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国際戦略提携 の概念 とその実態 に関す る理論 的考察

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国際戦略提携 の概念 とその実態 に関す る理論 的考察

43

国際戦略提携の概念と その実態 に関する理論的考察

一 従来提携 との対比 を中′いこ‑

神奈川大学大学院博士後期課程

金 字 烈

研究目的 と研究方法

提携の概念 とその形態 1 提携のベネフィッ トと特徴 2 提携の概念に関する諸説

3 独立企業間の中間的取引 としての提携 4 提携の諸形態 とそれをめぐる議論

Ⅲ 戦略提携の概念 と実態

1 戦略提携の概念 をめぐる諸説 2 従来提携 との対比 からのアプローチ 3 従来提携 との対比における問題点 4 戦略提携の実態 とその概念づけ

国際競争の構造的変化 とMNCsの戦略提携 1 戦略提携の生成要因

2 戦略提携 とMNCsの将来

結論

(2)

44 研究年報 第5号

Ⅰ 研 究 目的 と研 究方法

最近、新 聞、雑誌、 ビジネス ・ニュースな どで戦略提携 とい う言葉 を類繁 に耳 にする ことがで きる。 また、戦略提携 に関す る学際的研究 も着 々 と進 んでお り、 日本 において も、それに関す る多 くの研究成果が見 られるようになった。 この意味合いか ら、戦略提 携 は今 日の企業 間競争 関係 を象徴す る、代表的なキー ワー ドの1つであることは確 かで ある。

周知 の通 り、提携 は決 して新 しい概念で もない し、 また経営一般で使 われるず っと以 前か ら、政治や外交 な どの分野で よ く使 われていた とい う側面 もある。 しか しなぜ、 こ こにきて 「戦略提携」 と呼ばれるほ ど、提携が新 しく注 目されているのか、 とい う点 に 疑問 を持 たざるを得 ない。 これは、競争業者が提携 を結ぶので、それに追従す る形で他 の企業 も提携 関係 を形成す る、 とい った一時的流行 の性格 か もしれない し、それ とも、

企業間競争関係 の構造的変化が もた らした、企業の競争戦略の質的な変化か もしれない。

もう1つの疑問は、 なぜ従来か ら存在 していた、学術用語 としての 「提携」 の代 わ り に、「戦略提携」 とい う新 しい造語 を使 うようになったのか とい う点である。す なわち、

従来か ら存在 していた 「提携」 に戦略 を付 け加 えるほ ど、今 日の提携が高 い戦略的性格 をもっているのか、そ して従来提携 には、戦略的性格が なかったのか、 とい う素朴 な疑 問が生 じて くるわけである。

しか し、上の指摘 は決 して新 しい もので もない。 また、既存 の多 くの研究 もこれ らの 指摘の解明にそれな りの成果 を出 してはいるが、提携 と戦略提携 を同 じ次元で論 じる者 もあれば、提携 と戦略提携 を対比 して論 じる者 もある。 しか も、その概念や形態 をめ ぐ って数多 くの異論があ り、未だに明確 な解答 を見 ることはで きない。

一方、企業 間の提携 は、全 ての価値連鎖 (valuechain)活動 にわたって行 われている が、いかなる方法、要す るに、 どの ような形態で提携 を実行するのか に関 して、それが 提携か どうか について多様 な見解があ り、提携の概念 を複雑 にす る ところである。す な わち、企業 間の取引関係 や投資形態が多様化、かつ複雑化 している中、提携 として考慮 すべ き対象 も、固定的ではな く、変化す る性格 をもってお り、提携 の範囲 (提携 として 分析の対象 となる取引関係 お よび投資形態) を確定す ることが難 しい とい う点である。

特 に、戦略提携の場合、突然明確 なコンセ ンプ トを持 って国際経営 に登場 したわけで はな く、従来提携の延長線上で用 い られたため、両者 を明確 に区別することは もちろん、

戦略提携 に内在す る固有 の概念づけ も難 しくしている。 しか も提携 自体 に関す る概念づ け も、未 だに不明確 な面が多いことが、戦略提携の概念づけをさらに困難 に しているの である。

本研 究 は、戦略提携 をめ ぐるこれ らの問題 点 に答 えるにあた って、1つの手がか り、

あ るいは基礎 的なフレームワークを提示す ることに主 な目的がある。具体 的には、第1 に、提携 (広範 な意味 での提携)の範囲、 もしくは提携の範時 に属 しうる取引関係 や投

(3)

「国際戟略提携 の概念 とその実態 に関す る理論 的考察

45

資形態 を識別す るための、 フレーム ワークの設定 を試見 る。第2に、戟略提携 の概念 と 特徴 をめ ぐる諸説 を概観 し、その戦略性 と実態 を従来提携 との比較 に基づいて把握する。

第3に、戦略提携が盛 んに取 り上 げ られている今 日の国際経営 において、戦略提携 なる ものが、一時的流行 なのか、それ とも国際経営環境 の変化 に起 因す る構造的問題 なのか を考察す る。そ して、今後、国際経営 における戦略提携の活用可能性 を、企業属性 (特 にMNCsl)の変化 と、国際競争関係 の構造的変化 に基づいて考察す ることである0

本研究では、戦略提携 の分析 にあたって、従来提携 との関連性 か らの考察 を進めてい るが、それは次 の理 由か らである。戦略提携が従来提携 の延長線上で用 い られたこと、

その形態 において従来提携 との相違 を見 ることが ほ とん どで きないこと、実際の企業経 営か らみて、両者 を正確 に使 い分 けている とは言い難 く、両者の級密 な区別が企業経営 に実利 もないこと、 したが って、従来提携 との関連性か ら、戦略提携 を考察す るのが有 効であることなどである。

また、提携の形態 を把握するにあたって、概念か ら提携の形態 を抽出す るのではな く、

提携の もた らすベネフィッ トとコス トを、他 の取引関係 、投資形態 と比較 し、その上で 先行研究の概念 と照 らし合 わせ ることにより、提携 として分析 の対象 を確定 しようとす る。す なわち、提携が もた らすベ ネフィッ トを考察 し、 これ らのベ ネフィッ トを可能 と する取引関係 お よび投資形態の条件 を抽 出 し、提携 の範囲 を識別す るため に、1つの フ レームワークを提示することである。

提携の概念 とその形態 1 提携 のベ ネ フ ィッ トと特徴

ポー ター とフラーは、提携が もた らす コス トとベ ネフィッ トに注 目し、他 の取引関係 および投資形態 (特 に、市場取引、内部 開発、合併) と比較 した場合、浮 き彫 りにされ る提携のベネフィッ トを述べている2。以下でそれを整理 してみ よう0

1)参入 ・撤退 コス トが低 い。提携 は内部開発 や合併 よ り、低 コス トで参入す ることが で きるのみな らず、その事業か ら撤退す る際 に も、 コス トを低 く押 さえることがで

きるが、それは、提携の場合パ ー トナー同士が コス トを共有す るか らである。

2) リス ク ・ヘ ッジングが可能である。提携 は 目的 を共有す るパ ー トナー同士が、協力 1 MNCs(MultinationalCorporations)の定義と、その日本語訳に相当する「多国籍企業」という呼び名に関し て多 くの議論があるため、本稿 では、複数の国で事業活動 を展 開する企業 を総称 し、符号 的な意味 として MNCsという用語を用いる。詳細 は、竹 田志郎 r国際戟略提携j同文館、1992年、序章、第1章、および衣笠洋 輔 r日本企業の国際化戦略』日本経済新聞社、1979、16‑27ページなどを参照されたい。

2 M.E.PorterandM.B.Fuller,"CoalitionsandGlobalStrategy,"M.E.Porter(ed.),CompetitionL'n GLobaLIhdusEries,HarvardBusinessSchoolPress,1986,pp.322‑327.

