奈良教育大学学術リポジトリNEAR
低血糖症による精神発達遅滞児の発達過程と療育(
2) −「知覚−運動」障害の軽減・克服に視点を あてた治療教育的アプローチ−
著者 田村 浩子, 中山 ながこ, 長戸 優美, 田辺 正友
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 42
号 1
ページ 31‑42
発行年 1993‑11‑25
その他のタイトル Developmental Process and Remedial Education
of a Mentally Retarded Child by Hypoglycemy
Originated in Pancreatic Islet Cell Tumor (2)
URL http://hdl.handle.net/10105/1696
低血糖症による精神発達遅滞児の発達過程と療育( 2 )
‑「知覚一運動」障害の軽減・克服に視点をあてた治療教育的アプローチー
田村 浩子* ・中山ながこ** ・長戸 優美*** 田辺 正友
(障害児教育教室) (平成5年4月9日受理)
問題の所在
本研究は、筆者らが療育活動でかかわっている、ひとりの膳島細胞腫痕によって惹起された低 血糖症による精神発達遅滞児の発達過程における傾向性とその発達変容を明らかにし、そこから 本児の疾患に起因すると考えられる行動・活動上の問題の軽減・克服に視点をあてた療育のあり 方について検討しようとして計画された一連の研究の一つであるO本稿では、とくに「知覚一運 動」障害の軽減・克服に視点をあてた治療教育的アプローチのありかたについて考察を試みた。
障害児保育・教育の場において、近年、教育対象となる子どもたちの障害が重度化し、多様化 していく状況にあって、子どもたちの発達を基盤から掘り起こし高めていくために、一人ひとり の子どもの障害、発達さらには生活的諸傾向性などを総合的に把握し、それに基づく教育計画を 確立することが重要な課題となってきている。障害によるある種の傾向性の把握と、なぜそのよ うな傾向性が引き起こされてくるのかといった検討や今どういう力を獲得し、どのような発達の 課題に立ち向かっているのか、どのような発達的困難さをかかえているのかといった深い洞察に 基づいて、その困難さを乗り越えていくために必要な療育・教育の内容と方法を創造することが 要請されている。
本研究での対象児は、筆者らがかかわっている1歳半健診のフォロー児で、 1989年4月(3 歳5カ月)からN教育大学障害児教育教室の就学前障害児治療教育教室での週1回の療育活動 を経て、 1992年4月から地域の小学校(障害児学級)に入学した樺島細胞腫痕によって惹起さ れた低血糖症による精神発達遅滞児である。上記教室での3年間の療育活動をとおして、筆者ら (田村ら、 1992)は本児の質的な発達変容の過程を跡づけた。そこでは、 「全身運動活動」、 「手指 を使った活動」、 「対人的交流活動」といった活動ごとに分析した結果、本児の3歳5カ月から6 歳4カ月の問の療育場面での発達過程をその特徴によって3期に時期区分し、それぞれの時期の 発達的特徴を明らかにした。そうした発達過程において、一方で、本児の問題としてボディ・イ メージの不確かさや空間認知・構成の弱さといった問題、つまり、 「知覚一運動」障害といった 高次神経活動のメカニズムにかかわる問題を呈してきていることを明らかにした。そして、今後、
こうした問題を本児の疾患との関連性で検討するなかで、障害機制を明らかにしていくとともに、
*非常勤講師
'ホ現在、土和郡山市立矢田山保育園
…現在、奈良県立奈良養護学校整肢園分校
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32 田村 浩子・中山なかこ・長戸 優美・田辺 正友
障害の軽減・克服に視点をあてた治療教育的取り組みが工夫されなければならないと指摘した。
そこで、本稿では、本児の呈している「知覚一運動」障害の軽減・克服に向けて計画された治 療教育的アプローチをとおして、その後の発達過程における傾向性とその変容を明らかにし、そ こで得られた知見をもとに、障害・発達・生活的諸傾向性に視点をあてた治療教育のあり方につ いて言及する。
方 法
対象児:本児は、 1989年4月(3歳5カ月)から、筆者らがかかわっているN教育大学障害 児教育教室の就学前障害児治療教育教室での週1回の集団療育活動を経て、 1992年4月(6歳 5カ月)の小学校入学と共に月1回2時間の個別療育活動に参加している。本児は、障島細胞腫 癖によって惹起された低血糖症による精神発達遅滞児である。 1985年11月生まれ、現在、地域 の小学校障害児学級に通級する7歳の男児。出生直後に低血糖けいれんを頻発、生後1カ月時に 樺亜全摘出術。家族構成は、父、母、姉、祖父、祖母。
分析資料・手続き:本研究での分析資料は主として次の三つの方法によった。
1.個別療育プログラム課題
本児の呈しているボディ・イメージの不確かさ、空間認知・構成の弱さの軽減・克服に視点を あてた療育プログラムを設定し、そこでの本児の6歳5カ月から現在(7歳1カ月)の間の行動 特徴を分析した。療育活動の一目のプログラムの流れを、 Table lに、また、療育プログラム・
ねらいおよび行動特徴をまとめて示したものが、 Table2‑1・2‑2・2‑3である。療育における行 動観察記録は担当者1名がおこない、毎回VTRに記録された。そして、療育終了後、担当者4 名で討議し整理した。
2.発達検査結果・実験的観察課題
本児の発達の状況を知るために、 Table 3に示すとおり新版K式発達検査を実施した。また、
Table l 個別療育活動の一日のプログラムの流れ
プ ロ グ ラ ム
IK :20 :40
LOX iI的
1:115
◆ 入室
・ 出席カ‑ドシール貼り
◆ はじまりの集い
・ 家庭での課題「おてつだい表」 「たいそう表」の発表
◆ 人物像構成
◆ おやつを作る
◆ ゲーム的遊び
◆ リズム運動「ハローマイフレンズ」
