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(1)

ける美術教員数の変容等から見る美術教育の課題 ―

Author(s) 花輪, 大輔; 工藤, 雅人

Citation 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 72(2): 341‑351

Issue Date 2022‑02

URL http://s‑ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/12415

Rights

(2)

若手中学校美術教員支援プログラム開発に関する研究Ⅰ

―北海道における美術教員数の変容等から見る美術教育の課題―

花輪 大輔・工藤 雅人

北海道教育大学札幌校美術科教育学研究室

北海道北広島市立大曲小学校

AStudyontheDevelopmentofSupportProgramsforMiddleSchool Early-CareerArtTeachersⅠ

―TheIssueofArtEducationinTermsofChangesintheNumberofArtTeachers inHokkaido―

HANAWADaisukeandKUDOMasahito

DepartmentofArtEducation,SapporoCampus,HokkaidoUniversityofEducation

KitahiroshimaCityOmagariElementarySchool

概 要

本稿は,北海道における美術教員数の変容等から見る美術教育の課題を踏まえ,中学校美術 科若手教員支援プログラム開発及び検証のための研究の途中経過を報告するものである。新型 コロナウイルス感染症に伴う影響のため,研修プログラムの実施・検証には至っていない。し かし,人口減少が加速する北海道の中学校において,主に美術の免許状を有する教員の配置状 況及び採用者数,へき地級の有無による美術の免許を有する教員の割合,免許外教科担任の許 可件数,美術教育に関する民間教育研究団体への加盟者数に関する推移の状況を明らかにした。

また,上記の調査と平行して支援プログラム開発のための中学校美術科若手教員に対する予 備調査を実施した結果,教職課程コアカリキュラムの「到達目標」(以下到達目標)に関する 理解度が総じて低調であり,特に学習指導要領の目標や内容の理解度と学問領域を背景とした 教材研究との関連に問題があることを明らかにした。このことは,本学の教員養成の質保障に も大きく関わる問題であり,本研究の取り組みの継続とともに,学部生教育と若手教員研修と の有機的な接続を見据えた支援プログラムの開発が必要との認識するに至った。

(3)

Ⅰ はじめに

近年,我が国では教員の質保証に向けた改革が 進められ,特に教員養成に対する社会の要請は大 きい。すでに中学校美術科の教員養成の充実や実 践的指導力を中核に据えた力量形成の研究は多数 の成果が見られる。新井哲夫・金井則夫(2013)1 は中学校美術科教員の質保証についての先行研究 をまとめ,美術教師の専門的力量の構成要素を9 つのテクニカルスキルとして整理した。北海道教 育大学では2017年からの教職課程コアカリキュラ ムを中軸に据えた教員養成改革の検討を終え,各 教科教育法科目では教職課程コアカリキュラムに 示された10項目の到達目標(以下到達目標)を位 置づけたシラバスの改訂とともに,教科内容科目 との有機的な結合による実践的指導力の向上を図 る教育課程の実施へと新たな段階に突入したとこ ろである。

このような大学の動きとともに,各自治体では,

教育公務員特例法の一部改正(平成29年4月1日 施行)に伴い「教員育成指標」及び「教員研修計 画」の策定,及び教員研修の充実に取り組んでき た。札幌市と北海道における学習指導の観点2は

「到達目標」と比べると大幅にスリム化され,① 授業構築,②指導技術,③授業評価・改善の3点 に絞られているが具体的な成果の報告も見付ける ことはできない。特に札幌市や北海道における若 手教員支援の取り組みについては,学校組織の中 での取り組み事例,或いは他教科の取り組みに関 する報告は散見されるものの,中学校美術科の教 員を対象とした取組みの確認ができないことが本 研究の着想に至った大まかな経緯である。

