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大学院留学生の研究生活実態調査 大学院留学生の研究生活実態調査

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第三部  実践報告

大学院留学生の研究生活実態調査 大学院留学生の研究生活実態調査

─同志社大学社会学研究科を事例に─

─同志社大学社会学研究科を事例に─

巴 芳・郭 芳

(同志社大学大学院社会学研究科博士後期課程)

要 約 要 約

本研究では、同志社大学大学院社会学研究科に在籍している留学生を対象に、彼ら の日常・研究生活を中心に質問紙調査と聞き取り調査をおこなった。その分析の結果、

彼らの経済状態により、時間的余裕のなさ・余暇生活・食生活の貧しさという問題を もたらしていること、また、学内の研究生活・研究情報には満足している一方で、学 外の研究者とのネットワークの拡大に困難を感じている実態が明らかになった。

はじめに

現在の日本社会は経済のグローバル化の中で、毎年多くの外国人が就学や就労の ために来日している。2008年、日本の文部科学省は「留学生30万人計画」を発表し、

2020年を目途に留学生受け入れ30万人を目指し、国際化拠点大学を選定するなどの目 標を定めた。同志社大学は2009年に、文部科学省が公募した国際化拠点整備事業(グ ローバル30)に採択された。

そこで、本調査は同志社大学大学院社会学研究科に在籍している留学生を対象に、

彼らの日常や研究生活に注目して、質問紙調査と聞き取り調査をおこなった。調査に より、大学院生たちの日本での生活環境、大学の学習環境、および研究分野に関する ネットワークの形成・情報収集などに関する実態を聞いた。

1.問題意識と目的

母国や家族と離れて異文化の中で一人暮らしを始めた留学生活には喜怒哀楽が満ち ていることは言うまでもないだろう。日本の大学では、留学生の増加や国籍の多様化 に応じて、国際交流センターが設置され、外国人留学生の修学・研究に必要な情報提 供を含めて適宜教育的アドバイスを行っている。しかし、異文化適応をめぐって生じ る様々な身体的・心理的・社会的問題など、すべての生活問題について学内の制度や

(2)

施設の利用から解決できることには限界がある。また、外国人研究者に関しては、言 葉や文化、習慣などの違いによりいろいろな困難や問題が起きることが多い。個人的 な問題を抱えがちな留学生たちの生活の状況を把握し、経済的な実状等を明らかにす ることにより、彼らに対する修学、研究環境・活動などの環境改善や支援についてデー タを収集することを試みる。また、大学院留学生たちが在学期間中に安心して研究活 動に専念し、修士・博士論文を作成出来るよう、研究効果の向上を図ることを目的と して調査結果を分析してみよう。

2.調査概要

〔調査期間〕

2010年12月20日〜2011年1月20日

〔調査対象〕

2011年1月の現在、同志社大学大学院社会学研究科に在籍している留学生計49名(正 規と特別学生を併せて、博士前期課程34名、後期課程15名)を母集団にする。

〔調査方法〕

同志社大学大学院社会学研究科の大学院共同研究室にて、調査期間中に研究室に来 た留学生30名を対象にし、自由記入項目を含め、質問紙調査を配布した。うち23名か ら有効回答を得た。(回収率約77.7%)その上で、専攻や国籍により、代表として留学 生6名を選んで聞き取り調査もおこなった。

3.質問紙調査による対象者の属性

〔性別・専攻〕

表1 性別から見る専攻別

社会学専攻 社会福祉学専攻 メディア学専攻 教育学専攻 産業関係学専攻

合計 %

度数(n) % 度数(n) % 度数(n) % 度数(n) % 度数(n) %

男性 1   20.0 2   28.6 0     0.0 2   33.3 0     0.0   5   21.8 女性 4   80.0 5   71.4 4 100.0 4   66.7 1 100.0 18   78.2 合計 5 100.0 7 100.0 4 100.0 6 100.0 1 100.0 23 100.0

