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博士(理学)吉村学位論文題名 Synthesis and Propertiesof Octahedral Hexarhenium Cluster Complexes

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 理 学 ) 吉 村 学 位 論 文 題 名

      Synthesis and Properties of Octahedral Hexarhenium Cluster Complexes

(八面体型六核レニウムクラスター錯体の合成および性質)

学位論文内容の要旨

J睦 う フ 雪等

  右 図 に 示 す よ う な 八 面 体 の 頂 点 に60の 金 属 イ オ ン が 位 置 し 、80の ハ ロ ゲ ン化 物 イ オ ン も しく は カ ル コ ゲン 化 物 イ オ ンが 各面 にキャ ップ配 位した 六核錯 体は 、種々 の金属 イオン(Cr,Mo,W,Re, Fe,Co)で 知 ら れ て お り 、 多 段 階 の 酸 化 還 元 能 お よ び発 光 等 の 極 め て興 味 深 い 物 性を も っ も の が 含 ま れ る 。 こ れ ら の6核 錯 体 は10の 金 属 イ オ ン に 対 し

て 1ケ づ っ タ ー ミ ナ ル 配 位 部 位 を 持 っ が 、 今 ま で 知 ら れ て い る 金 属 イ オ ン で は 、 そ の 部 位 に 新 た な 配 位 子 を 導 入 す る 場 合 、 そ の 数 や 幾 何 構 造 を 制 御 す る こ と は 極 め て 困 難 で 、 タ ー ミ ナ ル 配 位 子 が6核 錯 体 に 与 え る 影 響 を 系 統 的 に 研 究 し た 例 は な か っ た 。 六 核 錯 体 の ● 〓Re 中 で も 、 レ ニ ウ ム(iiDイ オ ンを 中 心 金 属 イ オン と す る 錯 ○= キ ャ ツ 体 は 最 も 研 究 が 遅 れ て い た が 、 近 年 、 分 子 性 の 六 核O: タ ー ミ レ ニ ウ ム 錯 体 が 合 成 さ れ 、 溶 液 内 挙 動 を 調 べ る 道 が 開 か れ た 。 六 核 レ ニ ウ ム 錯 体 の タ ー ミ ナ ル 部 位 は 適 度

に 置 換 不 活 性 で あ る こ と が わ か っ て き て お り 、 系 統 的 研 究対象 のレニ ウム錯体 合 成 の 可 能 性 が 示 唆 さ れ る が 、 断 片 的 な 合 成 に つ い て の 報 告 以 外 、 物 性 な ど の 報 告は な さ れ て い な か っ た 。 本 研 究 で は 、 様々 な 配 位 子 の 数や 立 体 配 置 を制 御 し て 導 入す る 合 成 方 法を 確 立 し 、 一 連 の 六 核 レ ニ ウ ム 錯 体 の 物性 を 系 統 的 に 調べ る こ と を 目的 と し た 。 特に 酸 化 還 元 反応 性 と 光 物 性 に 注 目 し た 。

新 規Rem6六 核錯体 の合成

  下 図 に 示 す ピ リ ジ ン 型 配 位 子を 用 い 、 そ の配 位 子 の 数 およ び 幾 何 構 造を 制 御 し て タ ーミ ナ ル 部 位 に導入した新規ReIII6錯体ERe6(y3‑s)8cl6InくL)ー】(4・n)・(n=2‑4,L=ピリジン型配位子)を合わ せ て 、19種 合 成 し た 。 な お ピ リ ジ ン 型 配 位 子 を2ケ 導 入 した 錯 体 に つ いて は 、 幾 何 異 性体(cis, trans)の 分 離 にも 成 功 し た 。新 錯 体 は 元 素 分析 、 各 種 ス ペク ト ル 、 お よび6種 の 錯 体に つ い て 単 結 晶X線 結 晶 構 造 解 析 を 行 う こ と に よ り 同 定 し た 。 ピ リ ジ ン 型 配 位 子 のH。 部 位 の1H NMRシグ ナ ル は そ の 幾 何 構 造 に 敏 感 で あ り 、 こ の 系 に お い て 幾 何 異 性 体 を 見 分 け る の に非 常 に 有 用 な手 段 で

(2)

    ̲

N N N c N C H 3 0 N C H 3 2

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夕 ー ミ ナ ル 部 位 に 導 入 し た ピ リ ジ ン 型 配 位 子 ある ことが わか った。

