博 士 論 文
健常高齢者に対する
嚥下反射機能低下予防方法に関する研究
Methods of preventing functional decline in swallowing response
in healthy elderly individuals
秦 さ と 子
2016 年 3 月
目 次
序 章
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 引 用 文 献 図第 1 章 加 齢 に よ る 嚥 下 反 射 機 能 の 生 理 的 変 化 と 看 護 介 入 に
関 す る 文 献 検 討
1. は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 2. 用 語 の 説 明 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 3. 嚥 下 運 動 の 種 類 と そ の 特 徴 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 4. 咽 頭 期 嚥 下 反 射 惹 起 の 動 態 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9 5. 咽 喉 頭 知 覚 感 受 機 能 に お け る 加 齢 の 影 響 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9 6. 咽 喉 頭 粘 膜 に お け る 感 覚 入 力 の メ カ ニ ズ ム ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 10 7. 感 覚 入 力 の 感 受 性 を 高 め る 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 11 8. 加 齢 に よ る 嚥 下 反 射 機 能 低 下 に 対 す る 看 護 介 入 の 現 状 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 12 9. 結 語 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 13 引 用 文 献 表第 2 章 健 常 高 齢 者 の 嚥 下 反 射 と 自 覚 症 状 の 実 態
1. は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 17 2. 用 語 の 定 義 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 17 3. 研 究 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 17 3.1 対 象 3.2 調 査 期 間 3.3 調 査 の 手 順 3.3.1 嚥 下 機 能 に 対 す る 自 覚 症 状 3.3.2 嚥 下 反 射 機 能 の 評 価 4. 分 析 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 19 5. 倫 理 的 配 慮 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 19 6. 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 19 6.1 対 象 者 の 属 性 6.2 嚥 下 に 対 す る 自 覚 症 状 6.3 嚥 下 反 射 潜 時 7. 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 20 7.1 高 齢 者 の 嚥 下 機 能 に 対 す る 自 覚 症 状7.2 高 齢 者 の 嚥 下 反 射 機 能 の 実 態 8. 研 究 の 限 界 と 課 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 22 9. 結 語 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 22 引 用 文 献 表 ・ 図
第 3 章 ト ウ ガ ラ シ 添 加 食 品 摂 取 に よ る 嚥 下 機 能 へ の 効 果
1. は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 28 2. 用 語 の 定 義 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 29 3. 研 究 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 29 3.1 摂 取 物 の 選 定 3.1.1 白 菜 の 浅 漬 け 作 成 方 法 及 び 摂 取 方 法 3.2 ト ウ ガ ラ シ 添 加 食 品 の 摂 取 効 果 3.2.1 研 究 対 象 3.2.2 嚥 下 反 射 機 能 評 価 ： 簡 易 嚥 下 反 射 誘 発 テ ス ト 3.2.3 測 定 と 介 入 の 時 期 3.2.4 主 観 的 評 価 4. 分 析 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 32 5. 倫 理 的 配 慮 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 32 6. 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 32 6.1 対 象 者 の 属 性 6.2 LSR の 分 布 6.3 介 入 前 の 嚥 下 機 能 6.4 介 入 前 と ト ウ ガ ラ シ 添 加 食 品 摂 取 後 お よ び 未 摂 取 期 間 （ 7 日 ） 後 の 嚥 下 反 射 機 能 の 比 較 6.4.1 高 齢 者 群 6.4.2 若 年 者 群 6.5 ト ウ ガ ラ シ 添 加 食 品 の 辛 さ の 感 想 7. 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 35 7.1 介 入 前 の 嚥 下 反 射 機 能 7.2 摂 取 効 果 7.3 摂 取 期 間 7.4 持 続 期 間 7.5 白 菜 浅 漬 け を 用 い る メ リ ッ ト 8. 研 究 の 限 界 お よ び 課 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 37 9. 結 語 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 37 引 用 文 献 図 ・ 表第 4 章 総 括
1. 各 章 の 総 括 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 45 2. 今 後 の 課 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 46要 旨
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 47Abstract
発 表 論 文 一 覧
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 49謝 辞
・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 50序 章
1 わ が 国 は 、2014 年 に 高 齢 化 率 25%を 上 回 る 超 高 齢 社 会 を 迎 え 平 均 寿 命 は 、男 性 で は 80.50 歳 、女 性 で は 86.83 歳 の 長 寿 が 可 能 と な っ た（ 厚 生 労 働 省 2014）。し か し 、 長 寿 を め ざ す 本 来 の 目 的 は 、 介 護 の 必 要 が な く 健 康 的 に 生 活 が で き る と い う 健 康 寿 命 の 延 伸 に あ る 。 健 康 寿 命 は 男 性 71.19 歳 、 女 性 74.21 歳 で 平 均 寿 命 よ り も お よ そ 10 年 短 い（ 厚 生 労 働 省 2013）。今 後 も 高 齢 者 人 口 が さ ら に 増 大 す る こ と が 見 込 ま れ て お り 、 そ れ に 伴 い 高 齢 患 者 の 増 大 も 推 察 さ れ る 。 そ の た め 近 年 の 医 療 の 場 は 、 病 院 か ら 在 宅 へ 移 行 す る こ と を 推 進 し て い る 。 し か し 、 こ れ も 少 子 化 に よ り 老 々 介 護 人 口 を 増 大 さ せ る こ と は 目 に 見 え て お り 、 高 齢 者 は 自 ら 病 気 に な り に く い 健 康 な 身 体 を 維 持 し て い く こ と が 求 め ら れ て い る 。 