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博 士 ( 環 境 科 学 ) 伊 藤 祐 介      学位論文題名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 環 境 科 学 ) 伊 藤 祐 介      学位論文題名

音響手法を用いたカタクチイワシ(Eyzgraulis jap07zicus) 仔 魚の分布 推定に 関する研究

学位論文内容の要旨

  力夕クチイワシEngraulis japonicusは日本の沿岸から沖合にかけて広く分布しており,

様々 なス テー ジで 漁 獲の 対象となっている。なかでも仔魚期にあたるシラスは 太平洋側 を 中 心 に シ ラ ス 漁 場 が 形 成 さ れ 、 そ の 生 産 額 は 成魚 を大 きく 上回 る。 また 、サ ワラ somberomorus niphoniusやタチウオTrichiurus lepturusなど魚食性の強い魚や海獣類、海 鳥な ど、 様々 な高 次 捕食 者の餌料としても大きな役割を果たしており、海洋生 態系や食 物連 鎖を 考え る上 で 非常 に重要な位置を担っている。日本近海に分布するカタ クチイワ シの なか でも っと も 大き な資源を誇るのが九州太平洋系群である。日本南方沿 岸域から 黒潮 域に おい て産 卵 され た本系群の卵・仔魚は、黒潮によって東方へ輸送され 、黒潮続 流域 から 黒潮 親潮 移 行域 に到達する。この卵稚仔が輸送される過程でその一部 が沿岸海 域に 接岸 し、 漁場 が 形成 される。これまで、黒潮の離接岸と漁場形成に関する 研究が多 く行 われ てお り、 ネ ット サンプリングとともに漁況予報に関する情報として注 目されて いる 。し かし なが ら 、沿 岸海域に来遊したシラスの分布特性や周囲環境との関 係につい て明 らか にさ れた 例 は少 ない。そこで本研究では、水平的・鉛直的な魚群情報 を迅速か つ広 範囲 で取 得す る こと ができる音響手法に着目し、その手法をシラスに適用 すること でシ ラス 魚群 の分 布 推定 を試みた。また、黒潮の離接岸がシラス漁場の形成に 大きく影 響 す る 紀 伊 水 道 海 域 を 対 象 に 本 手 法 を 用 し ゝ た モ デ ル 研 究 を 実 施 し た 。   音 響手 法に よる 水 産資 源推定を行う場合、スケールファクターであるターゲ ットスト レ ン グ ス(TS)が 必 要 と な る 。 本 研 究 で は こ のTSを理 論モ デル にて 推定 した 。ま ず、

モデ ル計 算に 必要 な 音響 イン ピー ダン ス( 密度 比g音 速比h) にっ いて 実験 を 行い、そ れぞれの知見を得た(g:1.053〜1.079、h:1.015〜1.091)。さらに、この音速比・密度比お よび 背方 向か らの 魚 体形 状を 基にTSを 推定 し、 その 姿勢 角特 性に つい て検 討 した。無 鰾状 態と なる 昼間 の シラ スは 姿勢 角の わず かな 違い であ って もTSが大 きく 変 動するこ とが 明ら かと なっ た 。次 に、 この 姿勢 角に 関す る知 見を得るため、2008年1月 および12 月の2期間 にお いて 、定 置網 内で 捕獲 した シラ ス を対象に遊泳行動を観察した 。この実 験から、シラスは頭部を上向きにした状態で遊泳する傾向が強く(Avg.:12.8°S.D.:22.1)、

一般 的な 浮魚 類と 異 なっ た姿勢角分布をもつことが明らかとなった。ここで得 た姿勢角 分布 とTSの姿 勢角 特 性の 積を とる こと で平 均化TS (TSaVg)を 算出 し、TS―SL(18.0〜 35.7mm)の 関 係 式 を 得た こと で密 度推 定 を行 う際 のス ケー ルフ ァク ター とし てのTSが 整備された(TSaW二〓ニ60.5 log【SL]  ‑170.8)。

  計 量魚 探よ り得 ら れた 野外データを扱う際に、その反射強度や密度の誤差と なる要因 として吸収減衰が挙げられる。そこで本研究では、Francois and Garrisonの式を用いその 補正 方法 につ いて 検 討し た。 まず 、深 度Im毎の 水温 ・塩 分デ ータ を基 に算 出 した減衰 値を 真値 とし 、表 層 から 海底付近までの平均水温および塩分を各深度帯に適用 して算出     ‑ 71―