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46 研究年報 5

しあ うことであるが、それは上記 の コス トを低 く押 さえることか らくる リス クの低 減のみな らず、事業の失敗 などによる リス クも、パー トナーが共有す るか らである。

3)柔軟性 に優 れている。提携 は、パー トナー同士が 目的、 リス ク、 コス トな どを共有 す るため、予測の難 しい今 日の企業経営 における不確実性 を小 さ くす ることがで き る。 また、ある事業への投資 において も、回収不能、 もしくは取 り消 しので きない 投資 を最小 限に押 さえることがで きる。

4) 独立性 を維持す ることがで きる。提携 はパー トナー同士の独立性 を犠牲 にす ること が ないため、所有権 に対す る現地国の規制 などを回避することがで きる。

5)実行能力 に優 れている。提携 はパ ー トナー同士が 目的 を共有 しているため、単発 的 な市場取引に比べ、その実行能力が優れている。

一方、 ここで指摘 して置かねばならないのは、ポーター らの主張が、前 もって提携 の 基準 を設定 し、そこか ら提携のベネフィッ トを抽 出 している点である。 したが って、上 記の性質は、同氏 らが提携 として見 な している、取引関係 や投資形態の共通的な性質の ものであ り、すべ ての論者 によ り一致 されている提携の性質ではない、 とい う問題点が ある。 しか し、同氏 らの指摘 は、提携のベ ネフィッ トに関 して一般的 に認め られる見解 であるため、提携 の範 囲を設定す るのに、同氏 らの見解 を引用 して も何 の差 し支 えが な い と言 える。以下では、 これ らのベネフィッ トをもた らす要因について考察す ることに する。

第1に、提携 のベネフィッ トをもた らすためには、独立性が前提 とされる。す なわち、

形式 的な独立性 だけでな く、実質的な独立性が求め られる とい うことである。 コス トや リス クの削減 は、独立 している企業が、共 同で これ らの コス トとリス クを共有す るか ら である。 したが って、所有関係 において支配従属 関係 にある組識 間では、 これ らの提携 のベネフィッ トを享受す ることに限界がある。

第2に、独立性が前提 となっていて も、それが単 なる市場取引関係 にある場合、

実性 に柔軟 に対応す ることがで きな く、 また実行力 にも限界がある。 したが って、

不単

る市場取引以上 の関係が求め られるが、完全 内部取引 までには行か ないことである。

確なな

ぜ な らば、内部取引の場合、提携のベネフィッ トであるコス トや リス クの削減 を期待で きないだけではな く、参入 ・撤退 コス トにおいて も、内部開発 に等 しいか らである。

第3に、柔軟性 である。市場取引では、将来不確実性 の全 てを盛 り込 んで、予 め取引 や契約内容 に包摂す ることが難 しい。 しか し提携 は、パ ー トナー同士が リス クを共有す ることによ り、将来の不確実性 に対応す ることがで きる。 しか も、内部 開発や合併 など に比べ、その事業‑の投資や関わ りを途 中で、低 コス トで解消す ることがで きるのみな らず、経営資源の柔軟 な転用がで きるのである。

以上の ように、取引や投資 における 「独立性

」 ・

「柔軟性

」 ・

「市場取引以上の関係」 が、提携 のベネフィッ トをもた らす 中核 的要素であ り、提携企業 間における取引の特徴

(5)

「国際戦略提携の概念とその実態に関する理論的考察

47 で もある。 したが って、 これ らの性 質 を もつ取 引関係 や投資形態 を、広範 な意味 での

「提携」 として見 ることがで きる。

2 提携 の概念 に関 す る諸説

竹田氏 は、提携 を、独立企業 間の共同事業 として規定 している。その内容 は、企業の 業種、規模 、国籍 な どに関係 な く、企業活動 のあ らゆる局面 で行 われる とい う3。 同氏 による概念か ら2つのキー ワー ドを検 出す ることがで きるが、それは 「独立性」 と 「協 調」である。つ ま り、独立性 を保 ちなが ら、協力関係 を形成す る企業間の関係が、提携

として概念づけ られている。

ポー ター とフラーによれば、提携 (Coalition)とは、正常 な市場取引関係 以上 を求め るが、合併 までは行 きた くない企業 間で、事業の色 々な面での活動 を結 びつける正式の 長期協定、長期 間にわたる友好 関係 であ り、それ には合弁事業、 ライセ ンシ ング契約、

長期供給協定、マーケテ イング契約、その他様 々な約束が含 まれるとい う4。

同氏 らの概念づけ も竹 田氏 とほ とん ど変 わ らないが、提携の範 囲 を正式の長期契約 に限 定 している点、そ して長期 間の協力 関係 を強調 している点 に、その相違が見 られる。す なわち、ポー ター らは、正式の契約 を結 ばない長期取引関係 (例 えば、 日本 の下請制 に よく見 られる取引関係) を提携 の範時 に入れていない。 しか し、 この点 に関 しては多様 な議論があ り、詳細 は後述する。

モウリイは、提携 を合弁企業 は もとよ り、資本参加、下請契約 関係 を含 む 「国際共同 事業体 (intemationalcollaborativeventure)」 としている。そ してこの共 同事業体 を、アー ムズ ・レングス (arm‑slength)市場取引 によらず、資本 ・技術 ・その他 の資産 を有する パー トナー間の実際的な協力関係 として規定 している5。 同氏 は、特 にアームズ ・レン グス市場取引 によらない取引関係 に注 目する。要す るに、提携企業 間の取引関係 は、単 なる市場取引ではな く、程度の差 はあるに しろ、窓意性が介在す る取引 なのである。

バ ダラッコによれば、提携 は、独立 した組織が経営権限 を共有 し、社会的連携 を形成 し、かつ共同所有 を認 める組織 的協定であ り、運営政策であるが、そ こには、 よ りルー ズで よ りオープンな契約的協定が、 アームズ ・レングス的な取引 に代替す ることになる とい う6。 同氏 は、独立性 、柔軟性、そ して市場取 引以上 の契約 関係 に、提携 の特質 を 求めている。

3竹田志郎、前掲書、1992年、29‑30ページ。

4 M.E.PorterandM.B.Fuller,op.cit.,p.315̲

5 D.C.Mowery,"CollaborativeVenturesbetweenU.S.andForeignManufacturingFirms:An Overview,"D.C.Mowery(ed.),/nternationalCollaborafiveVenturesinU.S.MaTMfacEuring,Ballinger Pubhshing,1988.p.2‑3.

6J,L Badaracco,Jr.,T71eKnowledgeLink/HowFinnsCompetethroughStrategicAlliances,HarvardBusiness SchoolPress,1991,p.4.

