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説明的な文章を批判的に読む児童を育てる高学年国語科学習指導
-焦点化した課題を追究する評価読みを通して-
教育指導部教科教育班 長期派遣研修員(吉富町立吉富小学校 教諭) 坂山 文利 1 研究主題についての説明 (1) 主題の意味 ア 主題について 「説明的な文章」とは、筆者が物事の本質を論理的な認識方法によって捉え、捉えたものを論理的に 表現することによって生み出される文章のことである。 「説明的な文章を批判的に読む」とは、文章の事柄・内容の相互関係や言語表現の妥当性を既有の知 識を基に疑い、筆者の意図を解釈しながら妥当性を検討し、自分の立場から筆者の主張に対する考え をもつことである。 説明的な文章を批判的に読む児童には、書かれている内容を受容的に読むのではなく、筆者の書き 方が妥当かどうか疑ってかかる態度が求められる。また、一方的に批判するのではなく、筆者の意図 を解釈した上で自分の考えをもつことが求められる。 そこで、説明的な文章を批判的に読む児童は、以下の資質や能力が必要になる。 イ 副題について 「評価読み」について、森田氏は「『確認読み』として読み取ったもの(ことがら・内容、表現方法、 論理)を、それらの妥当性や問題の有無という観点から吟味・評価することであり、また、問題があ るものについては、その問題を解決する方途を探り、実際に解決、改善してみるという行為を指して いる。」1)と述べている。本研究でいう「評価読み」は、この概念を指導法として具体化するものである。 「焦点化した課題」とは、児童が、説明的な文章の特徴的な部分(語や文、段落、事例、題材など) に着眼し、その役割を追究していくことを目的とした課題である。具体的には、「筆者は、なぜこのよ うな事例を挙げたのか」「筆者は、なぜこのような言葉を用いたのか」といった課題である。このよう な課題を追究することは、児童の 集中的思考を促すとともに、筆者 の意図を解釈することにつながる。 「焦点化した課題を追究する評 価読み」とは、児童が焦点化した課 題をつかみ、課題を解決しながら 筆者の意図を解釈し、筆者の主張 に対する自分の考えをもつことが できるように、「確認読み」「吟味 読み」「批評読み」という段階で構 成した単元の指導過程である。具 体的には、次のように学習を展開 していく(表1)。 ○ 文章の事柄・内容の相互関係や言語表現の妥当性を疑い、そこから抱いた疑問を意欲的に追究 しながら読もうとする態度 【関心・意欲・態度】 ○ 事例の取り上げ方、言葉の用い方などについて、筆者の意図や思考を想定しながら文章全体の 構成を把握し、自分の考えを明確にしていく力 【読む力】 ○ 頭括型、尾括型、双括型などの文型や事例の取り上げ方、配列など文章の構成、文末表現の役 割に関する知識・理解 【言語に関する知識・理解】 表1 焦点化した課題を追究する評価読み 段階 確認読み 吟味読み 批評読み 目的 説明的な文章の特徴的な 部分の役割を追究しようとす る課題意識をもつ。 事例の取り上げ方、言葉の 用い方などについて筆者の意 図を様々な要素から解釈する。 解釈したことを根拠に筆 者の主張に対する自分の考 えをもつ。 内容 ①接続語や文末表現に着眼 したり、文と文のつながりを 考えたりしながら、序論-本 論-結論、事例のまとまりな どの文章の構成をつかむ。 ②文章の構成を分析し、吟 味が必要な点を出し合いな がら課題を設定する。 ①語や文に着眼しながら設定 した課題を解決する。 <課題の追究過程> ・課題を確認する。 ・着眼する対象に意識を焦 点化し、自分の考えをまと める。 ・互いの考えを交流し、筆者 の意図をまとめる。 ①学習を振り返りながら、 筆者の主張に対する批評文 を書く。 方法 ○構成シートを活用しながら、 文章の構成を整理する。 ○構成分析の視点を基に、 文章の構成を分析する。 ○比較文を基に、着眼する対 象に意識を焦点化する。 ○既習の掲示物やワーク シートを基に学習を振り返る。- 2 - 「確認読み」の段階では、まず、接続語や文末表現に着眼したり、文と文のつながりを考えたりしな がら文章の構成をつかむ。そして、構成分析の視点を基に、吟味が必要な点を出し合いながら課題を 設定する。このように、児童が文章の構成を捉えた上で、構成分析の視点を基に吟味が必要な点を出 し合うことで、焦点化した課題を自ら設定することができる。 