Title
教職科目「教育相談の理論と方法」における「多様な性
」に関する授業実践―性への確かな理解とDiversity の視
点―
Author(s)
吉川, 麻衣子
Citation
教職実践研究(5): 1-8
Issue Date
2015-03
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/21828
Rights
沖縄大学教職支援センター
研究ノート
教職科目「教育相談の理論と方法」における「多様な性」に関する授業実践
―性への確かな理解と
Diversity の視点―
吉川 麻衣子 沖縄大学人文学部福祉文化学科 A Teaching Practice on “the Diversity of Sexuality“ Conducted in the Teacher Training
Course, “Theory and methods of Educational Counseling”: Viewpoints of Right Understanding and the Diversity of Sexuality
Maiko YOSHIKAWA(Faculty of Humanities, Okinawa University)
本稿は,教職志望学生を対象にした「多様な性」を主題とする授業実践の記録である.現職教員 への調査では,児童・生徒の性への対応に難しさを感じていることが示された.その結果と当事者 学生の意見を基に,性の正しい知識,性別違和を抱く児童・生徒の心理と実際,身近な問題として 取り組むべきことを中心に授業を展開した.性の多様性,学校現場の現状と課題に関して,受講生 の理解が深まったという点において本実践は評価できるが,授業法や内容等の更なる検討点も明ら かになった. キーワード:多様な性,セクシャル・マイノリティ,教育相談,教職志望学生,児童・生徒 はじめに 「多様な性」がメディア等でも盛んに取り上 げられている昨今,学校現場においても適切な 理解と対応が求められている.しかし,この分 野に関して,文部科学省が全国の学校を対象に 実態調査を始めたのは2014 年 1 月である.教 員養成機関でも体系的な教育はほとんど行われ ていない.本稿の目的は,教職科目「教育相談 の理論と方法」において,「多様な性」を主題と した授業実践を行い,その内容を検証すること である. 1.学校現場における「多様な性」を巡る現状 2014 年 6 月,文部科学省は「学校における 性同一性障害に係る対応に関する状況調査」の 結果を公表した(文部科学省,2014).国公私 立の小学校,中学校,高等学校,中等教育学校 及び特別支援学校を対象に行ったこの調査は, 「性同一性障害に関する教育相談等」の有無を 問うものである.つまり,児童・生徒本人が性 別違和感を持ち,かつ児童・生徒本人又は保護 者が性別違和(旧:性同一性障害)であると認 識しており,児童生徒又は保護者がその児童生 徒本人の自己認識を学校の教職員に開示してい る場合のみの件数なのである.よって,児童・ 生徒自身が違和感を持ちながらも,誰にも相談 できていない場合,本人又は保護者が学校に報 告していない場合は,この調査結果には反映さ れていない.結果として,606 件(戸籍上男・ 女の両方を含む)が報告された.内訳は,小学 校低学年4.3%(26 件),小学校中学年 4.5%(27 件),小学校高学年6.6%(40 件),中学校 18.2% (110 件),高等学校 66.5%(403 件)であっ た. 配慮事例として,表1 に示す項目が挙げられ ている.配慮有の事例は約6 割であり,配慮無
教職科目「教育相談の理論と方法」における「多様な性」に関する授業実践 2 -教職実践研究, 2015, 3, pp. 1-8 教職実践研究, 2015, 3, pp.1-8 2 の約4 割については,「理由は問うていないが, 児童・生徒本人が特別な配慮を求めていない等 を踏まえ,敢えて配慮していないという事例も 比較的あることが伺えた」としている.また現 状としては,「周囲も受け入れており,特に問題 なく生活している」とある一方で,「不登校状態 になっており,保健室に通うことが多い」,「気 持ちの浮き沈みがあり,自傷行為をしている」, 「家庭の理解が得られない.もしくは理解する も受け止めるまでには至っていない」とあった. さらに,「性同一性障害なのか一過性の気持ちな のか,本人の考えも揺れ動いており,性の不一 致に悩んでいる」,「本人は他の生徒等へ明かす ことなく過ごすことを希望しており,保護者も それを望んでいるが,周囲の生徒は気づいてお り指導が難しい場面もある」という報告もあり, この分野の対応の難しさが示された. 沖縄県においては,養護教諭255名中3割が, 児童・生徒から相談を受けたことが明らかにな っている.相談内容は“性別への違和感”に関 する相談が約86%に上るとし,教育現場で性同 一性障害への理解を深める必要性が強調されて いる(琉球新報2014 年 3 月 22 日付).