神奈川大学審査学位論文の要約 「企業間の国際提携とキャッチアップ企業の競争戦略」 1
企業間の国際提携 とキャッチア ップ企業の競争戦略
一有 力企 業 の提携 が企 業 間競争 関係 に及 ぼす イ ンパ ク トを中′い こ‑
1ntemationalAlliancesandCatch‑upsCompetitiveStrategleS:TheImpactofLeadingCorporations'AlliancesonCompetition
神奈川大学大学院 経営学研究科 国際経営専攻 博士後期課程
金 字 烈
Ⅰ
研究 目的本研 究の主 な 目的 は次 の2つである。 その1つ は、有力企業 の提携 が企業 間の競 争 関係 、特 に、
キャッチア ップ企業の競争関係 に及ぼす インパ ク トを解 明す ること、 もう1つ は、キ ャッチア ツフ 企業が こうした有力企業の提携 とい う新 しい脅威 に対応 し、企業独 自の存続領域 を確保 し、かつ さ らなる成長 を図るために求め られる戦略的対応策 を考察す ることである。
Ⅰ
研究の背景企業間の提携 、特 に水平的提携 は、本来競争す べ き競争相手が協力す る共 同行為 にあたるため、
独 占禁止法 に抵触す る恐れがある。そ もそ も市場 競争への思想が根強い米国の場合、巨大企業 はい うまで もな く、規模面 においてそれほ ど大 きくな い企業間の共同行為 も、共謀 によるカルテルや競 争減殺 につ なが りやすい と見 なされ、司法当局が 企業間の共 同行為 をM &A以上 に厳 しく規制 して いた時期 さえあった。
しか し、米国では、提携が 「経済的効率性 の向 上」 に貢献す る とい うことを主 な理 由 とし、「国 家共同研究法 (TheNationalCooperativeResearch Ac
t )
」 (1984年)お よび、「国家共 同研 究生産法(NationalCooperativeResearchandProductionAct)
」
(1993年)が制定 され、巨大企業 間の提携 も反 ト ラス ト法の適用か ら免責 されるようになった。 こ うした法的規制緩和 に も助 け られ、巨大企業であ って も、提携 を競争戦略 として有効 に行使す るこ とがで き、今 日の国際競争 は、前例 のない相互依 存 ・相互協力関係の様子 を見せている。
一方、提携が企業間の共謀、 またはカルテルで はな くて も、それぞれの製品 ・市場で多大 な影響 を及ぼ している有力企業が イニ シアテ ィブを持 っ て提携 を構築す る とい うこ とは、「イノベー シ ョ ン機会の独 占
」
「市場 の先取 り」 な ど、企業 間競争関係 に多大 なインパ ク トを及ぼすだろ うと考 え られる。特 に、経営資源お よび戦略的能力 におい て比較劣位 にあ りなが らも、有力企業 と直接競争 関係 にあ る途上 国の キ ャ ッチ ア ップ企 業 に とっ て、有力企業 の提携 は新 しい脅威 とも言 えよう。
にもかかわ らず、こうした問題点に着 冒 した体系 的な研究がなされて きた とは言い難い。特 に、 日 本 においては、本研究で着 目 している研究成果の 蓄積 は皆無 に等 しい。
Ⅲ
論文の構成 (図1参照) 1 問題提起(∋今 日の提携 に浮 き彫 りにされる特質か ら、そ れが国際競争関係 に与 える潜在的 インパ ク ト に関 して問題提起 を行 う (序章 ・第1章)。
②提携 に対す る競争政策のス タンスお よび規制 緩和の経緯 を概観 し、今 日の提携 は、本来 な ら反 トラス ト法 に抵触す る可能性が高い こと や、規制緩和が企業間の競争関係 に及ぼ した 影響 を考察する (第2章)。
‑今 日の提携 は国際的寡 占企業の相互依存 ・ 相互協力 を実体的に表 わす ものであ り、米国
における提携の規制緩和 は、 自国産業、 また は自国企業の保護のために寡 占企業の相互協 力 を容認する もの として機能 した。
2 仮説設定 (第3章)
提携お よび競争戦略 に関す る先行研究の レビュ ー を通 じて有力企業主導 の提携 が参 入 ・移動 障 壁、あるいは寡 占的統合の ツール として働 き、有 力企業がその市場影響力 を維持 ・強化す るのにあ たって提携が有力 なツール として機能す る可能性 を提示す る。
(∋技術革新が活発 な産業 ・製品の場合、提携が 実質的に 「強者連合」 とな り、有力企業の専 有の競争 ツール となる。
②標準化産業 ・製品の場合、国際的な分業体制
2 研 究 年 報 第7号
が発達 し、後発のキ ャッチア ップ企業 にとっ て も、提携が競争戦略 として有効 に機能す る。
ただ し、提携交渉力のいかんによっては、提 携がM &Aの ように、寡 占的統合の ツール と
して も機能す る。
3 仮説検証1(第4章)
電気機械産業 において 日本企業が形成 している 提携 に関す る実証分析 を通 じて、産業内部の提携 構造が、産業お よび製品の特徴 によ り二重的構造 となっていることを検証す る (仮説(Dお よび仮説
②)。
4 仮説検証2(第5章 ・6章 ・7章)
事例研究 を通 じて、提携が既存の有力企業 に有 利 に機能す る可能性やその背景 にある要因を検 出 する。 さらに、競争政策の国際的調和 と運用が窓 意性 の高い ものになることを明 らかにする。
5戦略的代替案の提示 (第8章)
キ ャッチア ップ企業 の対抗力 として、「コア ・ コンピタンス」 を構築 し、提携交渉力 を強化す る ことが有効であるが、本章 を通 じて、その構築 プ ロセスを提示す る。
6 終章 結論 と展望
図 1 論文の構成体系
① DVD規格協 定 :下位 企 業 の 排 除 に よる新技術 ・新製品の 支配力の維持 ・強化 (参 ダイムラー と三菱 の提携 :堤
携交渉力 の較差 による有力企 業の戦目剛 勺意図の貴徹
(ヨ バ イオ産業 にお ける提携 :釈 技術 ・新市場の先取 り
② コ ダノク共 同研 究 開発 :競 争 企業の排除
③ RCAの クロス ・ライセ ンシン グ :イノベ ー シ ョン機 会の独
占
ボ‑ イングとMDの合併 :競争政策の国 際 的 運 用 に お い て厳 格 な法 の適 用 よ り も、通 商政策 が優先 され交 渉の対 象 とな り、窓悪性の高い もの となる
第8章 :提 携 時代 にお け る キ ャ ッチ ア ップ企 業 の競 争 戦 略
神奈川大学審査学位論文の要約 「企業間の国際提携 とキャッチアップ企業の競争戦略」 3
Ⅳ
章別要約序章 研 究 の 目的 と背景
第1章 企 業 間提携 の質 的変 化 と国際 競争 関係 の 変 質
1 日的
第 1章 の 狙 い は次 の3つ で あ る。 第 1は、提 携 を企 業 間 の取 引 形 態 、 また は投 資 形 態 の 1つ と し て とらえ、本研 究 で分析 の対 象 となる提 携 の範 囲 を設 定 す るための基礎 的準 拠 点 を提 示 す る。
第2は、戦 略提 携 (strategicalliance)と呼 ばれ てい る今 日の提 携 の特性 を考 察 し、企業 間提 携 の 属 性 が 従 来 とは 質 的 に異 な る こ と を明 らか にす る。 そ して、提 携 の属 性 が変 化 す る よ うにな った 背景 を探 る。
第3は、企 業 間提 携 の主 な推 進 主体 が 、 国際 的 寡 占 企 業 、 つ ま りM NCs (M ultinational corporations)で あ り、 こ う したMNCs間 の相 互 協 力 ・相 互依 存 関係 が 、企 業 間の競 争 関係 に及 ぼ す イ ンパ ク ト関 して問題提 起 を行 う。
