長崎大学留学生センター紀要 第5号 1997年
学 生活 と留学生セ ンター
長崎県には,平成8年5月現在で世界38ヶ国330人 の留学生がお り,その内210人が長崎大学 に在学 して います。皆 さんのクラスや学科,同 じアパー トやマン ションにもきっと何人かいるのではないで しょうか。
しか し,残念なことに皆 さんの多 くは,留学生に一 言 も声 を掛けずに学生生活を終える人 も少な くないよ うです。100年ちょっと前までなら考えられない,rもっ たいないj ことです。せっか く異国情緒豊かな,国際 都市長崎の学生 となったのですか ら,先人たちが憧れ, 集い,そ して諸外国人 と共に築いた,長崎の歴史と文 化 と伝統 を是非吸収 して,ここ長崎か ら再び世界に大
きく羽ばたいてほ しいと願 っています。
皆 さんは自分の大学に居 なが らに して,国際感覚 を 養い,異文化交流 を体験 し,国際人 としてのマナーや 知識を獲得できるチャンスを共有 しているのです。ま さしく,そんな皆 さんのお手伝いので きる組織が, 日 本で19番 目に設置された長崎大学留学生センター (以 後セ ンター)だと我々スタッフは考えています。
センターでは,留学生のために各種の 日本語教育が 行われるのは当然です。そ して外国人の日本での生活 に関する助言 と指導 を行 うと同時に,皆 さん (日本人 学生)との交流の場の提供及び海外留学に関する助言 と指導 も,近い将来充実が期待 されています。あれも, これ もと要求されているものは,長崎県の離島の数ほ どあるか もしれません。 しか し,センターができたか らといって,急に全ての要求が満たせるわけではあ り ません。そこには地道な努力,確実な展望がな くては な りません。 もちろん,我々スタッフだけの努力では 到底足 りるものではあ りません。そ して学生である皆 さんの力だけで も不十分です。長崎大学の教職月 と学 坐 (留学生 と日本人学生),それに地域 とい う三位一 体の協力体制な くしては何事 も成立 しないで しょう。
では,その三位一体体制 とは,具体的にどんなこと なのか,また,どんなことができるのかを,現在進行 中の活動の中か ら,特に長崎大学の学生が参加 してい る活動 を取 り上げてお話 ししたいと思います。
(1)日本語教育倶楽部 (全学文化系サークル) 国際交流会館 (長崎大学留学生寮)において,毎週 火曜 日に日本語教室 を開講 し,当大学の留学生は言 う まで もな く,その家族 とも日本語 を通 して交流 を図っ ています。単なる交流ではな く,倶楽部メンバーの正 しい日本語指導力の習得 と学習にも余念がありません。
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一資料5‑
かつては,両者 (留学生 と日本人学生)の学習のため に,留学生による r女水戸黄門J一座 を旗揚げ し,福 寿園という老人施設を慰問 し,老人たちに好評を博 し たの も懐か しく思い出されます。このサークルには, 活水女子大学,長崎外国語短期大学,県立短期大学, 長崎 ウエス レヤン短期大学などの学生 も参加 し,火曜 日以外は各 自の大学にも日本語クラブを作 り活動 して います。
(2)インターナショナル コミュニケーション クラブ (全学文化系サークル)
このサークルの特徴 は,他のサークルと異な り留学 坐 (特に中国人)が中心 とな りサークルを起 こし,広 く日本人に参加 を呼びかけている点です。現在,県立 短期大学生や長崎外語短期大学生 も参加 しています。
活動内容は,前身が中国探究会なので, ビデオや写真 を利用 した中国紹介が中心で したが,最近は世界の出 来事や最新のニュースにと話題は豊富です。
昨年から,滑石中学校の中国研究クラブとも交流 を 持ち, 日本語 と中国語 を駆使 し,残留孤児の子供 (日 本語 しか理解で きない)と両親 (中国語 しかできない) の間のコミュニケーションに役立てないかと,このサー クルらしい新 しい社会問題 にもアプローチ しています。
(3)チューターネッ トワーク (全学文化系サークル) 教養部のチューターやそのOBで構成されているサー クルです。活動内容は,その名のとお り外国人のチュ‑
留学生,チューター,教職鼻の 〝和〝
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一資料6‑
タ‑をすることです。教養部のチューター経験者の間 か ら,チューター同志の意見交換の場がない, 自分の 受け持 ちの留学生の諸問題が,一人では解決できない。
