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高圧水素特性に優れたカーボンナノチューブ/ゴム複 合材料の開発

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

高圧水素特性に優れたカーボンナノチューブ/ゴム複 合材料の開発

武山, 慶久

https://doi.org/10.15017/2534450

出版情報:九州大学, 2019, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

1 博士論文

高圧水素特性に優れたカーボンナノチューブ/ゴム複合材料の開発

Development of Carbon Nanotube/Rubber Composite Materials with Excellent High Pressure Hydrogen Characteristics

九州大学大学院工学府 水素エネルギーシステム専攻

2019年9月

武山 慶久 Yoshihisa TAKEYAMA

(3)

2 目次

第1章 序論 5

1.1 本研究の背景 5

1.2 本研究の目的・課題 9

1.3 評価用ゴム材料 9

1.1.1 ニトリルゴム(NBR) 9

1.1.2 カーボンナノチューブ 11

1.4 本論文の構成 15

1.5 略号の説明 16

参考文献(第1章) 17

第2章 カーボンナノチューブ/NBR複合材料のゴム物性と特徴 19

2.1 緒言 19

2.2 試験体カーボンナノチューブ/NBR複合材料の作製 20

2.2.1 原料 20

2.2.2 分散処理条件 20

2.2.3 加硫ゴム作製条件 23

2.3 試験体カーボンナノチューブ/NBR複合材料中のCNT分散状態の評価 26

2.3.1 実空間による解析 27

2.3.2 逆空間による解析 31

2.4カーボンナノチューブ/NBR複合材料の強度特性 39

2.4.1 試験条件 39

2.4.2 試験結果・考察 39

2.4.3 まとめ 44

2.5 カーボンナノチューブ/NBR複合材料の耐熱性 45

2.5.1 試験条件 45

2.5.2 試験結果・考察 45

2.5.3 まとめ 46

2.6 カーボンナノチューブ/NBR複合材料の摩耗特性 47

2.6.1 試験条件 47

2.6.2 試験結果・考察 48

2.6.3 まとめ 49

2.7 結言 50

参考文献(第2章) 51

(4)

3

第3章 カーボンナノチューブ/NBR複合材料の高圧水素特性 53

3.1 緒言 53

3.2 実験方法 54

3.2.1 試験ゴム材料および試験体 54

3,2.2 試験方法 55

3.2.2.1 CNT分散性の観察 55

3.2.2.2 添加剤の分散性の観察 55

3.2.2.3 高圧水素曝露試験 57

3.2.2.4 水素侵入量,拡散係数 58

3.2.2.5 体積変化 58

3.3 実験結果 58

3.3.1 試験体のCNT分散状態 60

3.3.2 試験体の添加剤分散状態 60

3.3.3 試験体のゴム物性 60

3.3.4 高圧水素曝露試験結果 61

3.3.4.1 水素侵入量と体積変化の関係 61

3.3.4.2 拡散係数への影響評価 65

3.3.4.3 フィラー由来の水素侵入量の評価 67

3.4 考察 68

3.5 結言 68

参考文献(第3章) 69

第4章 カーボンナノチューブ構造と高圧水素曝露による水素吸着の関係 70

4.1 緒言 70

4.2 実験方法 71

4.2.1 カーボンナノチューブおよび試験体 72

4.2.2 試験方法 77

4.2.2.1 小角散乱によるCNT構造解析 77

4.2.2.2. 高圧水素曝露試験 77

4.3 実験結果・考察 78

4.3.1 試験体のCNT物性評価結果 78

4.3.2 小角散乱によるCNT構造解析結果 79

4.3.3 高圧水素曝露試験結果 83

4.3.3.1 CNT長さと水素量の関係 85

4.3.3.2 CNT解繊度と水素量の関係 89

4.3.4 CNT単体の水素量とCNT/NBR複合材料の水素侵入量の関係 90

(5)

4

4.4 結言 91

参考文献(第4章) 92

第5章 圧力サイクルによるOリングの耐久性検証 93

5.1 緒言 93 5.2 実験方法 94 5.2.1 Oリング試験体 94 5.2.2 圧力サイクル試験 94

5.3 実験結果・考察 96 5.3,1 Oリングの耐久試験結果 96 5.3.2 破壊状態の分析結果 97 5.4 結言 101

参考文献(第5章) 102

第6章 総括 103

本論文に関する研究論文および研究発表 106

謝辞 107

(6)

5

第1章 序論

1.1 本研究の背景

世界的な社会問題として,二酸化炭素の排出による地球温度化の観点から,温室効果 ガスを排出しない新しいエネルギーの開発が求められている.そうした中で,環境問題と エネルギー問題双方を解決する技術として,水素をエネルギー媒体とした燃料電池システ ムが注目されている1).燃料電池車(FCV)では,燃料電池で水素と酸素の化学反応によ って電気エネルギーを直接取り出すため,二酸化炭素などの有害な排出物がなく,排出さ れるのは水だけでクリーンである.また,1 km 走行に必要となるWell to Wheelエネルギ ー投入量は,ガソリン自動車が2.7 MJ/kmであるのに対して,燃料電池車は1.5 MJ/kmと およそ半分のエネルギー投入量となり,高いエネルギー効率を実現している2)などのメリ ットがある.

Figure 1-1. Hydrogen energy system

一方,水素をエネルギーの貯蔵・輸送のためのキャリアとして考えると,水素の重量エ ネルギー密度は32,900 Wh/kgであり,ガソリンの重量エネルギー密度が約12,800 Wh/kgよ り高い.一方,体積エネルギー密度はガソリンが約9,600 Wh/Lであるのに対し,水素は非 常に低いため,水素を圧縮して体積エネルギー密度を上げている.圧縮することで,35 MPaでの体積エネルギー密度は767 Wh/L,70 MPaでの1,290 Wh/Lとガソリンよりは低い ものの,遜色ないレベルとなる3).そのため,2014年に上市された燃料電池自動車におい ては燃料である水素は70 MPaの高圧水素として搭載されている.Figure 1-2に燃料電池自 動車に水素を充填する水素ステーションの概念図を示す.水素ステーションでは,水素ス テーションで製造された水素,あるいはカードルに貯蔵された水素を82 MPa~87.5 MPa に圧縮して蓄圧機に貯蔵されている.充填時にはディスペンサーを介して燃料電池自動車 に接続され,蓄圧機と燃料電池自動車の燃料タンクとの差圧により充填される.このた

(7)

6

め,水素ステーションを構成する昇圧機,蓄圧機,ディスペンサーを構成する機器では

87.5 MPaの高圧水素ガスを取り扱う必要がある.また,燃料電池車においても,水素ガス

貯蔵機器,減圧弁,水素ステーションからの高圧水素ガス充填のための機器など様々な水 素機器が使用されており,これらの機器に使用されるゴムシール部品は,高圧ガス環境下 で使用され,更に圧力が加減する環境下でもシール機能を維持することが求められる.

Figure 1-2. Hydrogen station

このような高い水素ガス圧力環境においては,使用されるゴム材料は高圧水素に曝露さ れることにより,ゴム材料中に水素が侵入する.ゴム材料に侵入する水素の量はHenryの 法則により水素曝露時の圧力に比例することが知られている.このため,水素が侵入した 状態のゴム材料が急激な減圧に晒されると,侵入した水素をゴム材料中に保持しうる量が 低下するため,ゴム材料中に過剰に存在する水素ガスにより気泡が発生する.気泡の発生 に起因する高圧水素ガス特有の破壊現象として,ゴム材料の内部破壊(ブリスタ破壊)や はみ出し破壊が起こることが報告されている4),5),6)

ゴム材料の内部破壊(ブリスタ破壊)は,高圧水素曝露時にゴム材料中に侵入した水素 が減圧に伴い,気化することにより内部で気泡発生し,き裂進展に至る破壊現象である.

