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イギ リスにおけ るデー タ保 護 立 法 論 の 展 開

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イギ リスにおけ るデー タ保 護 立 法 論 の 展 開

飯 塚 和 之

は じ め に

イ ギ リスで は,不 法 行 為 法 上 の 権 利 と して プ ライバ シー の権 利 が 承 認 され て い な い。 それ を立 法 的 に解 決 しよ う とす る一 般 的 プ ライバ シー権 立 法 も成 立 し て い な い1)。 この よ う な状 況 の なか で,個 人 デ ー タの保 護 を 目的 とす るデ ー タ 保 護 法 が1984年7月 に成 立 し た2)。 コ ン ピュ ー タ処 理 個 人 デ ー タ に 限定 して い る とは いえ,デ ー タ ・プ ラ イバ シ ー権 に関 す る立 法 の 成 立 は,イ ギ リス に お け る プ ラ イバ シー法 の 歴 史 に一 つ の 画 期 を 成 す 出来 事 とい う こ とが で き る。 その 意 味 で,デ ー タ保 護法 の立 法 化 に関 す る論 議 を フ ォ ロー して お く こ とは,プ ラ イバ シー法の研 究上 不 可 欠 の 作 業 とい え よ う。1984年 デ ー タ保 護法 に つ いて は, す で に 別 稿 で そ の 内容 の紹 介 と問題 点 の 指 摘 を行 な って お いた3)。 本稿 は,イ ギ リス ・プ ライ バ シー法 研 究 の 一 環 と して,1984デ ー タ保 護 法 の 成 立 に 至 るま で の い わ ば 立 法前 史 に あ た る デ ー タ保 護 立 法 論 をや や 詳 細 に検 討 し よ う とす る

もの で あ る。

と こ ろで,イ ギ リス に お いて,コ ン ピュ ー タの 出現1こ伴 うプ ライ バ シー の法 的 保 護 の 必 要 性 の 問 題 が提 起 され た の は,世 界 的 にみ て も,そ う遅 い時 期 で は な い。 それ に もか か わ らず,イ ギ リス で は,デ ー タ保 護 法 の立 法 化 は遅 れ て い た。 一 般 的 プ ラ イバ シー 権 の 未 承 認 とい う伝 統 的法 状 況 の下 で,一 般 的 プ ラ イ

1)イ ギ リ ス に お け る プ ラ イ バ シ ー 論 の 史 的 展 開 に つ い て は ,WalterEPratt, Pr̀uαcッ 加 βr̀̀αε π,(1979)が 最 も詳 細 で あ る 。

2)DataProtectlonActi984(ch.35).

3)飯 塚 和 之 「イ ギ リ ス に お け る1984年 デ ー タ 保 護 法 の 成 立 」 法 律 時 報57巻11号108頁 以 下(1985年)。

〔63〕

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バ シー 権 立 法 と同 様 に デ ー タ保 護 法 の 立 法化 に も歯 止 めが 掛 け られて い た。 と ころ が,こ の 状 態 は,1975年 の 政 府 に よ る白 書rコ ン ピ ュ ー タ と プ ラ イ バ シー』4)の公 表 を転 機 と して,立 法 化 の 方 向 を た ど っ た。 この 点 に つ い て,や や敷 術 す れ ば,1960年 代 に は,コ ン ピュー タの 出 現 に よ る個 人 の プ ライノ ドシ ー 侵 害 を防 止 す る た め に,ま ず デ ー タ ・バ ン クの 規 制 の必 要 が 強 調 され た。 それ に は,ビ ッグ ・ブ ラザ ーの 支 配 す るr1984年 』5)の出 現 の イ メ ー ジが 重 な って い た。 と ころが,1970年 代 後 半 に入 い る と,個 人 の デ ー タ保 護 の 問題 は,人 権 保 護 の側 面 の み な らず,個 人 デ ー タの 処 理 を 営 業 とす る産 業 界 の 経 済 的 利 益 の 側面 か ら も見 直 され るよ うに な っ た。 とい う の は,デ ー タの 国 際 的 流 通 に 伴 っ て デ ー タ保 護 法未 制 定 国へ の デ ー タ の流 通 ・処 理 を制 限 す る可 能 性 が で て きた た め,未 制 定 国 の デ ー タ処 理 関 係 業 者 の 経 済 的 利 益 が 阻 害 され る こ と も予 測 さ れ るに 至 った か らで あ る。 ひ い て は,コ ン ピュ ー タ関 係 の 産 業 へ の 影 響 も考 え られ た。 この よ うな人 権 保 護 と経 済 的利 益 保 護 の 二 っ の 流 れ を念 頭 に置 きな が ら,デ ー タ保 護立 法 論 の展 開 を追 っ て見 る こ とに しよ う。 その 展 開 過 桿 は,こ れ まで の と ころ,次 の 三 つ の 時 期 区 分 を 可 能 とす るよ うに 思 わ れ る。第 一 期 は,

1960年 代 後 半 が ら70年 代 前半 に か け て の,様 々 な 団体 に よ る立 法 化 運 動,議 員 提 出 法 案 の 提 出 に よ るデ ー タ保 護 立 法 の世 論 形 成 期 で あ る。 第 二 期 は,1975年

頃 か らの 政府 に よ る立 法 準 備 の 時期 。 第 三 期 は,1981年 の 立 法 案 の 発 表 か ら19 82年 の 第 一 次 デー タ保 護 法 案,1983年 の 第二 次 デ ー タ保 護 法案 を経 て,1984年

デ ー タ保 護 法 の成 立 まで の デ ー タ保 護 立 法 具 体 化 期 で あ る。 立 法前 史 の 展開 を 見 る本 稿 で は,第 三 期 につ いて は,1982年 デ ー タ保 護 法 案 の提 出前 ま で を主 と

して扱 う こと にす る。

1第 一 期:デ ー タ 保 護 立 法 世 論 形 成 期

1.保 守 党 法 律 家 協 会 の 提 案

プ ラ イ バ シ ー 一 般 の 問 題 と な らん で,デ ー タ ・バ ン ク に よ る プ ラ イ バ シ ー 侵

4)σo胆pω 孟 θrsα πdPr̀ひ αcッ,Cmnd.6353,(1975).

5)G…ggO・w・ll・ 酬 就 ・・π 属gh亡 勢F・ 鵬(1949).・

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イ ギ リス に お け る デ ー タ保 護 立 法 論 の展 開 65

害 の 問 題 を は じめ て 提 起 し た の は,「 市 民 的 自 由 の た め の 全 国 評 議 会 」(Nation alCouncilforCivilLiberties=NCCL)が1968年 に 発 行 し た 『攻 撃 さ れ る プ ラ イ バ シ ー 』6》 で あ っ た が,コ ン ピ ュ ー タ と プ ラ イ バ シ ー の 問 題 そ の も の を 法 的 問 題 と して 提 起 し た の は,保 守 党 法 律 家 協 会 法 律 調 査 小 委 員 会

(Sub‑CommitteeoftheLega正ResearchCommitteeoftheSocietyof

ConservativeLawyers)の 発 行 し た 小 冊 子rコ ン ピ ュ ー タ と 自 由 』7)で あ っ た 。 こ の 小 委 員 会 の 目 的 は,「 個 人 デ ー タ を 記 録 して い る コ ン ピ ュ ー タ ・ シ ス テ ム の 抑 圧 的 行 為 か らの 自 由 が.現 在 も し く は次 の10年 間 に,私 的 個 人 に 新 し い 権 利 を 与 え,ま た は そ の よ う な シ ス テ ム の 運 営 が 何 ら か の 立 法 的 規 制 に 服 す べ き こ と を 要 求 す る か 否 か を 検 討 す る こ と」8〕に あ っ た 。 同 委 員 会 は ,現 行 法 を サ ー ベ イ し,そ の 欠 陥 を 指 摘 し た 後 で,コ ン ピ ュ ー タ ・デ ー タ ・バ ン ク 規 制 に 関 し て,10項 目 に わ た る 勧 告 を 行 な っ た 。 こ こ に は,1980年 のOECD 勧 告 の ガ イ ドラ イ ン9}に 見 ら れ る 現 在 の プ ラ イ バ シ ー 保 護 の 基 本 原 則 の 一 部 を 未 整 蓮 の ま ま 見 る こ とが で き る 。 そ れ は 次 の よ う な も の で あ っ た 。 ① 行 政 ・立 法 政 策 と し て,誤 っ た 個 人 情 報 に 対 し て 以 下 の 保 護 を 確 保 す べ き で あ る。(D 本 人 へ の プ リン ト ・ア ウ トの 交 付,(ii)各 プ リ ン ト ・ア ウ ト に は 使 用 目 的 お よ び 情 報 受 領 者 の 住 所 ・名 称 が 示 さ れ る こ と,(iii)裁 判 所 ま た は 審 判 所 は 被 害 者 の 申 請 に 基 づ い て 情 報 の 変 更 ・抹 消 を 命 ず ぐ 権 限 を 有 す る こ と.(iv)'裁 判 所 ま た は 審 判 所 は 誤 情 報 の 過 去 の 受 領 者 に.変 更 ・抹 消 が 通 報 さ れ る べ き こ と を 命 ず る 権 限 を 有 す る こ と.(v)情 報 の 他 目 的 利 用 は 禁 止 さ れ る べ き こ'と。

② 制 定 法 の 規 定 は.個 人 情 報 を 保 持 す る 一 切 の 政 府 デ ー タ ・バ ン ク を 規 制 す べ き で あ る(例 外;警 察 お よ び 対 抗 的 ス パ イ 活 動 記 録)。 ③ 同 様 の 規 定 は,一 切 の 地 方 ま た は 公 共 機 関 の 設 立 す る一 切 の 個 人 デ ー タ ・バ ン ク を 規 制 す べ き で あ

6)DonaldMadgwick,Pr̀ひ αcッμπderÀ̀αcん,(NCCL,1968).

7)ConservativeResearchDepartment,Cb肌p砿̀ersα πdFreedoπL,(1968).

8)」耐.,at3.

