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Bayes的予測形成と不完全雇用均衡 利用統計を見る

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(1)

Bayes的予測形成と不完全雇用均衡

著者

児玉 俊介

著者別名

Kodama Shunsuke

雑誌名

経済論集

13

2

ページ

p63-73

発行年

1987-10

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00005468/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

東洋大学「経済論集

J

13巻 2号 1987年 10月

Bayes

的予測形成と不完全雇用均衡

児 玉 俊 介

1.序1) 「推測均衡分析」は,価格伸縮性の下でも不完全雇用均衡の成立することを示した。しかし,経 済主体は数量制約を市場から受け取るとしたために,経済情況からし、かに数量制約を認識するのか という点は等閑視され,経済主体の市場に関する現状認識と推測均衡の性質との関連も,明示的に は関われなかった。そこで,拙稿 (1987)では,経済主体は,多数の統計に基づいてマクロ的経済 指標である GNPギャップの平均値を推定し,この推定値に応じて数量制約を主観的に予想すると 想定した。そして, i推測関数」に関して Hahn(1978)および Negishi(1974)と同様の仮定を置 くことにより,非ワノレラシアン均衡,すなわち不完全雇用均衡の存在を示すことができた。さらに, 統計はGNPギャップの小幅なことを均しく示 L,かつ,すべての経済主体も平均的に GNPギャ y プは小幅であると先験的に予測しているならば, ワルラシアン均衡,すなわち完全雇用均衡の成 立することも示すことができた。 ところで,拙稿では,市場に比べて小さな経済主体がし、かにして集計的な情報を入手するか,と しう論点の取り扱いを容易にするために,統計を作製,供与する経済外的な調査機関の存在を想定 Lた。しかし,このために,統計の基礎である集計化されない段階での市場の現状と,各経済主体 の集計的指標に基づく現状認識との関連が不明確になった。それゆえ,各経済主体が非集計的な情 報を直接に収集するようなモデルを構築する必要がある。次に,完全雇用均衡の存在条件として, GNPギャップの平均値は正規分布に従っている, と各経済主体が先験的に予測していなければな らなかった。特定な先験的予測を経済主体が抱くに至る経緯は不明であったから,より特定化され 1) 本論を叙述するに当たって,成城大学明石茂夫氏,名古屋市立大学辻正次氏および東洋大学船木由喜彦氏より貴重なコ メントを頂いた。ここに深甚なる謝意を表するものである。なお,本論中の誤謬については,全て筆者がその棄を負うも のである。 一一一 63一一一

(3)

ない分布に従う場合にも,なお完全雇用均衡は存在するかを考察する必要がある。さらに,不完全 雇用均衡の存在条件につレては検討していなかったから,完全雇用均衡と不完全雇用均衡の関連が あいまし、なままであった。特に, Hahn, Ito (1979), Madden (1982)なども考察しているように, 経済主体の現状認識および先験的予測によっては完全雇用均衡価格の下でも不完全雇用均衡が成立 するか,は検討されるべき論点である。 以上の諸点を考慮して,本論では,経済主体は次のように数量昔話

l

約を予測すると想定した。自ら 収集した他の経済主体の取引に基づいて,個別需要と初期賦存量の平均的なま信離幅,すなわち経済 主体1人当たりの平均的取引を推定し,この推定値に応じて数量制約を主観的に予想する。これは, 企業などが様々な市場調査を利用して取引機会の把握に努める,あるいは,労働者がジョブサーチ を通じて自らの雇用機会を予測するとし寸現象に対応する。そして,経済主体は,主観的数量制約 と自己の所望する取引との采離幅,に応じた市場価格の変化を推測しつつ取引を決定する。君主離揺 を推測された価格に関係づける「推測関数」に関して,拙稿と同様な仮定を置くことにより,推測 関数に基づいて決定された需要のタームで需給の一致してレる推測均衡の存在を示しうる。また, 各経済主体は情報収集前に経済の現状について特定の予測を持っていない場合に,他の経済主体の 取引は一様に小さし、と知れば完全雇用均衡が成立し,さらに,悲観的なー経済主体が一つの財市場 について他の経済主体の取引は一様に大きいと知れば,完全雇用均衡価格下でも不完全雇用均衡の 成立することを示しうる。 以下の構成は次のようである。 2節では,まず,平均的取引と主観的数量制約の関連を述べ,次 に,収集した他の経済主体の取引を用いて,経済主体はどのように平均的取引を推定するかを考察 する。また, i推測関数」を定義しその性質を仮定すると同時に,推測関数に基づいて決定される 需要, i推測需要」を定義する。 3節では,推測需要のタームでの均衡である「推測均衡」が定義さ れ,推測均衡の存在定理が示される。さらに,ワルラシアン推測均衡と非ワルラシアン推測均衡の 存在条件を検討する。 4節は結語的覚え書きである。