「吟味読み」の段階では、「確認読み」の段階で設定した課題を一つずつ解決していく。「吟味読み」 の段階では、焦点化した課題を一つずつ解決していくため、児童が明確な目的意識をもち、学習を展 開していくことができる。 「批評読み」の段階では、批評文を作成しながら、筆者の主張に対する自分の考えをまとめる。 このように、「確認読み」「吟味読み」「批評読み」と段階的に指導していくことで、妥当性を疑う 態度、叙述を関係付けて解釈する力、評価する力といった資質・能力を身に付けていくことができる。 (2) 主題設定の理由 現在、情報化の進展により、多くの人々が日々、膨大な情報に接している。これらの中には、信用 できる情報もあれば、根拠が明確でない疑わしい情報もある。このような情報社会を生き抜くために は、情報をありのままに受け止めるのではなく、それらの妥当性を判断し、自分の立場から情報に対 する考えをもつことが必要である。しかし、平成19年度より実施されている全国学力・学習状況調査 で、福岡県の児童は、「読むこと」領域の「ウ 説明的な文章の解釈に関する指導事項」において、課 題があることが分かっている。特に、「文章の構成や言葉の用い方などの役割を捉える」「表現の仕方 に対する自分の考えをまとめる」という問題は、平均正答率が低く、無解答率が高い傾向にあり、筆 者の意図を解釈したり、筆者の書き方や主張を評価したりする力に課題があることが分かる。 これらのことから、説明的な文章を通して、論理の妥当性を疑い、意図を解釈した上で自分の考え をもつといった一連の力を身に付けた児童を育てることを目指す本研究は意義深いと考える。 2 研究の目標 小学校国語科第6学年「読むこと」の説明的な 文章の指導において、説明的な文章を批判的に読 む児童を育てるために、焦点化した課題を追究す る評価読みの具体化とその有効性を究明する。 3 研究の仮説 小学校第6学年「読むこと」の学習において、 「焦点化した課題を追究する評価読み」を構成し、 段階に応じた具体的な支援を行えば、「関心・ 意欲・態度」「読む力」「言語に関する知識・理解」 の三つの資質・能力が高まり、説明的な文章を批 判的に読む児童が育つであろう(図1)。 4 研究の実際 (1) 具体的構想 ア 構成シートの活用 「確認読み」の段階において、文章の構成を捉えさせ たり、文章の構成を分析させたりするために、資料1 のような構成シートを使用させる。構成シートとは、 取り外しが可能な付箋紙を使用し、色の違う付箋紙に まとまりの要点とその要点を支える具体例を書き、文 章の構成を整理していくものである。構成シートは、 付箋紙の色の違いで具体と抽象の関係を捉えたり、着 目した付箋紙を取り外し、他のまとまりとつながりが あるかどうか考えたりすることができる。 図1 研究構想図 説明的な文章を批判的に読む児童 児童の実態 焦点化した課題を 追究する評価読み 具体的な支援 確認読み 吟味読み 文章構成の把握 文章構成を分析し、 焦点化した課題を設定 比較文の提示 ・着眼させたい内容や言葉 を削除したり、置換したりし た文 構成分析の視点の提示 ・話題提示と事例のつながり ・事例と主張のつながり ・題材と主張のつながり 構成シートの活用 表現の工夫の 理解 表現の工夫の 理解 内容を 理解する力 書き方への 関心 文章構成の 理解 焦点化した課題を解決 批評読み 筆者の主張に対する 批評文の作成 筆者の意図を 解釈する力 論理を追究する 意欲 筆者の主張を 評価する力 論理の妥当性 を疑う態度 資料1 構成シート
- 3 - イ 構成分析の視点の提示 「確認読み」の段階において、焦点化した課題を設定させるために、構成分析 の視点を提示する。構成分析の視点とは、文章の論構成を吟味するための視点 である。例えば、資料2のように「話題提示にあった事例になっているか」と 話題提示と事例の関係に目を向けたり、「主張の根拠となる事例になっている か」と主張と事例の関係に目を向けたりする視点がある。このような視点を基 に、構成シートと照らし合わせることで、筆者の論理に迫るような焦点化した 課題を設定することができる。また、児童がこれらの視点を身に付け、他の文 章を読む際に活用しながら読むこともできる。 ウ 比較対象の提示 「吟味読み」の段階において、着眼する対象に児童の意識を焦 点化させるために、比較対象を提示する。