9)OEC工 λRecoπ しmθ πdα琵oπo∫ 〃LeCoω πc認(ゾ 〃乙eOECDcoπcθrπ 加gG厩d←

伽 θsgOひ εm̀η8̀んePròθC̀̀0πq/Prε りαCッ απd野 αηεわor4εrFZOωSqブ Pe㎎oπ ὰ加 施,(1980)。 邦訳 は,行 政 管理 庁行 政管 理局監 修 『 世 界 の プ ライバ シ ー

(改 訂版)』(ぎ よ うせ い1鴫2年,)369頁 以 下 に収 録 され て い る。

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る。 ④ 制 定 法 の規 定 は,民 間 の所 有 す る デ ー タ ・バ ン クの一 定 の 部 門 に も適 用 され るべ きで あ る。 ⑤ プ リ ン ト ・ア ウ トか ら除 外 され る秘 密 情 報 と して扱 われ るべ き もの は,そ の 類 型 に お いて 明確 性 を要 す る。 ⑥ プ リン ト ・ア ゥ トを 要求 す る いか な る立 法 に お い て も,誤 情 報 に抗 議 しな か っ た こ と を もって,そ の 真 実 性 の 承 認 とみ な され るべ きで は な い。 裁判 所 ま た は審 判 所 は秘 密 審 理 を 行 な う権 限 を 有 す べ きで あ る。 ⑦ プ リン ト ・ア ウ トに特 定 され た 目的 外へ の 情 報 の 利 用 は,そ れ が 立 法 に よ り違 法 と され る場 合 に は,刑 事 犯 罪 お よ び民 事 の 訴 訟 原 因 とな るべ きで あ る。⑧ 不 当な プ ライバ シー侵 害 を 回避 す るた め に,各 種 機 関 か らプ ール され た情 報 を保 持 す る国 家 デ ー タ ・バ ンク は,次 の規 則 に従 うべ き で あ る。(i)い ず れ か の 部省 の職 員 が 自 己 の義 務 の 遂 行 に 必 要 な 情 報 しか 得 ら れ な い よ うに 当該 バ ンクへ の ア クセ スを 制 限 す る こ と,(ii)当 該 バ ン クが 意 図 した 目 的 に使 用 され るべ きで な い ほ ど に時 期 は ず れ とな った情 報 の抹 消 を定 め る こと。 ⑨ ⑧ の規 則 の遵 守 を確 保 す る ため に,当 該 デ ー タ ・バ ン ク は,当 該 部 省 か ら独 立 した組 織 の 管 理 下 に 置か れ,当 該 部 省 の 長 に 責任 を 負 わ な い独 立機 関 に よ り規 制 され るべ きで あ る。 ⑩ 民 間 デー タ ・バ ン クに つ い て は,一 般 公 衆 に と って な にが 認 めが た い1かを,あ らか じめ 立 法 化 す るよ り も,収 集 さ れ る情 報 の タイ プ ・目的 につ いて の公 衆 の認 識 か ら,い か な る対 抗 的 反 応 が 生ず るか を 見 る ほ うが よ い で あ ろ う。

デ ー タ保 護 論 の この段 階 で は,コ ン ピュ ー タ に よ る個 人 情 報 の 大 量 収 集 ・蓄 積 ・処 理 ・伝 播 な ど に よ る プ ラ イバ シー へ の 脅 威 が 強 調 さ れ て い る の み で,

「現 代 的 プ ラ イ バ シ ー 権 」 論 が 自 覚 的 に 展 開 さ れ て い た わ け で は な か っ たio)。

ま た 保 守 党 法 律 家 協 会 の こ の 文 書 に は,デ ー タの 国 際 的 取 引 の 側 面 か ら の デ ー タ 保 護 立 法 化 の 認 識 も 見 ら れ な か っ た 。

2.1969年 デ ー タ 監 視 法 案(DataSurveillanceBi]11969)

こ の 法 案 は,ケ ネ ス ・ベ イ カ ー 議 員(Mr.KennethBaker)が1969年5

月,上 記 の 保 守 党 法 律 家 協 会 案 を参 考 に して 下 院 に 提 出 し た も の で あ る 。 同 一

10)「 現代 的 プ ライバ シー権 」 とい う用 語法 にっ いては,堀 部 政 男r現 代 の プ ライ バ シー 』

39頁 以 下(岩 波書 店1980年,)を 参 照 の こ と。

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イ ギ リス に お け るデ ー タ 保 護立 法 論 の 展 開 67

内 容 の 法 案 が 後 に 「個 人 記 録(コ ン ピ ュ ー タ)法 案 」(PersonalRecords (Computer)Bill1969)と し て ウ ィ ン デ ル シ ャ ム 卿(LordWindelsham)

に よ っ て 上 院 に も 提 出 さ れ た 。 い ず れ も不 成 立 に 終 っ て い る 。 提 案 者 自 身 が 自 負 し た よ う に,西 側 世 界 の 議 会 で は.は じめ て の デ ー タ 保 護 関 係 の 法 案 で あ っ た 。 も っ と も,提 案 者 が 「変 化 す る 現 代 社 会 の 状 堤 の な か で,我 々 は,一 人 に して お い て も ら う 権 利 を 必 要 と す る」11)と述 べ る に と ど ま っ て い た と こ ろ か ら 考 え る と,こ の 段 階 で も,自 己 情 報 の コ ン ト ロ ー ル 権 と し て の 現 代 的 プ ラ イ バ シ ー 権 に つ い て の 認 識 に は 到 達 して は い な か っ た よ う に 思 わ れ る。 こ の 法 案 は, 正 式 名 称 を 「コ ン ピュ ー タ 情 報 の 不 正 使 用 に よ る プ ラ イ バ シ ー 侵 害 を 防 止 す る 法 案 」 と い い,ベ イ カ ー 議 員 自 身 の 提 案 説 明 に よ れ ば,次 の 五 点 が 重 要 で あ る12)。 第 一 に,特 に 人 民 に 関 す る 情 報 を 保 有 す る コ ン ピ ュ ー タ は,そ の 情 報 が 要 求 さ れ る 目 的 と と も に 登 録 さ れ る 。 そ の 登 録 簿 は 制 限 的 慣 行 登 録 官 に よ っ て 保 管 さ れ る。 第 二 に,い ず れ か の コ ン ピ ュ ー タ に,い ず れ か の 者 の 名 前 が 現 わ れ る 時 に は,そ の 者 は そ の コ ン ピ ュ ー タ が 保 有 す る 個 人 情 報 の プ リ ン ト ・ア ウ トを 受 け と る こ と が で き る 。 第 三 に,各 人 は,情 報 の 正 確 性,保 有 目 的 の 関 連 性 に 抗 議 す る権 利 お よ び 時 の 経 過 に よ り時 期 は ず れ と な っ て い る こ と,し た が っ て 削 除 さ れ る べ き こ と を 要 求 す る 権 利 を 有 す る 。 第 四 に,無 権 限 の 受 領 者 に 情 報 を 送 る デ ー タ ・バ ン ク の 所 有 者 ま た は 運 営 者 は,罰 せ ら れ る。 も し,不 正 確 な 情 報 が 送 られ,そ の 結 果,個 人 が 損 害 を 被 る場 合 に は,損 害 賠 償 の 訴 訟 原 因 が 生 ず る 。 第 五 に,悪 意 の 目 的 で 情 報 を 得 よ う と す る 者 は 罰 せ られ る 。

こ の 法 案 の 主 眼 は,デ ー タ ・バ ン ク の 登 録 制 度 に 置 か れ,登 録 官 の 各 種 の 権 限 の 執 行 を 担 保 す る機 構 に 欠 け て い た 。 こ れ は,こ の 法 案 の 欠 点 と い わ れ た13)。

独 立 の 規 制 権 限 を 有 す る 監 督 機 関 の 設 置 は,あ る べ き デ ー タ 保 護 立 法 に と っ て は 不 可 欠 あ こ と と い え る か ら で あ る 。

11)783Parl。Deb.,H.C.(5thser.)288(1969).

12)1鳳,at285‑288.な お,本 法 案 の 翻 訳 は,行 政 管 理 庁 行 政 管 理 局 監 修 『世 界 の プ ラ イ バ シ ー 』333頁 以 下(ぎ ょ う せ い1978年,)に 収 録 さ れ て い る 。

13)JamesMartinandAdrianRD.Norman,%eσomp碗 θr̀2θd80deε ッ,

519(1973).

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3.ジ ャ ス テ ス の 提 案

ジ ャ ス テ ス(Justice)は,1970年 に 『プ ラ イ バ シ ー と 法 』 と い う報 告 書 を 公 表 し た が,そ の 付 録E「 コ ン ピ ュ ー タ と 法 」14)でこ の 問 題 を 扱 っ て い る。 そ の 結 論 は,個 人 を 保 護 す る た め に,・少 な く と も以 下 の 基 準 を 満 た す 保 護 手 段 が 現 に デ ザ イ ソ され て い る シ ス テ ム の な か に 設 け ら れ る必 要 が あ る,と い う もの で あ っ た 。(i)あ ら ゆ る 事 態 に お い て 自 己 の 与 え る 授 権 に つ い て 独 立 の 公 的 機 関 に 対 し て 責 任 を 負 う地 位 に あ る,い ず れ か の 者 の 特 定 の 授 権 が な け れ ば,

自 分 で 入 れ た の で は な い,い か な る 情 報 も そ の シ ス テ ム か ら引 き出 す こ と を い か な る個 人 ・機 関 ・組 織 に も認 め な い 防 護 手 段 。(ii)そ の 者 の 情 報 が そ の シ ス テ ム に 保 有 さ れ て い る個 人 の,自 己 に 関 連 す る す べ て の 情 報 の プ リ ン トを そ の 選 択 す る い ず れ の 時 で も,適 切 な,,し か し少 額 の 手 数 料 の 支 払 い で 要 求 す る 権 利 。(iii)そ の 者 が 誤 り ・不 公 正 ・誤 解 が あ る と考 え る プ リ ン ト ・ ア ウ ト中 の 情 報 に 対 して,紛 争 の 場 合 に は,独 立 の 審 判 所 へ の 訴 え の 機 会 を 伴 っ て 抗 議 す る個 人 の 権 利 。(iv)い か な る情 報 が そ の シ ス テ ム に よ っ て,い つ,い か な る 権 限 に 基 づ い て 伝 達 さ れ た か を 発 見 す る個 人 の 権 利 。

