-23-
教育研究論集 第4号(2014年3月発行)
<論文>
小学生の視力低下と規定要因に関する分析
米嶋 美智子・大谷 直史
A Report on Myopia and its Causes of Elementary School Children
YONESHIMA Michiko, OOTANI Tadasi
キーワード:視力低下,小学生,規定要因
Keywords: myopia, elementary school children, regulation factors
<論文>
小学生の視力低下と規定要因に関する分析
米嶋 美智子・大谷 直史
A Report on Myopia and its Causes of Elementary School Children
YONESHIMA Michiko, OOTANI Tadasi
キーワード:視力低下,小学生,規定要因
Keywords: myopia, elementary school children, regulation factors
1. はじめに
文部科学省の「平成 25 年度学校保健統計調査速報」1によると,小学生の上位を占める主な疾患・異常は,「う 歯」54.14%が最も多く,次いで,「裸眼視力 1.0 未満の者」30.52%,「鼻・副鼻腔疾患」12.07%の順である。中 学生・高校生になると最も高い疾患・異常は,「裸眼視力 1.0 未満の者」に入れ換わり,高校生で「裸眼視力 1.0 未満の者」は,65.84%で過去最高となった。また,小学生と中学生は,平成 24 年度に 30.68%,54.38%と過 去最高値を記録している。 図1・2には,昭和 23 年度(1948 年)以降の 8~15 歳までの「裸眼視力 1.0 未満の者」の割合の推移を性別 に示したが,増減の度合いはあるものの,一貫して割合が上昇していることが分かる。 このように,小学生の視力の低下は,低年齢化してきており,深刻な問題である。本論では,こうした状況 を鑑み,まず先行研究を整理した上で,鳥取市内の T 小学校を事例として,視力低下の規定要因を明らかにす ることを目的とする。本論で用いたのは,毎年各学校で行われている健康診断の結果と,同じく毎年多くの学 校で行われているであろう児童の生活に関する質問紙調査結果である。 さて,これまで視力低下の要因については,さまざまなことが語られてきた。年齢とともに視力が低下する こと,男子よりも女子で視力低下が進んでいることは先の図から確認できる。発達要因として身長の伸びが視 力低下に影響していることは,神谷貞義ら2が指摘している。また,視力低下の環境要因として最も指摘(調査) されてきたのが学習時間との関連である。椛勇三郎ら3は,中学生を対象として,学習時間とともに,読書時間, テレビ視聴距離(2m未満),親兄弟の近視がそれぞれ独立に視力低下と関連しているとする。古田真司ら4は, 中高生を対象として,学習時間と身長の伸びが視力低下と独立に関わっているとする。また高橋ひとみ5は,や はり学習時間と,睡眠時間の減少,外遊び時間の減少が視力低下と関連している可能性を示している。 学習時間とともに,メディアの影響を考えるという動機をもとに,テレビ視聴時間や電子ゲーム接触時間と の関連を問う調査も多い。しかし,先にあげた椛勇三郎らの調査,古田真司らの調査では,テレビ視聴時間・ 電子ゲーム接触時間のいずれも視力低下との関連性は否定されている。同じく,池田美由紀ら6の調査,白岩義 夫ら7の調査においても直接的な関連性は見出されていない(池田らの調査ではテレビゲーム開始年齢とテレビ ゲーム経験年数との関連は指摘されている)。また,先の神谷貞義らの調査では,身長の伸び・体重の増加とと もに,自宅での勉強時間に正の相関,テレビ視聴時間に負の相関を見出している。 調査対象や調査方法,分析手法の違いも多く,一概にまとめることはできないが,先行研究で支持されてい る視力低下の環境要因は,学習時間,読書時間,外遊び時間の減少である。そして,近年では,テレビ視聴時米嶋美智子他:小学生の視力低下と規定要因に関する分析 間や電子ゲーム時間,情報機器への接触時間などは実証されてはいないが,関心は高い。これらに成長に伴う もの,遺伝によるもの,性別によるものを加えれば,おおむね先行研究での関心は網羅される8。 図 1 裸眼視力 1.0 未満の割合の推移(女) 図2 裸眼視力 1.0 未満の割合の推移(男)
2. 調査方法及び結果
1)調査方法本研究の対象者数,視力検査方法,調査期間,調査方法,調査項目は表 1 の通りである。解析は,spss20 で行った。 0 10 20 30 40 50 60 70 19 50 19 52 19 54 19 56 19 58 19 60 19 62 19 64 19 66 19 68 19 70 19 72 19 74 19 76 19 78 19 80 19 82 19 84 19 86 19 88 19 90 19 92 19 94 19 96 19 98 20 00 20 02 20 04 20 06 20 08 20 10 20 12 (% ) 15歳 14歳 13歳 12歳 11歳 10歳 9歳 8歳 0 10 20 30 40 50 60 70 19 50 19 52 19 54 19 56 19 58 19 60 19 62 19 64 19 66 19 68 19 70 19 72 19 74 19 76 19 78 19 80 19 82 19 84 19 86 19 88 19 90 19 92 19 94 19 96 19 98 20 00 20 02 20 04 20 06 20 08 20 10 20 12 (% ) 15歳 14歳 13歳 12歳 11歳 10歳 9歳 8歳
表 1 (視力検査受検率 100%,質問紙調査の回収率 100%)
2)調査結果