また, 2014 年 1 月現在,児童・生徒が性別違和感を 学校に相談した事例が,沖縄県内の公立小中高 校で29 件あったことも示されている(琉球新 報2014 年 6 月 13 日付).配慮事例として,全 国の学校と同等の対応がなされていたが,「男踊 り,女踊りがあるエイサーの授業で,本人が希 望する踊りを認める」というような地域性も表 れていた. 思春期の子どもたちの「多様な性」に関する 正しい理解と対応が学校現場において求められ ている.沖縄県の小学校・中学校・高等学校の 現場には,どのような実態があるのだろうか. 2.沖縄県の現職教員を対象にした「多様な性」 に関する実態調査 筆者が主催する現職教員との教育勉強会に参 加する教員10 名(小学校 4 名,中学校 4 名, 高等学校2 名)に現状を伺った上で,各学校で 簡便な質問紙調査を実施した. 1)調査内容 この調査は,他の内容を含むものであるが, 本稿に関連した質問は,①“性にまつわる事例” の理解と対応への困り感(5 段階評価:“1.ま ったく困っていない”,“2.どちらかといえば 困っていない”,“3.どちらでもない”,“4.ど ちらかといえば困っている”,“5.とても困っ 表 1 ⽂部科学省「学校における性同⼀性障害に係る対応に関する状況調査」による配慮事例(⽂部科学省報告書をもとに作成) 項 ⽬ 回答のあった事例 服装(制服有) ・⾃認する性別の制服着⽤を認める. ・体操着登校を認める. 服装(制服無) ・スカートで登校しているが本⼈の意思を尊重している. (⼩学校⾼学年,⼾籍上男) 髪型 ・男⼦⽣徒の標準的な髪型よりも⻑い髪型を清潔さを損なわない範囲で認める.(⾼等学校,⼾籍上男) 学⽤品 ・名前シールなどの男⼥の⾊分けをできるだけ避ける. ・⾃認する性別のスリッパ着⽤を認める. 更⾐室 ・保健室の利⽤を認める. ・多⽬的トイレを更⾐室として使⽤することを認める. トイレ ・職員トイレ・多⽬的トイレの使⽤を認める. 通称の使⽤ ・校内⽂書を通称で統⼀する. ・公式⾏事では通称で呼ぶ. 授業(体育⼜は保健体育) ・⾃認する性別のグループに⼊れるようにする. ・本⼈⽤に別メニューを設定する. ⽔泳 ・上半⾝が隠れる⽔着の着⽤を認める.(⼾籍上男) ・補習として別⽇に実施する. ・レポート提出で代替する. 授業(体育及び保健体育以外) ・⾃認する性別として名簿上扱う. ・男⼥混合グループを作り発⾔しやすい環境を整備する. 運動部での活動 ・⾃認する性別の活動に参加することを認める. 宿泊研修 (修学旅⾏含む) ・1⼈部屋を使⽤することを認める. ・⼊浴時間をずらす. 他の児童 への説明 ・⼊学直後に本⼈及び担任から全校⽣徒に対し説明する. ・本⼈の希望により説明していない. 保護者・PTA への説明 ・⼊学時に保護者会で説明する. ・本⼈の希望により保護者へは告げていない. その他 ・全ての⽣徒を「さん」付で呼称するよう統⼀する. ・内科検診を別途実施する.
ている”),②現状を通してどのようなサポート やヒントが得られるとよいと思うか(自由記述), ③教職課程を履修している学生に学んで欲しい こと(自由記述)の3 点であった. 2)調査対象と時期 2014 年 3 月,沖縄県内 13 校(小学校 4 校, 中学校5 校,高等学校 4 校)の 121 名の教員 (小学校教諭40 名,中学校教諭 40 名,高等学 校教諭41 名)に対して調査を実施した.筆者 が直接各学校を回り,管理責任者に調査の趣旨 を説明し,職員会議等で約10 分間を要し一斉 調査した. 3)結 果 ①困り感:校種ごとの回答傾向を表2 に整理し た.いずれの校種においても,性にまつわる事 例に対して困り感があることが示されたが,中 学校と高等学校において顕著であった. ②現状:教育内容に関することとしては,“そ もそも,大学で性同一性障害などについて習っ たことがないので,どのように子どもたちに教 えたらいいのかが分からない”(20 代,小学校 教諭),“突っ込んだ性教育については賛否両論 ある.なかなか簡単にはいかないと思うが,道 徳の授業で扱わないといけないと感じている. きちんとした教育内容(何をどこまで教えるの か)を示す必要がある”(30 代,中学校教諭), “小学校のどの年齢から対応すべきなのかが不 明”(30 代,小学校教諭)などが挙げられてい た. 教育相談上のこととしては,“クラスに疑いの ある子がいるが,本人は隠したがっているよう に見えるので,どのように声をかけていいのか 分からない.性の違和感を持っている子どもた ちへの教育相談の方法を研修してほしい”(40 代,高等学校教諭),“病院で診断を受けてカミ ングアウトした生徒がいるが,連鎖的に他の生 徒も友人等にカミングアウトしている.とても 繊細な問題なので,入り込みにくいところがあ る.