奈良教育大学学術リポジトリNEAR
完新世奈良盆地の自然史−その3−
著者 西田 史朗, 松岡 数充, 野口 寧世, 金原 正明
雑誌名 古文化財教育研究報告
巻 8
ページ 31‑44
発行年 1979‑03
その他のタイトル Holocene Natural History in the Nara Basin.
III
URL http://hdl.handle.net/10105/431
完新世奈良盆地の 自然史Tそ の
3‑
西 田 史 朗 *・ 松 岡 数 充 料 野 口 寧 世 辮・ 金 原 正 明*
* 奈良教育大学教育学部地学教室
** 大阪市立大学理学部生物学教室
*** 大阪教育大学付属高等学校平野校舎
(昭 和 54年 1月 26日 受 理 )
は じ 配)に
先 の報 告(西田・ 松岡, 1977;西田・ 松岡・ 野 口・ 金原, 1978)に も記 した よ うに、本 研究 は文 部省特 定 研究「 古文化財 」の「 古代 人の生 活 と環 境 につ い ての研究」 と して 継続 中であ り、本 報 告 も78年度 に行 な った試料 採取 と、現 時点 まで に明 らかにす る ことので きた既採 集試料の研究 報 告 であ る。
試 料の採取 は76, 77, 78年度で一 応 終 了 した。 この間、奈良 盆地 内 で20地点 、 延100m
の地質柱状 試料 を得 ることが で きた。自然史編年 の基準 となる泥炭層 を11地点 で 、また火 山灰 層 を 2地点 で確 認 した。 14c年代 は16層準 で測 定で きた。 この他 、土 器片 も6ケ所か ら得 た。
今 後 は よ り密度 の高い 試料 採 取 、あ る0■ま既 存の ポ ー リング資料の 活用 によ って、 最終氷期以 降 の奈良 盆地 の 古環 境の復元を計 りたい。
本報 告の要 旨は、昭和53年度特定 研究「 古文化 財」 研究会 で報 告 した (粉 川 ほか 、1979)。
謝 辞
この研究は 、文 部省科学研 究 費補 助金・ 特 定研 究「 古文化財」 の「 植物性遺 物によ る古代人の生 活 と環境 につ いての研 究」 班(代表・ 粉 川昭平 。大 阪市 立 大学 教授)の一端 と して行 なった もので 研 究 費の大 半 は上記の研 究費補 助金 によ る。
本 研 究を進め るに当 り、同班 の諸氏か らは折 にふれ有益 な 助言を頂 いた。
大 和 郡山市 出 屋敷0松村 ヒサ エ氏、同 市 白± 0松 本 三 治氏 、同 市 八条・ 藤 岡徳 雄氏 、天理 市 西井 戸堂町・ 中 井 宇一 氏は、 ボ ー リング用地を快 く提供 して下 さった。
ま た.奈良 教育大学教 育学 部地学 教室・ 肥 塚 真知子、石橋幸二 、江 尻祥晃 、福井典 子、土 田栄子 下村仁 志の 諸氏 は、炎天下 に ボ ー リング作業を献 身 的に遂行 して下 さ った。
以 上の方 々 にあつ く御礼 申 し上げ ます。
研 究 方 法 と 試 料 の 採 取 地 点
研究の方法は、 前報 に記 した通 りであ る。 本年 度の試料採取 は、佐保 川、初瀬川の右岸 の4地点 で ハ ン ドオ ーガ ーによ り行 な った。
第1図 試料採取 地点
*は 76年度、 。は77年度、・
第1図に既採取試料 に加え て、採 取地点 を示 した。
1表に示す。
第 1表 作業地点
は78年度 の採取 地 点を示 す。
また 、試料採 取 の位 置 と海抜高 度 、 コア長 を第 柱 状 試 料
海 抜 コア 長
在 地
78‑1 78‑2 78‑3 78‑4
大和郡 山市 出 屋敷
大和 郡 山市 白土・ 天神社 前 大和 郡 山市八 条・ 菅 田神 社南 天 理 市 西井 戸 堂 町・井 戸 堂 小 学 校 南
52m 55m 45m 52m
3 2 0cm 485011
