第5章 圧力サイクルによる O リングの耐久性検証
5.3 実験結果・考察 96
5.3,1 Oリングの耐久試験結果
Figure 5-2にOリングの耐久試験における印加圧力,温度,透過圧力を示す.Oリングの
破壊により水素が漏れた場合,サイクル試験時に透過圧力が瞬間的に高くなり,過度な水素 量を検出する.今回の試験では,全てのO リングともにサイクル試験中に透過圧力の過度 な上昇は見られず,水素漏れに繋がる破壊現象は起きていないことが確認できた.つまり,
SWCNTを少量添加したNBR複合材料においても,O リングとしてのシール性を保持でき
ることが確認された.
時間に対する透過圧力の傾きが試験における水素の透過量を表しており,初期の圧力保 持時の傾きはSWCNT配合ゴムがカーボンブラック配合ゴムより大きく,SWCNT配合ゴム は水素の透過量が多い結果となった.第3章の3.3.4.2 の各種フィラー配合ゴムの拡散係数 の結果から,拡散係数はフィラーの体積分率で決まり,フィラーの体積分率が小さい程,拡 散係数は高くなる.透過係数は拡散係数と溶解度係数の積で表せるため,溶解度係数が同等 の場合,拡散係数が高い程,透過係数も高くなると言える.SWCNTは少量添加であるため,
フィラー体積分率が小さく,透過量が多い結果になったと考えられる.
一方,圧力サイクル試験時の透過圧力は逆に SWCNT 配合ゴムが透過水素量の低い結果 となった.また,SWCNT-1>SWCNT-2>SWCNT-3 の順で透過水素量が少なく,CNT 凝集 体の量が少ない程,透過水素量が低いことがわかった.
Figure 5-2. Parameter values of high-pressure durability test
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耐久試験結果として,Table 5-1にOリングの外観,透過モード時の透過量(Pa/s),サイ クル試験時の透過量(Pa/s),サイクル試験前後の重量比(試験後のOリング重量/試験前の Oリング重量)を示す.
Table 5-1. Result of high-pressure hydrogen durability test
耐久試験後のO リングの外観は,CNT 凝集体の平均直径が 15.5 μmで凝集体の面積率 が20 %であるCNT分散性の劣るSWCNT-3のみ,Oリングの外周に損傷が見られた.その 他のO リングの外観観察の結果,損傷が見られず,目視で観察可能な数百μm以上の破壊 は起きていない.O リングの耐久試験前後の重量変化の結果から,重量変化はほとんどな く,Oリングの一部が欠けるような破壊が起きていないことが確認された.
5.3.2 破壊状態の分析結果
Figure 5-3にOリングのX線CT観察面の概略図,Figure 504に各Oリングの三次元X線 CT測定結果を示す.評価に使用した三次元X線CNT測定装置はカメラ長:40 mmとした.
1ピクセルが 6 μm であり,20 μm 以上のサイズが計測可能である.また,X 線の管電 圧:35 kV,管電流:70μAの条件で測定した.
SWCNT-1 SWCNT-2 SWCNT-3 Carbon black
No damage No damage Damage to the outer
circumference No damage Transmission amount
in transmission mode (Pa・s)
1.72 1.74 1.76 1.56
Transmission amount in cycle test
(Pa・s)
2.06 2.11 2.29 2.40
Weight change Weight after test/Weight
before test
1.000 0.999 1.002 0.998
O-ring appearance after durability test
SWCNT-1 30 ℃
SWCNT-3 30 ℃ SWCNT-2
30 ℃
Carbon black 30 ℃
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Figure 5-3. X-ray CT observation of O-ring
99
100
Figure 5-4. Three-dimensional images and cross section images of O-ring after durability test; (a) SWCNT-1, (b) SWCNT-2, (c) SWCNT-3, (d) Carbon black
X 線 CT では,破断箇所は物質が空気となるためX 線の透過度が高く,黒く観察され,
CNT凝集体はゴム部分と電子密度が異なるため,X 線透過像ではグレー色に観察される.
X線CT像で確認されたCNT凝集体と第3章で顕微鏡観察によるCNT凝集体のサイズは同 等であることから,Oリング成形においてもゴム加硫シートと同等のCNT分散状態である ことがわかった.
Oリングの破壊状態を観察したところ,Oリング外周側に若干の表面き裂が確認された.
Oリング内側に圧力がかかり,外周は溝に押しつぶされた状態となっていることから,はみ 出し破壊が起きた.また,破壊の程度はOリング中のCNT分散性と相関が見られ,CNT凝 集体が少ない,つまり,均一に CNT を分散する程,破壊が少ないことが明らかとなった.
CNT凝集体が最も多いSWCNT-3の破壊面を観察すると, CNT凝集体の界面付近で破壊が 起きている箇所が見られた.CNT凝集体の界面に応力集中し,破壊に至ったと考えられる.
CNTの分散均一性が高いSWCNT-1は,はみ出し破壊の程度は小さく,高圧水素曝露に対す る体積変化が小さいことが,はみ出し破壊の抑制に繋がったと考えられる.
101 5.4 結言
本章では,第3章で高圧水素特性を評価したSWCNT/NBR複合材料により作製したOリ ングの耐久試験を行い,高圧水素シール性を評価した.
SWCNT/NBR複合材料を用いたOリングにて,最大圧力90 MPa,30 ℃,100回サイクル
試験を行い,O リングの内側から外側に透過した水素濃度を圧力計により計測した結果,
SWCNT/NBR複合材料を用いた Oリングにより高圧水素ガスがシール可能であることが明
らかになった.
SWCNT の分散性が高圧水素曝露による破壊に与える影響を検証した結果,CNT 凝集体
が少なく,均一に分散することではみ出し破壊を抑制できることを明らかとした.第3章で 評価したように,高圧水素曝露時の体積変化はCNT分散性に寄与することを明らかとして
おり,SWCNTによる体積変化の抑制効果が,Oリング溝からのはみ出しによる表面き裂を
抑制できることがわかった.
102 参考文献(第5章)
1) J. Yamabe, S. Nishimura, A. Koga, International Journal of Materials & Manufacturing, 2, 452 (2009).
2) J. Yamabe, A. Koga, S. Nishimura, Nippon Gomu Kyokaishi, 83, 159 (2010).
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