難しさを感じる”(30 代,中学校教諭),“私 は親世代というか古い人間なのかもしれないが, こういったことは一過性のものではないかとい う考えが捨てきれない.受け入れられない親の 立場に立ってしまい,なかなか生徒の気持ちに 共感できないでいる.年配の教員に対する研修 は特に必要である”(50 代,高等学校教諭)な どが挙げられていた. ③学生に学んで欲しいこと:“時代が変わり, 大学で多様な性について学べることが羨ましい. しっかり学んで現場の教員にも教えてほしい. 新しいテーマには疎くなっているので”(40 代, 小学校教諭),“きっと自分もそうかもしれない と思う学生もいるはず.なかなか厳しい現実も あるかもしれないが,そのことをマイナスに捉 えるのではなく,将来教師になったときにそう いう子どもたちの希望になってくれることを願 っている”(30 代,中学校教諭),“性のことを 学ぶことを通して,多様な価値観があるという ことをしっかり学んで欲しい.若い人に頑なす ぎる考え方をする教師が増えてきていると危惧 する”(40 代,中学校教諭)などが挙げられて いた. これらの結果も参考に,「教育相談の理論と方 法」の科目においてどのような内容を組み込む 必要があるのかを検討した. 3.「教育相談の理論と方法」の科目特性 本科目は,「教職に関する科目」として設置さ れており,本学では2 単位の必修科目である. 初等教職課程では「教育相談の理論と方法(初 等)」として,中等教職課程では「教育相談の理 論と方法(中等)」としてそれぞれ開講されてい る.授業計画は,ガイダンスの後に教育相談と は何か,教育相談の理論と方法(カウンセリン グ・マインド,アドラー心理学,認知行動療法, エンカウンターグループほか),そして,具体的 表 2 現職教員の「多様な性」の理解と対応への困り感(回答傾向) ⼩学校 中学校 ⾼等学校 1.まったく困っていない 4 0 0 2.どちらかといえば困っていない 3 3 1 3.どちらともいえない 5 0 3 4.どちらかといえば困っている 11 13 16 5.とても困っている 17 24 21 ⼈数 40 40 41 平均評定値 3.85 4.45 4.39 標準偏差 1.33 0.85 0.74
教職科目「教育相談の理論と方法」における「多様な性」に関する授業実践 4 -教職実践研究, 2015, 3, pp. 1-8 教職実践研究, 2015, 3, pp.1-8 4 問題の現状と対応として,いじめ,不登校,非 行,虐待の4 つをテーマにグループ・ディスカ ッションも交え展開する.さらに,教育現場に おける新たな課題として,自殺予防対策,東日 本大震災から学ぶ緊急支援,学校現場における 「多様な性」を扱っている. 児童・生徒の事例は,筆者が実際にかかわっ た事例も含め,それぞれの教育課程に合わせた ものを用いている.また,学習ボランティアや 教職実習で使える対応方法と,現場教員になっ てから用いるべき対応方法とを分けて教示して いる.また,児童・生徒への対応のみならず, 保護者対応も含んでいる. 4.学校現場における「多様な性」の理解と対 応を主題とした授業内容 1)授業実施日 2014 年度後期,12 月 18 日(木曜日)の 5 限には初等教職課程の学生を対象に,6 限には 中等教職課程の学生を対象に講義を実施した. 「教育相談の理論と方法」全16 回のうち,本 時は第12 回目であった. 2)本時の目標 生物学的な男と女だけではなく,「多様な性」 のあり方について正しく理解し,性別違和を持 つ児童・生徒がどのような想いを抱き,どのよ うな環境の中で学校生活を送っているのかを知 り,学校現場においてどのようなことが課題と なっているのかを把握することを本時の目標と した. 3)受講生 初等教職課程の学生57 名,中等教職課程の 学生80 名であった.履修学生以外にも,興味 を持つ学生11 名が聴講した. 4)本時の展開 (1)当事者学生からの聴き取り まずは本時の実施にあたり,約半年間かけて 当事者学生4 名と高校生 1 名にインタビューを 行った.小・中・高校生活で経験したことや教 師を目指す学生たちへ伝えたいこと,周囲の人 への願いなどを「学生の声」として紹介した. 紹介する際には,本人と確認をしながら,より 分かりやすく伝えるにはどのような言葉を用い た方がいいのかを共に検討した. (2)本時の目的 本時の目的を伝えた.前述した文部科学省の 調査や沖縄県内の現状,現職教員への調査結果 を示し,この分野に関する理解と対応は急務で あることを強調した.そして,この分野に関し て他の講義等で習ったことがあるか否かを尋ね た.「ジェンダー学」を履修した(している)学 生が十数名いた. (3)多様な性の知識 性染色体,外性器・内性器の状態や性ステロ イドホルモンのレベルなどから決定される「生 物学的性」と,自分自身の性別をどう認識して いるか,その確信の状態がどのようなものであ るかという「性自認」,恋愛や性愛の対象となる 性別である「性的指向」から成るセクシュアリ ティの3 要素について解説をした.