こ の よ う な 中 、健 康 の 基 盤 と な る の は 、安 全 で 豊 か に 食 事 が で き る こ と と 考 え る 。 そ の た め 、 食 べ る 機 能 の 維 持 は 高 齢 者 に と っ て 非 常 に 重 要 で あ る 。 し か し 、 多 く の 高 齢 者 は 、 嚥 下 機 能 が 低 下 し て い る こ と に よ り 誤 嚥 を き た し 、 肺 炎 を 発 症 し や す い 状 況 に あ る 。 平 成 23 年 患 者 調 査 に よ る と 、肺 炎 に よ る 総 患 者 数 は 約 79,000 人 お り 、こ の う ち 65 歳 以 上 は 約 49,000 人 で 62.0%を 占 め る（ e-stat 2012）。ま た 、脳 血 管 疾 患（ 脳 卒 中 ）発 症 後 30 か 月 以 内 で 22％ に 肺 炎 を 合 併 す る と い う 報 告（Langhorne P et al 2000） か ら 、 肺 炎 と 同 年 の 脳 血 管 疾 患 の 患 者 数 を 調 べ る と 、 総 患 者 数 は 約 1,235,000 人 、 そ の う ち 65 歳 以 上 の 高 齢 は 約 1,020,000 人 で 82.6%を 占 め て い た （ e-stat 2012）。 脳 血 管 疾 患 に 罹 患 す る 患 者 の 多 く が 高 齢 者 で あ る こ と か ら 、 そ の 後 肺 炎 を 併 発 す る の も 高 齢 者 で あ る 可 能 性 が 高 く 、 高 齢 者 が 肺 炎 に か か り や す い 実 態 を 示 唆 す る も の で あ る 。 さ ら に 、 平 成 25 年 の 性 ・ 年 齢 別 に み た 死 因 順 位 を 基 に 各 死 因 の 死 亡 総 数 （e-stat 2015） に 対 す る 65 歳 以 上 の 割 合 を 算 出 す る と 、 死 亡 順 位 1 位 の 悪 性 新 生 物 は 83.7%、2 位 の 心 疾 患 は 91.0%、3 位 の 肺 炎 は 96.9%、4 位 の 脳 血 管 疾 患 は 90.8% で あ っ た 。 上 位 を 占 め る 死 因 の 中 で 高 齢 者 の 占 め る 割 合 は 肺 炎 が 最 も 高 い 。 各 疾 患 に 対 す る 高 齢 者 の 罹 患 率 の 違 い は あ る も の の 、 高 齢 者 に と っ て 肺 炎 に 罹 患 す る こ と は 生 命 を 脅 か す 危 険 な 疾 患 で あ る こ と は 明 ら か で あ る 。 そ の た め 高 齢 者 が 肺 炎 に 罹 患 し な い 実 効 あ る 対 策 が 喫 緊 の 課 題 で あ る 。 高 齢 者 の 肺 炎 を 誘 発 す る 重 大 な 原 因 の 一 つ は 誤 嚥 で あ る 。1 年 間 20 施 設 の 病 院 で 行 っ た 前 向 き 調 査 で は 、 全 肺 炎 入 院 症 例 の 約 7 割 が 誤 嚥 性 肺 炎 で あ り 、 8 割 以 上 が 70 歳 以 上 の 高 齢 者 で 、 年 代 が 上 が る ほ ど 誤 嚥 性 肺 炎 の 比 率 が 高 ま る （ Teramoto et al 2008） と い う 報 告 が あ る 。 ま た 、 市 中 肺 炎 で 入 院 し た 高 齢 者 の 71％ に 夜 間 睡 眠 中 の 誤 嚥 が あ る（Kikuchi et al 2000）と さ れ て い る 。つ ま り 、高 齢 者 が 罹 患 す る 肺 炎 の 約 7 割 は 誤 嚥 に 起 因 す る 。 誤 嚥 と は 、 唾 液 や 食 物 、 胃 液 な ど が 誤 っ て 気 管 に 入 っ て し ま う こ と を い う 。 原 因 は 、 嚥 下 機 能 障 害 で あ る 。 実 際 に 多 く の 高 齢 者 に 嚥 下 機 能 障 害 が あ る 。 例 え ば 、 宮 崎 県 の 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム に 住 む 虚 弱 高 齢 者 （ 要 介 護 度 が 2 よ り も 低 い も の 64 名 , 82.6±7.0 歳 ）の う ち 26.6%に 摂 食・嚥 下 機 能 の 低 下 の 所 見 が あ っ た（ 森 崎 他 2013）。 ま た 、福 岡 県 内 の 6 つ の 介 護 老 人 保 健 施 設 に 入 所 し て い る 高 齢 者 150 人 に 行 っ た 調 査 で は 、 平 均 年 齢 85.2±7.3 歳 の 高 齢 者 の 28.7%に 摂 食 ・ 嚥 下 機 能 低 下 の リ ス ク が
2 あ っ た（ 森 崎 ・ 三 浦 2010）。さ ら に 、全 国 の 介 護 老 人 保 健 施 設 の 内 841 施 設 に 対 し て 行 っ た 調 査 で は 、 平 均 年 齢 84.5±8.35 歳 の 高 齢 者 43,234 人 の う ち 29.5%に 嚥 下 障 害 を 認 め て い る （ 山 脇 2009）。 以 上 の 3 つ の 先 行 研 究 に 関 し て 、 1 つ は 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム 在 住 の 高 齢 者 を 対 象 と し て い る も の の 、対 象 者 の 要 介 護 度 を 2 以 下 と し 、 比 較 的 ADL の 自 立 度 の 高 い 人 を 対 象 と し て い る こ と か ら 嚥 下 機 能 が 低 下 し て い る 者 の 割 合 は 他 よ り も 若 干 低 く な っ た 可 能 性 が あ る 。 ま た 、 各 調 査 で は 、 嚥 下 機 能 の 評 価 範 囲 に 摂 食 機 能 を 含 ん で い る も の や 嚥 下 機 能 に つ い て 低 下 や 障 害 と 表 現 さ れ て い る も の と 一 致 し て い な い 部 分 が あ る が 、 嚥 下 機 能 に 何 ら か の 異 常 が あ る 状 態 （ 機 能 低 下 ）は 共 通 し て い る こ と か ら 、施 設 に 入 所 し て い る 要 介 護 高 齢 者 の 約 30%に 嚥 下 機 能 低 下 の 可 能 性 が あ る と い え る 。 在 宅 要 支 援 ・ 要 介 護 高 齢 者 （ 通 所 介 護 施 設 を 利 用 し て い る 在 宅 要 支 援 お よ び 要 介 護 高 齢 者 191 名 , 80.9±7.8 歳 ）で は 41.9%（ 森 崎 他 2014）に 嚥 下 機 能 低 下 の リ ス ク が あ り 、 家 族 と 地 域 で 暮 ら す 地 域 高 齢 者 （ 日 常 生 活 活 動 の わ ず か な 低 下 の た め に 国 の 介 護 保 険 制 度 下 で 公 共 の 保 健 福 祉 サ ー ビ ス を 受 け て い る 人 、 十 分 に 身 体 的 活 動 が 維 持 さ れ て い る 85 名 , 80.8±7.6 歳 ）で は 35.3%（ Miura et al 2007）に 摂 食 ・ 嚥 下 障 害 の リ ス ク が あ る と 報 告 さ れ て い た 。 こ の 2 つ の 報 告 に 関 し て は 、 対 象 者 の 年 齢 は 前 述 の 3 編 よ り も や や 若 く 、 在 宅 で 生 活 し て い る 人 で は あ る が 、 嚥 下 機 能 が 低 下 し て い る 者 の 割 合 は 高 い 傾 向 で あ る 。 す べ て の 先 行 研 究 で 測 定 方 法 は 異 な る こ と か ら 完 全 な 比 較 は 難 し い が 、 施 設 入 所 者 は 定 期 的 に 嚥 下 機 能 低 下 予 防 の た め の 支 援 を 職 員 か ら 受 け て い る こ と が 考 え ら れ 、 機 能 低 下 の 予 防 に つ な が っ て い る 可 能 性 が あ る 。 一 方 で 、 在 宅 で 生 活 す る 高 齢 者 は 、 嚥 下 機 能 に 対 す る 家 族 の 知 識 不 足 や 支 援 の 限 界 等 が 影 響 し て い る 可 能 性 が 考 え ら れ る 。 こ れ ら の 可 能 性 を 含 ん だ う え で 要 支 援 あ る い は 要 介 護 認 定 を 受 け て い る 在 宅 高 齢 者 の 30～ 40%に 嚥 下 機 能 低 下 の 可 能 性 が あ る と い え る 。 さ ら に 、要 介 護 者 は 65 歳 以 上 の 高 齢 者 人 口 の 約 17.6%（ 内 閣 府 2015）で あ る こ と か ら 要 介 護 認 定 を 受 け て い な い 80%以 上 の 高 齢 者 に も 加 齢 の 影 響 は あ る 。要 介 護 認 定 を 受 け て い る 高 齢 者 は 定 期 的 に 医 療 職 者 に よ る 観 察 が な さ れ る こ と か ら 異 常 の 早 期 発 見 に つ な が り や す い 。 