2

.

主 観 的 数 量 制 約 と Bayes的 予 測 形 成 経済には

n人の経済主体と J種類の財が存在し,それぞれ i=,l

nとj=l

1で区 別される。各経済主体は,消費集合 Xi と,Xi上の選好;:::;iの組 (X,三:;i)により特徴付けられ る。 Xiは,閉,凸で,下方に有界な RIの部分集合であり,だzはあ上の完全擬順序で,凸性, 2) 選好の凸性;任意のO<tく1なtについてX{:::;-iXtならば,tx ,'+(1 -t) 恥 ~iXio 選好の単調性 ;xt,'迄x

か つ 均'"",,x

ならば,Xt'>-向。 選好の連続性;佳意のがE X

について

{x

E Xt!x"

コバ}および {X

EXi[X

志向'}は閉じている。

一一-

64

(4)

Bayes的予測形成と不完全雇用均衡 単調性,および連続性を満たす2)。また,初期賦存量的=(ω1'1,…, ω日)ERlが与えられており, 次の仮定を満たす。 仮定1:任意の iについて, XiOくくωzなX;OEX;が存在する。 ワルラシアン均衡,すなわち狭義の均衡では,経済主体 iは,所与の価格

p=(

九 … , ρ1)Ed. =白E Rぷl2]j=11

ρ

j=l}および初期賦存量的の下で,選好;::);に関する最大元である需要Xj= (X;1'…

Xi,j …. XU)を選択する。この需要を,不均衡下で選択される需要と区別するために, 「観念的 (notional)需要」と呼ぶ。それゆえ,予算制約対応φ;: 11

X;を φ;(ρ)

=

{XEX; 1ρz三三ρω;} とすれば,観念的需要 X;W: 11→X;は, X;W(t)={Xεφ

ρ)

I

x

'

三三;Xfor V X'Eφ(t)} と定義される。 ところで不均衡下では, Clower (1965)が明かにしたように,経済主体は観念的需要を必ずしも 実現できず,市場の需給関係に応じて個別需要と初期賦存量の乗離幅である「取引JX;ー叫に対す る制約を認識し,それを考意して取引を決定せざるをえなし、。ゆえに,不均衡下の経済を検討しよ うとするならば,経済主体はどのようにして取引に対する制約を認識するかを定式化しなければな らなL、。本論では,経済主体は 1人当たりの取引の平均値 Y=(Y1,…,Yj,.・,"yふ れ=E(Xj一 白j) に応じて,取引に対する「数量制約J(b;. S;)

=

((b;1,…, bij,…. b;ふ (S;1,…,Si,j…,Su)) ER+l X R_l を主観的に予想するとしよう。なお以下では,Yを「平均的取引」と呼ぶ。平均的取引に基づいて 数量制約をどのように予想するかに関

L

,次の仮定を置く。 仮定2: I主観的数量制約Jb;j : R

R+および S;j:R

Rーは,次の性質を満Tこす連続関数で ある。 ある正数,,>0 と正数 Kく∞が存在して,Yj>εならば,b;j(Yj)三三Oかつ b;j(Yj)'く0であり,

Yj

zならば,b;j(Yj) = ,。まずこK ,Yjくー εならば,S;;(Yj)

