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<特別寄稿>留学生センターと留学生教育

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〈牙寺男u寄1高〉

留学生センターと留学生教育

ネ卯 ヲ睾 女子 日召 要 旨 国内外の大学機関において、外国人留学生の受入、教育、支援の問題は、 重要な課題となってきた。国内の大学機関では、国公私立を問わず、外国人 留学生の受入を積極的に進めてきたが、今後の受入、留学生に対する教育や 学習の質の維持、そのための体制や基盤をどうするかといった、解決してい かなければならない様々な課題を抱えている。 国内外を問わず、大学機関を取り巻く環境の変化は著しい。日本の国立大 学は、平成16年度より法人化され、経営や教育において、その活動、成果、 効率などが厳しく問われている。また、技術革新が教育や学習に与える影響 は非常に大きい。 そこで、本稿では、このような状況や変化を踏まえ、留学生教育と日本語 教育の視点から、留学生センターに求められる機能や活動について述べた。 【キーワード】 留学生政策、センター機能、リソース、コンピュータ利用、共有 1留学生センターを取り巻く状況 1)留学生 現在、日本の大学には、国費留学生、私費留学生、外国政府派遣留学生 (広義では私費留学生に該当)の3種類の外国人留学生が在籍している。 その数は、留学生10万人を目指す政策がとられて以降、一時的に減少した ことがあったが、平成14年度には留学生総数95,550人と、約10万人となっ た。私費留学生数(外国政府派遣留学生を含む)と国費留学生数の割合は 9対1で、私費留学生数85,024人、国費留学生数9,009人である。学部留 学生、日本語・日本文化研修留学生、高等専門学校留学生、専修学校留学 生、大学院の研究留学生、教員研修留学生、ヤング・リーダーズ・プログ ラム(YLP)留学生として、高等教育機関に在籍している。

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留学という言葉の定義は、狭義では「日本の高等教育機関に外国人留学 生を受入れ、教育(研究を含む)を実施する活動及び海外の高等教育機関 等に日本人留学生を派遣し、教育(研究を含む)を受ける活動」、広義では、 「前述の事柄に加え、外国人高校生及び日本人高校生の教育機関への受入 れ及び派遣、日本語教育施設への外国人学生の受入れ及び外国語学校への 日本人の派遣を行うこと」とされる。国立大学において、この留学に関わ ることを主業務とするのが留学生センターである。 留学生センターは、大学の附置機関として留学生教育センターと呼ばれ ていた時代を経て、留学生政策の進展に伴い、設置形態や業務内容の拡充 をしてきた。当初は、主として外国人留学生を対象としていたが、現在、 日本人学生の海外留学、国際交流協定等の業務を含め、留学に関する中核 的な位置付けを付与されるようになった。 2)国立大学留学生センター 国立大学の留学生センターは、資料1のとおり設置されてきた(平成15 年度現在)。これは、次の参考に示す留学生施策などが大きく関わっている。 ※参 考 ・昭和58年8月「21世紀への留学生政策に関する提言」 21世紀留学生政策懇談会(文部省留学生課) 日本語教育機関の整備充実、日本語学習の機会の増加と受入れ体制 の整備、地域ごとに中心となる大学における日本語の予備教育実施の 体制整備、海外での日本語の普及と教育体制の整備拡充の必要性を示 した。 ・昭和59年6月「21世紀への留学生政策及び展開について」 留学生間題調査・研究に関する協力者会議(文部省留学生課) 海外での日本語教育の普及と教育体制の充実、外国政府派遣留学生 の予備教育、国際交流基金の行う事業の充実、国内における留学生に 対する予備教育としての日本語教育の充実、日本語既習者や自然科学 系専攻者に対する専門教育と同時並行的な日本語教育の実施について 述べられている。

