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甲南女子大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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(1)

聴 覚 障 害児 の読 み書 き能 力 向上 のた めの 日本 語 指 導

一外国人向け日本語教育的視点による言語教育プログラムー

(2)

目次 第一章 序論 1 1.1研究 の 目的_………_¨………Ⅲ………… …Ⅲ…………ⅢⅢ………‐ ‐………‐ 3 1.2研究 の背 景……

__…

…… … … … …… …… … … ……… … … ……… ……… … ……… …5 1.3本論 の構 成 につ い て 。

____…

……… ……… … … …‐一 ―

… …… ……… …… 第二章 聴覚障害が言語習得に及ぼす影響 6

2.1

健聴児の言語習得 ……… 2.1.1健聴児 (乳幼児期

)の

言語発達_………………… 6 2.1.2健聴児の助詞・構文の発達_……… 8 2.1.3健聴児 (学齢期

)の

語彙の習得

___…

……… 8 2.1.4健聴 児 の音 韻操 作能 力 と読 み書 き能 力.…… … …… … … …… … … ……… … … …… 9 2.1.5音声 の情 報 と文理解.…… … … … ……… … … ‐一 … … … …… …… 10 2.1.6聴 覚主導の言語習往

__…

………

2.2

聴覚障害による二次的障害 としての言語能力の問題_……… 1° 10 2.2.1語彙の問題

___…

……… ……… 11 2.2.2文法 の問題_Ⅲ…Ⅲ………Ⅲ……Ⅲ…‐‐……‐‐………‐ ¨‐…………‐…………‐………Ⅲ……Ⅲ…Ⅲ…

2.3

聴覚障害による二次的障害 としての言語能力の問題.……Ⅲ………‐一‐………… 12 13 2.3.1比喩理 解 の 問題_………… … … …… …… … …… … … …… … … …… Ⅲ…… 14 2.3.2抽象語理解の問題

___…

……… ……… ………… … 15 2.3.3思考能 力 の 問題_………Ⅲ……… ………¨……… 第二章 聴覚障害児のための言語教育 プログラムー外国人向け日本語教育の手法の可能性一 17

3.1

言語教育プログラムの必要性

.___…

………Ⅲ…… 18

3.2

既存プログラムの概要 と問題点

_…

………… ……… ……… 3.2.1聴覚障害児教育の既存プログラム① 「聴覚 口話法」.………18 18 3.2.2「聴覚 口話法」の成果 と問題

_____一

……… ……… … 3.2.3聴覚障害児教育の既存プログラム②「 トータル コミュニケーシヨン (TC)」 ………19 3.2.4「 トー タル コミュニケーシ ヨン」の成果 と問題_…………‐………‐‐」型 3.2.5聴覚障害児教育の既存プログラム③ 「バイ リンガル教育 (ノ`イリンガル・ 21 バイカルチ ヤ ・ アプ ロ チ)」 ………………Ⅲ 3.2.6「 バイ リンガル教育 (バイリンガル・バイカルチヤー・アプロチ)」 の成果 と問題

__…

21 22

3.3

日本語教育的手法の可能性

__…

……… 3.3.1記述における日本語学習者 との共通点_…………′2 22

①文法上の誤り

.…

………

……

……‐

一一―・

(3)

②自・他動詞の使用上の誤 り

_…

……

23

23 ③語彙・表現の誤 り

____…

…… ……… ……… …… …… ……… … ④音韻的な誤 り_…………

24

3.3.2年少者 日本語教育 との共通点

__…

………

25

3.3.3国語教育 と日本語教育 _……… …

26

3.3.4求められ る言語教育プログラム像._…

27

第四章 聴覚障害児 (学齢期

)の

ための言語教育プログラム案 -OPl(Oral Proficiency lnter宙 ew Test)の基準を利用して一

4.1

聴覚障害児 (学齢期

)の

ための言語能力評価基準

.__…

…… … …… … ……… … …‐…28

4.1.1 0PI(Oral PrOficiency lnterview Test)`D透 基当諄 _………28

4.1.2 0PIに 依拠 した基準 を作成す る理 由_…

29

4.2 0PIに

依拠 した聴 覚障害児 のための言語能力評価基準

_____…

…… … … Ⅲ‐31 4.2.1基準の具体的内容

___…

… … … ……

32

4.3

発 達的視 点 を含 めた聴 覚障害児 の言語 教育 プ ログラム

.__…

… … … … ……… … … ‐35 4.3.1重度聴 覚障害児 の指導 に利 用 され てい る発達段階の評価基準 _¨

___一

一 一 …35 37 4.3.2学齢期 の課題 …… … … … …… … … … ……… … 一 一一 一 ― ………… …Ⅲ… … … …… 4.3.3聴覚障害児 (学齢期