以 上 の 四 つ の 基 準 は,ま さ に 個 入 の 自 己 情 報 へ の ア ク セ ス 権 の 具 体 化 で あ り, 現 代 的 プ ラ イ バ シ ー 権 に つ い て,そ れ と は 明 確 に 自覚 せ ず に 述 べ て い る もの と い っ て よ い で あ ろ う 。

4.1972年 個 人 情 報 規 制 法 案(ControlofPersonallnformationBill 1972)

本 法 案 は,NCCLに よ り起 草 さ れ1972年2月,レ ズ リー ・ハ ッ ク フ ィ ー , ル ド議 員(Mr.LeslieHuckfield)に よ っ て 下 院 に 提 出 さ れ た も の で あ る

(不 成 立)15)。 正 式 名 称 を 「デ ー タ ・バ ン ク 審 判 所 お よ び 検 査 官 を 創 設 し,個 人 情 報 を 包 含 す る デ ー タ ・バ ン ク の 許 可 に つ い て 規 定 し,亨 一 タ ・バ ン ク に 蓄

14)Justice,.P冠 ひα昭 αη(『̀んθLα ω,53‑55(1970) ,な お,『 ジ ャ ス テ ィ ス 』 と は, 国 際 法 律 家 委 員 会 イ ギ リ ス 支 部(BritishSectionoftheInternational

CommissionofJurists)の 名 称 で あ る 。

15)こ の法 案 は,DonaldMadgwickandTonySmithe ,既e瓦 びαsぬ η(ゾ 乃 ・ εoαcッ,

、4ppθη読 κ1(1974)に 収 録 さ れ て い る 。

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イ ギ リス に お け る デ ー タ保 護 立 法 論 の展 開 69

積 され た 情 報 の不 正使 用 を 防止 す るた め の そ の他 の 規 定 を定 め る ため の 法 案 」 と い う。 本 法 案 の 最 大 の特 徴 は,デ ー タ ・バ ンクの 規 制 ・監 督 の ため の 機 関 と して,デ ー タ ・バ ン ク審 判 所 を創 設 す る こ とで あ る。 法 案 は,ま た国 務 大 臣 の 任 命 す る デー タ ・バ ン ク主 任 検 査 官 お よ び主 任 検 査 官 の 任 命 す る デー タ ・バ ン ク検 査 官 の 制 度 を創 設 す る。 この 主 任 検 査官 ま た は検 査 官 は,審 判 所 に対 して 次 の 事 項 につ い て 報 告 義 務 を 負 う。(i)あ る者 が,〔a体 法 の 要求 す る許 可 を 得 て いな い こと,〔b藩 判 所 の 許可 条項 に従 って い な い こ と,お よ び{c藩 判 所 の 命 令 に従 っ て い な い こと,(ii)本 法 の 下 で 犯 さ れ た一 切 の 犯 罪,(iii)一 切 の デ ー タ ・バ ンク に保 有 され て い る一 切 の 個 人 に関 す る不 完 全 ・不 正確 ・不 適 切 な一 切 の 情 報 。 さ らに.こ の 義 務 の 遂 行 の た め に,主 任 検 査官 ま た は検 査 官 に は,次 の権 限 が 附与 され る。(i)許 可 を要 す る デ ー タ ・バ ンクの 存 在 す る葎 物 等 の 立入 ・検 査 ・調 査 をす る こ と,(ii)許 可 を 要 す る デ ー タ ・バ ン ク の 運 営

に 用 い られ る設備 ・シ ス テ ム ・プ ログ ラムの 検 査 ・調 査 をす る こ と,(iii)許 可 を要 す るデ ー タ ・バ ンクの 保 有 す る情 報 の 検 査 ・調 査 をす る こ と。 ま た審 判

所 は,次 の権 限 を行 使 し う る。(i)デ ー タ ・バ ン クに 蓄積 され て い る情 報 の 項 目の 削 除 また は訂 正 を命 ず る こ と,(ii)情 報 の 削 除 ま た は 訂 正 に つ い て 一 定 の 者 に通 報 す べ き こ とを 免 許保 有 者 に命 ず る こ と,(iii)損 害 を 被 っ た 者 に 損 害 賠 償 を 支 払 うべ き こ とを 免 許 保有 者 に命 ず るこ と,(iv)免 許 デ ー タ ・バ ン クか ら不 正 手 段 で 情 報 を取 得 し た者 に対 して,そ れ に よ っ て被 害 を受 け た者 へ の損 害 賠償 の支払 を命 ず るこ と,(v)本 法 の下 で の 許可 を得 な か っ た こと に よ っ て,ま た は無 許 可 デ ー タ ・バ ン クの 運 営 によ って 損 害 を被 った 者へ の損 害賠 償 の支 払 を命 ず る こと。

本 法 案 は,審 判 所 の権 限の 側 面 か ら個 人 情 報 の 規 制 を規 定 して い るが,本 法 案の 重 点 は,提 案 者 が 「基 本 的 権 利 」16)と 呼 ん だ 自分 自身 の フ ァ イ ル に 存 在 す る情 報へ の個 人 の ア ク セ ス権 を認 め て い る と こ ろ にあ る。 そ して,コ ン ピュ ー タ化 され た 個 人情 報 の 蓄積 に よ る人 権 侵 害 の 可 能 性 の 有 無 に論 議 も集 中 して い た。 しか し,本 法 案 提 出前 の 議 会 の 討 論 に お い て は,政 府 は,コ ン ピュ ー タ利

16)830Parl.Deb.,H.C.(5thser.)1142(1972)。

(8)

用 によ る行 政 の 効 率 性 の側 面 で の経 済 的 利益 に は言 及 して い たが プ ライ バ シー 侵 害 の 可 能 性 を 否 定 し,規 制 を時 期 尚早 と して い た1η。 その 認 識 は,次 の ヤ ン

ガ ー委 員 会 に も引 き継 が れ た 。 5.ヤ ン ガー 委 員 会 の 勧 告

1972年7月 に報 告 書 を公 表 した 「プ ライバ シー に関 す る委 員 会 」(ヤ ンガ ー 委 員会)は,民 間 部 門 にお け るプ ラ イバ シー 問 題 を 全般 的 に検 討す る委 員 会 で あ っ たが,す で に大 きな 問 題 とな って いた コ ン ピュ ー タ に よ る個 人 情 報 の 処 理 に関 して も一 章 を設 けて,こ れ を 検 討 して い る18)。そ の認 識 は,い われ る よ う な プ ラ イバ シーの 脅 威 は,現 在 まで の と こ ろ ほ とん ど存在 しな い。 けれ ど も, 将 来 は そ の可 能 性 が あ る,と い う もの で あ り,さ しあ た り,コ ン ピュ ー タ に よ

る情 報 処 理 の成 長 お よ び技 術 を再 検 討 す る常 設 の 委 員 会 を 設 置 す る こ とを勧 告 す る,と した。 ま た,民 間 の コ ン ピ ュー タ ・ユ ー ザ ー が 自主 的 に採 用す べ き個 人 情 報 処 理 の た め の10個 の 原 則 を勧 告 した。 この 原 則 は,そ の 後 の 議 論 で,非 常 に重 視 され,イ ギ リスで の デー タ保 護 原 則 の 原 型 とな った 。 そ れ らは,次 の

とお りで あ る 重9}。

①[目 的外 使 用 の 禁止]情 報 は,あ る特 定の 目的 の た め に保 有 され て い る も の とみ な され な け れ ば な らず,適 切 な承 認 が な けれ ば他 の 目的 の ため に 使

用 され て は な らな い 。 ・

②[ア ク セ ス制 限]情 報 に対 す るア クセ ス は,情 報 が 提 供 され た 目的 の ため に それ を有 す る権 限 を与 え られ て い る者 に 限定 され な けれ ば な らな い。

③[情 報 量 の 必要 最小 限性]収 集 され,保 有 され る情 報 の 量 は,特 定 の 目的

17)822Par1.Deb.,H.C.(5thser.)487‑502(1971).

18)Rθporεoゾ 仇 θ α)mm漉 εeoπPr融cッ,cん αμer20,Cmnd.5012,(1972).

委 員 長 ヤ ン ガ ー(KennethYounger)の 名 を 冠 して 通 称 さ れ る,こ の 委 員 会 に つ い て は,堀 部 政 男 「イ ギ リ ス の 法 と 新 聞 」 新 聞 研 究1973年8月 号49頁 以 下,同 「紹 介(イ ギ リス)」 比 較 法 研 究36号226頁 以 下(1974年)を 参 照 の こ と 。 ま た,同 委 員 会 の 勧 告 の 全 般 に つ い て は,飯 塚 和 之=堀 部 政 男 「イ ギ リス に お け る 行 政 と プ ラ イ バ シ ー 」 ジ ュ リ ス ト589号81頁 以 下(1975年)を 参 照 の こ と 。

19)詳 し く は,堀 部 政 男 「イ ギ リ ス に お け る 最 近 の プ ラ イ バ シ ー 保 護 論 」 ジ ュ リ ス ト 760号20頁 以 下(1982年)を 参 照 の こ と 。 本 文 中 の 各 原 則 に 付 け ら れ た 見 出 し は,

こ の 堀 部 論 文 に 拠 っ て い る 。

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イギ リス に お け る デ ー タ保 護立 法 論 の展 開 71

の 遂行 に必 要 な最 小 限 に と どめ な けれ ば な らな い。

④[個 人 識 別 の 分 離]統 計 目 的 の ため に情 報 を処 理 す る コ ン ピュ ー タ ・シス テ ムに お いて は,そ の設 計 お よ び プ ロ グ ラム で 個人 を識別 す る もの を デ ー

タの 他 の部 分 か ら分離 す るよ う適 切 な措 置 が と られ な け れ ば な らな い 。

⑤[情 報 を 知 ら され る権 利]情 報 主 体 が 自 己 に関 して 保 有 され て い る情 報 に つ いて 知 ら され る手 段 が な け れ ば な らな い。

