「部落解放」婦人運動に関する考察
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(2) 人権問題研究資料. 第18号. すべ を知 らず 、 自分 た ちが 貧 し くだ ら しな いか らだ と、 部 落 民 と して 、 女 と して生 ま れ た限 り、 当 然 の こ とだ と、 宿 命 の よ う にあ き らあ た り、 差 別 され て も じっ とが まん して お れ ば差 別 は 自然 に な くな るの だ とい う 「寝 た 子 を 起 こす な 」 の 考 え に と らわれ て い た もの が 大 多 数 だ っ た。 と ころが 、 全 婦 へ の 参 加 を 通 じて 、 身 近 な 問題 を 仲 間 た ち と共 有 す る喜 び と、 そ の仲 間 た ち と差 別 撤 廃 へ の 具 体 的 な要 求 の も とに学 習 し、 行 動 す る こ とへ の 自信 が 、 部 落 女 性 た ち に新 しい力 を 与 え た 。 全 婦 は 、 回 を重 ね る にっ れ て 、 〔 涙 の 会 合 か ら、 行動への協議へ〕 〔 悲 しみ の集 会 、 受 け身 の集 会 か ら、 闘 う集 会 へ 〕、 そ して、 部 落 女 性 た ち は 〔物 を 考 え 、 発 言 し、 行動 で き る婦 人〕 へ と成長 して い く。 部 落 以 外 の女 性 た ち も、 戦 後 ま もな く立 ち上 が って い た。 「戦 前 、 戦 後 を 通 じて か っ て 例 を み な い 、 女性 の 大衆 組 織 の誕 生 で あ り、 既 成 の婦 人運 動 とは異 な った新 しい立 場 を う ち出 した」u母 親 運 動 は、1955年 性 を 含 む 約2000人. に第1回 母 親 大 会 を開 催 し、 部 落 女. が 参 加 した。. 「語 る も涙 、 き く も涙 、 泣 き親 大 会 」 と言 わ れ て い た母 親 大 会 は、 「1人 が100 歩 進 む よ り、100人 が1歩 進 む 運 動 に」 「母親 が 変 わ れ ば社 会 が変 わ る」 「子 供 を守 る こ とが ア カ な らば、 わ た した ち母 親 はみ ん な ア カ に な り ま し ょ う」面 とい わ れ る 大 会 へ と発 展 して い った。 そ の 発展 は、 「誰 に もわ か る言葉 で、 日常 の 要求 を う た っ た か らで あ り、 ま た"母 親"の. 名 にお いて な さ れ た運 動 だ か ら♪ だ った。 この 時. 代 に女 性 た ち を立 ち上 が らせ て き た もの は、 「子 ど も」 だ っ た。 わ が子 の こ と は政 治 問題 へ とっ な が って い った。 1952年 に は、 日教 組 第1回 婦 人 教 員 研 究 集 会 が 、1956年. に は、 総 評 婦 人 部 主 催. で 、 第1回 働 く婦 人 の 中 央 集 会 も開 催 され て い る。1950年 代 後 半 に は、 婦 人 運 動 が 、母 親 だ け で な く、 主 婦 や働 く女 性 な ど幅 広 い階 層 の女 性 へ と広 ま って い った。 1962年 に は、 日本 婦 人 会 議 や新 日本 婦 人 の 会 が 創 立 さ れ 、1960年 代 の お わ りか ら 70年 代 にか けて 、 「生 活 と地 域 の 問 題 、 と くに子 ど もの生 活 環 境 や教 育 の 問題 に か か わ る分 野 で、 女 た ち は お ど ろ くほ ど の組 織 力 と指 導 力 を発 揮 して み せ た」v。 一5Q_.
(3) 「 部落解放」婦人運動に関する考察 こ う した 流 れ を受 けて 、 第1回 か ら1975年 の 第20回. 全 婦 が 開 催 さ れ た 。 本 論 文 は、1956年. の第1回. まで に開 催 さ れ た全 婦 の歩 み を概 観 しな が ら、部 落 差 別 と女. 性 差 別 の二 重 差 別 、 あ る い は、 階 級 差 別 を も含 め た三 重 苦 を被 る部 落 女性 た ちの具 体 的 な訴 え を 中心 に、 部 落 女 性 が 部 落 解 放 運 動 に もた ら した影 響 を 考 察 して み る試 論 で あ る。. 2.「. 部 落 解 放 」 婦 人 運 動 と婦 人 解 放 運 動. (ア)部 落 女 性 に と って の部 落 差 別 と女 性 差 別 1950年 代 後 半 、 部 落 女 性 た ち が 、 部 落 民 と して 、 女 性 と して 闘 うべ き相 手 は、 〔 封 建 的 な家 父 長 制 の 思 想 や婦 人 を あ な ど る思 想 の 残 り もの とい うよ う な、 観 念 的 な もの〕 で はな く、 〔 独 占資 本 主 義 の 人 民 を搾 取 し支 配 す る仕 組 み そ の もの〕 で あ っ た。 す な わ ち、 経 済 的 に は、 「低 賃 金 の しず め石 」 論 や 、 政 治 的 に は、 「分 裂 支配 す る手 段 」 とい う言 葉 が 、 全 婦 に 「助 言 者 」 と して 出席 して い る、 部 落解 放 同盟 中央 本 部 役 員 の男 性 た ちか ら、 繰 り返 さ れ て い る。 1961年 の部 落 解 放 同 盟 第16回. 全 国 大 会 で、 〔 部 落 問 題 の本 質 と は、 部 落 民 が市. 民 的権 利 一 就 職 の機 会 均 等 、 教 育 の機 会 均 等 、 居 住 の 自由等 の権 利 一 の 中 で も特 に、 就 職 の機 会 均 等 の権 利 が 保 障 さ れ ず、 主 要 な生 産 関係 か ら しめ 出 され て い る と ころ に、 真 の原 因 が あ る。 そ の こ とは婦 人 の社 会 的立 場 が差 別 的状 態 に お か れ て い る と い う こ とで あ る〕 とい う解 放 理 論 が定 式 化 され る と、 部 落女 性 た ち は、 丸 暗記 、 丸 写 しの よ うに、 同 じ文 章 を繰 り返 す よ うに な り、 こ う した理 論 の枠 の 中 で、 自 らの 体験 や活 動 に つ い て語 る よ うに な って い った。. (イ)一 般 の婦 人 解 放 運 動 と 「部 落 解 放 」 婦 人 運 動 の違 い この 時期 と相 前 後 して、. °r一 の婦 人 解 放 運 動 と 「部 落 解放 」 婦 人運 動 の 違 い が 強. 調 され るよ うに な る。 「一 般 の婦 人 問題 」 は、 嫁 と姑 の 問題 や、 家 庭 に お け る嫁 の 位 置保 障 、学 校 や家 一51一.