0かつ S;j(yj)'くOであり,Yj

三三-"

ならば,S;j(Yj)=-,。K 仮定2では,第1に,いわゆる“shortside principle"と同様の事柄の成立を仮定している。 例えば1企業当たりの在庫が不足して品薄になれば,需要側の経済主体だけが購入に関して数量制 約を被ると予想し,他方, 1企業当たりの在庫が過剰になれば,供給側の経済主体だけが販売に関 して数量制約を被ると予想する。しかし, long sideにあるL、かに楽観的な経済主体でも,無限に 取引出来るとは予想しないであろう。それゆえ,任意の iおよびjについて b;j

K

,S;j-=三

-K

と 仮定できる。第2に,平均的取引が大きくなるほど数量制約は制限的になる,すなわち自己の取引 は実現し難くなると経済主体は予想することを仮定している。なぜならば, 1企業当たりの在庫が 過剰になるほど,企業は販売量の減少を労働者は雇用時間の減少をそれぞれ予想し,他方, 1企業 一一-65一一一

(5)

当たりの在庫が不足するほど,企業は原料調達の困難を消費者は商品購入の国難をそれぞれ予想す ると考えられるからである。第3に,小幅な販売量などの変化は現実には閑却視され勝ちであるか ら,平均的取引が小幅であれば数量制約は被らないと経済主体は予想することを仮定した。なお, (b..s,)は各経済主体の主観的な数量制約であるから,必ずしも

2

ふ-2Jぬ=0ではない。 さて,上述によれば,数量制約を予想する際Jこ,経済主体は平均的取引としみ集計値を必要とす る。それゆえ,市場に比べて小さな存在である経済主体が,いかにして市場全体をカバーする情報, あるいは市場に関する集計的な情報を認識するのかを考慮する必要がある。拙稿(1987)では, Gale (1979)の叙述を援用して,各経済主体は,自ら直接的に市場を観察することはなく,調査機 関の作製する統計-に基づいて GNPギャップの平均値を推定するとした。しかし,そのように統計 機関を介在させると,他の経済主体の取引活動に関する観察と GNPギャップに対する予測との関 連を見逃がすことになる。すなわち,市場の現状に関して各経済主体が有する集計化されない情報

ι

経済主体の集計的指標に対する現状認識とを関連づけられず,経済主体がミクロレベルで、観察 できる事柄からマグロ現象を予測するとしづ側面は捉えられなL、。そこで,本論では,各経済主体 は,自らの調査により収集した他の経済主体の取引に基づいて平均的取引を推定し,その推定値に 基づいて数量制約を予想するとしよう。 市場に表明される経済主体の取引 (X1一副1.

.X.,-叫〉を各経済主体は個別に観察するが, 費用 を要するために m(くn)人以上の観察は不可能であるとしよう。ただし,簡単化のために,観察回 数とは関係無く費用は一定であり,また,経済主体聞においても相違は無いとしよう。それゆえ, 観察に要する総費用は経済主体聞において等しし、から,以下では明示的には取り扱わなし、。経済主 体は,観察した m 人の取引に基づいて経済全体の平均的取引を推定しなくてはならなL、。観察し た m 人の取引を「標本」と呼ぶが,標本は系統抽出法により観察されると仮定すれば,標本抽出 を連続関数 φ :II鎗Rl

II'''Rlで表わして「標本抽出法」とよぶことができる。さて,経済全体主 観察できないのであるから,経済主体は観察された標本に基づいて経済全体での取引の確率分布を 予測しなければならなし、。そこで,標本値 (X(1)ーω(1)

tx(m)ーω(m))にyとの「尤度」μlEm(II-"Rl) を対応させる関数

φ

:II'''Rl→m(IImRl)を, i標本尤度予測」と呼ぼう。標本主度に基づいて平均 的取引を予測するためには,経済主体は,平均的取引に関する先験的予測 νlE m(Rつ を 抱 い て い るはずである。 Bayesの定理に従えば,標本抽出法,先験的予測,および標本元度予測より経済 主 体 iの標本収集後の予想平均的取引ylは, ' y ,=E(y!x(1)ー ω{1},…,x(m) 曲{叫〉 =sy

ν的z仙 (1)-w 円 , x(r伺nrn)一_

ω

山川m叫吋}つ〉

μ

=sy

ν

μ

(Y!sbi(

ω

仇z勾1一印叫1,...,Xnー叫)) 剛 , ここで νI(Y!