あ る い は 機 能 維 持 の た め の 支 援 が な さ れ て い る 可 能 性 も あ る 。 し か し 、8 割 を 超 え る 健 康 な 高 齢 者 の 多 く は 核 家 族 化 や 一 人 暮 ら し 、 若 夫 婦 の 共 稼 ぎ に よ る 日 中 の 不 在 な ど の た め 、 異 常 な 症 状 に 対 し て 危 険 で あ る と 認 識 す る こ と や 、 医 療 機 関 を 受 診 す る な ど の 行 動 の 判 断 は 自 分 自 身 で 行 わ な け れ ば な ら な い 状 況 が 多 い と 推 察 さ れ る 。 実 際 、 高 齢 者 は 嚥 下 障 害 を 自 覚 し て か ら の 病 院 受 診 で は な く 、 誤 嚥 性 肺 炎 を 発 症 し た 後 に 嚥 下 障 害 と 診 断 さ れ る ケ ー ス も あ る （ 井 上 他 2007） な ど む せ 等 の 誤 嚥 の 症 状 を 嚥 下 障 害 の 可 能 性 に 結 び つ け に く い と 考 え る 。 こ の こ と は 、 高 齢 者 の 嚥 下 機 能 低 下 予 防 の 対 応 の 遅 れ に つ な が り 、 高 齢 者 が 食 事 を 安 全 に 楽 し ん で 食 べ る こ と を 脅 か す 事 態 を 招 く 。 以 上 よ り 、 自 宅 で 自 立 し て 生 活 す る 健 康 な 高 齢 者 に 対 し て も 嚥 下 機 能 低 下 予 防 へ の 支 援 が 必 要 で あ る 。 高 齢 者 の 嚥 下 機 能 に つ い て は 、 口 腔 で の 食 塊 の 保 持 能 力 の 低 下 、 咽 頭 期 の 嚥 下 反 射 惹 起 遅 延 、 嚥 下 量 の 変 化 に 対 応 す る 喉 頭 前 方 移 動 の 低 下 、 食 道 入 口 部 開 大 の 対 応
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能 の 低 下 、 嚥 下 力 の 低 下 、 食 塊 の 咽 頭 通 過 時 間 と 喉 頭 挙 上 時 間 の 延 長 な ど が 報 告 さ れ て い る （ 飴 矢 他 2006, Ekberg and Feinberg 1991, 兵 頭 2009, Julie F et al 1989, 越 井 1992, 大 前 他 2003, 丘 村 他 1991, 寺 本 2002）。 特 に 咽 頭 期 の 嚥 下 反 射 惹 起 遅 延 は 誤 嚥 に 直 結 し や す い 。嚥 下 反 射 惹 起 遅 延 に よ り 、 嚥 下 物 の 移 動 の タ イ ミ ン グ と 呼 吸 経 路 の 閉 鎖 の タ イ ミ ン グ が ず れ て 嚥 下 物 が 気 道 内 に 侵 入 し や す く な る た め 誤 嚥 を お こ す 。 本 来 な ら 、 嚥 下 自 体 も 気 道 防 御 機 構 の 一 つ で あ る 。 そ れ が 正 常 に 働 か ず 誤 嚥 を し て し ま っ た 場 合 に は 、 も う 一 つ の 気 道 防 御 機 構 で あ る 咳 嗽 反 射 が 働 き 、 誤 嚥 物 を 喀 出 す る 仕 組 み が あ る 。 し か し 、 咳 嗽 反 射 を 誘 発 す る に は 、 嚥 下 を 誘 発 す る 刺 激 を 感 受 す る 受 容 体 や 感 覚 神 経 、 神 経 伝 達 物 質 な ど 重 複 す る 部 分 が 多 い （Yamaya M et al 2001） こ と か ら 、 嚥 下 反 射 惹 起 の シ ス テ ム の 不 具 合 は 咳 嗽 反 射 惹 起 の 不 具 合 に も つ な が り 気 道 防 御 機 構 は 効 果 的 に 機 能 し に く く な る 。 し か し 、 気 道 を 通 し て 肺 に 嚥 下 物 の よ う な 異 物 が 侵 入 し て も 生 体 防 御 機 能 が 働 く た め 、 す ぐ に 病 気 を 発 症 す る わ け で は な い 。 軽 微 な 体 調 の 崩 れ に よ り 生 体 防 御 機 能 の 低 下 や 誤 嚥 を 繰 り 返 す こ と で 肺 炎 を 発 症 し 、 健 康 や 生 命 を 脅 か す 事 態 に 陥 る の で あ る 。 そ の た め 、 そ の 原 因 と な る 嚥 下 反 射 惹 起 遅 延 を 改 善 し 、 反 射 能 力 の 高 い 状 態 を 維 持 で き る よ う に 支 援 す る 必 要 が あ る 。 し か し 、 嚥 下 反 射 惹 起 を 含 む 咽 頭 期 や 食 道 期 の 嚥 下 は 他 の 随 意 運 動 系 と は 異 な り 神 経 機 構 の 上 に 成 り 立 っ て い る と い う 生 理 学 的 な 特 殊 性 を も つ （ 進 1994）。 こ の た め 、 嚥 下 反 射 惹 起 性 に 対 す る 介 入 に は 嚥 下 反 射 惹 起 の 神 経 機 序 に 関 す る 知 見 を 理 解 し 、 そ の 知 見 を 踏 ま え た 介 入 の 検 討 が 必 要 で あ る 。 前 述 し た よ う に 高 齢 者 は 、 自 分 自 身 で 健 康 管 理 を し 、 自 立 し た 生 活 が 維 持 で き る よ う な 身 体 作 り へ の 取 り 組 み を 基 本 と す る 必 要 が あ る 。 そ の た め 、 多 少 の 体 調 不 良 な ど で 影 響 を 受 け な い 安 定 し た 嚥 下 機 能 の 獲 得 に 向 け た 具 体 的 で 適 切 な 支 援 方 法 を 検 討 す る 必 要 が あ る 。 そ の た め に は 、 日 常 生 活 で 無 理 な く 取 り 組 め て 、 継 続 し や す い 方 法 が 必 要 で あ る と 考 え る 。 そ こ で 、 本 研 究 は 嚥 下 障 害 が 顕 在 化 し て い な い 自 立 し た 生 活 を 送 っ て い る 高 齢 者 を 健 常 高 齢 者 と し 、 嚥 下 反 射 機 能 の 低 下 予 防 方 法 に つ い て 日 常 生 活 で 取 り 入 れ や す い 方 法 に 焦 点 を 当 て 提 案 す る こ と を 目 的 と す る 。 研 究 の 構 造 に つ い て は 、 図 1 を 参 照 さ れ た い 。 第 1 章 で は 、 先 行 研 究 に よ り 正 常 な 嚥 下 反 射 惹 起 の メ カ ニ ズ ム に 対 し 加 齢 に よ る 生 理 的 変 化 の 特 徴 を 明 ら か に し 、 こ の 生 理 的 変 化 に 対 し ど の よ う な 看 護 介 入 が 行 わ れ て い る か の 現 状 を 把 握 す る こ と で 高 齢 者 の 嚥 下 機 能 低 下 に 対 す る 必 要 な 看 護 介 入 の 示 唆 得 る こ と を 目 的 と し た 。 看 護 介 入 の 現 状 把 握 に 関 し て は 、 文 献 検 討 を 実 施 し た 。 そ の 結 果 、 高 齢 者 は 咽 喉 頭 粘 膜 に お け る 感 覚 神 経 の 分 布 の 減 少 に よ り 刺 激 の 感 受 性 が 低 下 し て い る た め に 嚥 下 反 射 惹 起 遅 延 を き た し 、 誤 嚥 を し や す い 状 況 に あ る こ と が 考 え ら れ た 。 そ の た め 、 咽 喉 頭 粘 膜 に お け る 感 覚 刺 激 の 感 受 性 を 改 善 さ せ る た め の 看 護 介 入 が 求 め ら れ て い る 。 し か し 、 高 齢 者 の 嚥 下 機 能 の 生 理 学 的 な 変 化 の 特 徴 を と ら え て 看 護 介 入 し た 研 究 は な く 、 感 覚 神 経 の 感 受 性 に 着 目 し た 看 護 介 入 の 提 案 が 必 要 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。