2 独立 企 業 間 の中間的取 引 と しての提携
提 携 取 引 の特 徴 と して は、 「独 立 性 」、 「協 調 」、
「市 場 取 引 以 上 の 関係 」 な どが 取 り上 げ られ る。
つ ま り、 あ る共有 の 目的 を達 成 す るため に、独 立 した企業 が 、市 場取 引 で も内部取 引 で もない 「中 間的取 引 関係 」を形 成す る こ とで あ る (図2参 照 )。
本研 究 で は、パ ー トナー相 互 が実 質的 な独 立性 に 基づ い て、市 場 取引 以上 の協 力 関係 を構 築 す る時 にパ ー トナー 間 には提携 関係 にあ る と、広 範 に提 携 の範 囲 を設 定 して置 く。
3 企 業 間提携 にお ける属性 変化
今 日、戦略提 携 と呼 ばれ る ものの実態 は、従来 提携 の属性 が変化 した こ とを実体 的 に表 わ した も ので あ り、従 来提 携 と戦 略提 携 との質的 な相 違 に 関 して次 の5点 を取 り上 げ る こ とが で きる。
① 従 来提携 は、提携 に よ りロ イヤ ル テ ィや経 営権 の取 得 が基 本 的 であ ったの に対 して、戦 略提 携 の もとで は、経 営 資源 、経 営機 能 の相互補 完 的利 用 が一般 的 にな って きた。
②提 携 の 内容 も、かつ て は包括 的で一方 的 な資源 の流 れが 多 か った。 しか し戦 略提携 の も とで は 、 活動 内容 が相 対 的 に限定 的 で、双 方 的 な流 れ とな った。
③ 従 来提 携 にお け る活動 の働 きか け は、 同業種 内 の大 企 業 か ら小企 業へ 、先 発 企業 か ら後発企 業へ とい う流 れが 中心 的 であ った。戦略提 携 の もとで
図2 提携 の範 囲 と形 態
契約設定 フ ラ ン チャイズ
‑
長期取 引 関係 系 列 l
資本参加の度合 ..
▲
資本 参加 ‑: ‑‑‑‑一一一‑‑‑一一一‑一一一一>
1 「
独立性 の増加 支配力の増加
A
\ 一一一一一
7B合弁事 業
\ /
′
ヽ \ /
合弁会社
∨夕
独 立企業 間の市場取 引 提携企 業 間の 中間的取 引
□ :提携 の範 囲
企 業 内の 内部取 引
4 研究年報 第7号
は、 同業 各企 業相 互 間 に もその主導権 が見 られ 、 異業種 間で も見 られ る よ うにな った。
④ 従 来提携 で は、企業力 に較差 のあ る企業 間の提 携 関係 が多 か ったの に対 して、戦略提携 で は、企 業力 の較差 の ない企 業 間の競争 的取 引 関係 にその 中心 が移 ってい る。
⑤ 以上 の ような 「提携企 業 の関係」 か ら見 て、か っての提携活動 はか な り固定 的 な性格 を持 ってい たの に対 して、戟略提携 の もとで は流動 的 ・戦略 的 な性格 に変 わ りつつ あ る。
特 に、今 日戦略提携 と呼 ばれ る ものの主 な推進 主体 はMNCsであ る。製 品の開発 と生 産 にお け る 相互依存性 の増加 、製 品寿命 の短縮 、そ して国際 競争 の激化 な ど、内外 的 な経営環境 要 因の変化 に 直面 したMNCsが、 自前 主義 的 な成長戟略 か ら相 互依 存 ・相 互協 力 関係 を形成 してい る こ とこそ、
戦略提携 の実態 に他 な らない。
4 国際 的寡 占企 業 の提 携 と国際競争 関係 の構 造 的変化
それぞれ の産業分野 で世界 的 な市場影響力 を持 ってい るMNCsが 、本 来競 争 関係 にあ るはず の競 争企業 まで も含 めて、提 携 を競 争 ツール と して頻 繁 に利用 す る ようにな り、新 しい競 争 関係 、新 し いゲーム ・ルールが形成 されつつ あ る。特 に、従 来 はあ ま り行 われてい なか った川上活動 にお け る 対等 な提携 (例 えば、規格協 定 、共 同研 究 開発 な ど) は、戦略提携 と呼 ばれ る今 日の企業 間提携 関 係 で著 しく高 い比重 を占め てい る。 しか も、 この 範晴 に属 す る提携 はその研 究 開発 能力 な どの性 質 上、主 にMNCs間、 または技術 能力 に優 れ た一部 の企業 間 に しか形成 され ない提携 であ る。 この こ とは、提 携 とい う競 争 ツール を活用 で きる条件 や 享受 で きるベ ネ フ ィッ トも、企業能力 に よって大
き く異 なって くるこ とを意味 す る。
MNCs間の提携 が寡 占体 制 の維持 、 また は強化 を実質 的 に容認 す るので はないか とい う懸念 も払 えない。 その端 的 な例 が 、企業 間提携 にお け る先 進 国企 業 間の圧倒 的 に高 い比重 であ る。提携 を通 じて、相互 の優位性 を活 かす か、 または弱点 を補 完す るため には、パ ー トナー に とって魅 力 のあ る 経営資源 お よび企業能力 を自社 内 に備 える こ とが 必 要 であ る。 しか し、途上 国企 業 は こ う した能力 条件 を満 た しうる経営 資源 よび企 業 能力 に欠 けて い るため、提携 参加 か ら排 除 されやす いのであ る。
こ う した 「強者連合」 こそ、今 日の提携 、特 に戟
略提携 と呼 ばれている もの において浮 き彫 りに さ れ る特徴 であ る。 また、 この巨大企業 間の協 力 関 係 の構 築 や相互依存 関係 の構造 的定着 こそ、従来
とは異 なる国際競争 関係 の質的変化 であ る。
多 くの産業 で寡 占化 の傾 向 を見せ てい る状況 の 中で、有力企業 間の提携が頻繁 に行 われてい る と い うこ とは、企業 間の競争 関係 に も多大 なイ ンパ ク トを及 ぼす と考 え られ る。 しか し、有力企業 の 提携 が企業 間の競 争 関係 に及 ぼす イ ンパ ク トに関 して は、 ほ とん ど研究 が な されて来 なか った。 こ の点 、経営学 にお ける提携研 究 の問題点 と して浮 き彫 りに され る ところで あ り、 こ う した意味 で、
本研 究 は新 しい問題 を提起す る ことに もなる と言 える。
第2章 企 業 間提携 に対 す る競争政策 の変化 とそ の背景
1 日的
第1は、米 国の反 トラス ト法 を中心 に企業 間の 共 同行為 と しての提携 と、それ をつか さどる競争 政策 のス タンスお よびその変化 を考 察す る。
第2は、企 業 間の共 同行 為 を非常 に厳 し く規制 して い た米 国が 、 なぜ、1980年代 に入 って規 制 嬢和 に踏み切 る ようなったのか、その背景 と理論 的根 拠 を明 らか にす る。
第3に、米 国 にお け る規 制緩和 が 、国際 的寡 占 企業 の国際競 争戦略 に及 ぼ した影響 を考察す る。
2 反 トラ ス ト法 にお ける企 業 間の協 力行為 の位 置 づ け
企 業 間の提 携 は独 立企 業 間の共 同事 業 であ る。 つ ま り、独立 している企業が何 らか の形 で協 力す るこ とや、共 同行 為 (concertedaction)を行 な う こ とであ る。特 に、市場 で競争 す る企業 間 に行 わ れ る水 平 的提携 (horizontalalliance)の場合 、厳 格 にい うと、完全 自由競 争 の思想 とは反す る もの があ る。周知 の ように、市場経 済 を根幹 とす る諸 国 の 場 合 、企 業 間 の 共 謀 (conspiracy)、協 定 (agreement)、取 り決 め (arrangement)な どは競 争 減殺 (lessencompetition)、 カル テ ル (cartel)