また,本学が位置する北海道は広域性がその特 徴とされるが,特に「美術(中学校)」免許状を 有する教員(以下,美術教員)の配置数は1名,

もしくはそれ以下であることが多い。そのため一 人職として気軽に相談ができるところもなく,若 手教員が問題を抱えながら日々の授業に負われ,

美術科教育の本質と向き合えずにいるケースも多 いと推察するものである。

本研究の構想段階では北海道における中学校美 術教員の配置・採用状況を明らかにするととも に,養成・採用・研修のシームレスな接続のため の若手の美術教員支援プログラムの開発及びその 妥当性の検証までを射程としていたが,新型コロ ナウイルス感染症の影響で支援プログラムの実施 が困難となったことから,支援プログラム開発の ための予備調査結果報告までを研究の射程とする こととした。この後,Ⅱ章では北海道における中 学校美術教員の配置状況,Ⅲ章では民間教育研究 団体「北海道造形教育連盟」会員数の傾向,Ⅳ章 では若手美術教員支援のための予備調査から得ら れた知見を報告する。

Ⅱ 北海道における「美術(中学校)」教員免 許状を有する教員配置の状況

北海道の人口2は全国より10 年以上早い1997 年をピークに減少に転じ,現在も全国平均を上回 るスピードで人口減少が進行している。それに伴 う中学生数の減少,そして学校数の減少,さらに は美術教員配置数の削減といった流れは想像に難 くない。そこで本章では北海道における2009年か ら2018年までの10年間における美術教員配置・採 用の状況とへき地等級の有無や学級数別に整理し 分析を進める。

基データは北海道教育委員会の「北海道学校一 覧」3に掲載されている平成21年度から平成30年度 までの10年間の公立中学校の各学校情報を基にし つつ,「北海道教育関係職員録」の2009年度版か ら2018年度版4において「美術」の記載のある教 員については期限付き教員や時間講師,教頭を含 めている。また,中学校数については「分校」は 含めたが「休校」は除いているため,北海道教育 委員会公表の学校数とは若干の相違があることを 断っておく。

⑴ 北海道の中学校数,生徒数,美術教員数の変

図1に2009年度から2018年度までの北海道の中

(4)

学校数,生徒数,美術教員数の推移を示した。

過去10年の北海道における中学生の人数は2009 年 度 の144,095人 か ら2018年 度 の122,758人 と 約 15%(21,337人)減少しており,これに応じて中 学校数も2009年度の664校から2018年度の577校と 約13%(87校)減少している。これに対し,美術 教員数はここで示した10年のうち2011年が最多の 475人で2014年が最小の439人であり,2012年以降 は若干の変動はあるものの450人前後で推移して いる様子が見られる。

生徒数及び中学校数は,年度進行に伴って減少

し続けているが,美術教員数については最大・最 小値の差が36人であり,微減傾向ではあるものの 大きな変化は見られない。2018年度では450人/

577校と1校につき十分な配置とは言えない状況 であるものの,美術教員の配置数には減少が見ら れるとの予想とは異なる結果である。学校数が右 肩下がりに減少しているにもかかわらず美術教員 が横ばいであるため,1中学校当たりの美術教員 の配置数は2009年度が0.69人であったのに対し て,2018年度では0.78人と0.1ポイント近く増加し た。

次に,新規採用者数について調査した。

表1に,ここ10年間の北海道(札幌市を含む)

の中学校の採用者数を教科毎に示した。2019年は 例年の2倍に上る大量採用となっていることがわ かる。特に授業時数が同様(115時間/3年間)

である音楽とでは半数程度の開きがあるなどの問 題は軽視できないが,計画的採用によって採用者 数は増加してきた。2018年度では,美術教員450 名のうち97名が採用10年未満の若手教員となる。

特に,ここ5年間の新規採用者は全体の17%以上

(79人)である。

図1 北海道における過去10年間の中学校数,生徒 数,美術の免許を有する教員数の推移

表1 北海道における中学校新規採用者数(教科別)の状況(単位:人)北海道教育委員会・札幌市教 育委員会発表

年度 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 合計 教科

国語 42 39 40 35 38 34 39 40 27 30 67 431 社会 34 30 26 23 34 35 29 32 32 28 58 361 数学 44 53 58 45 34 47 56 42 31 27 59 496 理科 31 50 58 51 38 36 31 37 26 22 46 426 英語 42 39 48 50 56 48 56 39 32 39 70 519 音楽 21 14 18 10 11 8 17 20 17 23 43 202