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・昭和63年9月「留学生受け入れ対策の現状と問題点」 (総務庁行政監察局) 入学選考方法の改善、共通一次試験免除等選抜方法の必要性、日本 語教育の充実、日本語学校の実態把握・情報提供、日本語予備教育機 関の有効利用、大学における日本語教育の実施、留学生の住居の確保 と留学生宿舎の管理運営の効率化、留学生に対する奨学金の充実、地 域住民との交流の促進、学位取得への配慮等について監察結果をまと めたもの。 ・平成4年3月「21世紀を展望した留学生交流の総合的推進について」 21世紀に向けての留学生政策に関する調査Efl究協力者会議 (文部省学術国際局留学生課) 昭和58年、59年目留学生受入れ計画の見直しと具体的な方策につい て示した。 この留学生センターは、その設置目的として、「外国人留学生に対する 日本語教育等及びこれに必要な調査、研究を実施するとともに修学及び生 活上の相談指導業務を体系的、総合的に行い、また、留学交流に関する教 育指導の充実発展に寄与すること」といったことを掲げている。取り扱う 業務については、一般的に、 ・外国人留学生に対する日本語及び日本事情等の教育に関すること ・大学院入学前予備教育等のための日本語研修コースに関すること ・短期留学プログラムの企画・実施等に関すること ・外国人留学生に対する修学上及び生活上の指導助言に関すること ・教員研修留学生及び日本語・日本文化研修留学生の教育に関すること ・日本人学生の交流協定二等への海外派遣の推進に関すること ・海外留学を希望する日本人学生に対する修学上及び生活上の指導助言 に関すること ・留学ガイダンス等、海外留学の情報提供に関すること ・地域社会と連携した国際交流に関すること ・留学生教育等に係る調査研究に関すること ・地域のニーズ調査と人材育成への貢献に関すること、など が掲げられている。

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3)最近の留学生施策 平成15年度の中央教育審議会大学分科会留学生部会において、新たな留 学生政策の策定に関して、次のような点が取り上げられた。 (1)留学生受入れ支援体制の充実について ・国費外国人留学生制度の在り方と今後の方向 。私費留学生支援制度のあり方と今後の方向 ・留学生宿舎の整備のあり方と今後の方向 ・留学生と地域等との国際交流 ・各大学等における留学生一人一人を対象とした指導、支援機能の強化 (教官等へのインセンティブの付与、インターナショナル・スチュー ゲント・センター) ・セイフティー・ネットの充実 ・外国人留学生(高校留学生を含む)のためのホスト・ファミリー(ホー ムステイ・自宅招待)への支援及びネットワーク化、など (2)多様な教育、研究に対するニーズに応じた海外留学の支援について ・学生の留学目的にあった留学のための海外大学等の留学事情情報の収 集、提供機能の強化 ・国際社会をリードする人材の育成を図るための奨学金制度 ・研究交流、異文化体験等の多様なニーズに沿った短期留学の推進 ・日本人学生の海外留学が一層容易となる奨学金制度、など (3)留学生政策と施策の評価と評価結果の反映について ・元留学生に対するフォローアップ ・留学生、元留学生に対する体系的な調査の実施 ・主要施策の評価体制の強化と施策への反映、など (4)その他 ・高校生留学制度の在り方と今後の方向と支援体制の充実 ・関係省庁、地方自治体、企業、団体等との連携 ・インターネット等を通じた継続的な同窓会機能の確立と維持 ・留学生の就職に対する諸問題ぺの対応 ・税制上の優遇措置(個人を対象) ・留学生交流における国、地域のバランスの確保 ・欧米先進国との交流の拡大、西南アジア等との交流の拡大、など そのほか、関連事項として、

