【意見を表示したものの全文】 新重点密集市街地の解消に向けた事業の実施等について (平成28年10月24日付け 国土交通大臣宛て) 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。 記 1 新重点密集市街地の概要等 (1) 新重点密集市街地の概要 国は、平成7年の阪神・淡路大震災により、都市基盤が未整備のまま市街化した密集 市街地において大規模な市街地火災が発生して、尊い人命や貴重な財産が数多く失わ(注1) れた経験を踏まえ、「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」(平成 9年法律第49号)を制定した。 そして、同法の制定後においても、密集市街地の解消が進まないため、都市再生本 部(本部長内閣総理大臣)は、13年12月に都市再生プロジェクト(第三次決定)を策 定して、地震時に大きな被害が想定される危険な密集市街地のうち、「特に大火の可能 性の高い危険な市街地」を重点地区として今後10年間で解消することとした。貴省は、 上記の重点地区について、15年7月に「地震時等において大規模な火災の可能性があり 重点的に改善すべき密集市街地」(以下「重点密集市街地」という。)として、400地区、 7,971㏊を公表し、18年9月に閣議決定された住生活基本計画(全国計画)において、 23年度末までに重点密集市街地のほぼ全域で最低限の安全性を確保して、重点密集市(注2) 街地をおおむね解消することとなった。 しかし、貴省は、当時の取組速度では上記の目標達成が困難な状況にあったこと、 また、有識者から密集市街地における建物倒壊により道路が閉塞して避難が困難とな る危険性(以下「閉塞危険性」という。)が指摘されたことなどから、22年9月に新た に「地震時等に著しく危険な密集市街地」を設定することとした。そして、その設定 に当たっては、不燃領域率が40%に達すると市街地の焼失率が激減して、70%でほぼ (注3) ゼロになることから不燃領域率が40%未満であるなどと判定した地区を延焼危険性が 高い地区とした。また、被災場所から細街路及び主要生活道路を経て地区の周縁部に 至るまでに建物倒壊及び火災の影響を受けずに避難できる確率を用いて避難の困難さ を示す指標(以下、この指標を「地区内閉塞度」という。)が5段階評価中2以下であれ
ば避難できる確率が97%以上となることから、地区内閉塞度が3以上と判定した地区を 閉塞危険性が高い地区とした(以下、延焼危険性及び閉塞危険性を合わせて「延焼危 険性等」という。)。これらにより、各市区町は、23年度末までに最低限の安全性が確 保できる見込みがない重点密集市街地のうち延焼危険性等が高いと判定された地区を 地震時等に著しく危険な密集市街地として必ず設定することとなり、延焼危険性等の うちどちらか一方のみの危険性が高いと判定されるなどした地区についても、地区の 重要性等を考慮して地震時等に著しく危険な密集市街地として設定することとなった (以下、これらにより設定された密集市街地を「新重点密集市街地」という。)。 そして、23年3月に閣議決定された住生活基本計画(全国計画)において、32年度末 までに新重点密集市街地の延焼危険性等を改善し最低限の安全性を確保して、新重点 密集市街地をおおむね解消することとなった。その後、貴省は、全国の市区町におけ る新重点密集市街地の地区数及び面積を詳細に把握して、24年10月に17都府県管内の 41市区町が設定した新重点密集市街地197地区、5,745㏊を公表した。 (注1) 密集市街地 当該地区内に老朽化した木造の建築物が密集しており、 かつ、十分な公共施設が整備されていないことなどの土地の利用状 況から、防災上危険な市街地 (注2) 最低限の安全性 地震時等において同時多発火災が発生したとしても、 延焼を防止して物的被害を大幅に低減(焼失率25%程度)させるこ とにより、避難困難者がほとんど生じないことをいう。 (注3) 不燃領域率 主に町丁目の単位で設定する地区内における一定規模以 上の道路、公園等の空地面積、耐火建築物等の不燃化面積から算出 する市街地の燃えにくさを示す指標 (2) 新重点密集市街地の延焼危険性等の改善に向けた各種の事業 市区町は、貴省から、21年度までは補助金の交付を、22年度以降は社会資本整備総 合交付金等の交付をそれぞれ受けて住宅市街地総合整備事業(以下「住宅総合事業」 という。)、都市防災総合推進事業等(以下、新重点密集市街地等において延焼危険性 等の改善に向けて実施する事業を「新重点密集市街地解消事業」という。)を実施して、 延焼遮断帯となる都市計画道路や避難場所となる公園の整備を行ったり、共同建替や 耐震改修、防火改修による建築物の不燃化又は空き家等の老朽建築物の除却を行った り、また、これらを複合的に組み合わせたりして新重点密集市街地の延焼危険性等の 改善に取り組んできている。さらに、貴省は、新重点密集市街地の解消が十分に進捗 していないことなどから、延焼危険性等の改善に向けて、27年度に補助事業として新 たに密集市街地総合防災事業を創設したり、住宅・建築物安全ストック形成事業の拡 充を図ったりするなどしている。