まず、本調査対象者の中では、女子留学生の数が男子留学生より13名多く、56.4%

の差があった。すべての専攻において、男子より女子留学生の方が多くいることがわ

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第三部  実践報告 かった。「同志社大学基礎データ集」によれば、2010年5月時点において、社会学研

究科に在学している大学院生の中で、博士課程前期と後期あわせて女子学生は71名で、

男子学生の58名より多かった。社会学系に関心を持つのは、留学生だけではなく日本 人の学生のなかでも女子のほうが多いと考えられる。

〔出身地域・在学状況〕

表2 出身国から見る在学状況

博士前期課程 博士後期課程

合計 %

国費 私費 合計 % 国費 私費 合計 %

中国 0   9   9 39.1 2 2 4 17.4 13   56.5

韓国 0   5   5 21.7 1 1 2   8.6   7   30.4

台湾 0   3   3 13.2 0 0 0   0.0   3   13.1

合計 0 17 17 74.0 3 3 6 26.0 23 100.0

出身国別の割合について、最も多いのは中国人留学生が13人で56.5%を占めている。

平成21年度JASSO外国人留学生在籍状況調査結果で、出身国別留学生数の上位は、中 国、韓国、台湾、ベトナム、マレーシアの順になっている。来日する留学生の出身地域は、

アジアを中心としているようだ。本調査の対象者においても、全国上位3位の国から 来ている私費留学生がほとんどである。現在、日本で学んでいる留学生数は、平成21 年5月の時点、132,720人であり、そのうち、私費外国人留学生数は、119,317人(89.9%)

となっている(JASSO)。全国における在日留学生の中、国費留学生の数がほぼ10.1%

となっている。本調査の結果として、国費留学生の大学院生は約13.0%となり、全国 的な比率と相当である。

〔来日動機・年数〕

表3 来日動機の度数分布

度数(n) %

日本語を勉強したい   2     8.7

専門的な勉強したい   6   26.1

学歴を高めたい   3   13.0

日本で仕事したい   1     4.3

日本に興味を持ち行きたかった   2     8.7

留学したい   7   30.4

外国に行きたかった   1     4.3

人生を変えたかった   1     4.3

合計 23 100.0

注:「日本に来た最も大きな動機」という項目の中、すでに選択された8つ動機内容で作成した。

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単に「留学したい」という動機だった人は最も多く30.4%を占めている。次に、「専 門的な勉強をしたい」という理由は26.1%、「学歴を高めたい」が13.0%、「日本語を勉 強したい」は8.7%で、あわせて78.2%の留学生が勉強のために来日したということが わかった。

〔結婚状態・家族〕

「結婚していない」と回答したのは21人で全対象者の91.3%だった。また、4人(17.4%)

は家族滞在者がいると回答している。本調査の対象者はほとんどが独身である。そこ で、独身者の日常の暮らし方を次に分析する。

4.住居・通学・食事について

〔居住場所・理由〕

47.8%

8.7%

4.3%

8.7%

4.3%

4.3%

4.3%

4.3%

13.6%

0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0%

上京区 下京区 中京区 左京区 東山区 山科区 伏見区 南区 その他

34.9%

43.5%

21.7%

4.3% 8.7%

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

35.0%

40.0%

45.0%

50.0%

  図1 調査対象者の居住分布  図2 住む場所を決めた理由(多項選択)

図1の居住地域から見ると、上京区に住んでいる人が47.8%で最も多かった。そして、

図2において、住む場所を決めた理由として「学校に近い」という理由が43.5%だっ た。その次の「家賃がやすい」(34.9%)という理由も多い。次の表4の結果もあわせ て、時間の余裕がなく、経済的な問題も存在しているので、学校に近くて家賃が安い 民間の賃貸マンション・アパート・寮・市営住宅で暮らしている人が多いことがわかる。

そして、多くの留学生が未婚で一人暮らしの者が7割近いが、インタビューのなかで は家賃が安いだけではなく、安全性も考えて民間の賃貸マンションを選んだという声 もあった。