◆ おやつを食べる
◆ おわりの集い
・ 「おてつだい表」「たいそう表」をもらう
先行研究(田村ら、 1992)で実施した実験的観察課題を再度実施し、その変容を分析した。
3.日常生活場面での様子
個別療育活動には、父母・担任教師も観察参加し、家庭および学級での取り組みの参考となる よう配慮した。そして、家庭との連携をはかる目的でTable 4に示すように家庭でのプログラ ムを設定した。日常生活場面での様子の記録を母親に依頼し、毎回、母親との面談において本児 の様子を事情聴取した。さらに、担任教師から学校生活の様子を事情聴取した。
結果と考察
個別療育活動で設定したプログラム課題における本児の行動の発達変容と障害による傾向性に ついて明らかにし、療育のあり方の内容についての考察を試みるに際して、まず、本児のこれま での発達過程を簡単にまとめておきたい。
認識レベルの発達では、当教室に通室し始めた当初から、大小・長短比較といった「対の関係 概念」把握が可能で、認識的な二次元の世界を形成しており、その後の発達過程において、この 二次元世界をより確かなものにしていく。さらに、こうした力を土台として、他児・者を意識し て自分を主張し、自分のつもりを行使する姿がみられるようになる。そして、こうした自分のつ もりを行使する中で、徐々に自分と自分を取りまく外界とのかかわりを認識し、外界にかかわる 主体としての自我を充実させていく。しかし一方、全身運動、手指の操作性レベルでは、自らの 足で移動の自由は拡大していくが、バランスと調整力の乏しさが顕著になる。そして、身体運動 模倣、手と視覚の協応動作、自己のからだと物の位置関係の把握などの弱さが明らかになってく る。この時期に実施した発達検査結果および実験的観察課題結果とも合せて検討すると、身体や 手指の運動行為と視覚的にとらえた形を結合させる時のメカニズムの問題、つまり、 「知覚一運 動」障害の様相を呈してくるのである。
さらに、本児のもう一つの問題として、経口摂食が制限されており、主たる栄養は経管摂取に 頼っているといった問題がある。この経口摂食の経験の乏しさが、言語発達やボディ・イメージ の形成、外界の認識のしかたに少なからず影響を及ぼしているものと考えられる。
1.療育プログラム課題における発達変容と障害による傾向性
I)運動遊び‑リズム運動・ゲーム的遊び課題
音楽にのって歩く、跳ぶなどの基本的な動きを楽しみながら、全身運動におけるバランス・調 整力を養うことをねらいとしたリズム運動では、実施した当初は聞き覚えのある曲を聞くことの みを楽しんでいるといったものであったが、徐々に指導者の動きを「みて」模倣しようとするよ うになる。しかし、本児にとって動きながら模倣することはむずかしい課題であった。そこで、
一つひとつの動きを取り出し模倣させた後、その動きを音楽の流れのなかで楽しむようにしたが、
Table2‑1に示すように当初はぎこちない動きが目立っていた。 「歩く」という基本的な動きに おいても、手と足の協応が未熟であり、手の振りがなく足につけたままの状態で歩くとか、方向 転換時に細かい調整がとりにくくバランスをくずすことが多かった。その反面、本児は、リズム をとらえる力は優れており、一連の動きのおわりのポ‑ズ姿勢をリズムに合わせて遂行すること ができ、ポーズをとることを楽しみにリズム運動に参加していた。そして、回を重ね9月頃より、
34 田村 浩子・中山ながこ・良Jj'優美・田辺 正友
全身運動において中腰での構えの姿勢に安定感がみられるようになり、それとともに一つひとつ の動きは正確性に欠けるものの、リズムをとらえながら音楽にのって全身を動かすことを主体的 に楽しむようになる。これらは、全身運動におけるバランスと調整力が徐々に確かなものになっ てきている姿であり、後述する日常生活場面でのおてつだい・運動遊びなどの積み重ねとも関連 しあいながら育まれてきたものと考えられる。先行研究(田村ら、 1992)において、本児は「知 栄‑運動」障害の様相を呈し、ボディ・イメージの形成、空間認知のしかたの弱さなどが明らか
となってきていることを指摘した。そこで、リズム運動のなかで自分と物(ボ‑ル・フープ)の 空間的位置関係をとらえながら動くことをねらいとしたプログラムを設定した。ボールを用いた リズム運動では、ボ‑ルを胸の前でもって歩くことで手の位置が上がり、歩行はバランスがとり やすく安定している。しかし、歩きながらボールを上下させる、静止しておなかのまわりを旋回 させる、投足座位で自分の脚の上をころがす・相手とボールをやりとりする等の動きは、上肢と 下肢の協応、身体とボールの位置関係、距離感・力の加減などの未熱さがH立ちそのために失敗 も多い。しかし、音楽の好きな本児は、積極的にリズム運動のプログラムに取り組み、徐々に ボールの扱いにも慣れ、 Table2‑1に示したように、操作は不器用であるものの一つひとっ「で きる」ことが多くなる。フープを用いたリズム運動において、立体的に固定されたフープの中を くぐりぬける課題では、実施当初は身体をフープの輪の位置に合わせることがむずかしくフープ に触れたり、足をひっかけたりする姿が多くみられたが、先に指摘した生活全般で中腰姿勢がス ムーズになりだした9月頃には、輪の高さに身体をあわせ7‑プに触れずにくぐりぬけることが 可能になる。しかしながら、手首を回外させてフープをもち抜けるといった操作、さらには、自 分で7‑プをもって輪の内と外の空間と身体の位置関係をとらえることは困難な課題である。今 後、本児の手指の操作性能力と道具の質・大きさ等についてさらに検討を加えたプログラムを設 定することが必要である。
ゲーム的遊びは、投げる・蹴る・つくなどの基本的な操作をゲーム感覚で楽しませるとともに、
目標を視覚的にとらえ、投げる・蹴る・つくなどの動きと協応させる力を養うことをねらいとし た。さらに、成功した数だけシールをもらうことで満足感、達成感を味わわせ、 「もっとしたい」