(3) 新重点密集市街地解消事業の推進方法 都市防災総合推進事業等は、事業期間、全体事業費等を記載した事業計画(以下 「事業計画」という。)を作成して、これに基づいて事業を実施することとなっている。 しかし、住宅総合事業は、前記のとおり22年度にそれまでの補助金による事業から社 会資本整備総合交付金による事業に移行した際、地方公共団体にとって自由度が高く 創意工夫を生かすという同交付金の趣旨から事業計画の作成は義務付けられなくなっ た。一方で、貴省は、実際に事業を実施するためには具体的な事業の内容を定めてい く必要があることから、引き続き事業計画の作成に要する経費を同交付金の交付対象 にしており、さらに、住宅市街地整備ハンドブック(国土交通省住宅局市街地建築課 市街地住宅整備室編集)において、事業計画を作成することを積極的に求めている。 また、政策課題対応型都市計画運用指針(平成15年国都計第95号国土交通省都市・ 地域整備局長通知)によれば、密集市街地の整備改善に当たっては、多数の関係権利 者の利害調整を図りながら、幅広い合意形成を得て進めていく必要があることから、 地域住民等から構成されるまちづくり協議会等(以下「協議会等」という。)が主体と なって取り組むことが重要であるとされている。さらに、計画どおりに事業を進捗さ せるためには、地域住民の理解と協力が不可欠であり、貴省においても密集市街地の 解消に向けた啓発活動等の取組状況を確認するために、住民に危険度を周知している かについて調査している。 (4) 新重点密集市街地の解消状況 28年3月に閣議決定された住生活基本計画(全国計画)等によれば、図及び表1のと おり、23年度末時点の新重点密集市街地197地区、5,745haのうち、27年度末時点で72 地区、1,310㏊において延焼危険性等が改善されて最低限の安全性が確保されたことに より新重点密集市街地が解消していたが、最低限の安全性が確保されていない残りの 130地区、4,435㏊については、前記のとおり、32年度末までに新重点密集市街地を解 消することとされている。
図 新重点密集市街地の解消状況 (注)点線部分については、27年度末時点の数値と解消目標である32年度末の目標値を直線的に結んだも のである。 表1 都府県別新重点密集市街地の解消状況(平成27年度末時点) (単位:地区数、㏊) 都府県名 新重点密集市街地 解消 未解消 地区 面積 地区 面積 地区 面積 埼玉県 2 54 0 0 2 54 千葉県 1 9 1 1 1 8 東京都 113 1,683 44 645 69 1,038 神奈川県 25 690 22 633 3 57 愛知県 3 104 0 0 3 104 滋賀県 2 10 0 0 2 10 京都府 13 362 0 0 13 362 大阪府 11 2,248 0 0 11 2,248 兵庫県 4 225 4 26 4 199 和歌山県 2 13 0 0 2 13 徳島県 8 30 0 0 8 30 香川県 1 3 0 0 1 3 愛媛県 1 4 1 4 0 0 高知県 4 22 0 0 4 22 長崎県 4 262 0 0 4 262 大分県 2 26 0 0 2 26 沖縄県 1 2 0 0 1 2 計 17都府県 197 5,745 72 1,310 130 4,435 注(1) 面積は小数点第1位以下を四捨五入しているため計が一致しない場合がある。 注(2) 千葉県の1地区及び兵庫県の4地区については、地区内の一部において延焼危険性等 が改善され、最低限の安全性を確保したとして、当該地区を解消及び未解消の両方に 計上しているため、地区数の計は一致しない(解消及び未解消の地区数の計上方法は、 本文においても同じ。)。