4 8 0 clll
6 7 0cm
ハ ン ドオ ーガ ー
採取 した試料 のうち分析 に供 した残余は、奈良教育大学 教育学 部地学教室に保存 してある。
柱 状 試 料 に つ い て
採取 試料 について、岩相 を主 として説明する。第2図に簡略化 した柱状図を示 した。
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第2図 柱状試料
各 柱 状 図の上端 は、各 ボ ー リング地点 の海抜高度を示 す。 海抜高度 は国土 地理院 の2.5万 万 分の1地形図か ら読み と った。 柱 状図の上端の数字 は作業地 点を示 す。
A:砂質 シル ト層、B:砂層、C:泥層 、D:泥炭層、E:火山灰層 、F:木片、G:土
器片、H:石英片、 I:微化石 分析 試料、 J: 14c年 代測定試料。
78‑1(大 和都 山市 出屋敷)
地表 か ら 6 5cmま で は黄褐色 の耕土 、 65‑1 3 0clllは チ ャ ー トと石 英片 の 細保 を含 む粗 い黄灰色 ない し黄褐色 の花 岡岩質 砂 よ りな る。 130‑1 7 5cmは泥質が ちの黄灰 色 砂層 で、 130‑14 0 cmで
は 材種 の鑑定 は不能 であ るが木 片を、 150‑1 6 0cmでは泥炭質 がか って くる。175‑2 5 0cmは 花 闇 岩質の砂層 よ りな り、190‑2 3 oclllで は黄灰色 シル トがか り、230‑2 5 0cmではい くぶん粗 くなる。
250‑2 6 0cmは泥質 部の多 い黒褐色 泥炭層 、260‑2 8 0clllは 黒黄灰 色 の泥層 、280‑3 0 5cllは 黒 褐色 の泥 炭層 が み られ る。305‑320c皿は灰 褐色 の シル ト層 よりな る。
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78‑3
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78‑2(大 和 郡 山市 白土 〕
地表 下40卸ま で は 耕 土、40‑70cmは青灰 色 シル トで、片麻 岩 の礫 を 含 み、 中には石 器 と思え るもの も混 じる。 70‑1 2 0clllは 最上 部では雲 母片に 富む褐灰色 の シル ト層 であ るが 、中・ 下 部は 粘 性 の強 い灰色 粘土層 で、材片 と溶結 凝灰岩 片・ チ ャ ー ト・ 片麻岩 の細礫 を含 む。 120‑1 9 0ollは 灰 色の雲 母 片の多 い砂層 で、190‑2 8 0cIIllで は暗緑 灰色 の 木 片を混 じえ た細 礫 ない し小 礫層 とな乙 礫 種 はチ ャ ー ト0石英・ 片麻 岩 の亜角礫 が 多 く、淘汰 は よ くない。280‑3 2 0cmは灰色 の砂層 で、
上 部 には藤原層 群 に由来 した と思わ れ る砂岩 や 泥岩の小礫 がみ られ る。320‑4 8 5cmは灰色 の シル ト層 ない し砂層 よ りな り、上 部は シル トが ち、下 部は砂が ち とな る。 この間、350‑3 7 0cmに粘性 の つ よい緑灰色 の泥層 が は さまれ る。
78‑3(大 和 郡 山市八 条)
地表 よ り1 1 0clnまでは、人為的 な埋 積層 の感 を 呈 す る。 上部の4 0cIIlま では現在 の耕 作土で 、 40‑1 1 0clllは褐色 ない し黄 灰色 の埋積層 で あ る。110‑2 6 0cmは灰色 ない し黄灰色 のパ ヽッチをは さ むシ ル トな い し泥 層 で 、230‑2 4 0cIIlに は所属不 明 の生物痕 かみ られ る。240‑480c皿は灰色 の 粗 砂 か らな り、 チ ャー ト・ 石 英の 亜角礫 状 細礫 を含むが淘汰 は よい。