六核 レニウ ム錯 体のRemo/RemsRerv過程の 酸化還 元電位 の制御

  ター ミ ナ ル 位 にビ リ ジ ン 型 配 位子 が 導 入 さ れた 錯 体 のア セトニ トリル 溶液 中でのRe川〆Rem5 ReIv 過 程 の 酸 化 還 元 電 位 は 、 導 入 し た ピリ ジ ン の 数 が 増え る ご と に 大き く 正 側 へ とシ フ ト し た 。ま た [Re6(V3‑S)8CIユ(L)2l(4・n)・型錯体のReIIIイRe…sRel¨過程の酸化還元電位¢乢)と、ターミナル部位 に 導 入 さ れ た ピ リ ジ ン 型 配 位 子 自 身 のp瓩 と の 間 には 良 好 な 直 線関 係 が み ら れ、 レ ニ ウ ム 六核 骨 格 の 酸 化還 元 電 位 を ター ミ ナ ル 配 位子 に よ り 制 御で き る こ と が わか っ た 。 キャ ップ配 位子の 異な る 錯体 [Re6(め−E)8(CN)6ユ4.(E=S,Se,Te)を用いて、同様にRe川〆Re川5ReIv過程の酸化還元電位 を 測 定 した と こ ろ 、 キャ ッ プ 配 位 子も ま た レ ニ ウム 六 核 骨 格 の 酸化 還 元 電 位に 大きく 影響を 与え て いる ことが 明ら かとな った。

1電子酸 化体(RemsRerv)の合成 と構 造、電 子交換 反応

  新 規1電 子 酸 化 体 (ReIIIsReIv〕 を3種 (trans̲[Re6(y3̲S)8Cl4(L)2]2. (Lニpy,cpy);

mer‑[Re6(y3‑S)8Cl4(L)2l')合 成 単 離し た 。 こ れ らの1電 子 酸 化体 の 吸 収 スペク トル には、1400nm付 近 に 極 大を も つintervalence transition bandが 観測さ れた。 先に文 献で 、キャ ップ配 位子の 硫化物 イ オ ン 部位 に プ 口 ト ンが 付 加 したと 帰属さ れて いる錯 体[Re6(pL3―S)7(y3̲SH)Cl6]3‑につ いて同 様に 近 赤 外 領域 ま で 吸 収 スペ ク 卜 ル を 測定 し た と こ ろ、1254 nmに 極 大を も つ 吸 収 帯が 観 測 さ れ た 。ま た 磁 化 率 測 定 か ら 、 乢 ぱ  2.1 VBとS‑ 1/2に 相 当 す る 値 が 得 ら れ た 。 す な わ ち 、 [Re6(y3̲S)7(い3̲SH)Cl6]3‑と帰 属され ていた錯体は、正しくは1電子酸化された[Re6(y3̲S)8Cl6]3・で ある ことが 明ら かとな った。

  1電 子 酸 化 体(RemsRerv) trans‑[Re6(V3‑S)8Cl4(PY)2]'に つ い て、 単 結 晶X線結晶 構造解 析を行 つ た 。2つ の 酸 化 状 態 間(ReIn6,ReIIIsReIv)で、レ ニウム 六核 骨格内 の構造 変化は ほと んどな く、部 分 酸 化 状 態 が60の レ ニ ウ ム イ オ ン 上 で 完 全 に 非 局 在 化 し て い る ニ と が わ か っ た 。   Rem6錯 体 とReIIIsRe'v錯 体 と の 間 で の 電 子 自 己 交 換 反 応 速 度 を 温 度 可 変1H NMRに よ り 求 め た 。 そ の結 果 、Re川6とRems ReIv問 の 電 子 の交 換 反 応 速 度定 数 は1.2x109M‥s‥ 、 活性 化 パ ラ メー タ は △H#: 30土2kJ mol",△ ず 〓30土8Jmol‑lK"で あ っ た 。 電 子 自 己 交 換 反 応 速 度 定 数 は 極 め て 大 き く 、 酸 化 還 元 に 伴 う 構 造 変 化 が 小 さ い こ と を 反 映 し て い る と 思 わ れ る 。

タ ― ミ ナ ル配 位 子 の 六 核レ ニ ウ ム 錯 体 を介 し た 電 子 の相 互 作 用

  pz,cpy, およ びbpyが タ ーミ ナル 部位に2ケ 配位し た錯体trans‑およ びcis̲[Re6(V3̲S)8Cl4(L)2]2‑

(L  pz,cpy,bpy)で は 、 そ の 配位 子 自 身 の 酸化 還元 も観 測され た。配 位子の 酸化還 元波 には分 裂 が み ら れ 、そ の 分 裂 幅 はcis̲[Re6(y3̲S)8Cl4(L)2]2・ で最も 大き く140 mVで あった 。また 、分 裂幅は 配 位 子 の 種 類 お よ び 幾 何 異性 体 で 異 な る。 配 位 子 の 酸化 還 元 波 に 分 裂が 見 ら れ る こと は 、 タ ー ミ ナ ル 配 位 子 同 士 が 六 核 レ ニ ウ ム 錯 体 の 骨 格 を 介 し て 相 互 作 用 し て い る こ と を 示 し て い る 。

