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(1)

EUにおける公企業と公共経済事業(生活配慮)

著者 メストメッカー エルンスト=ヨアヒム, 早川 勝

雑誌名 同志社法學

巻 59

号 6

ページ 567‑581

発行年 2008‑03‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011375

(2)

︵翻訳︶ における公企業と公共経済事業︵生活配慮︶ 五六七同志社法学五九巻六号

︵翻訳︶   E U における公企業と公共経済事業 ︵生活配慮︶

Öffentliche Unternehmen und gemeinwirtschaftliche Dienste  ︵Daseinsvorsorge ︶ in der EU

in: Hrsg. von H. Schmidt/von Wizsäcker, Innenansichten aus Europa, Die neue Mittwoches Gesellschaft,

Bd.4, S.161ff

エルンスト

ヨアッヒャム   メストメッカー

早 川   勝 ︵訳︶

目次

はしがき

1.国の所有と経済秩序

2.企業家活動としての国家の経済活動

3.特別な権利または排他的な権利︵独占権︶

4.一般的経済的利益のサービス給付

5.﹁非欧州﹂のコスト

︵二九七九︶

(3)

︵翻訳︶ における公企業と公共経済事業︵生活配慮︶ 五六八同志社法学五九巻六号

はしがき

  生活配慮と競争との関係は︑共同体法と︑基本法において︑そしてまた政治的に特別に論争されている問題の一つで ある︒連邦憲法裁判所の判事であるジークフリード・ブロス︵Siegfried Broß︶は︑最近︑Juristenzeitung︵法律新聞︶

において︑自分には︑競争は︑彼と同様に本稿では共同体法における競争についてであるが︑とくに︑社会および国家

全体の公共の福利について全く考慮していないという競争の外にある観点がなじめないということにおいて︑際だって

いる︑と論じた︒競争は︑生活配慮とは反対に︑内部の人間的価値を考慮しない︒それは︑価値中立的で︑かつ︑情け

容赦がない︑という︵Juristenzeitung,2003,S.874f.︶︒共同体法的なアプローチは︑基本法の福祉国家の要請︵原則と合

致しないとされる︒それに対して︑フランスでは︑公益事業は︑譲渡することもまた転用することもできない主権の現

象形式の一つである︒

  規制緩和と民営化は︑政治的議論においては︑分離独立の過程について代表するものとして扱われる︒民主主義的な

福祉国家の形成力を脅かすものと考えられる︒したがって︑欧州連合がある場合とない場合の法的現実を比較すること

は︑半世紀の間︑加盟国の法秩序および経済秩序に影響を及ぼした法の展開にまったく異なる強さで関連しているとい

う理由で︑とくに困難である︒経済的な生活配慮︵電気︑ガス︑遠距離通信︑郵便︶の中核分野における一般化が可能

な場合は︑我々は︑進展する民営化の過程ではなく︑これまで法の規制を受けなかったところにどんどん法の網をかけ

て法化してゆくことに関わることになる︒

  ここで例として︑電信電話独占に関する憲法裁判所の判例を挙げたい︒それは︑一九二八年の電信電話施設法を自動

的に全ての新しいコミュニケーション技術に適用した︒しかし︑憲法裁判所は︑独占を新技術に拡大すれば第三者の自 ︵二九八〇︶

(4)

︵翻訳︶ における公企業と公共経済事業︵生活配慮︶ 五六九同志社法学五九巻六号 由権に介入するにもかかわらず正当化されるどうかというアプローチをしなかった︒そのため︑連邦ポストは︑その民営化の直前まで︑国庫会計上の簿記に基礎を置いている政策をうまくこなしてきた︒つまり︑収入と職務とを比較して︑

カネが必要な場合には︑料金を値上げした︒しかしながら︑その必要性または正当化については︑なんらの検査もなさ

れてこなかった︒

  国家とその支配を受けるもののすべての活動について︑ひとつの推定があてはまるというしばしば誤解されたヘーゲ

ル的な伝統が段々と問題にされた︒それは︑それらの活動が実質的には公的利益と合致できるという推定であるが︑以

下では思想史上の論争は取り扱わない︒むしろ︑共同体法の展開を意識して︑高度に政治的な重要性について述べるこ

とにする︒そのことは︑欧州基本条約︵Vefassugsvertrag︶が︑欧州裁判所の解釈における域内市場および競争システ ムを変えることなくそのままにしておくが︑しかし︑公益事業︵öffentliche Dienste︶の分野では︑慎重な︑潜在的に