比較対象は、読み手 に着眼させたい内容や言葉を削除したり、置換したりして作成 する。このような比較対象を提示することで、児童は比較対象 と教材文を比べ、着眼する対象に意識を焦点化しながら筆者の 意図を追究することができる。例えば、資料3のように「あな た」の例のあなたという言葉に着眼させたいときは、あなたを 人間に置換した比較対象を提示する。そうすることで、比較対 象と教材文を比べ、「なぜ、『人間』ではなく、『あなた』という 言葉を用いたのか」とあなたという言葉を用いたことに意識を 向けながら課題を解決することができる。 (2) 実証授業の実際 ア 単元名 文章を読んで自分の考えを明確にもとう(「イースター島にはなぜ森林がないのか」) イ 単元目標 ウ 単元計画(図2) エ 指導の実際 (ア) 「確認読み」の段階(1/8~4/8) a 文章の構成の把握(1/8~3/8) まず、文章の構成を捉えさせるために、文章全体を「序論- 本論-結論」に分け、段落ごとの中心文を捉えさせていった。 本論を三つのまとまりに分けた後、黄色の付箋紙にはそれぞ れのまとまりの要点、青色の付箋紙には、その要点を支える 具体例を書かせていった。多くの児童が、黄色の付箋紙に 「イースター島にポリネシア人とラットが上陸した。」「人間が 様々な目的で森林を切り開いた。」「ラットが森林の再生をさまたげた。」と書き、本論を三つのまとま りに分けることができていた。しかし、要点と具体例が混在し、宗教的・文化的な目的が具体例であ ることを捉えることができていない児童もいた。そこで、構成シートのズレに目を向けさせ、「宗教的・ 資料3 言葉を置換した比較対象 ○ 「イースター島にはなぜ森林がないのか」の内容や書き方に関心をもち、ポリネシア人やラッ トの上陸までの様子を述べたり、イースター島を例に挙げたりした筆者の意図を意欲的に追究 しながら読もうとする態度を育てる。 【関心・意欲・態度】 ○ 文章の構成を捉え、事例と結論や主張とのつながりを考えながらポリネシア人やラットの上 陸までの様子を述べたり、イースター島を例に挙げたりした筆者の意図を捉え、筆者の主張に 対する自分の考えをまとめることができるようにする。 【読む力】 ○ 主張を明確に伝えるための題材の選び方、事例の取り上げ方や事例の配置を工夫した文章構 成を理解することができるようにする。 【言語に関する知識・理解】 資料2 構成分析の視点 図2 単元計画(全8時間) 確認読み (4時間) 吟味読み (2時間) な ぜ 、 イ ー ス タ ー 島 の よ う な 小 さ な 島 を 例 に 挙 げ た の か 。 ( 一 時 間 ) な ぜ 、 ポ リ ネ シ ア 人 や ラ ッ ト の 上 陸 ま で の 様 子 を く わ し く 述 べ た の か 。 ( 一 時 間 ) 批評読み (2時間) 筆 者 の 主 張 に 対 す る 批 評 文 を 書 く 。 ( 一 時 間 ) 教 材 文 を 読 み 、 文 章 の 構 成 を つ か む 。 ( 三 時 間 ) 文 章 の 構 成 を 分 析 し 、 学 習 課 題 を 設 定 す る 。 ( 一 時 間 ) 互 い の 批 評 文 を 交 流 す る 。 ( 一 時 間 )
- 4 - 文化的な目的は、本論2の具体例に入るの か。」と発問し、検討させた。児童たちは、 「本論2には、『まず』『次いで』『さらに』 と具体例を三つ書いてあります。だから、 宗教的・文化的な目的は、本論2の具体例 だと思います。」「モアイ像作りのために森 林を伐採したのは人間なので、モアイ像作 りは人間による森林破壊の例に入ると思い ます。」と意見を交流していった。このよう に検討していくことで、要点と具体例が混 在していた児童も、資料4のように宗教 的・文化的な目的は本論2の具体例だとい うことに気付いていくことができた。 b 学習課題の設定(4/8) 次に、焦点化した課題を設定させるために、構成分析の視点を提示した。児童は、構成シートと視 点を照らし合わせながら疑問を生み出していった。また、児童の中には、視点を基に付箋紙を取り外 し、「このまとまりは、なくてもつながるな。」と事例のつながりを考えながら思考する姿も見られた。 そうすることで、資料5のノートのように「話題提示と上陸するまでの様子を述べた事例はあってい ないのに、なぜ、その事例を述べたのだろう。」という話題提示と事例の関係や「人類の存続への思い を述べるのなら、もっと大きな国で深刻な森林破壊を 例に挙げた方が伝わるのに、なぜ、イースター島のよ うな小さな島を例に挙げたのだろう。」