その後,自 分のセクシュアリティについて自分自身の内で 考える時間を取った. 続いて,レズビアン,ゲイ,バイセクシャル, トランスジェンダーについて,セクシュアリテ ィの3 要素を基に説明した.さらに,性分化疾 患(出生時のからだの性別が男女いずれかには っきり区別できない状態),X ジェンダー(性自 認を男性・女性のいずれかとは認識していない 状態),パンセクシュアル(すべてのセクシュア リティの人が恋愛や性愛の対象となる),アセク シャル(いかなる他者も恋愛や性愛の対象とな らない),ヘテロセクシュアル(性自認が女性の 場合に男性が,性自認が男性の場合に女性が恋 愛や性愛の対象となる),クエスチョニング(自 分自身のセクシュアリティを決められない・分 からない,またはあえて決めていない)につい ても触れた.「LGBT」という造語がメディア等 でも用いられるようになっているため,4 つの セクシュアリティについては“聞いたことがあ る”受講生も多かったが,その他のセクシュア リティについては“初めて聞いた”受講生が多 かった.ここで強調したのは,おそらく受講生 の多数派が属するヘテロセクシュアルも,多様 なセクシュアリティの一つにすぎないというこ とである.性自認が女性の場合に男性を好きに なり,性自認が男性の場合に女性を好きになる ということは当たり前ではなく,単にそのカテ
問題の現状と対応として,いじめ,不登校,非 行,虐待の4 つをテーマにグループ・ディスカ ッションも交え展開する.さらに,教育現場に おける新たな課題として,自殺予防対策,東日 本大震災から学ぶ緊急支援,学校現場における 「多様な性」を扱っている. 児童・生徒の事例は,筆者が実際にかかわっ た事例も含め,それぞれの教育課程に合わせた ものを用いている.また,学習ボランティアや 教職実習で使える対応方法と,現場教員になっ てから用いるべき対応方法とを分けて教示して いる.また,児童・生徒への対応のみならず, 保護者対応も含んでいる. 4.学校現場における「多様な性」の理解と対 応を主題とした授業内容 1)授業実施日 2014 年度後期,12 月 18 日(木曜日)の 5 限には初等教職課程の学生を対象に,6 限には 中等教職課程の学生を対象に講義を実施した. 「教育相談の理論と方法」全16 回のうち,本 時は第12 回目であった. 2)本時の目標 生物学的な男と女だけではなく,「多様な性」 のあり方について正しく理解し,性別違和を持 つ児童・生徒がどのような想いを抱き,どのよ うな環境の中で学校生活を送っているのかを知 り,学校現場においてどのようなことが課題と なっているのかを把握することを本時の目標と した. 3)受講生 初等教職課程の学生57 名,中等教職課程の 学生80 名であった.履修学生以外にも,興味 を持つ学生11 名が聴講した. 4)本時の展開 (1)当事者学生からの聴き取り まずは本時の実施にあたり,約半年間かけて 当事者学生4 名と高校生 1 名にインタビューを 行った.小・中・高校生活で経験したことや教 師を目指す学生たちへ伝えたいこと,周囲の人 への願いなどを「学生の声」として紹介した. 紹介する際には,本人と確認をしながら,より 分かりやすく伝えるにはどのような言葉を用い た方がいいのかを共に検討した. (2)本時の目的 本時の目的を伝えた.前述した文部科学省の 調査や沖縄県内の現状,現職教員への調査結果 を示し,この分野に関する理解と対応は急務で あることを強調した.そして,この分野に関し て他の講義等で習ったことがあるか否かを尋ね た.「ジェンダー学」を履修した(している)学 生が十数名いた. (3)多様な性の知識 性染色体,外性器・内性器の状態や性ステロ イドホルモンのレベルなどから決定される「生 物学的性」と,自分自身の性別をどう認識して いるか,その確信の状態がどのようなものであ るかという「性自認」,恋愛や性愛の対象となる 性別である「性的指向」から成るセクシュアリ ティの3 要素について解説をした.その後,自 分のセクシュアリティについて自分自身の内で 考える時間を取った. 続いて,レズビアン,ゲイ,バイセクシャル, トランスジェンダーについて,セクシュアリテ ィの3 要素を基に説明した.さらに,性分化疾 患(出生時のからだの性別が男女いずれかには っきり区別できない状態),X ジェンダー(性自 認を男性・女性のいずれかとは認識していない 状態),パンセクシュアル(すべてのセクシュア リティの人が恋愛や性愛の対象となる),アセク シャル(いかなる他者も恋愛や性愛の対象とな らない),ヘテロセクシュアル(性自認が女性の 場合に男性が,性自認が男性の場合に女性が恋 愛や性愛の対象となる),クエスチョニング(自 分自身のセクシュアリティを決められない・分 からない,またはあえて決めていない)につい ても触れた.