広範に及ぶ変更を定めていることからしても︑すでに不可欠なのである︒

  以下では︑まず︑経済秩序に関する国の所有の意義について述べる︒それに引き続いて︑共同体法における所有権法

上の規制と国家の主権に基づく規制との接点について考察したい︒

  経済秩序は︑欧州の憲法的な性質を有する︒これは︑開かれた市場と公正競争の原則によって特徴づけられる︒憲法

的性質は︑主として︑まず加盟国の国際法上の義務が司法審査される限りにおいて︑個人がこれらの義務を加盟国の裁

判所で主張できる権利を加盟国が個人に与える義務を負っていることから導かれる︒それに対して︑WTOは︑国家の

国際法上の義務をそのような権利には転換しなかった︒

︵二九八一︶

(5)

︵翻訳︶ における公企業と公共経済事業︵生活配慮︶ 五七〇同志社法学五九巻六号

1.国の所有と経済秩序

  社会主義的国家の伝統においては︑長い間︑生産手段に対する所有権が経済秩序の特徴を決定することは︑自明なも

のと見なされてきた︒それに応じて︑欧州共同体の設立の場合にも加盟国の所有権秩序について決定しなければならな

かった︒とくに︑フランスやイタリアでは︑経済資源の重要な部分を支配する公的部門が問題の原因となった︒ローマ

条約に導いた審議において︑とくにオランダ政府は︑国有財産を広範に元の姿に戻し︑復帰した企業に対する国家の特

権を認めることを支持した︒EU条約における結果は︑伝統的な妥協であった︒つまり︑第二九五条は︑加盟国におけ

る所有権秩序を保証した︒ただし︑第八六条は︑EU条約の一般的規定︑とくに競争規定は加盟国および加盟国が支配

するか又は特典を与える企業に無制限に適用されることを定める︒EUの経済秩序におけるこれら諸原則の組み合わせ

が継続して相互に合致しうるのかという問題は︑一九六〇年代にEU委員会の提案が︑オランダの経済大臣ジルストラ

Zijistra︶によって検討された︒彼は︑生産手段に対する国の所有は︑国家の持分があまりにも大きく︑私的企業の独

立の計画が事実上排除される場合には︑EU条約が求めた競争および経済秩序と合致できない︑という結論に至った︒

展開は︑この論点を無視しなかった︒むしろ︑その展開は︑様々な法的関係において繰り返し重要となった︒統合の開

始に当たって行われた妥協は︑所有権秩序には手をつけないけれども︑域内市場に関する一般的規定の適用可能性を宣

言するというものであった︒この妥協を︑共同体は︑中欧および東欧諸国との加盟について審議する際に維持した︒加

盟条約においては︑生産手段に対する国の所有または会社所有を元の姿に戻す義務は定められていない︒

  欧州裁判所の判例は︑所有権秩序と条約の一般規定の適用可能性との間の緊張関係を︑制度保証を当該保証に基づい

て行使された個人権から区別することによって緩和した︒所有権は︑したがって︑共同体法は︑個人権の行使に完全な

範囲で適用することができる︒ ︵二九八二︶

(6)

︵翻訳︶ における公企業と公共経済事業︵生活配慮︶ 五七一同志社法学五九巻六号   公的企業に関しては︑このような法の展開は︑経済秩序の性格について︑制度的に言えば︑生産手段に対する所有権ではなく︑経済計画に対する権限が決定したことを教える︒  加盟国の所有権秩序に関する留保から︑共同体法においては︑公的企業と私的企業の平等取り扱い原則が導かれる︒