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・大学における教育、研究の高度化と国際競争力の強化 ・我が国教育機関における英語教育機能の向上 ・我が国大平等の海外における教育の実施(海外進出、e−leaming) についても取り上げられた。 4)国立大学の独立行政法人化 国立大学は、平成16年度より非公務員型独立行政法人に組織的改革が行 われた。その一環として、機関全体として次のような留学に関わる事項に ついての取り組みが必要とされている。 。数値目標の設定 ・大学等における教育研究の高度化と国際競争力の強化 ・情報発信機能の強化 ・特色のある教育カリキュラムの一層の充実(英語による授業) ・国際化に対応した教官、職員の採用と英語力の向上 ・国際標準に沿った学位授与 ・科学技術重点分野等、最先端分野にリンクした相互交流の充実 。コンソーシアム形式等による相互受入派遣制度の充実 ・UMAP等を活用した単位互換の積極的運用 ・外国人留学生のインターンシップの促進 ・外国人留学生のベンチャー企業参加への支援の推進、など 5)留学生センター業務 現在、留学生センターは、 ・留学生受入れの量的拡大に対応した質的充実の重視 ・受入れ留学生の質の確保 ・10万人を超える留学生に対応した国内受入れ体制の整備 ・日本人学生の多様な教育、研究のニーズに応じた海外留学の支援(高 校∼大学院) などへの対応に追われている。具体的な対応策としては、 ・勉学、研究を目的とした質の高い留学生の受入れ ・留学に関する情報の収集、提供機能の強化 ・海外教育事情に関する情報の収集と提供に関する機能の強化 ・情報収集提供の強化

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・大学、日本語教育施設等関係機関間の情報の交流 ・国内外における日本留学情報の提供 ・留学生選考の充実 ・民間日本語教育施設との連携の強化 ・現地での学生面接等の強化(IT技術を用いた学生面接等) ・海外大学等との連携の強化 ・日本留学試験の活用 ・学習奨励費等の有効活用 ・就学生に対する支援 ・アーリー・エクスポージャーの推進 などが挙げられる。昨今、これらを積極的に進める大学機関が増えてきた。 これまでの日本語予備教育中心の留学生センターが、学内外に関わる様々 な業務を担うことになったと言える。これは、高等教育機関における留学 生の位置付けが、これまでのお客様的な存在ではなくなり、重要になった ことを示す。 2 留学生センターへの期待 1)センター機能の充実 今後、留学生センターが、前述の事項を進めていくためには、あるいは 中核的な機関としての存在を示していくためには、以下のような機能、並 びに大学全体としてこれらを支える基盤整備が必要である。 (1)教育センター 全国の大学で留学生受入れが一般的となりつつある現在、国策として留 学生を受入れている現在、日本へ留学を希望する人にとって、奨学金、宿 舎、学位取得は重点的整備が必要な事項である。また、アルバイトの原則 自由化、単位互換の促進、留学生保険加入の義務化など、学内制度の改善 を図る施策を進める必要がある。と同時に、世界に羽ばたく人材の育成、 社会への還元という観点から、世界最高水準の教育・研究、社会への門戸 開放を実践する大学創りを目指していくことが大学の活性化につながる。 平成15年度の中央教育審議会大学分科会留学生部会では、 ・留学生の多様な目的に応じた質の高い教育指導・研究内容の確保 ・留学生の適正かつ木目細やかな生活支援及び相談・進路指導体制の充実 ・留学生数に応じた教職員等の適切な処遇や配置、など

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の留学生に対する組織的、体系的な支援機能の整備強化が必要であるとし ている。学内に留学生交流推進会議などを設置している大学もあるが、学 内はもとより、地方公共団体、留学生支援団体等との具体的な連携を強化 する基幹となる必要がある。私立大学には、資料2にあるように、別科が 存在する。留学生センターは、どのような特色を持ち、別科とどのような 違いがあるのか。私立大学の別科が本科のための付属教育施設であるとす ると、留学生センターはセンター機能を有することが求められる。日本語 予備教育はその中で位置付けられるものであり、単なる日本語学校的な活 動に終始するものではない。 従って、現在、留学生に対する日本語予備教育は、国費留学生について は、国立大学に設置された留学生センター、(財)国際学友会、(財)関西 国際学友会など、私費留学生については、大学付属の日本語教育機関(別 科など)や民間の日本語教育施設などを拠点として実施されているが、大 学内での連携による実施に加え、地域・ブロックごとの連携の上に日本語 予備教育を推進する必要があり、留学生センターはその中核的な存在を目 指さなければならない。 また、予備教育だけではなく、将来的には留学生センターが学位等の取 得を含む留学全般に係る事項の総合窓口として、つまり大学内の中核的な 存在の一つとして、組織的に積極的な関与ができるシステムを考えていく ことである。 (2)国際学生交流センター 今後、日本の大学が世界に羽ばたいていくためには、現在、在籍者数の 多くを占めるアジアのほか、米国、豪州及び欧州の留学希望者にとっても 魅力があり、留学生の在籍比率が高い大学創りを目標とすることである。 具体的なイメージとしては、諸外国から留学生が集う大学、様々な人材を 輩出する大学などが挙げられる。その支えとして、世界標準ともなる留学 生交流制度を打ち出していく姿勢を保つ必要がある。 具体的な活動の柱の一つとして、留学生センターはもとより大学が、留 学生に対して日本文化を学ぶ場を提供するだけでなく、日本人学生や地域 社会などとの交流を促進する機会を提供することに積極的になることであ る。このためには、留学生センターが、国際学生交流センター(インター ナショナル・ハウス)という機能を持つことである。このセンター機能を 運用する教職員には、国際人として、大学の顔の一つとして、高い資質と