「LGBT」という造語がメディア等 でも用いられるようになっているため,4 つの セクシュアリティについては“聞いたことがあ る”受講生も多かったが,その他のセクシュア リティについては“初めて聞いた”受講生が多 かった.ここで強調したのは,おそらく受講生 の多数派が属するヘテロセクシュアルも,多様 なセクシュアリティの一つにすぎないというこ とである.性自認が女性の場合に男性を好きに なり,性自認が男性の場合に女性を好きになる ということは当たり前ではなく,単にそのカテ ゴリーに含まれる人数が多いということで,他 のセクシュアリティを持つ人々が「セクシュア ル・マイノリティ」と呼ばれているのだという ことを伝えた.その上で,性的適合手術の実際 について説明し,手術を望む人と望まない人が いることや,外見や言動のみで性自認を推測す るのは困難であることを,カミングアウトして いる有名人の自伝を用いて説明した. (4)性別違和のある子どもたちの心理 まずは学校での性教育に関する研究を紹介し た.石川・上甲ら(2007)によると,性教育に 関する年間指導計画を作成しているのは,小学 校で68.2%,中学校で 51.8%であるが,高等 学校と特別支援学校においては 0%であった. 男性同性愛者を対象にしたインターネット調査 の結果によると,学校で同性愛について習った ことがあるかに対して78.5%が“いっさい習っ ていない”と回答し,“同性愛について否定的な 情報”への回答は10.7%,“同性愛は異常なも のだと教えられた”への回答は 3.9%であった (REACH Online,2005). 続いて,9 割以上が中学生までに性別違和を 自覚していること,特にFtM(出生時の身体の 性が女性で性自認が男性の人)では,小学校入 学までに約7 割が性別違和を感じていることを 示した.これは,本邦において,もっとも多く の性別違和の症例を診ている岡山大学病院ジェ ンダークリニックに通う 1,167 名の当事者に よる回答結果である(中塚・安達ら,2006). そして,「性別違和について教えてほしかった時 期はいつか」に関しては,FtM では平均 12.2 歳,MtF(出生時の身体の性が男性で性自認が 女性の人)では平均10.7 歳であった.これら の結果から,小学生,中学生の時期にセクシュ アリティの基礎知識を教える必要があるという ことを強調した. さらに,第11 回目の講義で扱った学校現場 における自殺予防対策に絡め,「自殺未遂率・自 傷行為」について触れた.性同一性障害者1,138 名に対して行った自殺関連事象の調査では,自 殺念慮は62.0%,自殺企図は 10.8%,自傷行 為は16.1%,過量服薬は 7.9%にその経験があ り,思春期に経験した者がピークを迎えていた (針間・石丸,2010).思春期にピークを迎え る理由としては,「典型的な性役割とは異なる行 動をとることや同性への性指向をもつことによ るいじめ,社会や家族からの孤立感,思春期に 日々変化していく身体への違和,失恋により性 同一性障害であるという現実をつきつけられる こと,世間の抱く性同一性障害者に対する偏見 や誤ったイメージを自らも持つ『内在化された トランスフォビア』,将来への絶望感などがある」 とされる(針間,2014).2012 年 8 月に内閣 府から出された「自殺総合対策大綱」では,「自 殺念慮の割合等が高いことが指摘されている性 的マイノリティについて,無理解や偏見がその 背景にある社会的要因の一つであると捉えて, 教職員の理解促進の取り組みを推進する.(中略) 特に思春期の子どもたちへの対応は急務である」 と記されていることを示し,学校現場における 「多様な性」について,教職員が関心を持って 学ぶことと共に,子どもたちにも教育しなけれ ばならないことを強調した. (5)当事者の子どもたちの学校生活 NHK『ハートネット TV』で,2013 年 6 月 4 日に放送された「多様な“性”と生きているシ リーズ」の「第2 回:セクシュアル・マイノリ ティの子どもたち―成長を支える」を30 分間 観てもらった.映像では,20 名に 1 名の「セ クシャル・マイノリティ」の方々は,特に第二 次性徴を迎える思春期に心身的な苦痛を感じて いることが紹介され,2 名の当事者が抱える想 いを語っていた.高校を卒業した19 歳の事例 からは性について話せる教員が居ることの大切 さ,中学2 年生の事例からは学校側の柔軟な対 応が子どもたちの生きづらさを軽減することが 伝えられた.そして,性同一性障害と同性愛の 両方を正しく理解すること,性的指向などに関 して肯定的なメッセージを伝えること,いじ め・不登校などの背景にセクシュアリティの問 題も意識すること,各授業での取り上げ方とし て,保健,社会科や英語の具体例が挙げられた. (6)学校生活の中でやるべきこと 映像を受けて,学校生活において性別で分か れていることは何かを考えてもらった.薬師・ 古堂(2014)を参考に,生物学的性で「分けら れている場所」としては,トイレや更衣室,靴 箱,風呂,健康診断,修学旅行の部屋,寮など.