4 第 2 章 で は 、 在 宅 で 自 立 し た 生 活 を 送 り 、 過 去 に 医 師 か ら 嚥 下 障 害 の 診 断 を 受 け た こ と の な い 健 常 高 齢 者 で あ っ て も 、 第 1 章 で 示 さ れ た 咽 喉 頭 粘 膜 に お け る 感 覚 刺 激 の 感 受 性 低 下 が 起 こ っ て い る の か を 明 ら か に す る こ と を 目 的 に 実 施 し た 。 研 究 方 法 は 、 嚥 下 機 能 に 対 す る 自 覚 症 状 と 客 観 的 評 価 と し て 嚥 下 反 射 潜 時 を 測 定 し 、 加 齢 の 影 響 を 確 認 す る た め に 若 年 者 と 高 齢 者 の 比 較 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 高 齢 者 の 多 く は 咽 頭 期 嚥 下 の 異 常 を 示 す 症 状 を 経 験 し て お り 、 嚥 下 反 射 潜 時 は 正 常 範 囲 内 の 値 を 示 し た が 若 年 者 よ り も 有 意 に 延 長 し て い た 。 こ れ ら の こ と よ り 、 高 齢 者 の 多 く は 正 常 範 囲 内 で 咽 喉 頭 粘 膜 に お け る 感 覚 刺 激 の 感 受 性 低 下 に 起 因 す る 嚥 下 反 射 惹 起 遅 延 を き た し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ 、 健 常 高 齢 者 に 対 し て 生 理 的 変 化 に 対 す る 介 入 の 必 要 性 が あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 第3 章 で は 、第 1 章 で 示 さ れ た 咽 喉 頭 粘 膜 に お け る 感 覚 刺 激 の 感 受 性 低 下 に 対 し 、 先 行 研 究 で カ プ サ イ シ ン 感 受 性 受 容 体 （TRPV1） を 刺 激 す る こ と で 感 覚 入 力 の 感 受 性 を あ げ る こ と が で き る こ と が 示 唆 さ れ て い る 。 そ こ で 、 カ プ サ イ シ ン を 含 有 す る ト ウ ガ ラ シ 添 加 食 品 の 摂 取 に よ る 健 常 高 齢 者 の 嚥 下 機 能 へ の 効 果 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 に 1 日 3 回 20 日 間 、 連 日 白 菜 の 浅 漬 け を 1 口 程 度 摂 取 し て も ら い 、 介 入 前 後 、 お よ び ト ウ ガ ラ シ 添 加 食 品 未 摂 取 期 間 （7 日 ） 後 に 嚥 下 機 能 を 測 定 し 、 そ の 効 果 を 分 析 し た 。 こ れ ら の 結 果 よ り 、 健 常 高 齢 者 の 嚥 下 反 射 機 能 低 下 予 防 の た め の ト ウ ガ ラ シ 添 加 食 品 を 用 い た 支 援 方 法 の 示 唆 を 得 る こ と が で き た 。 以 上 に 基 づ い た 結 果 は 、 健 常 高 齢 者 に 対 す る 嚥 下 反 射 機 能 低 下 予 防 に 関 す る 支 援 方 法 の 一 つ に な る も の と 期 待 さ れ る 。
引 用 文 献
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第 1 章 （ 文 献 レ ビ ュ ー ）
テ ー マ ： 加 齢 に よ る 嚥 下 反 射 機 能 の 生 理 的 変 化 と 看 護 介 入 に 関 す る 文 献 レ ビ ュ ー 目 的 ： 正 常 な 咽 頭 期 嚥 下 反 射 機 能 に 対 し 加 齢 に よ る 生 理 的 変 化 の 特 徴 を 明 ら か に し 、 そ の 特 徴 に 対 す る 看 護 介 入 の 現 状 を 明 ら か に す る第 2 章 （ 調 査 研 究 ）
テ ー マ ： 健 常 高 齢 者 の 嚥 下 反 射 と 自 覚 症 状 の 実 態 目 的 ： 健 常 高 齢 者 の 嚥 下 反 射 機 能 の 実 態 を 明 ら か に す る こ と で 、 嚥 下 機 能 低 下 予 防 の た め の 介 入 の 必 要 性 を 示 す第 3 章 （ 介 入 研 究 ）
テ ー マ ： ト ウ ガ ラ シ 添 加 食 品 摂 取 に よ る 嚥 下 機 能 へ の 効 果 目 的 ： 日 常 生 活 で 入 手 し や す い ト ウ ガ ラ シ 添 加 食 品 を 用 い て 嚥 下 反 射 機 能 へ の 効 果 を 明 ら か に す る こ と で 、 健 常 高 齢 者 の 嚥 下 機 能 低 下 予 防 の 支 援 の 一 助 と す る本 研 究 の 最 終 目 的
健 常 高 齢 者 に 対 す る 嚥 下 反 射 機 能 低 下 予 防 へ の 支 援 方 法 の 提 案
図 1 研 究 の 構 造
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第 1 章 加 齢 に よ る 嚥 下 反 射 機 能 の 生 理 的 変 化 と 看 護 介 入 に 関 す る 文 献
検 討
1. は じ め に
高 齢 者 の 誤 嚥 の 直 接 的 原 因 の 一 つ は 、 咽 頭 期 の 嚥 下 反 射 惹 起 遅 延 で あ る （ 飴 矢 2006, Shaker 1994, 寺 本 2002）。咽 頭 は 、食 物 と 空 気 の 通 路 と い う 二 面 性 を も つ こ と か ら 、嚥 下 は 空 気 の 通 り 道 を 遮 断 し て 食 物 を 食 道 へ 誘 導 す る 切 り 替 え の 役 割 が あ る 。 こ の 切 り 替 え の 開 始 と 食 塊 の 咽 頭 へ の 進 入 の タ イ ミ ン グ が ず れ る と 誤 嚥 を き た す 。 つ ま り 、 切 り 替 え の 開 始 に 相 応 す る 嚥 下 反 射 惹 起 の タ イ ミ ン グ が 食 塊 の 咽 頭 通 過 の 前 に 機 能 す る よ う に 維 持 す る こ と が 誤 嚥 を 防 ぐ 重 要 な 対 策 に な る 。 そ の た め に は 、 嚥 下 反 射 惹 起 の メ カ ニ ズ ム の ど の 過 程 で ど の よ う な 加 齢 の 影 響 を 受 け て い る の か を 明 ら か に す る こ と で 、 実 際 の 介 入 方 法 の 示 唆 が 得 ら れ る も の と 考 え る 。 そ こ で 、 本 章 で は 正 常 な 咽 頭 期 嚥 下 の 生 理 学 的 機 序 に 基 づ い て 高 齢 者 の 嚥 下 反 射 惹 起 に 関 す る 特 徴 を 文 献 検 討 に て 明 ら か に す る 。 さ ら に 、 加 齢 に よ る 嚥 下 反 射 機 能 低 下 予 防 の た め の 看 護 介 入 の 現 状 に つ い て 、 機 能 低 下 の ど の 部 分 に 対 し て 、 ど の よ う な 介 入 方 法 と 評 価 で 実 施 し て い る の か を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と す る 。2.
用 語 の 説 明
本 論 文 で 使 用 す る 用 語 は 以 下 の 意 味 で 用 い る 。 ・ リ ガ ン ド ： タ ン パ ク 質 の 特 異 な 部 分 に 結 合 す る 分 子 の 総 称 。 ・ 感 作 ： 受 容 体 を 感 受 し や す い 状 態 に す る こ と 。 ・ 脱 感 作 ： 受 容 体 の 感 受 性 の 低 下 。 ・ 脱 分 極 ： 膜 電 位 の 負 の 値 が 小 さ く な る （ ゼ ロ の ほ う へ 近 づ く ） こ と 。 ・ 活 動 電 位 ： 神 経 細 胞 や 筋 細 胞 な ど の 細 胞 膜 に 生 じ る 、 素 早 く 、 一 過 性 で 自 己 伝 播 性 の 電 気 シ グ ナ ル の こ と 。 ・Up-regulation： 受 容 体 の 数 量 的 増 加 を 制 御 す る こ と 。3.
嚥 下 運 動 の 種 類 と そ の 特 徴
通 常 、 人 は 口 腔 に 固 形 の 食 物 を 取 り 入 れ る と 、 舌 に よ っ て 臼 歯 ま で 運 び （stage 1 transport）、咀 嚼 に よ り 食 物 を 粉 砕 し 唾 液 と 混 和 す る こ と で 食 塊 を 作 る（ processing）。 Processing の 途 中 で 、咀 嚼 さ れ た 食 物 は 順 次 咽 頭 へ と 送 り 込 ま れ る（ stage 2 transport）。 こ の stage 2 transport ま で は 、随 意 的 に コ ン ト ロ ー ル で き る が 、以 降 の 反 応 は 不 随 に 行 わ れ る 。 咽 頭 へ と 送 り 込 ま れ た 食 物 は 、 嚥 下 ま で 食 塊 と し て 蓄 積 さ れ る 。 口 腔 か ら 咽 頭 へ と 食 物 が 送 り 込 ま れ て く る 前 に 、 軟 口 蓋 が 鼻 腔 と 咽 頭 腔 を 遮 断 す る よ う に 挙 上 し 、 上 部 咽 頭 筋 も 収 縮 し 、 鼻 咽 腔 を 閉 鎖 す る こ と で 、 鼻 腔 へ の 逆 流 を 防 ぐ 。 口 腔 か ら 送 り 込 ま れ て き た 食 物 を さ ら に 下 方 へ と 送 り こ む た め に 、 舌 根 部 は 後 方 へ と8 収 縮 し 、 中 咽 頭 部 の 収 縮 筋 群 も 収 縮 す る 。 咽 頭 の 収 縮 筋 は 上 方 か ら 下 方 へ と 蠕 動 運 動 様 に 収 縮 し て い き 、 さ ら に 咽 頭 腔 の 容 積 を 縮 小 さ せ る た め に 上 下 方 向 に も 短 縮 す る 。 