⑥[情 報 の 悪 用 防 止]シ ス テ ム に よ って 到 達 され る安 全 の レベル が ユ ー ザ ー に よ って 事 前 に 明 らか に され な けれ ば な らず,ま た その レベ ル は,情 報 の 故 意 の 悪 用 ま た は不 正使 用 に対 す る予 防 措 置 を含 ま な けれ ば な らな い 。

⑦[監 視 シス テ ム の設 置]安 全 シス テ ム に は,な ん らか の 侵 犯 が あ る場 合 に それ を探 知 す る こ とが で き るよ う に監 視 シ ステ ムが 備 え られ な けれ ば な ら な い。

⑧[情 報 保 有 期 間 の 明 示]情 報 シス テ ム の設 計 に お いて は,そ れ を 超 え て情 報 が 保 有 され て は な らな い期 間が 明示 され な けれ ば な らな い。

⑨[情 報 の不正 確性 の訂 正〕保 有 され て い るデ ータ は正確 で な け れ ば な らな い 。 情 報 の 不 正 確性 の 訂正 お よ び最 新 性 を確 保 す る装 置 が な けれ ば な らな い。

⑩[価 値 判 断 の コー ド化]価 値 判 断 の コー ド化 に は注 意 が 払 わ れ るべ きで あ る。

一 般 的 プ ラ イバ シー 権 に つ いて は ,そ の立 法 化 に つ き否 定 的態 度 を と っ たヤ ンガー 委員会 は,プ ラ イバ シー 権 その もの を 定 義 す る こ とを 回避 した。 しか し, 個 別 課 題 で あ る コ ンピ ュー タ とプ ライ バ シー の 問題 につ いて は,積 極 的 対 応 は しなか っ た もの の,・上 の よ うな 原 則 の定 立 を は か る こと に よ って,こ の 分 野 で の プ ライバ シ ー保 護 の 必 要 性 を認 め ざ るを 得 な か っ た 。

6.小 括

ヤ ンガ ー委 員 会 の勧 告 に もか か わ らず,こ の 時 期 の政 府 の プ ライバ シー 問 題

へ の取 り組 み は,総 体 と して 消 極 的 な もの で あ っ た。 そ れ は次 の よ うな一 連 の

経 過 か ら窺 う こ とが で き る。 まず,第 一 に,ヤ ンガ ー委 員会 の設 置 は,政 府 が

プ ライバ シー問 題 の 現 実 性 を 承 認 した もの で あ ったが,同 委 員 会 を任 命(1970

(10)

年5月)し た労働 党 政府 も,ま た委 員会 が 実 質 的 に始 動 した 直 後(1970年6月) に 政権 に つ い た保 守 党 政 府 も公 的 機 関 に よ るプ ライ バ シー侵 害 問 題 の 検 討 を諮 問 事 項 か ら除 外 した こ とで あ る。 個 人 情報 の 蓄 積 とい う点 か らみ れ ば,公 的 機 関 に よ るそ れ の ほ うが 民 間 機 関 に お け る よ り も重 視 され な け れ ば な らなか っ た に もか か わ らず,労 働 ・保 守 両 政 府 と もに これ を無 視 した の で あ る。 第 二 に, 通 常,重 要 報告 書 が 公 表 され る と,そ の 後 の 議 会 で 討 論 され る こ とに な るが, ヤ ンガ ー 報告 書 にっ い て は,公 表 後 一 年 も経 過 した後 で 行 な わ れ た こ とで あ る

(1972年7月 報 告 書 公表 。1973年7月 議 会 で 討 論 。)20〕 。 重要 な 報告 書 に対 す る 政 府 自身 の 態 度 決 定 を 回 避 して い た こ とに な る。 第 三 に,政 府 は,1973年7月 の 議会 の討論 の なかで,同 年中 に政 府機 関 の有 す る コ ン ピュー タ と プ ラ イバ シー

との 関 係 を も含 め て,コ ン ピュ ー タ とプ ライバ シー に関 す る 白書 を公 表 す る と 約 束 して い た21)にもか か わ らず,そ れ が 公 表 され なか っ た こ とで あ る。 この 時 期 にお け る政 府 の 消 極 的 対応 は,次 の 時期 に お け る政 権 の 労 働 党 政 府 へ の 移行

に よ り転 換 す る。

II第 二 期:デ ー タ保 護 立 法 準 備 期

第 二 期 は,1975年12月 の 政 府 白 書rコ ン ピ ュ ー タ と プ ラ イ バ シ ー』 の 公 表 に 始 ま り,リ ン ドッ プ 委 員 会 報 告 書 の 公 表 を 頂 点 と す る 政 府 に よ る立 法 準 備 の 時 期 で あ る 。

1.政 府 白書

1974年2月 に 政 権 に つ い た 労 働 党 政 府 は,75年12月,前 政 府 の 約 束 して い た 政 府 白 書 「コ ン ピ ュ ー タ と プ ラ イ バ シ ー 』22)およ び そ の 補 遺 で あ る 『コ ン ピ ュ ー タ:プ ラ イ バ シ ー に 対 す る保 護 措 置 』23}を公 表 し た。 こ の 白 書 の な か で,政 府 は,ヤ ン ガ ー 委 員 会 の 勧 告 し て い た 常 設 委 員 会 の 役 割 を 超 え て,個 人 情 報 を 保

20)859Parl.Deb.,H.C.(5thser.)1955‑2058(1973).

21)859ParLDeb.,H.C.(5thser.)1968‑1969(1973).内 務 大 臣 ロ バ ー ト ・

カ ー 氏 の 答 弁 。

22)(】oπLp磁 εrsα π(ノPr̀ひ αcッ,Cmnd.6553,(1975).

23)σomρ ㏄̀θrs:翫 ノセ9防 αrdsforP冠uαcyCrnnd.6554,(1975).

(11)

イ ギ リス にお け るデ ー タ保 護 立 法 論 の展 開

73、

有 す る コ ン ピ ュー タ ・シス テ ムが 情 報主 体 の プ ラ イバ シー に対 す る適切 な保 護 措 置 を伴 って 運 営 され て い るか を確 保 す る こ とを 目的 とす る機 構 の 設 置 の た め の 立 法 の 必 要 性 を 認 め た24)。個 人 情 報 を処 理 す る コ ン ビ昌 一 タ ・ユ ー ザ ーが も はや プ ラ イバ シー 保 護 に っ いて の 唯一 の 判 断者 で は な く,法 に よ る基 準 に 従 っ て 判 断 され るべ きで あ り,立 法 に よ るのが 正 しい コー スで あ る と した。 立 法化 に あ た って は,一 つ に は制 定 法 上 の 諸 目標 を確 立 し,二 つ に は監 督 機 関 と して の恒 常 的 な制 定法 上 の 機 関 の 設 置 を 不 可欠 とす る25}。そ して,こ の 機 関 設 置 の 方 法 を準 備 す る委 員 会 を 任 命 す る と した26》 。 この 臨時 的 性 格 を付 与 され た 委 員 会 が 次 の デ ー タ保 護 委 員 会 で あ った 。

2.デ ー タ保 護 委 員会 報 告 書

(1)は じめ に 政府 白書 の方 針 に基 づ いて1976年 に 「デ ー タ保 護 に関 す る委 員 会」 が 内 務 大 臣 に よ って 任命 され た。 当初,サ ー ・ケ ネ ス ・ヤ ンガー 氏 が 委 員 長 に任 命 され た が,同 氏 の 急 逝 に よ り,同 年6月 サ ー ・ノ ー マ ン ・ リン ドッ プ 氏(SirNormanLindop)が 新 委 員 長 に任 命 さ れ,7月27日 に 発 会 合 が もたれ た。1978年12月 に その 報 告 書 が 議 会 に 提 出 ・公 表 され た271。この 報 告 書 は,コ ン ピュー タに よ る個 人 デ ー タの 処 理 が 問 題 とな るすべ て の 分 野 につ いて, その 現 状 を明 らか に し,立 法 的 規 制 の 必 要 性 を勧 告 した。 同報 告 書 は,本 文 ・ 付 録 あ わ せ て460頁 に及 ん で い る。 各 部 ・章 の見 出 しを み るだ け で も,そ の 検 討 対 象 が いか に広 範 囲 に わ た って い るか を 知 る こ とが で きる の で,そ れ を次 に 訳 出 して お こ う。

第1部 ・背 景

第1章 序 説,第2章 プ ラ イバ シー とデ ー タ保 護,第3章 デ ー タ保 護 に 対 す るテ ク ノ ロ ジーの 影 響,第4章 国 際 的 状 況 。

第H部 連 合 王 国 に お け る 現 在 の コ ン ピ ュ ー タ 化 さ れ た 個 人 情 報 の 運 用 状 況 第5章 白 書 提 案 に 対 す る 一 般 的 反 応,第6章 中 央 政 府,第7章 国 民 保 24)Co7η ρ㏄̀θrsα η(9P冠 ひαCツ,atpara.4。

25)1dL,atpara.30.

26)∫dL,atpara。31。

27)Repor̀qノ ε んeCbmm̀̀̀eoπ 工bεα 乃 「òec̀εoη,C加 πdL7341,(1978).