教職科目「教育相談の理論と方法」における「多様な性」に関する授業実践 6 -教職実践研究, 2015, 3, pp. 1-8 教職実践研究, 2015, 3, pp.1-8 6 「使うものに区別があるもの」としては,制服, 服装,体育着,ランドセルの色,通学帽の形な ど.「参加できるものが区別されていること」と しては,体育の選択科目,クラブ活動・部活, 運動会・体育祭・球技大会の種目や演目などが ある.これらの中から,トイレ,健康診断,宿 泊行事の3 点について全体で考える時間を取っ た.特に,新入生オリエンテーション等で宿泊 行事を行う際,どのような点に留意すれば,み んなが参加しやすい行事になるのか,アイディ アを挙げてもらった. そして,本時を受講した中で,気づいたこと は何か.特に,自分や周囲の学生の言動の中で, 気づかぬうちに人を傷つけている可能性はない かを考えさせた.その上,性別違和の当事者へ の 情 報 発 信 に 取 り 組 ん で い る 民 間 団 体 Rainbow Soup の調査結果を紹介した.10 代 から50 代までの当事者 126 名に対して,多様 な性の人たちがどんな学校生活を送っている (きた)のかを問い,「半数以上が自分の性によ ってつらい思いを味わい,6 割は相談相手がい なかった」と回答していた.また,学校生活で つらい思いをさせられた相手を複数回答で尋ね たところ,同級生57 名,教職員 26 名,家族 22 名,先輩 20 名,後輩 14 名,部活顧問 5 名, その他15 名と示されていた(西日本新聞電子 版2014 年 2 月 8 日付)ことを紹介した. さらに,中学校の保健体育の授業の際に,教 員から「同性愛者は気持ち悪いよね」という発 言があったという学生の声を紹介した上で,普 段の何気ない友人との会話を振り返ってもらっ た.知らず知らずのうちにこういった発言をし てしまっていないかを尋ねた.そのことについ てはその場で共有することはせずに,感想シー トで伝えてもらった. 最後のまとめは,「多様な性」についての正し い知識を持つということと,自分の価値観だけ で性に関する発言をしないという2 点とした. 5.受講生の感想 本時を通して,受講生がどのような感想を持 ったのかを把握するため,ミニレポートの記述 の一部を抜粋する. 1)性に関する知識の獲得と多様性の理解 本時で扱った性に関する内容について,もっ とも多かった感想は,「こんなに詳しく習ったの は初めてで驚いた」というものであった. 《1-1》今まで知識として知っていたのは,レズビアン, ゲイ,バイセクシャルだけだったが,トランスジ ェンダーなど他にも様々な性があるのだと知っ た. 《1-2》最初に自分が思っていたよりも性は複雑だと いうことが分かった.今日の講義はとても難し いけど,今の社会の中ではとても大切で,知っ ておかなければならないことだらけだった. 《1-3》今まで,同性愛や性に関する問題というのは 高校生以上の年代にしか起こらない問題だと 勝手に思い込んでいたので,この問題は,小 学校の子どもたちにも起こり得るということを知 ることができて,とてもよかった. また,性の多様性に関しては,以下のような 意見が見られた. 《1-4》これまで性について詳しく学ぶ機会はなかっ た.どこか隠されているというか,恐らく先生た ちもよく分かっていない部分があったのだと思う. しかし,発達障がいに関してもそうだが,いろん な意味での多様性が提言されるようになって いる今,学校現場でも変に隠さず,きちんとし た知識を教えるべきだと思った. 《1-5》性別違和を持っている子は,自分自身の内 には違和感がある.しかし,それを周囲に伝え ることは難しい.だけど,何らかのヒントを伝えて いると思う.周囲の人は気づいてあげることが 大事だと思う.気づいても,知らないで関わると 逆に傷つけてしまうことがあるから,しっかりとし た知識を持って,周囲が認めていけるようにし ていった方がいいなと思った. 2)性別違和を抱く子どもたちの現状の理解 本時では,学校生活の現状を視聴覚教材と当 事者の声を通して紹介した.「こんな想いを当事 者が抱えているとは知らなかった」や,「この分 野に関する課題解決は本当に急務だと感じた」 というものが多かった. 《2-1》時代の変化はあると思うけど,映像に登場し ていた当事者は,学校と担当医師も交えてし っかりと話し合って体制づくりをしていて素晴ら
「使うものに区別があるもの」としては,制服, 服装,体育着,ランドセルの色,通学帽の形な ど.「参加できるものが区別されていること」と しては,体育の選択科目,クラブ活動・部活, 運動会・体育祭・球技大会の種目や演目などが ある.これらの中から,トイレ,健康診断,宿 泊行事の3 点について全体で考える時間を取っ た.特に,新入生オリエンテーション等で宿泊 行事を行う際,どのような点に留意すれば,み んなが参加しやすい行事になるのか,アイディ アを挙げてもらった. そして,本時を受講した中で,気づいたこと は何か.特に,自分や周囲の学生の言動の中で, 気づかぬうちに人を傷つけている可能性はない かを考えさせた.その上,性別違和の当事者へ の 情 報 発 信 に 取 り 組 ん で い る 民 間 団 体 Rainbow Soup の調査結果を紹介した.10 代 から50 代までの当事者 126 名に対して,多様 な性の人たちがどんな学校生活を送っている (きた)のかを問い,「半数以上が自分の性によ ってつらい思いを味わい,6 割は相談相手がい なかった」と回答していた.