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48 研 究年 報 5

ワイズマ ンは、ある共有の 目的 を達成す るために協力 している複数のグループや、個 人の結合 を意味す る もの として、提携 とい う言葉 を用 いてお り、提携 の形態 としては、

買収 ・合併 、ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャー、協定 な どの3つ を取 り上げている。特 に同氏 は、

コングロマ リッ ト型の買収 ・合併以外の、製品ライ ンあるいは製品網で関連 している買 収 ・合併 も提携 の範時 に入 れ、かな り異 なる主張 を提示 している7。

3独 立企 業間の 中間的取 引 と しての提携

提携 に関す るい くつかの説 を概観 したが、その概念づ けはまちまちで、 また論者 によ っては、その内容 に大 きな相違 を見せている もの もある。 ここでは、上記 の概念づけか ら、提携 に関す る先行研 究者の共通的な認識点 を検 出 し、その上で、第1節 で述べ た提 携 の特徴 と照 らし合 わせ、提携 の対象 を確定す るために、1つの フレームワー クの設定

を試見 ることにす る。

まず、上記 の諸説 に照 ら して見 る限 り、「企業 間提携」 とみ なされる ものには、い く つかの共通のキーワー ドを検 出す ることがで きるが、それは 「独立性」 (竹 田、ポー タ ー、バ グラッコ)、「協調」 (竹 田、ポー ター、モ ウ リィ、 ワイズマ ン)、「市場取引以上 の関係」 (ポー ター、モ ウリィ、バ ダラ ッコ) な どである。例外 的 に、 ワイズマ ンは共 有 の 目的達成 を強調 して、M&Aまで を提携 の範噂 に入 れ、非常 に包括 的かつ対照的な 見解 を見せ ている。 ここでは、 まず概念づけか ら提携 の特質 を明 らかに し、 ワイズマ ン の議論 を含め、提携の形態 に関する詳細 な考察は後述する。

第1に、提携 は独立企業 間の取引関係 である。す なわち、戦略の策定、資源配分、事 業運営 な どにおいて、事実上 自律性 をもっている企業が、経営上の必要性か ら自社 の独 立性 を損 なうことのない範 囲で行 われる取引 なのである。無論 、 ここでい うパ ー トナー の独立性 とは、法律 的存在 としての 「独立企業」 とい う 「形式的独立性」だけではな く、

実質的独立性 を意味す る ものである したが って、当然 なことであるが、法律 的に、 ま たは形式的には独立企業 間の関係 にあって も、企業系列お よび親子会社 間の ように 「支 配 ・従属」 関係が認め られる場合は、「提携」 と言いがたい。

第2に、独立企業 同士が強い協調 関係 を形成す ることである。ポー ターは、提携 を長 期 間にわたる友好 関係 といい、単発 的な市場取引関係 と区別 している。 また竹 田、モ ウ リイも、提携 を 「共同事業」 と言 うが、それは、提携 を形成す るパ ー トナー同士 の利害 関係が一致 し、相互の 目的達成 を手助 けす るために、互 いに協力す ることにほかな らな

第3に、パ ー トナー同士 の取引は、市場取引以上の関係 を形成す ることである。 これ は第2の協調関係 を形成す るために、必要な条件 とも言 える もので、パ ー トナー同士 は、

単 なる市場取引以上の取引関係 をもとに して、緊密 な協力関係 を形成する とい うことで 7C.ワイズマン著、土屋守章 ・辻新六訳 訂戦略的情報 システム』ダイヤモンド社、1989、308‑309ページ。

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「国際戦略提携 の概念 とその実態 に関す る理論 的考察」 49

ある しか し一方では、パ ー トナー間の取引関係が市場取引以上の関係 とは言 え、完全 内部取引 まではいか ない点 に注 目せ ねばな らない。 ポー ターの指摘が示唆す るように、

合併 までは至 らない取引関係、す なわち、完全 内部取引 まで にはいかないことが、提携 企業間に見 られる取引関係 の特徴 なのである。

内部化モデルでは、アームズ ・レンクス (am‑slength)的な市場取引の非効率性 に代 替す る取引 として、 ヒエ ラルキー (階層組織) による統合 の合理性が強調 された8。す なわち、取引の形態 として、完全 な所有 による 「企業 内取引」 と、完全 な独立企業 間の

「市場 間取引」 とい う両極 を想定 している。 しか し、現実 の多 くの取引 は、市場取引で も完全 内部取引で もない場合が多 い。特 に企業 間提携 に見 られる取引 は、継続 ・反復 的 に行 われ、 また意思決定 とい う点か ら見 て も、人的交流、ノウハ ウ、技術 の交流 を通 じ て、完全 に自律 的で も、完全 に共 同で もない形 の意思決定が行 われる9。 この ように考 えると、提携 は市場取引 と内部取引の中間的位置 に属 していることになる。 したが って、

以下ではこうした取引関係 を 「中間的取引関係」 tOとして規定す ることにす る (図1参 照)0

図1 取引の 自律性 とコン トロールにおける提携 の位置

ノ■

一 一I I ‑‑I ‑● ■ ■ ■ ‑ I l ‑■ ■ 一

純粋な市場取引

性 (大)

\ 一一 ㌧ ユ ー‑‑

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‑‑

/コン漂 悪 賢 デー

今 まで、提携が もた らすベ ネフィッ トと、提携 の概念づけに関す る先行研究者の共通 的認識か ら、提携 の特徴 を表わすい くつかの性質 を検 出 した。特 に、その内で も提携 を 提携 なる もの とす る中核 的要素 として、「独立性」 と 「中間的取引 関係」 を取 り上 げる ことがで きる。提携 のベ ネフィッ トにおいて も、パ ー トナー同士が独立性 と、中間的取 引関係 を形成す るか らこそ、柔軟性 の確保 や コス トお よび リス クの削減がで きるわけで ある。 また、提携の概念づ けか らのアプローチ も前述 した とお りである。

8 A.M.ラグマン著、江夏健一 ・中島潤 ・有沢孝義 ・藤沢武史訳 F多国籍業と内部化理論]ミネルヴァ書房、

1983年。

9長谷川信次 「国際企業提携の理論的考察」江夏健一編 r国際戦略提携』晃洋書房、1995、33‑34ページ。

10 竹田氏は、企業の国際取引を国際分業体制と、取引価格設定の二側面から分析する。そして、提携企業間 の国際取引を「提携企業内国際分業」と「提携企業内国際価格」としてとらえ、企業内国際取引と独立企業間国際 取引の中間に位置づけている。竹田志郎、前掲書、1992年、114‑118ページ。

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50 研究年報 5

したが って本 稿 で は、提 携 の範 囲 を確 定 す る 1つ の フ レー ム ワー ク と して 「独 立性 」 と 「中間的取 引 関係 」 を設 定 し、パ ー トナ ーが相 互 に実 質 的 な独 立 性 に基 づ い て、市 場 取 引以上 の協 力 関係 を構 築 す る時、パ ー トナ ー 間 には提 携 関係 にあ る と、広範 に提 携 の 範 囲 を設 定 して置 くこ とにす る (図2参 照)。

4 提 携 の諸 形 態 とそ れ を め ぐ る議 論 1)提 携 の 形 態

図2 提携 の形 態 と範 囲

アウトソーシング

契約設定 ャイズフランチ

長期取引関係 列 f

資本参加の度合 M &A 資本参加 丁 目 一一一一一一一一一一一一一一一一十'■■■

独立性の増加 支配力の増加

合弁事業

1 ‑‑

‑ ‑ ‑ 7 B

\ /

\ /

独立企業間の市場取引 提携企業間の中間的取引 企業内の内部取引

⊂=コ 提携の範囲

今 まで 、提 携 に関す る先行研 究 に基 づ き、提携 と しての性 質 を保 つ ため の2つ の基本 的性 質 、 「独 立 性 」 と 「中 間取 引 関係 」 を検 出 した。 以 下 で は提 携 の諸 形 態 を概 観 し、

提携 と して ま ざれ る ところの多 い、他 の取 引 関係 お よび投 資形 態 を取 り上 げ る。そ して、

これ らを提携 と対 比 しなが ら、提携 との相 違 を明確 に してい くこ とにす る

まず 、前 述 の先 行 研 究 者 の概 念 づ けか ら、提 携 の形 態 を網 羅 して見 る と、合 弁 事 業 (ポー ター、 モ ウ リ ィ、 ワイズマ ン)、契約 設 定 (ポー ター、 モ ウ リィ、バ ダラ ッコ、 ワ イズマ ン)、資本 参 加 (モ ウ リイ)、買 収 ・合併 (ワイズマ ン) な どが取 り上 げ られ てい

