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学位論The Basic Study for博士(理学)藤井文彦文題名Optical Diagnosis of

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     学 位 論

The Basic Study for

博 士 ( 理 学 ) 藤 井 文 彦 文題名

Optical Diagnosis of

       Brain Condition using Light Scattering

‑ Light Scattering Changes in Brain Mitochondria and Brain Tissue        during Anoxia ‑

    

光 散 乱 を 用 い た 脳 の 光 診 断 の た め の 基 礎 研 究

―無酸素状態における脳ミトコンドリアと脳組織の光散乱変化―

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  脳 は 虚 血 な ど に よ る 酸 素 不 足 に 対 し て 、 極 め て 脆 弱 で あ る。 虚 血 に 伴 い、 血 管 系 の 変化 ・ グリ ア と ニ ュ ー ロン の 体 積 変 化・ 樹 状 突 起 の断 片 化 ・ 細 胞内小 器官の 形態 変化が 起こる とされ て い る 。 こ の よ う な 形 態 変 化 を 計 測 す る こ と は 、 病 態 の 診 断 を す る 上 で 重 要 で ある 。MRICT は 形 態 計測 に 対 し 、 極め て 有 効 で あ る。 し か し な がら 、 大 型 で あり 救 急 治 療 室な ど で 使 用 す る こ と は 困難 で あ る 。 よっ て 、 形 態 計 測の た め の 、 より 簡 便 な 方 法が 求 め ら れ る。 近 年 、 光 の 非 侵 襲 性 を 利 用 し た 光 診 断 法 が 急 速 に 発 展 し つ っ あ る 。 特 に 、 近 赤 外 領 域 の 光 は 生 体 組 織 に 対 し て 高 い 透 過 性 を も っ た め 、 臨 床 へ の 応 用 が 進 ん で い る 。 中で も 、 ヘ モ グロ ビ ン の 酸 素 化 度 の 変 化 に 伴 っ た 吸 収 変 化 を 利 用 し 、 循 環 系 の 酸 素 飽 和 度 が 測 ら れ て い る 。 一 方 、 光 散 乱 は 吸 収 変 化 の 定 量 化 を 妨 げ る 要 因 と し て み ら れ 、 生 体 計 測 へ の応 用 は 遅 れ た。 し か し 、 光 散 乱 は 組 織 の 形 態 変 化 に 対 し て 感 受 性 が あ り 、 ま た 比 較 的 簡 素 な機 器 で 行 う 事が 出 来 る 。 し た が っ て 、 光 散 乱 を 利 用 し て 脳 組 織 の 状 態 を 計 測 し 、 病 態 を 診 断し 得 る 可 能 性が あ る 。 現 在 、 酸 素 不 足 に よ っ て 引 き 起 こ さ れ る 脳 組 織 の 構 造 変 化 と 光 散 乱 変化 の 関 係 付 けは ほ と ん ど 成 さ れてい なぃ。

    光 散 乱 を 用 い て 臨 床 的 に 脳 の 状 態 変 化 を モ ニ タ ー する 事 を 将 来 的な 目 標 と し 、 本研 究 で は、 無 酸 素 状 態 にお け る 単 離 脳ミ ト コ ン ド リア の 光 散 乱 変化 と 構 造 変 化(Chapter2)、 無酸素 状 態にお けるラ ット の脳組 織の光 散乱変 化(Chapter3) の測定 を試み た。

    ミ ト コン ド リ ア は2重 膜 か ら 成 り、サ イズが 可視― 近赤 外光の 波長に 等しい ため、 生体 中での 光 散 乱 の 主 要 素 の1っ と 考 え ら れ て いる 。 ま た 、 他の 細 胞 内 小 器官 よ り も ス トレ ス 下 で 顕 著 に 構造 を 変 え る と され て い る 。 した が っ て 、 無酸 素 状 態 に おける 脳ミト コン ドリア の形態 変化と 光 散 乱 変 化 の 測 定 を 試 み た 。 酸 素 不 足 は 、 細 胞 に 対 し て イ オ ン バラ ン ス の 崩 壊を 招 き 、 細 胞 自 身の 体 積 変 化を も引 き起こ す。よ って、 ミトコ ンド リア以 外の構 造変化 を除 外する ために 、ラッ ト の脳か らミト コン ドリア を単離 し、実 験を行 った。ミトコンドリアの体積は、主にK゛の出入りによっ てコ ン ト ロ ー ル され て い る 。 流入 はK゛/H゛ ア ン チ ポ ータ ー に 、 流 出はATP依存 性 のK゛チャ ンネ     ―198−

(2)