2 本院の検査結果 (検査の観点、着眼点、対象及び方法) 前記のとおり、社会資本整備総合交付金等により重点密集市街地及び新重点密集市街 地の解消に向けて様々な事業を実施してきているところであるが、27年度末時点におい て4,435haの新重点密集市街地が解消されていないことから、32年度末までにおおむね解 消するという目標を達成するためには、更なる対策が必要な状況となっている。 そこで、本院は、効率性、有効性等の観点から、新重点密集市街地解消事業は進捗し ているか、特に、災害時に重要となる一時避難場所等が指定されている新重点密集市街 地の解消は進捗しているかなどに着眼して検査した。 検査に当たっては、10都府県管内の28市区が、新重点密集市街地において、昭和58年(注4) (注5) 度から平成27年度までの間に実施した新重点密集市街地解消事業(事業費1700億6935万 余円、交付金等交付額781億9360万余円)を対象として、実績報告書等の関係書類及び現 地の状況を確認するなどしてその進捗状況等について会計実地検査を行った。 (注4) 10都府県 東京都、京都、大阪両府、埼玉、神奈川、愛知、兵庫、高 知、長崎、大分各県 (注5) 28市区 川口、横浜、川崎、安城、京都、大阪、堺、豊中、守口、寝 屋川、門真、東大阪、神戸、高知、長崎、大分各市、台東、墨田、 品川、目黒、大田、世田谷、渋谷、中野、豊島、北、荒川、足立各 区 (検査の結果) 検査したところ、次のような事態が見受けられた。 (1) 新重点密集市街地解消事業の実施状況 28市区において、新重点密集市街地解消事業を実施している地区は、176地区のうち 151地区となっていた。 28市区における27年度末現在の新重点密集市街地の解消状況についてみると、表2の とおり、新重点密集市街地解消事業を実施している151地区のうち54地区(27年度まで の事業費計488億3499万余円、交付金等交付額計234億8179万余円)は延焼危険性等を 改善して最低限の安全性が確保され、新重点密集市街地が解消しており、その割合 (以下、27年度末現在で新重点密集市街地が解消している地区数の割合を「解消割 合」という。)は35.7%となっている。また、4地区(同事業費計21億0061万余円、同 交付額計6億9415万余円)は、地区内の一部において最低限の安全性が確保されており、 93地区(同事業費計1191億3374万余円、同交付額計540億1765万余円)は最低限の安全
性が確保されておらず、新重点密集市街地は解消していない状況となっている。 新重点密集市街地の地区内に指定された一時避難場所等は、地区内の延焼危険性等 が高いことから、新重点密集市街地の地区外に指定された一時避難場所等と比較して 安全性が低くなっている。また、新重点密集市街地の地区内の一時避難場所等が危険 になったなどの場合には、より規模の大きい広域避難場所に避難することになるが、 その際には延焼危険性等が高い当該地区内を移動することになる。このため、一時避 難場所等及び避難の安全性を確保するためにも新重点密集市街地解消事業を適切に実 施するなどして、早期に最低限の安全性を確保して新重点密集市街地を解消する必要 がある。 しかし、28市区151地区のうち、88地区において学校、公園等の一時避難場所等が新 重点密集市街地の地区内に指定されていて、このうち、25地区は延焼危険性等を改善 して最低限の安全性が確保され、新重点密集市街地が解消していたが、解消割合は28. 4%と上記151地区の解消割合よりも低くなっていて、残りの63地区(同事業費計1010 億6790万余円、同交付額計466億2296万余円)は最低限の安全性が確保されておらず、 新重点密集市街地は解消していなかった。 表2 新重点密集市街地解消事業の進捗状況等 左のうち最低 限の安全性を 左に該当 事業の実施状況、地区の状況等 する地区 確保している 解消割合 地区 (A) (B) (C)=(B)/(A) 新重点密集市街地解消事業を実施 151地区 54地区 35.7% 地区内に一時避難場所等を指定 88地区 25地区 28.4% (2) 住宅総合事業の進捗状況等 前記の151地区において実施している新重点密集市街地解消事業は、道路や公園の整 備、共同建替や耐震改修、防火改修、老朽建築物等の除却等を行う事業である住宅総 合事業が121地区と最も多かった。 前記のとおり、住宅総合事業は、22年度に、事業計画の作成は義務付けられなくな ったが、貴省は、事業計画を作成することを積極的に求めているところであり、32年 度末までに新重点密集市街地を解消するためには、実際に事業を実施するに当たり、 事業計画を定めて、これに基づく進捗状況を把握しておくことなどが重要である。 そこで、住宅総合事業の事業計画の作成状況についてみたところ、121地区(27年度