食 塊 が 下 咽 頭 へ と 到 達 す る 前 に 、 オ ト ガ イ 舌 骨 筋 、 顎 舌 骨 筋 、 顎 二 腹 筋 な ど の 舌 骨 上 筋 群 と 甲 状 舌 骨 筋 の 収 縮 に よ り 、 舌 骨 と 喉 頭 が 上 前 方 へ と 引 き 上 げ ら れ る 。 喉 頭 の 前 上 方 へ の 挙 上 に よ っ て 、 喉 頭 蓋 は 相 対 的 に 後 方 へ と 反 転 し 、 嚥 下 中 の 食 物 が 気 道 に 入 ら な い よ う に 喉 頭 を 閉 鎖 す る 。 嚥 下 中 の 喉 頭 挙 上 が 不 十 分 だ と 喉 頭 蓋 の 倒 れ こ み が 不 十 分 に な り 、 喉 頭 閉 鎖 が 不 良 と な り 、 嚥 下 中 の 喉 頭 侵 入 や 誤 嚥 の リ ス ク が 高 ま る 。 ま た 、 喉 頭 蓋 の 倒 れ こ み が 悪 い と 喉 頭 蓋 谷 に 蓄 積 さ れ て い た 食 物 の ク リ ア ラ ン ス が 不 十 分 に な る こ と が 多 く 、 嚥 下 後 の 喉 頭 蓋 谷 部 へ の 残 留 を 認 め る こ と に な る 。 下 咽 頭 ま で 達 し た 食 物 は 、 輪 状 咽 頭 筋 の 弛 緩 、 舌 骨 上 筋 群 の 収 縮 、 食 塊 の 圧 力 に よ っ て 食 道 入 口 部 を 開 大 さ せ 、 食 道 へ と 送 り 込 ま れ る(才 藤 他 2014)。 一 方 、 液 体 の 嚥 下 と 固 形 物 の 嚥 下 で は 食 塊 の 送 り 込 み に 大 き な 違 い が あ る 。 液 体 の 嚥 下 で は 、 口 腔 内 の 液 体 は 口 腔 底 あ る い は く ぼ ま せ た 舌 の 表 面 に 食 塊 と し て 保 持 さ れ る 。 随 意 的 な 嚥 下 が 始 ま る ま で は 、 液 体 は 軟 口 蓋 、 舌 、 口 峡 に よ っ て つ く ら れ る 関 門 を 超 え る こ と な く 口 腔 内 に 保 持 さ れ る（ 口 腔 準 備 期 ）、嚥 下 運 動 開 始 に よ り 舌 根 部 が 後 下 方 に 傾 斜 す る と 同 時 に 、 舌 の 前 方 か ら 後 方 へ と 順 に 口 蓋 に お し つ け る よ う な 動 き に よ っ て 、食 塊 を 口 腔 か ら 咽 頭 に 送 り 込 む（ 口 腔 送 り 込 み 期 ）。液 体 を 飲 む 時 に は 、 通 常 で は 口 腔 か ら の 送 り 込 み に 連 続 し て 嚥 下 反 射 が 惹 起 さ れ 、 咽 頭 収 縮 筋 の 働 き に よ っ て 流 れ 込 ん だ 食 塊 は そ の ま ま 食 道 入 口 部 を 通 過 し て 食 道 に 流 入 す る （ 才 藤 他 2014）。 さ ら に 、 日 本 人 の 食 事 に は 具 の 入 っ た み そ 汁 な ど 固 形 物 と 液 体 が 混 ざ り 合 っ て い る も の （ 二 相 性 食 物 ） が 多 く あ る た め 、 液 体 嚥 下 と 固 形 を 咀 嚼 す る 咀 嚼 嚥 下 を 切 り 離 し た 捉 え 方 だ け で は 不 十 分 で あ る 。 二 相 性 食 品 を 座 位 で 摂 食 す る 場 合 に は 、 咀 嚼 を 行 う こ と に よ り 軟 口 蓋 、 舌 、 口 峡 に よ っ て つ く ら れ る 関 門 が ゆ る む た め 、 液 体 の よ う に 流 動 性 の 高 い 物 性 は 口 峡 を 超 え て 咽 頭 に 流 れ 込 む こ と が あ り 、 こ の 時 に 反 射 的 な 嚥 下 が 起 き る 。こ の 嚥 下 運 動 は 孤 発 嚥 下（isolated pharyngeal swallow；IPS)と 呼 ば れ 、 舌 に よ る 食 塊 移 送 を 伴 わ ず 、 随 意 的 に 生 じ さ せ る こ と が で き な い こ と か ら 命 令 嚥 下 や 咀 嚼 嚥 下 と 異 な り 、気 道 防 御 的 嚥 下 運 動 と さ れ て い る（ 才 藤 他 2014, 横 山 他 2007a, 横 山 他 2008）。金 森 ら は 、咽 頭 期 嚥 下 運 動 に 系 列 的 な 舌 の 食 塊 移 送 運 動 を 伴 う も の （consecutive pharyngeal swallow； CPS） と 伴 わ な い IPS に つ い て 舌 骨 運 動 の 軌 跡 に つ い て 調 査 し て い る 。 そ の 結 果 IPS は 、舌 骨 の 運 動 の X 軸 、Y 軸 で の 最 大 移 動 距 離 、舌 骨 が 上 前 方 で 停 止 し た 位 置 ま で の 距 離 と 時 間 の い ず れ も IPS は CPS よ り 有 意 に 小 さ か っ た（ 金 森 他 2009）。こ れ は 、IPS が 液 体 の よ う に 流 動 性 の 高 い 物 性 に 反 応 し て 素 早 く 深 く 喉 頭 侵 入 す る 特 性 に 対 応 す る た め で あ る と 考 え ら れ る 。実 際 、 流 動 性 の 速 い 物 性 は 喉 頭 侵 入 の 深 さ が 深 い こ と が 横 山 ら の 先 行 研 究 で 確 認 さ れ て い る（ 横 山 他 2007b）。以 上 よ り 、無 秩 序 に 咽 喉 頭 へ 侵 入 し て く る 流 動 性 の 高 い 物 性 を 正 確 に 感 知 し 、 タ イ ミ ン グ よ く 嚥 下 反 射 を 起 動 さ せ る こ と が 誤 嚥 防 止 に つ な が る と 考 え る 。
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4. 咽 頭 期 嚥 下 反 射 惹 起 の 動 態
嚥 下 反 射 惹 起 は 、 中 咽 頭 か ら 喉 頭 に 分 布 す る 感 覚 受 容 器 へ の 入 力 が 必 須 で あ る 。 咽 頭 腔 に 食 塊 が 侵 入 す る と 、 こ れ が 刺 激 と な っ て 一 連 の 嚥 下 運 動 が 起 こ り 、 食 塊 を 食 道 に 移 送 す る 。 こ の 反 応 を 嚥 下 反 射 と 呼 び 、 刺 激 か ら 嚥 下 運 動 が 起 こ る ま で の 時 間 を 嚥 下 反 射 潜 時 （the latency of the swallowing response； LSR） と よ ぶ 。 嚥 下 反 射 に よ っ て 起 こ る 一 連 の 嚥 下 運 動 を 咽 頭 期 嚥 下 と よ び 、 一 般 的 に こ の 運 動 は ① 軟 口 蓋 挙 上 に よ る 鼻 咽 腔 閉 鎖 、 ② 舌 骨 と 喉 頭 の 挙 上 、 ③ 声 帯 、 仮 声 帯 、 喉 頭 蓋 に よ る 喉 頭 閉 鎖 、 ④ 上 食 道 括 約 筋 の 弛 緩 、 ⑤ 舌 床 の 後 方 へ の 運 動 、 ⑥ 舌 根 収 縮 に よ り 構 成 さ れ て い る 。 こ の 咽 頭 期 嚥 下 が 刺 激 に 対 し て 素 早 く 反 応 す る こ と に よ り 、 気 道 防 御 機 構 と し て 働 く こ と と な る 。 こ の よ う に 一 連 の 運 動 動 態 が 複 雑 で あ る こ と か ら 、 こ の 運 動 を 成 立 さ せ る た め に は 二 十 種 類 ほ ど の 筋 や 神 経 が 関 連 し て い る 。 具 体 的 に は 、 咽 頭 期 嚥 下 を 特 徴 づ け る 咽 頭 管 の 収 縮 お よ び 喉 頭 閉 鎖 は 、 延 髄 の 疑 核 に 起 始 核 を 有 す る 迷 走 神 経 の 分 岐 で あ る 咽 頭 枝 お よ び 反 回 神 経 に よ っ て 支 配 さ れ る 筋 群 に よ り 成 り 立 っ て い る 。 喉 頭 挙 上 は 主 に オ ト ガ イ 舌 骨 筋 お よ び 甲 状 舌 骨 筋 の 活 動 に よ り な さ れ て お り 、 舌 下 神 経 お よ び 上 頚 神 経 に よ り 支 配 さ れ て い る 。 そ し て 、 嚥 下 運 動 は 喉 頭 挙 上 に ほ ぼ 一 致 し て 活 動 を 開 始 し 、 中 咽 頭 収 縮 筋 も 喉 頭 挙 上 に ほ ぼ 一 致 し て 活 動 を 開 始 す る 。 や や 遅 れ て 甲 状 咽 頭 筋 が 活 動 を 始 め 、喉 頭 下 向 時 よ り 輪 状 咽 頭 筋 の 弛 緩 が 開 始 す る（ 進 他 1985）。 咽 喉 頭 粘 膜 に は 、 舌 咽 神 経 や 、 迷 走 神 経 か ら 分 岐 し た 上 喉 頭 神 経 内 枝 お よ び 迷 走 神 経 の 咽 頭 枝 の 知 覚 神 経 終 末 が 分 布 し て い る （ 進 他 1985, 進 1994, 進 2000）。 