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「国際戦略提携 の概念 とその実態 に関す る理論 的考察

51

る。

一方、竹 田氏は、企業 間提携 に見 られる形態 として、合弁事業、資本参加、契約設定、

長期取引関係 を取 り上 げているが、 これ らの形態 に属する全 ての企業 間の関係が、提携 ではない とい う。す なわち、合弁事業 に しろ、資本参加 に しろ、「経営支配」 を目的 と しない企業間の取引だけが提携であ り、企業 間の関係 における 「独立性」 の有無 を重要 な要件 として見 な しているのである't

この ように、提携の形態 として一般的に見 なされる ものにも、事実上提携ではない も の もあ り、それは企業 間に様 々な窓意性 と利害関係が複雑 に絡み合 い、 さらに交渉力 な ど、パ ー トナー間の力の均衡状態が常 に変化 しているか らである。 したが って、取引お よび投資形態だけを見て、それが提携か どうか を見極めるのは極めて難 しい と言 える。

ここでは、今 まで述べ た企業 間関係 における 「独立性」 と 「中間的取引関係」 に照 ら し、提携の形態 を広範 にとらえ、竹 田氏の議論 と同様 に以下の4つ を取 り上げる。

① 合弁事業 (jointventure)

② 資本参加(capitalparticipation)

③ 契約設定(contract)

長期取引関係(customerrelationship)

合弁事業 は、出資比率か らすれば折半 出資、多数所有、少数所有 な どがある。いずれ の場合 も、合弁事業 に出資する企業が 「独立性」 に基づいて、企業間の取引の延長線上 で行 われる合弁会社 の設立 は、出資比率 に関係 な く提携 として見 ることがで きるだろう。

例 えば、A社 (多数所有) とB社 (少数所有) による合弁会社C社 の場合、 これ ら3社の 関係 をどう捉 えるかの問題 である。A社 か らすれば、確 か にC社 は子会社 に位置づ け ら れるが、A社 とB社 との関係 は どう位置づ ければ よいか とい う問題が残 る。 この場合、

A社 とB社 が 「支配 ・従属」 の関係 でははな く、 またB社 が、その合弁事業か ら何 らか の利得12が得 られるな らば、A社 とB社 は提携関係 にあると言 える。

資本参加 は、既存企業 の株式取得 を通 じて、既存企業の事業活動 を自社活動 に有利 に 組み入れ られるとい う意味で提携 と言 える13。 しか し、経営支配 を目的 とす る資本参加 の場合 は、支配可能株式の取得 で合弁 ・買収 に転化す る可能性が非常 に高い。 また、パ ー トナー企業の独立性 (経営権限における実質的な意味 としての独立性) を犠牲 に しや す く、パー トナー企業 よ り自社 の戦略が優先する とい う点か ら、提携 とは言い難い。

契約設定は、資本 出資 を伴 わない契約 だけの提携 で、パ ー トナー相互が独立性 を維持 しなが ら、必要 な局面で緊密 に協力 しあ う典型的な提携 の形態である。 この範時 に属す 11 同上書、29‑36ページ。

12 ここで言う利得 とは、単なる配当ではなく、その合弁事業から自社の戦略展 開を有利活用できる、何らかの 経営資源を獲得することによってもたらされるものを言う。

13 同上書、31ページ。

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52 研究年報 5

る もの として、共同研 究開発、生産、マーケテ イング、国際的共通規格 の設定 など、企 業の価値連鎖活動の全 てにわた り広範 に行 われる。

竹 田氏 は、長期取引関係 (customerrelationship)とは、パ ー トナー相互の信頼 を基礎 とす る継続 的な顧客 関係 による提携 で、パ ー トナー間の関係 は、経営 ノウハ ウの提供、

財務援助、技術指導、組織化 などで結 ばれているとい う。 したが って、 こう したパー ト ナー間の取引は、純粋 な市場価格でない とい う観点か ら、長期取引関係 も企業提携 の一 部 として とらえている14。

特 に同氏 は、 日本 の 「系列化 された下請制」 は提携ではないが、長期取引は提携であ る と主張す る。 なぜ な らば、「系列化 された下請企業」 の場合、経済的 ・技術 的支配従 属関係 にあ り、サ プライヤが不当な利益 を得 ているとして も、す ぐにその取引関係 を止 めることはで きないか らであるとい う15。

竹 田氏が主張す るように、全 ての長期取引関係が提携ではな く、 また、長期取引関係 における対当 ・独立性 を見極 めることも難 しい。 しか し、長期取引関係 が対当 ・独立性 に基づいて、パ ー トナー相互 にベ ネフィッ トをもた らし、かつ中間的な取引関係 を維持 している点 に注 目するな ら、1つの提携形態 として見 な して も大 きな問題 はないだろう。

2) 提携 と他 の取 引関係 および投資形態

再度指摘 してお くが、その形態だけで提携 を見極めるのは難 しく、 ここでい う提携の 形態 とは、企業 間の利害関係が一致 し、提携 とい う形の取引関係 お よび投資形態 に決着

した場合、それは前期の4つのパ ター ンに包摂 されるとい う点である。

一方、企業 間の取引お よび投資形態が多様化 ・複雑化 し、提携 と紛れやすい取引関係 や投資形態 も多い。 しか も、 これ らを提携 の 1形態 と してみなすか どうか に関 して、多 様 な議論があ り、一致 した見解 を見 ることはで きない。 ここでは、提携 と類似す るであ ろう取引お よび投資形態 を取 り上げ、前記の 「独立性」お よび 「中間的取引関係」 に照 らしなが ら、提携 との差異 を明確 に提示す る。

まず、M&Aが提携 の範噂 に入 るか どうか を見 てみ よう。 ポー ター らは、提携 のベ ネ フィッ トを論 じるにあたって、提携 と合併 を対比 して論 じ、M&Aを提携 の範噂か ら除 外 している16。 しか し、 ワイズマ ンは、共有 の 目的達成 を強調 してM&Aも提携 の範噂 に入れ、非常 に対照的な見解 を示 している17。

M&Aを提携の1形態 として見 なすためには、前述のベネフィッ トをもた らしうる条件、

す なわち、パ ー トナー間の利害関係 の一致 と、「独立性」 お よび 「中間的取引関係」が 求め られると言 える。 しか し、全 てのM&Aが相互の合意 (いわゆる友好的M&A18)、 も 14同上書、34‑36ページ。

15同上書、165‑181ページ。

16M.E.PorterandM.B.Fuller,op.cit.,pp.3221327.