また,はみ出し破壊は,ゴム材料に侵入した水素による体積膨潤のため,ゴム材料の常態 値で設計されたOリング溝の断面積を越える体積増加により破壊する現象である.これら 破壊の要因は,ゴム材料に侵入した水素であり,水素による体積膨潤(体積変化)に起因

する7).Figure 1-3に高圧水素曝露特有のOリングの破壊現象を示す.

(8)

7

Figure 1-3. Key parameters for fracture modes of O-ring

これら破壊現象に対し,フィラーとしてカーボンブラックを充てんしたゴム材料を用い た高圧水素曝露試験や高圧水素ガスによるOリングの実証試験により,カーボンブラック の添加量に比例して引張強度が高く,ブリスタ発生限界内圧を向上できることがわかって いる4).反面,カーボンブラックの添加量に比例して水素侵入量が増加し,ブリスタ破壊 を起こすことが問題となっている7),8).一方,充てん剤としてシリカを用いると,高いブ リスタ発生臨界内圧を示し水素侵入量が小さいことがわかっている7)が,高圧水素曝露後 の体積変化率の観点ではシリカ配合はカーボンブラック配合より体積変化が大きく,はみ 出し破壊が起こりやすいことがわかっており9),ブリスタ破壊とはみ出し破壊の抑制を両 立できるフィラーは見つかっていない.

現状は上記の知見から,水素ステーション機器用Oリング材料の配合設計はシリカとカ ーボンブラックを併用し,水素侵入量を少なく,かつ,体積変化を抑制することで,優れ た高圧水素特性を有するOリング材料が開発されている10)

現状では水素ステーションのディスペンサーのOリング等のシール材の耐用充填回数は

約2,200回であるが11),一方,燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)がFCVと水素ステー

ション普及に向けたシナリオを示しているように12),2030年にはFCVが65万台,水素ス テーションは720箇所の設立を目指している.2030年には1ステーションにFCVがおよ そ900台利用することとなり,FCV1台が毎月水素を充填すると仮定した場合,年間1ス テーションで1万回を超える充填回数となる.また,水素・燃料電池戦略協議会の戦略ロ ードマップが示すように,燃料電池車の加速的な普及には,整備・運営コスト低減を通じ

(9)

8

た自立的な水素販売システムの展開が必須である.その中で,水素ステーションのシール 材の耐久性に対して,部品交換頻度の低下,つまり,耐久性の向上によるメンテナンス期 間短縮を目指し,シール材の耐用充填回数を2020年に15,000回,2022年に30,000回に向 上することを目標に掲げている11).この将来的に求められる超高耐久ゴム材料を実現する には,既存の延長技術にない更に少ない水素侵入量と体積変化のゴム材料の設計が必要と なる.

Figure 1-4. Roadmap toward commercialization of FCV and hydrogen fueling station12)

水素侵入量と体積変化を共に改善する方向として,これまでの知見より,少量のカーボ ン量で補強性が高く,かつ,水素侵入量が少ないゴム材料が両立できれば,ブリスタ破壊 とはみ出し破壊の抑制を両立できることが推測され,高補強性かつ低い水素侵入量を満た すフィラーが良いと考えられる.

ゴムの強度を上げる方策としては,一般的には補強材としてカーボンブラックを添加す ることによる改良が行われている13),14).また,他の補強材として様々なフィラーが検討さ れており,例えば,シリカ15),層状構造を持つクレイ16),グラフェン17),18),繊維状構造で あるセルロースナノファイバー19)やカーボンナノチューブ(CNT)などが補強材として効 果があることが報告されている.それらの中でも,CNTは高いアスペクト比を有すること から,ゴム中にCNTを均一に分散させることで非常に高い補強効果を示し,少量の添加 量で高い強度特性を出すことが報告されている20),21)

一方,CNT は水素吸蔵材料としての研究が進められている.例えば,単層カーボンナノ チューブ(SWCNT)の水素吸蔵量が調べられている.SWCNT の水素吸蔵量は,極低温に おいて1 mass%(-196 ℃)と高いが,25 ℃では0.01 mass%であり,ほとんど水素を吸蔵し

(10)

9

ないことが報告されている 22).常温では水素吸蔵量が低いことから,補強性が高いフィラ ーとしてCNTをゴム材料に配合した材料は,高圧水素曝露した際にブリスタ破壊の要因と なる水素侵入量が小さいことが期待される.

1.2 本研究の目的・課題

前項で述べた観点から,本研究では,高い補強性を示すCNTとしてSWCNT及び多層 カーボンナノチューブ(MWCNT)を用い,CNTの分散構造および界面構造と高圧水素特 性の関係を調べ,これまで困難であった高補強性かつ低水素侵入量を両立したゴム材料の 開発を目指した.更に,実用化に向け,Oリングとしてのシール耐久性に関する知見を得 ることを目的とした.

また,本研究で対象とするCNTに限ったことではないが,一般的にナノカーボン材料 は,例えばゴム材料のフィラーなど,バルク材料として製造,使用する際には,ナノカー ボン材料としてのポテンシャルを十分に発揮できないことが多い.その原因の一つとして は,性能を引き出すための理想的な状態を得られないこと,例えば,理想的な結晶構造が 作れないこと,理想的な分散が困難であることやナノカーボン間の接触が問題となること が考えられる.そこで,本研究では,CNT粉体の構造と高圧水素特性の関係,CNTの解 繊度と高圧水素特性の関係を検討することで,CNTの階層構造が高圧水素特性に及ぼす影 響を調べた.

1.3 評価用ゴム材料

1.3.1 ニトリルゴム(NBR)

Figure 1-5. Chemical structure of NBR

ニトリルゴムは,アクリロニトリルと1,3-ブタジエンの共重合体から成り,乳化重合 し,凝固・乾燥して製造される.NBRは,重合温度が25~50℃で製造されるホットラバー と,25℃以下で製造されるコールドラバーに分類され,コールドラバーは分岐やゲルが少 ないため,加工性に優れ,NBR市販品の主流となっている.一方,ホットラバーは凝集力 や強度に優れることから,接着剤などに用いられている.

NBRの特徴は耐油性であり,アクリロニトリルの含量によって大きく変わる.アクリロ ニトリル量が増加するにしたがって極性が高くなるため,鉱油系の油や炭化水素系の燃料 に対する耐油性は向上する.また,耐摩耗性や耐熱性も向上する.一方,アクリロニトリ ル量が増えるとガラス転移温度が上昇し,低温柔軟性が劣り耐寒性は悪化する.その他物 性として,シール材に要求される圧縮永久歪み,引張り強さ,耐摩耗性は他のゴムと比較

(11)

10

して良い部類に入る.ただし,ポリマー主鎖中に不飽和二重結合を含むため,耐候性は劣 る.

また,同じアクリロニトリル量のNBRでも,組成分布が広いと耐油性は同等だが,耐 寒性は悪化するため,耐寒性が求められる場合は組成分布が狭いNBRが好ましい.