という意欲を育むようにさまざまなゲーム遊びを設定したプログラムである。投げる・蹴る遊び は、ビ‑チボールと目標との距離感覚、方向性、力の加減、体の動かし方などに多くの問題をも ちながらも、本児が興味を示したシールをもらうことを楽しみに、目標物にむかおうとする気持 ちの高まりが感じられ意欲的に取り組んだ課題であった。しかし、フウセンをつく遊びは、手首 を回外させ手掌を上に向けて操作することがむずかしく、素手でもラケットをもっても上から下 にうちおろすといった操作である。また、空中のフウセンを迫視し続けながら動きにあわせて身 体の位置を変えることはむずかしく失敗が重なり達成感につながりにくいものであった。リズム 運動でも指摘してきたように、全身運動におけるバランスと調整力、手指の操作性における道具 的操作に必要な手首の回転に問題を残している本児にとっては、さまざまな運動的要素を必要と するゲーム的遊びのプログラムは、経験するにとどまり、種々の力を養うまでには至っていない。
2)人物像構成課題
ボディ・イメージの形成を養うとともにボタン、ファスナーの操作をとおして、手指の操作性 を高めることをねらいとしたプログラムである。 Table2‑2に示すように、本児にとって本プロ グラムは大きな変化がみられており、その変化にあわせた細かな配慮がなされたプログラムであ
Table 2‑1 個別療育活動におけるプログラム・ねらいおよび行動特徴 ‑運動遊び‑
プ ロ グ ラ ム ね ら い
リズ ム運 動 . 道 具 を もた な い全 身 運 動
. 道 具 ( ポ I ル . フ 一 プ) を も って の 全 身 運 動
◆ 音 楽 に の つて 歩 く、 跳 ぶ な ど の基 本 的 な動 き を 楽 しみ な が ら、 バ ラ ンス、 調 整 力 を養 う
◆ 自 分 と物 (ポ I ル . フl プ) の空 間 的 位 置 関 係 を と らえ な が ら動 く
ゲ I ム的遊 び . 目標 に む か つて ポ ー ル、 ビ I チ ポ I ルな どを ◆ ゲ 】 ム 的遊 び を と お して蹴 る、 投 げ る、 つ く . ビー チ ボ ー ル 「蹴 る」 、 「投 げ る」 な ど の基 本 的 な動 き を楽 しむ
サ ッカ ー
. 成 功 した数 だ け シ ー ル を貼 る
◆ 目標 を視 覚 的 に と b え、 蹴 る、 投 げ る、 つ く
. 的 あ て ゲ ー ム な ど の動 き と協 応 さ せ る力 を養 う
. フ ウセ ンつ き
. 素 手 や ラ ケ ッ トで 連 続 して フウセ ンを 「 つ く」
◆ シー ル を 貼 るこ と で、 満 足 感 、 達 成 感 を味 わ わ せ、 「も つ と した い」 とい う意 欲 を育 む 行 動 特 長
歩行(前・後・横)手足の協応が未熟で手を振ることが困難で手を脚につけたまま歩き、コーナーで 方向を変えるときバランスをくずしやすかった。徐々にリズムに合わせるように足を高くしげて歩くよ うになる。後・横歩きは当初、指導者を「みて」まねようとするものの方向と身体の位置関係を把握す ることがむずかしいo 特に、身体左側を進行方向にすることが困難であったo 「カニ」というイメ‑ジ をもたせ、静止状態での姿勢模倣を繰り返すことで手はⅤサインをつくり進行方向に差し出しながら、
身体はやや斜め方向に向けて動くようになる。
両足跳び ひざを使わずL半身の上下運動によるジャンプであったが、中腰での構えの姿勢をとりひざ の屈伸を使って、スロ‑テンポのリズムに合わせてジャンプすることができ始める。
片足立ち 左足への垂心移動は困難であるが、右足軸では、バランスをとりながら重心移動させて3, 4秒間姿勢を保持することが可能となる。
,¥
ム
運
戟 活 動
投 足座 位 で の 足上 げ 投 足 座 位 で の姿 勢 保 持 はバ ラ ンス を くず しや す く、 ま た 、 後 ろ で手 を つ い て姿 勢 を 保持 しよ う とす る が手 掌 支 持 の力 も弱 い。 その た め、 当 初 は足 あ げ の 運 動 に ま で 至 らな か った が、 バ ラ ンス を と りや す い位 置 で手 掌 支 持 す る こ とを 覚 え る と、 姿 勢 保 持 が 少 しず つ 可 能 とな り右 足 の足 上 げ が で き始 め る。
道 貝
蝣 t :
1
ノ レ
歩 行 (胸 前 保 持 . 上 下 運 動 ) 胸 前 で ポ I ル を も つ て歩 行 す る とバ ラ ンス を くず す こ とが 少 な い0 しか し、 ポ 】 ル を L 下 に動 か しな が ら歩 くこ と はむ ず か し く、 歩 く こ と と ポI ル を動 か す こ と の ど ち らか一 方 の動 きの み に な る0 後 半 に な る と歩 くこ と に上 肢 の 動 きが 少 しず つ 伴 うよ うに な る0
体 幹上 を旋 回 ポ ー ル を動 か そ う とす るが 手 の 操 作 、 身 体 との 位 置 関 係 の把 握 な ど が 未熟 で あ りす ぐに 京 二 万 春 画 t て しま う。 しか し、 失 敗 して も何 回 も挑 戦 を 繰 り返 し、 後 半 に な る と右 側 か ら左 側 へ の旋
回 は ゆ っ く りと身 体 と ポ ー ル の位 置 関 係 を確 か め る よ う に して 回 す こ とが 可能 とな る0
蝣 ;蝣 投 足 座 位 で のポ ー ル の こ ろか しあ い . 抑 上 の こ ろが し 投 足 座 位 の姿 勢 保 持 はバ ラ ンス を くず しや す ら く、相 手 との ボ ー ル の ころ が し あ い は気 持 ち は相 手 に 向 か って い る も の の ボ ー ル の 方 向 は定 ま りに く
、
て い0 ま た、 相 手 と の距 離 が変 化 して も力 の加 減 を す る こ とは な い 。 受 け る と きは、 正 面 に き た ポ ー ル は の 受 け止 め る が、 左 右 に方 向 が変 化 す る と、 ボ ール を 迫 視 す るが 身 体 を そ の方 向 に あ わ せ て と る こ と はむ 全