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能力が求められる。教員については、最近の留学生センターの公募条件に 変化がうかがえる。これまでの応募条件は、学位、論文業績重視の傾向が あった。最近の募集要項では、学位や論文業績のほかに、 ・海外との学生交流、国際的な業務の経験を有する者 ・上述の職務を外国語及び日本語で円滑に遂行できる者 ・教育・指導経験があることが望ましい といった事項が取り上げられるようになった。これをさらに進めていくと ともに、その待遇の検討も必要である。 (3)学習リソースセンター 日本語教育は、海外に学習者の大部分が存在する。その一つに当たる留 学志願者は、母国で学習し、留学のための試験を受け、留学し、卒業、日 本または母国もしくは第三国で就業という流れで動く。独自性を世界に示 していくためには、来日前、在日中、卒業後のそれぞれの段階で、どのよ うな教育や支援を行っていくかということにかかっている。学内の視野で はなく、広く見据えていくことである。 しかし、広く世界をとらえていくと、様々な学習者の母語、学習ニーズ、 学習レディネス、教育風土、評価、教育観・学習観などに接する。この多 様性に一機関で対応していくことには困難がある。そこで、国内の留学生 センターが連携協力して、学習者の母国の機関との連携も合わせて、多様 性に立ち向かうことで効率化を図るとともに、教育革:新を目指す。このよ うな連携は、以前は経済的、時間的、地理的に難しかったが、コンピュー タ社会の現在では、克服できる点が多くある。そのいくつかについて次に 述べる。 ○教育情報の発信と共有 各留学生センターが、学内の情報基盤整備関連部署との連携のもとに、 各学科や日本語予備教育に関する教育、研究情報を、国内外に発信し合 う。例えば、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)では、この10年間 に全教育課程が有する個人情報を除くすべての教育資源を公開する 「オープン・コースウェア・プロジェクト(OCW)」を進めている。こ こまでの大規模な情報公開ではなくても、留学生教育に関わる各部、各 科、各課程、各授業のディスクリプション(description、目標、活動、 評価等の基本方針と具体策を示すもの)を海外に発信していくことは、 広報、情報の共有だけでなく、機関、学習者、教員の質的向上にもつな

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がるものである。 例えば、教員の質的向上ということでは、情報発信は教員の意識変革 と深く関わる。一般に、教師はコンピュータの利用者である。しかし、 自分の授業で使うコンテンツの開発者でもある。これまでのコンビュー タ利用のとらえ方は、教師が学習者に教材や情報を与えるという教師側 からの視点から逸脱していない。つまり、印刷物の教材と同じ次元でと らえているのである。しかし、大陸を越えて世界の人に向けての情報発 信は、教員集団や組織に、責任と誇りをもたらす。また、従前からの教 師が教科書を与える教育という単眼的な思考から、自己学習と相互学習、 自律学習と教育、指導訓練などの複眼的な思考をもたらす。 広く世界に発信する前に、当面は、授業目標、評価基準、シラバス、 使用教材・教具、授業計画案、レベルや能力測定方法、試験問題、調査