(4) 人権問題研究資料. 第18号. 庭 に お け る 「男 女 の」 平 等 が 解 決 す れ ば そ れ で い い の だ が 、 部 落 の 場 合 は、 〔 一家 全 体 が 、 部 落 民 で あ る と い う こ とで 男 も女 も子 供 も大 人 も社 会 全 体 か ら差 別 され 、 圧 迫 され て い る ので あ るか ら〕、 ま ず、 部 落 解 放 が行 わ れ な け れ ば、 〔 わ た した ちの 家 庭 内 で 、 あ る い は部 落 内 だ けで 、 男 女 同 権 が い く ら確 立 して も、 そ れ は決 して 部 落 の 婦 人 が 解 放 され た こ と に は な らな い〕 の で あ る。 ま た、 労 働 上 の 問 題 にお い て は、一 般 の 婦 人 の 場 合 は、 原 則 的 に は、 同 一労 働 に対 す る同一 賃 金 を確 立 す れ ば解 決 が っ くが 、 部 落 女性 に と って の問 題 は、 〔 一 家 の中 心 で あ り、 お や じで あ る男 が 、 差 別 の た め に…最 初 か ら近 代 産 業 よ り しめ 出 され て い るた め に や む を得 ず女 で あ り な が ら重 労 働 にっ か な けれ ば な らな い〕 こ とで あ るか ら、 働 く部 落 女 性 の問 題 解 決 の た め に は、 部 落 男性 の仕 事 の 問題 が優 先 して解 決 され な けれ ば な らな い、 と言 わ れ て い る。 男女 間 には 〔 生 理 上 の 違 い〕 や、 〔 長 い間 の歴 史 的 にお か れ て い た違 い 〕 が あ る た め、 〔 婦 人 が 婦 人 と して 独 自 に考 え 、 運 動 しな けれ ば な らな い 問 題 が あ る〕。 しか し、 部 落 女 性 に と って は、 「部 落 解 放 」 が あ って は じめ て 、 「婦 人 の解 放 」 が あ る。 〔 部 落 差 別 を基 底 と して の婦 人 問 題 の 学 習 を して い るが 、 や は り婦 人 解 放 が 前 面 に 出 て い る と反 省 し、 恥 ず か しい思 い を して い る。 目標 は あ くまで も、 部 落 差 別 を な くす 闘 い を して い く〕 との発 言 も出 され て い る。. (ウ)部 落 解 放 の ため のr婦 人 部 」 運 動 一 般 の女 性 に よ る全 婦 へ の 参 加 が 増 え て き た た め、 第10回. 全 婦(1965年)で. は、. 〔"部落 解 放"婦 人 集 会 で は な く、 同 盟 が 主 催 す る一 般 民 主 団 体 の 婦 人 集 会 に転 化 し て しま った〕 と の 〔 反 省 〕 を 受 けて 、 全 婦 の性 格 と して 、 〔同 盟 本 部 が 責 任 を も っ て 主 催 す る〕 こ と、 〔 綱 領 と運 動 方 針 の観 点 にた って 、 部 落 の婦 人 を 中 心 に、 部 落 問 題 に対 す る 自覚 を 高 め るた め の 学 習 と交 流 を 主 な 目的 とす る、部 落 解 放 の 目 的 に か な った か た ち の 集 会 を確 立 す る〕 こ とが 決 定 され た。 そ して、 部 落 解 放 同 盟 の 〔当面 の一 般 活 動 方 針 を身 に っ け て、 支 部 の居 住 活 動 の中 で 〕、 そ の方 針 を実 践 して 一52一.
(5) 「 部落解放」婦人運動に関する考察 い くた め に、 部 落 解 放 を一 番 の 目的 と して 闘 うた め の婦 人 対 策 部 が各 支 部 に作 られ て い くよ うに な る。 こ う した動 きは 、 全 国 水 平 社 時 代 に も見 られ る。1927年 の 第6回 全 国 水 平 社 大 会 に お い て 、 〔婦 人 独 自 の別 個 の 組 織 を もっ な らば 、 それ は単 に婦 人 が 男 子 に対 す る反 抗 運 動 に お ち い りやす く、 小 ブル ジ ョア婦 人 運 動 と変 わ りな い もの に な るで あ ろ う。 そ う した組 織 は ま ち が って い る〕 と婦 人 水 平 社 に っ い て そ の活 動 が 総 括 され 、 〔 婦 人 の 解 放 は 無産 階 級 の 解 放 な しに はあ りえ な い 〕 た め 、 〔 婦 人 水 平 社 とい う別 個 な組 織 で な しに、 本 部 の専 門 部 の な か に婦 人 部 を設 け る こ とが よ い とい う具 体 的 な 方 針 を 示 し〕、 〔 部 落 解放 と婦 人 解 放 を統 一 して た た か う組 織 方針 が み ご とに示 され〕 た。. (エ)部 落 解 放 運 動 の な か の 性 別 役 割 分 担 ①. 部 落 女 性 に求 め られ た 役 割 は部 落 男 性 に こそ 求 め られ る べ き役 割. 部 落 解 放 同 盟 の 方 針 を 実 践 して い くた め に、 女 性 た ち に は どの よ うな 役 割 が 求 あ られ たの か 。 第 一 の役 割 は、 〔 生 活 の 場 で あ る部 落 で 、 そ の生 活 に密 着 した 、 具 体 的 日常 活 動 を 通 して 、 部 落 問 題 の 認 識 を 深 あ 、 正 しい理 論 と実 践 を 身 にっ け、 婦 人 の統 一 と団 結 を 勝 ち取 る こ と〕 で あ る。 部 落 と い う地 域 そ の もの に 日本 社 会 の 諸 矛 盾 が 集 中 され て い る。 さ ら に、 そ の地 域 で 生 活 を 担 って い る女 性 た ち が そ の 矛 盾 の しわ 寄 せ を 受 けて い る。 だ か ら、 そ の 部 落 女 性 こそ が、 「地 域 」 で 、 「日常 生 活 」 の 中 で、 〔 一 番 具 体 的 で 、 切 実 な、 あ ら ゆ る生 活 上 の 要 求 を 持 って 〕、 大 衆 運 動 を起 こす よ う求 め られ た。 第 二 の 役 割 は、 〔自分 の 置 か れ て い る現 実 、 差 別 の事 実 、 自分 の 生 きて き た姿 を 明 らか に 〕 し、 共 同 闘 争 の 中 で 、 自分 が 部 落民 で あ る とい う被 差 別 の立 場 に置 か れ て い る こ とを 自覚 し、 自己 変 革 に励 む こ とで あ る。 第 三 の 役 割 は、部 落女 性 の 家庭 に お け る解 放 運 動 で あ る。 部 落女 性 自身 の 自 己変 一53一.
(6) 人権問題研究資料. 第18号. 革 に よ って 、 子 ど もを 変 革 し、 夫 を 変 革 す る とい う役 割 で あ る。 〔 夫 は解 放 同 盟 員 、 年 寄 りは老 人 部 、 婦 人 は婦 人 部 、 青 年 は青 年 部 、 子 供 は部 落 子 ど も会 へ と解 放 一 家 をっ く り、 そ の力 で 部 落 を 変 え て 統一 戦 線 を 形 成 す る こ と〕 とい うよ うに、 ま さに 、 「家 族 ぐ るみ」 「部 落 ぐるみ 」 の 活 動 が 、 女性 の 肩 に ず っ しり と背 負 わ され て い た。 第 四 の役 割 は、 社 会 変 革 の先 頭 に立 っ こ とで あ る。 〔 部 落 差 別 の本 質 と、 部 落 解 放 運 動 の 歴 史 と現 状 を 理 解 し、 婦 人 の要 求 を結 集 して、 平 和 と差 別 と貧 乏 か らの解 放 の共 同行 動 を 発 展 させ る。 と くに、 『同対 審 』 答 申完 全 実 施 要 求 運 動 の 闘 い の先 頭 に婦 人 が た ち、 組織 の 拡大 強化 を 図 る こ と〕 で あ る。 しか し、 部 落 女性 に求 め られ て い た以 上 の 四点 の役 割 は、 今 こ そ、 部 落 男 性 に求 め られ るべ き役 割 で もあ る。 と りわ け、 部 落 男 性 自身 が 自 己 の社 会 的 立 場 の 自覚 と 自己 変 革 に励 み 、 家庭 、 地 域 、 社 会 に お け る、 男 女 共 同参 画 実 現 に向 けて 、 積 極 的 にか か わ って い く こ とが求 め られ て い る。 〔さ しす せ そ(裁 縫 、 仕 事 、 炊 事 、 洗 濯 、 掃 除)の. お 母 さん か ら、 か き く け こ. (考 え る、 記 録 す る、 工 夫 す る、 研 究 す る、 行 動 す る)の お 母 さん に な ろ う とい う 呼 び か け は、 み ん な の共 感 を呼 び お こ しま した〕 と報 告 され て い る よ う に、 部 落 女 性 た ち は、 「男 性 の いな い」 家庭 や地 域 の 中 で、 内職 や失 対 な ど の仕 事 の み な らず 、 家 事 、 子 ど もの育 児 ・教 育 、 介 護 、 そ して 部 落 解 放 運 動 を 一 身 に担 って きた。 自 ら を、 家 族 を、 地 域 を向 上 させ よ う と、 学 習 に も力 を 入 れ て きた。 性 差 別 に よ って家 庭 や地 域 、 社 会 が抱 え る問 題 は、 「女 性 独 自 の」 「女 性 に しか わ か らな い」 悩 み、 苦 しみ、 悲 しみ とい うか た ち で、 「女 性 の問 題 」 と され て きた。 そ う した ドグ マ によ っ て、 女 性 の足 を踏 ん で い る男 性 個 人 の 、 あ る い は男性 中心 社 会 の 問題 を、 部 落 男 性 自身 が解 決 しよ うとす る ので な しに、 「家 庭 も地 域 も社 会 も女 性 が 先 頭 に立 っ こ と」 と女 性 の役 割 を さ らに強 化 して い っ た。 保 育 ・教 育 ・介 護 を 社 会 化 して い く視点 や取 り組 み によ って、 確 か に、 それ らが 女 性 の仕 事 保 障 に な って い る と い う側 面 はあ るが、 同 時 に、 労 働 権 と して の条 件 整 備 が 急 務 で あ る。 さ ら に、 男女 共 同参 画 の た あ の男 性 自身 の 自覚 と変 革 と実 践 、 そ 一54一.