分子量も物性への影響が大きく,分子量が高いと引張り強さ等の機械特性は上がるが,

ムーニー粘度が高くなるため,加工性は悪くなる.その他,重合時の石鹸や凝固剤は,架 橋速度や加工性などに影響し,吸水性,金属腐食性,金型汚染性への影響が大きい.Table 1-1に分子構造と物性の一般的な傾向を示す23)

Table 1-1. Molecular structure of NBR and physical properties23)

ニトリルゴムの用途は,優れた耐油性を利用した工業用品に幅広く使用され,自動車部 品に最も多く使用されている.部材としては,Oリング,オイルシールやオイルホースな どに使用される.ニトリルゴム製品の分類は,大きくはアクリロニトリル量で分類され

る.Table 1-2に分類と代表的な製品名を示す.本研究では,鉱物油,ガソリンのシールで

用いられるOリングなど,汎用的に使用されるゴム材料として,ニトリル量が31 %以上 36 %未満である中高ニトリルゴムを用い,ゴム物性や高圧水素特性の評価を行った.

(12)

11

Table 1-2. Classification of NBR and typical grade

1.3.2 カーボンナノチューブ24)

ナノカーボンとは,ナノメートル(10億分の1 メートル)の大きさの構造をもつ炭素 からなる物質群であり,Figure 1-6に示すフラーレン25),カーボンナノチューブ(CNT)26), グラフェン 27)と呼ばれるナノカーボンを代表する物質が,近年立て続けに発見された.他 にも,円錐形のカーボンナノホーン,カーボンナノホーンが繊維状に連なった集合体のカー ボンナノブラシ,短冊状のグラフェンリボンなど様々な物質が存在し,それらの結晶構造や 特異な形状から,ユニークな特性が見出されている.

Figure 1-6. Typical nano carbon

これらナノカーボンの基礎骨格となるグラフェンは,6個の炭素原子からなる正六角形の 構造であるベンゼン環を 2 次元状に無数に連ねた平面状シートである.身近で広く使われ ている鉛筆の芯は,グラファイト(黒鉛)と呼ばれ,グラフェンがいくつも重なった構造で ある.一方CNTは,このシートを円筒状に巻いた構造であり,繊維状の構造体となる.こ の幾何学構造の違いは,大きく物性や特性に寄与してくることがわかっており,多くの研究

Classification Acrylonitrile (AN)

content (%) Typical grade

Extra High AN ≧ 43 Nipol®DN003

High AN 36 ~ 43 Nipol®1041

Nipol®DN4050 Medium high AN 31 ~ 36 Nipol®1042

Nipol®DN3350

Medium AN 25 ~ 31 Nipol®1043

Nipol®DN2850

Low AN ≦ 25 Nipol®DN401

(13)

12

がなされている.代表的な研究としては,電界効果型トランジスター28),電界放出源29),30), 透明導電膜31),などがある.

その中でも,グラフェンは極めて薄く(一層の厚みは0.34 nm),かつ電気導電性に優れる ことから,圧力センサーや透明導電性フィルムへの応用が期待される.一方,CNT は繊維 状を生かし,ケーブル,高分子との複合や電極材料への応用が期待されている.

Figure 1-7に示すように,CNTはグラフェン一層が筒状となった単層CNT(Single-walled

carbon nanotube, SWCNT)と,径の異なる複数のCNTが同軸で重なり,数層で形成されて

いる構造の多層CNT(Multi-walled carbon nanotube, MWCNT)に分類される.

Figure 1-7. SWCNT and MWCNT

CNT の母材となるグラフェンは金属ではないが電気を良く通す性質をもつ.この原因は グラフェンの化学構造にあり,グラフェンシートは表面に電子雲が広がっていて,この雲の 中を電子は自由に移動することができる.そのため,このシートに電圧をかけたときに電子 が移動することができ,電気が流れる.CNT はこのシートを円筒状に巻いた構造であるの で,同じようによく電気を通す.一方,SWCNTの中にはそのシートの巻き方(カイラリテ ィ,CNT円周方向における六員環の並び方)によって半導体性を示すものがある32).Figure

1-8にSWCNTのカイラリティとその特徴をまとめて示す.

SWCNTを合成すると3分の1が金属性,3分の2が半導体性となり,その混合物となっ

ているが,分離して半導体性CNTを精製する技術が開発されており33),分離したものは半 導体材料となる.

これに対し,MWCNTは直径がSWCNTに比べて大きいことを考慮しただけとは異なり,

多層中の各層のカイラリティがランダムであることなどによる不規則性から半導体性の性 質はもたず,すべて金属性の性質となる.このように,CNT といっても,その特性は幾何 学構造と集積構造で大きく異なっていることがわかる34)

(14)

13

Figure 1-8. Geometric structure of SWCNT32)

また,Table 1-3に示すように,カイラリティの違い以外にも,密度はアルミニウムの半分 程度と非常に軽量で,理論上の最大引張強度は鋼の50倍以上,高電流密度耐性は銅の1000 倍以上,熱伝導性は銅の10倍以上などの様々な特徴を有している.

Table 1-3. Properties of SWCNT and comparison with other materials.

CNTの特徴の一つに,アスペクト比(繊維長/直径の比)が非常に高いことが挙げられ る.このアスペクト比の高いことがCNT同士の接触において非常に重要であり,アスペ クト比が高いために,CNT同士または他の材料と絡み合いやすい.そのため,他の材料と の複合材料,例えば,高分子との複合材料において,高アスペクト比を有するCNTは,

少量の添加量で導電性や熱伝導性を付与できるなど,高機能化が可能となる利点を有す る.つまり,高分子材料の特性を損なうことなく,機能付与できる.

また,長尺のCNTを用いた場合には,CNT同士のファンデルワールス力による結びつ きと,CNT同士の絡み合いにより,自立したCNTシート(バッキーペーパー)を作るこ とができる.バッキーペーパーのSEM像をFigure 1-9に示す.このバッキーペーパーを用

(15)

14

いると,CNTの本来もつ導電性,熱伝導性,柔軟性,軽量性をバルク材料として生かすこ とができ,様々な用途開発が進められている.

上記2点はCNTの特徴の一部であるが,CNTが他に類を見ない高アスペクト比の繊維 状導電性物質であることを生かした利点といえる.

Figure 1-9. CNT buckypaper ;left is the picture and right is SEM image of CNT buckypaper

MWCNTは,比較的生産が容易であることから,国内外において年間数千トンレベルで生

産されており,中国市場を中心としてリチウムイオン電池電極の導電補助剤として普及し ている.その他,自動車部品用途では,燃料チューブや燃料ポンプなど燃料系周辺部材など で,高強度化,高靱性化のために用いられ,また,CNTの導電性を生かし,樹脂材へのCNT の添加により帯電防止機能を付与することができる.帯電防止樹脂は半導体製造装置など で用いられる搬送用トレーなどに採用されている35)

Table 1-4. Major companies that manufacture CNTs and their production capacity in 201635)

一方,SWCNTは,MWCNTに比べて電気伝導性や熱伝導性に優れているが,大量生産 が困難で高コストであることから,大量生産可能な新しいSWCNT合成が求められてき た.そのような背景の中,2004年に産業技術総合研究所の畠らにより,革新的なSWCNT 合成法である「スーパーグロース法(SG法)」36)が開発され,2015年から日本ゼオンが SG法CNTの製造を開始した.また,ロシアのOCSiAlの生産能力増強などSWCNTの供 給体制は整いつつある35).Table 1-4にCNTの生産状況を示す.

