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東北薬科大学 審査学位論文(博士)要旨

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Academic year: 2021

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(1)

東北薬科大学

審査学位論文(博士)要旨

氏名(本籍) ボウ インヤエ

卜 英悦(中国)

学位の種類 博士(薬科学)

学位記番号 博薬科第 2 号

学位授与の日付 平成 27 年 3 月 17 日

学位授与の要件 学位規則第4条1項該当

学位論文題名

海洋由来の放線菌と糸状菌からの生物活性物質の探索 研究( Studies on the bioactive secondary metabolites produced by marine-derived actinomycetes and

fungi )

論文審査委員

主査 教 授 山 下 幸 和

副査 教 授 吉 村 祐 一

副査 教 授 浪 越 通 夫

(2)

海洋由来の放線菌と糸状菌からの 生物活性物質の探索研究

[論文内容要旨]

東北薬科大学大学院 薬学研究科

天然物化学教室 卜 英悦

2015 年 3 月

(3)

1

海洋由来の放線菌と糸状菌からの生物活性物質の探索研究

(Studies on the bioactive secondary metabolites produced by marine-derived actinomycetes and fungi)

東北薬科大学大学院薬学研究科 天然物化学教室 卜 英悦

これまでに分離された微生物は 10 万種を超え、陸上由来の微生物からはさまざまな 医薬品及びそのリード化合物が発見されている。感染症治療における抗生物質の威力 は、青カビから得られたペニシリンによって広く世界に知れ渡り、放線菌により生産 される抗結核薬ストレプトマイシンの発見により絶大であることが分かった。それ以 来の精力的な探索研究により、陸上由来の放線菌と糸状菌から様々な抗生物質が見出 され、数多くの人々を救ってきた。

しかしながら、抗生物質探索の歴史が半世紀を越えた頃から、陸上由来の微生物か らの新規化合物の発見率が著しく低下してきた。そのような状況から、海洋環境に棲 む糸状菌が抗生物質の生産者として注目を集め、近年はさらに海洋放線菌の研究が盛 んになってきた。海洋は地球表面積の 70%以上を占め、縦の広がりも大きい。そこに 生息する海洋生物は、低温、高塩分、低酸素などの過酷な環境に適応した二次代謝系 をもち、陸上生物由来にはない特異な構造と生物活性をもつ化合物が数多く発見され ている。海洋微生物の二次代謝産物に関する研究の歴史はまだ浅いが、新規な化合物 が続々と発見され、医薬品やそのリード化合物の探索資源としての海洋放線菌と糸状 菌に大きな期待が寄せられている。

われわれの研究室では、海綿やホヤなどの海洋無脊椎動物及び海洋由来の放線菌と 糸状菌からの有用生物活性物質の探索研究を行っている。本研究では、海洋環境から の放線菌及び糸状菌の分離と培養、培養液の生物活性スクリーニング、及び生物活性 物質の単離と構造決定を行った。生物活性は、抗結核菌、抗カビ、培養ヒトがん細胞 増殖抑制を中心に、抗炎症や糖尿病治療なども対象にした。

宮城県内各所及び沖縄県西表島で採取したセジメント(海泥) 、海水、海藻及び無脊

椎動物(海綿、ホヤ、イソギンチャク、ホタテガイなど)から放線菌と糸状菌を分離

し、それぞれを培養して生物活性スクリーニングを行った。活性を示した培養液から、

(4)

各種クロマトグラフィーにより化学成分を単離し、MS、NMR、UV などのスペクトル 解析により化学構造を決定した。本論文では、西表島産海洋放線菌 Streptomyces sp.