研究などの教育資源(リソース)の管理運用(Computer Managed In− struction、 CMI)、名簿、文書、個人情報などの教務資源(リソース) を対象に、整備と学内発信と共有から進めることになる。

○コンピュータ利用

学習教材の提示による個別指導や学習者からの反応・情報の蓄積

(Computer Assisted lnstruction)コンピュータ・ゲームで育ってきた学

生にとって、コンピュータの操作自体は珍しいものではなく、興味の対 象であり、何かを得るための道具である。留学生を含め、学生は、

Web(ネットサーフィン、掲示板)、 e−mail(交流、作文添削、メーリ ングリスト)、Web Based Testing(コンピュータ利用テスト)、 Web Based Trainiing(コンピュータ利用遠隔教育)といった機会に囲まれる ようになった。 特に最近では、世界中で学習を受けられる仕組みを作るということか ら、e−leamingという言葉で示される遠隔教育、遠隔学習が話題となつ ている。特に、外国語習得ということが大きく関係する留学という世界 では、母国と外国の距離、予備教育と修了後教育の連携ということもあ り、また、目的や目標や母語等の多様性を持つ学生への対応のためもあ り、e−leamingが取り.ヒげられることが多い。実際、学習者が自律的に 学習できる教材の作成が日本や諸外国で進められている。 しかし、e−learningのためのシステム導入には、膨大なコストと人材 と時問が必要となる。e−leamingがコスト削減で推進されることがある

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が、これは間違いである。e−learningによる学習活動であっても、その 学習活動に対するサポート、コンテンツの充実が必要であり、更には運 用体制の整ったシステム、学習者同士の自律的な学習を促す学習コミュ ニティの存在など、必要な場の提供をしていかなければならない。 先行実践例からいくつかのことが見えている。例えば、「週1回の授 業で市販のCD教材を使う、学習は個別に行う、教師は監視役」や「授 業時間外に週2・3回の集中学習を行う、教師以外に補助者がサポート」 という状況で、CD教材のコンテンツ数や難易度の問題、学習意欲の持 続の問題、教師の役割に対する理解といった問題が浮上している。その ほかに、専門家不足による人件費の高騰、在籍者数の拡大のための教員 の負担増などがある。 換言すれば、e−learningを導入し、機関内外の教員、在籍学生、留学 修了者、留学希望者などに十分活用されるには、コンテンツの充実以外 に、人材の充実、学習コミュニティの形成、多様な学習コースの設置と 診断テストの配置、大量のレベル別ジャンル別素材の蓄積、及びこれら を機能的に結んだシステムが求められる。学習コミュニティとは、これ を構築することで、学習者に気付づきを誘発する情報を提供する協調学 習、役割交代による高度な、建設的な、円滑な議論が行えるゼミ活動を 推進する土俵である。これをコーディネートする教員の過剰な負担を軽 減する体制、国内外や学内各部が連携した環境を提供する前提の上に成 り立つ。 このような環境でのコンピュータ利用には、いろいろな長所がある。 筆頭は、教育情報をはじめ、学習者の学習履歴が電子データで蓄積され、 指導の改善はもとより教育革新のための基礎となる資料を教職員が共有 でき、それをもとに議論ができる環境が整備されることである。また、 学習者自身も学習プロトコルが得られ、学習活動や学習目標の修正に大 きな影響を与える資料を持つことになり、自律的な学習、自律した学習 者につながる。 2)日本語教育面からの当面の課題 留学生センターに関わることを述べてきたが、ここでは特に日本語教育 に関することで、留学生センターに最も求められることについて触れる。 留学生センターが留学生のための日本語予備教育を行う機関であることは