17C.ワイズマン著、土屋守章・辻新六訳、前掲書、308‑309ページ。

(11)

「国際戦 略提携 の概 念 とその実 態 に関す る理論 的考 察

53

しくは相 互 の利 害 関係 の一致 に基 づ いて行 われ てい る とは限 らない。 しか も友好 的 M&Aにおいて も、M&Aが成立 した後 には、その意志決定が1つの組織 内で な され るた め、内部化 の 1形態 にす ぎず、そこか らは共有の 目的ではない 1つの組織 に1つの 目的 し か存在 しないことになる。

また、モ ウリイを始め、他 の論者 によって強調 されているように、提携 に見 られる中 間的取引関係 の特質か らみて も、M&Aが提携 である とみなす には無理がある。す なわ ち、提携 に見 られるパ ー トナー間の取引 は、完全 に内部化 された内部取引ではな く、純 粋な市場取引で もない中間的取引の性質が強い。 しか も、 この点 に提携 のベ ネフィッ ト が内在す るわけである。 しか しM&Aの場合、その成立 コス ト、撤退 コス ト、運営の リ スクか らみて も、完全 内部取引の 1形態 として見 な して も何 ら差 し支 えない。 したが っ て、M&Aを提携の範晴 に入れるのは、妥当ではない と考 えられる

第2に、 フランチ ャイズ を提携 に入れるか どうか に関 して も議論 が分 れる19。 フラン チャイズ契約 は、一般 的に小売業 に見 られる業態 の1つ として、商品の製造、販売 を行

う業者が フランチ ャイザー (主宰者) とな り、独立小売店 をフランチ ャイジー (加盟店) にした/J、売形態である。 フランチ ャイザーは、 フランチ ャイジーに一定地域内での独 占 的営業権 を与 え、 ローヤルテ ィを獲得す る代 わ りに、商品構成や店舗 ・広告 な どについ て直営店 と同 じように管理 し、経営指導、販売促進援助 を行 う仕組みである。 したが っ て、一見するとフランチ ャイズ も提携の形態であるように見 えるが、その詳細 な仕組み を見 ると提携 とは言い難い性質が多い。

まず、「独立性」 の軸か らみれば、 フランチ ャイズ も、確 か にフランチ ャイザー とフ ランチ ャイジー との間に独立性 を前提 に している。 しか し、そ もそ も提携 は既 に存在 し ている独立企業 同士が、何 らかの経営上の必要性か らパー トナー と協力関係 を結ぶのに 対 して、 フランチ ャイズは、 フランチ ャイザーが提供する経営上のサ ー ビス を前提 とし た契約関係 である したが って、 フランチ ャイザーがない と、 フランチ ャイジーは生 ま れることもな く、 しか もフラ ンチ ャイジー単独 では、 ビジネスが成 り立 ちに くい。そこ に提携 とフランチ ャイズ との根本的な相違 を見 ることがで きる。要するに、経営 におけ るフランチ ャイザーへの全面的依存 と、経営上の リス クに対す るフランチ ャイジーの高 い負担 などを考慮すれば、提携 とは言い難い性質が多いのである。

また、「中間的取引関係」 か ら照 らしてみて も、提携 と大 きな相違がある。 プラ ンテ 18 竹 田氏はこの点に関して、いわゆる友好的買収 (ホワイト ナイトを含めて)のかたちで、相手企業の経営活動 を生かし自社の事業活動に有効 に結 びつける場合に限定 して、一部のM&Aを提携 として見なしている。しかし、

自社側の戦略が優先する点に注 目して、これも限界があるというO詳細 は、竹 田志郎、前掲書、1992、30‑32 ページ、および山下達哉 「競争戦略としての国際戦略提携

̲

川富士論叢 (富士短大

)

」第322、1994、92‑

93ページを参照 されたい。

19例 えば、山下氏 はリスクの共有 という観点から、フランチャイズは提携 の範晦に含めが たいというが、チャク ラバーシらはフランチャイズも提携の 1形態として見 なしている。詳細 は山下達哉、前掲論文、74ページ、および B.S.ChakravarthyandP.Lorange,ManagingthestrategyProcess:AFramewol‑kforaMultibusinessFirm.

PrenticeHall.1991,p.216.

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54 研 究年 報 5

ヤイザ‑ とフランチ ャイジー との取引関係 は、完全 に排他 的取引関係 を前提 としたほぼ 内部取引に近い ものである。 しか し、提携 はパー トナー との取引関係 を維持 しなが らも、

自社 の判断 によ り第3者 と自由に取引で きる。以上 の点か らも明 らかな ように、 フラン チ ャイズを提携の範晴 に入れるのは相応 しくない と考 え られる。

第3に、業務 の外部委託 とい う点で、「アウ トソーシング」 と、提携 との差 も明確 に し てお く必要がある。 アウ トソーシ ングは、一般的に企業の価値連鎖活動 の一部分 を外部 に依託す ることである。ポー ターは、垂直統合の戦略的分析 の中で、垂直統合のデシジ ョンは、 自社 で作 るか、外部 か ら買 うかの選択 であ り、そのデシジ ョンの基準 として、

コス ト、 リス ク、そ して調整 の容易性 などを取 り上げている。 さらに、 コス トな しに統 合の利潤だけを入手することがで きる、とい う意味で準統合 とい う概念 を用いているが20、 それは企業 間の提携 にはかな らない。

このように考 えると、アウ トソーシングは垂直統合 (内部取引) と対比 される もので、

市場取引に近い。要す るに、アウ トソーシングは、市場取引 による外部資源の活用であ り、そ こでの企業 間の関係 は、協力 関係 よ り 「市場取引」 の色彩が強 い。 したが って、

アウ トソーシング自体が 「提携」ではないが、 アウ トソーシングにかかわる両者の関係 が緊密 な協力 関係 に移 り変 わる時、提携関係 に発展 してい く可能性が高いの も事実であ る21

戦略提携の概 念 と実態 1 戦略提携 の概念 をめ ぐる諸説

本節 では、「戦略提携」 の概念 に関す る諸説 を概観 し、概念づ けか ら 「従来提携」 と の相違 を考察 し、「戦略提携」 に内在す る実態 をとらえることにす る。 まず、戦略提携 に関する諸説 を列挙 してみ よう。

BusinessIntemationalは、戦略提携 を次の ように概念づけている。企業間のアライア ン スは、公式 かつ相互の合意 に基づ く商業ベースの企業 間の協調関係 である。パ ー トナー はお互いに互恵的な利益 を得 るために、特定の経営資源 をプール し、交換 し、 または統 合す る。 しか し、それぞれのパ ー トナーは自社 に固有 な事業 を明確 に維持す る22。

アジヤミとカ ンパ タは、企業の価値連鎖 における比較優位 のある要素の相互補完 と、

市場変化への迅速 な対応 な どの柔軟性 に着 目し、資本 関係 を伴 わず に契約関係 に基づい 20M.E.ポーター著、土岐坤 ・中辻高治 ・服部照夫訳 r競争の戦略j(新訂)、ダイヤモンド社、1998年、第14章。

21日本能率協会編 rアウトソーシングが分かる本JJMAM、1997、55ページ0

22BusinessInternational,MakingAILl'ancesWork.ILessonsfrom Companies,SuccessandMistakes.1990,

BusinesslnternationaLAMemberoftheEconomicGroup,ただし入手不可能なため、B.M.Gilroy.

NetworkL'nginMulEinaEionaLEnterprises:neImportanceofSErategicALIL‑ances,UniversityofSouthCarolina Press.1993.p.16.