と して見 な され、厳 し く規 制 され てい る。 また、
米国の反 トラス ト法 の根 幹 とも言 えるシ ャーマ ン 法 (shermanAct) の場 合 、 そ の成 立 の背 景 に、
競争企 業が トラス ト (trust)を結成 し、実 質的 に 市場 を独 占 した ことが あ った。
この ように、企 業 間の協 力 ・協調 ・共 同行為 は、
神奈川大学審査学位論文の要約 「企業間の国際提携 とキャッチアップ企業の競争戦略
」
5カルテル と して見 な される可能性 も常 に持 ってい る。 しか し、今 日、巨大企業 間の提携が活発 に行 われているに もかかわ らず、企業 間の提携が独 占 禁止法違反 として訴 え られ るケースは、 ほ とん ど 皆無 である。
3 「国家共 同研 究法 」 の制定以前 に見 る競争政 策 のスタンス
1984年 の 「国家共 同研 究法」 制 定以前 に米 国 においては、企業 間の共 同研究 開発 は当時米 国企 業 の圧倒 的 な競争優位 もあ り、あ ま り行 なわれて いなか った。 しか し、企業 間の共 同生産 をめ ぐる 合弁事業 は、比較 的 に多 く行 われて きたが、それ に対 しては非常 に厳 しい規制があ った。特 に、競 争企業 間の合弁事業 に対 しては司法省 だけではな く、学界で も多大 な論争 を巻 き起 こ し、競争企業 間の合弁事業が反競争 的か どうか に関す る論争 も 盛 んに行 われていた。
企業 間の共 同事業 に関 して、司法 当局 の判 断 は 決 して 「当然違法 (perseillega
l )
」 と して規制 し ていたわけで はなか った。企業 間の共 同事 業 は、いわゆる 「合理 の原則 (ruleofreason)」 に基づい て、その社会的 ・経済的ベ ネフ ィッ トと競争 阻害 性 を考慮 して判 断 され たのであ る。 したが って、
裁判所が企業 間の共 同行為 を当然違法 であるカル テル と区別 していた こ とは確 かであ る。 しか し、
企業 間の共 同事業 を判 断す る場合、明確 な基準が 存在 しているわけではな く、事案 ご とに、その内 容 、参加者 の市場影響力 、 日的 ・意 図、関連市場 に及 ぼす効 果 な どを総 合 評価 して、 ケー ス ・バ イ ・ケース (Casebycase)で違法性が判断 され る。
これが 「合理 の原則」 に よる反 トラス ト法の適用 であ る。
その時期 や裁判所 の裁量 に よ り若干 の相違 はあ る もの の、 1984年 の規 制緩和 以前 には、全 体 的 に見 て企業 間の共同研 究 開発 に対 して も、か な り 厳 しい反 トラス ト法 の通用があ った と言 える。例
えば、UnitedTechno】ogiesとpratt&whitneyRolls Royceの小型 ジェ ッ ト ・エ ンジ ンの共 同開発 の場 合、司法省 は、可能 な らば単独 で参入 した方が望 ま しいが、革新性 や1社単独 で は開発 や参 入が難 しい場合 のみ、共同研 究 開発 を容認す る とい う判 断 を下 していたのであ る。 したが って、今 日によ うに、経済的効率性 (例 えば、 コス ト ・リス ク削 減 )、 また は技術 革新 を理 由 に して、 1社 単独 で も十分 に開発 や参入が可能 に もかかわ らず、巨大
企業 間で頻繁 に行 われている共 同研 究 開発 を司法 省が寛容 に容認す ることとは基本的 に異 なる性格 がある。
企業 間の共 同生産 に対 しては、競争減殺 、ス ピ ル ・オーバ ー による共謀 ・カルテルな どの可能性 が主 に問題視 され、一層厳 しい反 トラス ト法 の適 用が あ った。特 に、共同生産 の場合、合併 して し
まえば問題 とされないのに対 して、共 同生産すれ ば規制す る とい うほ ど、厳 しく規制 された ことも あった。
4
「国家共 同研 究法」 お よび 「国家共 同研 究生 産法」の制定 と規制緩和1980年代 に入 り、米 国企業 が共 同研 究 開発 の 必要性 を徐 々に感 じは じめ、大 きな転換 を迎 える こととなる。 この時期 は、米 国企業 の超優越 的 な 市場支配力 (国際競争力)が減退 し、米 国企業 は 非常 に激 しい国際競争関係 に直面 していた時期 で ある。特 に、多 くの米 国企業 は、 日本企業 との競 争 に直面 してお り、 日本企業の共同研究 開発 に刺 激 されていた。米国産業 の国際競争力の低下 を反 映 して全体 的 に保守的な傾 向が強 まる中で、 シカ ゴ学派の影響 を強 く受 け入れて、反 トラス ト政策 の運用方針 において も規制 を緩和す る方向で、変 化が現れていた。
そ して、先端産業 では、特定の技術 を開発す る ことが企業単独 では難 しくなるにつれて、複数企 業 による共 同研 究開発 の必要性が出て きた。 これ に対 して、当時米国の産業界 は共同で科学技術 を 開発 し、それ を製品化す ることでは競争が行 なわ れるので、 これは競争以前 の段 階での協 力 (pre‑
competitivecooperation)であ る とい う見解 を示 し ていた。 しか し、 この タイプの共 同研究 開発 に対 して、反 トラス ト法が明確 ではないため、産業界 としては、新 しい法律 を制定 し、不確実性 を減少 してほ しか ったのである。
この ように、米 国産業 の国際競争力が大 き く低 下 し、「新興 日本脅威論」と、日本 の技術発展 におけ る企業 間の共 同研 究 開発 プロジェ ク トの成功 が 、 実際以上 に過大 に知 らされた ことな どの時代 的背 景 に も助 け られ、反 トラス ト法 の規制緩和 が行 わ れた。それが 、「合理 の原則」を明文化 し、3賠 の損 害賠償(TrebleDamages)を実額賠償へ減少す るこ と を盛 り込 ん だ 、「国 家 共 同研 究 法(Nationa一 CooperativeResearchActof1984)」である。
しか し、実際 に新製品 を商品化す ることは、研
6 研究年報 第7号
究開発以上 にコス トがかかるため、米国企業 は共 同生産に対 して も反 トラス ト法の規制穏和 を求め た。 また、 ち ょうどその ころ、産業界で は、「日 本脅威論」が さらにつの ってお り、 しか も、1990 年初期の当時は、米国製造業の国際競争力の低下 や産業空洞化が大 きな政治問題 となっていた。
この ような時代的な背景 も追い風 とな り、1993 年 ク リ トン政 権 下 で 、 「国 家 共 同研 究 生 産 法 (NationalCooperativeResearchandProductionAct of1993)」が成立 した。 これは 「共同研究開発法
」
の内容 を共 同生 産段 階 まで に拡大 した ものであ る。 しか し、「国家共 同研究生産法」 においては 共同販売 ・共同マーケテ イングは認めていない。
5 規制緩和 と国際競争関係 への影響