(1)視力検査の結果 図3 4 月と 10 月の視力検査の結果 4 月の視力検査で視力がA9であった児童の割合は,1 年生が 90.0%,2 年生が 76.1% 3 年生が 55.3%,4 年生 が 57.1%,5 年生が 48.6%,6 年生が 37.7%であった(図3)。また,10 月の視力検査で視力がAであった児童の 割合は,1 年生が 80.0%,2 年生が 58.2%,3 年生が 50.0%,4 年生が 48.1%,5 年生が 44.6%,6 年生が 29.0%で あった。学年が進むにつれて視力が低下する児童が増えており,2 年生の 10 月を境に,急激に視力低下する児 童が増加する傾向にあった。 1年生 2年生 3年生 4年生 5年生 6年生 対象者数(名) 70 67 76 77 74 69 視力測定 アンケート調査期間 調査方法 質問紙の質問項目 ①起床時刻②起床の自立③朝食摂取状況④排便の様子⑤昼休みの外遊びの頻度⑥帰宅後の外遊び の頻度⑦外遊びや運動が好きか⑧親の近視⑨勉強時間⑩読書時間⑪テレビ視聴時間⑫ゲーム接触 時間⑬就寝時刻⑭通塾⑮習い事⑯通信教材⑰学校外でのスポーツクラブ加入状況⑱学校生活の様子 ⑲家庭生活の様子⑳自己肯定感 2013年10月上旬に保健室にて実施。国際基準に準拠したランドル環を使用した指標を使用。 2013年10月上旬に実施。 学級活動等の時間を利用して実施。1.2年生に関しては,担任が一つ一つ質問をよみあげながら実施。-25- 教育研究論集 第4号(2014年3月発行)
表 1 (視力検査受検率 100%,質問紙調査の回収率 100%)
2)調査結果
(1)視力検査の結果 図3 4 月と 10 月の視力検査の結果 4 月の視力検査で視力がA9であった児童の割合は,1 年生が 90.0%,2 年生が 76.1% 3 年生が 55.3%,4 年生 が 57.1%,5 年生が 48.6%,6 年生が 37.7%であった(図3)。また,10 月の視力検査で視力がAであった児童の 割合は,1 年生が 80.0%,2 年生が 58.2%,3 年生が 50.0%,4 年生が 48.1%,5 年生が 44.6%,6 年生が 29.0%で あった。学年が進むにつれて視力が低下する児童が増えており,2 年生の 10 月を境に,急激に視力低下する児 童が増加する傾向にあった。 1年生 2年生 3年生 4年生 5年生 6年生 対象者数(名) 70 67 76 77 74 69 視力測定 アンケート調査期間 調査方法 質問紙の質問項目 ①起床時刻②起床の自立③朝食摂取状況④排便の様子⑤昼休みの外遊びの頻度⑥帰宅後の外遊び の頻度⑦外遊びや運動が好きか⑧親の近視⑨勉強時間⑩読書時間⑪テレビ視聴時間⑫ゲーム接触 時間⑬就寝時刻⑭通塾⑮習い事⑯通信教材⑰学校外でのスポーツクラブ加入状況⑱学校生活の様子 ⑲家庭生活の様子⑳自己肯定感 2013年10月上旬に保健室にて実施。国際基準に準拠したランドル環を使用した指標を使用。 2013年10月上旬に実施。 学級活動等の時間を利用して実施。1.2年生に関しては,担任が一つ一つ質問をよみあげながら実施。学級活動等の時間を利用して実施。1. 2年生に関しては,担任が一つ一つ質問を読みあげながら実施。 2013年4月・10月上旬に保健室にて実施。国際基準に準拠したランドル環を使用した指標を使用。図4 4月と10 月の視力検査の結果の変化 4月と 10 月の視力検査で,視力が低下した児童の割合が最も高かったのは,2年生の 29.9%で,次いで3年 生が 27.6%,6年生が 27.5%,4年生が 23.4%,5年生が 17.6%,1年生が 14.3%であった。また,視力が向上し た児童の割合が最も高かったのは,4年生の 5.2%で,次いで5年生が 4.1%,3年生が 3.9%,1年生が 2.9%で あり,2年生と6年生は 0.0%であった(図4)。 図5 男女別視力検査の結果(4・10 月) 4月の視力検査で視力がAであった女子の割合は,56.2%,男子が 65.2%であった(図5)。また,10 月の視 力検査で視力がAであった女子の割合は 46.5%,男子は 57.0%であった。4・10 月の結果より,男子より女子の 方が視力低下する児童の割合が高い傾向にある。 (2) 視力検査の結果と質問紙調査との関係 図6 起床時刻×視力
82.9
70.1
68.4
71.4
78.4
72.5
14.3
29.9
27.6
23.4
17.6
27.5
2.9
3.9
5.2
4.1
0%
20%
40%
60%
80%
100%
1年生
2年生
3年生
4年生
5年生
6年生
視力変化なし
視力低下あり
視力向上あり
(n)
70
67
76
77
74
69
65.2
56.2
57.0
46.5
4.3
9.3
8.2
7.5
15.0
15.0
11.6
15.5
15.5
19.5
23.2
30.5
0%
20%
40%
60%
80%
100%
男子
女子
男子
女子
4
月
1
0
月
A
B
C
D
207
(n)
226
207
226
63.5
47.7
43.8
64.3
6.1
10.1
4.8
14.3
13.9
12.1
18.1
16.5
30.2
33.3
21.4
0%
20%
40%
60%
80%
100%
6時前
6時~6時29分
6時30分~6時59分
7時~7時29分
視力A
視力B
視力C
視力D
115
14
105
199
(n)
「7時~7時 29 分」に起床すると答えた児童の全体数は 14 名とサンプル数が少ないため,7時までに起 床した児童を対象に比較する。視力Aの児童は,「6時前に起床する」で 63.5%と最も高かった。遅起きに なるごとに,視力低下の児童の割合が増えていく傾向にある(図6)。 図7 起床の自立×視力 視力Aの児童は,「時々自分でおきる」で 56.0%と最も多かった(図7)。視力と起床の自立には,関係性 はみられない。 図8 朝食摂取×視力 児童の 97.9%が「朝ご飯を毎日食べる・時々食べない」と答えている(図8)。「毎日食べる・時々食べる」 視力Aの児童の割合は,約半数の児童であり,視力との関係性はみられない。 図9 排便×視力 排便が「ほぼ毎日でる・2 日に 1 回でる」児童の割合は 81.1%であり,その内視力Aの児童は,約半数であ り,視力との関係性はみられない(図9)。49.2