美術 8 8 6 4 7 7 13 15 14 15 22 119

保健体育 44 32 27 30 35 40 38 36 33 32 71 418

技術 4 5 4 5 4 4 4 6 10 6 9 61

家庭 10 5 7 3 5 2 5 6 7 9 18 77

合計 280 275 292 256 262 261 288 273 229 231 463 3110

(5)

⑵ へき地学校の割合等の推移

へき地校とは「へき地教育振興法」にて「交通 条件及び自然的,経済的,文化的諸条件に恵まれ ない山間地,離島その他の地域に所在する公立の 小学校及び中学校並びに中等教育学校の前期課程 並びに学校給食法(昭和二十九年法律第百六十 号)第六条に規定する施設(以下「共同調理場」

という。)をいう。」5と定められており,これに該 当する学校については,へき地における教育の水 準の維持向上を図るために生徒及び教職員に対 し,教育環境や生活環境の向上に必要な措置を講 ずることとされている。

北海道では,文部科学省令で定める基準を参酌 して,条例でへき地学校及びその級別の指定並び にへき地学校に準ずる学校を指定しており,「特 別の地域に所在する学校」「へき地学校に準ずる 学校」「1級」「2級」「3級」「4級」「5級」の 7つの等級で区分されており,本稿において「へ き地校」とするのはこの7つの区分に指定されて いる学校を指すものとする。以上のことを踏まえ,

へき地学校における美術教員の状況を調査した。

ここ10年間における北海道の中学校のへき地校 とそうでない学校の割合は,概ね40%前後を境に 推移している。学校数が大幅に減少する中で,へ き地校の割合に変化が見られないのは,へき地校 であるなしに関わらず学校数が減少していること を示すものである。

さらに,ここ10年間の北海道における中学校の へき地校とそうでない学校に在籍している美術教 員の割合については,へき地校が25%前後,そう でない学校が75%前後で,大きな変容は見られな い。しかし,へき地校数が中学校全体の45%程度 あるのに対し,へき地校の美術教員は25%程度で あることから,次節でさらに詳細な調査をするこ ととした。

⑶ 学級数及びへき地級の有無別の美術教員の配 置状況

ここまで,中学校数,生徒数が減少する中,10 年間で美術教員数に大きな変化がないことや,北

海道のへき地校においては美術の免許を有する教 員が十分配置されていないこと等が見えてきた。

ここでは,その10年間に美術教員がどのような規 模のどのような地域に配置されてきたのかについ て明らかにしていく。なお,2010年の4月にへき 地等級の条件の見直しがあったことから,表2に は2010年と2018年の抜粋を示す(10年間の詳細は 資料として末尾に掲載)。北海道の中学校の学校 規模を横軸として,へき地級の有無別に美術教員 の配置をクロス集計した。

これによると,学級数別では,9~11学級(各 学年3学級以上)以上の規模の学校では,概ねど の年度でも各校に1名程度の美術教員が配置され ているが,それ以下の6~8学級(各学年2学級 以上)の学校から1名以下,すなわち配置されな い学校が出現する。また,へき地校においてはこ の10年間15学級(各学年5学級以上)以上の学校 はないことがわかる。

本表において,一番学校数が多かったのは全て の年度において,へき地校の3~5学級(各学年 1学級以上)であり(表中の網掛け部),各年度 で全中学校数の2~3割を占める。しかしながら,

一番学校数が多いにも関わらず1校当たりの美術 教員の割合は0.3~0.5人であり,2校または3校 につき1人しか配置されない状況であることがわ かる。さらに,美術教員数は全体の10~15%程度 である。その一方で,美術教員数が最も多いのは,