)の

た めの言語 教育 プ ログラム案 4.3.4聴覚障害児 (学齢期

)の

ための言語教育プログラム案の語彙 と文型 第五章 聴覚障害児の読み指導

5.1

聴覚障害児の文理解の現状 と問題点

5.1.1聴

覚障害児の文理解の方略

5.1.2聴

覚障害児 の文・ 文理解 の問題 点

5.2.聴

覚障害児 の読み指導 の現状 と問題 点

5.3

対策一 リライ ト教材 5.3.1リ ライ ト教材 の作成方法 と使用方法概要 5.3.2小 学校

2年

配当教材 。物語文『 スーホの白い馬』 5.3.3中学

1年

配 当教 材 。説 明文 「クジ ラの飲 み水 」 5.3.4中 学

1年

配 当教材 。物語 文 「空 中ブ ランコ乗 りのキキ」 5.3.5中 学

1年

配 当教材 。物語文 「トロ ッコ」

5.4

実践―

B聴

覚特別支援学校での取 り組み 5.4.1「空 中ブ ラ ン コ乗 りの キ キ」 の実践 5.4.2「 トロ ッコ」の実践 37 40 46 46 46 49 50 50 51 52 53 53 54 55 55

(4)

5.4.5そ の他 の作品の実践 57 58

5.5

考察 資料 5,3.2.1 資料 5.3.2.2 表 5.3.2.3 表 5.3.2.4 資料 5.3.3 資料 5.3.4.1 資料 5.3.4.2 資料 5.3.5。 1 資料 5.3.5.2 資料 5.3.5.3 資料 5.3.5.4 「スーホの 白い馬」 リライ ト版

__…

… … … … …… … …… …… …… ……61 「スーホの 白い馬 ワー クシー ト」.____………… ………64 「スーホの白い馬」原文 語彙表

.____一

… … … …67 「スーホの 白い馬」 リライ ト版 語彙表 。… …… …… … … …… … ‐68 「クジラの飲み水」 リライ ト版

__…

… … …… … …… …… …… … …69 「空 中ブランコ乗 りのキキ」 リライ ト版 ………‐‐‐‐………‐‐‐‐―・‐72 「日本語 の表現 を勉 強 しよ う 比喩 」 「トロッコ」 リライ ト版 第一段階 (レベル4) 「トロッコ」 リライ ト版 第二段階 (レベル3) 「トロッコ」 リライ ト版 第二段階 (レベル2) 81 82 85 88 「や りもらい 。受身形の助詞練習」

. 91

第六章 聴覚障害児の書 き指導 91 6.1_…………… ……… ……… ……… ……… ……… …… …………… 6.2聴覚障害児 の作文 にお ける問題点_¨… …

91

6.2.1小

学校 中学年 の作文 .…… … … …

94

6.2.2小

学校 高学年 の作文 .__… … …… … …

95

6.2.3中

学生(中学部)の作文_…… ………… 一

- 95

6.2.4高

校生(高等部)の作文

__…

……… ………

96

6.3

聴覚障害児 の書 き指導 (作文教育

)の

現状 と問題 点 ¨_¨

__…

…… … … …… … ‐97 6.3.1聴覚特別支援 学校 にお ける作文指導 の現状 と問題点

__…

…… …… …一 ― ¨一 ¨… …97 6.3.2聴覚特別支援学校教員 が捉 える作文教育 の問題 点

___…

…… … … …… …… … …… ‐98

6.4

対策一 日本語教育的視′点を含 んだ指導

_ 98

99 6.4.1文法 指 導_……… … … …… … … …… … … …… …… … … … 6.4.2文法・ 語彙 の 「視 覚化 」.…… … … ……

100

6.4.3作文 のテー マ選 択 につ い て_…………

102

6.4.4作文 の添 削 と事前 、事後 指 ミ

____…

104

105 6.4.5日 記 指 導 …… … … …… … … … …… … … …… … … …… …… … … …… … 106 6.4.6評 価 に つ い て .… … … … …… … … … 一 一 一 一 ― 一 一 … … … …