56.0
44.4
7.9
6.7
11.1
14.7
10.9
19.0
28.2
26.4
25.4
0%
20%
40%
60%
80%
100%
自分でおきる
時々自分でおきる
いつもおこしてもらう
視力A
視力B
視力C
視力D
177
193
63
(n)
50.6
54.3
77.8
7.7
11.4
14.4
5.7
11.1
27.2
28.6
11.1
0%
20%
40%
60%
80%
100%
毎日食べる
時々食べない
食べない
視力A
視力B
視力C
視力D
389
35
9
(n)
50.4
49.1
61.4
50.0
8.1
5.7
8.8
13.6
11.7
19.8
10.5
13.6
29.8
25.5
19.3
22.7
0%
20%
40%
60%
80%
100%
ほぼ毎日でる
2日に1回でる
3日に1回でる
4日以上でない
視力A
視力B
視力C
視力D
248
106
57
22
(n)
-27- 教育研究論集 第4号(2014年3月発行) 「7時~7時 29 分」に起床すると答えた児童の全体数は 14 名とサンプル数が少ないため,7時までに起 床した児童を対象に比較する。視力Aの児童は,「6時前に起床する」で 63.5%と最も高かった。遅起きに なるごとに,視力低下の児童の割合が増えていく傾向にある(図6)。 図7 起床の自立×視力 視力Aの児童は,「時々自分でおきる」で 56.0%と最も多かった(図7)。視力と起床の自立には,関係性 はみられない。 図8 朝食摂取×視力 児童の 97.9%が「朝ご飯を毎日食べる・時々食べない」と答えている(図8)。「毎日食べる・時々食べる」 視力Aの児童の割合は,約半数の児童であり,視力との関係性はみられない。 図9 排便×視力 排便が「ほぼ毎日でる・2 日に 1 回でる」児童の割合は 81.1%であり,その内視力Aの児童は,約半数であ り,視力との関係性はみられない(図9)。
49.2
56.0
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6.7
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自分でおきる
時々自分でおきる
いつもおこしてもらう
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視力B
視力C
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50.6
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毎日食べる
時々食べない
食べない
視力A
視力B
視力C
視力D
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(n)
50.4
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61.4
50.0
8.1
5.7
8.8
13.6
11.7
19.8
10.5
13.6
29.8
25.5
19.3
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0%
20%
40%
60%
80%
100%
ほぼ毎日でる
2日に1回でる
3日に1回でる
4日以上でない
視力A
視力B
視力C
視力D
248
106
57
22
(n)
図 10 昼休みの戸外活動の頻度×視力 視力Aの児童は,「昼休みによく遊ぶ」児童で 58.4%と最も高く,視力のよい児童は,外で遊んでいる傾向に ある(図 10)。 図 11 帰宅後の戸外遊びの頻度×視力 視力Aの児童は帰宅後「外で毎日遊ぶ」児童で,60%と最も高い(図 11)。また,視力Dの児童に関しては, 遊ぶ・遊ばないに関係なく,25~28%であった。 図 12 外遊びや運動の興味×視力 児童の 90%が「外遊びや運動が好き・どちらかといえば好き」と答えている(図 12)。その内,視力Aの児 童は半数であり,きらいよりは好きと答える児童の割合が多い。視力との関係性がみられない。
58.4
47.0
45.7
30.0
8.6
9.0
4.3
5.0
11.0
14.9
18.6
15.0
22.0
29.1
31.4
50.0
0%
20%
40%
60%
80%
100%
よく遊ぶ
時々遊ぶ
あまり遊ばない
遊ばない
視力A
視力B
視力C
視力D
209
134
70
20
(n)
60.0
51.8
48.7
47.7
6.7
5.4
9.0
9.8
7.8
14.3
14.1
16.3
25.6
28.6
28.2
26.1
0%
20%
40%
60%
80%
100%
よく遊ぶ
時々遊ぶ
あまり遊ばない
遊ばない
視力A
視力B
視力C
視力D
90
112
78
153
(n)
53.8
51.3
27.6
60.0
8.4
6.7
10.3
0.0
12.4
11.8
34.5
10.0
25.5
30.3
27.6
30.0
0%
20%
40%
60%
80%
100%
好き
どちらかといえば好き
どちらかといえばきらい
きらい
視力A
視力B
視力C
視力D
275
119
29
10
(n)
図 13 親の眼鏡やコンタクトレンズの使用×視力 眼鏡やコンタクトレンズを使用しない両親をもつ児童のうち,視力Aの割合は,67.1%で最も高く,両親の 視力がよいと,子どもの視力がよい傾向にあるといえる(図 13)。 図 14 普段の勉強量×視力 視力Aの児童は,「普段,帰宅してから勉強をほとんどしない」で 75%と最も高く,勉強時間が長くなるほど, 視力低下の児童が増える傾向にある(図 14)。 図 15 普段の読書量×視力 視力Aの児童は,「読書をほとんどしない」で 62.7%と最も高く,読書時間が長くなるほど,視力低下の児童 が増える傾向にある(図 15)。37.7