全ての年度においてへき地級のない12~14学級

(各学年4学級以上)の学校であり,総数の15%

~20%程度を占める。

北海道の美術教員の配置状況の推移は変化がな く,へき地級のない大規模校には十分な配置がな されている一方で,最も学校数の多い,へき地校

(1学年1学級程度)では十分な配置がなされな い状況が継続していることがわかった。

すなわち,へき地校では美術教員による授業が 提供されない地域間格差が是正されないまま現在 に至るということである。

(6)

⑷ 免許外教科担任の許可件数の状況

これまで,北海道の中学校美術教員の配置状況 を見てきた。2018年度では中学校総数577校に対 して22%に当たる127校に美術教員の配置がない ことになる。しかし,美術は学校教育法施行規則 に定められた必修教科であるため,例外措置とし て,1年以内の期間を限り,都道府県教育委員会 の許可により,当該教科の免許状を有しない教員 が当該教科の教授を担任する,いわゆる免許外教 科担任制度7が定められている。

北海道の中学校(札幌市を除く)における免許 外教科担任の許可件数のうち,美術については,

2019年度については154人であり,未配当校の127 校を上回っている。しかし,音楽が15人,保健体 育が29人,さらには外国語や理科が0人であるこ とを考えると,美術教員の適正配置に課題が見ら れることは明白である。また,免許外教科担任の 許可は,あくまでも相当免許状主義の例外であり,

教育基本法に定める学校教育の実現を保障するた めには,そもそも抑制的に用いられるべきもので ある。

しかし,「公立義務教育諸学校の学級編成及び 教職員定数の標準に関する法律」8における中学校 の教員定数は,本道で最も学校数の多い1学年1 学級の3学級では10名となり,校長・養護教諭を 除くと教科等の担任の教諭は8名(教頭を含む)

となる。そうなると必修9教科の教員を全て配置 することは難しい。そのため年間指導時数が教科 の中で少ない技術・家庭科はもとより,音楽科と 美術科については,持ち時数の関係からも単独で これらの教科のみを担当する教員を配置すること は困難な状況であることは想像に難くない。

本研究の射程ではないため割愛するが,上記の 現実を鑑み,免許外指導教員への支援は喫緊の課 題といえる。

表2 北海道における学級数及びへき地学校等別の美術の教員の配置状況の推移

へき地級なし 学校規模 21以上 18~20 15~17 12~14 9~11 6~8 3~5 2以下 合計

2009年度

学校数(校) 10 13 44 64 94 81 82 8 396

全体に占める割合(%) 1.5% 2.0% 6.7% 9.7% 14.3% 12.3% 12.5% 1.2% 60.3%

美術教員(人) 19 22 53 70 96 67 29 1 357

1校当たりの人数(人) 1.9 1.7 1.2 1.1 1.0 0.8 0.4 0.1 0.9

2018年度

学校数(校) 6 10 40 50 89 84 70 10 359

全体に占める割合(%) 1.0% 1.7% 6.9% 8.7% 15.4% 14.6% 12.1% 1.7% 62.2%

美術教員(人) 13 14 44 54 88 75 42 3 333

1校当たりの人数(人) 2.2 1.4 1.1 1.1 1.0 0.9 0.6 0.3 0.9

へき地級あり 学校規模 21以上 18~20 15~17 12~14 9~11 6~8 3~5 2以下 合計

2009年度

学校数(校) 1 3 39 173 45 261

全体に占める割合(%) 0.2% 0.5% 5.9% 26.3% 6.8% 39.7%

美術教員(人) 1 4 29 66 4 104

1校当たりの人数(人) 1.0 1.3 0.7 0.4 0.1 0.4

2018年度

学校数(校) 1 3 22 158 34 218

全体に占める割合(%) 0.2% 0.5% 3.8% 27.4% 5.9% 37.8%

美術教員(人) 1 4 17 82 13 117

1校当たりの人数(人) 1.0 1.3 0.8 0.5 0.4 0.5

※本表の「教員数」は美術の免許を有する教員を指す ※学級数は特別支援学級を除いた数

(7)