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した 吸収 減衰値と比較した。そ の結果、水温や塩分濃度の成層が進む夏季においても両 者の 間に 差はほとんどみられず 、補正方法の違いによる密度への影響は小さいと判断さ れた 。そ のため本研究では、平 均水温および塩分濃度を利用した吸収減衰値で体積散乱 強 度(SV)を 補 正 し 、 そ れ ぞ れ の 魚群 を対 象に その 平均SV値を 算出 した 。ま た、 音響 調査 と直 接採 集法 を併 用 し、 曳網 深度 内に おけ るシ ラス 魚群 の平均SV値と採集量を比 較す るこ とで 、2周 波法 によ る判 別精 度とその推定量の妥当性について検証した。その 結果 、2周 波法 によ るシ ラス 魚群 判別 の精度は高く、ここから推定される密度は実際の 現存量を良く反映しているものと判断さ れた。

  音 響手 法を用いたシラス魚群 の探索とその分布推定のモデル研究として紀伊水道西岸 海 域 で実 施し た。2004年か ら2008年の5年 間に 紀伊 水道 と 播磨 灘の 一部 で得 た音 響デ ータ から シラス魚群(n=2267)を 抽出し、魚群毎にその密度や分布深度、魚群の規模(幅 と高さ)について解析した。シラス魚群 のSV値は‑77.5dB〜‑47.OdBの範囲に分布し、個 体 数 密度 に換 算す ると3個体/m3か ら4000個 体んfで あっ た 。ま た、 その 分布 深度 は春 季発 生群(4‑6月) およ び 夏季 発生 群(7‑9月 )は 海底 付近 に集 中するのに対し、秋季発 生群 は表 層から海底付近まで広 く分布する傾向が示された。一方、2004年のように春季 発生 群が 高水準期となった場合 、その分布深度が鉛直方向に大きく広がる傾向が示され た。 次に 、それぞれのシラス魚 群が分布する深度に対応する水温を抽出し、その季節変 化を検討した。春季発生群は10.8〜  21.8℃の範囲に分布し、紀伊水道内の水温が上昇す ると とも に、その分布環境が徐 々に高くなった。夏季発生群はその90%以上が20℃より 高い 水温 帯に分布していた。し かしながら、2005年のように海底付近に低水温帯が形成 され た年 はその影響を受け、分 布環境が20℃を下回る魚群も存在した。秋季発生群は、

15℃丶‑25℃ の範囲に分布し、春季発生群とは対照的にその分布環境は徐々に低くなった。

最後 に、 シラス魚群の分布域と 非分布域の水温の違いについて比較・検討した。結果、

夏季 発生 群でその両海域におけ る水温差が非常に高いことが明らかとなり、表層や中層 に 形 成 さ れ る 高 水 温 帯 を 避 け て 海 底 付 近 に 分 布 し て い た と 考 え ら れ た 。   以上より、本研究で示した音響手法を 適用することで、その分布域が広範囲に広がり、

かつ パッ チ状に魚群を形成する シラスの分布を推定することが可能となった。また、シ ラス 魚群 の鉛直方向における分 布が明らかとなり、分布深度に応じた周囲環境を得るこ と が で き 、 よ り 詳 細 に 両 者 の 関 係 を 把 握 す る こ と が 可 能 と な っ た 。   本 研究 成果はシラス魚群の自 動判別を可能とし、広域モ二夕リングシステムとしてシ ラスの来遊量や漁場の形成状況などその 漁況予報に大いに貢献してしゝくことが期待され る。

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学位論文審査の要旨

主査   准教授   宮下和士 副査   教授   山羽悦郎 副査   教授   仲岡雅裕

副査   教授   飯田浩二(大学院水産科学研究院)

副査   教授   藤森康澄(大学院水産科学研究院)

副 査    教 授    濱 野    明 ( 水 産 大 学 校      海洋生産管理学科)

学 位 論 文 題 名

音響手法を用いたカタクチイワシ(Engraulis jap07zicus) 仔魚の分布推定に関する研究

  力夕クチイワシEngraulis japonicusは日本の 沿岸から沖合にかけて広く分布しており、様 々な ステ ー ジで 漁獲 の対 象と なっ てい る。 仔魚 期に あた るシ ラス は 沿岸 漁業 における重要 な水 産資 源 であ り、 その 生産 額は 成魚 を大 きく 上回 る。また、魚食I生魚類や海獣類、海鳥 など 、様 々 な高 次捕 食者 の餌 料と して も重 要な 位置 を担 って いる 。 太平 洋側 では、黒潮流 域に て産 卵 ・ふ 化し た個 体が 黒潮 によ って 東方 へと 輸送 され る過 程 でそ の一 部が沿岸海域 に接 岸し 、 漁場 が形 成さ れる 。こ れま で、 この 漁場 形成 とそ の要 因 につ いて 多くの研究が 成さ れて お り、 ネッ トサ ンプ リン グを 中心 とし た調 査が 実施 され て いる 。し かしながら、