59.0
54.8
67.1
7.4
6.8
9.5
8.6
15.4
9.4
16.7
12.9
39.5
24.8
19.0
11.4
0%
20%
40%
60%
80%
100%
両親とも
父親だけ
母親だけ
両親とも違う
視力A
視力B
視力C
視力D
162
117
84
70
(n)
75.0
50.9
53.1
47.0
33.3
9.5
8.9
8.3
4.8
10.3
17.9
17.0
10.4
10.8
15.4
20.2
23.2
28.1
37.3
41.0
0%
20%
40%
60%
80%
100%
ほとんどしない
30分~1時間未満
1時間~2時間未満
2時間~3時間未満
3時間以上
視力A
視力B
視力C
視力D
96
112
84
83
39
(n)
62.7
53.9
47.3
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45.8
35.5
12.0
6.0
9.9
8.9
0.0
6.5
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18.0
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15.6
16.7
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22.2
31.9
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0%
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ほとんどしない
30分以内
30分~1時間未満
1時間~2時間未満
2時間~3時間未満
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視力A
視力B
視力C
視力D
75
167
91
45
24
31
(n)
-29- 教育研究論集 第4号(2014年3月発行) 図 13 親の眼鏡やコンタクトレンズの使用×視力 眼鏡やコンタクトレンズを使用しない両親をもつ児童のうち,視力Aの割合は,67.1%で最も高く,両親の 視力がよいと,子どもの視力がよい傾向にあるといえる(図 13)。 図 14 普段の勉強量×視力 視力Aの児童は,「普段,帰宅してから勉強をほとんどしない」で 75%と最も高く,勉強時間が長くなるほど, 視力低下の児童が増える傾向にある(図 14)。 図 15 普段の読書量×視力 視力Aの児童は,「読書をほとんどしない」で 62.7%と最も高く,読書時間が長くなるほど,視力低下の児童 が増える傾向にある(図 15)。
37.7
59.0
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両親とも
父親だけ
母親だけ
両親とも違う
視力A
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75.0
50.9
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33.3
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10.3
17.9
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20.2
23.2
28.1
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ほとんどしない
30分~1時間未満
1時間~2時間未満
2時間~3時間未満
3時間以上
視力A
視力B
視力C
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(n)
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9.7
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22.2
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視力A
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31
(n)
図 16 普段のテレビ視聴時間×視力 視力Aの児童は,「テレビ視聴 3 時間以上」で 68.2%と最も高く,次いで「2 時間~3 時間未満」で 59.3%と 高かった(図 16)。また,テレビをほとんど視聴していない児童でも,視力低下の児童の割合は多いが,テレビ 視聴時間と視力には逆の関係性があるといえよう。 図 17 普段の電子ゲーム接触時間×視力 児童の約半数が普段の電子ゲームの接触時間は「しない・ほとんどしない」と答えている(図 17)。2 時間以 上はサンプル数が少ないため,ゲームをしている 2 時間以内までの児童を対象に比較する。視力Aの児童は,「1 時間~2 時間未満」で 56.5%と最も高いが,電子ゲーム接触時間が短い長いに関係なく,約 50~60%の割合でお り,視力には関係性がないといえよう。 図 18 就寝時刻×視力 視力Aの児童は,9 時までに就寝している児童で 62.2%と最も高く,遅寝になるほどに,視力低下の児童が 増える傾向にある(図 18)。
47.4
50.0
43.2
51.8
59.3
68.2
7.9
15.3
8.1
6.1
3.7
4.5
5.3
15.3
18.0
14.0
11.1
9.1
39.5
19.4
30.6
28.1
25.9
18.2
0%
20%
40%