までの事業費計1083億5612万余円、交付金等交付額計508億6910万余円)のうち、61地 区(同事業費計632億1137万余円、同交付額計303億4936万余円)では作成しており、 残りの60地区(同事業費計451億4474万余円、同交付額計205億1974万余円)では作成 していなかった。 そして、事業計画を作成している61地区においては、27年度末現在で27地区が延焼 危険性等を改善して新重点密集市街地が解消しており、表3のとおり、その解消割合は 44.2%、事業経過期間を考慮した事業費の進捗率の割合(以下「進捗率比」とい (注6) う。)は平均で61.8%となっていたのに対し、事業計画を作成していない60地区におい ては、17地区の解消にとどまり、その解消割合は28.3%と低くなっており、進捗率比 は、事業期間や全体事業費が確認できないことから、算出することができない状況と なっていた。 また、前記のとおり、密集市街地の整備改善に当たっては、協議会等が主体となっ て取り組むことが重要であるとされており、さらに、貴省において密集市街地の解消 に向けた啓発活動等の取組状況を確認するために、住民に危険度を周知しているかに ついて調査しているところであり、地域住民の意識啓発等のためには、地域住民に対 してハザードマップ等により延焼危険性等に基づいた危険度を公表して周知すること も有効である。 そこで、121地区における協議会等の設置状況等についてみると、94地区は設置して おり、残りの27地区は設置していなかった。また、危険度の公表の状況についてみる と、48地区は公表しており、残りの73地区は公表していなかった。 そして、進捗率比についてみると、前記のとおり、121地区のうち事業計画を作成し ている61地区の進捗率比の平均は61.8%であったのに対して、61地区のうち協議会等 を設置して、かつ、危険度を公表している27地区は進捗率比の平均が79.1%と高くな っていた。また、解消割合についてみると、前記61地区の解消割合44.2%に対して、 このうち協議会等を設置せず、かつ、危険度を公表していない8地区の解消割合は12. 5%と低くなっていた。
表3 住宅総合事業の進捗状況等 左のうち最低 限の安全性を 左に該当 事業の実施状況、地区の状況等 する地区 確保している 解消割合 地区 (A) (B) (C)=(B)/(A) 事業計画を作成(D) 61地区 27地区 44.2% 事業計画を未作成 60地区 17地区 28.3% (D)のうち協議会等未設置及び危険度未公表 8地区 1地区 12.5% 上記について、事業計画を作成して事業を実施しており、協議会等を設置して、か つ、危険度を公表することなどにより、計画どおり事業が進捗している事例を示すと 次のとおりである。 <参考事例> 東京都品川区は、同区豊町4丁目地区を含む地域において、新重点密集市街地解消事業 を実施するため、事業期間10年(平成19年度から28年度まで)、全体事業費27億3000万円 で、道路、公園等の整備を行うこととする住宅総合事業の事業計画を作成している。そ して、同区は、事業の実施に当たり、地域住民との合意形成を図るなどのために、協議 会等を設置して、ハザードマップ等により地区の危険度を公表するなどしており、27年 度末現在における事業実績額は31億1882万余円、進捗率比は111.1%となっていて、不燃 領域率は23年度末時点の33.0%が27年度末時点では35.7%になっている。このように、 事業が計画どおり進捗していることなどから、同区は、32年度末には不燃領域率が40% に達するなどして最低限の安全性が確保され、新重点密集市街地は解消するとしている。 前記について、事業計画を作成しているが、協議会等を設置しておらず、危険度を 公表していないなどのため、事業が進捗していない事例を示すと次のとおりである。 <事例1> 長崎県長崎市は、中央北部地区において、新重点密集市街地解消事業を実施するため に、事業期間20年(平成9年度から28年度まで)、全体事業費55億6600万円で、道路、公 園等の整備を行うこととする住宅総合事業の事業計画を作成している。しかし、事業開 始から19年が経過しているにもかかわらず、同市は、地域住民との合意形成を図るため の協議会等を設置しておらず、ハザードマップ等により危険度を公表していなかった。 また、用地買収も難航したことなどから、27年度末現在における事業実績額は28億9488 万余円、進捗率比は54.7%にとどまっていた。そして、同地区における27年度末現在の 地区内閉塞度は3となっていて、最低限の安全性が確保されておらず、新重点密集市街地 は解消していなかった。 (注6) 進捗率比 事業費ベースの進捗率を経過期間により補正して、次の算 式により算出した割合である。なお、事業費ベースの進捗率は100% を上限としている。 (事業開始から平成27年度までの実績額)/ (事業開始から平成27年度までの経過期間) 進捗率比(%)= (事業期間の全体事業費)/(事業期間)
