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大項目 3. 計算化学 中項目 3-3. 反応設計 小項目 3-3-1. 合成経路設計

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ディビジョン番号 ディビジョン名

理論化学・情報化学・計算化学

大項目 3. 計算化学 中項目 3-3. 反応設計 小項目 3-3-1. 合成経路設計

概要(200字以内)

対象化合物の合成経路設計は経験豊か な合成化学者のみが行うことができる とされてきたが,実用的な合成経路設計 システムの登場によりこの状況は大き く変わりつつある.計算化学を取り巻く 環境の進化は反応経路の解析技術を飛 躍的に進歩させ,計算化学的手法を実験 が行われていない合成反応に適用し,そ の可能性の有無を検討することを可能 とした.これらの進歩は,従来の合成経 路開発の手法を根本的に変革する可能 性を秘めている.

現状と最前線

主に量子化学計算を用いた計算化学的手法は,従来から既知の化学反応に適用し大きい成果を あげてきた.その結果を用いて,例えば,遷移金属を用いた触媒反応を解析結果から,新たな 配位子を持つ触媒の設計やそれを用いた新たな反応設計は行われてきたが,結果の整理に使わ れてきた側面の方が大きい.一方,化学反応をゼロから予測することは,化学反応の解析技術 がこれほど進歩した今日でさえ,フロンティア軌道理論などを用いた大まかな予測が行われて いるに過ぎない.これは,計算化学の専門家が有機合成に関する知識を持ち合わせていないこ とが原因として考えられる.AIPHOS などの合成経路設計システムが実用化されていることを考 えれば,この情報化学的手法と計算化学的手法を組み合わせた研究が,目的化合物を得る「反 応の可能性予測」に有効であることは容易に想像できる.ただし,従来から利用されている反 応解析の方法を,合成経路設計システムが網羅的に出力するすべての反応に対して適用するこ とは,解析に必要とされる時間が膨大で実用的ではなく,この問題を解消することが必要不可 欠である.堀らはこの問題を,遷移状態のデータを集積することにより,解決する方法の検討 を行っている.これは, 「シンプルな分子の遷移状態の情報を用いれば,それから誘導される 複雑な化合物の遷移状態の探索は容易に行うことができる」という発想に基づいている.現在,

そのデータベース(遷移状態データベース,TSDB)構築が行われている[1].

合成経路の可能性予測が可能となれば, in silico 合成経路開発を実用化することが可能で ある.多段階反応では,最終段階の

反応の可能性をはじめに議論するこ とが可能で,目的化合物を与えない と考えられる合成経路を除外するこ とができる.そのため,目的化合物 を得るために多段階の合成反応の開 発が必要とされる場合にとりわけ有 効性を発揮すると考えられる.

1)堀,山本,情報化学・計算化学実験,2006 年,丸善

合成経路A 合成経路B 合成経路C 合成経路D

合成経路D1 合成経路D2 合成経路D3 合成経路D4 合成経路D5

合成経路D1a 合成経路D1b 合成経路D1c 合成経路D1d 合成経路D1e 他の合成経路

他の合成経路

OH O OH

OH O O

O 標的化合物

合成ターゲット

実験 計算化学の導入

情報化学の導入 合成経路設計に要していた多大な労力と時間

従来:合成経路設計

合成経路設計に要していた多大な労力と時間 従来:合成経路設計

迅速かつ網羅的な経路提案 文献情報の提示

現在:合成経路設計システム

反応解析による合成経路の可能性の検討 効率的な合成ルートの絞込み

将来:計算化学の導入

効率的なルート絞込み 反応解析

(遷移状態算出)

反応の可能性評価 効率的なルート絞込み

反応解析

(遷移状態算出)

反応の可能性評価 反応解析

(遷移状態算出)

反応の可能性評価 合成経路設計システム

逆合成ルート提案 文献情報の提示 網羅的なルート提案 合成経路設計システム

逆合成ルート提案 文献情報の提示 網羅的なルート提案 合成経路設計システム

逆合成ルート提案 文献情報の提示 網羅的なルート提案

将来

(2)

in silico 合成経路開発は省資源型の研究法である.現状においても,モデルを使わない反応 解析により,ある程度の実用性は確保されている.将来的には,量子化学的手法を用いた分子 動力学やモンテカルロシミュレーションを用いた溶媒効果の評価が可能となる.これら実験に 近い条件を与えた理論計算により,合成経路開発に用いる反応の実現性を短時間に評価できる システムが構築され,合成経路開発法が大きく変化するであろう.

将来予測と方向性

・ 5年後までに解決・実現が望まれる課題

¾ 実用に耐えるに十分な TSDB 拡充のためのプロジェクトの推進

¾ 遷移金属を用いた錯体,固体触媒反応(実在系)の解析進歩

¾ マイクロリアクターを用いた反応解析結果の検証技術の開発

¾ 量子化学計算により溶媒効果を評価するためのプログラムの実用化

¾ 有機化学合成化学者が簡単に利用できる TSDB のインターフェース

・ 10年後までに解決・実現が望まれる課題

¾ 量子化学計算による溶媒効果の実用化

¾ コンピュータの演算速度と容量の増大(両者とも現状の 1000 倍)

¾

反応解析結果と連動したマイクロリアクターの自動設計・構築 キーワード

遷移状態,反応解析,合成経路設計システム,合成経路開発

(執筆者: 堀憲次 )

参照

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