TPU1236A 株が生産する新規抗 Mycobacterium 化合物の単離、構造決定と生物活性(第

二章) 、宮城県産海洋糸状菌 Penicillium sp. TPU1271 株が生産する新規ポリケタイドの 構造と抗 Mycobacterium 活性(第三章)及び、西表島産海洋糸状菌 Penicillium copticola

TPU1270 株が生産する抗カビ活性物質の構造と活性(第四章)について述べている。

第一章は序論で、微生物由来の物質に関する研究の歴史と発展、及び将来の研究の 動向について述べている。

第二章、西表島産海洋放線菌 Streptomyces sp. TPU1236A 株が生産する新規抗結核物 質の構造と生物活性 1)

Mycobacterium tuberculosis の感染により起こる結核症は、多剤耐性菌(MDR-TB、

XDR-TB など)の出現により、その脅威の再来が懸念されている。 2007 年の厚生労働

省の調査によれば、世界で年間およそ 880 万人の新罹患者があり、死者数は 160 万人 にのぼると推定されている。本邦においても年間約 25000 人の新罹患者が報告され、

死者数は年間 2200 人である。他の細菌感染症と同様に、結核の治療においても薬剤耐 性菌に対する抗生物質の開発が急務となっている。そこで、非感染性の Mycobacterium

smegmatis を試験菌に用いて、海洋由来の放線菌と糸状菌の培養液のスクリーニングを

行った。その結果、西表島で採取した海水から分離した放線菌 Streptomyces sp.

TPU1236A 株の培養液に強い抗 Mycobacterium 活性(阻止円: 35 mm at 50 μg/disc)を見 出した。

Streptomyces sp. TPU1236A 株の培養液(10 L)から、固相抽出(ダイアイオン HP-20) 、 ODS カラムクロマト、HPLC 分取により、新規ヌクレオシド化合物 streptcytosines A–E

(1–5)及び既知化合物 6–11 を単離した。化合物 6–11 は、スペクトルデータを文献値 と比較し、de-amosaminyl-cytosamine (6)、plicacetin (7)、bamicetin (8)、amicetin A (9)、

collismycin A (10) 及び SF2738C (11) と同定した。新規化合物 1–5 は高分解能質量分析

(HRMS)及び 2 次元 NMR ( 1 H- 1 H COSY、 HMQC、 HMBC、 NOESY)の解析により、

構造を決定した。 化合物 1 は、 同時に得られた amicetin (9) の末端アミノ酸の誘導体で、

4-imidazolidinone 環をもっている。化合物 2–5 は化合物 6 のアミド誘導体であった。

単離した化合物 1–11M. smegmatis に対する活性を検討した結果、化合物 9 ( MIC =

8 μM)と 8(同 16 μM )に強い阻害活性が見られ、次いで新規化合物 1 と化合物 7

MIC = 32 μM の活性を示した。新規化合物 2–5 は活性を示さなかった。

(5)

3

第三章、宮城県産海洋糸状菌 Penicillium sp. TPU1271 株が生産する新規ポリケタイ ドの構造

2012 年に宮城県牡鹿半島で採取した養殖カキの殻の付着物から分離した糸状菌 Penicillium sp. TPU1205 株の培養液が M. smegmatis の増殖を抑制した。培養液から ODS カラムクロマト、HPLC 分取により、ポリケタイド、ペプチド、テルペン、アルカロ イドなど 11 成分(化合物 12–22 )を単離した。化合物 1422 は各種スペクトルデータ より、既に報告されている verrucosidin (14)、fructigenine A (15)、verrucofortine (16)、

cyclopenol (17)、cycopenin (18)、penipratynolene (19)、cyclo-( L -tryptophyl- L -phenylalanyl) (20) 及び aspterric acid (21)と同定した。 化合物 1213 は当初、混合物として得られた。