6.5 B聴

覚特別支援学校 での実践.……… ……

106

6.5.1「 自分 ノー ト」の活用 .…… … … … ……

107

6.5.2文 法の指導

.___…

…… … …… …… ……

108

6.5.3作文 の課題 と評 価

__…

…… …… 108

6.6

考 察 109

(5)

資料

6.3

表 6.4.3.1 表 6.4.3.2 表 6.4.3.3 表 6.4.3,4 表 6.4.3.5 表 6.4.3.6 表 6.4.3.7 表 6.4.3.8 資料6.4.1 資料6.4.2 資 料 6.4.3 ア ンケー ト調査用紙 111 「作文のテーマ」_………Ⅲ…… ……‐…………

Hl

「作文の 目的」_.………____一¨¨………Ⅲ…112 「目的を達成 させ るための工夫」.……… … … ……… … … ¨一 … …

H2

「具体的な指導法」

___…

… … … ……… ………113 「作文 の評価 」 114 「日記指導」_…… … … …… … … … …… … … … ……114 「作文が苦手な子 どもに対す る工夫」_…… … … …・114 「言語的問題 の所在」

______…

… … … …・115 陳述 副詞 、受身文の練習 問題

_____…

…… … … … …… … …116 「 時 」 の 指 導 … … … ‐ 一 一 ― 一 一 一 一 ― ‐ 一 一 …… … … H7 疑問詞 を使 つた手話的説 明の場合 。

____一

¨… … …… … …117 第七章 ま とめ・ 展望 119 7.1序論

.__…

… … … … 7.2聴覚障害 が言語習得 に及 ぼす影響 _……

120

7.3聴覚障害児 のた めの言語 教育 プ ログラムー 日本語教育的手法 の可能性_……… ……120 7.4聴覚障害児 のた めの言語 教育 プログラム案 (OPIを 利用 して

).______…

121 7.5聴覚障害児 の読み指導 … …… … … …… …

121

7.6聴覚障害児 の書 き指導 …… … … …… …

- 122

123 7.7展 望 _____¨ 一 一 一 一 … … … Ⅲ… … … … 一 一 … … … …

(6)
(7)

1.1

研 究 の 目的 聴覚障害児 に特別 な手立て を与 えなけれ ば、 こ とば をほ とん ど習得で きない とい つた事 例 は過去 に少 な くない(オリバー・サ ックス 1996)。 現在 の特殊教育 にあつて も、聴 覚障 害児 の言語発達 の遅れ は、既 に多 くの研 究者や現場 の教師 に指摘 されてい る ところで あ る。 聴 覚障害児 に とつての読み書 き能力 、つ ま り文章読解 お よび文章作成の能力 は、健聴 児 よ りも社会的 な必要度 は高い に もかかわ らず 、聴 覚障害児 の平均的 な読みの レベル は 中学生 で も小学

4年

生相 当である(澤 2004)。 当然 の こ となが ら、 これまでに聴覚障害児 に対す る読 み書 き能力 向上 を 目的 とした指導法 が提案 され 、実行 されてきた。その成果 として、 健聴 児 と同等 か あ るい はそれ以上 の読 み書 き能力 を習得 した例 も見 られ る。しか し、 この よ うな成功例 は一部 の聴覚障害児 にのみ に見 られ、多 くの場合生活年齢 と比較 して低 い レ ベル に とどまつてい る(我妻 2003,小 田 2003,長 南2006)。 上記 のよ うな聴覚障害児の言語教 育 の現状 を踏 ま え、本研 究 は これ までの指導方法 とは異 な る新た な視点に よる読み書 き能 力 向上のための指導法 を考案す ることを 目的 としてい る。 これ までの指導法では、そのほ とん どは健聴 児 の言語発 達 に沿 つた方法や 、手話、指文 字 な ど視 覚 か らの入力 を重視 した方法 で ある。 これ らの指導法では読解 能力や 作文能力 の 問題 の原 因 を、聴 覚障害 とい う点 にのみ焦 点化 し、漠 然 と「聞こえないか ら、聞 こえを補 う方法 が必要 だ」「聞 こえないか ら、手話な どの視覚言語 を使 えばよい」と考 え られてきた。 ところが、健聴 児 は聴覚か らの入力 に よつて言語 の基礎 を構 築 し、その能力 を発達 させ て い くものであるため、健聴児 の言語発達 を基盤 とした指導法 を圧倒的に聴覚入 力の少 ない 聴 覚障害児 に適 用す るには無理 が ある。 また手話 な どの視 覚言語 は、それがひ とつ の言語 の表現形式 で あ り、それ を さらに 日本語 の読み書 きに連動 させ るためには、ひ とつ の言語 (手話 、指文字)か ら他 の言語(日本語書 きこ とば)へ 変換す る とい う複雑 さが あ る。 手話や 指 文字 は コ ミュニ ケー シ ョン手段 としては優れ てい るが、書 きこ とばの規則 をも学 ばなけ れ ば読み書 き能力 は向上 しない。 確 か に、言語能力 の発達 の遅れ の第一要因 は、ま さに「聴覚障害による言語入力の欠如・ 不足」であるため、「聞 こえを補 う方法」や 「視覚言語 の習得」が求められ るのは理 にかな ってい る。 しか しなが ら、従来のこの よ うな指導法 が聴覚障害児 の読み書 きに十分な成果 を上 げ るこ とがで きなかつた理 由は、いずれ もが 「発達」 に期待 され る部分が多か ったか らではない だ ろ うか。聴覚 か らに しろ、視 覚 か らに しろ、言語入力 があ りさえすれ ば健聴 児 同様 、 自然 に こ とばが発 達す る と考 え られ てい なか つただ ろ うか。健聴児の こ とばの発 達 は乳児期 か らの豊 富な聴 覚言語経験 に よつて な され るものであるが、聴 覚障害児に も健 聴 児 同様 に言語経験 が与 え られ てい る とは考 えに くい。 た とえ補聴器や人工 内耳を装用 し 聴 能 を高 めた として も、聞 こえの範 囲や 音質 な どは健聴児 同様 には保証 され ない。視覚言 語使 用 にお いて も、周囲のネイテ ィブス ピーカ