Ⅲ 北海道における美術教育に関する民間教 育研究団体「北海道造形教育連盟」の会員 数の変化の状況

前章で北海道の中学校美術教員数及び採用者 数,へき地校と都市部での配置数の格差等につい て,公的な資料を基に明らかにした。それらは教 育行政上の問題である。

本章では教育行政ではなく,民間教育研究団体 である「北海道造形教育連盟(以下,道造連)」

の会員数についての調査を試みる。

道造連は,札幌市に本部事務局を置き,5つの ブロックに19の支部サークルを持つ図画工作・美 術教育に関する民間教育研究団体である。1951年 に発足し,現在では各ブロックが主体となった全

道造形教育研究大会や北海道教育美術展,支部 サークル毎の理論・実技研修会などを通した北海 道の造形教育の振興とともに,各会員は美術教育 の実践家としての研鑽に努めている。2020年度の 新型コロナウイルス感染症に伴う影響で初の中止 となったが,2021年度で全道造形教育研究大会は 70回を数える。

道造連を調査の対象としたのは,「学び続ける 教員像」9の確立が求められている今日において,

本道の美術教育においては無二の貴重な民間の教 育研究団体だからである。

道造連事務局本部に会員数に関する資料の提供 を依頼し表3を作成した。なお,各会員が所属す る学校園種の詳細を把握できたのは札幌支部だけ である。札幌支部では中学校の美術教員は37人/

表3 北海道造形教育連盟5ブロック,19支部(地区サークル)毎の会員数比較(本部事務局提供)

ブロック 地区サークル名 2000 2020 増減 備考

札幌 1 札幌市造形教育連盟 156 117 ▲39

道央

2 石狩造形教育連盟 68 110 42

3 空知美術教育研究会 70 36 ▲34

4 後志教育研究会 ns 10 10

小 計 138 156 18

道北

5 上川造形教育研究会 41 45 4

6 旭川市教育研究会 87 42 ▲45

7 留萌地方美術教育研究会 32 11 ▲21

8 宗谷造形教育研究会 ns 3 3 H31発足:会員数は暫定

小 計 160 101 ▲59

道南

9 渡島美術教育研究会 51 13 ▲38

10 函館市美術教育研究会 29 32 3

11 檜山管内造形教育研究会 19 10 ▲9

11 胆振造形教育研究会 34 ns ▲34 H30度閉会

12 苫小牧市教育研究会 73 1 ▲72 官制研修組織のためH30より窓口体制

13 室蘭市造形教育研究会 11 13 2

14 日高造形教育研究会 ns 9 9

小 計 217 78 ▲139

道東

15 十勝造形サークル 24 24 ±0

16 帯広市教育研究会 88 61 ▲27

17 釧路造形教育研究会 36 35 ▲1

18 オホーツク造形教育連盟 19 20 1

19 根室造形教育連盟 15 8 ▲7

小 計 182 148 ▲34

総 計 853 600 ▲253

(8)

117人で,32%程度の構成比であった。また,公 立・市立中学校の合計が107校であることから,

全造連への加入率が34%程度であることがわかっ た。

本表の数値は複数の学校園種の合計であるが,

2000年からの20年間で約3割の会員が減少したこ とがわかる。大都市・中核都市圏では苫小牧市の 特殊事情を除けば旭川市の52%減,帯広市の30%

減,札幌市の25%減(合計で111人)に止まって いるようにも見える。しかし,それ以外のへき地 においては,それらを上回る減少数(142人)で ある。

札幌市の人数構成比や加入比率から,2018年の 中学校の美術教員総数450人のうち道造連の会員 は150人程度との推測が可能であるが,この20年 間で120名程度の中学校美術教員の会員が減少し たと推察できる。直近10年間の北海道(札幌市を 含む)の中学校美術教員数は微減に留まっている ことに加え119人の新規採用があった事実を考え ると,退職・退会者数が新規入会者を上回ってい ると考えられる。つまり若手教員入会率が低いと の予測が可能である。さらには,へき地校の生徒 ほど美術教員の道造連での研鑽の恩恵が届きにく いとの推察も可能である。

