Auditory Stimuli on the Cough Reflex Threshold and Urge-to-Cough Induced by Citric Acid in Healty Never-smokers. Masashi KANEZAKI, PT, MSc, PhD, Nanami FURUKAWA, PTS, Sawa OTAGAKI, PTS, Ikumi OKINAKA, PTS Faculty of Health Care Sciences, Department of Physical Therapy, Himeji Dokkyo University. Purpose: The purpose of the present study was to investigate the effect of distractive auditory stimuli (DAS) on citric acid-induced cough reflex threshold and urge-to-cough. Methods: We enrolled 15 healthy volunteers. DAS were presented with earphones, while the sham condition was performed without auditory distraction. Cough reflex thresholds and urge-to-cough were evaluated by inhalation of citric acid. The cough reflex thresholds were defined as the lowest concentrations of citric acid that elicited two or more coughs (C2) and five or more coughs (C5), respectively. The urge-to-cough was evaluated using the modified Borg scale. Results: The cough reflex thresholds (C2 and C5) under the DAS condition were significantly higher than those under the sham condition. The urge-to-cough threshold under the DAS condition was significantly higher than that under the sham condition. Conclusion: Our results suggest that DAS alleviate the cough reflex and urge-to-cough induced by citric acid. Key Words: Distractive Auditory Stimuli, Cough Reflex Threshold, Urge-to-Cough.

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