という題材と主 張の関係に疑問を抱いていった。そして、一人一人が 抱いた疑問を学級全体で交流した。多くの児童がこの 二つの疑問を抱いていることに気付き、「なぜ、筆者は ポリネシア人やラットの上陸までの様子をくわしく述 べたのだろう」「なぜ、筆者はイースター島のような 小さな島を例に挙げたのだろう」という二つの焦点化 した課題を設定した。 このように、文章の構成を捉えた上で、構成シート と視点を照らし合わせながら構成を分析させたことで、 筆者の論理の妥当性に疑問を抱くことができた。 (イ) 「吟味読み」の段階(5/8) ここでは、「なぜ、筆者はポリネシア人やラットの上陸までの様子をくわしく述べたのか」という 課題を解決する場面について述べる。上陸までの様子には、前半に島は森林におおわれ、人間やほ乳 動物が全く住んでいなかったこと、後半に森林を破壊したラットはポリネシア人が逃がしていたこと が書かれている。筆者は、これらを示すことで、ポリネシア人以外に原因が考えられないことやラッ トによる森林破壊もポリネシア人の責任だということを読者に意識させ、森林が失われたのは全て人 間の責任だと強調しようとしているのである。このような筆者の意図に迫るためには、前半の島の様 子と後半のラットが上陸していたというこの事例の二つの構成要素に気付くことが必要になる。そこ で、この事例の二つの構成要素を捉え、それぞれの構成要素に着眼しながら、筆者の意図を追究して いけるように学習を進めていった。 a 事例の構成要素の把握 まず、上陸までの様子を述べた事例の構成要素を捉えさせるために、この事例を二つのまとまりに 分けさせた。児童たちは、「④⑤段落には、人間もほ乳動物もいなかったという島の様子、⑥⑦段落に 資料4 児童が作成した構成シート 資料5 論理の妥当性に疑問を抱いた記述
- 5 - は、ポリネシア人がラットを逃がしたことが 書いてあります。」「④⑤段落には、森林にお おわれ、大陸から遠く離れていたという島の 特徴、⑥⑦段落には、ラットが船から逃走し たことが書いてあります。」と意見を交流して いった。そうすることで、資料6のように上 陸までの様子を述べた事例は、森林におおわ れ、人間もほ乳動物も住んでいなかったとい う島の様子とポリネシア人が連れてきたラッ トが逃走し上陸していたという二つのまとま りに分けられることに気付いていった。 b 島の様子に着眼し、筆者の意図を追究 そこで、まず、島の様子に意識を焦点化しながら意図を追究させるために、 島の様子を述べたまとまりを削除し、「なぜ、島の様子を書いたのか。」と発問 した。児童は、島の様子を削除したことで、逆に島の様子に着眼しながら、自 分の考えを書いていった。資料7は、その際、A児が書いた記述である。A児 は、「人間もほ乳動物もいなかった島の様子が書かれていると、今まで平和だっ たのに人間がやって来て森林破壊が起こったことがよく分かるからです。」と述 べており、人間が上陸したことで森林破壊が始まったことが強調されるという ことに気付いていることが分かる。また、他の児童も、「島は、もともと森林に おおわれていたと書かれていると、人間が上陸したことにより森林が失われて いったことがよく分かるからです。」「人間以外だれも上陸することができな かったんだから、森林を破壊したのは人間以外考えられないということが分か るからです。」と島の様子の細かい部分に着眼しながら思考していた。これらの 意見を交流していくことで、「島の様子を書くことで、森林が失われたのは人間 の責任だと強調している」という筆者の意図を共有していった。 c ラットが上陸していたことに着眼し、筆者の意図を追究 次に、島の様子を述べたまとまりを削除した場合と同じように、ラットが上 陸していたことを述べたまとまりを削除し、「なぜ、ラットが上陸していたこと を書いたのか。」と発問した。児童の多くは、「本論3にラットによって森林が 破壊されたと書いているので、ラットがどうやって上陸したのかを書かないと 後につながらないからです。」と本論3とのつながりに目を向けて思考していた。 しかし、資料8のように、「ポリネシア人がラットを逃がしたと書いていると、 本論3に書いているラットによる森林破壊もポリネシア人のせいだと分かるか らです。」と人間の責任を強調していることに気付く児童も見られた。