(7) 「 部落解放」婦人運動に関する考察 の た め の条 件 整 備 が進 あ られ な けれ ば、 家 庭 で そ れ ま で女 性 に よ って担 わ れ て い た、 無 償 ・重 ・長 時 間労 働 が、 地 域 や社 会 で、 また女 性 に よ って担 わ れ る こ とに な る。 部 落 解 放 運 動 に お い て も、 男 性 を も含 め た取 り組 み に して い く必 要 が あ る。. ②. 男性 中心 の理 論 、 実 践 は女 性 中心. 部 落 女 性 の運 動 が部 落 解 放 運 動 を量 的 に も質 的 に も発 展 させ て きた と言 わ れ て い る。 しか し実 は、 「理 論 をっ くって い くの は男 性 、 それ を学 ん で 実 践 す るの は女 性 」 と、 運 動 の理 論 と実 践 とい う側 面 で の性 別 役 割 分 担 意 識 が 、 男 性 に も女 性 に も働 い て い た。 男性 助 言 者 た ち は、 部 落 女 性 に は理 論 学 習 が 必 要 だ と繰 り返 す。 女 性 は、 〔とか く感 情 に走 る傾 向〕 が あ り、 〔 情 実 、 因 縁 に ひ きづ られ て 動 く〕 か ら、 〔 女 の引 っ込 み思 案 や卑 下 心 を な く させ孤 立 的 な不 安 を克 服 さ せ る〕 た め に も、 解 放 理 論 を身 に っ け る必 要 が あ るの だ、 と。 女 性 に性 別 役 割 分 担 を押 し付 けて い る こ と を正 当 化 し よ う と した り、 女 性 の活 動 を 「補 助 的」 役 割 だ とみ な した り、 女 性 の側 に変 革 を求 あ た りす る発 言 が、 男 性 助 言 者 か ら相 次 い で 出 さ れ て い る。 「部 落 差 別 の本 質 」 「部 落 差 別 の社 会 的 存 在 意 義 」 「社 会 意 識 と して の部 落 民 に対 す る差 別 観 念 」 とい う、 い わ ゆ る 「3っ の命 題 」 に関 して 、 日常 の 部 落 女 性 た ち の 考 え 方 よ り も、 〔は るか に高 い水 準 の 運 動 の理 論 的 武 装 〕 を 行 い、 要 求 闘 争 を 質 的 に発 展 して い く必 要 が あ る こ と、 常 に 自 らの活 動 を3つ の命 題 や 部 落 解 放 同 盟 の運 動 方 針 と照 ら し合 わ せ な が ら反 省 す る必 要 が あ る こと、 部 落 女 性 を 積 極 的 に組 織 内 部 で 登 用 して い な い の は、 組 織 の問 題 だ けで は な く、 〔 婦 人 の 解 放 運 動 に 対 す る理 論 的 な 弱 さ、 水 準 の低 さ〕 の方 に さ らに問 題 が あ る のだ か ら、 部 落 女 性 自身 が そ の こ とを反 省 す べ き必 要 が あ る こ と、 な どが 「助 言 」 され て い る。 部 落女 性 自身 も こ う した 「助 言 」 を 内面 化 して い き、 自 らの 活 動 にっ いて 、 部 落 解放運動が 〔 青 年 か ら青 年 へ とひ きっが れ る とい う伝 統 〕 の 中 で、 〔 部 落 の リー ダ ー 的 活動 を 内助 的 に支 え て きた婦 人 の力 は高 く評 価 され るべ き と言 う誇 り〕 を 持 って 一55一.
(8) 人権問題研究資料. 第18号. い る、 と い う発 言 や 、 自分 た ち が理 論 的 で な い こ とを卑 下 す る発 言 が 出 さ れ て い る。 また 、 〔 理 論 的 に学 習 を して い な い婦 人 は感 情 の方 が 先 行 〕 す るか ら、 〔 婦人学習、 料 理 教 室 な どの婦 人 独 自の 活動 よ り も、 理 論 勉 強 が先 決 で あ る とい う申 し合 わせ で、 男 性 幹 部 と共 闘 して運 動 して い る〕 こ とが報 告 さ れ た り も して い る。 女 性 た ちが 身 に っ け る べ き とさ れ た 「解 放 理 論 」 とは、 男 性 た ち の手 に よ っ て生 み 出 され て きた もの だ。 「男 性 が っ くっ た」 理 論 を 、 「男 性 の い な い」 地 域 や家 庭 な どの 日常 生 活 の場 で、 「男 性 の 指 導 や 助 言 の も と」、 女 性 た ち の手 に よ っ て実 践 して い くこ とが 求 め られ て い るの で あ る。 〔 婦 人 独 自 の要 求 に基 づ い た実 践 を〕 と言 い な が ら も、部 落男 性 は、 男 性 の基 準 で っ く った理 論 を学 習 す る よ う部 落 女 性 に求 め る こ とに よ って、 部 落 女 性 た ち を、 「男 性 並 み 」 「男 性 化 」 しよ うと して き たの で は な い だ ろ うか。 部 落 女 性 た ち も、 そ の理 論 や 基 準 を 自 らの実 践 の中 で 、 問 い直 し、 部 落 男性 に っ き返 す の で は な く、 内面 化 した性 差 別 に よ って 、 む しろ積 極 的 に受 け 入 れ よ う と して きた の で は な い だ ろ うか 。 男 性 の理 論 や 言 葉 を こ う して 内 面 化 して い き、 そ れ らは、 男 性 を基 準 とす る思 考 や 行 動 と な って 社 会 化 され て い き、 男性 中 心 社 会 を温 存 し助 長 させ る仕 組 み と して 働 いて き た。. ③. 部 落 女 性 の実 践 か らみ た解 放 理 論 ・解 放 運 動 の と らえ な お し. しか し、 部 落 女 性 た ち の実 践 の中 か らこそ 、 優 れ た解 放 理 論 が 生 まれ て く るに違 い な い。 これ ま で の部 落 男 性 が 作 っ た解 放 理 論 の 基 準 を 部 落 女性 の 実践 の 中 か ら、 問 い 直 し、 再構 築 し、 豊 富化 させ て い くこ と、 そ して 、 そ の た め の 「場 」 や 「機 会 」 な ど の条 件 を運 動 は積 極 的 に保 障 して い くこ とが 必 要 だ。 そ の こ とを部 落 女 性 も強 く求 め て い る。 〔 良 識 あ る婦 人 、 ま た、 解 放 運 動 の 活 動 家 さえ も、 女性 の 地位 が 向上 しな い の は、 女 性 の意 識 の低 さ、 学 問 の な い こ と な どを よ く指 摘 して い ます が、 …歴 史 的 な女 性 に対 す る差 別 観 念 を と りのぞ き、 社 会 的 偏 見 よ り解 放 す るた め に は、 …政 治 的 な施 策 は も とよ り、 男 女 両 性 が 共 に この 問 題 を解 決 す るた あ の努 力 を しな け れ ば な りま 一56一.