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「国際戦略提携の概念とその実態に関する理論的考察

55

て、各種 の知識がパ ッケージ として移動す る一時的協調 関係 を戦略提携 と考 える23。

ボー リス とジェ ミソンは、戦略提携 を1つ以上 の既存 組織か らの資源、 またはガバ ナ ンス構造 を用 いる、混合体 (hybrids)あ るいは組織 的協定であ る24とい う。

ナ ロ ドは、戦略提携 とは、あ る特定 の企業 目的 を達成 す るため に、2つ以上 の組織体 (entities)の参加 によ り、成 り立つ ビジネス ・ベ ンチ ャー (businessvenmre)である25と

いう。

クラク らは、戦略提携 とジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャー を、その 目的か ら区別す る。戦略提 携 は、企業 の長期 的な協調 の優位性 (long‑ten cooperativeadvantage)を構築す るために 努力す ることであ り、 グローバ ル競争計画 (globalgameplan)の一部分である。伝統 的 ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーは、単 にある特定の問題 しか扱 わない、戦術 的傾 向である26

いう。

ハ リーガ ンは、 ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーは、2つ以上 の所有者が別個 の組織体 (entity) を形成す るビジネス協 定であるが、戦略提携 は新 しい組織体 を形成 す るこ とな く共有 さ れた所有権 の協定 (sharedeqtlityarrangements)である27とい う。

ワイズマ ンは、戦略提携 を1者以上 の提携者 の競争戦略 を支援 あ るいは形成 す るため に設計 された、企業内あ るいは企業 間の結合 であ る と し、戦略提携 を企業 内の関係 まで 含めている。 しか も同氏 は前述 した通 り、戦略提携 の形態 と して、買収 ・合併 、 ジ ョイ

ン ト ・ベ ンチ ャー、協定 な どの3つ を取 り上げてい る2&。

戟略提携 に関す る上記 の概念づ けで も明 らか な ように、 ほ とん どの概念づ けが従来提 携 との明確 な区別 もな く、実際 に戦略提携 のみ に内在す る ものである とは限 らない、 と い う問題点がある。す なわち、上記 の多 くの概念づ けが、戦略提携 の 目的 と形態 に集 中 しているが、それ らは、戦略提携 にかかわる固有 の問題 では な く、従来提携 において も 議論 された、提携 に付 きまとう一般 的問題 なのであ る。

一方、上記 の多 くの論文 では戦略提携 を合弁事業 と対比 し、その特徴 を浮 き彫 りに し ようとす る議論 もな されてい る (クラク、ハ リーガ ン)。 それは、今 日の戦略提携 にお ける柔軟性 を強調 した結果 による ものであ る と思 われ る。 しか し、柔軟性 も市場取引 ま 23 R.AjamiandD・Khambata,"GlobalStrategicAlliances:TheNew TransnationalS,"JoumalofGlobaL Marketing,Vol.5,No.i/2,1991,

24 B.BorysandD.B.Jemison,.‑HybridArrangementsasStrategicAlliances:Theoretical Issuesin OrganizationalCombinations.''AcademyofManagementReview,Vol.2,1989.

25 S.Naroad,"StrategicAlliancesOfferNew Options,"National Underwriter,Vol.:92Dec.5,1988,

pp.33.ただし入手不可能なため、R.Ajami andD.Khambata,op.°it.,p.56.

26 C.ClarkeandB.Kieron,ManagementToday,Nov.1988,pp.128‑131.ただし入手不可能なため、Ibidりp.

56.

27 K.Harrigan,"JointVenturesandCompetitiveStrategies,"strategicManagementJounwl,Vol.9,1988. 28 C.ワイズマン著、土屋守章・辻新六訳、前掲書、308‑309ページ。

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56 研究年報 第5

たは内部化 に代替 される もの として、提携が もた らすベ ネフィッ トの1つであ り、戦略 提携 だけにかかわる固有の問題 ではない。 したが って、上記 の議論 だけをもって、戦略 提携 を従来提携 と明確 に区別で きる概念 を導 くのは不可能である。 また、戦略提携 だけ に内在す る実態 を掴 むこともで きないため、次 に取 り上 げる他のアプローチか ら、戦略 提携の概念づけ と実態の把握 を試見 ることにす る。

2 従来提携 との対比 か らのアプローチ

本節では、従来提携 と戟略提携 を対比 し、従来提携 との比較か ら戦略提携の実態 をと らえることにす る。

ハ メルは、従来提携 と戦略提携 は、かたちは似 ていて も、多 くの面で重要 な差異があ るとし、次の四点 をあげている29。

1)パー トナー同士 の経営力、資産面 において、従来 は不均衡 な場合が多 か ったの に対 して、現在ではおお よそ均衡的な場合が多い。従来は先進MNCsと現地企業 間の技術 提携や合弁事業 などが中心であったのに、現在では先進MNCs間の提携が多 くなって いる。

2)パ ー トナー間の競争 関係 はほ とん ど存在 しなか ったのに対 して、現在 では同 じ製品 や地域市場で協力 と同時 に存在する。

3)パ ー トナー間の協力 内容 は、従来バ ランス していなか ったの に対 して、戦略提携 の もとでは、生産、マーケテ イング、技術面 での協 力内容 に、 なお不均衡 な面 を残 し ている ものの、従来 に比べバ ラ ンス した状況 となっている。す なわち、従来提携 の もとでは、多 国籍企業 は主 として資本 、技術 、経営能力 を提供す る一方、現地パー トナーは、主 に現地市場情報、 ビジネス折衝 、流通経路 な どの立地特殊性 か ら くる ものを提供す る。

4)提携 の動機 は従来、市場接近、規模 の経済性、資源の プール といった経済的要因に あったが、戦略提携 の場合、 これ らの要 因に加 え、一般 的に戦略的、競争 的要 因に よることが多い。

同氏 は、経営 ・資産面 における均衡程度、パ ー トナー間の競争関係 の有無、提携 内容 の均衡程度、提携の動機お よび目的などを基準 に、戦略提携 と従来提携 を対比 している。

特 に同氏 は、従来提携の基本的パ ター ンとして、先進MNCsと現地企業 間の提携 を想定 してお り、戦略提携 としては、先進MNCs間の提携 を想定 しているように思われる。

言い換 えれば、従来MNCs同士 は競争関係 にあって、互 いに提携 関係 を形成すること はな く、提携 は、主 にMNCsが海外進出の代替案 として、現地企業 との間に形成 される 29 Y・Doz,G.Hamel,C.K.Prahalad,SErategL'cPartnerships:SuccessorSurrender?:TheChallengerof Competz'liveCollaboration,paperpresentedatJointAIB‑EⅡiA Meeting,London,20‑23Nov.1986.ただし入 手不可能なため、S.Young,InfemationoLMarketEntryandDevelopment,Prentice‑hall,1988,pp.273‑274.

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「国際戦略提携の概念とその実態に関する理論的考察

57

ものであった。 しか し、提携が先進MNCs間に形成 されるにつれて、提携 の性質、企業 経営 における役割 な どが大 きく変質 したが、それがいわゆる戟略提携 である と言 えるだ

ろう。

ポーター とフラーは、戦略提携 に相 当す る言葉 を用 いてはいないが、今 E]の提携 に見 られる特徴 を従来提携 と対比 し、次の ように述べ ている。提携 (coalitions)は、世界的 規模での競争条件下 にあって、主要競争企業 との連携 を通 じ、 よ り戦略的な もの とな り つつある。従来の提携 は、直接 的な競争 を回避 したい地域への受動的な市場接近や、技 術移転のための現地企業 との協力 (tieup)を含 むので、 しば しば戦術 的であった。広が りつつある提携の範 囲 とグローバル戦略 に提携 を統合す る必要性 は、国際戦略 における 提携の役割 に関する理解 をます ます要求 している30。

同氏 らの見解すれば、競争企業 間の提携、お よび国際戦略 における積極的な役割 (戟 略性の増加)や動機 の程度が、従来提携 と戦略提携 を区別す る基準 として取 り上げ られ ている。 また、ポー ター らもハ メル と同様 に、パ ー トナーの特徴 (現地企業 なのか、主 要競争企業 なのか)に、従来提携 とは異 なる今 日提携の 目立つ性質 として とらえている。