米国における提携 に対す る規制緩和が、巨大企 業間の提携 を質的に も、数量的に も変質 させ たこ とは、以下の点 を見て も確かである と言 える。そ のlは、共 同研究 開発 の数量的増加である。正確 なデー タがないため、断言す ることはで きないが、
規制緩和以前 には、共同研究開発があ ま り行 われ ていなか った。 しか し、1984年の規制緩和以降、
共同研究 開発が急速 に増加 している (表 1参照)0 もう 1つ は、セマテ ック (SEMATECH)に代 表 されるように、巨大企業 間の共同研究開発がほ と ん ど規制 されることな く、頻繁 に行 われるように なった。
以上 にように、提携 に対する規制緩和 は、 自国 産業の国際競争力 を最優先的な政策課題 として行 われたが、その背後 にある論理 は、寡 占的支配力 を多少容認 してで も、経済的効率性 を優先す ると い うこ とで あ る。実際 、米 国 においては、大型 M&Aや巨大企業間の提携 を容認す る動 きに関 し
て批判的声 も少 な くない。つ ま り、経済的効率性 とい う名 目で、 自国産業の国際競争力 を強化す る ために、寡 占を正当化す ることであ り、そこに提
表1米国にお ける共同研究開発の届 け出 (件数)
午 届け出数 平均参加企業数
1985 50 ■13.0 1986 17 12.2 1987 26 13.9 1988 31 29.2 1̲989 27 23.0 1990 46 10.7 1991 62 15.0 1992 59 9.8 1993 72 12.3
携 に対す る規制緩和の問題があると言 えよう。
第3章 有 力企業の提携 と企業間競争関係 への イ ンパ ク ト
ー その理論的 フレームワー ク‑
1 目的
第 1は、有力企業の提携が市場競争 に及ぼす影 響 に関す る先行研究 をレビュー し、既存研究の問 題 と示唆す る ところを抽 出す る。第2は、有力企 業の提携がキ ャッチア ップ企業の競争関係 に不利 に機能す る可能性 を、競争戦略 との関連性で提示 する。
2 提携 が市場競争 に及 ぼす影響 に関 す る先行研
究
1960年代 お よび1970年代 にかけて、米 国では 提携が有力企業の市場影響力 を強化 し、独 占的な 影響力 を発揮す るのか、それ とも技術革新 を促進 し、経済的効率性 を向上す る有力な手段 なのかに ついて、活発 な議論が行 われていた。そ して、提 携の生成動機お よび影響 に関 して、後者の論理が 一層広範 な支持 を得て、提携 に対す る法的規制が 緩和 されたわけであるが、こうした研究視点 には い くつかの問題点が浮 き彫 りにされている。
第 1に、提携が技術 革新 を促進 し、経済厚生 を 向上 させ るとい うことと、企業間競争関係 に及ぼ すイ ンパ ク トとは全 く別の議論であることに注 目 すべ きである。つ ま り、この論理 は市場全体の効 率性 を問題 に していることにす ぎな く、提携が企 業間の競争関係 に及ぼす インパ ク トとは、本質的
に異 なる次元の問題である。
第2に、分析手法 における限界である。有力企 業間の合弁事業 を反競争的だ と主張す る論理の背 景 には、合弁事業が同種産業 に属す る有力企業間 に頻繁 に行われてお り、それが共謀、競争制限 ・ 競争減殺、市場影響力の維持 ・強化 につ なが る有 力 な手段 であるとい うものであった。 しか し、今 日の企業間提携 は大企業間だけが行 うものではな い。 また同種産業だけではな く、多様 な レベル ・ 範囲の産業、企業 にまたが って行 われている。
第3に、反競争的 とい う指標である。反競争的 だとい うことは、価格談合、生産量協定、地域分 割 とい う露骨的な手段 もあるが、簡単 には見 えな い企業間の相互作用 による市場支配力の増加 も含 まれる必要がある。 しか し、産業組織論 をは じめ とす る経済学の立場 は、主 に市場全体 を問題視す
神奈川大学審査学位論文の要約 「企業間のE]際提携 とキャッチアップ企業の競争戦略
」
7図3 戦 略 グル ープ と提携 の二重的構造
現市場
リー ダーの競争 ポジシ ョン 提携 の方向
るため、企業 間の相互作 用 に よる支配力 の増加 は しば しば見落 とされやすい。
3 企 業間の競争 力の較差 と二重 的提携構造 産業 内部 にお け る企 業 間の競 争 関係 に関 して は、主 に競 争 戦 略 の次 元 で 多 く論 じられ てい る。
ポー ターは同一産業 に属 しなが らも、個 々の企業 が直 面 す る競 争 圧 力 や収 益 性 に相 違 が 生 じるの は、その産業 において個 々の企業が位置す る戦略 グルー プ (strategicgroup)、つ ま り競 争 ポ ジシ ョ ンが異 なる ところか ら起 因す る とい う。 こ う した 戟略 グルー プが生 じる根 本 的 な理 由は、企業 間の 戦略的能力 に較差 が あ るか らであ る。
ところが 、ここで注 目すべ き点が あ る。それは、
図3で示 した よ うに、企業 の戟 略 の方 向性 、 また は戦略 的能力 の較差 に よ り提携 の内容 や方 向性 も 異 な る とい う点 で あ る。 リー ダー は、現 在 の 製 品 ・市場 での地位 を維持 す るだけでは な く、将来 有望 な新 製 品 ・新市場 を開発 す る戦略 目標 と能力 を持 ってい る。 これ に対 して、 フ ォロア‑は経営 資源お よび戦略 的能力 の限界 か ら、現在 の製 品市 場 での シェア拡大 と、標準化技術 の吸収 お よび蓄 積 に一層 強い戦略 目標 を持 っている。したが って、
それぞれの提携 の方 向 には質的 な差 が あ り、新市 場 ・革新 的技術 をめ ぐる提携 は主 に リー ダー と し
新市場 フ ォロア‑競争 のポジシ ョン
革新的技術標準化技術
て位 置づ け られ る企業 間 に多 く見 られ、現市場 ・ 標準化技術分野 にお ける提携 は、 リー ダー とフ ォ
ロア一間、あ るいは フ ォロア一間 に多 く見 られ る だろ う。 この ように、企業 の戟略 的能力 と関連 し て企業 間提携 を分析 す る場 合、企業 間の提携 内容 に も厳格 な差 があ り、提携 内容 は企業 の戦略 的能 力 に よ り 「二重 的構造」 が形成 されてい る とも言
え よう。
4 企業間提携 と競争 関係 への イ ンパ ク ト (I)分析 の フ レーム ワー ク
第 1に、技術 移転 、国際貿易 お よび生 産立 地 の パ ター ンか ら、企業 間の国際競争 関係 を先発 ・後 発企 業群 に分 けて考 察す る。 そ して、「先 発 企業 (導 入企業 お よび後発 参 入企業Ⅰ)」 を有力企業 と して位置づ け る (図4参照)0
第2に、国際 的 な技術 移転 お よび生 産立 地 の変 化 に照 ら し
、p LC
上 、当該製 品の技術 ・市場 が安 定 し、標準化 された段 階で引 き継 ぐ‑連 の企業 を「後発 参 入企業
Ⅲ
」 と見 な し、業 界 の有 力企 業 に 対比 され る もの として 「キ ャ ッチ ア ップ企業」 を 位置づ け る。本研 究 でい うキ ャ ッチ ア ップ企業 と は、途上 国 に本拠地 を置 き、MNCsと直接競 争 関 係 にあ りなが ら も、企 業規模 、経 営 資源 の蓄積 、 ブラ ン ド構築 な どの面で比較劣位 にあ り、かつ海8 研 究年報 第7号
外‑の拡大 を本格的に推進 している企業 をい う。