共同体法における公的企業と独占禁止法上特典を与えられている企業の取り扱いから生ずる法律問題の大部分は︑平等

原則及びその原則の実現の態様と方法に還元することができる︒平等取り扱い原則は︑公的企業と加盟国の負担にも︑

また恩典にも働く︒文献においては︑とくにラテン系諸国においては︑かつて条約の規定の全体から加盟国における公

的部門のための分野の例外Bereichsausnahme︵適用の例外︶を引き出す試みがなされていたことあるが︑現在では廃

れたものとみなすことができる︒争点は︑そのことによって問題がなくなったのではない︒

  そのことは︑欧州裁判所におけるいわゆる﹁GoldenShare  ︵黄金株︶判決﹂に関する訴訟手続きが明らかにする︒

ここでは︑フランス︑イタリア︑ポルトガル及びスペインにおける民有化の事例が問題となった︒しかし︑国は︑民営

化立法において︑企業における基本的な決定に対する拒否権を維持した︒この拒否権がEU条約の規定と合致しうるか

について裁判しなければならなかった︒イタリアの上級法務官は︑包括的に理由付けた最終申立において︑加盟国のた

めの所有の留保は︑その効力において所有権秩序に適合する立法者的措置にも適用しなければならないという見解を主

張し︑拒否権を根拠づけた高権行為は︑加盟国における所有権秩序に基づいて正当化される︑と述べた︒しかし︑欧州

裁判所は︑かかる論拠に理解を示さなかった︒裁判所は︑加盟国における所有権秩序の保証は︑域内市場と競争の基本

原則の例外を正当化するのに適していないということに限定して裁判した︒法制史的には︑近代国家の発展は︑とりわ

け︑その高権行為がもはや所有権としてではなく︑純粋の国家の権利として評価されるということによって特徴づけら

れることがわかる︒

︵二九八三︶

(7)

︵翻訳︶ における公企業と公共経済事業︵生活配慮︶ 五七二同志社法学五九巻六号

  欧州統合のほとんど半世紀後には︑次の基本問題は︑加盟国と公的企業に対する共同体法の適用の場合に区別しなけ

ればならない︒

  すなわち︑まず︑国家の行為は︑いかなる前提条件の下で高権行為であるのか︑または企業家的行為なのかが問題と なる︒  第二に︑特別な権利もしくは排他的な権利︑従って独占権をもつ公的企業の形成は︑いかなる範囲でEU条約と合致

できるかという問題である︒

  そして︑最後に︑いかなる前提条件の下で公益事業に適用されるEU条約の規定の例外が適用できるかという問題が

問題となる︒第八六条第二項及びマーストリヒト条約によって事後に付加されたEEC第一六条によれば︑EU条約の

規定は︑その適用によって一般的経済的利益のサービス給付を委託された企業が自己に課された任務を履行することを

法律上及び事実上もできないことになる場合に限り︑適用することができない︒

  欧州統合の将来に関する基本的な見解の相違をもたらしたものは︑この例外規定である︒欧州憲法草案においては︑

一般経済的利益のサービス給付に対して基本権憲章における広範な特典と域内市場の分野における特別規定が割り当て

られている︒

  現行EU条約は︑第八六条第三項において︑委員会に他の機関の協同︑とくに理事会の協同から独立している広範な

決定権限と指令権限を付与している︒これによって︑共同体法を加盟国が支配する企業に適用する場合に考慮に入れな

ければならない特別な利益衝突が顧慮されることになる︒したがって︑委員会のこの権限は︑加盟国に対して妥当する

のであって︑加盟国が支配する企業に対してではない︒これらの企業に対しては︑一般規定︑とくに︑一般的競争規定

が適用される︒ ︵二九八四︶

(8)

︵翻訳︶ における公企業と公共経済事業︵生活配慮︶ 五七三同志社法学五九巻六号 2.企業家活動としての国家の経済活動   企業という概念は︑欧州競争法の一般的概念である︒この概念は︑判例によって非常に広く解釈される︒それによれ