この地 点は76‑11,76‑12と 同 じ く、初 瀬川 と佐保川の合 流点 に位 置 し、堆積 の上 で変動の は げ しい場 所 で、各層 の堆積 速 度 も速 く、数 層 準 で ヒ ア タ ス も存 在 す る様 子 で 、あ ま り良 い試 料 とは言 えない。
78‑4(天 理 市 西井戸 堂 町)
この地点は石 器時代以降 の複合遺跡 として知 られ る井 戸堂遺跡 の分布域 に含 まれ る。
地表 よ り3 0clllま では現 在 の耕 作土 で、 30‑5 0 clnは 石器片 な どの遺 物 を包 含 す る褐色 の シル ト 質砂層 か らな る。 この層 準 よ り上 師 器片 を16個、須 恵器片 と思 われ るもの2個を採取 した。 いず れ も小 さな破 片 で、器型や模様 は 明 らか で ない。50‑1 3 0 clllは 粘 り気 のつ よい灰 ズ リープ色 の粘 土層 で 、130‑1 6 0cmは雲母 片 に富む暗緑灰 色 の 細砂層 、160 cm付近で は よ り青緑 色 を 呈 し、シ ル ト混 りの粘土層 とな るが、180‑2 0 0clllで は緑 灰色 の シル ト層 とな り、雲母 片 も少 な くなる。
200‑2 4 0 clllは や や褐色 がか った灰色 の シル ト質粘土 ない しシル ト層 で下 部では木片 が多 くなる。
240‑260 cmは 木片 や草本 植 物 片を多 く含 ん だ シル ト層 で あ る。260‑2 7 5cIIlは 泥炭層 で、掘 り 上げ ると間 もな く暗褐色 か ら黒褐色 へ と変 化 す る。275‑2 9 0clllは 雲 母 片を混 じえた淡黄灰色 の火 山灰層 で、そ の下 部290‑3 0 0clllは ふ たた び260‑2 7 5cmと 同様 の泥炭層 で あ る。300‑3 1 5cIIl は 粘 り気 の つ よい灰 色 の粘土層 、315‑4 1 0clllは 砂層 で 、上部 は雲母 片の多 い片麻 岩 ない し花 闇岩 の細礫 を含 む 粗砂 よ りなり、下 部 は淘汰 の よい中粒砂 よ りな る。3 6 0clll付近 では材片 が多 くみ られ
るが 、樹種の判別 は困難 で あ る。410‑4 4 0clllは ふ たた び雲母 片 に富む黒色 シル ト層 で、上 部の 410‑4 2 0clllで は植 物片が密 集す る。440‑4 5 5 cIIlは ガ リープ黒色 の粘土層、455‑4 7 0clllは 極 暗褐色 の泥炭層 、470‑4 8 0cPは植物 片 と雲母に富 む 泥層 よ りな る。480‑5 05dmは 片麻 岩礫 を含 む灰色 の 中粒 砂層 、505‑5 5 0cmは植 物 片 を含 む黒褐色 の シル ト質 粘土層 よ りな る。550‑580
cmは 黒色 ない し黒褐色 の厚 い泥炭層 で あ るが、 上部の3枚の泥炭層 とは異 な り、肉眼的 な植物片 は ほ とん ど見 られず 、炭化 が極 めて進行 した様 子を示す。585‑6 2 0clllは 暗 緑灰 色 の締 った粘土層 、
620‑67o伽 の上部 は暗緑 色 の細粒 砂 層 、下 部 は 同 じ色 の中粒 砂層 よ りな る。
この 試料は、今 までに採取 した ものの うち最 も長 く、岩相 か らみて も泥炭層を4枚と、泥炭層 に は さまれ た火 山灰層 を もつ最 も興味深 い もの である。
14C年代 に つ い て
採取 した試料の うち 14c年代の測定が 可能 と思われ るものについてゝ測定を日本 アイソ トープ 協会へ依 頼 した。 14cの半減 期は 5,730年 と して計算 してある。
昨年度採取の試料 についての未報告分を含めて、その結果を第2表に示 した。
第2表 C年代
度 1 岩 14c年代Y.B.P.