六核レ ニウ ム(ni)錯体 の光 物性

  六 核 レニウ ム(III)錯体が 発光 するこ とを初 めて見 出し た。そ の発光 寿命、 発光ス ペク トル、 発光量 子収率 を、 本研究 で新た に合成 した錯 体の 他、既 知の化 合物[Re6(y3̲S)8X6]4' (X=Cl',Br・,I,)お

185

(3)

よび[Re6(V3‑E)8 (CN)6]°・(E〓S,Se,Te)についても調べた。発光データはd電子が24ケで、等電 子構造の【M6(y3̲X)8Y6]2. (M=Mo,W;X,Y=Cl,Br,Dとよく似ている。寿命りは皿秒のオーダ ーと非常に長いことから、発光は励起3重項状態からのりん光と帰属した。寿命および量子収率(¢冫 の値はターミナル配位子やキャップ配位子の違いで異なるが、k (radiative rate constant)の違い は小さく、りん光に関与する励起状態は六核レニウム骨格の金属イオンに局在化した軌道であるこ とが示唆された。

  本 論文では 、構造はよく知られているものの、その性質については断片的にしか調べられてい なかった八面体型レニウム六核クラスター錯体について系統的な研究をおニない、ピリジン型配位 子の ターミ ナル部 位への 導入に ついて 、その 数および 幾何構 造を制御した新規錯体の合成法の 確立 、酸化 還元反 応性に関する系統的な知見を示した他、一連の錯体が発光することを初めて明 らかとした。

(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教授 教授 教授 教授 助教授

佐々木 喜多村 日夏 市川 今村

陽一

  

昇 幸雄

    

    

     学位論,文題名

    Synthesis and Properties

of Octahedral Hexarhenium Cluster Complexes

( 八 面 体 型 六 核 レ ニ ウ ム ク ラ ス タ ー 錯 体 の 合 成 お よ び性 質 )

  

六 個 の 金 属 イ オ ン が 正 八 面 体 型 に 配 置 し た 六 核 骨 格 に カ ル コ ゲ ン 化 物イ オ ン やハ 口 ゲ ン化 物 イ オ ン が 配 位 し た 六 核 錯 体 は 、 い く っ か の 遷 移 金 属 元 素 に つ い て 知 ら れて お り 、基 本 的 な 金 属 ク ラ ス タ ー 錯 体 ユ ニ ッ ト と し て 重 要 な も の で あ る 。 こ の ユ ニ ッ ト に フオ ス フ ィン 系 や ピ ル ジ ン 誘 導 体 配 位 子 を 導 入 し て 、 新 た な 物 理 化 学 的 性 質 や 機 能 を 誘 起 さ せよ う と する 研 究 は 多 く の 場 合 合 成 の 難 し さ が 障 害 と な り 、 あ ま り 進 展 し て い な か っ た 。 特 に、 こ の ユニ ッ ト に そ の よ う な 配 位 子 を 数 や 配 位 位 置 を 制 御 し な が ら 導 入 し 、 系 統 的 な 研 究 を展 開 し よう と す る 試 み は ほ と ん ど 成 功 し て い な い 。 申 請 者 は 、 最 近 注 目 さ れ 始 め た レ ニ ウ ム(iiD の 六 核 錯体 を い ち 早 く 取 り あ げ 、 ピ リ ジ ン お よ び そ の 誘 導 体 を 計 画 的 に 導 入 す る こ と に成 功 し た。 レ ニ ウ ム

(iiD

六 核 錯 体 の タ ー ミ ナ ル 位 の 配 位 子 置 換 反 応 が 極 め て 遅 い こ と に注 目 し 、こ の 性 質を 積 極 的 に 利 用 し て 段 階 的 に 配 位 子 置 換 反 応 を 行 う と い う 方 法 で 、 一 連 の 新 規レ ニ ウ ム

(iiD

六 核 錯 体 の 合 成 に 成 功 し 、 そ の 諸 性 質 を 系 統 的 に 明 ら か に し た 。 こ の 研 究 は 、八 面 体 型六 核 錯 体 の 化 学 に 斬 新 な 知 見 を 加 え る も の で あ る と と も に 、 こ の 分 野 を 大 き く 発 展さ せ る きっ か け を 与 え る も の と し て も 大 き な 価 値 が あ る 。