身 逮
ず か し く失 敗 が多 い0 脚 L こ ろが L は、 ボ ール を こ ろが す 操 作 そ の もの に む ず か しさ が あ る0
フ
輪 に入 つ て の歩 行 フ I プ の輪 に入 り腰 の 位 置 で フ I プを 保 持 す るま で の一 連 の動 き を把 握 し自 らの身 動 体 上 二で再 現 す る こ と はEl]難 で あ り、 輪 の 中 に入 らず 手 に フ】 プ を も つた ま ま の歩 行 に な る0 指 導 者 が 介
I 助 す る と姿 勢 を と る こ と は可 能 で あ るが 、 動 き始 め る と フI プ を 保 持 し続 け る こと が で き な い0 フ ー プ く ぐ リ 当初 は身 体 をか が め て く ぐ る こ とな く、 身 体 が フー プ に触 れ た り、 足 を ひ っか け た りす
‑y 盲l画 つ たO しか し、 徐 々 に フ I プの 位 置 を 確 か め 、 中腰 姿勢 で構 え て か らフ ー プ に触 れ な い よ うに く ぐ りぬ け る こ とが で き る よ う にな って い る。
ゲ
ビI チポ ー ルサ ツ 力I 右 足 を軸 に して 左 足 で 蹴 ろ う とす る が、 右足 へ の重 心 移 動 は むず か し く蹴 り出 す 力 も弱 い0 ま た、 目標 物 を たお した い と い う気 持 ち は強 い が 目標 を ね ら って蹴 る ま で に は至 ら な い。
偶 然 あ た って 目標 物 が た お れ シ ー ル を も ら う こ と を く りか え す 中 で 、 指 導 者 の言 語 指 示 で 目標 を と ら ー
ム 的
え、 ポ ー ル を蹴 る構 え の 姿 勢 を と り蹴 る こ とが で き始 め 、 成功 した と きに は シ I ル を も ら う こ とで よ り ゲ ー ム を楽 しむ0
的 あ て ゲ I ム 両 手 上 手 投 げ で 的 あ て ゲ I ムを す る0 目標 を と らえ な が ら投 げ る こ と はむ ず か しい た め、 あ た りや す い よ う に 目標 物 を 大 き く し、 シー ル を も ら う こと で達 成 感 を味 わ い な が ら ゲ 一 ムを 楽 し
む。距離感、投げ方、などは未熟であり今後の課題である。フウセンつき 手首を回外させて手のひらでつき上げる動作がむずかしく上から下へうちおろす。ラ ケットのもち方も同様である。また、空中のフウセンを追祝し続け、フウセンの位置に身体を移動させ ることが未熟なため失敗が多く達成感につながりにくい。
道 具 を も た な い 全 身
36 田村 浩子・中山ながこ・長戸 優美・田辺 正友
Table 2‑2 個別療育活動におけるプログラム・ねらいおよび行動特徴 一人物像構成‑
プ ロ グ ラ ム ね ら い
人 物 像 構 成
. ポ】 ル 紙 で 作 った本 児 の等 身 大 の 人 形 の 顔 に 眉 、 目、 鼻 、 口 、耳 の各 部 を定 位 す る . 等 身 大 の 人 形 に 着 せ て あ る ス モ ッ クの ボ タ ン
を は め る、 ズ ボ ンの フ ァス ナ 】を しめ る
◆ ボ デ ィ . イ メ ー ジ の形 成 を 養 う
◆ 手 指 の操 作 性 を 高 め
行 動 特 徴
当初は、目・眉・耳の各部位を対で選択することはなく、人形の顔を構成する過程で修正を繰り返しながら 結果的には対に定位する.また、口・鼻はTF中線上ではなく口と鼻を対に定位する0回を重ねる中で対の関係 の部位は対で選択し、鏡に自分の顔を映しその部位の位置を確認した後、試行錯誤はするもののほぼiE確に定 位し、さらには、正中線上に鼻を定位した後、目、眉、口、耳の順に定位し完成させる。
ボタンかけ・ファスナーあげは指導者の介助を必要とし操作性を高めるまでには至らなかった。
Table 2‑3 個別療育活動におけるプログラム・ねらいおよび行動特徴 ‑おやつ‑
プ ロ グ ラ ね ら い
お や つ
. 作 る ◆ さ ま ざ ま な道 具 的 操 作 (切 る、 ま ぜ る、 す く
ゼ リ】/ ロ ー ルパ ン/ フ ル M ツ ヨI グル ト う、 入 れ る な ど) を 楽 しみ な が ら、 手 指 の操 / ホ ッ トケ I キ/ お に ぎ り 作 性 を 高 め る
. 食 べ る ◆ 作 り上 げ た満 足 感 を 味 わ う と と もに 、皆 と一
緒 に食 べ る こ とを 楽 しむ
行 動 特 徴
作
当初はまぜる、 す くつて入れるなどの道具的操作 にお いて は、手首の回転の未熱 さを残 している0 そのため 上手に操作ができず、 したい とい う要求 を もちつつもで きなさにぶつか ると、指導者のす ることを じっとみて い るだけの受 け身 的な参加で あった0 また、 おにぎりや ロI ルパ ンな ど手を使 って型作 る課題で も、作 る前 は 意欲的だ ったのが力 の加減がむずか しく上手にで きないと表情 を硬 くしてす ることを止めて しま う0 しか し、
る 運動遊 びなどで中腰姿勢が安定 して くると、道具的操作 にお いては手首の回転 の末熱 さを残 しつつ も、 自分で や りやす いよ うに道具を もちかえなが ら最後 までや りきるようになる0 ホ ッ トケ】キづ くりでは、自分か ら
『 ○○ チャンガスル ! 』 とまぜることか ら焼 くことまで変化を楽 しみなが らや りきる0
f t
参加 者が 『オイ シイ ! 』 と本児を評価 しなが ら食べ る姿 をみ ることで充分満足感、 達成感を味わ うものの、