77‑2‑3 77‑6‑4
78‑1‑9 78‑4‑18 78‑4‑19 78‑4‑31
460‑4 7 0cln 145‑1 5 5cm
280‑2 90cm 270‑2 8 0cm 290‑3 0 0clll
5 7 0clll
泥炭質 シル ト 泥 炭 質 粘 土
3l,8oo *li?3
21,500 t 600
27,100 + 6 00
24,600 t 520 28,400 t 820 34,ooo tfi!3
炭 炭 炭 炭 泥
泥 泥 泥
火 山 灰 に つ い て
この一 連 の研 究 において 、奈良盆地 内の 2ク 所76‑7, 78‑4地 点 か ら火 山灰層 を確 認 してい る。 両 試料 とも火 山灰の検討は充分 でないが、測定 され た 14c年 代 と花粉分析結果か ら考察を加 え る。
両地 点 の火 山 灰 ガ ラスの屈 析率 測定 。重鉱物 分析 は現在進 行中であ るが、肉眼的観察 では どち ら も淡黄灰 色のみ が き砂状 の火 山灰で.走査電 子顕 微鏡下 で は 引伸 され たパ イプ状気泡が 著 る しい 。 層位 的 に町 田・ 新井(1976)の始 良Tn火山灰に相 当す るのでは なか ろ うか と考え るが 、 さらに 検討を要 す る。
76‑7試料 の火 山灰層 の下 位4 0cmの泥炭層 の C年代 は25,000± 580Y.B.P.を示 す。 ま
た78‑4試料の火 山灰 層 の直下 の 泥炭 層 の C年代 は2&400±820Y.B.P,を 、 直上の泥炭層 のそれ は24,600±520Y.B.P.を示 す。 一方 、花粉分析 か らみて、両試料 と も火 山灰層 の下 位 の 泥炭層 の花 粉組 成 は、Pグσθα,Pグ η%s(D′ ′ノθ″ノノο″ 十 〃 αタノο″ノノο″),rs gα,
Lθ クググθbαノαη%sの産 出で特徴づ け られ 、対比が 可能 であ る。両火 山灰 を肉眼的観 察 と降下時 の花粉組成か らみ た樹木相 の類 似か ら、 同一 視 す ることが で きるな らば、 また測 定 され た14c年
粉m 抑薫
代 が信 頼 で きる もの とす ると、 この火 山灰の降下 時期は25,000年以降24,600年の間 と見 なせ孔 この2地点の ほ 力ヽこ奈 良 盆 地 内では大 和郡 山市番 匠 田中の河川 改修工事 に伴 うボ ー リングと田 原本 町 田原本 本町 の町 役場建 設 に伴 な うボ ー リングで、地 下6〜10m層準か ら火 山灰層 が知 られ て
い る (藤原 、 1978私信)っ 今 回の試料 採 取 の限界 を少 し越えた付 近 に、泥炭層 同様 広 く火 山灰 層 の分布 が 予想 され 、今 後積 極 的 に検討 して ゆ きたい。
AP IIAP FS
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第3図 78‑1柱 状試 料の花 粉・ 胞 子 群 集 の組 成c上段 は樹 木花 粉 (AP)、 下 段 は非 樹 木花 粉
(NAP)と AP:NAP:FS(胞 子 )の 相 対比 を示 す。 花粉 ダイ アグ ラムはAP+
NAPを 100と して表現。 以 下第4図、第5図と も同 跳
78‑1‑1〜2 は現在 の水 田耕土 中の花 粉組 成 をみた もので あ る。 当然 の ことなが らGrami―
neae(いね科)が優 占的で おそ らくイネに 由来す る もので あ ろ う。Cruciferae(ぁ ぶ らな科)
の 多 い ことも周囲 の疏菜 園芸 の反 映であ ろ う。
78‑1二3〜5 では Cノθノθbαノαπθ夕sグS(ア カガ シ亜属)が高 頻度 で出現 し、 また ιθクググθ一
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bαノαπs(コナ ラ亜 属 )も 相 当量随伴 して産 す る。 C/ノク′οπθ″′α (ス ギ)の多い こと、 草本 植 物で は 4/′ θ″JS′α (ョモ ギ属)の多 い ことが注 目 され る。
78‑1‑7〜10は木本 植物 では、 スbグ′S(モミ属)、 〃αタノο″ノノθη(五葉 マツ亜 属)を含 む P′η%s(マツ属 )と TSagα (ツ ガ属)の多産 が注 目 され る。 Cノε′θbα′αηθクs′Sが見 ら れ ず、L′ρ′ごθわα′α″ sが多 くな る。 他 に βθノ