60%
80%
100%
みない・ほとんどみない
30分以内
30分~1時間未満
1時間~2時間未満
2時間~3時間未満
3時間以上
視力A
視力B
視力C
視力D
54
114
111
72
38
44
(n)
49.5
52.9
48.1
56.5
72.2
45.5
5.8
5.7
16.0
8.7
5.6
0.0
13.7
18.4
11.1
8.7
36.4
31.1
23.0
24.7
26.1
22.2
18.2
0%
20%
40%
60%
80%
100%
しない・ほとんどしない
30分以内
30分~1時間未満
1時間~2時間未満
2時間~3時間未満
3時間以上
視力A
視力B
視力C
視力D
18
46
81
87
190
11
(n)
62.2
52.0
44.3
42.9
14.4
5.9
6.6
5.7
11.1
14.9
15.1
8.6
12.2
27.2
34.0
42.9
0%
20%
40%
60%
80%
100%
21時前
21時~21時59分
22時~22時59分
23時以降
視力A
視力B
視力C
視力D
46
81
202
90
(n)
-31- 教育研究論集 第4号(2014年3月発行) 図 19 通塾×視力 視力Aは,塾に通っている児童と通っていない児童の割合がほぼ同等の半数であり,視力との関係性はみら れない(図 19)。 図 20 習い事×視力 視力Aの児童は,習い事をしていない児童の方が 7 ポイント高い(図 20)。 図 21 通信教育×視力 視力Aの児童は,プリント学習等の通信教育をしていない児童の方が 7 ポイント高い(図 21)。 図22 学校以外のスポーツクラブ加入状況×視力 視力Aの児童は,学校以外のスポーツクラブに入って運動をしている児童の方が,5 ポイント高い(図 22)。
50.7
52.4
7.2
8.6
15.2
11.9
26.9
27.1
0%
20%
40%
60%
80%
100%
塾に通っている
塾に通っていない
視力A
視力B
視力C
視力D
223
210
(n)
48.4
55.7
8.4
7.1
14.8
12.0
28.4
25.1
0%
20%
40%
60%
80%
100%
習い事をしている
習い事をしていない
視力A
視力B
視力C
視力D
250
183
(n)
46.6
54.4
9.2
7.0
13.5
13.7
30.7
24.8
0%
20%
40%
60%
80%
100%
通信教育をしている
通信教育をしていない
視力A
視力B
視力C
視力D
163
270
(n)
53.6
48.3
6.9
9.3
13.4
14.0
26.1
28.5
0%
20%
40%
60%
80%
100%
入っている
入っていない
視力A
視力B
視力C
視力D
261
172
(n)
図 23 学校生活の様子×視力 92%の児童が「学校は楽しい・まあまあ楽しい」と答えており,視力との関係性をみることができなかった (図 23)。また,「学校は楽しくない」と答えた児童の中には,視力Aの児童は 81.3%であり,特に低学年が多 かった。 図 24 家庭生活の様子×視力 94%の児童が「家庭は楽しい・まあまあ楽しい」と答えており,視力との関係性をみることができなかった (図 24)。 図25 自己肯定感 80%の児童が,「自分のことが好き・どちらかというと好き」と答えており,その内半数の割合の児童が視力 Aであった。視力との関係は見られなかった(図 25)。
49.8
52.5
38.9
81.3
7.9
7.5
11.1
6.3
14.2
13.1
22.2
28.0
26.9
27.8
12.5
0%
20%
40%
60%
80%
100%
楽しい
まあまあ楽しい
あまり楽しくない
楽しくない
視力A
視力B
視力C
視力D
239
160
18
16
(n)
49.7
57.5
62.5
42.9
8.2
7.5
6.3
13.0
15.0
6.3
42.9
29.1
20.0
25.0
14.3
0%
20%
40%
60%
80%
100%
楽しい
まあまあ楽しい
あまり楽しくない
楽しくない
視力A
視力B
視力C
視力D
330
80
16
7
(n)
54.3
47.9
56.0
51.6
9.3
6.3
2.0
19.4
9.3
15.3
16.0
22.6
27.2
30.5
26.0
6.5
0%
20%
40%
60%
80%
100%
好き
どちらかといえば好き
どちらかといえばきらい
きらい
視力A
視力B
視力C
視力D
162
190
50
31
(n)
(3)規定要因の分析 以上、単純集計の結果から、以下の点が確認された。 1) 視力検査の結果,学年が進行するにしたがって,視力低下の児童が増え,男子より女子に多かった。今回 のデータでは特に,2 年生の後半から急激に増えることが確認された。 2) 児童の視力の低下には,起床時刻,昼休みの外遊びの頻度,勉強時間,読書時間,テレビの視聴時間,就 寝時刻等の環境要因と親の近視10の遺伝要因に関係性がみられた。 ここでクロス集計において視力と関連が見られた項目と,先行研究において関連が指摘されてきた項目を独 立変数,視力「A,B,C,D」をそれぞれ,「1.0,0.7,0.3,0.1」に換算した数値を従属変数として重回帰分析 を行った。その結果,有意に関連が確認されたのは,影響の大きい順に「学年」・「母親近視」・「父親近視」・ 「テレビ視聴時間」・「起床時刻」であった。学年が進むにつれ,また,親が近視であるほど,テレビ視聴時 間が短く,起床時間が遅いほど視力の低い児童が多い結果であった。 表 2 重回帰分析結果3. 考察