ば︑企業は︑共同体法が競争規定の例外を定めているところでもその権限を根拠づける効果がある︒例外は︑同時に︑

その側では︑共同体法の一部になる︒判例によれば︑私的使用を除いた経済財及び営業的給付の製造及び販売における

すべての独立の経済行為は企業家的行為である︒利益獲得の意図は問題とならない︒その行為が経済的性質を有するか

どうかは︑行為を行う法形式と関係なく判断されなければならない︒この行為のための資金の種類も関係がない︒企業

家的行為が概念上自動的に把握されるので︑そのような行為は︑いかなる法形式において行われるか︑および︑加盟国

においていかなる公法の範疇がそのような行為に割り当てられているかを問題とすることなく存在できることになる︒

たとえば︑連邦労働庁︵連邦代理人と呼ばれているかどうかは関係なく︶︑放送事業︑一定の社会保険組織がその例で

ある︒しかし︑社会保険の制度︵職業上の災害保険︶は︑連帯の原則に基づく場合︑つまり︑被保険者に提供された給

付が支払い金額と比例していない場合︑給付額と支払額が国家の監督に服しており︑かつ︑制度が強制加入に基づき︑

かつ︑この強制加入が保険制度の財政的均衡にとって不可欠である場合には︑なんら経済的行為ではなく︑純粋の社会

的活動である︒

  純粋な社会保険法上の活動と経済的行為とを区別する最も重要な基準は︑私的企業もこの種の活動を提供するかある

いは提供できるかという検査から導かれる︒しかし︑結局︑社会的保証制度に対する共同体法上の判断に決定的なのは︑

その行為が一般的な経済的利益のサービス給付の一部であるか︑かつ︑それ故に︑第八六条第二項の例外が影響を及ぼ

すかどうかである︒

︵二九八五︶

(9)

︵翻訳︶ における公企業と公共経済事業︵生活配慮︶ 五七四同志社法学五九巻六号

3.特別な権利または排他的権利︵独占権︶

  加盟国が特定の企業に対して法律︑行政行為もしくは条約によって特別な権利もしくは排他的な権利を与える場合に

は︑これらの権利は︑商品取引の自由またはサービス給付の自由に関する規定に違反する︒これらの自由の保障は︑個

人の権利を根拠づける︒例えば︑オランダが広告テレビについて行った時のように︑そのような権利が差別化された条

件の下で与えられた限りにおいて︑そのことについては争いがない︒制限を区別せずに適用できかつ一般利益という強

行的理由に基づいて正当化されうる場合に限り︑正当化が考えられる︒それについての立証責任は︑原則として︑加盟

国が負う︒経済的及び経済政策的理由は︑域内市場の秩序の要求と合致することができないので︑それらの理由は決し

て正当化する効力がないことから︑重要な制限が導かれる︒しかしながら︑正当化は︑企業が一般利益サービス給付を

委託されたときは考慮される︒特権を付与された国有企業に対する自由の保障の直接的適用の最も重要な分野は︑これ

までは遠距離通信とポストの分野であった︒特に電信電話の独占を最終の機器市場にまで拡大することについて︑欧州

裁判所は︑商品取引の自由と合致しないものとみなした︒そのことは︑とりわけ︑独占によって︑国家独占の下にある

製品を市場に提供できない場合に妥当する︒この考察方法の限界は︑EU委員会が第八六条第三項に基づく決定によっ

て︑フランス︑イタリア及びスペインにおけるエネルギーとガス供給に関する排他的権利を無効と宣言しようとした時

に明らかになった︒EU委員会は︑自由の保障に対する違反を説明することに限定し︑そして︑これらの独占の目標を

達成するなんらより制限的でない可能性が存在するという立証を加盟国がしなければならないと主張した︒しかし︑欧

州裁判所は︑特に︑次の理由によって︑委員会の決定を破棄した︒つまり︑継続的にかつ安い価格でエネルギーを供給

するという目的に役立つというあまり制限的でない選択肢を示すのは︑EU委員会の問題である︑と判示した︒結局︑ ︵二九八六︶

(10)

︵翻訳︶ における公企業と公共経済事業︵生活配慮︶ 五七五同志社法学五九巻六号 この判例によって︑EU委員会は同時に選択的規制を提案しないで︑排他的権利によってエネルギー市場を自由化する