第3に、企業 間提携 の内容 と特性 は産業 ・製品 ごとに異 なるとい う点である。例 えば、完全 に成 熟 した産業 ・製品 と、市場導入段階にある産業 ・ 製品 とは、提携の誘 因や動機、そ して提携参加の 能力条件や参加企業の交渉力 を決める個 々の変数
も異 なる と考 えられる。
(2)標準化製品における提携 と競争関係への イン パ ク ト
国際的 に標準化 された製品の場合、製品お よび 製造技術 の不確実性がほ とん どな く、技術 の国際 的評価 もかな り低 くなっている。市場 もかな り成 熟化 され、一定の需要が安定的に形成 されている。
しか し一方では、標準化製品の場合、技術水準が 国際的に標準化 されていることもあ り、生産立地 の途上国への移転 も非常 に活発である。 また、競 争 も価格、あるいは形式的な差別化 な ど、主 に生 産 コス トが重要な問題 となって くる。
標準化製品の場合、上記の ような国際競争関係 上の特徴 を持 っているため、提携が先発企業 に資 源補完、 リス クの削減お よび競争優位 の創造 に大 きく貢献する とは言い難い。 む しろ、効率、低 コ ス ト志向などの手段 として提携が利用 されるケー スが多 い と考 え られ る。 しか も、先発企 業 の効 率 ・低 コス ト志向 とい う戟略 目標か らすれば、後 発企業 は標準 品の生産 ・調達 のパ ー トナー と し て、その能力や条件 を備 えているため、先発企業 はその国際戟略の遂行上、後発企業 を抱 え込 む必 要が強 くなって くると言 える。 したが って、後発 企業 も提携 による国際分業体制 に主導的に参加す
ることがで きる と言 える (図4参照)。
この ように、標準化製品の場合、キャッチア ッ プ企 業が提携 参加 か ら排 除 され る可 能性 は小 さ く、提携が キ ャッチ ア ップ企業 に参入 ・移動障壁 を形成す る可能性 も低 い。しか し、M &Aと提携 を 業界再編の手段 として利用す る場合、提携が有力 企業の市場影響力 を推持 ・強化す る有効 なツール であることも十分 にあ りうるが、その場合、提携パ ー トナー間の交渉力が大 きな変数 となるだろ う。
(3)末標準化製品における提携 と競争関係へのイ ンパ ク ト
一方、標準化製品における企業間提携 とは異 な り、未標準化製品に関 しては、キャッチア ップ企 業 に非常 に不利 な競 争 関係 を もた らす恐 れが あ る。未標準化製品の場合、製品 ・製造技術 、原料、
部品、国際規格 など、全般的 に不確実性が大 きい 段階にあ り、製品 ・製造技術 などにおける革新 と 改良の余地が大 きいたけではな く、初期 開発 リス クも非常 に大 きい。 したが って、提携 は技術 お よ び資金面で優位 にある一部の企業 に限 られ、共同 研 究 開 発 、 ク ロ ス ・ラ イ セ ン シ ン グ (cross licensing)、製 品 ・部 品 ・製造仕様 の規格協定 な
どを中心 に行 われる。そ して、経営資源 (特 に技 術 お よび資金)の補完、組織 間学習、 リスク管理 といった面で も、提携の誘因お よびパー トナー間 の相互依存度 は非常 に強い と考 え られる (図5参 照)。
新製品の研究開発お よび国際規格 な どで、積極 的に企業間の提携関係 を形成 しうる企業は、企業 の能力条件か らして、導入企業、 または新 しい製
図4 標準化製品におけるPLCと提携の特徴
:導入企業 :後発参入企業Ⅰ ・:後発参入企業Ⅱ
‑‑+ :国際的技術移転 < > :調達 ・供給、業務効率化 中心の提携
神奈川大学審査学位論文の要約 「企業間の国際提携とキャッチアップ企業の競争戦略
」
9 図5末標準化製品 にお けるPLCと提携 の特徴品の開発期 、 も しくは導入期 に導入企業 に引 き継 いで参 入す る後発 参 入企業 Ⅰの一部 に限 られ る。 よって、技術 、マーケテ イングな どで差別的優位 性 の ない後発参入企業 Ⅱは、提携参加 か ら排 除 さ れ る可能性 が非常 に高 い。 この こ とは、資源 の相 互補完、知識 の プールに よる競争優位 の創造 、 リ スク分散 とい った提携 目的 に照 らし、後発参入企 業 Ⅱはこれ らに相応 しい経営資源 を持 ってい ない だけではな く、提携 パ ー トナー と しての能力条件 に大 きな限界が あるか らである。
この ように、未標準化製品での有力企業の提携 は、キ ャ ッチア ップ企業 に一層高 い参入 ・移動障 壁 を構築 し、有力企業がその市場影響力 を維持 ・ 強化す るのに、提携が有効 な手段 と して働 く可能 性が高 いのである。 ここに、今 日の提携が企業 間 競争 関係 に及 ぼす イ ンパ ク トの大 きさが ある と言 えよう。
5 提携 の潜在的 インパ ク トとその要因
第1に、「提携参加 か らの排 除可能性」 であ る。
提携参加 か らの排 除可能性 とは、個 々の企業 の持 つ経営資源が非対称 的 に分布 してい るため、経営 資源 の蓄積 が脆 弱 なキ ャ ッチ ア ップ企 業 の多 く は、提携参加 か ら排 除 されやす い性質 をい う。
第2は、 「資 源補 完 の非対称 性」 であ る。戦 略 提携 のパ ー トナー と しての能力条件 は、経営資源 お よび戦略的能力 において比較優位 があ り、パ ー トナー と同等 に交換 で きる経営資源 も しくは戦略 的能力 を持つ ことである。 この戦略的能力の較差 に よ り、「相対 的支配力」、 または 「交 渉力較差」 も生 じる。
第3に、 「イ ノベ ー シ ョン機 会 の独 占」 も、有 力
:導入企業
:後発参入企業 (Ⅰ) :後発参入企業 (Ⅱ)
< > :パ ー トナー間の強 い相互依存度 十 一+ :パ ー トナー間の弱 い相互依存度
企業が参入障壁 を構築 し、 または市場影響力 を維 持 ・強化す る有力 な要因である。末標準化製品の 場合 、技術革新 によるイノベー シ ョンの機会が高 いが、技術力 、組織力、資本力 な どで優位 を保持 している有力企業同士が、開発段 階で協調 的な行 為 を行 うこ とに よらて、 「リー ダー シ ップの グル ープ化」、「市場 の先取 り」 お よび、「規模 の経済」
をフルに利用す ることが一層容易を なる。
第4章 産業内部 における提携 の構造 と特徴 一電気機械産業 における 日本企業の実証
分析 を中心 に‑
1 実証 分析の 目的
本章の 目的は∴態 業 ・製品の特徴 お よび企業 の 経営資源 と連動 して、産業内部 における提携 の構 造 と特徴 を明 らかに し、 こう した提携 の構造 的特 質が企業 間の競争関係 に及ぼす潜在的 イ ンパ ク ト に関 して、示唆す る ところを抽 出す ることにある。
産業内部 における提携構造 は、提携 が企業 間の 競争 関係 に及 ぼす イ ンパ ク トを分析す るにあたっ て、非常 に重要 な指針 となる。 なぜ な らば、今 日 の提携が対等 で平等 な取引関係 とはい え、産業 ・ 製品の特性 に よっては、一部 の有力企業 しか提携
に参加 で きないのが現状 である。 したが って、提 携参加 か らキ ャッチ ア ップ企業が排 除 され る可能 性が高い産業 ・製品の場合、提携 は有力企業 の参 入 ・移動 障壁 の構築 を手助 け し、かつ有力企業が その市場影響力 を維持 ・強化す るのに も非常 に有 効 なツール として働 くと言 える。
2 分析方法
分析 の対象 としては電気機械産業 を取 り上 げて
10 研 究年報 第7号