%ノ
α(カ ンバ属)、
Cο″ノノ″s(ハシバ ミ属)、
Fαg%s(ブナ 属)を伴 な う。 草本 植物 ではP′γεJεαれ α (タ デ属)、 Cyperaceae(か
やつ り ぐさ科
)、
&″g%グ sθγわα (ヮ レモ コウ属)が特徴 的 に産 す る。 Umbelliferae(せり科 )の 普遍的な産 出 も注 目 され る。 この層 準で1‑7と 1‑9は泥炭(草炭)であ るが 、 78‑1‑
7〜10の花粉組 成 は安 定 して お り、堆積 環境 と して冷 温帯 の泥炭 形成 の行 なわれ る湿地が予 想 され る。
78‑1‑9の HC年代 は27,100±600Y.B.P.であ る。 西田・ 松岡・ 野 口・ 金原 (1978)
で報 告 した77‑0試料 の地表 下4 0 0cmか ら得 た泥炭 の14c年代 は27.200±575Y.B.P。を示 し,
産 出す る花粉群 集の組 成 もひ じょうに似 ている。両地点は地 理的 に も大 き く隔 ってい ない ことか ら、
78‑1‑7〜10はほ ぼ同 時代 のよ く似 た環境に堆積 した もの とみなせ よ う。
78‑2(大 和 都山市 白土 助)
ヽ ミ
言詈 :
お″
第
第4図 78‑2柱 状 試料 の花粉・ 胞 子群 集の組 成
本 試料 の花 粉群 集は3群集 に分 け られ る。78‑2‑1〜7はC/ノ タ′θ″′″′αの 名 産 で 特 徴づ け られ 、78‑2‑10は ′グεθα,〃 αクノθ″ノノθ″,Sαηg%グsθ″bα の 出 現 で 特 徴 づ け られ る。
78‑2‑11〜12は 78‑2‑1〜7の群 集 に 類 似 す る が 、C/ノタ′ο″′γグαの少 ない ことが 異 な っ
て い る。 さ らに、 78‑2‑10〜12ではAP、 NAPが 減少 し、FSが著 し く増 加す る。
岩相 的 に顕 著 な変化 のみ られ ない本試料 で 、 この よ うな群 集組 成上の変化が た どられ る ことは 、 今 後充分 に検 討す る必要 が あ る。
78‑4(天 理市西井 戸堂町
)
第5図 78‑4柱 状 試料の花粉・ 胞 子群 集の組成 この 試料 の花粉組成 は、少 な くとも3群集 に区別 す る ことがで き る。
︱ ︱ 口 ■ ロ ー ロ ロ ■ ︱ 口 ■ 一 口 ■ ヨ 螂
上位の群 集は78‑4‑1〜3を指す が、78‑4‑1〜2は遺 物 包含層 で あ り区別 す るべ きか もしれ ない。 この群 集は樹木花粉 では、 C″ノクノ0″ ′″グα,Cノε′θわαノαπθクs′S,Cαs′α″θα (ク
リ属)一 Cαs′αηθクS'S(シィ属)、 cθノノグs(エ ノキ属)一■クカαπα
"′
力θ(ムクノキ属) の増 加、非樹 木花粉 では G rarn ineae、 Cruciferaeの多産で特 徴づ け られ る。
中位 は78‑4‑11〜 17で、下位 に層 厚 1 5cmの 火 山灰層 を もつ。 この層 準の花粉組 成 は ■わルS, Pグθθα (ト ウ ヒ属)、 Pれ s(マ ツ 属)な ど の 針 葉 樹 の 優 占 、 と くに 〃 αタノθ″ノノθπ の 高率 な産 出で特徴 づけ られ る。 この他 の樹木花粉 、非 樹木 花粉 では大 きな変化 はないが、 胞子の 比率 が 大 きい。
78‑4‑18の14c年代24,600± 820Y.B.Peより、 中位 の群 集 は24,000年前後の堆積 物 と考え られ る。 これ に相当す る試料 と して、 76‑1′ の河床 下1 00 cmの泥 炭(草炭 )と 77‑4の地 表下 145‑1 5 5cmの泥 炭があ る。 前者 は24,200± 1,100YoBoP.と され(粉川0吉田、1962)
後者 は24,400± 550Y.BcP。 と され てい る。78‑4‑16〜 17では 、上記の泥炭層 の花 粉組 成 と PJε θα,P′″″Sの比 率が大 きい ことを除 いて ひ じ ょうによ く似 る。 ただ、77‑4‑3でまFS
の比率 が小 さい。