ら言語 を学習す る機 会 は健聴児 と比 し

(8)

境 が整 つてお らず 、言語 の 自然発 達 が望 み に くい状況 にある。 それに もかか わ らず 自然言 語発 達 に依拠 した指導法 が採 用 され て きた。 この こ とが聴 覚障害児 に読 み書きの困難 さを もた らしたのではないか と考 える。 この読み書 き能力の不十分 さは、語彙 の貧 困化や文法の不確 か さな どの言語 的な面 に表 れ るのみ な らず 、ひいては抽 象概 念 の理解 や思考力 にまで及 ぶ。一般的 に この よ うな抽象 概 念 の理解 や思考力 は、 こ とばで こ とば を説 明で きる語彙 力 と文法構築力に裏 打 ち された もので あるた め、聴覚障害児 の言語 能力 を考 える上で も、語彙や 文法の問題 をなお ざ りに はで きない。 この語彙や 文法 の問題 は、言語 的 な経験不足 が最 も大 きな理 由 とされてい る が、 この経験不足 を簡単 に解 消す ることはで きない。従来の「豊富な言語経験 に基づ く言 語発 達」 とい う発想 を基底 と した指導法 で は、いずれ にせ よ言語的 な困難 さを乗 り越 える こ とは難 しいのである。 本論 で提案す るのは、豊富 な言語経験 に代 わつて、効率的 な言語入力 をす るこ とに よつ て言語習得1を進 め よ うとす る指導法 で あ る。 自然 な言語環境 で得 られ る言語 情報 は未整理 な状態 で ある。 それ を整理 し、今必要 な もの を与 えてい くこ とで、言語発 達につ なげてい くとい うもので あ る。 これ には外 国語 と しての 日本語教 育の手法 を用い る。第二言語 とし て外 国語 を学ぶ場合、学習者 の 目標言語 の レベルや生活環境 な どに応 じて語彙や文法を選 択 し、習得す べ き言語規則や語彙 を トップ ダ ウン的 に与 える。第二言語 学習 では無秩序 な 入 力 は好 まれず 、 レデ ィネ スや ニー ズ を測 つて指導す るこ とが重要 であ る。この よ うな方 法 で、聴 覚障害児 が 「豊富 な言語経験 」 に基づ く言語習得 とい ういわばボ トムア ップ的な 形 式 での言語習得過程 で得 られ なか った ところを、トップダ ウン的 に入力 しよ うとすれ ば、 第 二言語 学習 と同様 の レデ ィネ スや ニー ズ に合 わせ る ことが肝要 とな る。 最終的 な 目標 を 生活年齢相応 の言語能力 と設 定 し、学習者 で ある聴 覚障害児 に欠如 してい る部分 を分析 し、 トップ ダ ウン的 に導入す る方法 は、抽象概 念理解や 思考 のた めに必要 な語彙 や 文法を身 に つ くまで待つのではな く、そ こへ至 るよ うに適切 な順序で導入す る とい う方法 とな りうる だ ろ う。 また、逆 に、本論 で提案す る よ うな手法 で具体的 な言語 的問題 に対応してい く う ちに、健聴児 の経験 に よる言語発 達 同様 、語彙力や 文法構 築力 が備 わつて くることも発達 段階 にある聴 覚障害児 には期待 され る と考 える。 本論 で述べ る聴 覚障害児 の読 み書 き能力 の向上 を 目的 と した言語指導方法 は、今まで発 達段 階 に応 じて プ ログラ ミング され てい る国語教育 の中でのみ考 え られ て きたこ とを、外 国語教育 の視 点で捉 えなお し、そ こで表 出 され た問題 点 に対応す る形で アプ ローチ をす る こ とで、聴覚障害児 の言語的問題 を解決 しよ うとす るものである。「外国人のための 日本語 教育」 の手法 を利用 したプ ログラム と指 導法 を提案 し、聴 覚障害児の読み書 き能力 向上 に 貢献 したい と考 えてい る。 また、 これ は現在聴 覚障害児教育 で採用 されてい る指導法 を否