1)児童の視力低下と成長の関係について T小学校の視力検査の結果及び,生活に関する質問紙調査の結果をも とに,T小学生の視力低下の規定要因について考察する。 平成 25 年度文部科学省の「学校保健統計調査」11によると,小学生の 裸眼視力 1.0 未満の児童の割合は,学年が進むにつれて増加し,どの学 年においても男子より女子に多い(図 26)。 佐古博愛12は,「近視の頻度は男女によって差があるが,これは古くか ら知られておって,男女の生物学的性質,発育,生活様式等に大きな差 があるためである」と述べているように,小学生の視力低下の頻度につ いては,戦前から現代もなお変わりなく,成長と性差が関与している。本調査では重回帰分析を経ても学年は 強い規定力を持っていたが,性は有意な関係性を示さなかった。また,T小学校では,2 年生の後半から,視力 低下児童が急激に増えることが確認され,一見,児童の発育量のピーク時期よりも早い低学年から既に視力低 下児童が増え始めているように見えた。しかし,眼科受診結果から,遠視や乱視,調節痙攣,近視と,近視以 外の診断も含まれる学年の特性が関与していた。今後,小学校の健康診断の視力検査のデータおよび眼科医の 診断をもとに,慎重な分析が必要と思われる。 非標準化係数(B) 標準偏差誤差 t値 標準化係数(β) 有意確率 (定数) 2.202 .464 4.749 .000 学年 -.086 .013 -6.562 -.359 .000 母親近視 -.147 .035 -4.253 -.181 .000 父親近視 -.125 .036 -3.476 -.148 .001 テレビ視聴時間 .055 .017 3.217 .143 .001 起床時刻 -.110 .044 -2.489 -.110 .013 女ダミー -.060 .038 -1.548 -.074 .122 読書時間 -.026 .018 -1.401 -.063 .162 勉強時間 .019 .019 .997 .049 .319 就寝時刻 -.020 .021 -.954 -.047 .341 学校の昼休みは 外で遊びますか -.013 .023 -.569 -.028 .570 調整済み R2 乗 .224 図26 裸眼視力 1.0 以下の割合 (H25 年度 学校保健統計調査より)-33- 教育研究論集 第4号(2014年3月発行) 図 23 学校生活の様子×視力 92%の児童が「学校は楽しい・まあまあ楽しい」と答えており,視力との関係性をみることができなかった (図 23)。また,「学校は楽しくない」と答えた児童の中には,視力Aの児童は 81.3%であり,特に低学年が多 かった。 図 24 家庭生活の様子×視力 94%の児童が「家庭は楽しい・まあまあ楽しい」と答えており,視力との関係性をみることができなかった (図 24)。 図25 自己肯定感 80%の児童が,「自分のことが好き・どちらかというと好き」と答えており,その内半数の割合の児童が視力 Aであった。視力との関係は見られなかった(図 25)。
49.8
52.5
38.9
81.3
7.9
7.5
11.1
6.3
14.2
13.1
22.2
28.0
26.9
27.8
12.5
0%
20%
40%
60%
80%
100%
楽しい
まあまあ楽しい
あまり楽しくない
楽しくない
視力A
視力B
視力C
視力D
239
160
18
16
(n)
49.7
57.5
62.5
42.9
8.2
7.5
6.3
13.0
15.0
6.3
42.9
29.1
20.0
25.0
14.3
0%
20%
40%
60%
80%
100%
楽しい
まあまあ楽しい
あまり楽しくない
楽しくない
視力A
視力B
視力C
視力D
330
80
16
7
(n)
54.3
47.9
56.0
51.6
9.3
6.3
2.0
19.4
9.3
15.3
16.0
22.6
27.2
30.5
26.0
6.5
0%
20%
40%
60%
80%
100%
好き
どちらかといえば好き
どちらかといえばきらい
きらい
視力A
視力B
視力C
視力D
162
190
50
31
(n)
(3)規定要因の分析 以上、単純集計の結果から、以下の点が確認された。 1) 視力検査の結果,学年が進行するにしたがって,視力低下の児童が増え,男子より女子に多かった。今回 のデータでは特に,2 年生の後半から急激に増えることが確認された。 2) 児童の視力の低下には,起床時刻,昼休みの外遊びの頻度,勉強時間,読書時間,テレビの視聴時間,就 寝時刻等の環境要因と親の近視10の遺伝要因に関係性がみられた。 ここでクロス集計において視力と関連が見られた項目と,先行研究において関連が指摘されてきた項目を独 立変数,視力「A,B,C,D」をそれぞれ,「1.0,0.7,0.3,0.1」に換算した数値を従属変数として重回帰分析 を行った。その結果,有意に関連が確認されたのは,影響の大きい順に「学年」・「母親近視」・「父親近視」・ 「テレビ視聴時間」・「起床時刻」であった。学年が進むにつれ,また,親が近視であるほど,テレビ視聴時 間が短く,起床時間が遅いほど視力の低い児童が多い結果であった。 表 2 重回帰分析結果3. 考察
1)児童の視力低下と成長の関係について T小学校の視力検査の結果及び,生活に関する質問紙調査の結果をも とに,T小学生の視力低下の規定要因について考察する。 平成 25 年度文部科学省の「学校保健統計調査」11によると,小学生の 裸眼視力 1.0 未満の児童の割合は,学年が進むにつれて増加し,どの学 年においても男子より女子に多い(図 26)。 佐古博愛12は,「近視の頻度は男女によって差があるが,これは古くか ら知られておって,男女の生物学的性質,発育,生活様式等に大きな差 があるためである」と述べているように,小学生の視力低下の頻度につ いては,戦前から現代もなお変わりなく,成長と性差が関与している。本調査では重回帰分析を経ても学年は 強い規定力を持っていたが,性は有意な関係性を示さなかった。また,T小学校では,2 年生の後半から,視力 低下児童が急激に増えることが確認され,一見,児童の発育量のピーク時期よりも早い低学年から既に視力低 下児童が増え始めているように見えた。しかし,眼科受診結果から,遠視や乱視,調節痙攣,近視と,近視以 外の診断も含まれる学年の特性が関与していた。