ψ

(X1-ω1.…,XIIーωn))

66

(6)

と表わされる。 Bayes的予測形成と不完全雇用均衡 μ;(X1一 世1,

・.

.

.

Xn一 曲,,[y)ν;(y)

j

仰 lー ω1,... ところで,標本値が異なれば,各経済主体の標本尤度も変化するから経済主体の推定檀も当然変 化する。それゆえ,各経済主体の初期賦存量的は所与であるから .

y

;

は.(X(l).…. X(m))の関数とし て,さらにふおよび

φ

を通じて .(X1.…, XII)の関数とみなすことができる。標本尤度予測れ尤 度 μ,および先験的予測叫について次の仮定を置けば,

y

iは (Xl,…,Xll) に関する連続性を得る。 仮定3 : (1) 任意の iについて,

ψ

f

は連続関数であり .m(万川Rl)はtightである。 (2) m(Rう は tightである。 補題:仮定3の下で

Y

r

は (Xh...,XIl)に関して連続である。 証明:仮定3. (1)の下で, Prohorovの定理により m(IImRI)は相対コンパクトである。すると,

h

めの連続性より,(X1.…, xn)nが (Xl,…,xtl)Oに収束すれば, μ〈…

1

),が μ〈…│・)0に弱収 束する分布列白ベ…│・)つが存在する。ゆえに, Portmanteauの定理より, ιμ(X(l)-(/)(1).….X(叶 一ω (r.)[Y)lJr(Y) (dy)も収束する。それゆえ, νi(・[1'r(X1.•••• Xn))の分子および分母はそれぞれ収束 するから,仮定3,(勾より,{(h….X釘)つに対して弱収束する分布列{lJr(・1…〉ヴが存在する。 従って.Portmanteauの定理より (X1.…,XII) に関して

Y

i

は連続である3)0

Q

.

E. D. 経済主体は,推定した平均的取引を基にして数量制約を予想し,その制約下で需要を決定し市場 に表明する。価格伸縮性を前提とすれば,平均的取引に応じて価格は変化しょうから,経済主体は 価格変化を考慮しつつ需要を決定しなくてはならなし、。本論では,拙稿 (1987)と同様に, Hahn (1978)および Negishi(1974)に従って,予想した数量制約内に取引が止まれば市場価格は不変で あるが,それを越えて取引を行なえば市場価格は自己にとり不利な方向に変化する,と経済主体は 推測すると想定しよう。例えば,売れ残りを抱えている企業が多いとし、う観察された経済情勢から, 供給側の経済主体は,一定量までは現行価格で既売できるが,それを越えてさらに脹売しようとす れば, 1企業当たりの売れ残りt土さらに拡大して値崩れが起こらざるを得ないと考えるのである4)0, ただし,推測される平均的取引および価格の変化はあくまで経済主体の推測の範囲に留まるのであ り,推測に基づいて決定された需要の表明後に実際に市場に生ずるとは限らなし、。また,仮定2よ り平均的取引の変化に伴って主観的数量制約も不利な方向に変化するから,経済主体の推測する価 格変化は Hahnなどの場合と比べてより一層不利なものとなるであろう。 3) Prohorovの定理および Portmanteauの定理については.Billingsley (1968)などを参照せよ。 4) 拙稿(1987)でも指摘したように,経済主体の推測に関する以上の想定,すなわち仮定 4. (3), (4)および(5)は論拠が薄 弱である。いかなる場合に妥当であるか,が検討されねばならない。なお.2人2財ケ』スでは,仮定4において.(3)お よび(叫より.(2)および(5)を導出することができる。 一一一 67一一一

(7)