本研究では,高純度,長尺,高比表面積であることを特徴とするスーパーグロース法で

CNT種類 生産拠点 メーカー 生産能力

(トン/年)

宇部興産 20

昭和電工 400

中国 CNano Technology 500

韓国 Kumho 50

米国 Hyperion Catalysis 40

フランス Arkema 400

ベルギー Nanocyl 460

日本ゼオン 3

名城ナノカーボン 2

ロシア OCSiAl 10

MWCNT

国内

SWCNT 国内

(16)

15

合成された単層カーボンナノチューブ(略称:SGCNT,日本ゼオン,ZEONANO®SG101) を用いた.

1.4 本論文の構成

本論文は第6章から構成され,以下にそれぞれの章で論じた内容の概略を示す.

第1章では,本研究の背景と目的を示し,高圧水素ガス用ゴム材料の技術課題および本 研究の推進意義を述べた.

第2章では,カーボンナノチューブ/NBR複合材料のゴム物性および特徴を述べた.フ ィラー種(SWCNT,MWCNT,カーボンブラック),充てん量を変動因子とし,フィラー としてよく用いられているカーボンブラックと比較し,SWCNT,MWCNTが機械特性,

特に,常態物性,熱間強度,耐熱性,耐摩耗性へ与える影響を確認した.

第3章では,カーボンナノチューブ/NBR複合材料の高圧水素特性に関する研究結果を

述べた.SWCNT,MWCNT,カーボンブラックをそれぞれ配合したNBR複合材料の硬度

及び強度特性を同程度に調整したゴム材料を調製し,高圧水素特性をゴム材料への水素侵 入量,水素の拡散係数と体積変化を評価することで,これまでに困難であった高補強性か つ低水素侵入量を両立したフィラー設計の改良方向を検討した結果について述べた.ま た,分散度の異なるそれぞれのゴム複合材料における補強効果への影響と共に,30 ℃に おける高圧水素曝露による水素侵入量及び体積変化への効果を明らかにした.

第4章では,カーボンナノチューブ単体の高圧水素曝露による水素吸着特性に関する研 究結果を述べた.CNTの構造として,CNTの長さ・解繊度を変動因子とし,高圧水素曝 露による水素吸着特性を評価することで,CNT末端やバンドル間への水素吸着挙動に関し て解析した.本検討から,高圧水素特性に優れるゴム材料のフィラー構造を考察した.

第5章では,カーボンナノチューブ/NBR複合材料を用いたOリングの加減圧サイクル 試験によるシール耐久性と破壊現象に関する研究結果を述べた.

第6章では,本論文の結論と今後の展望を述べた.

(17)

16 1.4 略号の説明

Symbol Meaning Unit

L Length of CNT nm

d Diameter of CNT nm

SLD Scattering length density -

Rg Scattering domain nm

p Scaling Power -

Dm Average Mass Fractal Dimension -

Ds Average Surface Fractal Dimension -

phr Per Hundred Rubber phr

G Storage Elastic Modulus MPa

G0 Storage Elastic Modulus of Rubber without Filler MPa

φ Volume Fraction -

φeff Effective Volume Fraction -

φR Rubber Volume Fraction -

k Connecting Factor -

f Shape Factor(Aspect Ratio of Filler) -

TB Tensile Strength at Break MPa

EB Elongation at Break %

G/D Ratio of the intensity of G-band and D-band -

CH,R(t) Hydrogen Content at time, t mass ppm

CH,0 Hydrogen content in Rubber Composite mass ppm

CHR,0 Hydrogen Content of Rubber in Rubber Composite mass ppm CHB,0 Hydrogen Content of Bound Rubber in Rubber Composite mass ppm CHF,0 Hydrogen Content of Filler in Rubber Composite mass ppm

t Time s

Dbulk Diffusion Coeficient of Hydrogen in Rubber Composite mm2/s

ρ Spesimen Radius mm

l Specimen Thickness mm

βn Root of Zero-order Bessel Function -

V/V0 Volume Change -

da Diameter of CNT Aggregate μm

D* Relative Diffusion Coefficient -

a Filler width nm

Vf Filler Volume Fraction -

SAF Specific Surface Area of Filler in Rubber Composite m2/g

D CNT Bundle Diameter nm

σ Standard Deviation of CNT Bundle Diameter nm

Rcore Inner Radius of CNT nm

Rshell Outer Radius of CNT nm

(18)

17 参考文献(第1章)

1) K. Onoue, Y. Murakami, P. Sofronis, Int. J. Hydrogen Energy, 37, 8123 (2012).

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4) J. Yamabe, A. Koga, S. Nishimura, Nippon Gomu Kyokaishi, 83, 10 (2010).

5) J. Yamabe, H. Fujiwara, S. Nishimura, Journal of Environment and Engineering, 6, 53 (2011).

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8) J. Yamabe, S. Nishimura, Int. Hydrogen Energy, 34, 1977 (2009).

9) J. Yamabe, S. Nishimura, Journal of Solid Mechanics and Materials Engineering, 6, 466 (2012).

10) 髙石工業:「耐水素用ゴム材料の配合設計」

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11) 水素・燃料電池戦略協議会:「水素・燃料電池戦略ロードマップ」(2019.3.12).

12) 燃料電池実用化推進協議会(FCCJ):「FCVと水素ステーションの普及に向けたシナリ オ」(2016).

13) Z. Rigbi, Adv. Polym. Sci., 36, 21 (1980).

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19) A. Nagatani, S. H. Lee, T. Endo, T. Tanaka, International Journal of Modern Physics, Conference Series, 6, 227 (2012).

20) Y. Gogotsi, Science, 330, 1332 (2010).

21) F. Deng, M. Ito, T. Noguchi, L. Wang, H. Ueki, K. Niihara, Y. A. Kim, M. Endo and Q. Zheng, ACS Nano, 5, 3858 (2011).

22) A. Anson, M. A. Callejas, A. M. Benito, W. K. Maser, M. T. Izquierdo, B. Rubio, J. Jagiello, M.

Thommes, J. B. Parra and M. T. Martinez, Carbon, 42, 1243 (2004).

23) 日本ゴム協会編:「ゴム技術の基礎」(1983).

24) Y. Takeyama, M. Uejima, chemical education, 65, 556 (2017).

25) H. W. Kroto, J. R. Heath, S. C. O’Brien, R. F. Curl, R. E. Smalley, Nature, 318, 162 (1985).

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27) K. S. Novoselov, A. K. Geim, S. V. Morozov, D. Jiang, Y. Zhang, S. V. Dubonos, I. V.

Grigorieva, A. A. Firsov, Science, 306, 666 (2004).

(19)

18

28) N. Hamada, S. Sawada, A. Oshiyama, Phys. Rev. Lett., 68, 1579 (1992).

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31) Z. Wu, Z. Chen, X. Du, J. M. Logan, J. Sippel, M. Nikolou, K. Kamaras, J. R. Reynolds, D. B.

Tanner, A. F. Hebard, A. G. Rinzler, Science, 305, 1273 (2004).]

32) R. Saito, M. Fujita, G. Dresselhaus, M. S. Dresselhaus, Appl. Phys. Lett., 60, 2204 (1992).

33) H. Liu, D. Nishide, T. Tanaka, H. Kataura, Nat. Commun., 2, 309 (2011).

34) SIGMA-ALDRICH:「http://www.sigmaaldrich.com/japan/materialscience/nano- materials/single-double-multi-walled-carbon-nanotubes.html」

35) 富士キメラ総研:「微粉体市場の現状と将来展望」(2016).