試みをやめた︒政治的には︑その間に︑そこから︑エネルギー市場が法の接近という措置によって︑つまり理事会が可

決すべき指令によって処理するという一般に行われている実務が支配することになった︒

4.一般的経済的利益のサービス

  EUの全加盟国は︑経済的行為に市場を仲介しないかあるいはもっぱらには仲介しない公的利益を直接に組み入れて

いる︒この組入は︑公法上の法人にそうであるように︑組織形式から導き出すことができる︒公的利益をつけてやれば︑

私法上組織された企業が公的利益における任務を担わされるときに︑どのようにすれば的確なのか機能的に決定でき

る︒その企業の公的利益を加盟国が国の地域とその国民のために明確にする︒そこから︑域内では国境のない一つの場

所としての域内市場との衝突が生じる︒第八六条第二項における例外規定は︑そのことについて考慮する︒同条によれ

ば︑共同体法の適用によって企業に移譲した任務の遂行が法的にまたは事実上妨げられる場合には︑その例外は︑一般

的経済的利益のサービス給付を提供する企業に適用される︒欧州裁判所の判例によれば︑当該規定は︑次のような目的

をもっている︒つまり︑特定の企業︑特に公的部門の企業を利用することによって︑経済政策および社会政策の手段と

して︑競争規定の順守および市場の統一の確保に対する共同体の利益と合致させるという目的である︒この任務は︑衝

突をはらんでいる︒委員会と欧州裁判所は︑従来︑加盟諸国には公共経済上の課題を策定する際に広範な裁量があるけ

れども︑共同体法上の枠は守らなければならない︑ということを固守してきた︒委員会は︑この枠を三つの原則によっ

て特徴づけた︒すなわち︑まず︑中立性の原則である︒この原則は︑公共経済上のサービスが私的企業と同様に公共企

︵二九八七︶

(11)

︵翻訳︶ における公企業と公共経済事業︵生活配慮︶ 五七六同志社法学五九巻六号

業によって提供されることができる︑ということを意味する︒次に︑形成自由の原則である︒これは︑そのようなサー

ビス給付を企業に移譲すること及びそのための融資の決定については︑加盟国が第一義的な権限を持つ︑ということを

意味する︒最後に︑相当性の原則である︒つまり︑条約の諸規定の例外は︑絶対に必要な範囲に限られるというもので

ある︒  争点は︑加盟国の形成の自由の限界に集中する︒マーストリヒト条約が結実した審議において︑フランスは︑条約の

改訂を要求した︒加盟国は︑自己の公的部門に関する決定に際して条約の規定の適用を免れるべきである︒フランスの

法および経済秩序における公益事業の特殊の地位との類似が明らかである︒その妥協として︑新第一六条がEU条約に

採り入れられた︒同条の文言は︑公益事業を域内市場と競争規定の中に組み入れることに結びついたその射程と不確実

性を認識させる︒同規定は︑次のように定める︒

﹁第七三条および第八七条の規定にかかわりなく︑かつ︑社会的及び地域的結合の促進に当たり︑連合の共通の価値な

らびに内部において一般的な経済的利益を提供する場合に︑共同体と加盟国とは︑本条約の適用範囲において︑並びに

それぞれの権限の範囲内において︑それぞれの任務を果たすことができるように︑機能する原則と条件を形成すること

につとめる︒﹂

  本条は︑憲法草案においても︑欧州連合は立法権限をもつという条件をつけて引き継がれた︒それによって︑連合は

これらの業務を遂行するための原則と条件を定めることができる︵草案第三部第六条第二項︶︒本条を明文化する作業

段階における規定は︑共同体の権限は︑﹁この任務を憲法に合致して︑指示を与えかつ融資することができる︵草案第

三部第一二二条︶﹂加盟国の権限を妨げないと︑補足されていた︒加盟国と共同体が公共経済上の公益事業に取り組む

順序に関するさらなる徴憑は︑基本権憲章から導かれる︒草案第三六条は︑一般的経済的利益のサービス給付を行うこ ︵二九八八︶

(12)

︵翻訳︶ における公企業と公共経済事業︵生活配慮︶ 五七七同志社法学五九巻六号 とを承認し︑かつ︑その順序が︑連合の社会的及び地域的結合を促進するために︑個々の加盟国の法律規定と慣習によって憲法に合致して規律されるように考慮する︒この基準は︑再度︑基本的な第一部第三条において繰り返される︒それによれば︑欧州連合は︑加盟国の間の経済的︑社会的及び地域的な結合を促進しなければならない︒  この新規定を非常に広く解釈して︑加盟国は︑﹁公益事業﹂という例外領域に関し完全な主権を維持するという結論