1 H 及び 13 C NMR において 2 セットで検出されるシグナルがあり、立体異性体の混合物

であることが分かったが、平面構造は混合物のままで明らかにした。それぞれの成分

(12a と 13a)は長時間を掛けた HPLC 分取により少量を単離し、NOESY スペクトル

及びそれぞれのアセチル体 (12b と 13b)の NOESY スペクトルを解析することにより、

立体配置を推定した。その結果、化合物 12a13a は 9 位の水酸基のエピマーである ことが分かった。

単離した化合物 12–22M. smegmatis に対する活性を調べた結果、verrucosidin (14) が 40 μg/disc で 11 mm の阻止円を示したが、他の化合物は不活性であった。 Verrucosidin

(14) は神経毒として報告されており、本研究で初めて M. smegmatis に対する抗菌活性

が見出された。

streptcytosine B (2):

O

SMe

O Me O

Me

Me Me

O Me Me

R =

O Me

OH HO

Me

2

N

O Me O N

N

O H

N

O

N

O NH

Me

OH HO O

Me

N N

O H

N R

streptcytosine A (1)

streptcytosine C (3):

streptcytosine D (4):

streptcytosine E (5):

R = R = R =

1 3

5

7 9

1’

1’’

21

1 3

5 7 18

20 1’

11 13

15 17

19

O OMe

O

OH O

R O

5

18

3 17

19 1

7 9

11 13 24

16

15 23 22

21 20

(12a): R = OH (S) (13a): R = OH (R)

2 4

6 8 10

verrucosidin (14) O

OMe

O O O

O

(6)

第四章、西表島産海洋糸状菌 Penicillium copticola TPU1270 株が生産する抗カビ活性 物質の構造と生物活性

深在性真菌症はそのほとんどが難治性であり, 近年ではがんや AIDS 患者の最も重 要な合併症の 1 つとなっている。また、真菌性敗血症で死亡する例も増加傾向にある。

よって、真菌感染症の治療薬の開発は重要な研究課題である。

そこで、 Mucor hiemalis を検定菌に用いて、海洋由来の放線菌と糸状菌の培養液の生

物活性スクリーニングを行った。その結果、西表島の波打ち際で採取した海の泡から 分離した P. copticola TPU1270 株が強い抗 Mucor 活性を示したので、 ODS カラムクロマ ト及び HPLC 分取により、6 種類の化合物(23–28)を単離した。各種スペクトルデー タより、化合物 24–28 は既知の sporogen-AO 1 (24) 、 3-acetyl-13-deoxyphomenone (25) 、 6-dehydropetasol (26)、7-hydroxypetasol (27)、petasol (28)と同定した。化合物 23 の構造 は MS 及び 2 次元 NMR スペクトルなどの解析により決定した。化合物 23 の 2’ -analogue

(coniothyriomycin)が糸状菌 Coniothryrium sp. から単離、報告されており、その同族 体の有機合成品として 23 と同じ構造をもつ化合物が製造されているが、本研究により 初めて天然物として糸状菌により生産されていることが明らかとなったので、

penicillimide と命名した。

抗カビ活性試験の結果、化合物 24、 26 及び 28 が 40 μg/disc で M. hiemalisAspergillus fumigatus に対してそれぞれ 7 と 7 mm 、 11 と 9 mm 及び 8 と 11 mm の阻止円を示した。

Penicillimide(23)は抗カビ活性を示さなかったが、coniothyriomycin(  2’ -analogue)に 抗カビ活性が報告されているので、 2’ の二重結合が抗カビ活性に必須であると考えら れる。

(原著論文)

1) Bu, Y. Y.; Yamazaki, H.; Ukai, K.; Namikoshi, M. Anti-mycobacterial nucleoside antibiotics from a marine-derived Streptomyces sp. TPU1236A. Mar. Drugs 2014, 12, 6102–6112.

Cl H

N

HO O O

OMe O 1

3

5 7

8 1’ 2’

3’ 4’ 5’

penicillimide (23)

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清水 悦郎 国立大学法人東京海洋大学 学術研究院海洋電子機械工学部門 教授 鶴指 眞志 長崎県立大学 地域創造学部実践経済学科 講師 クロサカタツヤ 株式会社企 代表取締役.

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