(9) 「部落解放」婦人運動に関する考察 せ ん。 … 口 で男 女 平 等 を叫 び、 人 間 平 等 を叫 ん で も、 それ が 現 実 の運 動 と して 具 体 的 に現 れ て こな い以 上 、 単 な る空 論 で しか あ りませ ん 〕。 支 部 の 活 動 も女 性 が 担 って い る し、 「婦 人 が 変 わ れ ば部 落 が変 わ る」 とい うス ロ ー ガ ンの もと、 婦 人 活 動 や 婦 人 部 育 成 の 重 要 性 が 言 わ れ な が ら も、 組 織 は 〔 その配慮 を して い な い〕。 女 性 に対 す る長 い抑 圧 の歴 史 や、 〔 女 の 子 だ と い う こ とで 家 庭 内 で の教 育 の機 会 均 等 か ら〕 も外 され て きた 事 実 によ って 、 女 性 の 理 論 的 水 準 が 低 い の だ か ら、 〔 理 論 が 低 い とっ っぱ なす の で は な く〕、 〔 部 落 の婦 人 に こそ 、 中央 本 部 は 特 別 の 配 慮 を しな けれ ば な らな い。 金 や 時 間 が も っ と与 え られ な けれ ば な らな い。 そ う した積 み 重 ね を して 、 男 と同等 の教 育 の場 所 を、 そ して活 動 の場 所 を っ く るよ う、 せ め て 同盟 内部 で こ そ保 障 す べ き〕 との 中 央 本 部 に対 す る要 求 に、 〔日 ごろ苦 しい条 件 の 下 で 活動 して い る婦 人 か らは、 共 感 の拍 手 が わ き起 こ り、 会 議 は ま さ に 最 高 潮 に達 した 感〕 だ った。 こ う した部 落 女 性 か らの要 求 を、 部 落 解 放 運 動 は、 今 こそ 実 現 す べ き と きで あ る。. (オ)部 落 女 性 か ら見 た部 落 解 放 理 論 の功 罪 男性 助 言 者 は、 女 性 た ち が 、 〔 婦 人 問 題 を も っぱ ら男 対 女 の 問 題 に して し ま って 婦 人 の 本 当 の 敵 をか く して い る〕 と批 判 した。 こ こで い う 「本 当 の敵 」 と は、 〔男 女 間 の差 別 と不 平 等 を必 然 的 に作 り出 して い る現 代 の独 占資 本 主 義 の 仕 組 み 〕 の こ とで あ る。 部 落 女 性 自身 も、 女 性 が 被 る不 平 等 や 差 別 は、 〔け っ して 女 で あ る こ とに よ る も の で は 〕 な く、 階 級 社 会 に 問題 が あ る の だ か ら、 〔 本 当 に経 済 状 態 が よ くな れ ば女 の差 別 の 問題 も解 決 され る〕、 とい った性 差 別 の と らえ方 を して き た。 女 性 解 放 運 動 は、 男 性 を 敵 とす る運動 で はな い。 女性 た ちが 問題 に して きた の は、 社 会 意 識 や社 会 の仕 組 み の す み ず み に まで網 の 目の よ う に は りあ ぐ ら され て い る、 「性 差 別 」 で あ る。 と ころ が 、 これ は被 差 別 当 事 者 運 動 の一 っ の課 題 で もあ る の だ が 、 被 差 別 者 た ちが 自分 の被 差 別 の歴 史 や実 態 を認 識 し、 被 差 別 の立 場 に置 か れ て 一57.
(10) 人権 問題研究資料. 第18号. い る 自己存 在 を 自 己肯 定 し、 要 求 を組 織 化 す る た め の運 動 を正 当 化 しなが ら、 社 会 に対 して差 別 の告 発 をす る と き、 運 動 が排 他 的 に な って しま う側 面 が あ る。 女 性 差 別 に 関 して は、 直 接 的 に差 別 を す る男 性 を敵 とす る論 理 が 前 面 に押 し出 され て い る か の よ うに受 け止 あ られ る傾 向 が あ った。 部 落 女 性 た ち は、 差 別 の敵 を社 会 の仕 組 み と して と らえ よ う と して きた 部 落解 放 理 論 を実 践 し、 社 会 の仕 組 み を問 題 視 して い くこ と に よ って 、 直接 的 に男性 を敵 と す る論 理 に陥 らな い運 動 の質 を持 って い た。 しか し一 方 で、 一 っ ひ とっ の 問 題 を具 体 的 に克 服 して い くプ ロ セ ス を と らず 、 「社 会 の仕 組 み」 とい う視 点 で部 落女 性 の 運 動 論 が 展 開 さ れ て きた た め に、 部 落 女 性 自身 が 、 具 体 的 な人 間 関 係 の中 で 一 人 の 人 間 と して受 け る女 性 差 別 の 問題 や、 部 落 内 に お け る性 差 別 の 問 題 を と らえ る こ とが で きな くな って い った。 性 差 別 社 会 に お け る支 配 一 従 属 の 関 係 に 自 らが おか れ て い る こ とや、 自分 の 中 の 「内 な る敵 」 の 問 題 を あ い ま い に して き た。 そ の こ と は また 、部 落 内 に 階層 分 化 が あ る に もか か わ らず 、 部 落 差 別 と い う枠 組 み の中 で 、 部 落女 性 問 の 階層 の違 い も覆 い隠 して きた し、 さ らに、 被 害 者 で あ る と い う立 場 を 自覚 す る こ と に焦 点 が 置 か れ て きた た あ に、 部 落 女 性 も他 の マ イ ノ リテ ィ女 性 た ち に対 して は、 自 らが差 別 し抑 圧 し支 配 して い る 構 造 にい る こ と、 加 害 者 の 立 場 に い る こ とに も気 づ か な くさせ られ て き た。 部 落 男性 の側 に して み た ら、性 差別 や家 父 長 制 の構 造 の 中 で は、 部 落 男 性 も、 性 差 別 と権 力 関係 と男性 支配 の 中 で 、有 利 に生 き られ て い る立 場 に い る こと、 その 特 権 を 手放 そ う と しな い で 自 らの立 場 を守 ろ う と して い る こ と、 そ う した社 会 構 造 や 歴 史 に 自 ら も加 担 して い る こ と、 一人 の人 間 と して 「加 害 者 」 で あ る こと、 こ う し た個 人 と して の責 任 を追 及 され る こ とが な か った。. 3。 全 国 婦 人 集 会 が 果 た した 役 割 と今 後 の 課 題 20年 間 の全 婦で の部落女 性 の発言 や部落男性 の助言 か ら、次 の ような今後 の研 究や運動 の課題 を提起 したい。 一58一.
(11) 「 部落解放」婦人運動に関する考察 (ア)部 落 女 性 の 「内 な る 性 差 別 」 第 一 の課 題 は、 部 落 女 性 が 抱 え て き た 「内 な る性 差 別 」 の問 題 に、 部 落 女 性 自身 が気 づ き、 他 社 と共 有 し、 共 に克 服 して い くこ とだ 。 た とえ ば、 「 学 習 と文 化 活動 」 の分 科 会 で は、婦 人部 で行 う、 お 茶 ・お花 ・民 謡 ・ 料 理 ・生 け花 ・編 み物 ・踊 り ・習字 ・着 付 けな どの 取 り組 み にっ いて 、 賛 否 両 論 が 展 開 され て い る。 〔ざ ます 婦 人 の 活動 だ〕 な ど、 部 落女 性 間 の 階 層 分 化 や 対 立 が 垣 間 見 られ る発 言 や、 〔 お 花 を習 え ば、 品 もで き教 養 も高 くな って い く。 身 ぎれ い にす れ ば差 別 はな くな るん だ 〕 な ど、 婦 人 の人 間形 成 、人 格 、 教 養 、 人 間 関係 、 生 活 の合 理 化 や心 の 豊 か さ、 婦 人 と して の エチ ケ ッ トな ど を 高 あ る た め の 〔 花 嫁 修 業 〕 〔奥 様 修 行 〕 だ と い う融 和 主 義 的 な意 見 、 お花 を習 う こ と は一 般 の女 性 と同 じ水 準 にな るた め で あ る と い う意 見 、 これ ま で習 う機 会 や状 況 が な か った か ら、 〔 取 り戻 そ うと して い る〕 のだ と い う意 見 な どが 出 さ れ て い る。 彼 女 た ち は何 を 「取 り戻 そ う」 と した の だ ろ うか。 差 別 の結 果 、 奪 わ れ た もの を 取 り戻 そ うと い う思 い や、 差 別 を な くそ う とい う思 い は、 「一 般 の婦 人 」 を 基 準 と した あ こが れへ と っ な が って い っ た。 「取 り戻 した い」 と願 うそ の 先 に見 え た もの は、 「一 般 」 の性 差 別 社 会 の 中 で ジ ェ ンダ ー化 さ れ た 女 性 の生 き方 、 思 考 や 行 動 、 人 聞 関係 、 社 会 の仕 組 みだ った。 差 別 に よ って 閉 じ込 め られ た部 落 の 中 で、 生 まれ た と きか ら息 を吸 うよ うに 自 らの 中 に取 り入 れ て い た ジェ ン ダー と、 「一 般 」 の中 にあ る ジ ェ ン ダー を引 き受 けて い く こと に よ って 、 部 落 女 性 が 、 二 重 に 「女 性 と し て ジ ェ ン ダー化 」 され て い った。 マ イ ノ リテ ィ と して の部 落 女 性 が 、 マ ジ ョ リテ ィへ と吸 収 され て い く、 そ の鎖 を 解 き放 た な け れ ば な らな い。 さ もな けれ ば、 今 度 は、 部 落 女 性 が マ ジ ョ リテ ィと し て 、 他 の マ イ ノ リテ ィを 抑 圧 し支 配 す る か ら く りか ら抜 け 出 せ な くな って い く。 「取 り戻 そ う」 と した そ の もの さ え も疑 って い か な け れ ば な らな い の で あ る。 「内 な る性 差 別 」 か らの解 放 で あ る。 一59一.