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大勢の人に認知されている。しかし、それは指導であって、教育や学習に 関するリソースや具体的なコンテンツが蓄積された機関と認知されている かどうかは別である。前述にあるように、留学生を待って日本語指導を考 えるという視点から世界を相手に、という視点への変化を大学機関は求め られている。留学生センターは、その最先端に位置する。そこで、前述の センター機能を整備するためにも、学内外や国内外との連携を強化するた めにも、最優先の課題は、学習者の目的、目標に合ったコンテンツの作成 と提供である。例えば、 ・短期集中型外国語学習用のコンテンツ ・マルチメディアの利点を生かし、解説と分かりやすく工夫された素材 を用いたコンテンツ ・小刻みに質問を入れ学習者の理解を確認しながら学習活動を進められ る個別学習型コンテンツ ・学部での学習で必要とされる教養や専門科目のコンテンツ ・短期留学生等を対象に日本語・日本事情や専門科目の外国語によるコ ンテンッ ・国内外の卒業生や社会人を対象とした大学院プログラム用コンテンツ ・卒業生が日本語学習ができる生涯学習コンテンツ などが挙げられる。これらを、全国の留学生センターが協力して作成して いくことを考える時期であり、その進捗が日本語教育の基盤を作ることに もなる。 このほか、留学生センターは、教材作成におけるプロデュース、映像の 質、音響効果等の制作環境やスタッフの整備、作成した教材の評価の仕方、 教育現場に適した発信システムの整備、学生の学習形態の把握、学習時間 の確保、個別学習の習慣化のための訓練など、いろいろなことを考えてい くことが求められる。また、その裏側では、衛星通信、電子媒体、インター ネットといった様々な道具が学習にどのような影響や効果を示すかについ ての実践的な検:証をする活動も求められる。留学や国際協力のもと、様々 な施策や活動が求められる高等教育機関だが、その最前線にいる留学生セ ンターの役割は非常に大きい。この責務を十分果たすためにも、機関内協 力、機関間協力をはじめ、担う人材の育成、必要な施策の立案など活動し ゃすい環境作りを、全学、高等教育機関全体、日本全体で進めていく必要 がある。

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【資料1】平成15年度現在での留学生センター(括弧内は設置年度) 北海道大学留学生センター(平成3年度)、弘前大学留学生センター(平 成15年度)、東北大学留学生センター(平成5年度)、岩手大学留学生セ ンター(平成14年度)、山形大学留学生センター(平成15年度)、筑波大 学留学生センター(平成3年度)、茨城大学留学生センター(平成13年度)、 宇都宮大学留学生センター(平成14年度)、群馬大学留学生センター(平 成ll年度)、埼玉大学留学生センター(平成9年度)、千葉大学留学生セ ンター(平成3年度)、東京大学留学生センター(平成2年度)、東京医 科歯科大学留学生センター(平成12年度)、東京学芸大学留学生センター (平成10年度)、東京農工大学留学生センター(平成6年度)、東京工業 大学留学生センター(平成6年度)、お茶の水女子大学留学生センター(平 成13年度)、電気通信大学留学生センター(平成7年度)、一橋大学留学 生センター(平成8年度)、横浜国立大学留学生センター(平成4年度)、 新潟大学留学生センター(平成9年度)、長岡技術科学大学留学生セン 早月(平成14年度)、富山大学留学生センター(平成11年度)、金沢大学 留学生センター(平成7年度)、福井大学留学生センター一(平成15年度)、 山梨大学留学生センター(平成15年度)、信州大学留学生センター(平 成11年度)、岐阜大学留学生センター(平成8年度)、静岡大学留学生セ ンター(平成12年度)、名古屋大学留学生センター(平成5年度)、名古 屋工業大学留学生センター(平成14年度)、豊橋技術科学大学留学生セ ンター(平成14年度)、三重大学留学生センター(平成9年度)、京都大 学留学生センター一(平成2年度)、大阪大学留学生センター(平成6年度)、 神戸大学留学生センター(平成5年度)、鳥取大学留学生センター(平 成15年度)、岡山大学留学生センター(平成4年度)、広島大学留学生セ ンター(平成2年度)、山県大学留学生センター(平成14年度)、徳島大 学留学生センター(平成14年度)、香川大学留学生センター(平成15年度)、 愛媛大学留学生センター(平成14年度)、高知大学留学生センター(平 成15年度)、九州大学留学生センター(平成4年度)、佐賀大学留学生セ ンター(平成12年度)、長崎大学留学生センター(平成8年度)、熊本大 学留学生センター(平成7年度)、大分大学留学生センター(平成15年度)、 鹿児島大学留学生センター(平成12年度)、琉球大学留学生センター(平 成10年度)、政策研究大学院大学留学生センター(平成14年度)、東京外 国語大学留学生日本語教育センター(平成4年度)、大阪外国語大学留

