麻布大学雑誌 第 23 巻 2011 年
【はじめに】
牛の蹄底潰瘍,白線病等の蹄疾患の多くは,治療 的削蹄および患部の保護により速やかに治癒する。
しかし,蹄病変が深部の骨,関節および靭帯等に波 及した深部感染症では,予後不良となる症例が多い。
今回,趾深部感染症と診断した 2 例について断趾術 を行い,予後について考察した。
【症例の概要】
症例 1 は,27 ヶ月齢のホルスタイン種乳用牛で,
左後肢の跛行および蹄冠部の腫脹を認めた。挙肢検 査の結果,左後肢外側蹄に白帯病を認めた。蹄関節 穿刺により白濁した関節液を認め,趾深部感染症と 診断した。治療的削蹄後,内側の健康蹄に蹄ブロッ クを装着したが,跛行および蹄冠部の腫脹ともに軽 減せず,3 診目に断趾術を行った。断趾部近位の深 趾屈腱−屈腱鞘の間隙からの排膿は見られず,深趾 屈腱の腫脹も見られなかった。術後速やかに跛行が 軽減し,2 ヶ月後には術創も表皮化した。
その後,2 産目分娩し,19 ヶ月経過した現在 3 産 目妊娠中である。
症例 2 は,49 ヶ月齢のホルスタイン種乳用牛で,
左後肢の跛行および蹄冠部の腫脹を認めた。挙肢検 査の結果,左後肢外側蹄に蹄底潰瘍を認めた。症例 1 と同様に,蹄関節穿刺により白濁した関節液を認
め,趾深部感染症と診断した。探触子の挿入により 瘻管が反軸測蹄冠上部まで達していたため,切開し 開放創とした。2 診目で跛行および蹄冠部の腫脹と もに軽減せず,断趾術を行った。断趾部近位の深趾 屈腱−屈腱鞘の間隙から排膿を認め,深趾屈腱が著 しく腫脹していた。術後跛行は軽減せず 3 日目に起 立不能となり,廃用処分とした。
断趾術は,術野の消毒を行い,外側趾静脈内に 2 %塩酸プロカイン 20 ml を投与した。その後,趾間 皮膚を切開し,線鋸を用い中節骨軸側遠位から反軸 側近位に向けて 45 度の角度で切断した。術創は,抗 生物質を塗布して湿潤療法を行った。1 〜 2 週間隔 で患部の洗浄を行った。
【考 察】
症例 1 は,感染が蹄関節内に限局されていたため,
断趾術により感染組織が除去された結果,速やかに 跛行が軽減したと考えられた。また,初産牛で体重 も軽かったことも術後の経過が良好であった要因と 考えられた。しかし,症例 2 は,蹄関節内の感染だ けでなく,深趾屈腱より上行性に感染が波及してい たこと,2 産目の牛で体重も重く残存趾への過大な 負担が起立不能に陥った原因と考えられた。若く体 重の軽い牛の趾深部感染症において,断趾術は有効 な治療法と考えられた。
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