事故データの見方 読み方 考え方(最終回)高齢者は いかにして事故を避けるのか(3)
著者 吉田 信彌
雑誌名 人と車
巻 44
号 6
ページ 18‑21
発行年 2008‑06‑01
URL http://id.nii.ac.jp/1204/00000469/
事故データ
い 高齢者は か に し て 事 践 を 避 け る の か
⑥
イラ スト
・ふ じた とし お
高齢者の運転の長所をあ
eけ
れば
︑
無謀な運転をするまいとする態度が
うかがえる点である
︒
スピ
ード
違反
︑
信号無償︑飲澗運転がほかの年齢凶
より少ないn
A
供を相手とする事放J
や夜間の事故も少ない
︒
子供が周附にいないことや夜に運転する必要が
ないだけのことかもしれないが︑子
供のいそうな場所や夜の運転を避け
るという隠れた努力の結果であると
の解釈も成り立たないわけではない
︒
短所は︑左右に首をふっての安全
確認がおろそかな点である
︒
そのために︑出会い頭事放が多い
︒
交差点で取締りの警察宮を見過ごし︑4時
東北学院大学教養学部教授
吉田信禰
停止違反の取締りを受けてしまう
︒
高齢の歩行者が尚齢の運転者との
事故に遭うことが多い
︒
歩行者のほうの防衛策としては︑運転者の円を
見ることである
︒
とくに左布をよく見ない高齢運転訴が自分を見てくれ
たのか︑と顔を見て闘を合わせるこ
とである
︒
その上で︑車の前を横切るとか止まるとかの決断をしないと
危ない
︒
相手を見ないで︑さっさと横断するのは無謀である
︒
夢行者優先を取り違えてはいけない
︒
運転者のほうは︑高齢の歩行者は
免許をもっていない人と思ったほう
がよい
︒
クルマを運転する向分と同じように高齢の歩行者がふるまう
と期待してはいけない
︒
子供の行動 が突発的でF
想がつきにくいように︑尚齢告もどっちに行くのかわからな
い予測の難しい歩行者と与えるべき
である
︒
したがって︑歩行符と顔を合わせたそのあとからも︑いっそうの
注意が運転者のほうには必要である
︒
本質を見抜く統計
AF凶が臨終回となる本連載では︑
これまで高齢者の事故統計を示すと
ともに︑統計の見方や読み方も示し
てきた
︒
昨今は︑あらゆる分野で数伯口擦を設定したり︑実績を統計で
示したりすることが多くなった
︒
統計資料の読み解きは現代人の必須の
教長である
︒
統計の解説本やその危I 18 I 2008‑‑6
人と車
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: 0.5 の 発
基 。
図2.7歳から12歳の歩行者の負傷に関与した乗用車運転者の 発生率 (平成13年から15年) 図1. 0員長から6歳の歩行者の負傷に関与した乗用車運転者の
発生率 {平成13年から15年)
うさを響告する本も多く出ている ︒
たとえば谷間一
郎の
﹃﹁
社会
調査
﹂
のウソ﹄
( 1 )
という本には︑コー
ヒーの摂取量と病気の関係について
の考察がある︒最近︑コーヒー
の摂
取量の多い人のほうに子宮体ガンや
肝ガンが少ないとの研究成果が発表
されたが︑谷間がその本を出版した
こ
0
0 0
年に先立つ数年前︑コーヒ
ーを
一日
二 一
杯以上飲む人は飲まない
人より心臓病で亡くなる率が高い︑
との
NHK
ニュースがあったという︒そのニュースからは︑カフェイン←
心臓病との因果関係を想像してしま
う︒谷間はそこに﹁待った﹂をかける︒
彼は
コーヒーを飲むときに砂糖を
入れる人が多いことから︑コー
ヒー
に含まれるカフェインではなく︑一
緒に摂取する砂糖の糖分が発病の原
因ではないか︑と推理した︒精分の
取りすぎが太りすぎを起こし︑心臓
病を誘発するという︑砂糖←心臓病
の因果の筋もまた考えられる︑とい
うの
だ ︒つまり︑コーヒーと病気の
悶に統計的な関係が見出されたと
き︑コーヒーが原因と単純に考えな
い︒コーヒーを飲む習慣の全容を考
え︑そこから病気と真に関係ある要 因を広く探るのが統計的な考え方のエッセンスなのである︒コーヒーに
入れる砂糖だけでなく︑一緒に甘い
ケーキを食べるかまでの習慣を問う
べきだ︑となるだろう︒
交通事故の統計では︑年齢差や男
ルメ
差が
くっ
きり
と現
れる