自分の作 ったおやつ を主体的 に食べ ようとする意欲 は乏 しか った。 夏頃までは、他に用意 したスナ ック菓子や プチ トマ トを食べ ることが多か つたが、 秋に入 るころよ り参加者 と一緒 に自分で作 ったおやつを少 しずつ食べ .\ るよ うになる。 歯 と歯をす りあわせるような噛 む行為がみ られ始め、歯 ぐきと頬の間にため こんで少 しずつ飲 る み込 む。 食べ終わ ると大 きな口をあけて参加者 に全部食べた ことを知 らせ、 評価 して もらうことを楽 しむよう
にな ってきている0
Table 4 日常生活場面におけるプログラムとねらい
プ ロ ダ フ ム ね ら い
お て つ だ い
. い ろ い ろな な お て つ だ い を す る ◆ お てつ だ いを習慣 化す る とと もに、 手 指 を使 つ 洗 濯 物 を た た む / ぞ う きん が け/ ほ うき で た活 動 の 積 み 重 ね の 中 で操 作 性 を 高 め る は く/ 食 器 並 べ / さ ら洗 い等 ◆ お て つ だ い表 を作 成 し、 シ 】 ル を貼 る こ とで . おて つ だ い 表 を 作 成 し、実 施 した 日 は シ 】 ル
(お手 伝 い の内 容 の絵 柄 ) を 貼 る
視 覚 的 に確 か め、 達 成 感 . 満 足 感 を味 わ う
運 動 的遊 び
. 個 別 療 育 所 動 で の 運動 の取 り組 み を、 家 庭 の ◆ 全 身 運 動 を E]常 生 活 の遊 び の中 に取 り入 れ 、 遊 びに 取 り入 れ る0 経 験 を 積 み 重 ね て い く中 で身 体 を動 か す こ と リズム 運 動 / こま つ き 自転 車 の り/ ト レ一 を 楽 しみ 、 さ らに は、 遊 び の内 容 、 範 囲 を 広 ニ ン グ (手 押 し車 . ケ ンケ ン) / ポ ー ル遊 げ て い く
び (投 げ る . 蹴 る) / 散 歩 等 ◆ た い そ う表 を作 成 し、 シ】 ル を貼 る こ とで 視 . た いそ う表 を作 成 し、 実 施 した 日 は シ I ル
(色 分 け ) を 貼 る
覚 的 に 確 か め、 達 成 感 . 満 足 感 を味 わ う
る。
はじめに、本プログラムの意識化を図るために、本児を大きな紙の上に寝かせて型どりをし、
等身大の人形および顔の各部位をっくり、洋服を着せた。その後、毎回、療育の開始時にこの人 形の顔の各部位を貼り、洋服のボタンをかけ、ファスナーをあげるといった活動を展開した。実 施当初は、自分で人形の顔の部位を選ばせ、その部位の名称を確認して貼らせた。つぎには、選 んだ部位が自分の顔のどの部分にあたるか定位し確認させ、さらには、鏡に自分の顔を写し、選 んだ部位の位置を自分の顔で確認させてから人形の顔に貼らせるようにした。その結果、対の関 係にある日、眉、耳は対で選び試行錯誤的ではあるがそれぞれ適切な位置に定位することが可能 となる。しかし、正中線上に位置する鼻と口においては唆昧さを残す。この問題は、先行研究 (田村ら; 1992)でも指摘しているが、本プログラムを遂行するなかで問題がより明確化してく る。そこで、顔の真ん中に鼻が位置することを鏡で自分の顔をみたり指導者の顔をみせて強化し、
鼻を中心に他の部位の位置関係を知らせる。その結果、自らも鼻を顔の真ん中に位置づけそれを 軸として目、眉、口、耳を定位するといった構成のしかたをするようになる。 Table 3に示すよ うに、この時期実施した発達検査場面で描いた人物画においても、口を除く顔の各部位を完全で はないがイメージしながら描写することが可能となっている。しかし、人物像の描画表現発達過 程で初期に描出される口が描写されにくい点については、本児の食生活において経口摂食が確立
していない問題とも関連があるものと推察されるので引き続き療討を試みたい。また、手指の操 作性機能における積木構成の課題でも2次元の構成が確かとなり空間認知のしかたに変化がみら れている。
このような変化は、本プログラムにおける取り組みの成果としてだけではなく、先に指摘した 運動遊びでの取り組みにおけるボディ・イメージの形成にも関連していると考えられる。しかし、
手指の操作性を高めることをねらいとしたボタンはめ、ファスナーあげは、操作的に本児にとっ ては困難な課題である。課題設定のしかたにおいて検討の余地はあるが、問題として、手指の操 作性機能では憤骨側の操作性の未熟さ、運動機能では、中腰姿勢を保っことがまだ完全ではなく
バランスをくずしやすく上半身の自由さが制限される点が考えられる。この点に関しては、幼稚 園時代には、制服のボタンをはめたりはずしたりすることを2年間の経験の積み重ねのなかで、
大きなボタンであれば時間をかけて自分でするまでになってきたといった経過があるので、家庭 や学校との連携をさらに密にして取り組んでいく必要がある問題である。
3)おやつをつくる、食べる課題
本課題は、様々な道具的操作(切る・まぜる・すくう・入れるなど)を楽しみながら手指の操 作性を高めるとともに、作り上げた満足感を味わい皆と一緒に食べることを楽しむことをねらい として設定されたプログラムである Table2‑3に示すように、これまでにゼリー、ロールパン、
フルーツヨーグルト、ホットケーキ、おにぎりなどを「つくって」、 「食べる」取り組みを行って きた。 「つくる」活動では、実施当初は受け身的な参加であったが、徐々に自分ができそうな課 題あるいはつくりたい課題では意欲的に取り組む姿がみられ、道具を使って素材を変化させるこ とは楽しむようになる。しかし、手で形づくったり、操作のしかたがむずかしい課題では活動の 意欲が低下してしまう。道具の操作の面では、末端投射活動系のコントロールの弱さがあり、不 器用さが目立っものの、経験の積み重ねのなかで、道具をもつ手に力が入るようになり、自分で 操作しやすいようにもち方を調整する姿が散見され始める。実験的観察課題の手指の操作性課題
38 田村 浩子・中山ながこ・長戸 優美・田辺 正友
Table3 発
新 版 K 式 発 達 検 査 結 果 全 体 的発 達 プ ロフ イ‑ ル
課 題 へ の 志 向
性 . 行 動 特徴 運 動 機 能