ネッ トサ ン プリ ング や海 洋観 測に は多 大な 労カ や時 間カ 泌要 であ る 。ま た、 採集個体が漁 獲対 象と な るま でに タイ ムラ グが 生じ 、こ の期 間の 生残 率に よっ て 漁況 予報 が大きく変動 する 。そ こ で本 研究 では 、水平的・鉛直的な魚 群´際限を迅速かつ広範囲で取得することが でき る音 響 手法 に着 目し 、そ の手 法を シラ スに 適用 する こと でシ ラ ス魚 群の 分布推定を試 みた 。ま た 、黒 潮の 離接 岸が シラ ス漁 場の 形成 に大 きく 影響 する 紀 伊水 道海 域を対象に本 手法 を用 い たモ デル 研究 を実 施し た。

  音 響手 法 によ る量 推定 には 、ス ケー ルフ ァク ター であ るタ ーゲ ッ トス トレ ングス(TS)が 必要 とな る 。本 研究 では このTSを理論モデルに て推定した。まず、モデル計算に必要な密度 比舒 音速 比 ゐを 計測 し、 その 知見 を得 たほ :1.053〜1.079、 カ:1.015〜1.091)。次に、T Sの姿 勢角 特l生 につ いて 検討した結果、無鰾状 態である昼間のシラスは姿勢角のわずかな違 いで あっ て もTSが大 きく 変動 する こと が明 らか とな った。そこで、2008年1月および12月の 2期間 にお いて 、定 置網 内で 捕獲 した シ ラス を対 象に 遊泳行動を観察した。その結果、シラ     ‑ 73―

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スは頭部を上向きにした状態で遊泳する傾向が強く(Avg.:12.8°S.D.:22.1)、一般的な 浮魚類と異なった姿勢角分布をもつことが明らかとなった。ここで得た姿勢角分布を基に平 均イ岨、S (TSヨvg)を算出し、TSーSLの関係式から密度推定を行う際に必要なTSを得た(TSヨ vg=60.5 log【SL) ‑170.8)。

  計量魚探より得られた野外データを扱う際に、その反射強度や密度の誤差となる要因とし て吸収減衰値が挙げられ、本研究ではその補正方法について検討した。まず、深度1m毎の 水温・塩分データを基に算出した減衰値を真値とし、表層から海底付近までの平均水温およ び塩分を各深度帯に適用して算出した吸収減衰値と比較した。その結果、水温や塩分濃度の 成層カ避む夏季においても両者の間に差はほとんどみられず、補正方法の違いによる密度へ の影響は小さいと判断された。次に、音響調査と直接採集法を併用し、曳網深度内における シラス魚群の平均SV値と採集量を比較することで、2周波法によるシラス魚群の判別精度と その推定量の妥当性について検証した。その結果、判別精度は高く、ここから推定される密 度は実際の現存量を良く反映しているものと判断された。

  音響手法を用いたカタクチイワシ仔魚の分布推定の事例として紀伊水道西岸海域に来遊す るシラス魚群の分布推定を実施した。2004年から2008年の5年間に紀伊水道と播磨灘の一部 で得た音響データからシラス魚群(n=2267)を抽出した。その鉛直的な分布は各発生群で 様々であり、春季発生群(4‑6月)および夏季発生群(7‑9月)は海底付近に集中して分布、

秋季発生群は表層から海底付近まで広く分布する傾向が示唆された。また、春季発生群は50 m以深となる海域から徐々に浅海域へ、夏季や秋季発生群は浅海域から深い海域へと移し、

各発生群の中でも各月によってその水平的な分布域の移行が示唆された。最後に、各発生群 とその分布環境について検討した結果、春季発生群は黒潮が接岸基調となり、暖水塊(18― 20℃)が流入した場合、この水塊を分布の中心として水道内へと来遊すると考えられた。一 方、離岸基調となった場合、水道内の水温は低く(15一17℃)、その分布の中心は水道入口 や水道外であり、卵稚仔が水道外へと輸送されたためと考えられた。夏季及び秋季発生群は そわぞ・れの来遊時期における水温が漁獲量及び魚群の出現数に大きな影響を与えていると考 えられた。

  以上のとおり、申請者は音響手法によるシラスの分布推定方法を提案するとともに、紀伊 水道に来遊する仔魚群の分布に関する新知見を得た。このことは、今後のカタクチイワシ仔 魚の量推定や漁況予報に対して貢献するところ大なるものがある。よって、申請者は博士

( 環 境 科 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 が 有 る も の と 判 定 し た 。

参照

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