(12)

健 制度,第8章 警 察 お よ び 防衛 手段,第9章 地 方 政 府,第10章 国 有 企 業, 第11章 教育,第12章 雇 用,第13章 信 用 お よび 信 用 報告,第14章 銀 行 業, 第15章 保 険,第16章 住 宅 組 合,第17章 ダ イ レク ト ・マ ー ケ テ ィ ン グ。

第 珊部 将 来 の公 正 な 運 用 の 確 保:デ ー タ保 護法

第 ユ8章 何 が 規 制 され るべ きか,第19章 どの よ う に規 制 ざ れ るべ きか, 第20章 誰 が 窺 制 す べ きか,第21章 デ ー タ保 護 庁 の た めの 制 定 法 上 の 指 針, 第22章 費 用 。

第IV部 特 別 に重 要 な 領 域

第23章 警 察 お よ び 防衛 手 段,第24章 医 療 記 録 ・社 会 事 業 記 録,第25章

雇 用 記 録 ・教 育 記録,第26章 統 計,調 査 お よ び公 文 書,第27章 越 境 デ ー タ 流通,第28章 デ ー タ処 理 ビュ ー ロ,第29章 統一 個 人 識 別番 号 。

第V部 デ ー タ保 護 法 の そ の 他 の 諸 結 果

第30章 第三 者情 報,第31章 公 表 情 報,第32章 条 件 付 特 権,第33章 民 事上 の救 済方 法,第34章 信 頼 違 反 に 関 す る法,第35章 契 約 に よ る適 用 排 除, 第36章 死 亡 お よび 清算,第37章 デ ー タ保 護 法 の その 他 の 制 定 法 上 の含 意 。

第VI部

第38章 主要 な 立 法上 の勧 告,第39章 次 の 段 階 。

② デー タ保 護 委 員 会 の プ ライ バ シー 概 念 委 員 会 の 打 ち 出 した立 法 上 の勧

告 を見 る前 に,こ の 段 階 で デ ー タ保 護 委 員 会 の 採 用 した プ ラ イバ シー概 念 に つ

いて 見 て お く ことが 有 益 で あ ろ う。 報 告書 は,r第2章 プ ラ イバ シ ー と デ ー

タ保 護 』 にお いて 「デ ー タ ・プ ラ イバ シー の概 念 」 の 小 見 出 しの 下 で,プ ライ

バ シ ー と デ ー タ保 護 の 関 係 を 次 の よ うに説 明 して い る。 「情 報 シス テ ム に お け

る個 人 デ ー タの 処 理 とな ん らの 直 接 的 関係 を もた な い プ ライバ シ ーの 諸 側 面 が

存 在 す る。 それ ら は,家 宅へ の侵 入,立 入 り捜 索 権 や メ デ ィ アの 当惑 す る よ う

な公 表 で あ る。 同 じく,プ ライバ シー とは な ん らの 直 接 的 関 係 を もたな いデ ー

タ保 護 の諸 側 面 が 存 在 す る。 た とえ ば,人 々 に 関 して あ る決 定 をす る ため に不

正 確 な ま た は不 十 分 な情 報 を 利 用 す る こ とは ま さ し くデ ー タ保 護 の 主 題 で あ

るが,し か し,そ れは必 ず し もプ ライバ シーの 問 題 を提 起 す る と は限 らな い。 」28)

(13)

イギ リス に お け るデ ー タ 保 護立 法 論 の 展 開 75

そ し て,二 つ の 分 野 が オ ー バ ー ・ ラ ッ プ す る 領 域 が 存 在 し,そ の 領 域 を 「情 報

プ ラ イ バ シ ー 」 ま た は,よ り よ く は 「デ ー タ ・プ ラ イ バ シ ー 」 と 呼 ぶ こ とが で き る,と し た 後 で,デ ー タ ・プ ラ イ バ シ ー を 次 の よ う に 定 義 す る 。 「デ ー タ ・ プ ラ イ バ シ ー 」 と は 「自 己 に 関 す る デ ー タ の 流 れ を コ シ ト ロ 」 ル す る 個 人 の 権 利 」 で あ る29)。 さ ら に,デ ー タ 保 護 法 の 目 的 の た め に は,プ ラ イ バ シ ー と は, 次 の よ う に 定 義 さ れ るべ き で あ る とす る。 す な わ ち,「 プ ラ イ バ シ ー と は,い か な る 主 体 に 関 し て も,自 己 に つ い て の ど の よ う な デ ー タ が 他 の ど の よ う な 者 に 知 られ る べ き か,ま た こ れ ち の 者 が そ れ らの デ ー タ を 利 用 す る こ と に 関 し て ど の よ う な 条 件 に よ る か を 自 ら決 定 す る 利 益 で あ る。」30)と。 こ こ か ら 引 き 出 す こ と の で き る 結 論 は,プ ラ イ バ シ ー の 概 念 に 関 し て,イ ギ リ ス で も,こ の 段 階 に お い て ア メ リカ の 有 力 な 学 説3nの 影 響 を 受 け て,自 己 の デ ー タ の コ ン ト ロ ー ル 権 と 把 握 す る こ と が 一 般 化 し て き た,1と い う こ と で あ る 。 ま た,先 き の デ ー タ ・ プ ラ イ バ シ ー と い う 用 語 の 用 い 方 は,デ ー タ 保 護 の 問 題 が プ ラ イ バ シ ー 論 の な か で の 一 部 の 領 域 に 過 ぎ な い こ と を 示 唆 して い る 。 そ の 意 味 で,デ ー タ保 護 法 の 立 法 化 は,イ ギ リス に お け る プ ラ イ バ シ ー 法 の 立 法 化 論 の な か で の そ の 一 部 を 実 現 す る こ と に な る に 過 ぎ な い こ と を 確 認 して お く必 要 が あ ろ う 。

③ 立 法 上 の 勧 告 委 員 会 は,デ ー タ保 護 の た め に,コ ン ピ ュ ー タ ・ユ ー ザ ー の 規 制 を 中 心 と す る デ ー タ 保 護 法 の 制 定 の 必 要 性 を 勧 告 し た 。 委 員 会 の 構 想 し た デ ー タ 保 護 法 の 内 容 は 次 の よ う な も の で あ っ た32)5

① 制 定 法 上 の 諸 原 則 制 定 法 に 宣 言 さ れ るべ き デ ー タ 保 護 の 諸 原 則 は,デ ー タ 主 体,デ ー タ ・ユ ー ザ ー,そ し て 社 会 全 体 の そ れ ぞ れ の 利 益 の た め に 定 め ら

28)∫dL,atpara.2.03.

29)11dl,atpara.2。04。

30)1(乳,atpara.21.26.

31)(翠A.Westin,、P吻 αcyα πd乃 θedom7(1967);A。R.Mi1正er,

跣e、4ssα 嘘oπ 丹̀び αcy40(1971).邦 訳 ・片 方 善 治 ・饗 庭 忠 男 監 訳 『情 報 と プ ラ イ バ シ ー 』(ダ イ ヤ モ ン ド社1974年,)。

32)リ ン ド ッ プ 委 員 会 の 勧 告 に つ い て は,堀 部 政 男 「イ ギ リ ス に お け る プ ラ イ バ シ ー

の 法 的 保 護 一 リ ン ド ッ プ 報 告 書 を 中 心 と し て 一 」 『現 代 イ ギ リ ス 法 』(内 田 先

生 古 稀 記 念 論 文 集)31頁 以 下(成 文 堂1979年,),飯 塚 和 之 「イ ギ リ ス の プ ラ イ バ

シ ー 保 護 立 法 の 運 用 と 実 態 」 ジ ュ リ ス ト742頁269頁 以 下(1981年),同 「プ ラ イ

(14)

れ るべ き で あ る が,そ れ ら は 次 の と お り で あ る 。

デ ー タ主 体 の 利 益 の光 め に

(Dデ ー タ主 体 は,自 己 に関 連 す る どの よ うな 個 人 デ ー タが 処 理 さ れ て い るか,な ぜ そ れ らの デ ー タが 必 要 と され るの か,ど の よ う にそ れ らが 利 用 され るの か,誰 が それ らを利 用 す るの か,そ の 目的 は何 か,お よ び そ の 期 間 は ど の く らい に な るの か を 知 るべ きで あ る。

(ii)個 人 デ ー タ は,そ れ らが 取 得 され た時,ま た はそ の 後 に公 認 さ れ た時 に知 ら され て い る範 囲 で,か つ その 目的 の ため にの み 処 理 され るべ きで あ る。

(iii)処 理 され る個人 デ ー タ は,正 確.かっ 完 全 で,そ れ らが 利 用 さ れ る 目 的 の ため に 関 連性 を有 し,か つ現 在 性 を有 した もの で あ るべ きで あ る。

(iv)知 ら され た,ま た は 公認 され た 目的 の た め に必 要 な 個 人 デ ー タ以 外 の もの は処 理 され るべ きで はな い。

(v)デ ー タ主 体 は,こ れ らの 諸 原 則が 守 られ て い るか ど う か を 確 か め る こ とが で き るべ きで あ る。

ユ ー ザ ー の 利 益 の ため に

(vi)ユ ー ザ ー は知 らされ た,ま た は公 認 され た範 囲 で,か つ その 目的 の た め に金 銭 その 他 の 源 資 で の 不 当 な 余 分 の 費 用 を払 う こ とな しに,自 己の 合 法 的利 益 ま た は義 務 の 遂 行 の ため に個 人 デ ー タ を処 理 す る こ とが で き るべ きで あ る。

社会 全体 の利 益 の た め に

(vii)社 会 は全 体 と して,個 人 デ ー タの 処 理 か ら生 じ う る い っ さ い の 便 益 を享 受 し,か つ そ の処 理 か ら生 じる い っ さ いの 侵 害 か ら保 護 され るべ き で あ る。

② 規 制 対象 領 域 は,公 的 部 門,民 間 部 門 の 双 方 とす る。 対 象 デ ー タ と して は,自 動処 理 デ ー タの み を対 象 と し,手 作 業 に よ るデ ー タ は対 象 外 とす る。 対

バ シー保 護法 の比較法的研究(イ ギリス)」比較法研究43号59頁以 下(1981年)を

も参照 の こと。

(15)

イギ リス にお け るデ ー タ保 護 立 法 論 の 展 開 77

象 とな るデ ー タの 種 類 は,個 人 デ ー タ と し,法 人 そ の他 の 団体 に関 す る デー タ は含 ま な い 。

③ シス テ ム の設 置 デー タ保 護 庁 へ の 登 録制 度 を 採 用 す る。

④ 運 用 コー ド 運 用 コー ド方 式 は,リ ン ドップ 委 員 会 の考 え た 独特 の方 式 で あ り,こ れ は,デ ー タ処 理 行 為 の 異 な っ た タ イプ ご と に定 め られ る もの で, デ ー タ保 護 庁 が 起 草 し,議 会 の承 認 を必 要 とす る制 定 法 的 文 書 の 形 式 を と る。