(12) 人権問題研究資料. 第18号. 差 別 に よ って奪 わ れ て き た もの を取 り戻 そ う と した と き、 部 落 女 性 た ち は、 良 妻 賢 母 役 割 を善 とす る思 考 や 行 動 を 引 き受 けて きた 。 そ して 、 そ こ に 自分 の 居場 所 や 存 在 意 義 を 見 出 して きた 。1975年 の 第20回. 全 婦 の報 告 書 で 、 初 あ て 、 『母 は闘 わ. ん 』 の楽 譜 が 登 場 す る。 今 も、 部 落 女 性 た ち によ って 歌 わ れ て い る歌 だ。 男 性 中心 社 会 の 中 で 、 唯 一 、 男 性 に奪 わ れ た くな い、 奪 わ れ る こ との な い、 「女 性 と して の 」 特 権 で あ り、 自 らの 地 位 を保 障 して くれ る、 「妻 と して 」 「母 と して 」 「女 と して 」 の 役 割 を 積 極 的 に 引 き受 け、 そ こ に固 執 して きた面 が あ る の で は な い だ ろ うか。 部 落 男 性 が 求 め る役 割 を 自 らの 手 に握 る こ とで、 自分 た ち の上 に い る男 性 か ら認 め て も らえ る。 そ れ が 、 男性 中心 社 会 の 支配 一 従 属 の 関係 の 中 で生 き て い くた あ のす べ だ と思 った の で は な い か。 自分 の存 在 価 値 を そ こに しか見 出せ な い、 それ を正 当 化 しよ う と して きた の で は な い だ ろ うか。 す べ て は、 部 落 女 性 た ちが 生 きて い くた あ の選 択 だ った の で は な い だ ろ うか。 そ して、 そ う思 わせ 、 そ う実 行 させ て き た、 性 差 別 社 会 の巧 妙 な か ら く りが あ った。 家 族 の た め に、 昼 は働 き、 夜 は活 動 。 保 育 所 に子 ど も を預 け る と、 〔 子 ど もが か わ い そ う〕 〔 残 酷 だ 〕 と、 部 落 女 性 た ちか ら非 難 の声 が あ が る。 子 ど も との時 間 の た あ に活 動 に行 か な けれ ば、 非 難 を され る。 全 婦 と は、 苦 しか った生 き様 を涙 な が らに語 る場 か 、 解 放 理 論 を し っか り身 にっ け た闘 いの 経験 を 語 る場 か で、 部 落 女 性 た ち が分 裂 して い く。 〔部 落 の母 親 は 自分 自身 の遅 れ た思 想 を克 服 して い くべ き〕 だ と自 ら に言 い聞 か せ なが ら、 理 論 的 な話 を部 落 女 性 が す る と、 「分 か らな い」 と 批 判 の声 が あ が る。 二 重 、 三 重 の 差 別 に虐 げ られ て い る 「弱 い 婦 人 」 像 と、 「闘 う 強 い母 」 像 。個 人 か、 集 団 か。 家 族 か、 社 会 か。 闘 い の先 頭 に立 って運 動 を引 っ張 っ て い け、 と い う要 求 と、 男 性 か らの指 導 を 受 けな けれ ば な らな い とい う現 実 の は ざ ま に立 た さ れ る。 部 落 男 性 か らは 、 「人 間」 と して の権 利 保 障 の た め の 闘 い や 人 問 解 放 の た め の闘 いを 求 あ られ なが ら、 男性 か らの支 配 を受 け入 れ させ られ、 「人 間= 男 性 」 が っ くる、 「部 落 民 と して 」 「女性 と して」 の ス テ レオ タイ プ的 な基 準 に あて はあ られ 、 部 落女 性 は 自身 を一 人 の 人 間 と して実 感 す る ことが で き な くな って い く。 ・1.
(13) 「 部落解放」婦人運動に関する考察 一 般 の女 性 を 目標 と して ジ ェ ン ダ ー化 され て い く自分 と、部 落 男性 か ら求 め られ て ジ ェ ン ダー化 され て い く自分 。 一 般 の女 性 を め ざ して 「女 性 と して ジ ェ ン ダー 化」 され て い く自分 と、 「男 性 並 み 」 に な る こ とを 部 落 男 性 か ら求 め られ て 「男 性 と し て ジ ェ ン ダー化 」 さ れ て い く 自分 。 こ う した、 部 落女 性 が 内面 化 して い る、 女 性 の 「二 重 拘 束(ダ. ブル ・バ イ ン ド)」 の状 況 に気 づ き、 そ こか ら解 き放 た れ て い くた め. の、 「わ た し」 の 確 立 が必 要 な の だ 。. (イ)ド メ ス テ ィ ック ・バ イ オ レ ンス 第 二 の課 題 は、 「家 族 」 や 「愛 」 と い う美 名 の も とで 覆 い隠 さ れ て きた 、 部 落 内 の ドメ ス テ ィ ック ・バ イ オ レ ンス(DV)を. 徹 底 的 に追 究 し、 解 明 して い くこ とだ 。. 加 害 者 、 っ ま り強 者 の 立 場 に い る男 性 を か ば った り、 許 した り、 免 責 した り、 女 性 に対 す る暴 力 にっ いて 、 他 人 事 と した り、 正 当化 した り、 貧 困 や 部 落 差 別 のせ い に した り、 矯 小 化 した りす る こ と は、 絶 対 に許 さ れ な い。 それ はわ た した ちが 加 害 者 の側 に立 っ ことだ 。 守 るべ き は誰 か 。 救 うべ きは誰 か 。 被 害 者 で あ る女 性 で あ る。 「彼 女 」 を守 るた あ に、 あ りと あ らゆ る方 策 を た だ ち に始 め な けれ ば な らな い 。 部 落 女 性 に よ る、 部 落 女 性 の た め の 、 ジェ ンダ ーや 複 合 差 別 の 視 点 を も った、 カ ウ ン セ ラー を育 成 す る こ とや 、 一 人 の 被 害 者 を 守 る た め に、 地 域 が 立 ち上 が り、 シェル ター を設 置 す るな どの 取 り組 み が 急 務 で あ る。 〔 苦 しみ に たえ か ね て 昼 は仕 事 に も行 か ず 、 酒 ばか り飲 み 、 私 に乱 暴 ばか り〕 し て い る夫 に 〔 っ く し足 らん の か いな と思 い、 ああ しい こ う しい し〕 た 部 落 女 性 の 語 り、 父 親 か らの ひ どい 暴 力 に苦 しん だ 母 親 の 話 、 〔 死 を待 っ ば か り〕 に な る ほ ど に、 〔 男 性 の食 い物 に さ れ た〕 友 だ ち の話 、 親 に捨 て られ て 〔チ ン ピラ に 引 っ掛 か り〕 身 体 も心 も傷 っ け られ た 女 性 の 話 。 出 稼 ぎ先 で 公 然 と差 別 され て 帰 って くる夫 に、 明 日へ の労 働 の た め に と、 な けな しのお 金 を 出 して で も晩 酌 は欠 か させ な い 。 夫 が 愛 人 を作 っ た。 出 稼 ぎ先 か ら仕 送 りを しな くな った 。 借 金 しな が ら作 った 料 理 に文 句 を言 わ れ る。 借 金取 りの対 応 に夫 が 無 関 心 で 一 人 で 対 応 させ られ て い る。 そ ん な 一61一.