上述より,平均的取引と経済主体の所望する取引の靖離幅を,推測された価格に関係付ける「推 劃関数JC,:tJ.x R斗XRl_

Aは, Ci(

ρ

,あーあ

(

y

ふ Xi-S

(

y

)

)

と表わされ次の性質を満たす。なお,仮定4の(1)および(2)は,数学上の便宜から置かれている。 仮定

4:

(1)

C

iは

p

x

-

b

;

(

y

ふ お よ びX

- S

(

y

i)に関して連続である。 (2) Ci(

ρ

X

-bi(

y

ふ Xi-Si(

y

)

)

(x

一ωi)はX

に関して凸である。

(3) Si(

y

i)三三Xi三三

b

;

(

y

)

ならば

C

(

ρ

xi-bi(

y

ふ Xi-Si(

y

i))=

ρ

である。

(4) Ciはxi-b

(

y

i)およびXi-Si(

y

i)の増加関数である。

(5)

b

;

C

y

i)

Xiならば

Ci(P

xi-bi(

y

ふ Xi-S

(

y

i))(Xiーωi)>P(Xi一的〉であり

Xi三三Si(

y

i)なら ば

C;(P

xi-bi(

y

ふ Xi-Si(

y

)

)

(Xi一世,)く

ρ

(Xiー叫〉で‘ある。

また

xi-b

(

y

i)および Xi-Si(

y

i)は

y

iとあの関数として捉えられるから,以下では,推測 関数を Ci(P

y

"

Xi)として略述する。経済主体は,推測関数に基づいて価格変化を推測しつつ予算 集合を決定し,その中で選好に関する最大元を選択しなくてはならない。従って,推測された価格 に基づく予算制約対応である「推測予算制約対応」弘':tJ.xR!

Xiは,

φ,

'(P

y

)

={XEX

I

Ci(P

y

"

x) (xー叫〉三~O}

と定義できる。そして,推測予算制約対応上で、選択された需要を「推測需要」とよべば,推測需要

x;' : tJ.XRI

XI土,

X

'(P

y

)

={XEφ

'(P

y

i)

I

x'

5

:

:

;

x for 'Vx'Eφ

'(P

y

)

}

と定義される。

3

.

完 全 雇 用 均 衡 と 不 完 全 雇 用 均 衡 他の経済主体から標本抽出法めを用いて標本を収集すれば,経済主体は,標本主度予測

ψ

s

と先 験的予担ij.]J,(・)に基づいて,平均的取引を推定でき,それと推測関数C;(・,・,・〉により市場価 格を推測できる。そして推測された価格に従って,消費集合

X

iと初期賦存量的の下で選好話zに 関 L推測需要を決定した。ゆえに,これらの組は各経済主体の特性を表わしており ,i経済J Eは 経済主体の特性の集合,

E=((X

,三

5

s

,ωi,

C

,(・,・,・), ν,('), t/>,(・), ψi(・))) として表わされる。 経済

E

の均衡を,各経済主体 iの需要の組(Xi)=(Xh

, x.)と価格

P

の組,((xふP)により定 義しよう。まず, ["ワルラシアン均衡」を,観念的需要のタームで需給の一致している状態として 一一一 68一一一

(8)

Bayes的予測形成と不完全雇用均衡 定義する。 定義1:経済Eの「ワルラシアン均衡」とは, 2J山w*==2Jiωa を満たす ((X;W*),pw)である。 ワルラシアン均衡に対して,不均衡下での経済主体の行動に基づく均衡,すなわち推測需要のタ ームで需給は一致しており,かつ,すべての経済主体は同ーの価格を推測している状態,として 「推測均衡」を定める。 定義2 :経済 E の「推測均衡」とは,以下の条件を満たす ((X;'*),