蝣92. 6
言 語 . 認 識 機 能 で . 学 校 で の経 験 を検 . 両 足 とび (+ ) は、 2 つ の世 界 の形
成 の充 実 が み られ 、 自我 形 成 に お いて 相 手 の つ も りを受 け入 れ よ う とす る姿 が 散 見 さ れ始 め る0 そ れ と と もに、 手 指 の 操 作 性 機 能 に お いて も 2 次 元 の 構 成 . 描 画 の萌 芽 が み られ る0
査 場 面 で も 「しよ う」 とす る一 種 の が ん ば りが み られ るが、 緊張 感 も強 く絶 え ず机 上 で手 を動 か す 「くせ の 手」 や 吃音 が 目立 つ0
. 日分 か ら検 査 者 に 苦手 な積 木 課 題 し よ う と催 促 す る0
. ケ ンケ ン (一)
C A 6 ‥ 7
D A
全 領 域 3 ‥ 5 姿勢 . 運動 2 : ll 認 知 . 適 応 3 : 1 言 語 . 社 会 3 = 9
'92.10
手 指 の 操 作 性機 能 で . 前 回 み られ た 「く . 両 足 とび ( + ) は、 目 と手 の協 応 せ の手 」 や 吃 音 は . ケ ンケ ン ( + ) が 確 か にな る と と も な くな り、 検 査 者 右 軸 足 の み 0 に、 2 次 元 の 構成 . の指 示 に あ わせ て 細 か い調 整 は未 熟 C A 6 ‥11 描 画 が 可 能 な り、全
領 域 にお いて 2 つ の 世 界 の形 成 が な され る0
課 題 を遂 行 し、 が ん ば り きろ う とす る姿 が 多 くみ られ る0
で あ る0
D A
全 領 域 3 ‥ 6 姿 勢 . 運 動 3 ‥ 6 認 知 . 適 応 3 ‥ 1 言 語 . 社 会 3 : 9
においても、道貝の操作のしかたに広がりがみられ、さらには、 Table 3に示したように発達検 査結果でも指先を使って折り紙を操作することが可能となっていることとも関連があるものと考
えられる。
「食べる」活動では、自分がつくったものを他者に評価されることで満足感や達成感は味わっ ているが、そのことが食べる意欲に結びつくまでには至っていない。しかし、以前には口の中で なめて溶かして飲み込んでいたが、最近では、歯と歯をすりあわせるといった段階ではあるが、
口の中で溶けにくいものは噛む行為もみられ始めている。礁下することはまだ未熟で、歯ぐきと 頬の間にためこんで少しずつ時間をかけて飲み込むといったものである。学校給食も他児と同じ
ように準備され、食べる場を共有する配慮がなされている Table 5に示すように、主な栄養は 特別に用意された経口からの流動食に頼っているが、主食や副食をごく少量口にする場面もみら れている。食べる活動は季節、運動量、食事の内容など外的要因に左右され、その量もごく少量 ではあるが、主体的に食べようとする意欲の高まりがみられている。こうした姿は、対人的交流
達検査結果
機 能 別 発 達 像
手 指 の 操 作 性 機 能 言語 . 認識機能
く構 成〉 く描 画〉 .了解 i ・n 2/3 (+ )
.積木の塔 8 (+ ) 右手優位0 積みきろうとする思い . 円模写 (+ ) 始 終点のずれが大き
. 重さの比較 (‑ ) .脱落発見 3/4 (+ ) が強く調整力に欠ける0 対向面把握が可能となる。 く検査者の言語教 .脱落発見 4/4 (〜)
. トラック模倣 (→ 醒 慧 票 禦 tO=
② 1次元的構成
不で調整する0 .十字模写 (I ) .人物画 (M ) 各
部分を指示すると
. 3数復唱 1/3 (+ ) . 4数復唱 1/3 (‑ ) . 4 つの積木 (+ ) .数選び3 (i ) 後検査者が 『センセイトイツシヨカナ』 と言語教示を 丸と線で大きい丸 .色の名称 4ノ4 (+ )
するとモデルをみて 』 を構成する0 の中に口と目、外
に手 と足を描 くが 位置関係は不確か である0
.家の模倣 仁 ) 1 次元的構成 目0
.折り紙 i ‑ n (+ ) 角、線を合わせようとするが折り 目を指でつけることは未熟で手掌全体で押さえつける0
く構 成〉 〈描 画〉 . 了解n (+ ) m (〜)
. 積木の塔 (+ ) 左右の手を同レベルで操作する0 . 円模写 (蝣+ ) と 手の協応が確
‑ 重さの比較 (I ) . 13 の丸 (+ )
調整 しようとする気持ちはあるが操作的に未熱さを残 になり、始終点の
ずれが少ない0 .十字模写 例前
1 / 3 (+ ) .人物画 (‑ ) 大き
. 3 数復唱 1/3 (+ ) . 4 数復唱 1/3 (ー) てこラック模倣 (+ ) 1 次元的構成 目 をした後、
モデルと見比べてや り直 しトラックを構成する0 い丸の中に目を外
. 家の模倣 (‑ ) ① 1 次元的構成 [二]コ] 0 ②検査者に に耳 .毛を自ら命 名 しながら措く0
促されてモデルと見比べ 』 を構成する。 検査者が 『ホカニ
ナイカナ ?』と問う と中に鼻を措 く。
. 四角構成 例後 2 / 2 (+ ) 例前 (‑ )
.折 り紙 i (+ ) n (‑ ) 指先で折 り目をつける0 口の描写はない0
活動の広がりとともに他者をとおして自己の要求を強めそれを実現させていこうとするがんばり の姿と推察される。発達検査場面での課題への志向性をみても、人格の基礎としての自我形成に おいて、これまでの自分のつもりの行使だけでなく他者のつもりも受け入れる姿がみられるよう になっている。これらの姿に自制心の芽生えをみることができるのである。
4)日常生活場面での様子
家庭との連携と療育場面での取り組みの積み重ねという視点から、おてつだいと運動遊びを家 庭でのプログラムとして設定したが、このプログラムでも、達成感、満足感を味わうようにおて つだい表、たいそう表を作成しシールを貼って視覚的に確かめるといった配慮をした。その内容 はTable 4に示すとおりである。実施当初は母親が『〜ショウ』と誘うと『イヤ!』と拒否的で あったが、本児が好きなアニメの主人公の名前を出して『ジェットマンニミテモラオウ』とか