竹田氏 は、従来提携 と戦略提携 との質的な相違 に関 して次の5点 を取 り上 げている31

1)従来提携 は、提携 によ りローヤルテ ィや経営権 の取得が基本 的であったのに対 して、

戦略提携の もとでは、経営資源、経営機能の相互補完的利用が一般的になって きた。

2)提携 の内容 も、かつては包括的で一方 的な資源 の流 れが多 く、環境条件 に変化 によ って解消 されず に、長期 的 に続 く傾 向が多 か った。 しか し戦略提携 の もとでは、活 動内容が相対 的 に限定的で、双方 的な流れ となったため、条件変化 によっては短期 的に終わるようになる。

3)従来提携 における活動 の働 きかけは、同業種 内の大企業 か ら小企業へ、先発企業 か ら後発企業へ とい う流 れが 中心 的であった。戦略提携 の もとでは、同業各企業相互 間にもその主導権が見 られ、異業種 間で も見 られるようになった。

4)従来提携 では、企業力 に格差 のある企業 間の提携 関係が多 か ったのに対 して、戟略 提携では、企業力の格差のない企業 間の競争的取引関係 にその中心が移 っている

5)以上の ような 「提携企業 の関係」 か らみて、かつての提携活動 はか な り固定的 ・制 度的 な性格 を持 っていたの に対 して、戦略提携 の もとで は流動 的 ・戦略的な性格 に 変わ りつつある。

竹 田氏 は、資源の相互補完的利用、内容 における限定的 ・短期 的な性質、パー トナー 間の競争関係 と企業力 における対等性 な どを、戦略提携の特徴 として取 り上 げている。

首藤氏 は、過去 の提携 と戦略提携 を区別する もの として、安定性 と協力対象、お よび その範囲 を取 り上げている。従来の提携 は基本的に長期 を想定 しているの に対 し、戦略 提携 は現実 に競合す る企業 間において、短期提携あるいは短期 の反復延長 として実施 さ 30M.E.PorterandM.B.Fuller,op.°it.,pp.315316.

31竹田志郎、前掲書、1992年、85‑87ページ。

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58 研究年報 5

れる。 また、提携 の対象 は複 数の分野 や企業 トー タルで はな く、特定 の技術分野や市場 な ど、極 めて限定的である32。

バ ダラ ッコは、質 的 に異 なる2つの提携 タイプ と して、「製 品 リンク (productlinks)

と 「知識 リンク (knowledgelinks)」 を取 り上 げる. この2つの提携 は学習の程度 と目的 によ り異 なる。「製品 リンク (productli止

S

)」 は、 自社 の市場地位 を防衛 し、 また製品 を 大量 かつ速やか に販売す るな ど、固定費用 を取 り戻す こ とに主要 目的があ り、学習 はそ れほ ど重要ではない。 しか し、「知識 リンク (knowledgelinks)」 は、パ ー トナーが学習 す ることに よ り、 中核 的能力 を拡大 ・調整、 または創造す るための戦略 的努力 であ る。

したが って、 この2つ を学習 の度合 に よって、提携 のスペ ク トロムに提示 すれば、以下 の ようようになる33。

図3 提携のスペ ク トロム

学習の度合 (ざ 知識 リンク (knowledgelinks) 葺竺 度合 (小)

製品 リンク(plO血ctli止S)

同氏 は、従来提携 と戦略提携 を明確 に提示 は していないが、その性質上 、従来提携 と 戦略提携 を区別 しうる 1つの手がか りを与 えて くれる。す なわち同氏 は、提携形成 の動 機 が、提携 による学習 と相乗効果 を狙 い とす るこ とよ り、単 なる資源の補完 を目的 とす aLのか、それ とも新 しい知識 の創造 とい う相乗効果 を狙 うのか によって、提携 の タイプ を区別 して い る。 したが って、他 の先 行研 究 と照 ら し合 わせ てみ れ ば、 製 品 リ ンク (productlinks)は従来提携 に、知識 リンク (knowledgelinks)は戦略提携 に非常 に似 てい る と言 える。 なぜ な らば、単 なる低価格製品の調達、素早 い市場 アクセスお よび販売 を 主 な目的 とす る製 品 リンクは、企業力や経営能力 に差 のあ る企業 間 によ く見 られるのみ な らず、活用範 囲や内容 において もかな り限定的であるか らであ る。 また、製 品 リンク (productlinks)は、移勤 しやす い技術 、特 に標準化技術 に適用 されやすい もので、先餐 企業 と後発参入企業 との間に しば しば見 られ る提携 関係 の1つである と言 える。

以上の ように、従来提携 との対比か らす れば、戦略提携 は従来提携 の延長線上で把握 される もので、戦略提携 に内在す る固有 の概念づ け を導 くのは難 しいが、戦略提携 の実 態 をとらえるのには、かな り有効であることが分 かる。

32首藤信彦 「国際戦略提携 を超 えて」江夏健一編、前掲書、19ページ。

33J.LBadaracco,op.°it.,pp.109‑111.

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「国際戦略提携の概念とその実態に関する理論的考察

59 まず、今 までの議論 に基づいて、従来提携 と異 なる戦略提携 の性質 を要約す ると、以 下の とお りである。提携 による資源の流れが双方的であること、内容がかな り限定的で あること、パー トナーは競争関係 にあ り、かつ企業能力が対等 であること、提携成立の 動機 において戦略的 ・競争的要因が多い こと、企業の国際戦略 における役割が積極的で あること、提携 によ りパー トナーが企嚢の中核的な能力 を創造で きることなどである。

一方、 これ ら戦略提携の特徴 を詳細 に見 る と、2つの事実が背景 にあることが分かる。

1つは、パ ー トナーがMNCsと現地企業 とい う関係 か ら、MNCs同士 になっている (パ ー トナー間の競争 の存在 と、企業能力 における対等性) こと。 もう1つは、成立動機お よび内容 は競争的かつ戦略的性格が強いことである。

要す るに、競争の激化 とい う競争 的要因に対処 し、企業の国際戦略 を効率 よ く展 開す るために、そ もそ も存在 していた提携 を、MNCsが資源の相互利用 を前提 として企業経 営に積極的に活用す るようになった結果、 よ り戦略的で、高度 の内容 をもつ もの として 提携が変質 したが、それがいわゆる戦略提携であると言 えよう。

また、 こうしたMNCsの動 きは、 自己完結主義の路線 を追求 していた多 くの企業 に も 影響 し、自己完結主義ではな く、必要 に応 じては他社 の力 を自社の戦略展開に組み入れ、

積極的に利用 しようとす る傾 向が多 くなった。 これが最近 よ く取 り上げ られている戦略 提携の本質ではなかろうか。

3 従来提携 との対比 にお ける問題 点

前節で、従来提携 と戦略提携の対比 に関す る先行研究 を概観 し、浮 き彫 りにされる戦 略提携 の特徴 を抽出 した。特 に、国際提携 における競争企業間の提携、企業能力の対等 性、資源流れの双方向、企業活動 における高 い戦略性 などが、従来提携 と対比 される戦 略提携 の特徴 として、多 くの論者 によって取 り上げ られている。 ここでは、 こうしたア

プローチにおけるい くつかの問題点 を指摘 してお きたい。

まず、競争企業 間の提携 お よび企業能力の対等性 に関 して見てみ よう。提携の一形態 である合弁事業 Gointventure)の場合、 1960年代米国企業の経営戦略 として頻繁 に使 わ れていた。 これ らの米国国内の合弁事業 に関す る研 究 を見 る と、当時形成 されていたほ とん どの合弁事業が、巨大寡 占企業 間に集 中 していることが分かる。 しか も、同一産業 に属 している企業間の合弁事業が過半数以上 を占めている。