│マ

鷺 ‖ 認 腑 慢 覗 蜆 覗 妥 憑 顧瞥 ま 躙 髯 」』

7乳

鈷 」』

?l混

硼 i詈 語習得」 と区別 している。本論では第二言語教育的指導 を中心に述べているため、聴覚障害児の言語が一時的、ない し 長期的に保持 され ることを 「習得」 とい う用語で統一 している。

(9)

定す るものではな く、それ らと併用可能 な新 しい読 み書 き指導法で ある。

1.2

研究 の背景 聴 覚障害 は少 なか らず言語 習得 に影響す る。一般的 な言語 習得は平L幼児期 に聴覚 を利用 した養育者 とのや り取 りによ り行 われ、その過程 で語彙や事物の概念 を習得 し、文法や表 現方法 を身 につ け る。聴覚へ の刺激 として知覚 され る音韻や韻律 を手がか りと して、会話 音声 は分節化 され (廣田 2006)、 これ に よつて文法や語彙 の知識 が増 え、文 の理解 が進む ので ある。 この よ うに聴覚 は語彙・文法 の入力 と理解 に関わつてい る。森(1995)は聴 覚障 害児 にお ける九歳 の壁2の有無が

6歳

頃 の音韻操作能力3で決 まつていた こ とを導 き出 し、乳 幼児期 の聴 覚活用 訓練 が重要 であるこ とを述べてい る。 書 かれ た ものにはない、ア クセ ン ト、ポー ズ、プロ ミネ ンス4、 ィ ン トネー シ ヨンな どの 音声要素 は文法構 造や意 味 と深 く関わ つてい る。 この こ とは一般的 に、ア クセ ン トやイ ン トネー シ ヨンが普段聞き手が聞いてい るもの と異 な る と、文の意味が理解 しに くくな るこ と、また、話 し手がプ ロ ミネ ンスや ポー ズを単語や文の どこに置 くのかで、伝 えたい内容 (意味

)が

異 な る こ とか らもわか る。 特 に、ア クセ ン トは語 の識別 に、イ ン トネー シ ヨン は文全体 の意味に、プ ロ ミネ ンスや ポー ズは文 中の重要箇所 を知 らせ るのに有用 な働 きを してい る。健聴児 は これ らを単語 の意味だ けでな く、表現 (文法

)の

意 味 の理解 に も利用 してい るので ある。 聴 覚 が、一般 的 な言語 習得過程 において、文法理解 、語彙や概 念の習得 、意味の学習 な ど言語能力 に関わ ることを担 つてい る とい うことは、聴覚障害児 が言語能力に関 して多 く の問題 を有す るこ とを認 め させ る。実際 に、聴覚障害児 の読解力 に関する研 究 による と、 一般的 に健聴児 と比較 して遅れて発達す ることが明 らかに され てい る。現場 の報告 に よる と、小学