下位 の群 集 は 275‑2 9 0oll深 の火山灰層 の直上 よ り下 底 まで78‑4‑18〜34の層 準 を示 す。 こ の群集は非樹木 性花粉 に富み、針葉樹が 少 な くな る。 L′ク′ごοわαノα
"″s,4′″%s(ハンノキ 属)の他 にCθ″ノ′″sがみ られ る。非 樹木 花粉で はGramineae、 Cyperaceae、 4″ ′′″ ′―
s′α,Compositae(き く科 )、 Sα″gπJsογ夕α,UmbeH iferaeの多産 で特 徴 づ け ら れ る。
この層 準 の上位78‑4‑18と 78‑4‑19の間には1 5 cmの火 山灰 層 が存在 す るが、 花粉組 成 は
NAPの ∠″′θ″ グsグαが 減 る ことを除い て変化 しない。 火 山灰層 の上 位78‑4‑18の 14c年代 は28,400± 820YoB.Pを示すが 、 この火 山灰層 をは さむ2試料 の花 粉組成 、岩相 か らみ て、年 代 の隔 絶があ りす ぎるよ うに思 う。 火 山 灰を は さむ上下 の層 準 での花粉組 成 の類 似 は、火 山灰の降 下 の植 生へ の影響 の ずれ と も考え られ 、今 後の検 討 にまちたい。
地表下5 7 ocm層 準78‑4‑31の泥炭 の 14c年代 は34,000主li:::YoBoP。 であ るが、 これ に相 当す る泥炭 と して77‑3‑8試料 の32,500± 1,160YoB.P.が あ る。 77‑3‑8は地表下
547‑5 5 2 clllか ら得 た もの で、 この層 準の花 粉分析 結果 と大 き く矛 盾 しない。
珪 藻 分 析
分析 の方法は第2報と同 じである。 77年度 に得た試料中77‑1、 77‑2、 77‑3、 77‑4の柱 状試料 について、珪藻分析の結果を報 告す る。
77‑1(大 和 郡山市稗 田町
)
6 0 0 clllにおよぶ本 試料は、上部泥炭層(77‑1‑1)と下 部泥炭質 シル ト層(77‑1‑2〜7)に
分け られ、 この間に2 5 0cmの 砂層が存在する。77‑1‑1は上 部泥炭層でも最下 部にあたり、最 も 泥炭質 な部分であ ったが、珪藻遺骸をほ とん ど含 まず、植物珪酸体(Plant Opal)を合 む程度で 溶失残骸す ら発 見できなか った。 下 部泥炭層(77‑1‑2〜7)は上 部泥炭に比べて、珪藻殻の保存
状 況 は良 好 で 、25属 82種を 同定 し得 た。 これ らの珪藻 を生態 別に考 察す る。
恒 久的浮 遊生 活 種 につ いて、Centralesは 1.2〜3.3%(平均2.1%)、 Pennalesは 12〜24
%(平均14.3%)含 まれ て い る。琵 琶湖 や野 尻湖 での底質 中の珪藻 殻の産 出状況を見 る と、湖底原 の 部 分では恒 久浮遊生活 種は全体 の60〜70%を占め、汀 線か らの距 離 と ともに増加 す る。 一方 、 奈良 盆地 等 の溜池 の底質 中 では 、岸 に近 い周辺 部や 中心 部の 区別 な く、恒 久 浮遊生 活種 は30〜40
%を占め 、か つPennalesが centeralesより多量 に産 出す る。77‑1の 77‑1‑2〜7中の恒 久 的 浮遊 生活 種(P ennales+Centrales)は 全体 の16.2〜25.4%、 平均値 で18.6%を 占 め か な り安定 した池 沼型 に類 す る。
泥炭 湿 地 生活 種 につ いて は、 ミズ ゴクの 繁茂 と正の相 関関係に ある E%η θ′′α 属の合有比 は 、 14.4〜 42.6%、 平均値 で28.3%を示 し、恒 久的浮 遊生 活種 に比 べて 変化 が大 きい。 京 都の 深泥 ケ池 や新宮 の浮 島な どの調 査 によ ると、 ミズゴケの生 育 してい る湿地内では E%π θ′′α 属 は70%
を 占め優 占す るが、浮 島が形成 され 始 まると珪 藻 全体 の繁殖 は著 じる しく阻害 され、底質 中 の含 有 状態 も極端 に少 な くな る。 これは浮 島が 浮 上す るにつれて乾 燥 し、 島の下 では直 射光が不 足 し珪 藻 の繁殖の場 が失 なわ れ るため と考え られてぃ る。 本 試料中ではEπηθ′グα 属が70%を越す ことは ない。 また、77‑1‑6〜7と 77‑1‑2〜4では、産 出種の中 に共 通 しない ものがあ り、77‑1‑5