こ れ ら の 末 端 は 自 由 神 経 終 末 で あ り 、 粘 膜 直 下 に 及 ぶ も の で は 上 皮 基 底 層 細 胞 に 接 し て お り 、 知 覚 神 経 終 末 部 の 軸 索 膨 大 を み と め る 。 粘 膜 固 有 層 の 比 較 的 深 い 部 分 で は 、 有 髄 神 経 の 太 い 神 経 線 維 束 を 認 め る 、 末 梢 に 近 づ く に 従 い 無 髄 の 自 由 神 経 終 末 と な っ て い る （ 進 他 1985）。 知 覚 神 経 の 軸 索 膨 大 部 に は ミ ト コ ン ド リ ア 、 グ リ コ ー ゲ ン 顆 粒 な ど が み ら れ る 。 食 塊 な ど に よ る 刺 激 に よ っ て 咽 頭 粘 膜 細 胞 の 変 形 が 起 こ る と 、 粘 膜 下 に 存 在 す る 知 覚 神 経 終 末 部 分 で 活 動 電 位 が 起 動 し 、 刺 激 を 知 覚 情 報 と し て 延 髄 孤 束 核 に 伝 達 す る 。 情 報 量 が あ る 一 定 レ ベ ル に 達 す る と 、 嚥 下 中 枢 の 起 動 ニ ュ ー ロ ン か ら 嚥 下 プ ロ グ ラ ム が 起 動 さ れ 、 疑 核 近 隣 の 腹 側 神 経 群 に 想 定 さ れ て い る 切 り 替 え ニ ュ ー ロ ン か ら 、 関 連 の 末 梢 神 経 に そ れ ぞ れ の 運 動 プ ロ グ ラ ム が 伝 達 さ れ 、 一 連 の 嚥 下 運 動 が 起 こ る （ 才 藤 他 2014, 進 2000, 梅 崎 2007）。 こ の よ う に 嚥 下 反 射 を 惹 起 す る に は 、 咽 喉 頭 粘 膜 か ら の 感 覚 入 力 が 必 須 の 条 件 で あ る 。
5. 咽 喉 頭 知 覚 感 受 機 能 に お け る 加 齢 の 影 響
咽 喉 頭 粘 膜 に は 、 舌 咽 神 経 お よ び 迷 走 神 経 か ら 分 岐 し た 上 喉 頭 神 経 内 枝 お よ び 迷 走 神 経 の 咽 頭 枝 の 感 覚 神 経 終 末 が 部 位 に よ っ て 異 な っ た 密 度 で 広 く 分 布 し て い る （ 宮 崎 1996, Miyazaki et al 1999, 進 2000）。 喉 頭 粘 膜 は 喉 頭 腔 、 声 門 下 を 除 い て ほ10 と ん ど が 重 層 扁 平 上 皮 で お お わ れ て お り 、 そ の 表 層 近 く で は 細 胞 間 隙 が 離 解 し て お り 、 細 胞 間 接 着 も 疎 性 で あ る 。 そ の 上 皮 内 に 侵 入 す る 神 経 終 末 の 数 は 喉 頭 蓋 、 喉 頭 蓋 喉 頭 面 の 基 部 、 披 裂 喉 頭 蓋 ヒ ダ や 披 裂 部 に 比 較 的 高 い 密 度 で 認 め ら れ て い る 。 こ れ ら の 自 由 神 経 終 末 は 機 械 的 刺 激 の み な ら ず 粘 膜 表 面 に 作 用 す る 溶 液 が 間 質 に 拡 散 す る こ と に よ り 化 学 的 刺 激 に も 鋭 敏 に 反 応 し う る 構 造 を 示 し て い る （ 進 1994）。 咽 喉 頭 周 辺 の 粘 膜 は 、 舌 咽 お よ び 上 喉 頭 神 経 知 覚 線 維 に よ り 重 複 支 配 を 受 け て お り 、 こ れ ら の 神 経 か ら 嚥 下 中 枢 へ の 入 力 は 共 同 的 に 作 用 し て 嚥 下 反 射 を 効 率 よ く 惹 起 し て い る と 考 え ら れ る （ 宮 崎 1996, Miyazaki et al 1999）。 と こ ろ が 、 高 齢 者 で は 、 喉 頭 粘 膜 に み ら れ る 上 皮 表 層 の 細 胞 内 角 硝 子 顆 粒 の 増 加 と 細 胞 間 隙 の 狭 小 化 に よ り （ 進 1994）、 上 皮 内 に 神 経 終 末 が 侵 入 し て こ ら れ な く な り 、 刺 激 を 感 受 す る 神 経 線 維 数 が 上 皮 内 で 減 少 し て い る と 考 え ら れ る 。 実 際 に 、 剖 検 時 に 成 人 6 人（ 46.3 歳 ）と 高 齢 者 6 人（ 78.5 歳 ）か ら 採 取 さ れ た 1 ㎝ の 断 片 か ら 、 迷 走 神 経 の 分 岐 で あ る 上 喉 頭 神 経 と 下 喉 頭 神 経 （ 反 回 神 経 ） に お け る 有 髄 線 維 数 を 比 較 し た 実 験 が あ る 。 そ の 結 果 、 下 喉 頭 神 経 に お け る 有 髄 線 維 の 総 数 が 成 人 群 は 高 齢 者 群 に 比 べ 有 意 に 多 か っ た （Tiago R and Pontes 2007）。 有 髄 線 維 数 の 減 少 は 、 そ の 末 端 に 伸 び る 無 髄 の C 線 維 数 に も 影 響 し 、刺 激 を 感 受 す る 線 維 数 の 減 少 に よ り 感 覚 入 力 能 力 の 低 下 に つ な が っ て い る と 考 え ら れ る 。 ま た 、Mortellit ら も 剖 検 で 得 ら れ た 死 後 の ヒ ト の 上 喉 頭 神 経 に お け る 加 齢 性 変 化 を 検 討 し て い る 。 こ れ に よ り 、 高 齢 者 は 若 年 者 よ り も 平 均 有 髄 神 経 線 維 数 が31%減 少 し て い る こ と が 報 告 さ れ て お り （Mortelliti and Malmgren 1990）、 加 齢 に よ り 上 喉 頭 神 経 線 維 数 の 減 少 に よ る 感 覚 入 力 の 低 下 を 示 唆 し て い る 。
6. 咽 喉 頭 粘 膜 に お け る 感 覚 入 力 の メ カ ニ ズ ム
感 覚 入 力 の 減 少 は 、 活 動 電 位 の 発 生 を 遅 延 さ せ る 。 神 経 細 胞 は 、 刺 激 に よ っ て 静 止 膜 電 位 か ら 一 過 性 に 膜 電 位 が 変 化 し 、 刺 激 の 量 が 一 定 の レ ベ ル に 達 す る と 活 動 電 位 を 起 動 さ せ る 。 活 動 電 位 の 発 生 に よ り 細 胞 内 の 陽 イ オ ン の 流 入 が 起 こ る 。 こ れ を 司 る 陽 イ オ ン 透 過 性 の イ オ ン チ ャ ネ ル の 多 く は 高 い カ ル シ ウ ム イ オ ン 透 過 性 を 持 ち 、 そ の 中 心 的 分 子 が TRP（ transient receptor potential）イ オ ン チ ャ ネ ル ス ー パ ー フ ァ ミ リ ー に 属 す る カ プ サ イ シ ン 受 容 体 TRPV1 で あ る 。 TRPV1 の 活 性 は 、 ホ ス フ ァ チ ジ ル イ ノ シ ト ー ル 2 リ ン 酸 で 恒 常 的 に 抑 制 さ れ て お り 、神 経 栄 養 因 子 NGF（ nerve grown factor） や ブ ラ ジ キ ニ ン で 活 性 化 さ れ た ホ ス ホ リ パ ー ゼ C と い う 酵 素 に よ り 取 り 除 か れ る こ と に よ っ て TRPV1 は 感 作 さ れ る 。 ま た 、 ブ ラ ジ キ ニ ン や ATP に よ っ て 起 こ る プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼ （PKC） の 活 性 化 に よ る TRPV1 の リ ン 酸 化 に よ っ て も TRPV1 は 感 作 さ れ る （ 塩 谷 他 2008, 富 永 2008）。 し か し 、 こ れ ら の 物 質 は 内 在 性 の も の で あ る こ と か ら 、 タ イ ミ ン グ よ く 効 果 的 に 分 泌 量 を コ ン ト ロ ー ル す る こ と は 困 難 で あ る 。 そ の た め TRPV1 に 対 し 外 因 性 の リ ガ ン ド を 用 い て 反 応 さ せ る こ と を 検 討 す る 必 要 が あ る 。TRPV1 は 、感 覚 神 経 の 中 の 無 髄 の C 線 維 に 特 異 的 に 発 現 し 上 皮 細 胞 な ど で 存 在 が 確 認 さ れ て い る 。TRPV1 は 別 名 カ プ サ イ シ ン 受 容 体 と 呼 ば れ る よ11
う に 、低 濃 度 の カ プ サ イ シ ン で TRPV1 は 脱 分 極 し 、細 胞 内 に カ ル シ ウ ム イ オ ン 濃 度 の 増 大 を も た ら す （Caterina and Julius 2001）。 カ プ サ イ シ ン は 脂 溶 性 の た め 、 前 述 の よ う に 加 齢 に よ り 細 胞 間 隙 が 接 着 し て し ま っ て い て も 細 胞 膜 か ら 進 入 し 神 経 細 胞 や C 線 維 ま で 行 き 着 く と 考 え る 。そ れ で も 、C 線 維 数 の 減 少 に と も な い TPRV1 の 発 現 数 が 総 体 的 に 減 少 す る 可 能 性 が あ る た め 、 少 な い C 線 維 に 高 密 度 の TRPV1 を 発 現 さ せ る 必 要 が あ る 。 そ の た め に は 、 受 容 体 に 対 す る リ ガ ン ド 数 を 増 や す こ と で TRPV1 の 数 量 的 up-regulation を は か れ ば よ い と 考 え る 。