36) K. Hata, D. N. Futaba, K. Mizuno, T. Namai, M. Yumura, S. Iijima, Science, 306, 1362 (2004).

(20)

19

第2章 カーボンナノチューブ /NBR 複合材料のゴム物性と特徴

2.1 緒言

高圧水素環境下でのゴム部材の使用を考えると,加圧時は水素ガス温度が上昇するた め,昇圧機においては180℃まで水素ガス温度が上昇し,ディスペンサーにおいても充填 の際に70℃程度まで水素ガス温度が上がることが想定されるので,高温下での特性が重要 となる1).更に,水素による加減圧サイクルが起こるとOリングが溝内で動くため,激し い摩耗が起こる2).これら現象からも,ゴム材料の高温下での物性や耐摩耗性は非常に重 要となってくる.

第1章で述べたように,カーボンナノチューブは高いアスペクト比を有するため,ゴム との複合材料においても高い補強性を示すことが報告されている3),4),5).補強性の観点での 報告は多い一方,高温下での強度特性,熱老化への影響6)や耐摩耗性への効果7)等,ゴム に求められる様々な諸物性への影響を総合的に評価した例はない.特に,SWCNTはゴム 材料中に均一に分散することが難しいため,ゴムとの複合材料の報告例は少なく8),ゴム 物性への影響を評価した研究例は十分とは言えない.

本章では,カーボンナノチューブが各種ゴム物性へ与える影響を評価するとともに,従 来よく使用されている粒状の炭素補強材であるカーボンブラックと比較し,カーボンナノ チューブ/NBR複合材料の物性面の特徴を把握することと目的とした.最初に,各種試験 体の作製方法について詳細を述べ,後に常態物性,耐熱性,耐摩耗性を評価した結果をま とめ,カーボンナノチューブ複合材料の特徴について考察した.

(21)

20

2.2 試験体カーボンナノチューブ/NBR複合材料の作製 2.2.1 原料

フィラーとして,単層カーボンナノチューブ(SWCNT,窒素吸着比表面積:966 m2/g),多層カーボンナノチューブ(MWCNT,Kumho Petrochemical,K-nanos 100P,窒素 吸着比表面積:259 m2/g),カーボンブラック(略称:FEF,東海カーボン,シーストSO, 窒素比表面積:42 m2/g)を用いた.

ゴムは,ニトリルゴム(Nitrile Rubber,NBR,日本ゼオン,Nipol®DN3350,結合アクリ ロニトリル量:33.0 %,ムーニー粘度:50.0),有機溶剤はメチルエチルケトン(Methyl ethyl ketone,MEK,富士フイルム和光純薬),イソプロピルアルコール(Isopropyl

alcohol,IPA,富士フイルム和光純薬)を用いた.

加硫ゴムを作製するにあたって,架橋助剤として,酸化亜鉛(2種,堺化学工業),ステ アリン酸(日油,ビーズステアリン酸つばき),架橋剤として,硫黄(325メッシュ通過 品),テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD,大内新興化学工業,ノクセラーTT- P),ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS,大内新興化学工業,ノクセラーDM-P) を用いた.

使用した原料および特性値をTable 2-1に示す.他章における同名配合物に関しては別途 記載がない限り同じ試薬を用いた.

Table 2-1. Raw materials used and their characteristic values

2.2.2 分散処理条件

カーボンナノチューブはグラフェンシートを円筒状に巻いた形状をしており,数 nmの 直径で,欠陥がない場合はほとんど凹凸がなく,グラフェン間はおよそ0.4 nmまで近づく ことができ,アスペクト比が大きく束状の凝集体のCNT間に働くファンデルワールス力 は非常に大きい.2本の直径d,長さLの円柱が距離rだけ離れているときの単位長さあた

name Characteristic values

Ruber NBR Amount of AN = 33.0 wt%

ML1+4 = 50.0 SWCNT N2SA = 966 m2/g MWCNT N2SA = 259 m2/g Carbon black

FEF-CB N2SA = 42 m2/g ZnO Stearic acid

Curing agent Sulfer

TMTD MBTS Filler

Activator

Curing accelerator Agent

(22)

21

りのファンデルワールス力Wは以下の式(2-1)で与えられる9)

𝑊 𝐿 ~√𝑑

𝑟32

(2 − 1)

CNT束の凝集エネルギーは直径,長さが大きく関係しており,MWCNTに比べSWCNT はより分散させるのに必要となるエネルギーが高いことがわかる.Huang,Terentjevによ

れば,MWCNTの凝集エネルギーは16 kPa程度と報告されており10),混合装置のせん断応

力で分散することができる5).一方,SWCNTの凝集エネルギーは,およそ100 MPaと見 積もられており11),一般的な混合装置のせん断応力では分散できない.Figure 2-1にCNT の解繊に必要なエネルギーと装置との関係を示す10).SWCNTの束を解繊するためには,

100 MPa以上のエネルギー密度を加える必要があり,キャビテーション効果を伴った超音

波や湿式高圧ジェットミルが適している12),13).SWCNT,かつ,長尺であると更に高いせ ん断応力が必要となり,解繊することが非常に難しいことが理解できる.別の問題点とし ては,超音波や湿式高圧ジェットミルはキャビテーションを起こせる箇所が狭いことや,

湿式であることから処理時のCNT濃度が低くなり,一般的な混合装置と比べると生産性 が著しく低い.このように,SWCNTはCNT束の解繊が非常に困難である点,工業的な生 産性と相反する関係となることから,CNT解繊度と性能のバランスの見極めることは非常 に重要となる.

Figure 2-1. An energy diagram showing the theoretical capabilities and limitations of shear-mixing, ultrasonication and wet jetmill for CNT dispersion, using filament aspect ratios L/d of 10 and 1,000

as examples10)

(23)

22

また,界面科学的観点から,CNTの溶媒和も重要となる.超音波照射等により一旦 CNTを分散しても,媒体中で溶媒和できていないと,すぐに束の凝集体に戻ってしまう.

そこで,CNTに適した分散剤の研究も行われている.低分子系分散剤としては,界面活性 作用を有するドデシル硫酸ナトリウム(SDS)やコール酸ナトリウム(SC)などがよく使 われる14).その他,高分子系分散剤15),16)や生体高分子17)の利用も見られる.これら分散剤 用いた時の利点としては,CNTの凝集体を解繊しやすく,単離したCNTの分散を安定化 させやすい点である.一方,ポリマー複合材料でCNT特性を十分に生かすには,不純物 となりうる分散剤を除去することが好ましいが,分散剤を完全に除くことは難しい.

本研究では,上記観点を鑑み,分散剤を用いず,ゴムを溶媒に溶解させた溶液中に

SWCNTを添加し,高圧ジェットミルを用いることで,SWCNTを解繊させ,溶液中に溶

解しているゴムの立体障害効果でSWCNTの再凝集を抑制させた分散液を作製した.

MWCNTとゴムの複合材料においては,野口らの文献5)を参考に,オープンロールを用い

てMWCNTとゴムの複合材料を作製した.

(SWCNT/NBRマスターバッチの作製方法)

Figure 2-2に分散処理の概略図を示す.1,900 gのMEKに100 gのNBRを添加,24時間 撹拌し,5 wt.%のNBR/MEK溶液を作製した(Step 1).10 gのSWCNTを2,000 gのNBR 溶液に加え,撹拌機(プライミクス,ラボ・リューション®)を用い,回転数2,000 rpmで 15分間撹拌することで,SWCNT/NBR/MEKプレ分散液を得た(Step 2).更に,SWCNT を解繊するために,湿式高圧ジェットミル(吉田機械興業,L-ES007)を用い,90 MPaで 3パス処理を行うことで,SWCNTを均一に分散させた(Step 3).