P

勺である。 (1) 2J品C*='2Jiω;0 (2) 任意の iについて,C;(p*,y,,*Xi'*)=P*。 推測均衡に関して第1に検討すべき論点は,推測均衡は存在するかである。前節の補題を用いれ ば,推測関数が (p,(x;))に関して連続であることを示しうる。すると,拙稿 (1987)の定理の証 明と同様にして,推測均衡の存在について次の定理を主張できるO 定理:仮定1より仮定 4の下で,経済 E には推測均衡が存在する。 第2に検討すべき論点は, ワルラシアン均衡,すなわち完全雇用均衡として,あるいは非ワルラ シアン均衡,すなわち不完全雇用均衡として推測均衡は存在するか,また¥,、かなる状況下にそれ ぞれは存在するかである。これを考察するために,観察される他の経済主体の取引と平均的取引に 関する各経済主体の先験的予測について,次の仮定を置く。 仮定5:

(

1

)

Xi ω iは,相互に独立で,同ーの J次元正規分布N(M.r)に従う。ここでME.

R

は未知の 平均値ベクトルて、あり .rは既知のJ行 J列で対称で正定値な precision行列とする。 (2) 糾は,一様分布に従う。 仮定5は次のことを意味している。第 1に,他の経済主体の取引は異なった経済主体により決定 されており,相互にし、かなる関連も持たないと経済主体はみなしている。第2に,経済主体は予め 適当な情報を得ておらず,平均的取引に関して特定の先入観を持っていなし、。なお,仮定5,(1)よ り,各経済主体の尤度μfは,正規分布N(M,mr)に従うこととなる。 ワルラシアン均衡に関して次の命題を得る。 命題1:仮定1より仮定5の下で,任意のiおよび任意のjについて !Xij-Wij!

sであれば,ワ ルラシアン推測均衡が成立する。 証明:仮定5および Degroot(10.3., 1970) より,標本収集後のYiは, y;=l/m

2

J

i(x(i)ーω(1)) である。ゆえに命題の仮定より,任意のtおよびjについて, !Y'j!孟ーを得る。それゆえ仮定2よ 一一一 69一一一

(9)

り,任意のiqこ対して,Si(Yi)=-Kおよびb;(Yi)=Kが成立する。従ってK の定義より,任意の iおよび任意のめE Xiについて,Si

s

:

.

Xi三三b;となるから,仮定4,(3)より,任意のiについて, Ci

(ρ,Yi,

)=Pが成立する。それゆえ各経済主体の推測予算制約は,任意の

P

について φ

ρ,Yi)=φi(P)

となるから, Debreu (1959)より,仮定1の下で,Eについてワルラシアン均衡が成立する。Q.E.D.

命題1は次のことを示している。各経済主体が特定の先入観を有していなし、場合に,観察される 経済主体の取引のすべてが小幅であれば, ワルラシアン均衡は成立する。他の経済主体の実行しよ うとする取引が平均的に小幅であることを認識すれば,各経済主体は,経済主体間の耳元引の不一致 も少ないために市場は不均衡に陥らず自らも数量制約を被らないと予測するから,価格だけを考慮 して取引を決定するであろう。それゆえ, ワルラシアン均衡は推測均衡として成立すると言えよう。 それでは,上述に対して,市場すなわち他の経済主体の取引がどのような情況である場合に,ワ ルラシアン均衡以外の推測均衡,すなわち非ワルラシアン推測均衡は成立するのであろうか。非ワ ルラシアン均衡は不完全雇用均衡に対応しており,また, ワルラシアン均衡を狭義の均衡として捉 えれば不均衡とみなすことができる。 定義3 :

r

非ワルラシアン」とは,ムキx;Wなiが存在するような需要の組 (Xi)であるO 非ワノレラシアン均衡の存在を考察するために,平均的取引が大幅であれば,現行市場価格に対す る観念的需要より主観的数量制約は小さい,と経済主体は予測すると改めて仮定しよう。先の仮定 と比べれば,経済主体は悲観的な予測をすると捉えてよいであろう。 仮定2':ある正数 ε>0が存在して,Yi>εならばbij(y;)三三0かっ bリ(y;)'く0であり,Yi三玉εな らば任意の価格に対してん(yi)=max( 0, Xi;" (P))。また,Yiく εならばSリ(Yi)三三0かつSij(Yi)'