7. 感 覚 入 力 の 感 受 性 を 高 め る 方 法
TRPV1 の 発 現 数 を 多 く す る こ と で 、受 け る 刺 激 の 量 が 増 大 し 、活 動 電 位 が 発 生 し や す く な る 。 そ う す る と 、 末 梢 の 刺 激 開 始 か ら ニ ュ ー ロ ン の 終 末 部 分 に 到 達 す る 時 間 が 短 縮 で き 、カ ル シ ウ ム イ オ ン の 流 入 が 促 進 さ れ た 結 果 、神 経 伝 達 物 質 で あ る SP （substance P） の シ ナ プ ス 間 隙 部 分 へ の 遊 離 が 促 進 さ れ 、 即 座 に 嚥 下 反 応 に 移 行 さ れ る 。 TRPV1 は 、カ プ サ イ シ ン 受 容 体 と も い わ れ 、カ プ サ イ シ ン は 外 因 性 リ ガ ン ド と し て TRPV1 と 結 合 す る 。 Rofes ら の 研 究 で も タ バ ス コ に よ る TRPV1 刺 激 は 、 高 齢 患 者 の 嚥 下 に お け る 喉 頭 前 庭 で の 侵 入 と 咽 頭 残 留 物 を 減 少 さ せ 、 嚥 下 反 応 を 短 く し た と 報 告 し て い る(Rofes et al 2012)。 ほ か に も い く つ か の 研 究 で カ プ サ イ シ ン が 嚥 下 反 射 惹 起 を 短 縮 す る こ と を 検 証 し て い る （Ebihara T et al 1993, 後 藤 他 2013）。 し か し 、 こ れ ら の 先 行 研 究 は 、 カ プ サ イ シ ン を 摂 取 し た 直 後 の 反 応 で あ り 、 一 時 的 な 効 果 で あ る 。 高 齢 者 の 加 齢 性 の 機 能 低 下 を 改 善 し 維 持 さ せ る た め に は 、 末 梢 性 の 知 覚 入 力 だ け で な く 、 中 枢 性 の 神 経 細 胞 の 興 奮 性 を 繰 り 返 し 高 め る こ と で シ ナ プ ス の 可 塑 性 を も た ら す 必 要 が あ る と 考 え る 。 こ こ で 考 え る シ ナ プ ス の 可 塑 性 と は 、 加 齢 に よ っ て 低 下 し た 嚥 下 反 射 惹 起 の 閾 値 の 調 整 に 関 し 、 外 界 か ら の 繰 り 返 し の 刺 激 に よ っ て 嚥 下 の 神 経 機 構 が 機 能 的 に 改 善 す る 性 質 の こ と を 指 す 。 し か し 、 カ プ サ イ シ ン を カ ル シ ウ ム イ オ ン 存 在 下 で 長 時 間 、 あ る い は 繰 り 返 し 投 与 す る と TRPV1 電 流 の 減 少 （ 脱 感 作 ） が 起 こ る こ と が 観 察 さ れ て い る 。 こ の こ と は 、 カ ル シ ウ ム イ オ ン 存 在 下 で の こ と で あ る と い う こ と に 注 目 す る と 、 カ プ サ イ シ ン で TRPV1 を 刺 激 し た 後 、TRPV1 が 活 動 性 を 回 復 し な い 短 時 間 の う ち に 高 濃 度 の カ プ サ イ シ ン ま た は 、高 頻 度 で の カ プ サ イ シ ン を 投 与 す る こ と に よ っ て 起 こ る も の と 考 え る 。 つ ま り 、 適 度 な 間 隔 を あ け て 投 与 す れ ば 、TRPV1 の 脱 感 作 を 防 ぎ 、興 奮 性 へ の 感 度 を 上 げ る こ と が 可 能 で は な い か と 考 え る 。実 際 、Ebihara ら は 、カ プ サ イ シ ン ト ロ ー チ を 高 齢 者 に 対 し て 4 週 間 連 日 投 与 し た と こ ろ 、 嚥 下 反 射 惹 起 が 介 入 前 に く ら べ 有 意 な 改 善 を 見 せ て い る （Ebihara et al 2005）。 こ の 4 週 間 と は 毎 食 前 に 口 腔 内 に 一 定 濃 度 の カ プ サ イ ン 含 有 ト ロ ー チ を 溶 か し た も の で あ る 。 つ ま り 、 各 食 事 程 度 の 間 隔 を あ け 、 中 長 期 定 期 的 に カ プ サ イ シ ン を 投 与 す る こ と で TRPV1 の 脱 感 作 を 防 ぎ 、 活 動 電 位 発 生 ま で の 時 間 を 短 縮 す る も の と 考 え る 。12
8. 加 齢 に よ る 嚥 下 反 射 機 能 低 下 に 対 す る 看 護 介 入 の 現 状
前 述 の よ う に 加 齢 に よ り 上 喉 頭 神 経 線 維 数 の 減 少 に よ る 感 覚 入 力 の 低 下 に 関 連 し て 活 動 電 位 の 発 生 の 遅 れ が 起 こ る こ と で 嚥 下 反 射 の 惹 起 性 が 遅 延 す る こ と が 分 か っ た 。 こ の こ と か ら 、 高 齢 者 の 咽 喉 頭 粘 膜 に お け る 感 覚 入 力 の 感 受 性 を 向 上 さ せ る こ と が で き れ ば 、 若 年 者 に 近 い 機 能 に 回 復 で き る よ う に な り 、 誤 嚥 を 予 防 で き る 。 こ の よ う な 嚥 下 反 射 機 能 の 低 下 予 防 の た め の 看 護 介 入 は 、 人 々 が 食 事 を 常 に 安 全 に 摂 取 で き る 状 態 が 脅 か さ れ に く く な り 、 人 々 の 身 体 的 な 健 康 の み で な く 、 精 神 的 な 健 康 と 社 会 的 活 動 の 拡 大 に も つ な が り 、 高 齢 者 の 活 躍 の 場 の 広 が り を 可 能 に し 、 高 い QOL の 維 持 や 向 上 に つ な げ る こ と が で き る 。つ ま り 、嚥 下 反 射 機 能 低 下 予 防 の た め の 介 入 は 、 健 康 増 進 お よ び 疾 病 予 防 に つ な が る 重 要 な 看 護 職 者 の 役 割 の 一 つ で あ る 。 そ こ で 、 嚥 下 反 射 機 能 低 下 予 防 の た め の 看 護 介 入 の 現 状 に つ い て 文 献 検 討 を 行 っ た 。研 究 対 象 は 、医 学 中 央 雑 誌 Web 版（ 2016 年 1 月 ）を 使 用 し 1997 年 か ら 2016 年 お よ び 、Pub Med（ 2016 年 1 月 ） を 使 用 し て 1900 年 か ら 2016 年 に か け て 検 索 さ れ た 文 献 を 対 象 と し た 。国 内 文 献 は キ ー ワ ー ド を（ 高 齢 者, 嚥 下 機 能 , 予 防 ）と し 、海 外 文 献 は キ ー ワ ー ド を（elderly, swallowing, prevention） と し た 。そ の 後 、会 議 録 、 総 説 を 除 き 、 加 齢 に よ る 嚥 下 機 能 低 下 予 防 の た め の 看 護 介 入 に つ い て 記 載 さ れ て い る 文 献 を 抽 出 し た と こ ろ 、 最 終 的 に は 4 件 （ 国 内 文 献 4 件 、 海 外 文 献 0 件 ） の み で あ っ た（ 表 1）。除 外 し た 文 献 の 多 く は 、高 齢 者 の 嚥 下 機 能 の 実 態 に 関 す る も の 、嚥 下 障 害 を も つ 人 へ の 治 療 や リ ハ ビ リ で あ っ た 。 ま た 、 看 護 職 以 外 の 歯 科 医 や リ ハ ビ リ ス タ ッ フ が 実 施 し た も の が 散 見 さ れ た 。 抽 出 し た 4 件 は 、 体 操 を 介 入 媒 体 と し 定 期 的 な 実 施 が 嚥 下 機 能 に 影 響 を 与 え る か を 検 証 し た も の が 3 件（ 嚥 下 体 操 2 件 , 口 腔 体 操 1 件 ）、食 形 態 を 変 化 さ せ た 効 果 を 検 証 し た も の が 1 件 で あ っ た 。 嚥 下 体 操 と は 、 頬 を 膨 ら ま せ た り す ぼ め た り 、 舌 を 突 出 し た り 引 い た り な ど の 口 腔 周 囲 か ら 、 頸 部 の 前 後 屈 、 側 屈 、 回 旋 、 肩 の 上 下 運 動 な ど の 頸 部 の 筋 群 の リ ラ ク ゼ ー シ ョ ン や 食 事 へ の 意 識 化 に よ っ て 摂 食 の 準 備 を 整 え る 体 操 の こ と で あ る （ 穴 井 他 2001）。 