は漸 移 帯 に当 る。
河 川 、漢流 底着 生種については.前回の 寺川 水系 とは 全 く異 な り、 スσ力″αη′力θsや Cθθεθ―
π′′s,P′αεθ″′π′α等 の 純漢流 種 は少 な く、Cα′οπ′′sやSyη′グ″α の よ うに広範 囲 に適 応す る種 が検 出 されてい る。 また、産 出頻 度 も77‑1‑7を除 く と10%台で少 ない。
随意 的浮 遊生活 種 は、一 般 的 には湖沼 や河 川 の沿岸域 で生活 す る もの で、湖沼規 模 や 水深 とは逆 相 関 的 に増減 す る。77‑1試料 中 では 最 も顕著 な 出現 率 を 示 し、かつ 種数 も最大 で あ る。 しか し、
種 ごとの 出現 頻 度 では数種 を除 き 1〜 2%台が最 も多 く、個体 の平均 長径 も標 準値を下 まわ るもの が 多 い。
随意 的浮遊 生活種+泥炭 湿地生 活種 の合 有比 は、下 部か ら上 部へ 増加 す る傾向にあ り.最下 部の
77‑1‑7を除 くと、小規模 な泥炭 性池沼 底質 中の 珪 藻含有 状況 と共 通点 が多 く、 この泥炭 も現 地 性で あ る ことを示 唆す る。77‑1‑7では 全体 に河 川 種は少 ない が、中小河川の 底泥や三 日月湖 な どか らよ く報 告 され るCα ノοηθグs bασグ′′% が 優 勢 で 、旧佐保 川 水系 との 関係 を考 え る上 で興 味深 い試料 であ る。
77‑2(大 和 郡山市若 槻)
全体 に砂質 で 、 ほ とん ど珪藻 殻 の産 出はみ られない。 わずか に77‑2‑2試料 か ら Cノ解レ 〃α αspθ″α とP′πη%′α/′α ′タグSθθクαノグsが稀 産 す る の み で あ る 。
77‑3(大 和 郡 止1市下 三 橋)
77 1試料 と同 じ く、上部の 泥炭 質 シル ト(77‑3‑1〜2)と中 部の砂質 シル ト(77‑3‑3〜4) 中の珪藻遺 骸の保 存状態 が良 くないので、77‑3‑5〜11について報 告す る。
恒 久 的浮遊生 活 種 は 、 下部 に多 く、上 部 に少 ない。Pennalesは 4%台の 安定 した出現 を示 す が 、centralesは点在 的 で あ る。
泥炭湿地 生種 は、下 部に少 な く上 部に向 って増加す る傾向 に あ り、 最大 は77‑3‑6で 73.4%
を 占め る。
河川・ 漢流 底着 生種 につ い ては、77‑3‑10が最大 で、77‑3‑9では 半減 し、 それ よ り上 部で
1ま 77‑3‑10で の産 出の10%程度 で数 個所 に出現 す るのみ とな る。77‑3‑10の 優 勢種 は 、 Sy″θグ″α ′″αで 純漢流 底着生種 といえ るが、他 は ■θ力πσπ′力′s、 COε σο″′Jsを除 くと湖沼 中で も生活 す る広域適応 性をかねそ なえてい る種 であ る。
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第6図 77‑1、 77‑3試 料 の珪藻 群 集 の 古生態 的分布
凡 例の 区 分は、 分類 学 的、 生態 学的 に必 らず しも妥 当で ないが、今 回の場合 この よ うな分 け方 で も矛盾は な く、 分 りやす いの で このよ うに表現 しれ
77‑1
3‑ユ
J‑2
,‑3 3‑̀
■‑1
■‑2
■‑3 1‑6
フアー3
Facult
随意 的浮 遊生活 種 につ いて は、 出現 種の含有 比が小 さ く、上 ドの連続 性 に とば しい こ とは77‑1
と同 じであ る。77‑1試料 と共通 す る種 の 中で、中 ない し富栄 養の 止 水域 を 好む 〃απ′2sσ力′α
とS′απ″θ″θ′sが目 に つ く。
随 意的浮遊生活 種+泥炭 湿地 生活 種の値 は上 部に 向 って急 増 し、77‑3‑6、 77‑3‑5試料 で は
95%台 を 占め るが 、 これ は主 にE%ηOれ αの 出 現 率 の上昇 による。 また、77‑1と 77‑3試
料 の最 下部で 、共 に漢 流 種 に共通 な ものが多 く興 味が もたれ る。
77‑4(大 和 郡 山市 東奈良 □町
)