に至った場合ですら︑ここではそのような前提には立たないのであるが︑この分野を域内市場と競争規定が適用される

経済生活の分野から区別する課題が共同体法に残っている︒もしもこの決定が︑欧州における公的経済団体がそれをど

のように必要としているか共同体法上検査することができないまま加盟国に移譲されることになれば︑域内市場と競争

制度は︑加盟国の意のままになってしまうであろう︒

  上述した規定の文言から︑公共経済上の公益事業は︑加盟国の特典を付与された任務の一つであるだけでなく︑共同

体のそれでもある︑ということが導かれる︒実際に︑共同体は︑生活配慮又は公益事業という伝統的分野に関して調整

という独自の政策を展開してきた︒最も重要な例は︑指令によって規律されるエネルギー︑遠距離通信および郵便に関

する包括的なサービスである︒指令によれば︑加盟国は︑提供者のサービスに最終利用者が一定の質および手の届く価

格で参加することを保証しなければならない︒事柄の性質上︑独占権の廃止と民営化後に必要である規制の一部が問題

となる︒共同体は︑それに対して︑既述した部門と広範に重なる組織上の枠組みを展開した︒加盟国は︑共同体の指令

において定める実体法上の規制を委員会の監視の下で国内法化する調整機関を設置することを義務づけられている︒

  委員会の規制措置は︑助成とその質の監督のような措置によって補充される︒定期的評価報告書において︑委員会は︑

公共経済上の公益事業の質と価格の有利さについて検査する︒

  伝統的な独占分野における公共経済上の公益事業の高度の調整にもかかわらず︑その共同体法上の限界に関する議論

︵二九八九︶

(13)

︵翻訳︶ における公企業と公共経済事業︵生活配慮︶ 五七八同志社法学五九巻六号

は︑その鋭さを何も失わなかった︒加盟国が公共経済上の公益事業の形成の自由を行使する際に守らなければならない

要件を考慮する場合には︑その核心において︑透明性および客観的でそして検査可能な基準による理由付けという要件

が問題となる︒

  代表的なのは︑加盟国が企業に一般的経済的利益のサービス給付を企業に委託するときに︑加盟国が満たさなければ

ならない要件である︒委託は︑欧州裁判所の判例によれば︑高権行為でなければならない︒それで︑法的安定性と透明

性が保証されることになる︒委託行為は︑委員会の実務によれば︑手付金を含まなければならない︒すなわち︑履行さ

れるべき供給︑委託の種類︑委託の履行を委託された企業とその地理的妥当範囲︑販売価格と価格の変更可能な場合の

その条件の決定権限︑企業に付与される排他的権利と特殊の権利の種類︑企業が公的供給の委託を履行するための補償

として受領する補助金の額︑および︑適合規定︑つまり︑義務の妥当期間である︵委員会通達︑一般的経済的利益のサ

ービスと国の助成金二〇〇二年一二月一一日︶︒

  加盟国は︑欧州裁判所の判例によれば︑特に︑法的枠組み及び任務遂行の態様と方法を定めて︑域内市場と競争制度

への介入が絶対必要な範囲に制限しなければならない︒欧州裁判所が補助金の禁止を委託された企業に適用するために

展開した条件が代表的である︒これについては︑委託された企業に対する国の補助金が︑それが単に企業が公的委託の

遂行の結果として補助的に担わなければならない費用を充填するにすぎなかった場合にも︑助成金として評価しなけれ

ばならないかどうか︑長い間争われてきた︒その重要な実際上の意味は︑委託された企業に対する融資の際に︑さらな

る監督分野を連邦共和国の地方自治体または州の負担で設けることを︑委員会の助成金が示さなければならないことに

ある︒その給付が市場の状況によればもはや価値がなくなったといえるような場合にも︑委託された企業はそれを提供

しなければならないことが︑一般的経済的利益のサービス給付の内容上の特徴である︒ここから︑このサービスのため ︵二九九〇︶

(14)

︵翻訳︶ における公企業と公共経済事業︵生活配慮︶ 五七九同志社法学五九巻六号 の融資の態様と方法に関する核心問題が生ずる︒重要な教示が︑私的企業によるそのような給付の提供のための許可の付与に関する欧州裁判所の判例から取り出される︒マグデブルグ市︵Magdeburg︶の市長がある私的会社に対し近距離