Figure 2-2. Dispersion method of SWCNT in NBR/MEK

次いで,ゴム中にCNTを分散させた固形物であるCNTゴムマスターバッチを得るた め,NBRに対して貧溶媒であるイソプロピルアルコール(IPA):10 kgに

SWCNT/NBR/MEK分散液を滴下することで凝固させ,その液をろ別した.そして,得ら

(24)

23

れた凝固物を60 ℃に加温した真空定温乾燥器(東京理科器械,VOS-301SD)を用い,12 時間減圧乾燥することで,SWCNTが10 phrのSWCNT/NBR複合材料(SWCNTマスター バッチ)を作製した.

(MWCNT/NBRマスターバッチの作製方法)

MWCNTとゴムの複合材料においては,野口らの文献5)を参考に,オープンロールを用

いてMWCNTとゴムの複合材料を作製した.

具体的には,20℃,ロール間隙を2 mmに調整した6インチオープンロール(関西ロー ル)を用い,NBR:400 gを巻き付け,30 phrとなるようMWCNTを120 g添加した.次 に,ロール間隙を0.5 mmに再調整し,薄通しを10回行うことでMWCNTを分散させ,30

phrのMWCNT/NBR複合材料(MWCNT/NBRマスターバッチ)を作製した.

2.2.3 加硫ゴム作製条件

(コンパウンド作製条件)

加硫ゴムの配合はTable 2-2に示す.SWCNTおよびMWCNTに関しては,それぞれのマ スターバッチを用い,NBRで希釈することで,各添加量のCNTコンパウンドを作製し た.マスターバッチをNBRに均一に分散させるため,20 ℃,ロール間隙が0.5 mmに調 整した6インチオープンロールを用い,マスターバッチと同等以下の量のNBRを薄通し 10回行うことで,各添加量のCNT/NBRコンパウンドを作製した.Figure 2-3にオープン ロールの写真を示す.SWCNTは10 phr → 5 phr → 3 phr → 2 phr → 1 phrの順に希釈 し,MWCNTは30 phr → 20 phr → 10 phr → 5 phr → 3 phrの順に希釈した.Figure 2-4

に各SWCNT添加量のSWCNT/NBR複合材料の作製概略を示す.Figure 2-5に各MWCNT

添加量のMWCNT/NBR複合材料の作製概略を示す.また,CNT/NBRへの各ゴムの薬剤混

合は,6インチオープンロールを用い,最初に,酸化亜鉛およびステアリン酸を添加し,

左右切り返しを3回行うことで混合した.次いで,硫黄,それぞれの加硫促進剤を加え,

ロール間隙0.5 mmに調整後,薄通しを10回行い,各薬剤を添加したコンパウンドを作製 した.

(25)

24

Figure 2-3. Picture of Open-roll

Figure 2-4. Schematic of production method of SWCNT/NBR composite

(26)

25

Figure 2-5. Schematic of production method of MWCNT/NBR composite

Table 2-2. Formulation of Filler/NBR composites

All values reported in parts per hundred of rubber (phr)

NBR Nipol®DN3350 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100

SWCNT 10 5 3 2 1

MWCNT 30 20 10 5 3

Carbon black 80 60 40 20

ZnO 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5

Stearic acid 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

Sulfer 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 MBTS 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 TMTD 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 Filler

agent

SWCNT MWCNT Carbon black

(27)

26

カーボンブラック/NBRコンパウンドの作製は,次の手順で行った.

容量250 mlのバンバリーミキサー(東洋精機,ラボプラストミル)を用い,NBR:

100phrを素練り後,カーボンブラックを各添加量分(20 ~ 80 phr),酸化亜鉛:5 phr,ス

テアリン酸:1 phrを添加して,80 ℃を開始温度として5分間混練りして,バンバリーミ キサーからA練りコンパウンドを得た.次いで,50 ℃の6インチオープンロールにA練 りコンパウンドを巻き付け,硫黄:0.5 phr,各加硫促進剤:1.5 phrを添加し,左右切り返 し3回,薄通し10回を行い,B練りコンパウンドを作製した.

(加硫条件)

加硫は各試験に用いる試験片サイズに合った金型にそれぞれのコンパウンドを入れ,

160℃で20分間,プレス成形することで,加硫ゴム試験片を作製した.

2.3 試験体カーボンナノチューブ/NBR複合材料中のCNT分散状態の評価

フィラー/ゴム複合材料中のフィラーの分散状態を評価する手法としては,実空間系の分 析方法と逆空間による分析方法に分かれる.実空間系の分析方法としては,光学顕微鏡,

走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)18),透過型電子顕微鏡

(Transmission Electron Microscope,TEM)19),20),原子間力顕微鏡(Atomic Force

Microscope,AFM)21),22)などが挙げられ,各種分析手法を使うことでナノオーダーから数

mmまでの範囲の分散状態を画像で取得することができ,直観的に分散状態を判断するこ とができる.実空間系の利点は目視で分散状態がわかることに加え,構造の不均一性を捉 えられることも挙げられる.ゴム複合材料中のフィラーの分散状態は不均一であることか ら,平均的な情報と不均一の程度を表す情報の両方が重要となってくる.また,近年で は,三次元化技術が発達してきたことで,3D-TEMやX線CTを用いることで,フィラー のネットワーク構造を評価することも可能となってきた5),23)

一方,逆空間系の分析方法としては,小角X線散乱(Small Angle X-ray Scattering, SAXS),超小角X線散乱(U-SAXS)24),25),26),小角中性子散乱(Small Angle Neutron

Scattering,SANS)27)などが挙げられる.粒子の散乱曲線からは,構造に由来する散乱角

の散乱プロファイルから,粒子の大きさ,粒子の形,粒子の表面構造など様々な情報を読 み取ることができる.X線や中性子は物質への透過度が高いため,ある程度大きなサンプ ルから情報を得られ,サンプルの平均情報が得られる点も利点である.散乱は密度揺らぎ により生じ,散乱強度は密度差の二乗に比例する.X線の場合,密度は電子密度を指し,

元素数が大きい原子の散乱構造を測定するのに有利である.中性子の場合は,原子核に固 有の「散乱長」の密度を指す.電子密度は原子番号の増加に伴い単調に増加するのに対 し,散乱長は原子番号との相関はなく,同位体,例えば軽水素Hと重水素Dを見ると,電 子数は同じでX線的には見分けられないが,散乱長は逆の符号となり大きく異なる.この 違いを利用し,H2OとD2Oを任意の量で混合し,散乱法における密度差(コントラスト)

(28)

27

を変えて散乱体の任意の構造体の情報を分離評価することも可能となる27)

CNTゴム複合材料中のCNTの分散状態を評価方法としても,SEM,TEM5),AFM28), 小角散乱29)など様々な評価方法が報告されている.しかし,TEMにおいては,MWCNT は層数が多く,マトリックスのゴムとMWCNTの電子密度差が大きいため,明瞭なCNT 分散状態を観察することが可能であるが,SWCNTは単層であるため,マトリックスのゴ ムとの電子密度差が小さく,明瞭なCNT分散状態を観察することが困難である.CNT特 有の分析手法として,CNTの導電性,発熱性に由来するロックイン発熱を利用したCNT ネットワーク構造の可視化技術も開発されている30)

これら背景から,本研究では,CNT/ゴム複合材料中のCNTの分散状態を評価する手法 として,CNTのバンドル径,CNTネットワーク構造といった平均情報,それら構造の不 均一性を評価するため,実空間系分析としてSEM観察,逆空間系分析としてSAXS,U- SAXSによる分析を行った.

