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ホタル生物発光の分子機構研究

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Academic year: 2021

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ホタル生物発光の分子機構研究

著者 丹羽 一樹

雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告

巻 28

ページ 101‑103

発行年 2007‑03‑22

出版者 静岡大学大学院電子科学研究科

URL http://hdl.handle.net/10297/1177

(2)

氏 名 。

(本

籍 )   丹    羽       樹 (愛 知 県 )気 ζ ′ 学位 の種類         (工   学

)

学 位 記 番号    工博 甲第   279  

学位授与の日付    平 成 18年 3月 解 日

学位授与の要件    学位規程第 5条 第 1項 該当 研究科 ・ 専攻の名称    電子科学研究科   電子応用工学

学位論文題ロ    ホタル生物発光の分子機構研究 論文審査委員

(動

曇 )福

田 敦 夫   委 員 山 下 光

教 授       真      助剃受   近江谷   克   裕

論 文 内 容 の 要 旨

ホタルの発光は広 く人々の興味 を惹 き、古 くか ら科学的研究の対象 となってきた。その結果、発 光基質 D一 ルシフェリン、酵素ルシフェラーゼ、発光反応機構などが明 らかにされてきた。

しか しなが ら未だ解明されていない問題が多 く残 されている。特に基質 D一 ルシフェリンの生合成 経路、 `

および発光酵素ルシフェラーゼの多機能性 は、ホタル発光の進化 という学術的意義がある課 題であるだけではな く、ルシフェラーゼアッセイなどの応用 にも期待で きる。本博士論文ではこれ らの問題 を解明するために、ホタル体内における生物発光関連分子の定量分析、あるいはルシフェ ラーゼの酵素機能解析 を行 った。

まず、ヘイケボタルを実験室で飼育 し、幼虫か ら成虫にかけて生育段階ごとにルシフェリンの量 と光学純度 を分析 した

(第

2章

)。

その結果、全てのサンプルに発光基質の光学異性但 一ルシフェリ ンが存在 していることが明 らか となった。

発光基質 D一 ルシフェリンの生合成原料 と考 えられているのは、蛋白質を構成する αアミノ酸のひ とつL― システインである。ホタル体内のシステインの立体 も、実際に調べた ところ L体 のみであっ た

(第

2章

)。

しか しL― システインか ら直接合成で きるのは光学異性体のL一 ルシフェリンである。

以上のことから、L一 ルシフェリンは D― ルシフェリンの生合成中間体であ り、さらにこれはL― シ ステインか ら作 られることが予想 された。この予想 を元 に、ホタルか ら抽出 した粗蛋白質によりL―

ルシフェリンが異性化 されて D一 ルシフェリンとなることを確かめた

(第

2章

)。

この とき補因子 とし て ATP、 Mg2+、 補酵素 A(CoA)が 必要であつた。

次 にルシフェラーゼの酵素反応機構 を検討 した

(第

3章

)。

まず、L一 ルシフェリンのルシフェラー ゼによる反応性 を解析 した。 これはL― ルシフェリンがルシフェラーゼ、だ P、 Mg21の 存在下アデニ

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ル化 される事が過去の研究により報告 されていたためである。更にルシフェラーゼは多機能性 を有 し てお り、発光反応 を触媒するだけでな く、脂肪酸やデヒ ドロルシフェリンなどのカルボン酸 と cOAの 脱水重合反応 (CoAリ ガーゼ反応 )を 触媒することが知 られていた。

そ こでルシフェラーゼ、ATP、 Mg2+、 coA存 在下、 L― ルシフェリンの反応生成物 を HPLC、

MALD1/TOFMSな どにより解析 した。その結果、L一 ルシフェリンが COAリ ガーゼ反応の基質 とな り、ルシフェリルー COAに 変換 されることが明 らか となった。 CoA化 により活性化 されたLニ ルシ フェリンは、エノール化 を経てラセミ体のルシフェリルー COAと なる。 これを力日 水分解することによ り L体 のみでな く D体 のルシフェリンが生成すると考 えられる。実際、加水分解酵素のひとつである 豚肝臓エステラーゼにより D― ルシフェリンが生成することが確認できた