いる。電気機械産業 は、その技術が国際的に完全 に標準化 された製品か ら、今 日のIT (Ⅰnformation Technology)産業 の発 展 を主導 してい る半導体
(semiconductor)や コンピュー タな どの先端製品 まで、その技術 的特性が幅広 く混在す る産業であ る。 よって、企業の経営資源お よび製品特性 と関 連 して、産業内部 における提携構造 を分析す るに あたって、電気機械産業 は極 めて有効 な分析の対 象である と言 える。
製品特性 と企業の経営資源 をもとに提携参加企 業 を類型化す る方法 としては、分析 の便宜上先進 国企業 と途上国企業 に二分類す る。先進国企業 と 途上国企業 を対比 して見 る場合、両者 は明確 に異 なる経営資源 を持 ち、 また比較優位 にある経営資 源 も当然異 なるため、提携内容や提携構造 も明確
に異 なって くる と考 え られる。
個 々のデー タは、竹 田志郎氏が新 聞記事 を出所 と した 「E7本企 業 の4業種 にみ る国際提携 一 覧 (1990‑ 1998年 まで
)
」 を利用 した。資料集計 の 方法 は、経営活動 の流 れ (価値連鎖活動 の流 れ) に沿 って、6つの提携 内容 (規格協定、技術提携、調達提携 、生産提携 、販売提携 、その他) に再分 類 した。資源の相互の流れを明確 に表わすために、
ヨコ軸 に日本企業 と提携 内容 を、 タテ軸 に提携先 としての外 国企業 (先進国企業 と途上国企業 に大 きく二分 した) と同様 に提携内容 を表示 し、かつ
資源の流 れの方向を正確 に表示す るために提携内 容 を、例 えば、技術提携の場合、技術供与、技術 導 入、共 同開発 な どに再分類 した (表2参 照)。
そ して、企業 間の提携 関係 を製品の技術 お よび市 場特性 と連動 して分析す るため に、『工業統計調 査用産業分類 』 に基づ き、産業細分類 (4ケ タ)
を行 なった。
3 実証分析の結果
第 1は、全体 的 に日本企業 と先進国企業 との提 携 が圧倒 的 に高 い比重 を占めてい る中 (全体 の 81%が 日本企業 と先進国企業 との提携)、技術提 携 お よび規格協 定 を見 る と、産業 内部 にお け る
「二重 的提携構造」が一層 明確 に現 れ、第3章 の 仮説 を実証的に検証 している。つ ま り、新技術 ・ 新市場 に関す る技術提携 は、 日欧米企業間で行わ れる一方、既存技術 ・既存市場 に関す る技術提携 は、 日本企業 と途上国企業 間に多 く行 われる とい った構造が形成 されている。 この ように、産業内 部 における二重的提携構造 とも言 える提携内容や 技術水準の地域的不均衡が、今 日の企業 間の提携
関係 に構造的に形成 されているのである。
第2に、提携 内容 を産業特性 お よび提携先 の地 域的分布 との関連性か ら見 る と、非常 に対照的な 分布 を見せている。先端産業、 または技術革新の 活発 な産業では、産業別 に若干の相違 はある もの の、 日欧米企業間の提携が規格協定か ら技術 、生
図6技術 および市場の特性 と提携の二重的構造
既存市場 新市場
神奈川大学審査学位論文の要約 「企業間の国際提携 とキャッチアップ企業の競争戦略
」
11産、販売 まで、仝提携 内容 にわたって絶対多数 を 占めてい るの に対 して、途上 国企業 との提 携 は、
極僅 かな比重 しか占めていない。 しか し、標準化 産業 ・製品分野 では、途上 国企業 まで を含めた国 際分業体制が非常 に発達 している。
第3に、 日本企業 は個 々の産業 にお ける技術 ・ 市場 の特徴 と、提携企業 の経営資源 を有機的 に結 合 し、 グローバ ル ・ロジステ ィックス を形成 して いる。 日本企業 は、それぞれの経営資源 において 比較優位 にある複数 のパー トナー と、研 究 開発 か ら生産、販売 に至 る一連 の価値連鎖活動 を国際的 に分担す ることによ り、国際的 に事業活動 の最適 配置 を行 ってい る。
第 4に、国際提携 関係 が少数 の寡 占企業 に よ り 主導 されている。本研 究では、産業相分類上集積 回路 と電子計算機 において、主要企業 の国際提携 関与度 を確認す るため に、 日本側 の主要企業9社 と外 国側 の主要企業16社 の提携 関係 を分析 した。
その結果、全体 の77%が主要 企業 に よる もので、
MNCsが何 らかの形 で、 ほ とん どの国際提携 に関 与 していることが明 らか になった。 また、主要企 業の提携 内容 における大 きな特徴 は、主要企業が ほ とん どの規格協 定 にかかわってお り、一層増加 す る傾 向 を見せ てい る とい うことである (集積 回 路 お よび電子計 算機 にお いて総38件 の規格協 定 の内、主要企業が35件 も関与 している)。
4 企業間競争関係 への インプ リケー シ ョン 第 1は、産業 内部 にお ける二重 的提携構造 が国 際競争 に及ぼす影響 である。 この二重的提携構造 か構造 的 に定着す る と、新製 品 ・製造技術 や新市
場 開拓能力 な どが、少数のMNCsに集 中 される可 能性 は一層高 くなる。
第2は、提携 を通 じてMNCsは、その悪意性 を増 加 させ る可能性 も一層高 い ことであ る。前述 した よ う に、 集 積 回路 お よび電 子 計 算 機 に お け る MNCsの提携 関与率が、全体提携の77%に も及ん でいる。MNCsの提携が これほ ど多 く行 われ る と、
技術 開発 、市場 開拓 な どにおいて寡 占間の相互協 力 ・相互依存 の関係が形成 され、寡 占体制の維持、
または寡 占企業 の市場影響力の維持 ・拡大が容易 となる。
第3に、標準化産業 ・製 品 における途上 国企業 の高 い提携参加比重であ る。 これは、標準化製品 ほ ど、途 上 国企 業 の提 携 参 加 比 重 が 高 くな り、
MNCsの グ ローバ ル ・ロジス テ ィ ックス にお い て、途上 国企業が非常 に重要 な意味 を持 ってい る こ とを表 す もの であ る。 したが って、標準 化 産 業 ・製品 において、途上 国のキ ャッチ ア ップ企業 が提携参加 か ら排 除 され る可能性 は小 さ く、かつ 提携交渉力 も相対的 に高 い と言 えよう。 また、業 界の有力企業が提携 を通 じて参入 ・移動障壁 を構 築す る とは言 い難 く、提携 を通 じてその市場影響 力 を維持 ・強化す る可能性 も相対 的 に小 さい と考 え られ る。
第4に、市場 の先取 りお よび イノベ ー シ ョン機 会 の独 占で あ る。先 端 産業 、 また は末標 準 化 産 業 ・製品の場合、企業 間提携が有力企業専有 の競 争 ツール とな り、キ ャッチ ア ップ企業 には非常 に 不利 な競争 関係が形成 される恐 れがある。
12 研 究年報 第7号
表2電気機械 における提携集計表 (合弁 ・資本参加および契約設定)
日
本海外 技術提携 調達提携 生産提携 販売提携 規格協 定 その他 合 計
技術 手支術 共同 部品 生産 共同 生産 販売 販売
供与 導入 開発 調達 委託 L.生産:,i. 受託 委託 受託
技
柿堤樵 技術供与 先進国 23 73 96
途上圏 8 4 12
技術
導入 先進国途上Ei] 4658 4658
共同
開発 先進国 337 337
途上圏 25 ;≡≡=:=孝二}::=戒挺呈≡.≡.;芋; ≡;=振絞三.叡韻号.25■;fj‑!=!