交通許可を付与することに関連して︑欧州裁判所は︑連邦行政裁判所の提示に基づいて︑特別の公的委託によってある

企業に発生する超過費用が助成金であるかどうかについて裁判しなければならなかった︒欧州裁判所は︑国の措置は︑

企業が公共経済上の義務の履行のために提供する給付に対する反対給付となる補償であるとみなさなければならない限

り︑助成金ではないと決定した︒当該企業は︑現実に︑融資上何らの利益も受領しておらず︑それ故︑上述の措置が当

該企業と競争する企業に対してより有利な競争上の地位を得させるようなことが生じなかったからである︵二〇〇三年

七月二四日のアルトマーク・トランス︵Altmark Trans︶判決.Rn.87︶︒ただし︑それは︑一定手続上の︑第八六条第二

項に関連して裁判所が統一した条件が充足されている場合に限られる︒公共経済上の義務の履行を委託される企業の選

択が︑公的委託の付与に関する手続きの範囲内で行われる場合には︑助成金が割り当てられても︑その認可が与えられ

る条件についてその内容審査は行われない︒このことによって︑これらのサービスを最も低い価額で公衆に提供できる

参加者だけがチャンスがあることが保証される︒サービス給付の認可の公的公示は︑さらなる監督を不要にする欧州共

同体法の一つの一般原則と見なすことができる︒

  助成金の監督をもたらす公示に関する選択肢は︑補償を計算するパラメーターがまず客観的にかつ明瞭に作られ︑そ

の結果︑その補償が競争企業の負担でいかなる経済的利益ももたらさないところに存在する︒しかしながら︑この補償

は︑公共経済上の義務の履行費用をその場合に獲得された収入とこの義務の履行から生ずる相当な利益を考慮して︑全

部又はその一部を補填するために必要である額を超えてはならない︒必要な費用の額は︑平均的な︑上手に経営し︑補

償に要する資金を備えている企業が当該の義務の履行の際に有しているであろう額を分析して決定しなければならな

︵二九九一︶

(15)

︵翻訳︶ における公企業と公共経済事業︵生活配慮︶ 五八〇同志社法学五九巻六号

い︒その場合には︑そのときに獲得した収入とこの義務の履行から生じる相当な利益を考慮に入れなければならない︒

それに対して︑加盟国が事後的に︑一定の公共経済的義務を履行する資金を当該の企業に補助する場合︑又は︑委員会

が︑提供された補償が︑たとえ基準が事前に定められているときにも︑正当な範囲を超えていると決定する場合には︑

助成金となる︒

  加盟国がどのようにして公共経済上の特別任務を財政的に援助するのか︑それは排他的権利の付与によってか︑財政

的補助によってか︑あるいは認可によってかということとは関係なく︑競争中立性の原則が妥当する︒委託された企業

は委託による市場における有利な地位を︑限界づけられた競争市場において利益を獲得するために利用することは許さ

れない︒一つの重要な例は︑ドイツ・ポストに対する訴訟手続きである︒ドイツ・ポストは︑委員会の見解によれば︑

残されたポスト独占から生ずる利益を競争にさらされた郵便小包取引に補助金を与えるために利用した︒訴訟の結果

は︑郵便小包を封書部門から組織法上分離し︑かつ組織法上分離された子会社の間の決済価格を監督することである︒

5.﹁非欧州﹂のコスト

  委員会は︑欧州という利益を数量化するために︑調整のイニシアティブを﹁非欧州﹂の費用計算をもって基礎づける

ことがしばしばであった︒ここでは︑そのような計算が確かにそもそも可能かどうかという疑念については触れない︒

しかし︑われわれの関係では︑法状況の比較は可能である︒例えば︑電信電話制度においては︑﹁非欧州﹂の条件の下で︑

つまり共同体法の介入がない場合とある場合との比較である︒ドイツ連邦ポストは︑法人格のない公的企業として継続

する後でも︑欧州最大のサービス給付企業として公的施設用に決められている特定の予算配分番号をもたない︒その委 ︵二九九二︶

(16)

︵翻訳︶ における公企業と公共経済事業︵生活配慮︶ 五八一同志社法学五九巻六号 託と任務を対比する国庫会計上の原則に従って経営している︒もしもその委託が収入よりも高くなったならば︑手数料を値上げするのである︒電信電話手数料は︑郵便業務を補助したり︑有線システムの構築のために使用することが許された︒電信電話の独占は︑連邦憲法裁判所の判例によれば︑進展する独占化の必要性が技術の発展と依存関係にあるかどうか改めて審査する義務を負うことなく︑あらゆる新電信電話技術に広がった︒  遠距離通信とエネルギー経済に包括的なサービスという規律を法律上導入することによって︑共同体は︑このサービスの特殊性︑つまり︑全住民が生活する上での重要性に合致することを考慮した︒包括的なサービスの前提条件が指令において定義されているように︑この条件を守り︑そして︑それと結びついた利益を隣接市場に移譲することは︑実質的に必要である︒エネルギー分野における︑とくに電気に対する規制は︑自然独占としての伝送及び販売網の特性を考慮に入れる︒必要な規制は︑ここでも︑それ以前の法律状況と比較して高められた合理性とこのサービスの提供の審査可能な採算性をもたらす︒

︵二九九三︶

参照

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