(第

4章

)。

このことか ら、

D― ルシフェリンの生合成 においてルシフェラーゼが関与 していることが示唆 された。またこの生合 成経路がシステインの検出試薬 に応用で きることを確かめた。

更に、ルシフェラーゼの酵素活性 に対する生体物質の作用 を解析 した

(第

5章

)。

ルシフェラーゼ によるCoAリ ガーゼ反応の基質であるデヒ ドロルシフェリンや長鎖脂肪酸などは、発光反応 を強 く阻 害することが知 られている。逆 に DⅡ な どチオールを含む還元性化合物 は発光反応 を促進することが 知 られている。 しか しなが らD[町 は人工的な化合物であ り、生体内には存在 しない。す方、生体内で 最 も強い還元剤 としてはリポ酸がある。そこでリポ酸 をはじめとして、種々の還元性生体物質が発光 反応に及ぼす影響 を調べた。その結果、意外なことに多 くのチオール化合物が発光反応 を阻害 した。

構造活性相関を広 く調べたところ、 リポ酸が これまでに報告 されたどの化合物 よりも強力 に阻害する ことがわからた。更にリポ酸がルシフェラーゼの発光反応だけではな く、CoAリ ガーゼ反応 も阻害す ることが明 らかになった。 リポ酸がルシフェラーゼのCoAリ ガーゼ活性 を阻害するのであれ │ミ ″ ―ル シフェリンの異性化 も阻害 されるはずである。実際にリポ酸 によって異性化が阻害 されることが確か め られた。

以上のように本研究 においてルシフェラーゼ と加水分解酵素 によるキラル異性化 を鍵反応 とする D

一ルシフェリン生合成経路を発見することができた。ホタル生物発光反応は多方面で応用 されている ので、本学位論文の結果は学術的に意義があるのみではな く将来的な応用が期待 される。例えば基質 供給の問題 を改善することに役立つだけでな く、システインの検出試薬 としての新 しい応用が考 えら れる。今後、この生合成経路 に関与する酵素群 を同定 し、その遺伝子 をクローニングして更なる解析 を行いたい。

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論 文 審 査 結 果 の 要 旨

ホタル発光系 はバクテリア検出系など食品衛生検査分野、だ P測 定系や酵素免疫検出系などの医療 検査分野、また遺伝子発現検出などのバイオ支援分野等の産業応用に実際的に給 されている数少ない 生物発光の一つである。発光酵素、その遺伝子及び人工合成 されたルシフェリンが市販 され、多 くの 人々が手軽 に体験できる発光系で もある。 しか しなが ら未だ解明されていない問題が多 く残 されてい るの も現状であ り、特 に基質 D― ルシフェリンの生合成経路 は未解明のままである。本研究ではホタ ル発光系の更なる産業応用 を目標 に、未解明であるホタルルシフェリンの合成経路の解明に挑戦、ル シフエリンの光学異性体や発光酵素ルシフェラーゼの分子識別に着 日し、生化学、生体分析化学を駆 使 した研究 を行 った。

第 1章 では、研究の背景 となるホタル発光研究の基礎 と応用 について述べ、研究の必要性 を的確 に指摘、研究 目的を導いている。

第 2章 では、ルシフェリン等の光学異性体の分析法 を確立、ベイケボタルを実験室で飼育 し、幼 虫から成虫にかけて生育段階ごとにルシフェリンの量 と光学純度 を分析 した。その結果、全て生育段 階において発光基質の光学異性れ ―ルシフェリンが存在することを世界で始めて明 らかにし、L―

ルシフェリンを生合成中間体 とした D― ルシフェリン生合成経路 を提案 した。

第 3章 では、ルシフェラーゼの酵素反応機構 を検討 した。ルシフェラーゼ、だ P、 Mg2+、 coA存

在下、L丁 ルシフェリンの反応生成物 をHPLC、 MALDI∬ OFMSな どにより解析 した結果、L― ルシ フェリンカ℃OAリ ガーゼ反応の基質 とな り、ルシフェリルー COAに 変換 されること、加水分解するこ とにより L体 のみでな く D体 のルシフェリンが生成することを明 らかにした。

第 4章 では、加水分解酵素のひとつである豚肝臓エステラーゼにより D一 ルシフェリンが生成する こと、 D― ルシフェリンの生合成 においてルシフエラーゼが関与することを明 らかにした。

ヽ第 5章 では、ルシフェラーゼの酵素活性 に対する生体物質の作用 を解析 した。その結果、多 くの チオール化合物が発光反応 を阻害、特 にリポ酸がこれまでに報告 さ ・ れたどの化合物 よりも強力 に阻害 することがわかった。

最終章の第 6章 では、結論 を述べ、全体 を総括、更には、ホタル発光系の産業用途 における本研 究の重要性 を考察、今後の進展の可能性 を言及 している。

以上のように、本研究では、生物工学的観点から見て多 くの有意義な知見 を得ている。よって、本

論文は博士 (工 学 )の 学位 を授与するのに相応 しうる内容 を具備 していることを認める。

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