ル によ っ て 引 き 起こ さ れ る 。 そ れぞ れ 、Mg2+ 、ATPに よ っ て 阻 害さ れ、ど ちら の阻害 因子も 細胞 内 に 存 在 す る 。 よ っ て 、 よ り 細 胞 内 の 条 件 に 近 付 ける た め 、Mg2+ATP存 在 下 で の実 験 も 合 わ せ て行 っ た 。 ミ トコ ン ド リ ア 溶 液を 無 酸 素 状 態に す る こ と によ っ て、 光散 乱が増 加した 。その 際 の ミト コ ン ド リ アの 構 造 を 透 過 型電 子 顕 微 鏡 で観 察 す る と 、マ ト リッ クス が収縮 してい た。再 び 酸 素を 与 え る と 光散 乱 が 減 少 し 、マ ト リ ッ ク スが 伸 張 し た 。こ の 現象 は、Mg2十 、ATP存在下 でも 観察さ れた 。よっ て、細 胞内に おい ても、無酸素によって脳ミトコンドリアのマトリックスが収縮し、

光散乱 が増 加する であろ う事が 示唆 された 。

    さ ら に 、 無 酸素 状 態 に お ける ラ ッ ト の 脳組 織 の 光 散 乱変 化 の 測 定 を 試み た 。 ヘ モ グロ ビ ン に よ る 吸 収 変 化 を 取 り 除く た め 、 可 視・ 近 赤 外 領 域に 吸 収 の な ぃ人 工 血 液 で 血 液置 換 し た ラ ッ ト を用 い た 。 し かし な が ら 、 ヘ モグ ロ ビ ン を 除い た 後 も 、 無酸 素 時に は可 視―近 赤外領 域にチ ト ク ロ ー ム 類 の 吸 収 変 化 が 現 れ る 。 し た が っ て 、 無 酸 素 時 の 光 散 乱 変 化 を 評 価 する た め 、 数 点 の正確 な等 吸収点 を決定 する必 要が あった 。心筋 のミト コンド リア は、1ミト コンド リア当 りのチ ト ク ロー ム 類 の 濃 度が 高 い 。 そ の ため 、 ミ ト コ ンド リ ア の 形 態変 化 に伴 う光 散乱変 化に対 し、チ ト ク ロー ム 類 の 吸 収変 化 の割 合が高 い。よ って 、心筋 のミト コンド リアの 差ス ペクト ルを解 析し、 正 確 な チ ト ク ロ ー ム 類 の 等 吸 収 点 を 決 定 し た 。 得 ら れ た 等 吸 収 点 を 用 い て 光 散 乱の 変 化 を 解 析 し た 。 さ ら に 、 脳 組 織 の 光 散 乱 変 化 と チ ト ク ロ ー ムオ キ シ ダ ー ゼ 内のCuAの酸 化 還 元 挙 動と 比 較 し た 。 結 果 、 血 液 置 換 し た ラ ッ ト の 呼 吸 酸 素 濃 度を60% と した と き 、CuAの 還 元 と 同時 に 光 散 乱 の 減 少 が 始 ま っ た 。 そ し て 、CuAの 還 元 過 程 と 平 行 し て 光 散 乱 の 減 少 が 続 い た 。CuA の 酸 化 還 元 挙 動 は 細 胞 内 の 酸 素 濃 度 を 反 映 し 、 吸 光 度 変 化 は 生 体 組 織 に 対 し て 高 い 透 過 性 を 持 つ 近 赤 外 領 域 に あ る 。 よ っ て 、CuAの 酸 化 還 元 変 化 か ら 細 胞 内 の 酸 素 濃 度 変 化 を 非 侵 襲 的 に 計 測 す る 事 が 可 能 で あ り 、 臨 床 へ の 応 用 も 進 ん で い る 。CuAの 還 元 変 化 と 脳 組 織 の 光 散 乱 変 化 の 同 時 性 は 、 酸 素 濃 度 低 下 に よ っ て 直 ち に 脳 組 織 の 構 造 変 化 が 惹 起 され る こ と 示 し ている 。

  本 研 究 に お い て 、無 酸 素 状 態 に伴 う 単 離 脳 ミ トコ ン ド リ ア と脳 組 織 の 光 散乱 変 化 が 明 らか に さ れた 。 無 酸 素 状態 に よ っ て 、 単離 脳 ミ ト コ ンド リ ア の 光 散乱 は 増加 した が、ラ ットの 脳組織 で は 光散 乱 の 減 少 のみ が 観 察 さ れ た。 一 方 、 無 酸素 に よ ル ラ ット 海 馬ス ライ スの光 散乱が 減少し 、 続 いて 増 加 す る こと が 近 年Baharら に よっ て 報告 された 。し たがっ て、 丸ごと の 脳組織 では、

ミ トコ ン ド リ ア に由 来 す る 光 散 乱の 変 化 は 、 覆い 隠 さ れ て いる の かも しれ なぃ。 この点 に関し て は 、さ ら な る 研 究が 必 要 で あ る 。本 研 究 で 得 られ た 無 酸 素 状態 に おけ る脳 ミトコ ンドリ アと脳 組 織 の 光 散 乱 に 関 す る 知 見 は 、 将 来 、 光 散 乱 を 利 用 し た 脳 の 非 侵 襲 計 測 か ら 得 られ る 信 号 の 解 釈に有 用で ある。