(5)

第三部  実践報告 表4 暮し形態から見る住む状態

民間の賃貸マンション 県営・市営住宅 アパート

度数(n) % 度数(n) % 度数(n) %

一人暮らし 10 43.5 0 0.0 2   8.7

家族と同居   1   4.3 2 8.7 0   0.0

友達と同居   3 13.0 0 0.0 1   4.3

合計 14 60.9 2 8.7 3 13.0

社宅・寮 分譲マンション その他

合計 %

度数(n) % 度数(n) % 度数(n) %

一人暮らし 3 13.0 0 0.0 1 4.3 16   69.6

家族と同居 0   0.0 0 0.0 0 0.0   3   13.0

友達と同居 0   0.0 0 0.0 0 0.0   4   17.4

合計 3 13.0 0 0.0 1 4.3 23 100.0

〔通学方法・所要時間〕

質問紙調査での通学方法の回答(記述式)では、自転車で通うのは12人(52%)で 所要時間は5分〜25分の間になっている。歩いて学校に通う人は2人で、2分〜10分 ほどのようだ。そして、バイクを使って20分で通う1人がいて、地下鉄・電車を利用 するクループは8人(35%)で、所要時間の幅が広く、20分〜2時間までとなっている。

一般的に大学院で研究している留学生たちは時間を大事にするので、通学で時間を無 駄することを嫌い、最も時間を節約する方法を選択していることがインタビューから もわかる。

〔食事〕

食事についての特徴は、自炊と学内食堂を利用する留学生が多いことである。本調 査の聞き取り調査では、学校に通う方法により、食事する形態も変化してくることが わかった。ここで、インタビュー・データを分析しながら、留学生たちの食生活をみ てみよう。( )内は通学方法と時間を示している。

  Aさん(自転車15分):朝食はほとんど食べない。たまに食べるとしても、自宅が 多い。昼食は、基本的に9割以上、学内食堂で友達と食べる。食堂に行くのが面倒 な時には、生協かコンビニで買うことが多い。夕食は、早く家に帰れば自宅でするが、

最近は学内と学外の食堂でする時が多い。

  Kさん(バイク20分):朝食は自宅とコンビニが多い。昼食はほぼ毎日学内食堂で

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する。夜も食堂だね。遅かったら、学校の近くの料理屋で食べるしかない。

  Mさん(地下鉄35分):朝食は、自宅2割でコンビニ8割な感じです。昼食は学 内食堂や生協(の弁当)で食べる。夕食は、食堂が少なく、自宅の場合が多い。

  Bさん(歩く5分):家が近いから、朝も昼も夜も、自宅で食べるときが多い。節 約できるし、休憩もできる。学内の食堂はあまり利用していない。生協で買うとき があるけどね。

インタビューでは、朝食は食べずに学校に来ている留学生が多かった。そして、昼 食は、基本的に学内食堂か生協を利用する場合が多いようだ。それは、時間も節約でき、

安いので、留学生たちがよく利用しているとみられる。ここで注目したいのは、朝食 を食べない留学生が多くいることで、アルバイトに追われて朝の時間的余裕がなくな るという原因も考えられる。一方、留学生たちには外食する人が少なく、自宅や学内 施設の利用が中心となっている。これは、経済面の節約が主な理由だろう。

5.収入・支出について

まず、収入状況を見よう。質問紙調査の結果は、調査対象者全員の平均収入月額は 10.7万円であった。そのうち、10万円未満10人(43.5%)、10万円以上〜15万円未満10 人(43.5%)、15万円以上〜20万円未満0人(0.0%)、20万円以上〜25万円未満3人(13%)

となっている。20万円以上の収入がある場合、2人が国費留学生であり、あわせて学 校のTAなどのアルバイトをし、それ以外に語学講師もやっている人である。もう一 人は、まったくアルバイトをせずに、家族からの送金で暮らしている人だった。また、