要す るに、競争関係 にあ り、企業能力 において対等 な企業 同士 の合弁事業が、全体合 弁事業の半分以上 を占め、米国の学界 は もちろん司法当局 も、 これ らの合弁事業が競争 制限的な効果 をもた らすのではないか、 とい う多大 な論争 を展開す る くらいであった34。

したが って、米国国内の現象 とは言 え、競争企業 間、企業能力 における対等 な企業間の 提携 を、従来提携 と対比 される戦略提携 の性質 として取 り上げるのは、若干の問題点が ある。

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60 研 究年 報 5

ただ し、海外進 出の代替案 としての合弁事業 は、現地政府 の規制 回避 を目的 と して、

米国企業 と現地企業 との間に多 く見 られる。 また、合弁事業の成立動機 においては、競 争的圧力 よ り、反 トラス ト法への対応、 リス クや投資 コス トの削減 など、経済的要因が 多 く、合弁事業 によ り設立 された合弁子会社 の多 くが、既存製品の生産基地 としての役 割 を果た しているの も事実である。

次 に、提携 における戦略性 の有無である。山下氏 は戦略提携 の要件 か らその概念づけ を試み、以下の要件が戦略提携 を形成するために必要であると主張す る35。

1に、全社あるいは事業 レベルの高い戦略的意図をもっていることである。

第2に、 パー トナー同士が 同様 な戦略的意図 をもって、 これ を共有 していることであ る。 しか もその意図は、参加企業 にとって互いに均衡 し、互恵的な利益 を与 える もので なければならない。

第3に、戦略提携では、知識 の流 れは双方向、あるいはパ ー トナーが多数の場合 には 多方向であ り、 この知識の相互交流、融合か ら新 しい知識が創造 され、 また互 いにパ ー トナーが持つ知識 を学習 して、自社内に取 り込 む。従来提携では、技術 ライセ ンシング、

OEM提供 など、一方方向の知識の流れが多かったが、 この知識の流れの双方向性 は、戦 略提携 における1つの大 きな特徴である。

第4に、 リスクを共有することである。

第5に、提携 に参加す るパー トナー同士 は、対等 の立場であることである。言 い換 え れば、企業能力 において優位、劣位 の関係がないことを意味す る。

上記の戦略提携 の要件 に関す る山田氏の主張 は、前述 した先行研究 を集約 ・整理 した もので、特 に、同氏の場合、提携 における戦略的意図 を重視 していることが 目立つ。無 論、他の論者 も戦略提携 における戟略性の存在 に注 目す る場合 も多い360

しか し、戦略の概念 に照 らして見 ると、戦略提携 だけに限 って高い戦略的意図が存在 するとい うのは、大 きな疑問が残 る。

戦略 とは、長期 の 目標 お よび目的であ り、 これ らの 目的 を達成す るために、経営者が 行動 をと り、資源 を配分す る方法である37。 これに したが うと、戦略 に内在 す る次 の3 つのキーワー ドを検 出す ることがで きる。第1は、長期 の 目標 であ り、短期志向的な性 質の ものではない。第2は、長期 の 目標 を達成す るため に資源配分 を行 うこ とであ る。

34詳 しくは以下の論文を参照 されたい。S.E.Boyle,"AnEs血 ateoftheNumberandSizeDistributionof DomesticJointSubsidiaries/ AnEitrustLnwandEconomicsReview,Vol.1,1968;J.L.Pate."JointVenture Activity.1960‑1968,"EconomicReview/FederalReserveBankofcleveland,July,1969:S.V.BergandP.

Friedman,̀TechnoloicgalComplementaritiesandlndustrial PatternsofJointVentureAcdvity,1964

1975/IndusEriaEOrgam'zaEionReview,Vol.6,1978. 35山下達哉、前掲論文、71‑74ページ。

36特 に竹 田氏 は、戦略提携 の成立動機、内容 、解消 における戦略性 の検 出を試 みている。詳細 は、竹 田志郎 前掲書、1992年、第3章、および竹 田志郎 F多 国籍企業 と戦略提携』文具堂、1998年、第8章 などを参照 された い。

37A・D.Chandler,Jr.,SEraLegyandSnLClure,Cambridge,MA:M‥TPress,1962,P.14.

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「国際戦略提携の概念とその実態に関する理論的考察

61 第3は、 目標設定 や資源配分 を担 う主体 は、組織 にお ける意思決定 レベ ルか らす れ ば、

トップ ・マネジメ ン トである

まず、従来提携 の代表 的 な例 と して、MNCsと途上 国企業 との技術提携 を取 り上 げて み よう。MNCsは、多様 な要因 (例 えば、輸 出や直接投 資 の規制 、その技術 の成熟化 に よ り、 自社 における戦略経営資源 と しての重要性 が小 さい場合 な ど) によ り、途上 国企 業 に技術 を移転す る代 わ りに、途上 国企業 はMNCsにローヤルテ ィを支払 う仕組 み とな

っている。

この技術提携 を締結す る途上 国企業 は、事業 の多角化 や新技術 の確保 を通 じて、 自社 の競争 ポジシ ョンの防衛 、あ るいは強化 を主 な目的 としてお り、確 か に戦略的意 図が存 在 してい るこ と確認 で きる。要す るに、戦略論 で言 えば将来 に向けて 自社 の資源配分 を 決めることになる

一方、MNCsは輸 出 または直接投資 の代 替案 と して、 ライセ ンシ ング とい う選択案 を 選ぶ ことに よ り、 リス ク削減 は もちろん、 自社 の収益 あ るいは海外進 出の足 がか りを作

るわけである。海外直接投資 の決定 に比べ、意思決定 における重み は小 さいか もしれな いが、資源配分 お よび投資パ ター ンを決定す る とい う意味 で、企業の戦略的意 図が存在 する。 しか も、ライセ ンシ ングの役割 を解 明 しようとす る多 くの欧米 の論文 か らみて も、

先発企業 におけるライセ ンシ ングの重要性 、 または、海外進 出 におけるライシ ンシ ング の戦略的役割 を見 ることがで きるのである38。

またMNCsに しろ、途上 国企業 に しろ、技術 移転 とい う意思決定 を策定す る主体 が、

組織 の下位 レベルであ る とは考 え られ な く、む しろ トップ ・マ ネジメ ン トの レベルで策 定 される性格 の ものである。

この ように考 える と、それぞれ異 なる戦略的意 図や程度 の差が ある とは言 え、その動 機 において、従来提携 で も戦略性 を検 出す ることが十分 で きるわけであ る。 したが って、

提携 の成立動機 における戦略的意 図の有無 に基づ いて、従来提携 と戦略提携 を区別す る のは、理論 的 に ももちろんであ るが、経営現実 か らみ て も説得力が弱 く、限界があ る。

む しろ、従来提携 と戦略提携 の比較 におけるハ メルの指摘 が示 してい るように、国際競 争 における様 々な競争 的要因が、提携 を一層戦略性 の高い ものへ と推 し進 めた と理解 さ れるべ きではなか ろ うか。

4 戦 略提 携 の実態 とその概 念 づ け

ここまで述べ た ように、従来提携 との比較 か ら、戦略提携 の実態 を把握 しようとす る アプローチ にい くつかの問題点があ る。 しか し、提携 の実態 (その成立動機 、活用度 、 38海外進出の選択案として、海外直接投資とライセンシングを対比して論じているものとして、次の論文を参照 されたい。F.∫.Contractor,"ChoosingBetweenDirectInvestmentandLicensing:Theoretical ConsiderationsandEmpiricalTests,"JoumaLoflnEemationaLBusinessSTudL'es,Vol.XV、No.3,Winter,1984.

参照

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