また,学校生活で つらい思いをさせられた相手を複数回答で尋ね たところ,同級生57 名,教職員 26 名,家族 22 名,先輩 20 名,後輩 14 名,部活顧問 5 名, その他15 名と示されていた(西日本新聞電子 版2014 年 2 月 8 日付)ことを紹介した. さらに,中学校の保健体育の授業の際に,教 員から「同性愛者は気持ち悪いよね」という発 言があったという学生の声を紹介した上で,普 段の何気ない友人との会話を振り返ってもらっ た.知らず知らずのうちにこういった発言をし てしまっていないかを尋ねた.そのことについ てはその場で共有することはせずに,感想シー トで伝えてもらった. 最後のまとめは,「多様な性」についての正し い知識を持つということと,自分の価値観だけ で性に関する発言をしないという2 点とした. 5.受講生の感想 本時を通して,受講生がどのような感想を持 ったのかを把握するため,ミニレポートの記述 の一部を抜粋する. 1)性に関する知識の獲得と多様性の理解 本時で扱った性に関する内容について,もっ とも多かった感想は,「こんなに詳しく習ったの は初めてで驚いた」というものであった. 《1-1》今まで知識として知っていたのは,レズビアン, ゲイ,バイセクシャルだけだったが,トランスジ ェンダーなど他にも様々な性があるのだと知っ た. 《1-2》最初に自分が思っていたよりも性は複雑だと いうことが分かった.今日の講義はとても難し いけど,今の社会の中ではとても大切で,知っ ておかなければならないことだらけだった. 《1-3》今まで,同性愛や性に関する問題というのは 高校生以上の年代にしか起こらない問題だと 勝手に思い込んでいたので,この問題は,小 学校の子どもたちにも起こり得るということを知 ることができて,とてもよかった. また,性の多様性に関しては,以下のような 意見が見られた. 《1-4》これまで性について詳しく学ぶ機会はなかっ た.どこか隠されているというか,恐らく先生た ちもよく分かっていない部分があったのだと思う. しかし,発達障がいに関してもそうだが,いろん な意味での多様性が提言されるようになって いる今,学校現場でも変に隠さず,きちんとし た知識を教えるべきだと思った. 《1-5》性別違和を持っている子は,自分自身の内 には違和感がある.しかし,それを周囲に伝え ることは難しい.だけど,何らかのヒントを伝えて いると思う.周囲の人は気づいてあげることが 大事だと思う.気づいても,知らないで関わると 逆に傷つけてしまうことがあるから,しっかりとし た知識を持って,周囲が認めていけるようにし ていった方がいいなと思った. 2)性別違和を抱く子どもたちの現状の理解 本時では,学校生活の現状を視聴覚教材と当 事者の声を通して紹介した.「こんな想いを当事 者が抱えているとは知らなかった」や,「この分 野に関する課題解決は本当に急務だと感じた」 というものが多かった. 《2-1》時代の変化はあると思うけど,映像に登場し ていた当事者は,学校と担当医師も交えてし っかりと話し合って体制づくりをしていて素晴ら しいなと思った.こういった学校の対応が当事 者を安心させるきっかけ作りになるのかなと感 じた.映像の中にも出ていた「男らしく」「女らしく」 ではなく「自分らしく」という言葉は,この性の問 題を解決していく近道なのかなと思った. 《2-2》私は男で生まれて心も男で女性を好きにな る . 性 に つ い て い く ら 勉 強 し て も , 実 際 に LGBT で悩んでいる方の気持ち,苦しみがど れほどなのか分からない.知りたくないというこ とではなくて,やっぱり本人でないと深い心にあ るものが分からないと思う.友だちにもそういう 人がいるけど,なかなか本音は語ってくれない. なので,今日の授業の中で当事者の学生たち が話してくれたことは,リアリティがあって心から 納得することができた. また,大学生活の中で,気になることとして は次のような記述があった. 《2-3》持ち物や恰好に対して「男っぽい」「女っぽい」 と批判されたことがある.「お前たちゲイかよ」と いう発言を聞いたことがある.そういった発言 は絶対にしてはいけないと思った. 《2-4》軽はずみな発言も,言われた人を傷つけ, 不登校や自殺などの問題を引き起こすきっか けになるので,簡単に「ゲイ」や「レズ」などと言 ってはいけないということを改めて痛感した.そ れは小・中・高の先生だけではなく,大学の先 生たちにも同じことが言えると思う. そして,身近な人が性別違和の診断を受けて いたり,同性愛の友人がいたりという様々なエ ピソードが多数寄せられた.感想の詳細につい ては本稿では掲載しないが,「身近な人もそうな ので,偏見はない」という意見と,「正直,戸惑 いがある」という意見がほぼ同数見られた. 3)教師を目指す学生としての課題 教職課程を履修する学生の中には,実際に教 育現場で活躍する学生も出てくるだろう.今自 分たちが考え行動すべきことは何かを授業を通 して問いかけた.様々な意見がある中で,「子ど もたちとの信頼関係」,「話ができる雰囲気づく り」,「学校全体の支援体制」,「教師自身の正し い理解」がキーワードとして多く挙がっていた. 