へき地校での美術教員配置は0.5人,へき地級 のない学校でも0.9人の配置程度である。いずれ にしても,インターネットで必要な情報へのアク セスが可能な時代になったとはいえ,このような 配置状況で一人で研鑽を積むには限界もある。

教員配置の状況に関しては教育行政上の問題で あり,道造連の加入については教員個人の研修意 識の問題であるから,これを同時に論じることは できない。しかし,退会者を増やさないための魅 力ある研修プログラムの実施を前提とした新規採 用の美術教員へのアプローチが,道造連の将来,

さらには未来の北海道の美術教育を左右すると考 える。

本章の結びに換えて,あるエピソードを紹介す る。これまで筆者(第一著者)は中学校美術科の 授業実践・教科経営に関する多くの相談を受けて

来た。中でも子どもの一人一人の個性の発揮と いった美術科教育の命題が許されない「石膏を用 いてクラス全員が3cm四方の立方体を制作する」

という授業の相談に対して,学習課題の妥当性の 担保について,一から説明をしたことがあった。

これには大きな衝撃を受けた。

その際,「自分は実技は得意であるが美術教育 のことがわからない」,「採用自治体に美術教師が 一人であるため相談ができない」,さらには「へ き地のため研修機会がない」といったことを聞き,

若手の中学校美術教員支援の必要性を強く感じた。

美術教員の総数が減少していないにも関わら ず,道造連の会員が純減しているならば,民間教 育研究団体で学び続けようとする若手教員の減 少,或いは若手教員が学び続けるための研修機会 の喪失と同義と捉えるに至った。

Ⅳ 北海道における若手中学校美術教員支援 のための予備調査報告

これまで,北海道の美術教員の配置状況や道造 連の会員数の減少傾向,そして先述のエピソード などから若手の中学校美術教員支援の必要性につ いて考えてきた。現職教員のリカレント教育を含 めた研修機会の拡充は本学だけではなく,教育行 政機関や道造連との連携は欠かせない。しかし,

新型コロナウイルス感染症の影響で様々な調査や 連携・協働の機会確保が難しくなったことから,

若手美術教員の協力者を募り,支援プログラム開 発の着想を得るための予備調査を実施することと した。

その足がかりとしたのが,教職課程コアカリ キュラムに示された「到達目標」10(以下「到達目 標」)である。自治体が設定する「教員育成指標」11 に示された内容はスリム化されていることもあ り,教員の養成・採用・研修のシームレスな接続 のために援用が可能と考えた。また,(第一著者)

が若手中学校美術教員時代に,「大学の時にもっ と教科教育の勉強をするべきだったとの後悔」も その理由の一つである。

(9)

2019年7月から8月にかけて,北海道内の中学 校美術科担当若手教員20名を対象とした到達目標 の理解度に関する調査を7件法で実施したとこ ろ,11件の有効回答があった(経験年数Ave.:

2.65年,S.D:1.51,年齢Ave.:24.3歳,S.D:1.16)。

質問項目及び回答の平均値,標準偏差を表4に,

それぞれの項目間の相関を表5に示す。

表4からは,到達目標に関する理解度が総じて 低調であり,特に学習指導要領の目標や内容の理 解度に問題があることがわかる。本調査に協力を した若手教員は,目の前にいる様々な子ども実態 把握を大切にしながら,日々の授業を改善しよう

と努力をしていると推察できるものの,目標や内 容の理解度が低調であることから,指導と評価の 一体化自体に疑義が生じるところである。特に学 問領域を背景とした教科の目標・内容・構造の理 解促進と,それらを具体的な指導や評価に落とし 込むためのプログラム開発が必要であるとの結論 に至った。