︒本連載で
は︑どの年齢が危ないとか︑男友の
どちらが事故を起こすかなどをあげ
つらうのではなく︑その差をもたら
す理由を考察してきた
︒
その
とき
︑
有力な手がかりになるのが︑事故に
遭遇する機会の差に着目する犬棒仮
説であった︒
子供の歩行者対乗用車の事喰誰と誰との間で事故が多いか
今回は犬棒仮説からはいる統計的
な考え方の予筋を示してみよう ︒
図ー
と図
2
は乗用車(経を含む)を運転中に︑第一当事者(加害者)
または第三当事者(歩行者側に責任
のあったケ
l
ス)として︑歩行中のf
供を負傷させた運転者の年齢別の発生率を男女別に示した図である
︒
図
1
の負傷した子供の年齢はO
歳から六蔵である ︒図
2
の子供は七歳から十二歳である︒いずれも平成十三
人と寧 2
∞
8‑6 ( 19 )年からト五年までのデ
l
タを合算したら三年肉の累計でも歩行中の子供
の死者数は少なかった︒運転者を年
齢別に区切ると死者数がゼロである
年齢もあった︒そこで今問は死省の
デ
1
タは割愛した ︒先月号(五月号)を熟読された方
は︑今問の図は五月号の図
2
の一部を男女にわけたグラフだとお気づき
だろうが︑あらためて横軸の項目と
縦軸の値を説明しよう︒
横軸は︑歩行者事故の第.当事告
また
は第
当引者となった乗用卓の一.
運転身の年齢と性別である︒
それ
ぞれ
の年齢と性別に該当する免許保有将
がい
る
︒その免許保有者群から子供相
手の歩行者事故にかかわった運転者
がどのくらい出現したかという発生
率をみる︒発生率の値が縦軸である︒
その発生率をみるには︑発生母体
となる母集団の年齢別および男女別
の運転者(免許保有者)群の数がわ
からないといけない︒免許保有者を
年齢と男女別に示した数値は﹁交通
統計﹂(交通事故総合分析センター
刊)にある︒ただし︑その免許保有
者の数は原付自転車や特殊車両を含
む免許保有者である ︒先月号ではそ
こから図の航を算出したかのような 記述をしてしまったが︑それは訂在しなければならない︒
先月号と今月号の数舶は︑普通乗
用車を運転できる免持保有者の人数
をもとに出した ︒普通乗用車を運転
できるのは︑普通免許をもっている
人のほかに大型免許と二稀免許をも
っ人である ︒その免許の種類別に男
女をわけたデ
l
タは
︑蹴
J察庁のホー
ムペ
l
ジにある︒そこ
の
﹁統計﹂の
項の
﹁安
全
・快適な交通の確保に関
する統計等﹂聞に
ファイルで
公開されている︒
それ
をも
とに
︑わ
れ
われは図中の横舶の年齢と性別の項
目に該当する逆転者の数を算出した︒
f
供が負傷した事故の第一当事者または第て当事者になった運転者の
人数は︑交通事故総合分析センター
に依託し集計した︒その当事者の運
転者.人に相手となる
F
供も‑人という当事者同士の一対一の集計であ
るから︑当事者となった運転者の人
数と子供の人数は同一
であ
る
︒
した
がって︑縦軸の発生率は︑当該の乗
用車を運転できる免許保有省の人
u
から何名の歩行中の子供の負傷者が発生したかという発生率であるし︑
同時に何名の運転者が子供の事故の
当事者になったかという発生率であ る︒舶は同じである ︒先月号と今月
号で図の縦軸の表現が異なるが︑中
身は同じということである ︒
犬棒仮説は初歩の手筋
訂正と解説が長くなってしまった
が︑今岡の凶で注目してほしいのは
男女差である︒三卜歳代と間十歳代
は女性の運転者のほうが
f
供との事故発生率が高い︒
ここで犬棒仮説を解説した干成卜
九年卜二月号(連載第八回)の事故
悲起
率(
関
1 )
と死亡事故惹起率(図2 )
の男女差を思い起こしてほしい︒
どの年齢でも︑男性のほうが女性よ
り事故および死亡事故を起こす率が
高かった ︒
その
哩出
には
︑
k
性はペ
ーパードライバーの比率が男性より
高く︑運転する機会が少ないという︑
犬棒仮説が有力であった ︒それだけ
に︑今阿示された子供を相手の事故
では女性のほうが男性運転者より危
険との結果は意外である ︒
犬棒仮説はその意外感を次のよう
にぬぐう︒女性の三十成代と内十歳
代は
f
育て小の年齢である ︒子供の問事のために運転することが多いの
で︑子供がいる場所を運転する︒そ
