マウスピース型歯骨導アクチュエータを用いた受聴
Hearing of Bone-Conduted Sound via teeth with a Mouthpiece-formed Actuator
1W100165-2
久世 大 指導教員 及川靖広 教授KUZE Dai Prof. OIKAWA Yasuhiro
概要: 本研究では,以前本研究室で提案したマウスピース型アクチュエータを使用し,歯骨導音受聴における明瞭性 の向上を目的とした受聴特性の測定を行った.中切歯,犬歯,第二大臼歯による受聴特性を測定し,結果歯毎の受聴 特性に違いは確認できなかったが,共通する傾向が確認できた.また日本語単音節による明瞭性測定を行い,各歯で の明瞭性に違いは確認されなかったが,受聴特性より補正を行ったところ,各歯に明瞭性の向上が確認できた.
キーワード:骨導音,歯,マウスピース,明瞭性,相対加速度,機械インピーダンス
Keywords: bone-conducted sound,teeth,mouthpiece
,legibility
,relative acceleration level
,mechanical impedance
1.
ま え が き普段我々が受聴している音は気導音と呼ばれ,外耳,
中耳を介し,蝸牛管に伝播されるが,その一方で骨導音 は,頭蓋骨の振動から直接蝸牛管に振動を加えているこ とから
[1]
,気導音とは異なる伝達経路で振動が伝播して おり,気導音の影響を受けにくく,騒音下での受聴能力 に優れている.また骨導音は外耳,中耳を介さないので,伝音性難聴を患っていても受聴可能であり,伝音性難聴 に有効である.
本研究室では歯骨導音に着目したコミュニケーション エイドの研究を行っており,これまで超磁歪型素子を用 いた歯骨導アクチュエータ,マウスピース型歯骨導アク チュエータの提案を行ってきた
[2]
.歯は剥き出しの骨で あり直接加振可能であることから,皮膚を介した加振と 比べて,効率的な音伝達が期待できる.歯骨導音受聴における明瞭性の向上を目的とし,本 研究では,このマウスピース型歯骨導アクチュエータを 用いて,中切歯
(Incisor)
,犬歯(Canine)
,第二大臼歯(Molar)
における受聴特性,明瞭性の測定を行った.2.
マウスピース型歯骨導アクチュエータ マウスピース型歯骨導アクチュエータ(
以下アクチュ エータ)を図―1
に示す.振動子として圧電素子である スライブ社K2512U1
を中切歯,犬歯,第二大臼歯に接 触するよう設置し,エチレンビニルアセテートシートで パウチ加工した.マウスピースは各歯に対し振動子の位 置を固定できるので,加振位置や振動子を歯に接触させ る圧力を一定に保つことが可能である.また,アクチュ エータを口内に装着したときと,歯型の石膏に設置した ときの周波数特性を図―2
に示す.比較すると二条件下 での周波数特性は類似しており,本研究では,石膏と口 内ではアクチュエータの挙動は同等とみなす.図―1 マウスピース型歯骨導アクチュエータ
10
210
310
410
−1210
−1110
−1010
−910
−810
−7Frequency [Hz]
Vibration Velocity [m/s]
on plaster in mouth
図―2 マウスピース型歯骨導アクチュエータの周波数特性
3.
受聴特性測定3. 1
機械インピーダンス測定機械インピーダンスは,物質の振動しにくさの指標で ある.歯の各周波数における機械インピーダンスを測定 し,振動の傾向を確認した.正常な聴力を持つ
20
代成 人5
名より測定を行った.検知限測定を行い,各周波数 での検知限にあたる電圧値を記録した.その電圧値をア クチュエータに再印加,測定した振動速度と振動加速度 を用いて次の式より,機械インピーダンスを導出した.Z
tooth= m × a
v [g/s] (1)
10
310
410
410
5Frequency [Hz]
Incisor Canine Molar
図―3 機械インピーダンス特性
10
310
410 20 30 40 50 60 70 80
Frequency [Hz]
R el ativ e Vibr ation Acceleration [dB]
Incisor Canine Molar
図―4 ラウドネス特性
Bone−Conducted Sound Air−Conducted Sound 0
20 40 60 80 100
Pe rc e n t C ollect [%]
Incisor Canine Molar
58.3 86.7
76.7
92.5
図―5 気導音と骨導音の明瞭性の比較
Not Corrected Corrected by Loudness 0
20 40 60 80 100 Incisor
Canine
Molar
86.171.1 71.1
77.2 80.0
93.3
図―6 受聴特性での補正有無による明瞭性の比較
また,アクチュエータへの実験音源の印加にはファン クションジェネレータを用い,被験者には気導音の混入 を防ぐために耳栓,イヤーマフを装着させた.測定結果 を図―
3
に示す.低周波帯域に比べ高周波帯域の方が振 動しにくいことがわかる.3. 2
ラウドネス測定ラウドネスとは,人が感じる音の大きさの指標であり,
人の聴覚特性を表している.気導音におけるラウドネス は,受聴する音圧に依存する.骨導音受聴における物理 量は加速度であるので,
1 kHz
における加速度を基準と した相対加速度レベルによって受聴特性を評価する.測 定した振動加速度を用いて次の式より,相対加速度レベ ルを導出した.a
dB= 30 + 10 × log
10( a
2a
21kHz)
[dB] (2)
被験者には気導音の混入を防ぐために耳栓,イヤーマ フを装着させた.測定結果を図―
4
に示す.高周波帯域 に比べ低周波帯域で聞こえが良いことがわかる.4.
明瞭性測定アクチュエータを用いて明瞭性の測定を行った.図―
2
に示したアクチュエータの周波数特性を考慮し,今回測 定音源として使用する日本聴覚医学会の67S-
語表の20
音を,周波数特性の逆フィルタにより予め補正した.測 定は次の条件で比較を行った.(a)
気導音・骨導音(b)
骨導音(ラウドネスによる受聴特性の補正有・無)気導音と骨導音の明瞭性の比較を行った.またラウド ネス測定での受聴特性の傾向から測定音源の補正を行い,
明瞭性の向上に寄与できるか比較した.
気導音に比べ骨導音の方が正答率が低く,明瞭性が低 いことが分かる.また受聴特性より補正を行うことで明 瞭性に向上が見られた.
5.
む す び受聴特性において,三歯による受聴特性に差は確認で きなかったが,共通する傾向が見られた.また,明瞭性 測定においても,三歯での明確な明瞭性に差は見られな かったが,受聴特性による補正を行うことで,明瞭性が 向上することが分かった.今後は受聴特性による補正の 実用化を目指す.
参 考 文 献
[1]
境久雄,中山剛, 聴覚と音響心理 ,pp.2-5,コロナ社,東京,1978.