博 士 ( 文 学 ) 柳 田 健 一
学 位 論 文 題 名
『後撰和歌集』の諸本研究 学位論文内容の要旨
本 論 文 は 髄 蜘 歌 集』 諸 本の 本文 を 比較 する こ とに より そ の祖 形態 を 遡求 復元 し よう とす る もの であ る 。 本 論 文 は 、1所 用 の 諸 本 、2巻 一 〜 巻 十 の 異 文 対 立 、3巻 十 一 〜 巻 二 十 の 異 文 対 立 、 の3章 及 び 「 全 本 文 ( 巻 一 〜 巻 十 ) 」 「 全 本 文 ( 巻 十 一 〜 巻 二 十 ) 」 か ら な り 、 総 字 数 約320000字 で あ る 。 本 論 文 所 用 の 諸 本12本 と そ の 先 行 研 究 で の 位 置 付 け は 次 の 通 り で あ る 。
二本:
片本 堀本 雲本 正本 中本 亀本 /本 貞本 浄本 高本 天本
二荒山神社本 加 納 氏旧 蔵片 仮 名本 書陵部伝堀河具世筆本
先行研究での分類 清輔本
清輔本古本 大 阪 青 山 短 期 大 学 松 平 出 雲 守旧 蔵 本古 本 天 理 図 書 館 伝 正 徹 筆 本 承 保 本 京 都 大 学 中 院 家 旧 蔵 本 定 家 本 武 田 祐 吉 旧 蔵 伝 亀 山 天 皇 筆 本 定 家 本 ノ ー ト ル ダ ム 清 心 女 子 大 学 本 定 家 本 大 山 寺 貞 応 二 年 書 写 本 定 家 本 尊 経 閣浄 弁本 定家 本
高 松 官本 定 家 本
冷 泉 時雨 亭藤 原 定家 天福二年筆本 定家本
こ の う ち 、 二 本と 片 本と は巻 十 一以 降を 欠 いて いる の で、12本 の 総て につ い て比 較で き るの は巻 一 〜巻 十 で あ る 。 こ の 部 分 の 諸 本 の 本 文 は
ニ本 堀本 二本 二本 二本 二;袈 二ニ本 二本 二ニ本 片本
片 本 雲 本 片 本 片 本 堀 本 片 本 片 本 片 本 片 本 堀 本
幸争 幸争 堀本 堀本 そぅ 雲本 堀本 堀本 堀本 甘
堀 本 二j粒 雲 本 甘 片 本 台 雲 本 雲 本 雲 本 二 本
雲本 片本 モう 雲本 雲本 堀本 正本 貞本 中本 雲本
の 対 立 が 顕 著 あ り 、 こ こ か ら
[ 二 本 ・片 本 ・堀 本・ 雲 本] ←丶
[ 貞 本 ・浄 本 ・高 本・ 天 本] ー/
中本 中本 中本 中本 中本 中本 中本 浄本 貞本中本
正本 正本 正本 正本 正本 正本 正本 高本 浄本 正本
亀本 亀本 亀本 亀本 亀本 亀本 /本 天本 高本 亀本
/本 /本 /本 /本 )本 )本 ¢争 毒う 天本 /本
貞本 貞本 貞本 貞本 貞本 貞本 貞本 中本 甘 貞本
浄本 浄本 浄本 浄本 浄本 浄本 浄本 正本 正本 浄本
>― ― →[ 中本 ・ 正本 ・亀 本 ・/本 ]
の3グ ルー プの 対 立関 係が 明 らか とな る 。
ニ 本等 のグ ル ープ につ い ては 次の 対立が顕著である。
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高本 高本 高本 高本 高本 高本 高本 亀本 亀本 高本
天 本
243例
天 本
76例
天 本
67例
天 本
65例
天 本
32例
天 本
31例
天 本
25例
/本
24例
/本
18例
天 本
15例
二本 片本
堀本
雲本
正本等のグループ・及び貞本等のグループについては次の関係を想定できる。ただし、これらの諸本は 雲本系の本文を継承しつつ、二本・片本系による校訂・改変が行われているため、それぞれに複層的な混 交本文を形作っている。
亅匚〆卜 中本 / 本 亀本
ー一貞本 天本 高本
L 嘩
;太巻十一 〜巻二 十につ いては、 堀本・ 雲本・正本・中本・亀本・/ 本・貞本・天本の8 本の異文対立f 歌本 文 に つ い て の み 集 計 ) か ら 巻 一 〜 巻 十 と 同 じ 傾 向 を 読 み 取 る こ と が で き る 。
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学 位 論 文 審 査 の 要 旨
主 査 教 授 宮 澤 俊 雅
副査 教 副査 教
授 身崎 授 安西
学 位 論 文 題 名
壽 眞
『後 撰 和歌集』の諸本研究
本論文で提示されている諸本の本文の比較分析から、下のような系統関係を構築することは容易である。
・本 天本
ただし二本等のグ ループと正本等のグループが順当にっながらず、共通異文の分布に矛盾状態が見られ るところなどから、 定家が雲本系に基づきつつ、ニ本・片本系によって本文を校訂・遡源したであろうこ とが伺われる。今後、『後撰和歌集』の本文遡源には、巻ー〜十は、二本・片本・堀本・雲本の4本の系統 関係・親疎関係を明らかにすることが肝要である。また巻十一以後については、二本・片本を欠くため、堀 本・雲本の2本によ る本文遡源を行い、併せて定家本類諸本の本文中の雲本とは異なるもの(〓二本・片 本系由来の校訂本文 である可能性のあるもの)を参看しつつ堀本・雲本の2本による本文遡源を行うこと が可能となろう。
本論文の成果として以上の他に、
1「浄本・高本は 定家自筆本の臨写コピーであ る」との識語伝承が確認され、この2本を本文研究上、
貞本・天本に吸収解消すべきことが明らかになったこと
2先行研究で定家本とはBijの群として分類されている正本が定家本群に含まれることが明らか・になった こと
3定家本が本文遡 源を目指した校訂本であることが明らかになり、定家によって校訂されている古今和 彫焦・伊勢物語 ・源氏物語等の諸本研究についても新しい研究方向の可能性があることを示唆してい ること
等が 挙げられる。
本 論文は『後撰和歌集』の諸 本の親疎関係を確定し、善本 文への遡源の端緒を見いだしている。この意 味で 本論文は『後撰和歌集』研 究・和歌史研究を進展させるものである。審査担当者は全員一致して柳.田 ′
健 一 氏 に 博 ± ・ ( 文 学 ) の 学 位 を 授 与 す る の が 至 当 で あ る と の 結 論 に 達 し た 。
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