《3-1》今,テレビに出ている人だって,カミングアウト するのにはとても勇気が必要だったと思うし, むしろ言えない人の方がとてもたくさんいると思 う.そんな中で,教師を目指す私たちが,子ど もたちにどのような態度をとるかで,その子の 気持ちが大きく変化することがわかった.自分 の意見だけで勝手に決めつけたりしてはいけな いし,その子が言い出せるような空間,暮らし やすいような環境を作ることがとても大切だと 思った. 《3-2》今,学校現場で問題となっているのは,いじ めや不登校などの問題だと思っていた.しかし, そのような問題の背景に今日習った性の問題 がある場合もある.教師にできることは何だろう. 違和感を持つ子がその気持ちを吐き出せるか どうかで,その子の悩みの深刻さは決まると思 う.教師がどれだけ「自分らしさ」を出せる環境 を作っていくかが重要.まずは私自身も自分ら しさを出せるように,子どもたちの前だからと言 ってカッコつけたりすることがないように生きて みたいと思った. 《3-3》正直,今日の講義を受けるまでは他人事だ と思っていたが,保健体育の授業でこのテーマ を扱わないといけないことを考えると不安にな った.このことを中学生,高校生にどのように教 えるかを教材研究しなければいけないと思った. 特に子どもたちにとっては興味本位で捉えられ がちな性のことを,「教える」という視点で真剣 に考えていかなければならないと思った. 6.まとめと今後の課題 筆者にとって,学校現場における「多様な性」 の理解と対応を主題とした授業実践は,初めて の試みであった.学校現場における本格的な取 組みが必要とされる中で,何をどのように伝え るべきなのか,未だはっきりとした指針は示さ れてはない.今回の実践は,受講生の感想をも とに評価すると,ある程度の手応えを感じた. しかし,1 コマ(90 分)の授業としては内容を 詰め過ぎた感がある.次年度は2 コマ(2 週に わたる実施)にして,多様性の視点を他分野と も絡めながら授業展開していきたいと考えてい る.また,今回はグループ・ディスカッション
教職科目「教育相談の理論と方法」における「多様な性」に関する授業実践 8 -教職実践研究, 2015, 3, pp. 1-8 教職実践研究, 2015, 3, pp.1-8 8 等のアクティブ・ラーニングの時間はあえて設 けなかった.未だカミングアウトには至らず, 現実的に悶々と違和を抱えている受講生への配 慮のためであったが,授業形態も含めて今後検 討する必要がある. まずは受講生のミニレポートを詳細に分析す ることから始めたい.本稿では一部の紹介に止 めたが,レポートの中には,これまでの教育や 生活の中で育まれてきた,現代の若者の性への 価値観が如実に記されていた.また,受講生の 約4 割が,身近に性別違和あるいは同性愛者が いると記していた.捉え方が多様であること自 体がこの主題の本質であるが,様々な価値観を 持った人間が共生できる社会を創っていく担い 手に,受講生一人ひとりがなってくれたらとい う願いもある.「生きづらさ」を抱いている当事 者自身からの告白もあったが,学生生活が送り やすくなるような環境作りにも取り組む必要も あると痛感した.授業内容の質の向上とともに, 啓蒙活動も必要なのかもしれない. また今後,小学校・中学校・高等学校の現場 において,子どもたちに何をどのように学習さ せるかについては,教材の開発も含め,学際的 に取り組むべき課題であろう.当然ながら,発 達段階に即した学習内容を示す必要もある.こ の分野の研究は2010 年以降から徐々に増え始 め,海外での実践例も含め学際的な報告がなさ れている(稲葉,2010;高石・加藤ほか,2012; 渡辺,2012;渡辺,2013 など).これらの実 践を参考に,地域性も加味しながら,現場で活 用できる教材を研究していきたい. 【付 記】 今回の授業実践を創る過程において,「私たち の想いを伝えてほしい」と協力を惜しまず,様々 なことを教えてくれたすべての人びとに対し, 心より感謝申し上げます.ここに記して,その 勇気に敬意を表します. 【引用・参考文献】 針間克己(2014)思春期の性同一性障害の学校 現場における対応 針間克己・平田俊明(編 著) セクシュアリティ・マイノリティへの 心理的支援―同性愛,性同一性障害を理解す る― 岩崎学術出版社,pp.192-198. 針間克己・石丸径一郎(2010)性同一性障害と 自殺 精神科治療学,25(2),245-251. 稲葉昭子(2010)学校現場におけるセクシュア ル・マイノリティ 創価大学大学院紀要,32, 259-280. 石川裕子・上甲廣文・光宗勝次・篠﨑美幸・山 上博彦・山本千鶴子・渡部美知子(2007)学 校における性教育の指導に関する調査・研究 ―現状と課題― 愛媛県教育委員会 高石浩一・加藤文子・清原梨沙・原井陽子・島 井美里・岡本篤子・衣川菜穂子・久米健太・ 平良愛・寺尾奏宵・吉川敦子(2012)カルフ ォルニアにおけるLGBTQ 教育,キャリア教 育の実態 京都文教大学臨床心理学部研究報 告,5,103-112. 渡辺大輔(2012)高校生に対する「多様な性」 の授業の成果と課題 日本教育学会研究発表 要項,71,236-237. 渡辺大輔(2013)中学校における「多様な性」 の授業での「学び」とは 論叢クィア,6, 8-24. 薬師実芳・古堂達也(2014)LGBT ってなん だろう?―からだの性・こころの性・好きに なる性― 合同出版