『オネエチャンモガンバルヨ』と誘うと、その誘いにのってぞうきんがけのおてつだいをするよ
40 田村 浩子・中山ながこ・長戸 優美・田辺 正友
Table 5 ‑日の食事内容・様子
時 刻 内 容 様 子
7 :30
12:30
15:30
17:30
19:00
21ニ00
◆ 朝 食 経 管 摂 取 . 所 要 時 間 30 分 程度 ( ク リニ ミー ル 、 オ ク ノ ス流 動 A 、
コニ ス タI チ)
◆昼 食
. 学 校 給 食 経 口摂 食
. 学 校 へ は経 管 チ ユI プを外 して登 校
. 所 要 時 間 25 分程 度
他 児 と同 じ もの (主 食 、 副 食 、 . 主 食 、 副 食 を ご く少 量 口 に す る、 礁 下 す る 牛 乳 180 cc)
. 5 校 時 の 日 (下 校 時 刻 15‥00 す ぎ) は、
の に時 間 が か か る
. 牛 乳 は時 間 が か か るが全 部 飲 む
. 所 要 時 間 10 分 〜 50 分 、 そ の 日の体 調 、 授 給 食 の後 、 流 動 食 (エ ンシ ュ ア . リ
キ ッ ド) 250 cc を経 口摂 食
. 4 校 時 の 巨= ま、 同 内 容 の ものを 帰 宅 後 経 口摂 食
. 休 [= ま同 内容 の もの を経 菅 摂 取
◆ お や つ 経 口摂 食
業 内 容 に よ って 所要 時 間 に開 きが あ る
. ご く少 量 ロ に す る、 柔 らか い もの は噛 ま な (せ ん べ い、 ピI ナ ツ、 ス ナ ッ ク い が硬 い もの は 噛 む、 嘩下 に は時 間 が か か
菓 子 等 )
◆ 栄 養 補 給 経 管 摂 取
(ク リニ ミー ル、 オ ク ノ ス流 動 A )
◆ 夕 食 経 口摂 食
る
. 家 族 の者 が食 べ終 わ る まで 食 卓 につ いて い 好 物 (マ ー ボ ー 豆 腐 、つ け も の、 る
き ゅう り、 プ チ トマ ト、 カ レ I 、 シ . ご く少 量 口 に す る、 そ の 日 の体 調 に よ って
チ ユ ー等 ) 開 きが あ る
◆ 栄 養 補 給 経 管 摂 取 . 血 糖 値 を維 持 す る た め に就 寝 前 に必 要 で あ (ク リニ ミI ル 、 オ ク ノ ス流 動
A 、 コ ニ ス タ ー チ)
る
うになる。この時期は、おてつだいをすることとおてつだい表にシールを貼ることの関連づけが 明確ではなく受け身的にシールを貼っている。翌月指導者がおてつだい表をみながら指導者がど んなおてつだいをしたか問うが答えがかえってこない。しかし、おてつだい表にシールを貼るこ との意味がわかり始めると、入室時本児の方から指導者におてつだい表をみせて『〜シタ』と得 意そうに話をしたり,退室時には『オテツダイヒョウ‑?』と指導者に催促するようになる。こ の時期になると家庭では本児の方から『〜ヤロウ』と母親を誘っておてつだいをし始める姿が多
くみられている。しかし、おてつだいの一つひとつは、期間をあけずに繰り返していると少しず つでも上達していくものの、しばらく期間をあけると操作そのものがぎこちなくなってしまうと いったように、経験の積み重ねが力の獲得に至るまでに時間を要するといった問題がある。この 問題は根本的には先のボタンかけでも指摘したが、本児のもつ「知覚一運動」障害と関連した問 題であると考えられる。
2.療育のあり方・療育プログラムの吟味
本児は、本療育活動において経験を積み重ねていくことで、受け身的な参加から自ら主体的に
参加し課題に取り組むといった変化をみせている。この背景には、種々の要因が重なり合ってい るものと考えられるが、大きな要因として、指導者や母親たちの励まし、評価を支えとして様々 な課題に繰り返し挑戦していく中で、 「できない」 「苦手だ」という消極的な気持ちから「でき た」という自信をもつようになり、本児自らが「〜だけれどもがんばろう」という気持ちを育ん できたことがあげられる。また、運動機能、手指の操作性機能でも場面や課題は限られているが、
経験を積み重ねることで「できること」が増えたことが本児の自信につながり、そのことが主体 的な参加を導いたとも考えられる。
しかし、一方では、 「知覚一運動」障害の問題はより明確化してきている Table 3に示した ように、発達検査結果からみて、現段階の本児の発達像は、知覚機能がより巧轍性を加え、それ を身体の運動として洗練された形態で発現させていく発達段階へと移行していく時期であると考 えられる。それゆえに、知覚‑運動発達の過程をさかのぼり、どの段階における障害が核になっ ているかを再確認し、その段階からの轍密な取り組みが重要である。また、広川(1976)の「体 系化されたプログラムのもとに密度濃く集中的に治療を展開すると同時に、子どもたちの生活基 盤である日常生活において必要なとりくみを吟味し、意図的にすすめることも治療の重要な一側 面である。むしろ、そのことが子どもたちにとっては、より自然で興味深いものであることが多 い」という指摘を3、まえて、プログラムの内容を再吟味することも必要である.
おやつをつくる、食べる取り組みでは、現段階では完全な経口摂食には至っていないが、対人 的交流をとおして変化の姿をみせている。特に、学校給食では、友だちと一緒に食べる場を共有 し、ごく少量であるものの自ら主体的に食べようとする姿がみられている。また、運動量が多い ときには食べる量も多くなることが確認でき、生理的要求としての「食べる」活動は広がる可能 性が大きいと推察される。本児の食行動の問題についても、根本的には、本児の疾患と関連させ ながらその障害機制を明らかにしていかなければならない。と同時に、今後、療育活動場面でも 食べる「場の設定、内容、展開」などについて検討し、大人との交流から子どもとの交流へと広 がりをもたせたなかでの取り組みの工夫が課題とされる。そして、田辺(1992)が指摘するよう に「つぎっぎと新しい力の獲得をめざしてあせるのではなく、いまもっている力を使って、さま ざまな人間関係や条件の中で、その使い方を拡げる、変えてみるなど、その力をより確かに自分