(3) 新重点密集市街地の地区の設定状況等 貴省は、新重点密集市街地の地区の設定に当たっては、都市計画道路等で囲まれた 一定の規模(1ha)以上を単位とすることが望ましいとしている。 そこで、新重点密集市街地解消事業を実施している151地区の設定状況についてみた ところ、8地区において1㎞程度離れた飛び地を含めて1地区としていたり、151地区の 1地区当たりの面積は平均で34.8haとなっているのに対して、5地区において1地区の面 積を100ha以上に設定していたりしていた。このように、地区の連続性がない飛び地を 含めて1地区として設定したり、1地区の面積を過大に設定したりしていると、設定し た地区内に解消した区域と解消していない区域が混在して当該地区の最低限の安全性 が確保されているか適切に判定されず危険な区域が地区内に残存するおそれがある。 上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。 <事例2> 大阪市は、新重点密集市街地の設定に当たり、重点密集市街地22地区1,360㏊における 平成23年度調査時点の状況を調査した結果、区画整理事業の実施により延焼危険性等の 改善が見込まれる1地区を除き飛び地を含めた21地区をまとめた計1,333㏊を1地区として いた。そして、同市は、新重点密集市街地の解消条件を、不燃領域率40%以上、かつ、 地区内閉塞度2以下と設定しており、27年度調査時点での当該地区の不燃領域率は40.5% となっていて、32年度末には地区内閉塞度が2になると推計していることから、最低限の 安全性が確保され、新重点密集市街地は解消するとしていた。 しかし、27年度調査時点の延焼危険性等を上記の21地区について地区別にみると、不 燃領域率40%未満が15地区(28.1%~39.9%)、地区内閉塞度は3又は4が12地区となって いた。このように、1地区の面積を過大に設定して延焼危険性等を判定した場合には、最 低限の安全性が確保されているか適切に判定されず局所的に延焼危険性等が高い区域が 残存するおそれがある。 (改善を必要とする事態) 新重点密集市街地の地区内に一時避難場所等が指定されているのに最低限の安全性を 確保しておらず新重点密集市街地が解消していない事態、事業計画を作成しておらず事 業の進捗状況が確認できない事態、協議会等を設置していなかったり、ハザードマップ 等により新重点密集市街地の危険度を公表していなかったりなどしていて事業が進捗し ていない事態及び新重点密集市街地の設定に当たり、過大な面積を1地区として設定する などしていて、最低限の安全性が確保されているか適切に判定されず危険な区域が地区 内に残存するおそれがある事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。 (発生原因) このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。
ア 市区において、新重点密集市街地内に一時避難場所等が指定されている地区につい て早期に延焼危険性等を改善することの重要性等に対する理解が十分でないこと イ 市区において、事業計画を作成すること、協議会等を設置すること及びハザードマ ップ等により新重点密集市街地の危険度を公表することの重要性等に対する理解が十 分でないこと ウ 貴省において、市区町に対して、ア及びイの重要性等について他の地区の事例を参 考として示すなどの情報提供が十分でないこと、新重点密集市街地の設定に際して地 区の面積等の設定について具体的に明示していないこと 3 本院が表示する意見 貴省は、32年度末までに地震時等に著しく危険な密集市街地である新重点密集市街地 を解消するために、密集市街地総合防災事業を創設するなどしている。一方、市区町に よる新重点密集市街地解消事業は長期間にわたって実施される場合が多く見受けられて おり、計画どおり進捗させるためには、地域住民と速やかに合意形成を図ることなどが 重要である。また、新重点密集市街地内に一時避難場所等が指定されている地区も数多 く見受けられているところである。 ついては、貴省において、新重点密集市街地を解消するための新重点密集市街地解消 事業が適切に実施され、これまでに多額の国費を投じて実施された事業の効果が発現さ れ、目標期間内の新重点密集市街地解消に資するよう、次のとおり意見を表示する。 ア 市区町に対して、新重点密集市街地内に一時避難場所等が指定されている地区につ いて早期に最低限の安全性を確保して新重点密集市街地を解消することの重要性等に ついて周知徹底し、必要に応じて助言すること イ 事業計画を作成すること、協議会等を設置すること及びハザードマップ等により新 重点密集市街地の危険度を公表することの重要性等について、他の地区の事例集等を 作成して、市区町に対して情報提供するなどして周知徹底し、必要に応じて助言する こと ウ 市区町に対して、地区の状況に応じて最低限の安全性が確保されているかきめ細か く適切に判定することについて具体的に明示し、必要に応じて助言すること