全体 に砂質 シル トが ちで、77‑2試料 と同 じ く珪 藻遺骸の保 存が悪 く.77‑4‑1からcノ ゎθ〃α
′ακθ′θ″α′αが 、 77‑4‑2か ら′И′′θs′″α ググs′απs が 、77‑4‑3か ら は E ηθ′ブα
″θわ%s′α とS′α ″θπ′グS夕κθθπttθαη′′″θπが 稀 産 す る の み で あ る 。
今 回扱 った試料 中 には、周辺 丘陵地 の大 阪層 群 な どか ら洗 い出 され、 再堆 積し た と思 われ る珪藻 殻が 散見 され た こと、 全体 的 に産 出す る個体 数 に比 して破損 した殻 が 多 く、 また 全域 的に小 型 化 の 傾 向が 著 じる しい ことを付 言 して お く。
第6図で示 した珪藻 の 古生態的区 分 には、次 の種が含 まれ る。
CENTRALES(PlanktOn): ″θわSJ″ ′″JJεα,″ J″′たαv.ソα′Jαα,″[♂α′ ″″,M ″′ ″″. CENTRALES cn Stream):滋 わS施 山 ″″s,″ ″θs ″α,M να滋4■
PENNALES(in Strearn): Иθ力4α 励θs b″ッ″θ∫v.滋′θ
"つθご滋,И θ力.″α轡4 ″″,0わ″θお
bαθ′′ル ,G″ ls′′′θ ″,a,cαフ″αS ρ″σθ″′ル,の bθJJa協 ′αα,F/ s放′ね ν′″α ″,Maridio″
εJκ″″″v.σο″S′rた″,S″ ″4θおαε ″,助ノ″θグ″ ″物α.
PENNALES cn MarSh): E″ 4ο′″ Юb s″,Eρ″θ″ρた,Eρ″θ″ρ″v。 わ〃θ″s,a grac〃Js,
E ο″οごο″,E ο οグο″v.″加0み E′θε′加α麻,二 ρ
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′滋α′おv.″Йθtt E′θε′滋αtt v.
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PENNALES(Facultat市e Plankton): の ′
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″たOSα,の .″″θθο″た,(1ノ%η.″αν
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″.力θルθ′′θα, の ノ″.力 s′θα″, の ノ″.力θ′θ″ρρル″″, 49′ルθ″″ 放rぎdα, Gο″′力ο″θ α αε夕″′″α″ , GO″.αεJ4α
′″ v.εO″4αた, GO .bο力θ た ,Gο .ρα″αル″, Gο″.″4θθο″滋″,Gο″.メαεJ′θ,Gο .εο″S′/1ir協 ,Gο . θο″sr/た′ v.σαρZ″″,σο″.θ″ναθ ,CノわSJg αα′′θ4夕α′″,のフ.ψθ″θθr′J,〃α″″sσ力lic
α ′力′οχノs,ハリνた ル ′′わο″θ72SJS,Ⅳ[ θJ″ε′α,」
〜4ρ ′ ″,力lρ ρ ルv.″
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I bαθ′″ゎr JS,I bασJ′ル v.Fettα″α,I力αS″,Iw′′rraθtli′,I′ たψ たαた,I″ ′たα,
ハl またοjご′s,ハ石θ〃J iridis,ハ4θ.g″θJ′θ
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″滋 srr2α,ハζ′″.ε ″ ∫ガ,ハζ′rz.″ε″,Nli″.ρ ″θ″″,34″ ″″″
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ρα加,■ ノわらα,2ν河ごJs,2ら ο″θα′,s,2″α′οら2 αε″ψttαθ″Jα,24οグοsα,2
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s″夕Ю″,2カθrip′θ″,2お0″ 4,2″θsο″ρた,■ (力θクルs,21%″α,2
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