  

レ ニ ウ ム

(iiD

六 核 錯 体 ユ ニ ッ ト の タ ー ミナ ル 位 の6 ケ の 配位 子 は 八面 体 の 頂点 方 向 にあ る 。 こ の ユ ニ ッ ト を 、 一 般 的 な 六 配 位 八 面 体 型 錯 体 の 金 属 イ オ ン を ひ と 回 り 大き く し たも の 、 と み な す と 以 下 の こ と が 理 解 し 易 い 。 本 研 究 で は 、 ピ リ ジ ン お よ び そ の 誘 導 体 配 位 子

6

種 を 用 い 、 そ れ ら が

2

4

個 レ ニ ウ ム

(iiD

六 核 ユ ニ ッ ト に 配 位 し た

19

種 の 新 規 錯 体 の 合 成 に 成 功 し た 。

2

個 の も の に つ い て は 、 ト ラ ン ス お よ び シ ス の 両 異 性 体 を 別 々 に 単 離 す る こ と に 成 功 し て い る 。 ま た 、

3

個 の も の で は メ ル

(mer

型 が 得 ら れ て い る 。 さ ら に 、

NCS

− を

6

ケ 含 む 錯

187

(5)

体 も新 たに 合成 している。これらに加え、一電子酸化型(ReIII5 ReIV) の錯体も3 種合成して い る 。 こ れ ら の 錯体 のう ち、 一電 子酸化 体1 種を 含む 7 種の 錯体 につ いて は単 結晶 X 線構 造 解 析が なさ れて いる。一電子酸化体については、夕ーミナル位がハ口ゲン化物イオンの錯体 に つい て従 来プ 口卜 ンが付 加し た錯 体と して 報告 され てい た。 申請 者は 、酸化還元反応、

ESR 、磁 性測 定な どに より 、そ の報 告の 誤り を明瞭に指摘した。合成された錯体の中には、

架橋配位子のピラジン、4 ,4 ,―ピピリジンが単座で配位したものも含まれているが、これらを 原 料と して 、空 いた配位座にポルフィリン錯体を導入した錯体の合成と構造解析により、空 い た配 位座 の活 用の方向性を実証しており、次の段階のより複雑で機能性を持つ錯体への展 開の道を示した。

   新錯 体の 性質 では、特に酸化還元電位の測定が注目される。ハ口ゲン化物イオンをピリジ ン 型配 位子 に順 次置換することにより、レニウム六核骨格の酸化が順次難しくなることが明 か と な っ た 。 さ らに 、一 電子 酸化 体との 間の 電子 交換 反応 の速 度を 、1 : 1 混 合物 のNMR 解 析 によ り見 積も ることに成功した点も高く評価できる。しかし、本研究で最も注目すべき点 は 、ハ 口ゲ ン化 物イオンが配位した錯体も含め一連のレニウム(iiD 六核錯体が紫外光照射に よ り強 い赤 色発 光を示すことを見い出したことであろう。一連の錯体について発光スペクト ル 、量 子収 量、 発光寿命のような発光物性が示されており、発光に及ぽす配位子の影響がい ろ いろ の角 度か ら詳細に考察されている。配位子をいろいろに変えても発光性が保持される こ とは 、発 光材 料としてのレニウム(iiD 六核錯体の応用の広い可能性を示唆している。レニ ウ ム(iiD 六 核錯 体の 研究が 10 年 あま り前 から 行わ れて いた にも かか わら ず、これまで発光 性 の報 告が なか ったことと最近のレニウム(iiD 六核錯体の研究の活発な展開を考えると、本 研究の発見は極めてインバク卜のあるものということが出来る。

   以上 の研 究成 果は、レニウム六核錯体の基礎的な諸性質を初めて系統的に明らかにした点

で 大き な意 義が ある。ピリジンのように多くの誘導体が知られている有機配位子を用いた合

成 法の 確立 の波 及効果も大きく、一連の八面体型六核錯体を基本骨格とした新物質の開発へ

の 道を 開く もの である。反応性や光物性の面での新発見はその新物質に期待される大きな可

能 性を 示す もの でもあり、他の金属イオンの六核錯体の研究や、その他の関連化合物への展

開 も 可 能 な 点 も 合 わ せ 考 え る と 、 本 研 究 の 波 及 効 果 は 極 め て 大 き い 。

   よっ て著 者は 、北 海道大 学博 士( 理学 )の 学位 を授 与さ れる 資格 があ るものと認める。

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