10万円未満の場合、アルバイトをする時間が少ない留学生が多く、家族からの援助も 受けていない場合も多い。

平均支出月額は、9.4万円という結果となり、収入より1.3万円低かった。支出の一カ 月の内訳は、住居費(家賃に水道・ガス・インターネットなどを含む)・飲食費・書 籍や文具などの学習費・通学費・保険・医療費・教養娯楽費・被服費とその他の雑費 があげられていた。回答結果から、収入10万円未満の場合、教養娯楽費と被服費を0 円と記入した回答が90%以上あって、経済的な余裕のなさが明らかになった。その場合、

住居費・飲食費・学習費・通学費などの金額は収入の8割以上になり、赤字の留学生 もいた。収入が高いグループでは支出の金額は収入のほぼ6割で、経済的余裕のある ことがわかる。ここから、奨学金の受給状況の影響も大きく、多くの私費留学生の場合、

(7)

第三部  実践報告 経済状況が苦しい者が少なくない。

6.奨学金と授業料免除

ここで、奨学金の受給状況から留学生たちが自分の経済状況に対してどのような意 識をもっているかを考えよう。

27.3%

50.0%

27.3%

25.0%

36.4%

25.0%

9.0%

0.0%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

奨学金を受給している 奨学金を受給していない

苦しい ギリギリ 普通

図3 奨学金の受給状況による経済状況の意識

まず、奨学金を受けている者は11人(47.8%)であり、調査対象者の約半数である。

図3から、経済状況が「苦しい」と回答する結果をみれば、奨学金を受けていない人

(50.0%)は、受けている人(27.3%)よりかなり多かった。同じく「普通」、「楽」と 回答した結果を合わせて、奨学金を受けている場合(45.4%)は、受けていない(25.0%)

よりも高かった。これは、奨学金が、経済的な面で留学生の生活を助け、精神的な面 にも大きくプラスに機能していることがわかる。インタビューの声を聞いてみよう。

  Gさん(博士後期課程・奨学金を受給している):奨学金と研究費とかをもらうの は、経済的な問題だけじゃない。もちろん、生活が楽になり研究にも専念できるし、

業績も上がるだろうね。でも、奨学金をもらったことで、自分の努力を認めてもらっ たと思えるし、精神的にも励みになる。

  Aさん(博士前期課程・奨学金を受給していない):奨学金が当たる条件がよくわ からない。自分も真面目に一生懸命勉強しているのに、なぜくれないのかと不満が ある。逆に、もっと奨学金をもらいたくて、研究にも拍車をかけているね。

ここでの話から、奨学金が留学生の勉学精神に向上する機能し、生活にも援助して いる。しかし、奨学金の選考に対して、留学生たちがその公正さに疑っているようだ。

(8)

ここでは、奨学金の有無による大学への満足度などの違いもあることを考えられる。

また、奨学金を受けている奨学生たちは経済的な支援を十分に受けているにもかかわ らず支援の認識がないため満足度に表れていないとも考えられる。

奨学金以外に、日本の大学の特徴でもあるが、留学生に対して授業料免除制度が実 施されている。本調査の対象者も授業料の30%あるいは50%など、免除制度から援助 を受けている。そこで、授業料免除制度について大学に何か希望があるかと質問紙調 査で聞いた。

表5 授業料免除について大学に希望(多項選択)

度数(n) %

免除条件などを緩和 16 69.6

授業料免除の枠拡大 14 60.9

手続きを簡素化   2   8.7

特に希望はない   3 13.0

わからない   2   8.7

本調査の対象者の回答からみると、奨学金の条件が厳しくなる一方なので、授業料 免除の条件を緩和してほしいという声の割合が最も高く、免除枠を拡大してほしいと いう希望がそれに続いている。そこで、本調査の対象者の、大学における学習環境に 対する満足度がどうなっているのかをみてみたい。