今後,小学校の健康診断の視力検査のデータおよび眼科医の 診断をもとに,慎重な分析が必要と思われる。 非標準化係数(B) 標準偏差誤差 t値 標準化係数(β) 有意確率 (定数) 2.202 .464 4.749 .000 学年 -.086 .013 -6.562 -.359 .000 母親近視 -.147 .035 -4.253 -.181 .000 父親近視 -.125 .036 -3.476 -.148 .001 テレビ視聴時間 .055 .017 3.217 .143 .001 起床時刻 -.110 .044 -2.489 -.110 .013 女ダミー -.060 .038 -1.548 -.074 .122 読書時間 -.026 .018 -1.401 -.063 .162 勉強時間 .019 .019 .997 .049 .319 就寝時刻 -.020 .021 -.954 -.047 .341 学校の昼休みは 外で遊びますか -.013 .023 -.569 -.028 .570 調整済み R2 乗 .224 図26 裸眼視力 1.0 以下の割合 (H25 年度 学校保健統計調査より)2)小学生の視力低下の規定要因について 小学生の裸眼視力 1.0 未満には,低学年の遠視や乱視等も含まれるが,ここでは,小学生に頻度の多い,近 視に焦点をあて考察する。 近視の環境要因については,はじめに示した通り,学習時間の増加,読書時間の増加,テレビ視聴距離(2 m未満),睡眠時間の減少,外遊び時間の減少,テレビ視聴時間や電子ゲーム接触時間の増加などが関係してい るとの報告がある。また,国外の先行研究では,Jenny 13らが,児童の近視には,読書の連続と読書時の距離 に関係性があると指摘している。また,Kathryn ら14の研究でも近業時間が短く,戸外活動が長い児童ほど,近 視になりにくいという結果がでている。このように,既存の研究で多く指摘されていた学習時間,読書時間, 外遊び時間の減少等が視力に関連すると思われたが,今回のT小学校の調査では,同様の傾向はみられたもの の,有意な関係性は見いだせなかった。そして,テレビ視聴時間が長いほど視力低下になりやすいという通常 の考えとは逆の関係性がみられた。これは,神谷貞義ら2の先行研究と同様の結果であった。従来からディスプ レイを長時間凝視することによって近視が進行すると言われてきたが,近視と直接的な関係については明らか になっていない。 次に,起床時刻は,視力低下に有意に関係しており,遅起きの児童に視力低下が多かった。4 月と 10 月の視 力検査の結果を用いても,ほぼ同様を示していた。この結果は先行研究にはなく,新しい知見である。ただ, T小学校は,公共交通機関にて通学する児童が約 65%であり,他校より早起きをする児童が多い。そのため,起 床時刻が遅い児童は,視力低下になりやすいとは一概にはいえず,また,早起きと視力の関係について妥当性 のある説明をすることができない。また,解析のR2値もやや低めなので,質問紙の設問や取り方も検討する必 要があるだろう。この結果がどこまで普遍性を持つのか,今後の継続的な調査と他校との比較が課題として残 る。 最後に,視力低下の児童は,親の近視に有意に関係している結果から,専門医による近視の研究結果と同様, 小学生の近視には,遺伝的要因が関わっていることは明らかであるといえよう。
4.おわりに
佐古博愛15の著書に,「戦前より学校近視は急激の増加を見たので,陸軍省はかねてより,学生が徴兵検査に おいて甲種合格でありながら,近視のために兵役に服することが出来ないことに困惑していたので,文部省に 対して近視の予防対策を立てるよう申し入れた」と記してある。このように戦前から近視の増加を重要視され てきたのにも関わらず,今もなお,増加し続けている。近視は仕方ないとあきらめていいものだろうか。 現代の眼科医療の分野では,近視治療として,視力回復手術の最先医療に趣が置かれていることもあり,小 学生の視力低下の深刻さに注目されにくい現状にあるのではないかと考える。そのため,学校で子どもの健康 管理を担っている養護教諭等も児童の視力低下をあまり重要視していないのであろう。また,健康診断の結果 は,データ化されているものの,そのデータをじっくり分析されることは少ない。その結果,データから発信 されている情報に気づきにくいのではと考える。その意味で本論は,データを有効に利用するための一つの方 法として提起したい。 次に,学校で行われている視力検査は,1992 年より,視力をABCDで表すように検査が簡略化され,1995 年には,視力検査は教育上支障をきたさないことが主な目的であることから,裸眼視力を測定することが望ま しいが,眼鏡やコンタクトレンズを常用している者については,裸眼視力の検査を省略でるようになった。こ のように,学校では視力検査が簡略化し,児童や保護者に伝える際も簡略化した検査結果を伝えている。そう すると,視力Bは「0.9~0.7」,視力Cは「0.6~0.3」などと数値に幅がある上,視力の変化に気づきにくい。-35- 教育研究論集 第4号(2014年3月発行) 2)小学生の視力低下の規定要因について 小学生の裸眼視力 1.0 未満には,低学年の遠視や乱視等も含まれるが,ここでは,小学生に頻度の多い,近 視に焦点をあて考察する。 近視の環境要因については,はじめに示した通り,学習時間の増加,読書時間の増加,テレビ視聴距離(2 m未満),睡眠時間の減少,外遊び時間の減少,テレビ視聴時間や電子ゲーム接触時間の増加などが関係してい るとの報告がある。また,国外の先行研究では,Jenny 13らが,児童の近視には,読書の連続と読書時の距離 に関係性があると指摘している。また,Kathryn ら14の研究でも近業時間が短く,戸外活動が長い児童ほど,近 視になりにくいという結果がでている。このように,既存の研究で多く指摘されていた学習時間,読書時間, 外遊び時間の減少等が視力に関連すると思われたが,今回のT小学校の調査では,同様の傾向はみられたもの の,有意な関係性は見いだせなかった。