自身のものにしていくといった取り組み」を大切にしていく視点に立って今後の療育課題を検討 していくことが重要である。そのためには、家庭での様子や学校での様子も療育とさらに深く結 びつけ、本児の生活全般において、いまもっている力を発揮できるような取り組みを設定してい かなければならない。
引 用 文 献
広川律子1976 痩直性両マヒ児にみられる知覚‑運動障害に関する研究 障害者問題研究、 6,49‑68.
田村浩子・大谷啓之・田辺正友1992 低血糖症による精神発達遅滞児の発達過程と療育 奈良教育大学紀 要、 41(1), 87‑105.
田辺正友1992 障害児の発達と教育にかかわる基本的問題一子どもを「みる目」 「育てる目」 ‑ 文部省 特定研究報告書「小・中学校における『障害・障害児教育・障害児(者)問題』の学習」、 13ト142.
42
Developmental Process and Remedial Education of a Mentally Retarded Child by Hypoglycemy Originated
in Pancreatic Islet Cell Tumor ( 2 )
Hiroko Tamura, Nagako Nakayama, Masami Nagato and Masatomo Tanabe {Department of Education for Handicapped Children, Nara University of Education, Nara 630, Japan)
(Received April 9 , 1993)
Various ways of educational care for the handicapped children must be sought by grasping the meaning or background of their behaviours in their developmental process.
This study is one of a series of studies attempting to clarify the problems of develop‑
mental process and to seek for the appropriate educational care in a mentally retarded child by hypoglycemy originated in pancreatic islet cell tumor. The subject was 7 years old mentally retarded boy enrolled in class for handicapped children at elementary school. He was diagnosed as pancreatic islet cell tumor in early infantile period. He has strong hypoglycemic symptons such as disturbance of consciousness, convulsions, feed‑
mg disorders and vomiting.
We have been trained this boy since3 years 5 months old in our class of remedial education for preschool handicapped children. In the previous research, we analyzed the problems of his developmental features and changes in relation to the critical period in the process of development. In analyzing his developmental process for three years, three stages were divided from the viewpoint of the qualitative changes of his develop‑
mental process. And we discussed his developmental problems at various developmental stages in relation to his disease.
He has difficulties in acquiring the perceptuaLmotor tasks or the space‑cognition abilities and the manual operations such as copying figures and block‑designs. His one more problem is the feeding disorders such as chewing and swallowing. In the present study, we attempted to practise the remedial educational programs for overcoming his perceptual‑motor disabilities and feeding disorders. Further work with this boy need to be done in order to seek for the appropriate educational care which help him to over‑
come the next developmental stage.