2.3.1 実空間による解析

各種ゴム材料の加硫ゴムシートを-100 ℃に冷却したクライオミクロトーム(Leica,

Leica EM FC7)を用い,断面出しをした.得られた断面について電界放出形走査型電子顕

微鏡(日立ハイテクノロジーズ,S4700)を用い,二次電子像(SE像)を観察した.

Figure 2-6にSWCNT,MWCNT,カーボンブラック配合ゴム試験体のSE像を示す.

(29)

28

Figure 2-6. SEM images of CNT/NBR composite. (a)SWCNT10phr/NBR composite, SWCNT5phr/NBR composite, (c)MWCNT30phr/NBR composite, (d)MWCNT20phr/NBR

composite, (e)Carbon black80phr/NBR composite, (f)Carbon black60phr/NBR composite

(30)

29

白い繊維状の物質がCNTもしくはカーボンブラックを示しており,各試験体ともにゴ ムマトリックス中にある程度均一に分散されていることがわかる.しかし,SEMはサンプ ル表面から出た二次電子を検出しているため,表面構造の情報のみのため,CNTのバンド ル径やネットワーク構造に関する情報を議論するのは難しい.

そこで,CNTのネットワーク構造をより詳細に観察するため,ゴム材料を不活性ガスで ある窒素下で燃焼し,NBRを焼去し残留するCNTを観察することで,CNTネットワーク 構造を観察することを試みた.Figure 2-7に窒素雰囲気下,10℃/minで昇温した時の CNT/NBR複合材料の熱重量測定(TGA,TAインスツルメント,Discovery TGA5500)の 結果を示す.Figure 2-7からわかるように,NBRは340℃以上で主鎖の熱分解が起こり,

500℃で熱分解した.この結果から,今回のCNT分散構造の評価では,窒素下,700℃で 熱分解させた後の残渣をSEM観察することでCNT分散状態を評価した.Figure 2-8に熱 分解したそれぞれのゴム材料のSEM像を示す.

Figure 2-7. TG and TGA curves of SWCNT10phr/NBR composite in nitrogen

(31)

30

Figure 2-8. SEM images of residue after heating in nitrogen

10 phr 5 phr

3 phr 1 phr

30 phr 20 phr

10 phr 3 phr

SWCNT

MWCNT

200 nm 200 nm

200 nm 200 nm

200 nm 200 nm

200 nm 200 nm

(32)

31

SWCNT,MWCNTともに緻密なネットワーク構造が形成できており,細孔が見られ

た.これはNBRが熱分解したことによる細孔である.CNT添加量が異なった試験体にお いてもCNTのバンドル径に大きな差は見られなかった.

2.3.2 逆空間による解析

先に述べたように,小角散乱はナノスケールの形状や大きさを評価する方法として有用 である.CNTの小角散乱解析の研究も行われており31),コア-シェルを持つシリンダー構 造としてモデルフィッティングし,カーボンナノチューブの内径,外径,界面活性剤の吸 着を解析した研究例がある.CNT分散液の小角散乱を測定すると,小さい散乱ベクトルq の領域の強度が一次元ロッド(CNT1本鎖構造)からの散乱強度を越えており,凝集構造 の存在によると考察されている32).凝集構造をCNTが束となったバンドル構造に由来す ると考え,SWCNTの懸濁液が2つの長さスケールの無秩序ネットワークを持つことが提 唱されている33).また,CNTバンドル径,CNTネットワークの網目サイズ,CNT凝集体 のクラスターサイズまでのCNTネットワークの階層構造をGuinier/べき乗則統一法34), 35)を 用いて,構造解析した研究も報告されている36), 37).Figure 2-9にCNT階層構造と散乱法に よる測定方法を示す.

Figure 2-9. Schematic representation of the hierarchical structure in carbon nanotube networks

本研究では,CNTの階層構造(1本鎖構造から凝集構造)が高圧水素曝露時の水素侵入 量に及ぼす影響を検証するため,SAXSおよびU-SAXSにより得られる散乱プロファイル からCNT1本鎖およびCNT凝集構造のモデルフィッティングを行い,CNTの1本鎖構 造,CNT凝集構造の定量的解析を行った.

CNT1本鎖のモデルフィッティングは,単分散の中空シリンダーモデルを適用し38),実 験により得られた散乱曲線とフィッティングし,CNT1本鎖の内径,外径を求めた.今回 適用した中空シリンダーモデルの関数式を式(2-2)~(2-6)に示す.Figure 2-10に中空 シリンダーモデルを示す.

1 nm 10 nm 100 nm 1 μm 10 μm

Scattering analysis

Aggregate Primary particle

structure CNT bundle Aggregate

Mesh size Floc size network structure

SAXS, SANS U-SAXS

U-SANS

(33)

32

(2-2)

(2-3) (2-4) (2-5)

(2-6)

Figure 2-10. Hollow cylinder model

ここで,scaleは任意の係数,Rcoreはチューブの内径,Rshellはチューブの外径,Lはチュ ーブの長さを示す.

チューブの内側と外側は同じ散乱長密度(Scattering length density,SLD)を持ち,チュ ーブ自体は均一な散乱長密度としている.形状因子は,P(q) = scale*<f*f>/vol. + bkg.のよう に,チューブの体積によってのみ正規化される.ここで,fは散乱振幅であり,<>はチュ ーブの配向がランダムであるとして平均化している.

CNT凝集構造は,Beaucageが提唱したGuinier/べき乗則統一法を用いることで,階層構 造の解析を行った.Beaucageモデルを式(2-7)に示す34), 35).このモデルは,材料がN個 の階層で構成されていると仮定しており,各ドメインは2つの成分を含み,第一項は階層 の回転半径(Rg)を表し,第二項はべき乗則に特徴づけられる.

𝐼(𝑞) = 𝐵𝑘𝑔𝑑. + ∑ [

𝐺𝑖exp (−𝑞2𝑅𝑔,𝑖2 3 ) + 𝐵𝑖

[

erf (𝑞𝑅𝑔,𝑖

√6 )

3

𝑞 ]

𝑃𝑖

]

(2 − 7)

𝑁

𝑖=1

(34)

33

ここで,Piは各階層に関連するフラクタル次元を示す.

この式を用い,本研究では,CNTバンドルに相当する半径,質量フラクタル次元および CNTバンドル表面の表面フラクタル次元を求めた.散乱によるCNT構造解析では,最初 にCNT単体の階層構造を行い,モデル構造との検証をした.次に,CNT/NBR複合材料を 用いた試験体においても同様のモデルフィッティングを行った.全てのフィッティング は,NISTが配布しているIGOR Pro解析パッケージを用いた.

(SAXS, U-SAXS測定)

CNT単体およびCNT/NBR複合材料の小角X線散乱測定は,SPring8のビームライン BL19B2を用い,SAXSおよびU-SAXSの測定を行った.Figure 2-11にSWCNT単体の散 乱プロファイルおよび中空シリンダーでhigh-qの領域(q =0.1 nm-1以上)をフィッティン グした結果を示す.Figure 2-12にSWCNTのTEM像を示す.