(14) 人権問題研究資料. 第18号. 語 りが 、 そん な男 性 か らの女 性 に対 す る暴 力 の 話 が 、 無 反 応 の 中 で か き消 され 、 お 涙 頂 戴 の美 談 にす りか え られ 、 「こ こ はそ ん な 話 をす る分 科 会 で は な い」 と切 り捨 て られ 、 自 らが 立 ち上 が って 夫 を 変 え るよ うに 「闘 う こ と」 が 求 め られ て い る。 「DVと は 正 面 か ら男 性 の 支 配 性 ・暴 力 性 ・加 害 性 を問 う問 題 な の だ。 男 性 自身 が 自分 を み っ め る こ とを 強 い られ る問 題 な の だ」v1。そ の こ とを 、 部 落 男 性 も、 部 落 女 性 も認 識 す べ きで あ る。. (ウ)部 落女 性 の 視 点 か ら、 既 存 の概 念 の と ら え な お しを 第 三 の 課題 は、部 落 女性 の視 点 か ら、 結 婚 や労 働 な ど の既 存 の概 念 の と らえ な お しを す る こ とで あ る。 そ して、 部 落民 と して の、 女 性 と して の、 そ して人 間 と して の、 自立 、 権 利 、 平 等 、 自由 とは何 か にっ い て、 ス テ レオ タ イ プ化 され た思 考 や 行 動 の枠 の 中 に 自分 た ち の体 験 を あ て は め て考 え る ので は な く、 自分 た ち の体 験 か ら、 そ の枠 そ の もの を改 め て 問 い 直 して い く作 業 を丁 寧 にや って いか ね ば な ら な い。. ①. 部 落 女 性 に と っ て の 「結 婚 」 と は. 〔 卑 屈 感 〕 や 〔自 己卑 下 〕 か ら、 一 般 の 人 との 結 婚 に あ こが れ る。 一 般 の 人 との 結 婚 は、 部 落 女 性 た ち に と って は、 「女 性 と して」 「一 般 と して 」 二 重 の 意 味 で 認 め られ た こ とを 意 味 して い た。 「一 般 並 み」 にな る こ と で あ り、 差 別 と闘 う こ とで あ り、 差 別 か ら逃 れ る こ とで もあ り、 安 定 した生 活 を 得 る こ とで あ り、 〔 幸 せ な家 庭 を築 き、 子供 を産 み 育 て ると い う女 と して生 まれ た最 大 の喜 び を得 る こと〕 で もあ っ た。 そ して 、 〔戸 籍 に入 れ て も ら う〕 こ とが 、 自分 の存 在 を認 め て も らっ た こ との 証 と な り、 コ ンプ レ ッ クス の高 さか ら、 借 金 ま で して、 〔 立 派 な正 式 な結 婚 式 〕 を しよ う とす る。 結 婚 差 別 の体 験 や 結 婚 差 別 を な くす 取 り組 み か ら、 部 落 女 性 に と っ て の 結 婚 と は何 か 、 そ の意 味 を 明 らか に しな けれ ば な らな い。. ②. 部 落 女 性 に と って の 「労 働 」 と は 一62一.
(15) 「 部落解放」婦人運動に関する考察 1970年 代 は じめ 、 一 般 の女 性 た ち の 中 で 、 「共 稼 ぎ」 か 「共 働 き」 か を め ぐ って、 論 争 が行 わ れ て いた 癒。今 で は こ ち らの方 が使 わ れ る よ う に な った、「共 働 き」 とい う言 葉 は、 「 「共 稼 ぎ」=貧. 困 家 庭 と い う偏 見 、 子 ど もを預 けて働 く親 は 甲斐 性 な. しの貧 乏 人 と い った差 別 感 … に た い し、 働 きた い とい う自分 の意 志 に よ って仕 事 を もと うとす る女 性 の働 く権 利 の主 張 」 の あ らわ れ だ った。 部 落 女 性 に と って の 「労 働 」。 そ れ は、 自 らの 仕 事 保 障 だ けで は な く、 夫 や 息 子 の仕 事 保 障 を も求 め た闘 い で あ っ た。 〔 結 婚 して も共 稼 ぎす る の は、 生 活 が 貧 しい か ら〕 で あ り、 〔夫 の 低 賃 金 を助 け、 家 計 を ま もる た あ〕 で あ っ た。 そ の た め 、 女 性 が 働 くこ とや 女 性 を働 か せ る こ と は、 家 の恥 だ と思 わ れ て い た。 男 性 助 言 者 か ら、 〔 本 当 は奥 さん が 働 か な生 活 して い けん と は情 け な い と思 い ます 。 ご主 人 が働 い て 奥 さん は家 で 子 供 の 教 育 を しっか りや る と い う こ と ぐ らい、 ご主 人 の 給 料 が 上 が る こ と〕 が 必 要 な のだ とい う発 言 も出 され て い る。 部 落 女 性 に と って の仕 事 保 障 の 闘 い は、 女 性 の権 利 意 識 を高 め る こ と、 地位 を高 め る こ と、 労働 者 と して の 自覚 を 持 っ こ と、 視 野 を 広 め る こ と、 部 落解 放 を担 う女 性 の主 体 的 な 闘 いへ と発 展 させ る こ と、 と い う意 識 の 変 化 を もた ら した。. ③. 「主婦 論 争 」 と部 落 女 性. 1955年 に は 、 「主 婦 身 分 」 を あ ぐ って の 「第 一 次 主 婦 論 争 」 が 、1960年. に は、. 「主 婦 」 の行 う 「労 働 」、 す な わ ち 「主 婦 労 働 の評 価 」 「家 事 労 働 の 値 段 」 を め ぐ っ て の 「第 二 次 主 婦 論 争 」 が、 一 般 の女 性 た ち の 問 で展 開 され て い たmO 高度 経 済 成 長 で企 業 戦 士 と して働 く夫 を迎 え る専 業 主 婦 の妻 と子 ど もた ち と い う 核 家 族 か らな る、1960年 代 の マ イ ホ ー ム主 義 。 電 気 洗 濯 機 や電 気 冷 蔵 庫 な ど、 い わ ゆ る 「三 種 の神 器 」 が 登 場 し、 女 性 た ち の生 活 ス タイ ル は大 き く変 化 して い た。 幸 せ そ うな ア メ リカ の主 婦 の抱 え る不満 を 「名前 の な い問題 」 と名 づ けた、 ベ テ ィ ・ フ リー ダ ン著 に よ る"TheFeminineMystique"(邦 訳 刊 され た の が1965年. 題 『新 しい女 性 の 創 造 』)が. 。1970年 代 に は、 子 ど もや家 族 の幸 せ の た あ 、 と い った 運 一63一.
(16) 人権問題研究資料. 第18号. 動 は、 結 局 、 女 性 を 家 庭 に閉 じ込 め、 男 性 の支 配 に従 属 す る こ とに な るの で は な い か 、 女 の 自立 と は何 か、 とい う不満 や批 判 が起 きて く る。 ウー マ ン ・ リブ時 代 の幕 開 けで あ る0 と こ ろが 、 高度 経 済成 長 は部 落 の上 を素 通 り して い た。 部 落 女 性 た ち は、 差 別 に 苦 しみ、毎 日の生 活 の や り く りに追 わ れ、低 賃 金 の 長 時間 労 働 で家 計 を 支 え、 家事 ・ 育 児 や 地域 で の活 動 に忙 殺 され て い た。 一 般 女 性 た ち に よ る、 「家 庭 か仕 事 か」 「主 婦 と は何 か 」 「女 の 自立 とは何 か 」 「労 働 と は何 か 」 「家 事 労 働 と は何 か」 な どの 議 論 に参 加 で き る ほ どの経 済 的余 裕 の なか った部 落 女 性 た ち の生 き様 や 思 い を、 一 般 の女 性 た ち は、 当 時 どれ く らい認 識 して い た の だ ろ うか 。 性 差 別 社 会 の仕 組 み や 男 性 の変 革 が な い ま ま で、 一 般 の女 性 た ちが 自 らの解 放 と 自 由 を得 よ うとす る と き、 ます ま す従 属 と抑 圧 の地 位 に お か れ て い くマ イ ノ リテ ィの 女 性 た ち に対 す る 自分 の 「加 害 者 性 」 にっ いて は、 一 般 の 女 性 た ち の間 で、 どれ ほ ど議 論 が さ れ た の で あ ろ うか。 社 会 に 出 て働 く こ とが 女 性 に と って の 自立 で あ り、 解 放 だ とす るな らば 、 ひ た す らに働 い て きた部 落 女 性 た ち は、 一 般 の 女 性 た ちか らみ た ら、 す で に 自立 し、 解 放 され て い る か ら、 あ とは、 婦 人 労 働 者 と して 、 職 場 で の 男 女 平 等 を あ ざ す べ き だ、 と主 張 す る だ ろ うか 。 あ る い は、 一 般 の 女 性 た ち も また 、 部 落 男 性 と同 じよ う に、 部 落 女 性 に と って、 も っ と も優 先 され るべ きは、 「部 落 解 放 」 で あ るか ら、 そ の た あ に部 落 女 性 が 先 頭 に立 って 闘 うべ きだ 、 と主 張 す るの だ ろ うか。 そ れ と も、 部 落 女 性 は も っ と、 「部 落 内 の」 性 差 別 を告 発 す べ きだ、 と主 張 す る のだ ろ うか 。 部 落 女 性 た ち の 中 に は、 家 事 や 育 児 に専 念 で き る 「主婦 」 にあ こが れ て い る者 た ち もい た。 〔 働 か な くて もよ い お母 さん に な りた い〕、 〔 一 般 の 母 親 の よ う に 「教 育 マ マ」 とか 呼 ば れ る身 に な りた い〕、 〔 今 の 時 代 に 恥 ず か し くな い主 婦 に な りた い〕、 〔 子 供 の た め に は 、 強 い母 と な り、 世 界 一 良 い母 に な りた い〕、 〔一 般 家 庭 と 同 じよ うな家 庭 に し、 子 供 に は教 育 をっ け、 立 派 な 職 業 に っ か せ、 結 婚 もで きる よ うに育 て〕 た い と必 死 に願 う部 落 の 母 た ちを 、 家 庭 に 閉 じ込 あ られ、 男 性 支 配 に従 属 して い る、 と一 般 の女 性 た ち は、 批 判 す る こ とが で き るの だ ろ うか。 一64一.