4月に入学 し,一番困っているときに体制上チューター として活動で きないなどの不都合 を解決 し,より早 く, 正確 に, しか も団体 として活動で きる組織がほ しい と い う必要性か ら,平成 7年 4月に発足 しました。月 2 回の留学生 を交 えた全体会議は,非常 に有意義なもの です。これ らの経験の積み重ねを新 しいメンバーに伝 え,共に考えることにより,互いの学生生活 を充実 さ せ ようとしています。
(4)国際手話ボランテ ィア (全学文化系サークル) 私たちは, 日頃何の不 自由 もな く自然に言葉 を使っ て互いの意志の疎通 を図っています。 しか し,ち ょっ とキャンパス内に目をやれば,緩いスロープがついて いた り,階段 にも手す りが新 しく付いているのに気付 くで しょう。つ まり,それ らを必要 とする人々がいる ように,言葉で 自由に自分の意思を伝 えられない人々 もいます。 日本だけでな く,全世界 に同様の問題があ ります。そこで,このサークルでは 『ジェスチュ‑ノ』
とい う手話の世界共通語 をマスターすることにより, 世界の人々と,特 に聴覚の不 自由な人々と意思の疎通 を図 り,その人々の代弁者 になれることを目標 に,辛 成8年4月か ら新 しく仲間入 りしたサークルです。現 在は,まだ二種類の 日本語手話マスターに汗 を流す毎 日ですが,志 しは高 く,全員が世界のいろんな国の人々 とのコミュニケーションを目指 しています。
(5)日本語ネッ トワーク in長崎 (市民ボランティアサークル)
学生か ら一般人までを含んだ, 日本語 に関するボラ ンティアサークルです。長崎県ボランティア人材バ ン クに も登録 されている県民 レベルのサークルです。発 足当時か ら,長崎大学 日本語教育 クラブのOBも自動 的にこのサークルのメンバーを兼任 しています。一昨 年は,長崎県国際交流協会の援助により r外国人のた めの 日本語教室』 を年2回 (春,秋 コース,無料)開 講 しました。 また,昨年から外国人用インフォメーショ ンマ ップの作成 に着手 し,なんとか平成8年10月には 印刷 され,長崎 を訪れる外国人の強い味方になるだろ うと夢 に胸 を踊 らせています。マ ップはA2サイズで, 表には4色刷 りで長崎駅 を中心 に必要な情報が色分け
され,裏 には, 4カ国語 (日本語,韓国語,中国語, 英語)で外国人に特 に必要 と思われる情報 を提供 して います。
このサークルでは次の課題 として,日本語ボランティ ア養成講座の開講及び長崎 を題材 に した 日本語教材の 完成 を目指 しています。
料
楽しい歓談のひととき
(6)外国人 と本音で語 り合 う会 (連続討論会)
これは,平成8年4月より毎月1回 (第2火曜 日), 教養部別館1階小会議室で行っている連続討論会の名 称です。職業が ら我々は,留学生や外国人の代弁者 に なる場合が多いのですが,いつ も本当に的を得たこと を正 しく伝 えられているかは, とて も不安です。そこ で我々は, よりよい代弁者になるのではな く,よりよ いインス トラクターの道 を選びました。つま り,我々 は留学生の良 き代弁者になろうとするのではな く, 自 分で自分の意見 を発表で きる留学生や外国人を育てる ことだと気付いたのです。今 までにAET(Assistant EnglishTeacher)やCIR (CordinatorforInter一 RationalRelations),長崎大学 の留学生,長崎純心 大学の留学生,帰国子女,残留孤児,国際交流塾,国 際交流協会, ICC委員会 (佐世保),青年会議所 , 教員 (長崎大学,長崎純心大学,長崎ウエス レヤ ン短 期大学,滑石中学,商業高校 など),病 院勤務 , 国際 理解教育セ ンター, 日本人学生 (長崎大学,長崎外国 語短期大学,長崎 ウエス レヤ ン短期大学 ), 主婦 な ど が毎回時間の許す限 り参加 し, 日本の教育 システムや 平和,軍備開港などを討議 し,r長崎 らしい国際交流
と教育頼 こついて タイ トルどお り本音 で語 り,『外 国
人 との共生』 を考えていこうとしています。
以上,思い付 くものを並べただけで も,皆 さんを取 り巻 く環境には,いろいろなものがあ ります。ちょっ と手 を伸 ばせば,あなた も新 しい世界や知識 を得 るこ とがで きるか も知れません。そんな出会いの場 を提供 した り,共に考えた りで きる場の一つがセ ンターで も あると考 えます。セ ンター自身は,まだまだ今年の5 月に産声 をあげたばか りですが,いろんな活動は既 に 始 まっているのです。「求めよ。さらば与 え られん」
「自らの運は,自らの手でつかめ」 そんな言葉が脳裏 を横切 ります。学生の皆 さんとセ ンター,そ して地域 が より一層協力す ることにより,すぼ らしい "未知 と の遭遇"をしようではあ りませんか。
(留学生センター教授 奥村 訓代)