く Oであり ,Y;>一εならば任意の価格に対してSij(Yi)=min( 0, x;/,(P))。 命題2 :

(

1

)

仮定1より仮定

4

の下で,

P

Y

であれば,非ワノレラシアン推測均衡が存在する。 (鉛仮定1より仮定5の下で,任意のiとあるhについて,]Xik一ωikl>εであり,かっ,

I

Xhktr) (ρ

1>0な hが仮定 2'を満たすので、あれば,任意の価格で非ワルラシアン推測均衡が成立 する。 証明: (1) 定理より,推測均衡 ((X;'*),ρ勺が存在するoP*キ

Y

であるから,2]品べρ*)キ2];耐。ゆ えに,2]iP*X;w(ρ*)キ2];ρ*WiQ他方,C;(P*,y;*,x

)=P*であるから,2];p*x

=2];p*w;o ゆえに 2];P*(Xi'"(ρ*)- x;,*)キ0。従って,C;(P*,Yi*,X;'*)=P*>>Oより,x;"(P*)キXj'*な iが存在するから,((x;'*),ρ*)は非ワノレラシアン均衡である。 (鉛

ρ

キグな場合は

(

1

)

で明かであるから,

ρ

=pwの場合を考察する。命題

1

の証明と同様にして,

70

(10)

Bayes的予測形成と不完全雇用均衡 hとhについて,

¥

y

hk¥>eを得る。すると,仮定2'より,hとhについて,bhk(

y

h)くXhkW (

ρ

つ あるいはShk(

y

h)>Xhk"'(ρつであるような, φh(tつ の だhに関する最大元Xh"'が存在する。仮 定4,(3)より,そのようなXh"については Ch(t"',

y

h, Xhw)キy であるから,Xh'" ft;φh(T"')で、あるがXh"'Eφ

(t",

y

h)。すると,定理より, φh'(t"',

y

h)の=らに 関する最大元Xh'について,推測均衡 ((X;'*),t,,)の存在を主張できる。それゆえ,

2

J

;x;'*(

ρ

=

2

J

;

ωiキ2J品w(tw) が成立するから, (1)の証明と同様にして,((X;'*),

T

つは非ワルラシアン均衡であることを 示しうる。 Q.E.D. 命題2は次のことを示している。第 1に,非ワルラシアン均衡価格の下では,他の経済主体の取 引がどのような状態にあろうとも,平均的取引の推定値から不均衡の発生を予測しつつ自己の取引 を決定するために,非ワルラシアン均衡は成立する。第2に,ある財市場において観察される経済 主体の取引はすべて大橋で,ゆえに平均的取引も大幅なため当該市場に不均衡が予測されていると しよう。この時,観念的需要のタームで当該市場での取引を欲している1人の経済主体が,数量昔話j 約について悲観的な予想をしているならば, ワルラシアン均衡価格下でも非ワルラシアン均衡は成 立する。第2の結果は次のように説明される。取引の不一致が生じやすいとし、う認識に基づいて, 1人の悲観的な経済主体が購入(販売〉量を削減すれば,売り手も販売(購入〉量を削減せざるをえ ない。それゆえ,当該財市場では観念的需要のタームでの需給は一致しなくなる。すると,Spill-over effectにより 1つの財市場での需給の不一致は他の財市場に波及するから,ただ 1人の悲観的な 予測を基にして連鎖的に経済は不均衡に陥ってしまう。この結果は,各経済主体が独占力を持って も、るために不均衡は生ずると理解されるよりも,経済主体の予測により需要が決定されるならば経 済は不安定に陥ると理解されるべきである。なお, 複数均衡の存在については, Hahn (1978),

Heller and Starr(1979),およびマクロモデルで、あるがIto(1979), Ioannides(1983), Madden

(1982)なども検討している。 なお,以上の結論は,各経済主体の平均的取引に関する先験的予測を,拙稿 (1987)と同様に正 規分布として特定した場合にも成立する。 復定6:νzは

0;.,1J JI.=(1,…

1)'ERlを平均値ベクトルとする J次元正規分布,すなわち N (0;11., 11;)である。ここで11;はJ行l列の対称で正定値なprecision行列。 命題3 :仮定 1, 2, 3, 4 , 5, (1),および 6の下で,任意の iおよび任意のjについて, IX;jーωij

¥

zであり,かつ,任意の iについて, 0

壬¥

0;¥三三Eならばワノレラシアン推測均衡が成立 する。 証明:略。

71

(11)

命題4:仮定1,2, 3, 4, 5, (1)および6の下で,任意のiとあるhについて,

!