Figure 2-11. SAXS, U-SAXS data of SWCNT and the fitting line to high-q region by the hollow cylinder model

(35)

34

Figure 2-12. TEM image of SWCNT

Figure 2-11より,粒径の分布がない単分散系の中空シリンダーモデルは,粒子内干渉に

よるピークが現れるが,実データの散乱ではピークは存在せず,TEM像からもわかるよう

に,SWCNTの直径に分布があることを示している.中空シリンダーモデルと散乱曲線の

ピーク強度は一致した結果が得られた.また,中空シリンダーモデルから算出した

SWCNTの外径が4.15nmであるのに対し,TEM像から見積もられるSWCNTの外径はお

よそ4 nmと非常によく一致した結果が得られた.この結果から,q = 0.1 nm-1以上の領域

は,SWCNT1本鎖の径方向の構造に由来する散乱が出ていることが明らかとなった.

一方,q = 0.1 nm-1以下のlow-q領域は,中空シリンダーのフィッティング曲線と大きく

ずれている.これは,Figure 2-9で示したように,CNT1本鎖の散乱に加え,CNTバンド ル径やCNTネットワークの網目サイズ,CNT凝集体のクラスターサイズに由来する散乱 が出ていると考えられ,構造サイズからCNTバンドル径由来の散乱と予想される35)

Figure 2-13にlow-q領域の階層構造解析としてGuinier/べき乗則統一法を用い,解析した結

果を示す.

(36)

35

Figure 2-13. SAXS, U-SAXS data of SWCNT and the fitting line to high-q region by the hollow cylinder model and fitting line to low-q region by the Beaucage model

Figure 2-13から,凝集体,ここではCNTバンドル径から反映される回転半径Rgおよび

式(2-8)で与えられる2つのべき乗則散乱プロファイルが観測された.

𝐼(𝑞)~ q−p (2 − 8)

0.004 < q < 0.01 nm-1の範囲では,p = 2.3のべき乗則が見られ,式(2-9)で示す質量フラ クタル次元(Dm)が見積もられる.DmはCNTバンドルからなる凝集体構造の密度不均一 性のフラクタル次元を示しており,Dmが1に近い程,CNTバンドルの凝集体が疎な構造 で,3に近い程,CNTバンドルの凝集体が密な構造を持つと考えられる.

𝑝 = 𝐷𝑚 (2 − 9)

また,0.01 < q < 0.1 nm-1の範囲で,p = 3.0 のべき乗則が見られた.表面が平滑でない場 合,べき乗pは-3 ~ -4の間の値となる.これは表面のフラクタル的性質を反映しており,

表面フラクタル次元Dspは式(2-10)の関係で表される.

(37)

36

𝐷= 6 − 𝑝 (2 − 10)

表面が平滑な場合,p = 4であるからDs = 2,つまり,完全に平滑な二次元の表面である ことになる.表面が荒れるにつれ,pは3に近い値となり,Dsも3に近づき,表面が三次 元的構造であることを示す.このように,U-SAXS測定領域において,CNTバンドルに由 来するバンドル径,質量フラクタル次元および表面フラクタル次元の情報を得られること がわかった.

Figure 2-14にSWCNT/NBR複合材料の散乱プロファイルおよび中空シリンダーでhigh-q

の領域(q =0.1 nm-1以上)をフィッティングした結果を示す.

Figure 2-14. SAXS, U-SAXS data of SWCNT/NBR composite and the fitting line to high-q region by the hollow cylinder model and fitting line to low-q region by the Beaucage model

Figure 2-11に示したCNT単体の散乱プロファイルと同様,q = 0.1 nm-1以上の領域は,中 空シリンダー構造でフィッティングでき,SWCNT1本鎖の径方向の構造の散乱が見られ た.また,q = 0.1 nm-1以上のlow-q領域にCNTバンドル径由来の回転半径Rg,質量フラ クタル次元および表面フラクタル次元が観測できた.

(38)

37

それぞれのNBR複合材料のSAXSおよびU-SAXS測定から得られた散乱強度とqの関 係をFigure 2-15に示す.Guinier/べき乗則統一法によるフィッティング結果をTable 2-3に

示す.q = 0.1 nm-1以上の散乱ベクトル領域では各フィラーの一次構造由来の散乱が見ら

れ,形状の差が確認できる.q = 0.1 nm-1以下の散乱ベクトル領域はフィラー凝集構造由来 の散乱と考えられる.カーボンブラックは球形でCNTは中空シリンダー構造と大きく構 造が異なるため,散乱曲線が異なるが,SWCNTとMWCNTの凝集構造由来の散乱曲線は ほぼ同じ曲線を示しており,それぞれの試験体のCNTのバンドル径が同程度であること が示唆された.また,実験で得られた散乱曲線をGuinier/べき乗則統一法を用いてCNTバ ンドル径,質量フラクタル次元および表面フラクタル次元を解析した結果,関数から求め たCNTバンドル径は,SWCNT,MWCNTともに90 nm前後と同等であった.本結果よ り,CNTの解繊はマスターバッチ作製時のせん断応力が支配的であり,そのため,各 CNT添加量の試験体でCNTバンドル径が同程度であったと考える.

質量フラクタル次元は,SWCNT,MWCNTともに添加量を変えても,2.2 ~ 2.4と同程度 であり,CNTバンドルの凝集体構造の密度は同等であることが示唆された.表面フラクタ

ルはSWCNTとMWCNTで差が見られ,SWCNTが2.0付近であるのに対し,MWCNTは

2.7程度と大きい値を示した.先に記述したように,表面フラクタルは3に近い程,三次 元的構造であることを表す.第4章の後述で明らかになるように,SWCNTはCNT方向が 揃った密なバンドル構造を形成するが,MWCNTではCNTが疎なバンドルを形成してお

り,MWCNTとSWCNTのバンドル内の構造の違いを反映していると考えられる.

本章の試験体として,バンドル径が同等に調整したSWCNTとMWCNTの添加量が異な るNBR複合材料を作製し,力学物性の比較を行った.

(39)

38

Figure 2-15. SAXS and U-SAXS profiles of filler/NBR composites

Table 2-3. Fitting result by the Beaucage model of the scattering curve

Surface fractal

dimension Rg Mass fractal

dimension

- nm -

SWCNT 10 phr/NBR composite 2.0 94 2.2

SWCNT 5 phr/NBR composite 2.0 92 2.3

SWCNT 3 phr/NBR composite 1.9 90 2.3

SWCNT 1 phr/NBR composite 2.1 83 2.4

MWCNT 30 phr/NBR composite 2.8 79 2.2

MWCNT 20 phr/NBR composite 2.7 80 2.2

MWCNT 10 phr/NBR composite 2.2 76 2.2

MWCNT 5 phr/NBR composite 2.1 104 2.2

Sample

CNT bundle structure

Figure 2-6. SEM images of CNT/NBR composite. (a)SWCNT10phr/NBR composite,  SWCNT5phr/NBR composite, (c)MWCNT30phr/NBR composite, (d)MWCNT20phr/NBR
Figure 2-7. TG and TGA curves of SWCNT10phr/NBR composite in nitrogen
Figure 2-9. Schematic representation of the hierarchical structure in carbon nanotube networks
Figure 2-11. SAXS, U-SAXS data of SWCNT and the fitting line to high-q region by the hollow  cylinder model
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参照

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