途ヰ国
生産
委託 先進国 9 100 109
途上圏
と講評噸宗主Aik;̲≡二三三:L ;;≡=溝≦;莞=翁 1 12 妻≡港沖 敬三 ・≡三一f:i;i‑義凄連字蓬;13≡;三
生 産 揺
拷 共同生産 鵠噂f先進国igi=賓≡:≡; 玉柏ち夢を三.避萎≡≡ ・望 ≡準渋嘩 66 ≡こi.;=芦≡‑I,:=三:.璃;新二 66
途上圏 44 40
生産
受託 先進国途上Ei) 1 7557 ‑ 7657
隻:F: ‑=≡=(.=.:. I:‑::/tqンL:‑:‑:‑:‑〉こ::::≒:=二::二;.;.‑:fJ):
販 売堤
樵 販売委託 先進国 26 96 122
途上因 2 4 6
販売受託 先進Ei] 27 27
途上圏 13 13
その他 先進国途上国 405 405
■妄≡̲≡≡.1'■:.≡?:欝■;港:=
合 言十(%) 途上圏先進Ei] 66(69(27.6.9) 73(5) 4(7.1.1)337(7) 25(32.10.6)4) 3(0.3)0 58(84(24.8.21)) 43(66(17.6.3)9) 100(12(5.9.6) 53(0) 10(4,5.2)1) 96(4(9.1.2) 117) 3(13(150..4)9) 40(5(3.2.8) 1034(1) 240(81.18.2)8)
提携件数 2着間提携 対先進Eg企業 :874 対途上国企業 :202
3つ以上の企業間提携 (日本企業 と先進国企業間) :132 3つ以上の企業間提携 (日本企業 と途上国企業間) :21
3以上の企業間提携 (日本 ・先進国 ・途上Eil、以下 「三角提携」 とする) :17 対EB際機 関 :ll
注 :実際提携件数 は1257件 (三角提携 は,t先進国 と途上国にそれそれの提携件数 として記入 したため、
表 の全体提携件数が17回多い、1274件 である)
注 : () はそれぞれの地域 に占める当該提携の比重で、合計における比重 は全体 に占める当該地域の比重である。
第5章 企業間競争関係 における提携のインパクト
‑事例研究Ⅰ 提携交渉力 の較差 と市場 影響力の碓持 ・強化‑
1 事例研究の 目的
事例研 究 の狙 いは次 の2つである。 その1つ は 企業 間提携 の事例 を通 して、有力企業 の提携が、
当該産業 ・製品において 「参入障壁」 お よび 「移 動障壁」 として働 く動態的プロセス を明 らか にす ること、 もう1つ は、提携が有力企業 の市場影響 力の維持 ・強化 に非常 に有効 に働 く場合、その背 後 にある要因 を抽出す ることである。
第3章では、提携が有力企業 に有利 に働 く場合、
その背後 にあ る要因 として、「提携参加か らの排 除可能性」、「提携交渉力の較差」、「資源補完の非 対称性」、「リーダーシップの グループ化」、「イノ ベー シ ョン機会 の独 占」 お よび 「市場 の先取 り」 などを取 り上 げた。 これ らの要因の中で も、特 に 本質的な要因は、経営資源の非対称的分布 による
「提携参加か らの排除可能性」、 または 「提携交渉 力の較差」お よび、「イノベーシ ョン機会の独 占」
である と言 える。 しか し、「提携参加 か らの排 除 可能性」 も、本質的には 「提携交渉力」 にかかわ
神奈川大学審査学位論文の要約 「企業間の国際提携とキャッチアップ企業の競争戦略
」
13る問題 であるため、事例研究 では、「提携交渉力 の較差」 お よび、 「イノベ ー シ ョン機 会の独 占
」
とい う2つの ファクターを軸 に置 き、提携が有力 企業の市場影響力の維持 ・強化 につなが る可能性
を検証 してい くことにす る。
2 DVD規格続一 にお ける有 力企業間の提携 と市 場影響力の維持 ・強化
(1)分析 の主眼 目
DVDの規格統一 に関す る分析 の主眼 目は、提 携が有力企業の政治的妥協 と交渉の場 とな りかね な く、市場影響力や技術 的優位性のない企業 は提 携交渉力の較差 によ り、提携参加か ら排除 される か、 または規格統一の交渉 プロセスで微 々たる影 響力 しか行使 で きない点 を検証す ることに置かれ ている。 そ して、提携 の誘 因 と結果が第2章で示 した ように、必ず しも経済的効率性 (efficiency) と合致す る とは限 らないことや、有力企業がその 市場影響力 を維持す るにあたって、提携が有力な ツール として働 くことを検証す る。
(2)DVDの規格統一
今 日、業界標準 の多 くは異 なる規格 間の市場競 争 を通 さない まま、まず、新製品の市場導入の前段 階で単一規格 を形成 し、そ こで予 め決 め られた規 格内で市場競争が行 なわるケースが多 くなってい る。こう した規格協 定 は、ほ とん どの場合、業界 の 有力企業が主導 してお り、そ こで確定 された業界 標準 はグローバル ・ス タンダー ドとして機能す る 可能性が高い。また、一旦業界標準 を獲得 した場合、
企業間競争 における優位性 は絶対的 となる。
DVD規格 の場合 、そ もそ もソニーのMMCDと 東芝 のSDが業界標準 の獲得 をめ ぐって争 ってい た。この過程 において次 の2点が大 き く浮 き彫 り にされる。その 1つは、ソニーが松下 を自社 の規格 に賛 同 させ るために、DVD特許料の20%を松下 に 渡す とい う大胆 な条件 まで提示 していたことであ る。MMCDがcDの延長線 で作 られた ものである 限 り、DVDの特許料が松下 に入 る とい う根拠 は極 めて希薄である。この ような背景下で、松下 は「ソ ニー方式のDVDの フィーを、松下 ・ソニー・フィリ ップスの3社 で三等分す るな ら、MMCDの規格 に 賛同す る」とい う条件 を出 した とい う。
単 に自社 の規格‑ の賛 同 を得 るため に、ソニー が受け取 るべ き特許料 の一部 を松下 に提供す ると いった取 り決めは、実質的には共謀(conspiracy)そ の ものであ り、ここには、技術革新や経済的効率性
の向上への貢献 とい う論理 は もはや通用 しない。
もう1つは、 ソニー と東芝間に行 われた統一規 格 に関す る折衝 である。その当時の状況か ら見て、
東芝 の規格がDVDの統一規格 として生 き残 る可 能性 は極 めて高 かった。 そ こで、 ソニーはcD特 許 の 一 部 を組 み 込 む形 で 東 芝 と妥 協 を行 い 、 DVDにまでその影響力 を持 ち込 むことがで きた。
これ こそ、規格協定 (提携)が、有力企業の市場 影響力の碓持 ・強化 の手段 として用い られやすい ことを端的 に示 した もの と言 える。 さらに、松下 電器の囲い込みで も考察 したように、次世代 の技 術 ・製品において、有力企業がその市場影響力 を 維持 ・強化す るために、企業 間の規格協定の場 を いかに有効 に活用 しているのか、十分 にうかが う ことがで きる。
(3)有力企業間の規格協定 と下位企業のジ レンマ
①下位企業の排除 と提携交渉力の較差