各 ユ ー ザ ー は,該 当 の運 用 コー ドに従 って 登 録 をす るこ と にな る。

⑤ 監 督 機 関 デ ー タ保護 庁 が 監督 機 関 と して 設 置 され る。 この 機 関 は,政 府 か ら狸 立 した 機 関 で あ り,大 臣 の監 督 下 に置 か れ な い。 保 護 庁 は,理 事 会 と 事務 局 か ら構 成 され,理 事 は議 会 両 院 の 解 任 請 求 によ って の み解 任 させ られ る。

財 政 は,ユ ーザ ー に対 す る登 録 手 数 料 に よ って ま か な わ れ る。 デ ー タ保 護 庁 は, デ ー タ ・ユ ーザ ー に対 す る各 種 の規 制 権 限 を有 す る。

⑥ 適 用 除 外 適 用 除 外 は,非 常 に 狭 く考 え られ て お り,国 防 上 の 個 人 デー タ のみ が デ ー タ保 護 法 の 対 象 外 と され る。

⑦ そ の他 登 録 解怠,運 用 コ ー ド違 反 が 犯 罪 と され,運 用 コー ド違 反 に よ り個 人 に損 害 を与 え た場 合 に は,デ ー タ ・ユ ー ザ ー は損 害賠 償 を しな けれ ばな らな い。

3.小 括

この 時 期 の特 徴 は,リ ン ドップ委 員 会 報 告 書 の 公 表 に よ り,デ ー タ保護 立 法 の 実 現 が 間 近 に せ ま った こ とを人 々 に期 待 させ た こ とで あ る。 そ して,こ れ以 降 の 議 論 は,立 法化 の 是非 を 巡 っ て で は な く,リ ン ドッ プ勧 告 の 実 現 か否 か,

と い う形 で,具 体 的 な立 法の 内容 を ど う形 成 す るか に論 議 が 集 中 して い く こ と

に な る。 そ れ に 拍 車 を か け た の は,OECD,ヨ ー ロ ッパ 評 議 会EC等 で

の こ の主 題 に関 す る審 議 の 急 速 な進 行 で あ っ た 。 リ ン ドッ プ 報 告 書 も,一 章

を割 い て,国 外 の 動 向 を紹介 して い た。 ま た,立 法 案の 内 容 に 関 して い え ば,

リン ドッ プ勧 告 は,デ ー タ主 体 の 権 利 保 護 と並 んで デ ー タ ・ユ ー ザー の 利 益 に

も考 慮 を払 っ て い た。 制 定 法 上 の 諸 原 則 と して,デ ー タ主 体 の利 益 の た めの,

い わ ゆ るデ ー タ ・プ ラ イバ シー 権 が 宣 言 され るべ き ζ と,と 同時 に,デ ー タ ・

(16)

ユ ー ザ ー の 利益 に 関 す る原 則 も宣 言 さ れ るべ き ことを 明 らか に して い た か らで あ る。 近 い将 来 に 具 体化 され るで あ ろ うデ ー タ保 護 立 法 が,デ ー タ主 体 の 権 利 保 護 立 法 で あ る と同 時 に,デ ー タ ・ユ ーザ ーの 保 護 立 法 と して の 性 格 を も付与 され るで あ ろ う こ と を,リ ン ドップ報 告 も承 認 して い た,と い う ことが で き よ う。

III第 三 期=デ ー タ 保 護 立 法 具 体 化 期

第 三 期 は,前 期 の 準 備 段 階 を 経 て 政 府 の 手 に よ る 立 法 作 業 が 具 体 化 す る 時 期 で あ る 。

1.保 守 党 政 府 の 文 書 回 答

前 述 の1978年12月 の リ ン ドッ プ 報 告 書 の 公 表 以 後,労 働 党 政 権 の 下 で は 見 る べ き動 きが な い ま ま,翌 年5月 政 権 は サ ッ チ ャ ー 女 史 の 率 い る 保 守 党 に 移 っ た 。 こ の 政 権 も 当 初 は リ ン ド ッ プ 勧 告 に 積 極 的 に 応 え よ う と は し な か っ た 。 た と え ば,1980年12月 に,内 務 大 臣 ホ ワ イ ト ロ ウ 氏(Mr.WilliamWhitelaw)

は,こ こ 数 カ 月 以 内 に プ ラ イ バ シ ー お よ び デ ー タ 保 護 に つ い て の 政 策 ス テ ー ト メ ン トを 発 表 す る 意 思 の な い こ と を 表 明 し て い た33)。 と こ ろ が,1981年3月19

日,政 府 は,議 会 の 質 問 に 対 す る 文 書 回 答 に お い て 立 法 の 方 針 を 明 ら か に し た34)。 す な わ ち,プ ロ ク タ ー 氏(Mr.Proctor)が,政 府 は 自 動 的 に 処 理 さ れ る 個 人 情 報 を 保 護 す る 立 法 の 提 案 を 発 議 す る か 否 か を 質 問 し た の に 対 し て, 前 述 の 内 務 大 臣 ホ ワ イ トロ ウ は 次 の よ う に 回 答 し た 。 「政 府 は,原 則 と し て, 機 会 が あ れ ば そ の よ う な 目 的 の た め の 立 法 を 提 案 す る こ と を 決 定 し た。 政 府 は, 情 報 技 術 が 発 達 し た た め に 自 動 的 に 処 理 さ れ る 個 人 情 報 に つ い て 制 定 法 上 の 保 護 を 定 め る こ とが 望 ま し く な っ て き た と確 信 す る 。 こ の 結 論 に 到 達 す る に あ た っ て,政 府 は,国 際 的 発 展 と り わ けOECDに よ り 昨 秋 採 択 さ れ た,こ の 主 題 に 関 す る ガ イ ドラ イ ン351,お よ び ヨー ロ ッパ 評 議 会 に よ っ て 締 結 さ れ た 条 約36)

33)TheTimes,Dec.22,1980,at2.

34)1ParLDeb.,H.C.(6thser.)WrittenAnswers161‑162(1981) . 35)前 注9)。

36)CouncilofEurope,Ooπ ひeη 涯oπ ノ〜)r6んεProオ θcε ゴoπoゾ1瓦(」̀oε(動 αZsω あん

(17)

イギ リス にお け るデ ー タ 保 護 立 法 論 の 展 開

1ご 留 意 して き た。 立 法 され るな らば,連 合王 国 は,OECDガ イ ドラ イ ンを 是 認 し,ま た この 条 約 を 批 准 す る こ とが で き るで あ ろ う。 その 間 に.政 府 は 早 い 時 期 に 条約 に署 名 す る こ と を発 議 す る。」 以 上 の よ う に述 べ た 後,立 法 構 想 の 骨 子 を 明 らか に して い る。 そ の 内 容 は,翌 年 の立 法 提案 に よ り血 肉 を与 え られ る こと に な る。 ここで は,政 府 に 意 思 決 定 を 迫 っ た大 き な要 因 の 一 つ が 国 外 の 動 向で あ っ た こ とを指 摘 す る こ とが で き る。

上 の 文 書 回 答 に もかか わ らず,政 府 の 提 案 は遅 れ た。 そ の 間 に,政 府 の 怠 慢 を 不 満 と す る 労 働 党 の マ イ ケ ル ・ ミー チ ャ ー 氏(Mr.MichaelMeacher)

が 「1982年 デ ー タ 保 護 法 案 」(DataProtectionBill1982)を1982年1月

下 院 に 提 出 した3η。 リ ン ドッ プ委 員 会 が 勧 告 した独 立 の デ ー タ保 護 機 関 で あ る デ ー タ保 護 庁 を 設置 し,ヨ ー ロ ッパ 条 約 に従 っ たデ ー タ保 護 を は か ろ う とす る もので あ っ た。 キ ャ ンペ ー ンと して の 法 案 提 出 と い う こ と もあ って か 全文13力 条 とい う短 い もの で あ っ たが,適 用 除 外 規 定 を設 け ず,個 人 デ ー タの保 護 に徹 した 法 案 で あ っ た38}。この法 案 は10分 間 ル ール に よ る法 案 提 出 に成 功 した もの の,第 二 読 会 日の 指定 を得 られず,廃 案 と な って い る。 内 容 的 に は,次 の政 府 案 に影 響 を与 え て いな いが,立 法提 案 を促 進 した こ と は十 分 に考 え られ る。

2.政 府 白書 『デ ー タ 保護 一 政 府 の立 法提 案 』 の 公 表

約 束 ど お り,政 府 は,1982年4月4日,rデ ー タ保 護 一 政 府 の 立 法 提 案』

と題 す る 白書 を 公 表 した39),立 法 提 案 を 白書 の 形 で 事 前 に公 表 し,時 に は 法案 提 出前 の議 会 で 討 論 に付 す の は重 要 法 案 に っ い て採 用 さ れ る イ ギ リスの 立 法 過 程 で の 一 つ の 手 法 で あ るが,デ ー タ保 護 法 案 につ いて も,こ の 手 順 が 踏 ま れ た

rθ9αrd̀oAμ̀omα ホ̀cProcθss̀πgo/Pθrsoη αZ加̀α,(1980).邦 訳 は,前 注9)r世 界 の プ ラ イ バ シ ー(改 訂 版)』396頁 以 下 に 収 録 さ れ て い る。

37)16Parl.Deb。,H.C.(6thser.)291‑293(Jan.20,1982);な お,ミ ー チ ャ ー 氏 は 同 日 タ イ ム ズ 紙 に 法 案 の 内 容 を 紹 介 す る 論 文 を 寄 稿 し て い る。Michael Meacher,%θr̀8ん πoん πoω ωんὰεんecomp碗erん αsoπ ンo砿,TheTimes, Jan.20,1982,at10.

38)法 案 の テ キ ス トは,ミ ー チ ャ ー 氏 御 自 身 よ り 御 送 付 い た だ い た 。

39)Dα ε α 乃oεec̀̀oπ 一 雅eGoひ θrπmε πガsP2℃posα 誌 ∫orLe8・ 観 αὲoπ,

Crnnd.8539,(1982).