199

(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教授   田村   守 教授   畠山昌則 教授   矢澤道生

教授   加茂直樹(大学院薬学研究科)

助教授   岩井俊昭

(電子科学研究科・ナノテクノロジー研究センター)

       The Basic Study for Optical Diagnosis of         Brain Condition using Light Scattering

‑ Light Scattering Changes in Brain Mitochondria and Brain Tissue        during Anoxia ‑

    

光 散 乱 を 用 い た 脳 の 光 診 断 の た め の 基 礎 研 究 一無酸素状態における脳ミトコンドリアと脳組織の光散乱変化―

  

本 論 文 は 生 体 組 織 の 形 態変 化を 反映 する 光散 乱を 組織 の診 断に 応 用す るこ とを 目 的 とし て、 動物 レベ ル及 ぴ細 胞レ ベル で低 酸 素下 を中心に解析 した結果を報告してい る 。近 年、 光の 非侵 襲性 を利 用し た光 診断 法 が急 速に発展しつ っあり、特に、近赤外 領 域 の 光 は 生 体 組 織 に 対 して 高い 透過 性を もっ ため 、臨 床へ の応 用 が進 んで いる 。 中 でも 、ヘ モグ ロビ ンの 酸素 化度 の変 化に 伴 った 吸収変化を利 用し、循環系の酸素飽 和 度が 測ら れて いる 。一 方、 光散 乱は 吸収 変 化の 定量化を妨げ る要因としてみられ、

生 体 計 測 へ の 応 用 は 遅 れ た。 しか し、 光散 乱は 組織 の形 態変 化に 対 して 感受 性が あ り 、ま た比 較的 簡素 な機 器で 行う 事が 出来 る 。し たがって、光 散乱を利用して脳組織 の状態を 計測し、病態を診断し得る可能性があるが、酸素不足に よって引き起こされる 脳 組 織 の 構 造 変 化 と 光 散 乱 変 化 の 関 係 付 け は ほ と ん ど 成 さ れ て い な い 。

  

光散 乱を 用い て臨 床的 に脳 の状 態変 化を モ ニタ ーする事を将 来的な目標とし、本研 究では、無酸素状態における単離脳ミトコンドリアの光散乱変化と構造変化(Chapter2 )、

無 酸素 状態 にお ける ラッ トの 脳組 織の 光散 乱 変化

(Chapter3

) の測 定を 述 べて いる。

  

ミトコンドリアは

2

重膜から成り、サイズが可視一近赤外光の波長に等しいため、生体中

で の光 散乱 の主 要素 の1 っ と考えられている。また、他の細胞内 小器官よりもストレス

下で顕著に構造を変え るとされている。したがって、無酸素状態における脳ミトコンドリ

ア の形 態変 化と 光散 乱変 化の 測定 を試 みた 。 酸素 不足は、細胞 に対してイオンバラン

スの崩壊を招き、細胞 自身の体積変化をも引き起こす。よって、ミトコンドリア以外の構

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造変化を除外するために、ラットの脳からミトコンドリアを単離し、実験を行った。ミトコン ドリアの体積は、主にK ゛の出入りによってコントロールされている。流入はK ゛/H ゛アン チポーターに、流出はATP 依存性のK ゛チャンネルによって引き起こされる。より細胞内 の条件に近付けるため、Mg2 十、ATP 存在下での実験も合わせて行った。ミトコンドリア 溶液を無酸素状態にすることによって、光散乱が増加した。その際のミトコンドリアの構 造を透過型電子顕微鏡で観察すると 、マトリックスが収縮していた。再び酸素を与える と光散乱が減少し、マトリックスが伸張した。

  

次 に、 無酸 素 状態 にお ける ラッ トの脳組織の光散乱変化の測定を 試みた。ヘモグロ ビン によ る吸 収 変化 を取 り除 くた め、可視・近赤外領域に吸収のな い人工血液で血液 置換したラットを用いた。その結果、ミトコンドリアのチトクローム酸化酵素成分である

CuA

の 還 元 変 化 と 脳 組 織 の 光 散 乱 変化 の同 時性 は、 酸素 濃度 低下 によ って 直 ちに 脳 組織の構造変化が惹起されること示している。

  

本研究において、無酸素状態に伴 う単離脳ミトコンドリアと脳組織の光散乱変化が明 らかにされた。無酸素状態によって、単離脳ミトコンドリアの光散乱は増加したが、ラッ ト の 脳組 織で は光 散 乱の 減少 のみ が観 察さ れた 。本 研究 で得 られ た無 酸素 状 態に お ける脳ミトコンドリアと脳組織の光 散乱に関する知見は、光散乱を利用した脳の非侵襲 計測から得られる信号の解釈に有用である。

  

以上の結果はミトコンドリアの無 酸素時の光散乱変化に新しい知見を与えたものであ

り 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 理 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 が あ る も の と 認 め る 。

参照

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