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学生日本語教育センター(平成3年度) 【資料2】私立大学(括弧内は設置年度) 東日本国際大学留学生別科(平成8年度)、流通経済大学留学生別科(平 成15年度)、十文字学園女子大学留学生別科(平成12年度)、城西大学別 科(平成2年度)、東京国際大学留学生別科(昭和57年度)、日本工業大 学留学生別科(平成5年度)、文教大学外国人留学生別科(平成5年度)、 明海大学別科(平成3年度)、神田外語大学留学生別科(平成12年度)、 城西国際大学留学生別科(平成10年度)、麗澤大学別科(昭和51年度)、 亜細亜大学留学生別科(昭和35年度)、杏林大学別科(昭和63年度)、慶 応義塾大学別科(平成2年度)、創価大学別科(昭和51年度)、大正大学 別科(平成8年度)、大東文化大学別科(昭和53年度)、拓殖大学留学生 別科(昭和47年度)、帝京大学留学生別科(平成2年度)、東海大学別科 (昭和39年度)、目白大学留学生別科(平成15年度)、早稲田大学別科(昭 和38年度)、桐蔭横浜大学留学生別科(平成13年度)、北陸大学留学生別 科(平成6年度)、朝日大学留学生別科(平成13年度)、岐阜経済大学留 学生別科(平成13年度)、愛知大学外国人留学生別科(平成14年度)、愛 知学院大学留学生別科(平成3年度)、愛知産業大学留学生別科(平成14 年度)、愛知淑徳大学留学生別科(平成4年度)、中部大学留学生別科(平 成5年度)、名古屋外国語大学留学生別科(平成13年度)、名古屋学院大 学留学生別科(平成元年度)、名古屋商科大学留学生別科(平成15年度)、 南山大学外国人留学生別科(昭和49年度)、京都外国語大学留学生別科(昭 和55年度)、同志社大学留学生別科(平成11年度)、龍谷大学留学生別科 (昭和60年度)、大阪国際大学留学生別科(平成5年度)、関西外国語大 学留学生別科(昭和50年度)、近畿大学留学生別科(昭和45年度)、倉敷 芸術科学大学留学生別科(平成13年度)、高松大学留学生別科(平成14 年度)、九州国際大学別科(平成1!年度)、九州女子大学別科(平成6年 度)、久留米大学留学生別科(平成11年度)、西南学院大学留学生別科(昭 和48年度)、長崎総合科学大学別科(昭和53年度)、崇城大学留学生別科 (平成13年度)、日本文理大学別科(平成4年度)、別府大学別科(平成 元年度)、沖縄大学留学生別科(平成6年度)

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【資料3】私立短期大学(括弧内は設置年度) 山形短期大学留学生別科(平成11年度)、つくば国際短期大学留学生別 科(平成元年度)、産能短期大学留学生別科(平成元年度)、東京経営短 期大学留学生別科(平成12年度)、常葉学園短期大学留学生別科(平成 7年度)、藍野学院短期大学留学生別科(平成15年度)、樟蔭東女子短期 大学留学生別科(平成15年度)、神戸学院女子短期大学留学生別科(平 成11年度)、愛媛i女子短期大学留学生別科(平成13年度)、宇部短期大学 留学生別科(平成14年度)、佐賀女子短期大学日本語別科(平成14年度) ※参考 「新たな留学生政策の展開について(答申)∼留学生交流の拡大と質の向上 を目指して∼」文部科学省中央教育審議会平成15年12月16日 http://www.mext.go.jpfo−menu/shingi/chukyo/chukyoO/toushin/O3121801.htm 文化庁文化部国語課日本語教育実態調査 http://www.bunka.go.jpflkokugo/frame.asp[Ofl=list&id=1000001687&clc=1000000 073[9.html やなぎさわ よしあき (独立行政法人国立国語研究所日本語教育部門長)

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