嚥 下 体 操 の 効 果 に 関 し て は 、 嚥 下 体 操 が ヒ ト 唾 液 抗 酸 化 能 に 与 え る 影 響 （ 一 瀬 他 2015） や 嚥 下 時 筋 活 動 （ 安 静 時 の 喉 頭 位 置 や 嚥 下 時 の 舌 骨 上 筋 群 の 活 動 ） に 及 ぼ す 影 響 （ 渡 辺 他 2015） が 報 告 さ れ て い る 。 ど ち ら も 嚥 下 体 操 に よ る 明 ら か な 影 響 は 認 め ら れ て い な い こ と か ら 、 嚥 下 体 操 の 作 用 機 序 は 明 ら か と は 言 い 難 い 。 し か し 、 嚥 下 体 操 を 行 っ た 3 例 は 、 摂 食 ・ 嚥 下 に お け る 咽 頭 期 の 嚥 下 反 射 の 惹 起 性 を 定 量 的 に 測 定 す る 反 復 唾 液 嚥 下 テ ス ト（RSST：the repetitive saliva swallowing test） （ 小 口 他 2000a, 小 口 他 2000b）を 共 通 の 評 価 指 標 と し て い る こ と か ら 、嚥 下 に お け る 反 射 惹 起 性 の 改 善 を 期 待 し て い る も の と 推 察 さ れ る 。た だ し 、RSST は 意 識 的 に 嚥 下 を 繰 り 返 す テ ス ト で あ る こ と か ら 随 意 嚥 下 の 機 能 を 反 映 し て い る と 考 え る 。 嚥 下 体 操 を 行 っ た 対 象 文 献 3 件 の う ち 2 件（ 相 原 他 2010, 穴 井 他 2001）は 介 入 前 よ り も 介 入 後 の RSST の 嚥 下 回 数 が 改 善 傾 向 を 示 し て い る が 、残 り 1 件（ 長 野 他 2014）は13 RSST の 明 ら か な 改 善 効 果 は 示 さ れ て い な い 。 こ の 1 件 は 対 象 者 数 が 少 な い こ と と 基 礎 疾 患 が 特 異 的 で あ る こ と が 結 果 に 影 響 し て い る 可 能 性 が あ る 。 ま た 、 効 果 の あ っ た 2 件 に 関 し て も 体 操 の 種 類 、 回 数 、 実 施 す る 時 刻 な ど 一 致 し た 方 法 で は な い こ と か ら 、 効 果 的 な 嚥 下 体 操 の 方 法 の 確 立 が で き て い る と は 言 い 難 い 。 ま た 筋 肉 へ 直 接 的 に 働 き か け て い る こ と 、 随 意 的 な 嚥 下 反 射 機 能 を 反 映 す る も の で あ る こ と な ど か ら 、 高 齢 者 の 咽 喉 頭 に お け る 感 覚 入 力 の 低 下 を 改 善 さ せ る も の で は な い 。 残 り の 対 象 文 献 1 件（ 八 巻 他 2012）の 食 事 形 態 の 変 更 に よ る 嚥 下 機 能 へ の 影 響 を 検 討 す る 文 献 で は 、 摂 取 す る 食 品 の 形 態 を 変 更 す る こ と で 、 咀 嚼 を 引 き 出 す こ と に 効 果 は あ る も の の 直 接 咽 頭 期 嚥 下 の 感 覚 入 力 を 刺 激 す る も の で は な い 。 以 上 よ り 、 加 齢 に よ る 嚥 下 反 射 機 能 低 下 に 対 す る 生 理 学 的 視 点 か ら の 看 護 介 入 に よ る 成 果 は 未 だ 認 め ら れ て い な い 。 前 述 し た よ う に 誤 嚥 の 直 接 原 因 と な る 咽 喉 頭 粘 膜 刺 激 に 対 す る 感 受 能 力 を 回 復 さ せ 維 持 し て い く こ と は 高 齢 者 の 嚥 下 機 能 に お い て 多 く の 問 題 を 招 く 原 因 の 解 決 に つ な が る も の と 考 え る 。 そ の た め 、 高 齢 者 の 嚥 下 反 射 機 能 低 下 予 防 に 対 す る 生 理 学 的 知 見 に 基 づ く 介 入 方 法 の 提 案 は 看 護 職 者 に お け る 喫 緊 の 課 題 で あ る 。
9. 結 語
高 齢 者 の 嚥 下 反 射 惹 起 遅 延 の 原 因 は 、咽 頭 粘 膜 に お け る 舌 咽 神 経 末 端 の C 線 維 の 上 皮 細 胞 内 へ の 分 布 の 減 少 に よ り 刺 激 の 感 受 性 が 低 下 し 、 活 動 電 位 を 発 生 さ せ る た め の 脱 分 極 が 十 分 に 行 わ れ な い た め で あ る と 考 え ら れ る 。TRPV1 は 、カ プ サ イ シ ン 感 受 性 受 容 体 で あ る こ と か ら カ プ サ イ シ ン を 一 定 量 投 与 す れ ば 、C 線 維 に お け る TRPV1 の 発 現 を 増 加 さ せ る こ と が で き る 。 多 く の カ プ サ イ シ ン が TRPV1 と 結 合 す る と 活 動 電 位 を 発 生 す る た め の 閾 値 に 速 く 到 達 し や す く な り 、 嚥 下 反 射 惹 起 の 短 縮 に つ な が る と 考 え る 。 ま た 、 こ の 刺 激 を 適 切 な 間 隔 を あ け な が ら 継 続 的 に 刺 激 す る こ と で 、 シ ナ プ ス の 可 塑 性 の 発 現 が 期 待 で き る 。 以 上 の よ う に 高 齢 者 の 嚥 下 機 能 の 生 理 学 的 な 変 化 に 対 す る 看 護 介 入 を 報 告 し た 先 行 研 究 は な く 、 高 齢 者 の 生 理 的 変 化 に 基 づ く 嚥 下 反 射 機 能 低 下 を 予 防 す る た め の 看 護 介 入 方 法 の 検 討 が 求 め ら れ て い る 。引 用 文 献
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16 表1 高齢者の嚥下機能低下に関する看護介入：対象文献一覧 筆頭著者 （発行年） 研究目的 研究対象 介入方法 評価方法 結果・考察のうち 嚥下機能に関する記述 穴井めぐみ （2001） 施設入所中の摂食・嚥 下障害のない高齢者を 対象として、嚥下体操 の効果を明らかにする 老人保健施設入所者15 人 男1 人、女 14 人、 78.9±6.04 歳 介入期間：3 回/日、食前 10 分を 8 週間 介入方法：嚥下体操 ・深呼吸2 回 ・首の前屈・後屈・左右側屈・回 転運動1 回 ・肩の上下運動2 回 ・上半身左右傾け運動1 回 ・口、舌、頬の運動1 回 ・口周囲、耳下腺、顎下腺、頸部 前面のマッサージ1 回 ・空嚥下1 回 ・唾液分泌 ・開口度 ・反復唾液嚥下テスト（RSST） ・唾液分泌量、開口度、 反復唾液嚥下回数が嚥 下体操を実施する前よ り、8 週間実施後に有 意に増加した。 ・嚥下体操を実施する前 の唾液分泌量は1 回嚥 下体操を実施した後で 有意に増加した。 相原洋子 （2010） 3 か月間の口腔体操が与える主観的・客観的 口腔機能状態、食品摂 取の多様性、心身の健 康状態への影響につい ての検証 介護認定を受けていない65 歳以上 60 人 Ⅰ群（介入群） ：30 人、71.9±4.7 歳 Ⅱ群：30 人、69.7±5.1 歳 介入期間：1 回/日を 3 か月 ⋆1 回/週（計 9 回）集団で実施 介入方法：口腔体操 ・首の左右側屈・回旋運動10 回 ・首の回転運動5 回 ・口、舌、頬の運動5 回 ・唾液線マッサージ5 回 ・主観的口腔健康感（GOHAI） ・反復唾液嚥下テスト（RSST） ・咀嚼力 （咀嚼力判定用ガム5 段階評価） ・食品多様性 ・うつ状態（GDS） ・体重、身長、BMI ・RSST の平均値が、Ⅱ 群では減少傾向であっ たのに対し、Ⅰ群では 増加傾向を示した。 ・そのほかは明らかな変 化を認めなかった。 長野浩二 （2014） 老年期精神障がい者に 対する嚥下体操の効果 の程度を明らかにする 老年期精神障がい者 4 人 50 代 1 人、60 代 1 人、 70 代 1 人、80 代 1 人 介入期間：昼食時15～30 程度を 4 か月 介入方法：「おいしく食べるため の～嚥下体操～シナリオ」をア レンジ・詳細の記載なし ・改訂水飲みテスト（MWST） ・RSST ・MWST：4 人中 2 人は 3 回目評価から改善、 1 人は維持した。 ・RSST：4 人中 1 名の み4 回目で改善。 八巻法子 （2012） 高齢者を対象にソフト 食に食事を置き換える ことで栄養面および摂 食・嚥下機能面にどの ような影響を及ぼすか 介護付き有料老人ホーム入 所者 13 人 男6 人、女 7 人、 82.9±10.7 歳 介入期間：2 か月間 介入方法：食形態をソフト食に変 更する ・摂食・嚥下機能のグレード・摂 食状況のレベル・嚥下障害リスク 評価食度改定版・GOHAI・覚醒 状態・食事中のむせ・食事時間・ 食事摂取量・アルブミン値、プレ アルブミン値・体重測定 ・嚥下機能自体に著明な 変化は認めなかった。 ・咀嚼運動をひきだすこ とに効果がある。
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