Xik一ω

i

k

'

>sであり,かっ,

I

Xhk"(t")[> 0で仮定 2'を満たすある hについてみ〉εであれば,任意の価格 で非ワルラシアン推測均衡が成立する。 証明:略。 各経済主体は,平均的取引は小さいと先験的に予測しており,しかも観察された砲の経済主体の 取引もその予測を裏付けるならば, ワルラシアン均衡は成立する。他の経済主体に関する観察を基 にして需要は決定されるから,経済主体が小幅な平均的取引すなわち均衡の成立を予め予測し,ま た,その予測に従って行動する場合に, ワルラシアン均衡は成立すると言えよう。そして,悲観的 な1人の経済主体が 1つの財市場で大幅な平均的取引,すなわち不均衡を予め予測し,観察される 他の経済主体の取引もその予測を裏付けるならば,非ワルラシアン均衡が成立する。 命題が示しているように,各経済主体が先験的予測を有している場合には,先験的予測と観察さ れる市場の情況とは一致していなければならない。なぜなら,先験的平均値の大きさによっては, 観察される市場の現状とは異なった性質の均衡が成立する可能性もあり,各経済主体が先験的にど のような予測を抱いているかによって,成立する均衡の性質も大きく左右されるからである。それ ゆえ,明確な結果を得るためには,先験的な予測を抱いていなし、場合に比べて,経済主体の先験的 予測を特定化せざるを得ないのである。

4

.

結 語 的 覚 え 書 き 命題1より命題 4までの結果を総合すれば次のように主張できょう。第 1に,他の経済主体の取 引に基づいて経済主体が需要を決定するならば,観察された標本の内容に応じて,完全雇用均衡あ るいは不完全雇用均衡は成立する。収集した標本は均衡の成立を示唆する,すなわち観察された取 引は小幅であれば,完全雇用均衡が成立し,さもなくば成立しなし、。これは,均衡からの希離が小 さければ均衡は成立し,大きければ成立しないという点で,完全雇用均衡は局所的に安定であるこ とを示唆する。しかし,第2に,命題 2および命題 4で示されるように,本論の枠組みにおける完 全雇用均衡は局所的にすら安定的ではなく,唯1人の不均衡に陥るとしみ悲観的な予測により,完 全雇用均衡価格の下でも容易に不完全雇用均衡に転じてしまう。それゆえ,伊藤 (1985)が 論 じ て いるように,経済主体の予測に依存して均衡の性質が決定されるのであるから,経済主体がどのよ うな情報を持ち,また,それに基づいてどのような予測を形成するかが,経済の成り行きについて 重要な役割を演ずることになる。それゆえ,このような経済においては,経済政策のアナウンスメ ント効果は大きいと考えられよう。 しかし,以上の結論はかなり限定的であり,飛躍のあることを認めざるを得なL、。なぜならば,

72

(12)

Bayes的予測形成と不完全雇用均衡 第 1に,完全雇用均衡が成立するためには,幾つの標本が幾つの財市場に関して心幅で、あればよい のかを解明していなL、。また,最小限何人の経済主体が均衡の成立を予測していればよいのか,も 検討されるべきである。第2に,本論の枠組みにおいて,完全雇用均衡は,経済主体の合理的行動 の所産であるのか否かを間わねばならないが,そのためには,経済主体の情報の収集およびそれに 基づく集計値の推定に関して,何らかの基準を設けねばならなし、。以上の諸点については,今後の 課題である。 参 考 文 献

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参照

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