(17) 「部落解放」婦人運動に関する考察 今 こそ、 一 般 の女 性 た ちが 、 自 らの社 会 的 立 場 を 自覚 し変 革 す る たあ の 、 部 落 女 性 た ち と の協 働 の 「場 」 と 「機 会 」 を持 っ こ と、 そ して そ こで 、 部 落 女 性 と と も に、 「結 婚 」 や 「労 働 」 「家 事 労 働 」 概 念 にっ いて 、 共 に議 論 す る こ とが 必 要 だ 。. (エ)部 落 女 性 史 を 明 らか に しよ う 第 四 の 課 題 は、 上 述 した よ う な既 存 の 概 念 を と らえ な お して い くた め に も、部 落 女 性 た ちの 生 き様 や 解 放 に向 け た歩 み を 、 部 落 女 性 自身 が 丁 寧 に掘 り起 こ し、分 析 し、 発 信 し、 残 して い く こ とで あ る。1993年. に部 落 解 放 全 国 女 性 集 会 へ と名 前 を. 改 あ な が ら、 全 婦 は、 来 年 、50回 を迎 え る。 全 婦 に集 う部 落 女 性 た ち が 、 自分 史 を 、 そ して 、 母 の 歴 史 を 、 地 域 の 部 落 女 性 史 を 明 らか に して い く こ と、 そ こか ら、 部 落 女 性 によ る解 放 理 論 と解 放 運 動 の 再 構 築 を始 め る こ とが必 要 な の で は な い だ ろ うか 。 す で に こ う した動 き は 、・1966年の 第11回. 全 婦 に見 られ る。 「部 落 の母 の 歴 史 を. 記 録 しよ う」 とい う提 案 で は、 〔 歴 史 は、 名 の あ る人 た ち だ け に よ って っ く られ た の で は〕 な く、 〔 名 もな き底 辺 の 人 た ち こそ歴 史 を 創 造 して き た の〕 で あ るか ら、 〔 人 間 と して の真 のっ よ さ〕 を もち、 〔 人 間性 回復 の動 き〕 を歩 ん で き た部 落 女 性 た ち に よ って 、 〔い ま の 日本 人 に はっ ぎっ ぎ と失 わ れ て い く、 人 間 の きず な の よ う な もの 〕 を も って い る、 〔す ば ら しい部 落 の母 た ち の歴 史 が 記 録 され 創 造 され て い く と き、 そ こに人 問変 革 が な し とげ られ、 差 別 と貧 乏 の こ の社 会 を、 か え て い くちか らを、 っ か み とる こ とが で きる〕 の だ、 と。 安 川 寿 之 輔 は、 「被 差 別 部 落 女 性 史 を 解 明 す る こ との もっ い くっ か の積 極 的意 義 」 と して 、5点. あ げ て い るX。 「第 一 に、 階 級 と身 分 と性 と い う三 重 の 差 別 に さ ら さ. れ た 『最 底 辺 』 の民 衆 の視 座 か ら、 近 代 日本 の歴 史 を問 いか え し、 と らえ なお す 」 こ と、 「第 二 に、 部 落 差 別 と階級 的 収 奪 の もと に お か れ て い た 被 差 別 部 落 の男 性 の 歴 史 を 明 らか に す る」 こ と、 第 三 に、 「非 主 体 的 で無 自覚 な生 き方 と行 動 の ゆ え に」、 「戦 争 に加 担 し、 ア ジ アの姉 妹 へ の加 害 者 と」 な り、 「国 内 の姉 妹 同 胞 に対 して も加 一65一.
(18) 人権問題研究資料. 第18号. 害 者 と」 な っ た、 「近 代 日本 の民 衆 女 性 史 を照 射 す る」 こ と、 第 四 に、 「近 代 日本 社 会 の ほか の被 差 別 者 集 団 … の 歴 史 の 一 面 の 解 明 にっ な が って い く」 こと、 そ して最 後 に、 「民 衆 女 性 と部 落 女 性 の 共 通 す る 『運 命 』 の 側 面 」 を 明 らか にす る こ とで あ る。. (オ)部 落 女 性 に と って の エ ンパ ワメ ン ト∼ 「地 域 に お け る教 育 」 と い う視 点 か ら 第 五 の課 題 は、 部 落 女性 が 、 長 い 闘 い の歴 史 の 中 で、 何 に エ ンパ ワ メ ン トされ て きた の か を追究 し明 らか に して い くこ と、 その 中 で、部 落 女性 を含 め た マ イ ノ リテ ィ 女 性 の エ ンパ ワ メ ン トの た あ の方 策 を追 究 して い く こ とで あ る。 こ こで は、 教 育 に っ いて 考 え て み る。 〔 子 供 を 立 派 に育 て あ げ るた あ に〕 〔 子 供 の 幸 福 を 守 るた め に〕 〔自分 の生 い立 ち の 二 の 舞 いを 子 ど もに させ た くな い〕 とい う思 い は、 母 た ち に よ る子 ど もた ちの 教 育 の 機 会 均 等 を 求 め る闘 い と して、 教 科 書 無 償 配 布 や義 務 教 育 無 償 、 奨 学 資 金 を 求 め る運 動 へ とっ な が り、 さ らに、 就 学 前 教 育 や解 放 教 育 な ど の教 育 内 容 や 条 件 の 充 実 を 求 め る闘 い へ と発 展 して い く。 解 放 保 育 ・教 育 は、 地 域 ぐるみ の闘 い だ った。 〔地 域 の 子 ど もた ち を守 るの は母 親 で あ り、 一 人 ひ と りが 自分 の子 で あ る と受 け止 あ〕 て、PTAな はCommunity)に. らず 、PTCA(C. よ る 「教 育 を守 る会 」 が結 成 され、 教 師 ・地 域 ・学 校 とい う連. 携 が 図 られ て い く。 そ の と き、 母 親 に求 め られ た の が 、 〔外 へ 向 って 理 論 を高 あ、 内 に向 って 体 験 を〕 伝 え て い く こ とだ った。 子 ど もた ち の教 育 保 障 を求 め る闘 い は、 母 親 た ち の識 字 運 動 へ とっ な が って い っ た。1969年 の 第14回. 全 婦 で 、 「識 字 運 動 」 に 関 す る分 科 会 が は じめ て っ く られ、. 以 降 、 識 字 運 動 は、 部 落 解 放 運 動 の質 的 な発 展 を象 徴 す るだ けで な く、部 落女 性 の エ ンパ ワ メ ンの重 要 な鍵 に な って い く。 そ れ は、 〔 個 人 生 活 と社 会 生 活 が 結 び っ い て い る こ と〕 を 明 らか に し、 家 族 と、 仲 間 た ち と一 緒 に、 地 域 で 生 きて い こ う とす る部 落 女 性 た ち に、 自 己変 革 と人 間 関 係 変 革 、 そ して 社 会 変 革 の大 切 さを 教 え た ...