7.大学での学習環境

〔大学での授業・ゼミ〕

まず、回答結果から、学校での授業・ゼミに対する満足感は全体的に高いと考え られる。「満足している」「まあまあ満足している」を選択した留学生たちが20人で、

87.0%という高い割合となっている。「やや不満」「不満」と回答する留学生はいなかっ た。

〔サークル〕

23名の留学生全員が学内のサークルに参加していない。その主な理由として「時間 がない」と答えているが、日本人大学院生の場合もほとんどの人が研究中心の生活で サークル活動に参加する人は少ないので、その点では同じだろう。

〔大学における施設の利用〕

大学の利用施設について、図書館・生協・保健センター・寒梅館・食堂などとなっ

(9)

第三部  実践報告 ている。「満足している」と「まあまあ満足している」の回答をあわせて16人(69.6%)、「普

通」は6人(26.1%)、「やや不満」は1人(4.3%)で、その理由として“食堂は、食べ 物の種類をもっと多彩にしてほしい”と記述されている。

〔研究室について〕

30.4%

21.8%

26.1%

26.1%

52.2%

34.8%

30.4%

21.8%

30.4%

13.0%

4.3%

4.3%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

研究室での研究環境 先輩・後輩との交流 研究室における道具の利用

満足している まあまあ満足している 普通 やや不満 不満

図4 研究室での研究環境の満足度

図4のとおり「不満」と回答している者がいなかった。しかし、研究室での研究環 境に「やや不満」となっている理由としては、“自分の研究スペースがない”と“本棚が 足りない”という声があった。先輩・後輩との交流に「やや不満」となっている理由と して、上下関係が苦手だという自由記述もあった。

〔先生の研究指導・研究費用〕

先生の研究指導に関しては「満足している」と「まあまあ満足している」をあわせ て17人(73.9%)で、「普通」と回答している人は6人(26.1%)となっていた。

研究費用については「やや不満」と「不満」で6人(26.1%)となり、インタビュー 結果から、留学生が多くいるため、研究に関する援助は、個人に当たる可能性が低い という話を聞いた。

  Cさん(博士前期課程、後期課程に進学予定):博士に上がって、研究を続けたい けど、経済的な問題を考えないといけないので少し悩んでいる。留学生がたくさん いるので、現状の研究支援では、なかなか私に当たるのは難しいようだ。

大学院で研究している留学生たちの多くが、研究の費用について悩んでいる。自分 の力では何もできず、研究調査をやりたくても、経済的な問題であきらめる者もいる。

(10)

彼らも、自分で研究費の情報を得て応募し、研究活動に参加できるようにと、積極的 に動く姿も見える。

8.研究情報・活動

では、どのように研究上の情報を得ているか、その方法を聞いた。

本学の先生・

先輩から 33%

インタネットから 35%

各学会から 11%

学外の先生・

研究者から 11%

学校の掲示版 から

6%

大学の事務室 から

4%

図5 研究に関する情報の入手手段

インターネットと本学の先生や先輩から情報を手に入れることが多かったようだ。

ここで、注目したいのは、学外の先生や研究者から獲得する割合が低く、本学以外の 研究者と情報交換もあまりしていないように見えることである。インタビューの記録 をみてみよう。

  Kさん(博士前期課程):研究に関することは、学校で得るしかないね。先輩から 聞いたり、先生から聞いたりします。学会は1つしか参加していないので、学外の 先生とか、研究者とか、全然連絡していない。でも、機会があれば、一緒に話して みたい。

  Gさん(博士後期課程):うちの専攻で、よく研究会を開きます。学内はもちろん、

先生が自分のお金を出して、他の学校から先生や研究者を呼んできて、こっちで研 究会もよくする。でも、先生によっても違うからね。

  Bさん(博士後期課程):たくさん学会に参加しているし、名刺もたくさん交換し たりしていたが、連絡はそれっきりですね。私も、どういうふうに学外の先生たち や研究者とやり取りしたらいいのかよくわからない。

(11)