DVDの規格統一 において、 日欧米 の有力企業 が多大 な影響 を直接 ・間接的に行使 していたのに 対 して、途上国企業 として参加 した ものは、ほぼ 皆無であった。つ ま り、ほ とん どの規格協定 にお いて、下位企業 はその経営資源の限界か ら、規格 協定の交渉過程 か ら排除 されてお り、参加で きた として も、その交渉力は微 々たるものに留 まって いる。 こう した事実 はDVDだけに留 ま らず、 ほ とん どの新技術 ・新製品市場 において も同様 に認 め られる。
②市場の先取 り
有力企業同士の規格協定は、有力企業 による市 場の先取 り、主要技術特許の保有 を可能 とす るた め、規格協定か ら排除 された企業は市場参加への タイ ミング他、 この分野での出番 を大幅 に制約 さ れ る こ とになる。 この典型 的 な例 の1つがDVD におけるシャープの訴訟問題である。
シャープの主張 を概略する と、メ ンバー企業の 松下電器がDVDを発売す る96年11月時点前2ケ 月を切 った時期 まで、規格書の開示がなされなか ったため、非 メ ンバ ー企業が同期 間にDVDを発 売す るのは事実上不可能であ り、開発 メンバー企 業が非 メンバー企業 に対 して、競争上圧倒 的に有 利 になる とい うことであ った。発売時点前2ケ月 を切 るような開示では、開発 メンバ ー企業 に対す る遅れは致命的 となることはい うまで もない。
実際 に、DVD本体 にお ける市場 シェア (日本 国内)は、東芝のSDを最初か ら積極 的に支持 し、
14 研究年報 第7号
販売 力 も卓 越 してい たパ イオニ ア (38%)が圧 倒 的 な優 位 を占め 、次 に松 下 (20%)、 ソニ ー (17%)、東 芝 (15%) の順 となってい る。 そ し て、 シ ャー プは8%と大 き く遅 れ を とって い る。
液晶事業 で世界最高の競争力 を もってお り、エ レ ク トロニ ックス事業全般 で なお強み を持 っている シャープで さえ、規格協 定 か ら排 除 された ことに よ り、参入の タイ ミングや市場競争 で大 きな遅 れ をとることになった。 この ことか ら、他 の産業 ・ 製品分野 において も、規格協定か ら排 除 されやす い途上国のキ ャッチア ップ企業が直面す る競 争上 の不利 さは、再度 い うまで もないだろ う。
3 ダイム ラー ・クライス ラー と三菱 自工 の資本 提携 と提携交渉 力
(1)分析 の主眼 目
ダイムラー と三菱 との資本提携 においては、競 争力 の脆弱 な企業が提携交渉過程で不利 な立場 に 置 かれ、提携交渉力が減退す ることによ り、有力 企業の グローバ ル戦略 に組み込 まれ る可能性 を検 証す る。つ ま り、提携交渉力の脆弱 な中下位企業 は、有力企業 の国際的提携 ネ ッ トワー クにおいて サブ システム と して組み込 まれ、場合 によっては、
提携がM &Aとともに業界再編 、寡 占的統合の手 段 に もなる とい う点 を検証す る。
(2)ダイムラー と三菱 との提携交渉
世界の 自動車産業 は、世界的大手企業 で さえ単 独 では生 き残 れない とい う懸念が強 まる中、規模 拡大 、市場 ・製品 ライ ンの補完 、 または経営効率 をEl指 したM
&
A&
A (alliance)が多 く行 われて いる。業界全体が 「合従連合」 の波 に巻 き込 まれ ている中で、 ダイム ラー と三菱 は資本提携 関係 に 踏み切 るようになった。欠陥車 の リコール問題 な どで、長 い間経営不振 に陥 っていた三菱 は、 日産 自動車が フラ ンスのル ノー と資本提携 を構築す ることと同様 に、 ダイム ラーか ら、2000年3月34%の資本参加 を受 け入れ るこ とになったのである。 ところが、 ダイム ラー の影 響 力 が 強 くなる こ とをお そ れ た三菱 の首 脳 は、ボルボ とも資本提携 を形成 した。ボルボ との 資本提携 の背景 には、ボルボ とダイムラーの微妙 な関係 を利用 し、経営 の主導権 を確保 しようとす る狙 いが あ った こ とはい うまで もない。 しか し、
三菱 の思惑 とは裏腹 に、 ダイムラーはあ らゆる機 会 を通 じて、三菱側 にボルボ との提携解消 を迫 り、
結 局 、三菱 とボルボの提携 は解消 された。そ して、
ダイム ラーが三菱 に対 す るボルボの出資分3.3%
を買い取 り、三菱への出資率 を37.3%‑引 き上 げ た形での決着 となった。
(3)提携交渉力 の較差 と戦略的意図の貫徹 ダイム ラー と三菱 との提携 関係 の構 築 お よび、
その進展のプロセ スか ら、以下の重要 な点 を指摘 す る こ とがで きる。第 1は、独立企業 間の対等提 携 とはい え、そ こには厳格 と した交渉力の較差が 存在す る とい う点であ る。
第2は、提携 パ ー トナー間に存在す る交 渉力 の 均衡が保 たれ ない と、一方が他方 に従属的な立場 で追従せ ざるをえない状況が生 じやすい とい うこ とである。 この ことは、弱者的 な立場 に置 かれて いた三菱が経営主導権 を確保す るため に、 ライバ ル関係 にあるボルボ との提携 を一方で維持す るこ とに よ り、.ダイムラー を牽制 しようと したが、結 局、 ダイムラーの圧力 に屈服 した形で、ボルボ と の提携 関係 を解消 したことで も表 れている。
第3は、一方 の提携交渉力が減退す るこ とに よ り、他方の意図が一方 の意志決定過程 に深 く関与 す ることがで きる とい う点である。つ ま り、有力 企業 は提携 関係 におけ る交 渉力 の較差 を利用 し、
自社の意図 を中小企業 に貫 くことがで きるのであ る。 この ことは、有力企業が提携 を自社の グロー バル戦略 に組み込 むことを意味 し、提携がM &A と同様 に市場影響力 を増加 させ うる寡 占的統合の ツール と して働 くことを表す ものであ る。
提携が参入 ・移動障壁 を低下 させ、企業 間の競 争 を促進す る とい う見解 も多い、 しか し、 これ ら の議論 は、あ くまで も提携交渉力や提携参加の排 除可能性 を見落 とした議論 にす ぎない ことが明 ら かである と言 える。結局、キ ャッチア ップ企業が 有力企業 との提携 において、提携交渉力の較差 を 最大 限 に縮小 し、 自社独 自の存続領域 を確保す る ため には、 コア・コンピタンス (corecompetence) や競 争優 位 にあ る経 営 資 源 を蓄積 す る こ とに よ
り、 自らの提携交渉力 を増加 させ ることが重要 な 課題 となる と言 えよう。
第6章 企業間競争関係 における提携 のインパ クト ー事例研究Ⅱ イノベー シ ョン機 会の独
占 と競争の排除‑
1 分析の主眼 目
本章では、提携が 「イノベ ー シ ョン機会」 を独 占す る可能性 を検証す る。事例 としては、バ イオ