これらの 意見を交流していくことで、「ラットが上陸していたことを書くことで、森林破 壊は人間の責任だと強調している」という筆者の意図を共有していった。 このように、事例を二つの構成要素に分け、事例の細かい部分に意識を焦点 化しながら筆者の意図を追究していくことで、児童は、上陸するまでの様子を 述べることで人間の責任を強調しようとした筆者の意図を捉えることができた。 (ウ) 「批評読み」の段階(7/8) 筆者の主張に対する自分の考えをもたせるために、既習図やワークシートを基に学習を振り返らせ 批評文を書かせた。資料9は、「吟味読み」で解釈したことを根拠に自分の考えをまとめた児童の批 評文である。「ポリネシア人やラットが上陸するまでの様子をくわしく述べることで、森林が失われ たのは人間の責任だと思った。」「子孫を思う気持ちの大切さが伝わってきた。」と「吟味読み」の段階 資料7 児童の記述 資料6 事例を構成要素に分けた板書 資料8 児童の記述
- 6 - で解釈したことから妥当性を検討し、そのことを 根拠に、「モアイ像の例をくわしく書いたら、筆者 の主張により説得力が増す。」と自分の立場から意 見を述べることができている。 それは、「確認読み」の段階で焦点化した課題を 設定し、「吟味読み」の段階で焦点化した課題を解 決しながら、筆者の意図を明らかにしていったた めであると考える。 5 研究の成果と今後の課題 (1) 研究の成果 6月と12月に同じアンケートと調査問題を使用 して行った実態調査の結果から、全体を考察する。 ア 関心・意欲・態度 事前調査では、説明文の内容に関心をもちながら読んでいると答えた児童は多かったが、表現や論 理などの書き方に目を向けて読んでいると答えた児童は少なかった。しかし、事後調査では、「この事 例はなくてもよいのではないか」「事例と主張はつながっているか」など、筆者の書き方に目を向けな がら読んでいると答えた児童が増え、内容だけでなく書き方にも関心をもちながら読むことができる ようになったことが分かる。これは、文章の構成を捉えた上で構成を分析させたことによって、児童 に分析の視点が身に付いていったからだと考える。 イ 読む力 図3は、筆者の意図を解釈し、自分の考えを明確にしてい く力について児童の変容を示したものである。調査問題に使 用した説明文は、「動物の体と気候」(東京書籍)である。こ の説明文は、事例の取り上げ方に筆者の書き方の工夫が見ら れる。そこで、事例の取り上げ方について、筆者の意図や思 考を想定しながら文章全体の構成を把握し、主張に対する自 分の考えを明確にしていくことができるかを調査した。6月 は、誤答や無解答が多かったが、12月は、事例と主張とのつ ながりを基に事例の役割を捉え、そのことを根拠に主張に対 する考えをまとめることができていた。これは、比較対象を 提示し、構成要素に着眼させたことにより、叙述を関係付け て読む力が身に付いたからだと考える。また、焦点化した課 題で解釈した上で、批評文を書かせたことにより、根拠を明 確にして自分の考えをもつ力も身に付いたと考える。 ウ 言語に関する知識・理解 頭括型、尾括型、双括型などの文型を選択する問題や本論を三つのまとまりに分ける問題で正答率 が上がっていた。これは、構成シートを活用して、文章構成を整理させたことにより、文末表現や接 続語、具体と抽象などの読みの視点が身に付いたからだと考える。 (2) 今後の課題 ○ 評価読みを通して身に付けた資質や能力の定着を図るために、発展的な学習の位置付け方とその 仕組みを明らかにする。 <引用文献> 1) 森田 信義(2011) 『「評価読み」による説明的文章の教育』 p.23 溪水社 <参考文献> ・ 森田 信義(1998) 『説明的文章教育の目標と内容-何を、なぜ教えるか-』 溪水社 資料9 児童が書いた批評文 図3 読む力に関する児童の変容 筆者の主張に対する自分の考えをまとめる問題 根拠を明確にして自分の考えをまとめることができた人数 (27人) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 12月 6月 23人 3人 事例と主張とのつながりを考えながら、事例の役割 を捉える問題 事例と主張とのつながりを基に事例の役割を説明できた人数 (27人) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 12月 6月 24人 5人