また,有効回答数が少数ではあるが,各質問項 目間では1−4(r=0.78,p=0.01),3−9(r=0.78, p=0.01)に強い正の相関が確認された。日々実 際に生徒に対して授業を行い評価をしているわけ であるから,生徒の学習状況を評価し,授業改善

表4 予備調査における教職課程コアカリキュラムの「到達目標」理解度

Ave. S.D 1.学習指導要領に示された当該教科の目標や内容を理解する

1) 学習指導要領における当該教科の目標及び主な内容並びに全体構造を理解している。 3.36 0.67

2) 個別の学習内容について指導上の留意点を理解している。 3.18 0.60

3) 当該教科の学習評価の考え方を理解している。 4.27 0.79

4) 当該教科と背景となる学問領域との関係を理解し,教材研究に活用することができる。 3.18 0.87 5) 発展的な学習内容について探究し,学習指導への位置付けを考察することができる。 3.64 0.81

2.基礎的な学習指導理論を理解し,具体的な授業場面を想定した授業設計を行う方法を身に付ける

6) 子供の認識・思考,学力等の実態を視野に入れた授業設計の重要性を理解している。 5.18 0.60 7) 当該教科の特性に応じた情報機器及び教材の効果的な活用法を理解し,授業設計に活用する

ことができる。

3.64 0.92 8) 学習指導案の構成を理解し,具体的な授業を想定した授業設計と学習指導案を作成すること

ができる。

4.18 1.17

9) 模擬授業の実施とその振り返りを通して,授業改善の視点を身に付けている。 4.64 0.50 10) 当該教科における実践研究の動向を知り,授業設計の向上に取り組むことができる。 3.73 0.78

(7:とても理解している,6:理解している,5:どちらかといえば理解している,4:どちらでもない,3:どちらか といえば理解できていない,2:理解できていない,1:全く理解できていない)

表5 予備調査における教職課程コアカリキュラムの「到達目標」理解度の項目間の相関係数

(10)

に取り組もうとしているものの,学問背景や学習 指導要領における目標や内容の理解を伴った教材 研究に自信を持てないでいることがわかった。

美術の教科特性として,既存の教材を用いて「い かに作品を作らせるか」といった作品主義的なこ とではなく,一人一人の生徒の人間形成に寄与す るために主題を造形的に表現したり鑑賞したりす る活動を設計する力が求められる。しかし,その 専門性の難易度が高すぎるために自信を持てない でいると推察する。

いずれにしても,予備調査の結果は決して良好 ではない。そのために,今後はどんな内容をどの くらいのボリュームで提供すれば良いのか,継続 的に研究に取り組む必要があると考えている。

Ⅴ おわりに

本稿は,北海道における美術教員数の変容等か ら見る美術教育の課題を踏まえ,中学校美術科若 手教員支援プログラム開発及び検証を射程とした 研究の途中経過を報告するものである。新型コロ ナウイルス感染症に伴う影響のため,研修プログ ラムの実施・検証には至っていないが,これまで 以下の7点の知見を得た。

① 2009年度から2018年度までの北海道の中学校 数は約13%,生徒数は約15%減少しているが,

美術教員数は450人前後をキープしており,

大きな変化は見られない。

② 他教科との比較では十分とは言えないが,計 画的採用によって採用者数は増加しており,

2019年までの直近5年間では79名の採用が あった。これは全体の17%を越える人数であ る。

③ 2009年度から2018年度までの北海道の中学校 のへき地校とそうでない学校の美術教員の割 合は,へき地校が25%前後,そうでない学校 が75%前後で,大きな変化は見られない。ま た,へき地校数が中学校全体の45%程度ある のに対し,へき地校の美術教員は25%程度で ある状況も変化がない。

④ 北海道の美術教員の配置状況は,へき地級の ない大規模校には十分な配置がなされている が,へき地校(1学年1学級程度)では十分 な配置がなされない地域間格差の状況が継続 している。

⑤ 美術教員の適正配置に課題が見られることは 明白であるが,最も学校数が多い1学年1学 級の3学級で教員定数は10名のため,必修9 教科の教員を全て配置できない。免許外教員 への支援は喫緊の課題である。