(18)

の で あ る。 この 後 に 提 出 され た デ ー タ保 護 法 案の 基 礎 とな っ た もの で あ り,白 書 の 内 容 に そ って 提 案 を見 る こ とに した い。

(1)政 府提 案 の背 景 白 書 は,立 法 の 必要 な 理 由 を二 つ あ げ て い る。 一 つ は, コ ン ピュー タ利用 に よ る プ ラ イバ シー へ の 脅 威 で あ る。次 の よ うに 記 して い る。

「 第一 は,コ ン ピ ュー タ利 用 の急 速 な成 長 に よ っ て加 え られ る プ ラ イバ シーへ の 脅 威 で あ り,そ れ は個 人 につ いて の情 報 を 高速 で処 理 ・連 結 す る能 力 によ っ て もた ら され て い る。 わが 国 で は,コ ン ピュ ー タ の保 有 す る情 報 が 乱 用 され, 個 々 人 の 個 人 プ ラ イバ シー が 脅 や か され た とい う例 は ほ とん ど報 告 され て いな い。 しか し,コ ン ピ ュー タの 融 通性 に よ り可 能 とな る乱 用 の容 易 さ と規 模 は手 作 業 記 録 に よ る よ り も は るか に 大 き い。」 第 二 の 理 由 は 経 済 的 な もの で あ る。

「 第 二 に,立 法 が な けれ ば,イ ギ リス国 内 で 営 業 を して い る会 社 は,デ7タ 保 護立法 を有 す る諸国 に存 在 す る会 社 と比 較 して 不 利 な立 場 に置 か れ るで あ ろ う。

ヨー ロ ッパ保 護 条 約 が 効 力 を発 す る と,同 条 約 は,デ ー タ保 護 立法 を有 す る諸 国 に,そ れ と比 較 し うる保 護 手 段 を 有 さな い他 の 諸 国へ 個 人 情 報 が 送 られ る こ とを 拒否 す る権 利 を承 認 す る こ と に な ろ う。 この こ と は,わ が 国 で 営業 して い る国 際 的 利 害 を有 す る会 社 お よ び多 くの 諸 国 の 依 頼 者 の た め に デ ー タの処 理 を 行 な っ て い るイ ギ リス の コ ン ピュ ー タ ・ビュ ー ロの 活 動 に 脅 威 を与 え る こ とに な る。 した が って,プ ライ バ シー保 護 の 国際 的基 準 に従 い,か つ 貿 易 に 対 す る あ りうべ き障 壁 を回避 す るた め に,政 府 は 立 法 の提 出 を 決定 した。 そ の立 法 は, 連 合 王 国 全 体 に 適 用 され,連 合 王 国 が[ヨ ー ロ ッパ 評 議 会]条 約 を批 准 す る こ

と を可 能 とす るで あ ろ う。 」40)

プ ライ バ シー侵 害 に つ い て の それ ほ ど深 刻 で は な い認 識 に もか か わ らず,立 法 提 案 が な され た真 の 要 因 は,順 序 と して は二 番 目 に掲 げ られ て は い るが,後 者 の 経 済 的 側 面 へ の 配 慮 で あ っ た よ うに 思 わ れ る 。

② 立 法 提 案 の 内 容 ヨー ロ ッパ 条約 との 関連 性 に触 れ なが ら立 法 提 案 の 内 容 を見 る こ とに しよ う。

① 規 制 対 象 デー タ 規 制 対 象 デ ー タは,コ ン ピュ ー タ に よ り自動 的 に処 理

40)jd.,atpara.2.

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イ ギ リス に お け る デ ー タ保 護 立 法 論 の展 開 81

され る デ ー タで あ り,手 作 業 に よ る デー タは 除 か れ る。

② 一 般 原 則 白書 は,デ ー タ保 護 法 に具 体 化 され るべ き一 般 原則 を 掲 げ て い る。 この原 則 は,ヤ ンガー 報 告 書 の一 般 原 則 に 依 拠 し,リ ン ドップ 委 員会 に よ っ て も是認 され,ま た,ヨ ー ロッパ 条 約 もこれ を具 体 化 した もの で あ る,と 白書 は 見 て い る。 それ らは,次 の と お りで あ る41)。

(i)情 報 は公 正 か つ合 法 的 に取 得 され,処 理 され る もの とす る(5条a, ヨー ロ ッパ 条 約 の 対 応 す る条 文 を示 す 。以 下 同 じ。)

(ii)情 報 は特 定 され,か つ正 当 な 目的 ま た は諸 目的 の ため に 保 有 さ れ る も の とす る(同5条b前 半)。

(ih)情 報 は上 記 の 諸 目 的 に合 致 し な い 形 で 使 用 ま た は 開 示 され て は な ら な い もの とす る(同5条b後 半)。

(iv)情 報 は特 定 され た 目的 との 関 連 で 適 切 で あ り,関 連 性 を 有 しか つ 過 剰 に わ た らな い もの とす る(向5条c)。

(v)情 報 は正 確 で あ り,必 要 な場 合 に は最 新 な もの に保 た れ る も の とす る (同5条d)。

(vi)情 報 は特 定 され た 目的 の た め に必 要 な期 間 以 上 に氏 名 結 合 形 態 で 保 有 され な い もの とす る(同5条e)。

(vii)デ ー タ主 体 は,自 己 に っ い て保 有 され て い る情 報 に ア ク セ ス す る こ とが で き,個 人 デ ー タを 保護 す る法 律上 の 規 定 が 守 られ なか っ た場 合 に

・ は ,情 報 の 訂 正 また は 消 去 を す る権 利 を有 す る もの とす る(同8条a, b,c)。

(viii)デ ー タへ の 無 権 限 の ア クセ ス,改 変 も し くは伝 播,・デ ー タ の 偶 発 的 紛 失,デ ー タの 偶 発 的 も し くは無 権 限 の破 壊 に対 す る適 切 な安 全 保 護 措

置が と られ な けれ ば な らな い(同7条)。

③ 監 督 機 関 リ ン ドッ プ委 員 会 は,監 督 機 関 と して デ ー タ保 護 庁 の 設置 を 勧告 して い たが,白 書 は,こ の 方 式 を採 用 せ ず,そ れ に 代 って 登録 官 の 制 度 を

41)1(孟,atpara.6・

42)」 『dl,atpara$.9‑10.

(20)

提 案 した42)。識 別 し う る個 人 に 関す る情 報 を 自動 的 に処 理 す る デー タ ・シ ステ ムの すべ ての ユ ーザー は,家 庭 内の 目的 の た め に デ ー タ を保 有 す る小 規 模 の ユ ー ザ ー を 除 い て 登録 を しな け れ ば な らな い。 白書 は,リ ン ドップ 委 員 会 の 認 定 で も登 録 制 度 を 採 る 国 が 多 く,コ ン ピュ ー タ化 さ れ た個 人 情 報 シ ス テ ムの 存 在 と 目的 が広 く公 けに知 られ る よ う にな るの で この 制度 が妥 当 で あ る,と して い る。

デ ー タ ・ユ ー ザ ー は,デ ー タ ・ユ ー ザ ー 自身,そ の 利 用す る情 報,情 報 の 出 所,情 報 の 開 示 対 象,情 報 の 利 用 目的 を 明 らか に した項 目 表 の提 出 を求 め られ

る。 これ らの 項 目に 変 更 が あ れ ば そ の こ と も登録 しな けれ ば な らな い。

登 録 申請 の 際 に,登 録 官 は,聴 聞 を す る権 限,デ ー タ ・フ ァイ ル を検 査 す る 権 限,シ ス テ ムの 修 正 を要 求 す る権 限 を有 す る。 申 請 者 の シス テ ム が一 般 原 則 に従 って い な い場 合 に は,登 録 を 拒 否 す る必 要 が あ る。 ま た,事 態が そ れ を正 当化 す る場 合 に は,登 録 官 は,デ ー タ ・ユ ー ザ ー を 登 録 か ら抹 消 した り,デ ー タ ・ユ ーザ ー を相 手 に して 訴 訟 を提 起 す る こ と もで き る。

④ 上 訴 審 判 所 登 録 官 の 決 定 に不 服 が あ る場 合 に は,不 服 申 立権 が 認 め ら れ,そ の た め の独 立 の審 判 所 が 設 け られ る43)。審 判 所 の 委 員 は,コ ン ピュ ー タ の専 門 家 を含 む名 簿 か ら任 命 され る。

⑤ 公 的部 門44)立 法 の 許 容 す る適 用 除 外 の 範 囲 内 で,中 央 政 府,地 方 自治 体,警 察,国 有企 業 その 他 の 公 的 機 関 は,他 の ユ ー ザ ー と同 じ方 法 で の 登 録 を 要 求 され る。 そ の 際 登 録 官 は,こ れ らの 機 関 が 利 用 す る個 人 に 関 す るデ ー タ の 目的 お よ び 他 の機 関へ の デ ー タ の移 送 に関 す る制 度 を明 示 す る必 要 が あ る。

⑥ 特 別 の ケ ー ス45〕 特 定 種 類 の デ ー タ につ いて は,特 別 の 規 制 が必 要 とな る。 た とえ ば,ヨ ー ロ ッパ 条 約 は,第6条 で,「 人 種,政 治 的 意 見 ま た は宗 教 その 他 の 信 条 を 明 らか に す る個 人 デ ー タ お よ び健 康 ま た は性 生 活 に関 す る個 人 デ ー タ は,国 内 法 に よ り適 当 な保 護 措 置が と られて いな い限 り 自動 処 理 す る こ と はで きな い。 罪科 に 関す る個 人 デ ー タ につ いて も同 様 とす る。」 と 定 め て い

43)1(9L,atpara.12.

44)、 颪d」,atpara.13.