(19) 「 部 落解放」婦 人運動 に関 する考察 「地 域 に お け る 教 育 」 だ っ た 。. (カ)部 落 男 性 に求 め られ る 「自覚 」 「変 革 」 最 後 に、 第 六 の課 題 は、 差 別 の中 で生 き て き た こ と の苦 しみ 、 怒 り、 悲 しみ にっ い て の語 り、 自 ら解 放 へ 立 ち上 が ろ う と して き た語 りを、 部 落 男 性 が 部 落 男 性 た ち と共 有 して い くこ とだ 。 差 別 、 抑 圧 、 迫 害 、 侮 辱 の体 験 にっ いて の 語 りを部 落 女 性 に求 め る だ けで は な く、 部 落 男 性 が 、 差 別 し、 差 別 され る 自 らの 解 放 を求 め て 、 語 りを始 め る こ とだ 。 「婦 人 が 変 わ り、 夫 を変 え る」 よ う部 落 女 性 に求 め て きた部 落 男 性 こ そが 、 自 ら変 わ ろ う と しな くて はな らな い。 自己変 革 を妨 げて い る 「内 な る 敵 」 と闘 わ な くて はな らな い。 女 性 の 自由 や解 放 を妨 げ て い る社 会 の仕 組 み と男 性 が 闘 わ な くて はな らな い。 1960年 代 後 半 、 「個 人 的 な こ と は政 治 的 な こ と」 とい う ス ロ ー ガ ンの もと、 女 性 解 放 運動 は大 きな うね りを作 り出 した。 そ の背 景 に は、 コ ン シ ャス ネ ス ・レイ ジ ン グ(CR、. 意 識 覚 醒)と. い う取 り組 み の 歴 史 が あ った。 女 性 た ち が、 小 さ な集 ま り. の 中 で、 一 人 ひ と り自分 の体 験 を話 して い く。 そ の語 りの中 で 、 それ まで 個 人 的 な こ とだ と思 って い た こ とが 、 実 は女 性 た ちが み な、 同 じよ うな体 験 を共 有 して い た こ とに気 づ き、 問 題 は個 人 に あ る ので は な く、 個 人 の 問 題 にす りか え て き た社 会 構 造 に あ る こ とを理 解 して い く。 自分 た ち の体 験 や 感 情 に一 っ ず っ 言 葉 を与 え て い っ た。 さ らに、 これ まで 公 的 な場 で は議 論 す る に足 らな い、 あ る い はす るべ きで はな い と考 え られ て き た私 的 な関 係 の 中 に、 実 は、 家 父 長 制 と い う名 の 支 配 と従 属 の 関 係 が あ る こと を見 出 した。 自分 が 内 面 化 して い る差 別 にっ い て 、 性 差 別 社 会 の 抑 圧 にっ い て、 女 性 が 意 識 を 向 上 させ 、 気 づ きを 増 や し、 行 動 し、 社 会 を 変 革 す る こ と。 それ がCRだ. った。. 部 落 女 性 に と って の全 婦 は ま さ に、 このCRだ. った の で あ る。 部 落 女性 が 、 自 ら. の経 験 に 自分 自身 の 言 葉 で 名 前 を与 え て い く力 を、 自分 の経 験 に基 づ い て、 自分 の 感 情 に気 づ き、 自分 の 要 求 を確 認 して い く権 利 を、 自分 自身 を表 現 す る権 利 を、 そ 一67一.
(20) 人権 問題研究資料. 第18号. れ ま で他 者 に よ って一 方 的 に語 られ、 規 定 され て き た 自 己を 取 り戻 す 権利 を、 部 落 女 性 た ち は、 全 婦 の場 で 獲 得 して き た の だ っ た。 そ して 今 、 部 落 男 性 に こ そ この CRが. 必 要 な の だ。. 全 婦 で は、 〔 差 別 に 負 け、 貧乏 に 負 けて堕 落 して い た〕 男 性 の こ と、 〔 賭 け事 や晩 酌 な ど 自覚 の な い そ の 日暮 ら し〕 の男 性 の こ と、 識 字運 動 は男性 に も必 要 な の に、 〔男 の 人 はな か な か腰 を上 げ て くれ〕 な い こと、 〔運動 を や って い る人 間 が、 自分 の 奥 さ ん は家 に い て ほ しい とか 、 「女 の くせ に」 とか い う差 別 意 識 を持 ち 続 け、 婦 人 の活 動 を は ばん で い る〕 こ と、 女性 を働 きに は出 す が、 話 し合 い に は 出 そ うと しな い こ と、 〔 部 落 内 に お け るい わ ゆ る 「寝 た子 を起 こす な」 の意 見 が主 と して 父 親 か ら家 庭 内 で母 親 へ の 圧 力 と な って〕 い る こ と、 〔役 員 の 男 性 た ち は、 婦 人 部 の 運 動 が 活 発 に な れ ば 自分 た ちの 地 位 が ぐ らつ く と思 っ て〕 い て、 〔 婦 人 部 の活 動 が 目障 り〕 な こ とな ど、 「変 わ ろ う と しな い男 性 」 が 、 〔 毎 日家 の 中 に閉 じ込 めて きた 〕 女 性 が 「変 わ ろ う とす る」 と きに、 さ ま ざ ま な形 態 の暴 力 を行 って い た こ とが 報 告 さ れ て い る。 男 性 こそが 、 自分 の ア イ デ ンテ ィテ ィや 立 場 にっ いて 、 考 え 、 語 り、 人 の語 りを 聴 き、 共 有 し、 自 らの問 題 と して行 動 して い く ことだ 。 男 性 自身 が 、 家 父長 制 や支 配 一 従 属 の論 理 や 差 別 の論 理 、 男 性 中 心 社 会 の権 力 関 係 、 そ して ジ ェ ン ダー の 呪縛 か ら解 放 され る こ とだ 。 あ る男 性 助 言 者 か ら、 毎 年 全 国 婦 人 集 会 は あ るの に、 全 国 男性 集 会 が な い の は、 〔日常 的 な活 動 、 あ る い は苦 労 が 、 一 人 の 痛 み 、 一 人 の苦 しみ、 一 人 の 困 難 じゃ な しに、 全 国 の婦 人 全 体 の もの に して い く〕 た め で あ る、 との 発言 が あ った。 そ うで は な い。 部 落 男 性 に は、 支 部 が あ り、 中 央 本 部 が あ り、 全 国大 会 が あ ったか ら、 全 国 男 性 集 会 な ど必 要 な い と思 わ れ て いた の だ 。 しか し、 今、 部 落 男 性 に こ そ、 差 別 し、 差 別 され る一 人 の 人 間 と して の 体験 や感 情 、 課題 や要 求 を全 国 の部 落 男 性 と共 有 し、 自己 変 革 と社 会 変 革 の た め に動 くこ とが求 め られ て い る。. ・:.
(21) 「部落解放」婦人運動に関する考察 *本 稿 は、 『部 落 解 放 全 国婦 人 集 会 討 議 資 料(第1回 放 全 国 婦 人 集 会 報 告書(第1回 1956年 ∼1975年)の. ∼ 第20回)』(部. ∼ 第20回)』. お よ び 『部 落 解. 落 解 放 同盟 中央 本 部/解 放 新 聞社 、. 参 考 ・引用 に よ る と ころ が 大 き い。 上 記 資 料 お よ び報 告 書 を. 引 用 す る場 合 の み、 〔 〕 と い う記 号 で示 した。. 1部 落解 放 ・人 権 研 究 所 編 『部 落 問題 ・人権 事 典 』(2001年) ]1綜 屋寿 雄 ・江 刺 昭 子 著 『戦 後 史 と女 性 の解 放 』(合 同 出 版. 、1977年). 田脇 田晴 子 ・林 玲 子 ・永 原 和 子 編 『日本 女 性 史 』(吉 川 弘文 館. 、1987年)・. iv前 掲ll v永 原 和 子 ・米 田佐 代 子 著 『おん な の昭 和 史 〔 増 補 版 〕』(有 斐 閣. 、1986年). 場信 田 さ よ こ 『DVと 虐 待 一 「家 族 の 暴 力 」 に援 助 者 が で き る こ と』(医 学 書 院. 、2002年). 癒 前 掲v 癒 上 野 千 鶴 子 「「 労 働 」 概 念 の ジ ェ ン ダ ー化 」 脇 田晴 子 ・S .B.ハ ン レー編 『ジ ェ ン ダ ーの 日本 史. 下 一 主 体 と表 現. 仕 事 と生 活 一 』(東 京 大 学 出版 会 、1995年)お. よび 前 掲ii. "前 掲v X安 川 寿 之 輔 「被 差 別 部 落 の女 性 史 」 安 川 寿 之 輔 ・安 川 悦 子 著 『女 性 差 別 の 社 会 思 想 史 一 増 補 ・民 主 主 義 と差別 の ダイ ナ ミズ ムー 』(明 石 書 店 、1987年). ・'.
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