⑥ 中学校の美術教員数には変化はないが,2000 年からの20年間に道造連の会員数は3割が減 少した。このことは,民間教育研究団体で学 び続けようとする若手教員の減少,或いは若 手教員が学び続けるための研修機会の喪失と 同義である。

⑦ 教職課程コアカリキュラムに示された「到達 目標」を用いて若手美術教員を対象とした予 備調査を実施した結果,特に学問領域を背景 とした教科の目標・内容・構造の理解促進 と,それらを具体的な指導や評価に落とし込 むためのプログラム開発が必要であることが わかった。

特に予備調査において「到達目標」に関する理 解度が総じて低調であり,特に学習指導要領の目 標や内容の理解度に問題があることは,本学とし ての教員養成の質保障にも大きく関わる問題であ る。教員の養成・採用・研修の有機的な接続を見 据えた支援プログラム開発で得られる知見は,本 学学生教育のさらなる充実に必要不可欠であると の認識に至った。

本研究の最終目的は,北海道の若手美術教員支 援のためのプログラムを開発・実施するととも に,その有効性及び妥当性の検証である。本研究 を足がかりとして,将来的に大学・教育行政・民 間教育研究団体等の連携・協働による北海道美術 教育の充実・発展のための包括的なシステム構築 につながること,それによって子ども達一人一人 に質の高い美術の授業が提供されることを期待し

(11)

てやまない。

追 記

本研究は,平成30年度 学長戦略経費(公募型 プロジェクト)共同研究推進経費の助成を受けた ものである。

1.新井哲夫,金井則夫(2013)「図画工作・美術科教育 に求められる専門的力量形成に関する検討⑴」美術教 育学:美術科教育学会誌340,pp15-31.

2.北海道,「北海道創生総合戦略」

 〈http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/csr/jinkou/senrya ku/senryaku.htm〉

3.北海道教育委員会,「北海道学校一覧」

 〈http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/ksk/chosa /gakkou-i/gakkou-i.htm〉

4.北海道教育評論社『北海道教育委員会職員録 2009 年度版~2018年度版』

5.「へき地教育振興法,第二条」

 〈https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=329AC 0000000143〉

 「この法律において『へき地学校』とは,交通条件及 び自然的,経済的,文化的諸条件に恵まれない山間地,

離島その他の地域に所在する公立の小学校及び中学校 並びに中等教育学校の前期課程並びに学校給食法(昭 和二十九年法律第百六十号)第六条に規定する施設(以 下「共同調理場」という。)をいう。」

6.法令検索,「公立義務教育諸学校の学級編成及び教職 員定数の標準」

 〈https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=333AC00 00000116〉

7.文部科学省,「免許外教科担任制度の在り方に関する 調査研究協力者会議 報告書」

 〈http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou /136/houkoku/1409410.htm〉

8.文部科学省,中央教育審議会「今後の教員養成・免 許制度の在り方について(答申)」

 〈http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chu kyo0/toushin/1212707.htm〉

9.文部科学省,中央教育審議会「教職生活の全体を通 じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」

 〈https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chu kyo3/siryo/attach/1325922.htm〉

10.文部科学省「教職課程コアカリキュラム」

 〈https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/

toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/11/27/13984 42_1_3.pdf〉

11.札幌市教育委員会(2020)「令和2年度教員育成指標」

p6.

(花輪 大輔 札幌校准教授)      

(工藤 雅人 北広島市立大曲小学校校長)

(12)

別添資料 2009年度~2018年度の学級数及びへき地学校等別の美術の免許を有する教員の配置状況の推移         ※本表の「教員数」は美術の免許を有する教員を指す ※学級数は特別支援学級を除いた数

(13)

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― 17 ― まくなじめず、母国に帰った子どももいる。

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 おそらく1890年代の中国海軍と日本海軍の間の最も大きな相違は,日本の艦隊が統一されてい