45)IdL,atparas.14‑16,

(21)

イ ギ リス に お け る デ ータ 保 護 立 法 論 の展 開 83

る。 白書 は,一 般 原 則 を 規 則 に よ って 補 充 す る こ とを 認 め た うえで,条 約 の 定 め る種 類 の い くつ か につ きそ の 規 則 に よ って 情 報 の 収 集,処 理 保 有 ま た は 開 示 に特 別 の 制 約 を加 え る こ と と した。

統 計 ま た は調 査 目的 の ため の み の デ ー タの 収集,利 用 に つ い て は,そ の 処 理 や 結 果 の伝 播 に あ た って 個 人 を明 らか に しな い限 り は,デ ー タ主 体 の プ ライバ シ ー に対 す る脅 威 と はな らな い。 この ため に,デ ー タ 主 体 の情 報へ の ア ク セ ス の 原 則 は,こ れ らの 目的 の み を理 由 と して 保 有 され る記 録 に は 適 用 され な い 。 ま た,情 報 が 絶 対 的 に正 確 で あ る ことや 最 新 性 を 有 す る こ との 必要 性 はな い 。 この こ とは,統 計 ま た は調 査 目的 の ため に 特 別 に 収 集 され た デ ー タや も と も と 行 政 そ の他 の 目 的の ため に収 集 され た デー タ に も等 しく適 用 され る。 統 計,調 査 目 的用 の 個 人 デ ー タの 収 集,処 理 は,そ の 目的 の 社 会 的 重要 性 の ゆ え に,プ ライバ シー侵 害 の可 能 性 が な い限 り最 大 限 に保 障 され な けれ ば な らな いで あ ろ う。 白 書 も,ヨ ー ロ ッパ 条 約 に従 って,こ れ を保 障 しよ う と した もの で あ る。

同 条約 第9条 第3項 が,「 統 計 上 ま た は科 学 的調 査 目的 の た め に 使 用 さ れ る 自 動 処 理 個人 デ ー タ ・フ デ イル に関 して,デ ー タ主 体 の プ ラ イバ シー を 侵 害 す る 危 険 が な い こ とが 明 白 で あ る場 合 に は,第8条(b),{c〕 お よ び{d)に定 め る権 利 [デ ー タ主 体 の ア クセ ス]の 行 使 の 制 限 を法 律 で 定 め る こ とが で き る 。 」 と 規 定 して い るの を うけ た もの で あ る。

さ らに,白 書 は,公 的 記録 お よ び そ の他 の公 文 書 の 目的 の ため の 情 報 の 収 集 に つ いて は,す で に 特定 の立 法 に よ り規 制 され て お り,デ ー タ保 護 立 法 が これ らの 目的 の ため の 歴 史 的 に価 値 の あ るデ ー タの 保 存 を禁 止 す るこ と を考 え て は い な い,と して い る。

⑦ 適 用 除 外46)適 用 除外 の 広 狭 は,逆 に言 え ば,デ ー タ主 体 の 権 利 行 使 の 範 囲 の 広 狭 とな る か ら,デ ー タ保 護 法 中 の 重要 な ポ イ ン トとな る。 ヨー ロ ッパ 条約 も,一 定 の場 合 に一 般 原則 か らの適 用 除外 を認 め て い る。 第9条 は,第1項 で 「この条 約 の第5条[デ ー タの 性 質 〕,第6条[特 別 の 種 類 の デ ー タ 〕,お よ び第8条[デ ー タ主 体 の ため の 追 加 的 保 護 措 置]の 規 定 に 関 して は,本 条 に

46)1(孟,atparas.17‑18。

(22)

定 め る も の を 除 き,い か な る適 用 除 外 も認 め られ な い 。」 と し た う え で,第2 項 で 次 の よ う に 定 め て い る。 「こ の 条 約 の 第5条,第6条 お よ び 第8条 の 規 定 の 制 限 は,当 該 制 限 が 締 約 国 の 国 内 法 で 定 め ら れ,か つ 次 に 掲 げ る 諸 利 益 の た め に,民 主 主 義 社 会 に 必 要 な 措 置 に 当 た る場 合 に 認 め られ る。{a}国 家 の 安 全, 国 家 の 財 政 上 の 利 益 の 保 護 ま た は 犯 罪 行 為 の 抑 止 。(b)当 該 デ ー タ 主 体,ま た は 第 三 者 の 権 利 お よ び 自 由 の 保 護 。」 白 書 は,こ れ を う け て,ま ず,国 家 の 安 全 の 目 的 の た め に 保 護 さ れ る 必 要 の あ る デ ー タ に は,新 し く制 定 さ れ る立 法 は 適 用 さ れ るべ き で は な い,と す る 。 さ ら に,条 約 の(a}に 関 連 す る 事 項 の デ ー タ の 利 用 は,登 録 を 免 除 さ れ る 。 そ れ らの 免 除 項 目 に は,犯 罪 の 予 防 お よ び 発 見 の た め に 警 察 そ の 他 の 法 執 行 機 関 が 必 要 とす る デ ー タ が 含 ま れ る。 し か し,そ の 意 図 は,当 該 機 関 の 適 切 な 役 割 と一 致 す る 最 小 限 度 で,登 録 の 免 除 を 維 持 す る こ と で あ る。 同 じ く,こ れ らの 事 項 に 関 して 当 局 に 情 報 を 提 供 す る 登 録 さ れ た デ ー タ ・ユ ー ザ ー は,当 該 情 報 の 開 示 の 登 録 を 要 求 さ れ な い。 つ ぎ に,上 記 条 約(b)に関 して は,医 療 記 録 お よ び ソ ー シ ャ ル ・ ワ ー カ ー の 記 録 す る セ ン シ ィ テ ィ ブ な 情 報 の よ う な一 定 の 領 域 に つ い て そ の 適 用 の 可 能 性 を 予 測 し て い る。 この 場 合 に は,デ ー タ ・ユ ー ザ ー は 登 録 は し な け れ ば な ら な い が,そ れ へ の デ ー タ 主 体 の ア ク セ ス を 制 限 す る の が 適 切 で あ ろ う,と す る。 こ の 二 つ の 区 分 に よ る 適 用 除 外 の 方 法 は,1984年 デ ー タ 保 護 法 で も 採 用 さ れ て い る。 た だ し,同 法 で9 は 適 用 除 外 事 項 は 増 大 して い る 。

営 業 と して 他 人 の デ ー タ 処 理 を 行 な う デ ー タ ・ ビ ュ ー ロ に ど の よ う な 規 制 を 加 え る か も一 つ の 論 点 と な る。 白 書 は,コ ン ピ ュ ー タ ・ ビ ュ ー ロの 登 録 と な ら ん で,そ れ ら を 利 用 す る者 の 登 録 も義 務 づ け る こ と と し た 。 た だ し,コ ン ピ ュ ー タ ・ ビ ュ ー ロ に つ い て は,一 般 原 則 の い くつ か に つ い て 適 用 を 免 除 す る 。 通 常 は,デ ー タ の 目 的,収 集,伝 播 お よ び デ ー タへ の ア ク セ ス を 管 理 す るの は デ ー タ ・ユ ー ザ ー で あ る か らで あ る 。

⑧ 制 裁4η この 点 に つ い て は,ヨ ー ロ ッ パ 条 約 は,第10条 で,「 各 締 約 国 は,こ の 章 に 定 め る デ ー タ 保 護 に 関 す る 基 本 原 則 を 実 施 す る た め の 国 内 法 の 規

47)Zと 孟,atparas.19‑21.

(23)

イ ギ リス にお け るデ ー タ保 護 立 法 論 の 展 開 85

定 に 違 反 す る行 為 に対 す る適 当'な制 裁 お よ び救 済 方 法 を定 め る義 務 を 負 う 。 」 と定 め てお り,そ の 詳細 は各 国 の 国 内 法 に 委 ね られ て い る。 白書 は,刑 事 上 の 制 裁 と民 事 上 の 救 済方 法 に つ きそ れ ぞ れ次 の よ うに述 べ て い る。

(イ)刑 事 上 の 制 裁 まず,登 録 に 関 して は,次 の 行 為 が 犯 罪 と され る。 同 登 録 官 へ の 虚 為 の 申 告,(b燈 録 を せず,ま た は登 録 の 免 除 を受 けず,個 人 情 報 を 自動 的 に処 理 す る こ と,(c次 陥 の 治 癒 に 関す る登 録 官 の通 知 の 不 遵 守 。 つ い で,一 般 原 則 の 違 反 に 刑 事制 裁 を 課 す の か否 かが 問 題 と な るが,白 書 は,次 の 場 合 に刑事上 の制 裁 規定 を設 け るべ きか 否 か を検 討 事 項 と した。 〔a}デ ー タ ・ユ ー ザ ーが 虚為 の情報 を故意 に記 録 し,利 用 しま た は伝 播 した場 合,(b}デ ー タ ・ユ ー ザ ーが 正 当な理 由 な しにデー タ主体 の ア クセ ス を拒 否 した場 合,(c)デ ー タ ・ユ ー ザ ーが 非 登 録 目的 の た め に情 報 を 利 用 した場 合 。

(ロ)民 事 上 の 救 済方 法 救 済方 法 の第 一 は,デ ー タ利 用 の 要 件 違 反 の ため に損 害 を被 っ た デ ー タ主 体 に認 め られ る損 害 賠償 で あ る。 第 二 は,損 害 は予 測 され るが,い まだ 被 害 が 発生 して いな い場 合 に,法 定要 件 違 反 を差 止 め る ため に認 め られ る差 止 命 令 で あ る。 登 録 官 は民 事 訴 訟 に は 関 わ らな い。 訴 の提 起 は 被 害 者 た る個 人 の 責 任 で あ る。 責 任 の 形 態 に 関 して は,フ ォー ル トの証 明 に基 づ く責 任 と厳 格 責 任 の 二 つ が 考 え られ るが,い ず れ に す るか は検 討事 項 と され た。

な お,公 的部 門 につ いて は,デ ー タ保 護 立 法 の有 無 に か か わ らず,誤 っ た行 政 行 為 に よ っ て もた らされ た不 正 義 が 存 在 す る場 合 に は,関 連 立 法 の下 で 議会

コ ミッ シ ョナ ー の調 査 が 行 な われ る こと に な る。

⑨ 国外 へ の デ ー タの 移 送48)特 定 の 情 報 に つ いて,対 応 す るデ ー タ保 護 立 法 を 有 さな い特 定 の 国 に は,そ の情 報 の 移 送 を禁 止 す る措 置 を立 法 中 に含 め る

こ とに す る。

⑩ 費 用49)制 度 運 営 の た め の 費用 に つ いて は,白 書 は極 めて 慎 重 で あ る。

財 政 状 態 を 考 慮 して の こ とで あ ろ うが,財 源 に対 す る負 担 を最 小 限 度 に す る と

48)∫dL,atpara。22.

49)」 西dL,atparas.23‑25.

参照

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