第三部  実践報告 インタビューから、本調査の留学生たちは、本学以外の付き合いが少ないとみられ

る。付き合いたくないのではなく、機会がない・コミュニケーションの取り方がわか らないなどの理由で困難が生じ、研究ネットワークが広がっていかないという問題が ある。学校以外の研究者と一番話かけやすい場として学会というものがある。そこで、

本調査対象者の学会参加状況をみる。

〔学会の参加状況〕

学会に行ったことがない留学生は9人(39.1%)、1つ学会だけに参加しているのは 4人(17.4%)、2つの学会に参加しているのは5人(21.7%)、3つの学会に参加して いるのは3人(13%)、5つの学会に参加しているのは2人(8.7%)という結果があった。

よく学会に参加する人に聞いてみた。

  Bさん(博士後期課程):参加している学会は5つある。発表も2回しました。発 表したときに、同じ部会で発表する方と、聞きに来ている方は、自分の研究に興味 を持ってくれるはず。その時に、いろいろな話をして、たくさん話もきいた。しかし、

それ以後に連絡をとって会ったことがある研究者は、2人しかいない。研究者はみ んな忙しいようで、自分もまだ学生身分なので、先生たちと近付くのは少し難しい ね。

確かに、Bさんも言うように、学生が先生たちのような研究者と仲良くするのは難 しいだろう。特に日本社会においては、上下関係・コミュニケーションなどの問題も 存在する。さらに、目の上にいる先生たちと交流する際に、緊張感もあるので、なか なかうまくいかないようだ。自分の研究のため、もっと広い範囲で研究者と交流する ことが重要であると考えられ、研究ネットワークが拡大しても調和がとれるように努 力することが求められるだろうし、留学生同士の協力も必要だろう。

9.進路について

最後に、本調査対象者に卒業後の進路について聞いた。帰国を希望している者は8 人(34.8%)、日本で進学・就職を希望する人は9人(39.1%)、他国に進学・就職を希 望する人は1人(4.3%)、まだきまっていない人が4人(17.4%)という結果だった。

(12)

10.まとめ

以上、調査対象者23名からの質問紙調査と聞き取り調査の結果を分析してきた。

一つ目注目したいことは、私費留学生が多くいる本調査対象者たちの中で、その大 半を占める中国留学生の経済状態(奨学金受給状況や主な収入)は、中国経済の急速 な発展につれて以前より改善されてきたと一般的にはいわれているものの、なおその 住宅事情と生活実態は厳しい状況にある。一方、大学院で学ぶ留学生の厳しい経済状 態は、学習・研究とアルバイトの両立を強いるものであるが、それにより、時間の余 裕が無くなり、余暇生活はもちろん、食生活にも問題をもたらしている。奨学金の援 助を受けながら楽に研究生活を過ごしている留学生はまだ少ない。したがって、大学 に奨学金や授業料免除制度の条件緩和を希望する声が強い。

他方、経済問題が存在しながら、大学での学習環境に対する満足感は全体的に高い。

研究室での生活の中で、複数の項目について満足度を尋ねたところ、かなりの満足感 を示している。また、本学の指導教員の研究指導方法についても、大学院留学生たち の満足感が高く見えた。研究情報・活動の面では、本学で情報を獲得する可能性が最 も大きく、本学の先生・先輩などの研究援助を受けながら研究を進めている。しかし、

留学生たちが学外で研究ネットワークを拡大することには困難が存在し、学外からの 研究情報を入手するのに限界を感じていることも注目したい問題である。これについ て、留学生たちの積極的な活動や努力も求められているが、もっと交流する機会やコ ミュニケーションを活性化する場所が求められている。

これから、中国を中心にアジア各国からの留学生が増加するにつれ、大学側として、

多様な問題に直面すると考えられる。留学生に対する支援などについて、さらなる調 査が必要だろう。

【参考データ】

「同志社大学基礎データ集」

「平成21年度JASSO外国人留学生在籍状況調査」

参照

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