そして,テレビ視聴時間が長いほど視力低下になりやすいという通常 の考えとは逆の関係性がみられた。これは,神谷貞義ら2の先行研究と同様の結果であった。従来からディスプ レイを長時間凝視することによって近視が進行すると言われてきたが,近視と直接的な関係については明らか になっていない。 次に,起床時刻は,視力低下に有意に関係しており,遅起きの児童に視力低下が多かった。4 月と 10 月の視 力検査の結果を用いても,ほぼ同様を示していた。この結果は先行研究にはなく,新しい知見である。ただ, T小学校は,公共交通機関にて通学する児童が約 65%であり,他校より早起きをする児童が多い。そのため,起 床時刻が遅い児童は,視力低下になりやすいとは一概にはいえず,また,早起きと視力の関係について妥当性 のある説明をすることができない。また,解析のR2値もやや低めなので,質問紙の設問や取り方も検討する必 要があるだろう。この結果がどこまで普遍性を持つのか,今後の継続的な調査と他校との比較が課題として残 る。 最後に,視力低下の児童は,親の近視に有意に関係している結果から,専門医による近視の研究結果と同様, 小学生の近視には,遺伝的要因が関わっていることは明らかであるといえよう。
4.おわりに
佐古博愛15の著書に,「戦前より学校近視は急激の増加を見たので,陸軍省はかねてより,学生が徴兵検査に おいて甲種合格でありながら,近視のために兵役に服することが出来ないことに困惑していたので,文部省に 対して近視の予防対策を立てるよう申し入れた」と記してある。このように戦前から近視の増加を重要視され てきたのにも関わらず,今もなお,増加し続けている。近視は仕方ないとあきらめていいものだろうか。 現代の眼科医療の分野では,近視治療として,視力回復手術の最先医療に趣が置かれていることもあり,小 学生の視力低下の深刻さに注目されにくい現状にあるのではないかと考える。そのため,学校で子どもの健康 管理を担っている養護教諭等も児童の視力低下をあまり重要視していないのであろう。また,健康診断の結果 は,データ化されているものの,そのデータをじっくり分析されることは少ない。その結果,データから発信 されている情報に気づきにくいのではと考える。その意味で本論は,データを有効に利用するための一つの方 法として提起したい。 次に,学校で行われている視力検査は,1992 年より,視力をABCDで表すように検査が簡略化され,1995 年には,視力検査は教育上支障をきたさないことが主な目的であることから,裸眼視力を測定することが望ま しいが,眼鏡やコンタクトレンズを常用している者については,裸眼視力の検査を省略でるようになった。こ のように,学校では視力検査が簡略化し,児童や保護者に伝える際も簡略化した検査結果を伝えている。そう すると,視力Bは「0.9~0.7」,視力Cは「0.6~0.3」などと数値に幅がある上,視力の変化に気づきにくい。 そこで,検査結果を管理している学校はもちろんのこと,児童自身が視力の変化にも気づけるように,0.1 刻み の数値化で視力検査をすることが適していると考える。視力検査をする側は,十分な検査時間を確保しなけれ ばならないが,小学生の健康を優先に考えると,丁寧な視力検査をしていかなければならいと考える。そして, 小学生からの視力低下の予防として,学校や家庭で行える保健指導モデルの構築が急がれる。 米嶋 美智子(鳥取大学附属小学校) 大谷 直史(鳥取大学教育支援機構教員養成センター)1学校保健統計調査-平成 25 年度(速報)の結果の概要。 http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2013/12/13/1342243_3.pdf 2神谷貞義・古田 加代子・宮尾 克「新しい視点から見た学校近視の解析 その1児童,生徒の身長の伸びと視 力についての統計学的観察」『日本眼科紀要』第 36 号,1985 年。 3椛勇三郎・西田和子「横断的調査による「女子中学生の視力低下」の要因分析」『日本公衆衛生誌』第 2 号,2007 年。 4古田真司・古田 加代子・宮尾 克「中・高校生の近視の進行に関する縦断的研究」『学校保健研究』42 号,2000 年。 5高橋ひとみ「子どもの視力と生活環境(Ⅳ)」桃山学院大学総合研究所紀要」第 29 巻第 2 号,2003 年。 6池田美由紀・鬼頭昭三「視力低下幼少児の増加とテレビゲームとの関連について」『保健の科学』第 41 巻第 5 号,1999 年。 7白岩義夫・増田公男・林文俊・石垣尚男「幼稚園児のテレビ視聴時間及びテレビゲーム行動と視力の関係」『愛 総研研究報告』創刊号。 8学習時やテレビ視聴時の姿勢や距離,部屋の明るさ,食事内容や咀嚼の程度などとの関連性も指摘されている が,調査の困難さなどの理由で検証は進んでいないのかもしれない。また,姿勢や距離などは,逆の因果関係 も想定されやすい(視力が悪いので近くで姿勢が悪くなる)こともある。 9視力判定の A は「1.0 以上」,B は「0.9~0.7」,C は「0.6~0.3」,D は「0.3 未満」である。 10本文では「親がメガネやコンタクトレンズを使用している」を「親の近視」と見做し使用する。 11eーStat 政府統計窓口 学校保健統計調査平成 25 年度(速報) http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001051484&cycode=0 12佐古博愛『学校近視の解説 』東山書房,1981 年,p53。
13Ip JM, Saw SM, Rose KA et.al「Role of near work in myopia. Findings in a sample of Australian school
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