( 2 0 )
人と豪 2仰&‑6
宣 言 司
思 2 ・ 事故データの 芝 抗 争 方 G 防 〆
/
れだけ子供に道路で遭遇する機会が
多い
︒四ト成代は自分の子供は十二
歳を超えている場合が多いだろうが︑
それでも円分の子供が通う学校の付
近は子供に遭遇する機会が多い地区
である︑と考えれば︑四十歳代でも
なお小学生以下の子供との事故が男
性より多くても不思議ではないだろ
う ︒自転車の
f
供が負傷する事故を検討
して
も︑
・て
十︑
四成代の女性十
は男性より事故の当事名となる率が
高かった ︒そのことからも︑男女差
は遭遇機会の廷とする犬棒仮説が主
持される︒
しか
し︑
K
性の免許保有者には石いときの免許を死蔵させたへ
1
パ1
ドライバーが多いだろう︒それでも
なお釘性のほうが男性より事故に遭
いやすいのだろうか︒免許の活用の
され方の情報がほしいところである ︒
それにしても︑付親は子供の行動
特性を用解する機会に恵まれるのだ
から
︑内
卜歳
代で
もな
おか
然性
運転
者
のほうが男性より危険というのは︑
どう考えるべきなのだろうか︒経
験によって
f
供との事故を減らすのが難しいことを意味するのだろうか︒
拙著﹃事故と心理﹄
ω
の第1
帝で
︑
私は危険性を十分認識していながら 飛び出し事故を起こしてしまった母親ドライバーの事例を書いた︒
いく
ら注意しても限界があるということ
だろうか︒
そうであるならば︑高齢者はなお
さらである ︒子供との事故を避ける
には︑子どもを避ける戦略が効操的
というのが︑犬棒仮説の帰結である︒
しかし︑犬棒仮説的推考は︑そこで
終るのではなく︑運転有の生活空間
を突っ込んで考える︒
避ける︑逃げるだけの戦略だけに
頼れば﹁いざ﹂の事態へ対処し損ね
ることも経験の教えるところである ︒
いつどこから飛び出すかわからない
チ供を警成することは︑運転中の危
険検出能力を向める ︒少子化した地
域では子供への符成を緩めたために︑
高齢運転者の確認癖がほころび︑そ
の結果出会い頭事故が多いのではな
いだ
ろう
か
︒速
い私
書の
この
種の
認知
能
h
を活性化させるには︑取締りも効用があると内
M
号で指摘した ︒事故統計の考察をそうした運転者
の生活空間の考察へと導くのが犬棒
仮説の本領である ︒
統計を磨こう
犬棒仮説は自転車については切れ味が鈍った(二M
号)
︒自転取につ
いてのデ
l
タが少ないのがその煙出であ
る
︒自転車の路線別の通行台数
の計測が必要である︒自転車事故の
当事者からは︑飲酒の有無︑自動車
免許の有無︑自転車の利用の口的と
頻度などを聞き︑データベースにし
たい
︒道路利用者の生活空間が明ら
かになるような統計指標の整備が望
まし
い
︒
統計は対策の足腰となる︒現在の
尚齢者の事故傾向がそのまま将来の
高齢者と同じになるとは思えない ︒
今までの高齢者はモ!タリゼ!シヨ
ンとともに歩んだ世代であった︒次
に高齢者となるのは︑クルマの大衆
化時代の中︑それで遊んだ団塊世代
であ
る
︒その動向をいち早くとらえ
るために統計指標の整備と統計の読
み方
を鍛
える
こと
が必
.要
であ
る
︒
(よ
しだ
・し
んや
)
文献け谷岡一郎﹃﹁社会調査﹂のウソリサーチ・
リテラシーのすすめ文春新書二
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警察
庁芸
官民
主
2
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安全・快適な交通の確保に関する統計等
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0‑ Eo cr os ao H‑ Z ヨ o葵 cE C
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一億
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一事故と心理一中公新寄ニ
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2008‑ti
人と事