2年

で学年相応 、小学

3年

で小

2程

度、小学

4年

で も小

2程

度(C聴 覚特別支援学 校52003)と 、発達 が遅れ るこ とが示 され てい る。

B聴

覚特別支援 学校 で も中1で小学

4年

程 度

(B聴

覚特別支援学校 2007)と の こ とであ り、健聴児 と比較 して緩やかな発達 をす ること がわか る。 また、 中学

1年

と高校

3年

の読字力検査結果 は同等級 の

7級

(ノ Jヽ学

3年

生相 当) で あ り (B聴 覚特別支援 学校2008)、 漢字力 も健聴 児 と比較 して遅れ て発達す ることがわか る。 このほか、聴覚障害児 の語彙 の種類 について①難易度の低い語彙 が多い こ と ②名 詞 の語彙 に偏 ることな ども報告 されてい る (澤 1999)。 日本語 の文 レベル の問題 に関 しては、①格助詞 の理解 が困難 なこ と ②高 次 の階層構造 を持 つ文 の理解 が難 しい こ と ③統語能力 の個人差 が大 きい こ と ④受動文や授受構 文等 2九歳の壁 :1970年 頃、当時の東京教育大学付属聾学校長、萩原朝五郎が述べた ことばで、 考能力は 9歳 レベル をなかなか超えることができない とい うことを指す。 聴覚障害児の言語能力や思 3音韻操作能力:拍や音節についての知識があ り、 三注ばを分節化す ることができ、 ことばのは じめの音や終わ りの音 が抽出できる能力。

i馘

聯弱ζ

盤』

盤節網ゞ

i靡

(10)

の話者の視

`点

が移動する文、複来、剣牛文の発達が遅れズいることなどが言われている

(澤 ゛ 1999)。 また、読解能力 と'比喩 の理解 は有意 な相 関 を示 し、聴 覚障害児 は中学部 で健聴児 の 小学

4年

生 とほぼ同等 で あ り、健聴児 と比較 して加齢 に伴 う成績 の伸び は少 ない(澤 1999) とい う。聴 覚障 害児 の読解力 の発 達 には個人差 が大 きい ものの、上 の よ うな問題が見 られ るこ とが知 られ てい る。 作 文能力 に関 して は、①濁 点、長音 、促音 の過 不足 な ど表記 上 の誤 りが年齢 に関わ らず 現れ るこ と ② 文章構 造 を意識せず 思い浮 かんだ順 に書 くこ と ③ 文法 的な誤 りが多い こ と ④語彙 。表 現 が誤用 され るこ と ⑤決 まった フ レー ズを使 用す るこ とな どの問題 が指 摘 され てい る (我妻2003)。 また、後藤 ら (2003)の 作文分析 では、⑥助詞 の誤用 は学年 が 進 んで も減少 しに くい こ と ⑦読書力 と作文全体 にお ける誤用 とは負 の相 関が見 られ るこ とが報告 され てい る。 この よ うに、聴覚障害児教育の現場では、読み書 き能力 に関す る問題 が大 き く立 ちはだ か ってい る。 特 に、聴 覚特別支援 学校 の教員 らの間で は、幼稚部 か ら継 続 して在籍 してい る児童・ 生徒 らに 「な らで はの問題 」 と呼 ばれ る特徴 的 な言語 的 問題 が あ り、その改善が 最大 の課題 とな ってい る。 具体的 には、用言 の活用 が不確 かで、助詞の誤用 が 日立 ち、語 彙 が少 な く、 自分 な りにパ ター ン化 され た表現 を多用す る傾 向があ る とい う問題 で ある。 主な原 因 は、聴 覚特別支援 学校 で学ぶ児童 。生徒 は、イ ンテ グ レー シ ョンしている児童・ 生徒 に比べて、 日常生活 の中でや りとりされ ることばに触れ る機 会 が少 な く、教員や保護 者 をは じめ とす る周 囲の大人 か ら入力 され るこ とばが主 に彼 らに向 けて提示 された もの と な る ところにあ る。必要最低 限の情報 での コ ミュニ ケー シ ョン、単語や 単文 だ け とい つた 理解 可能 な範 囲の言語表現でのや りとりでは、語彙・表現 が偏 りがちにな り、その こ とが 読 み書 き能力 に影響 し、産 出 され る文 に助詞や統語 上 の誤 り、語彙使用の誤 りな どが頻繁 に見 られ るこ とになるのである。 文法 の不確 か さや語彙 の偏 りは、読 み書 き作業 に影響す るだ けで な く、 こ とばで こ とば を説 明す る抽象 語 の理解 を妨 げ る。抽象 的 な「もの」や 「こと」 をことばで理解す るため には、複雑 な文法や 多様 な語 彙 が必要 とな るが、それ がな けれ ば抽象語 の概 念 を正 しく身 につ けるこ とがで きない。 同様 に、思考す るた めには、 こ とば に よつて 自分 で 自分の考 え を表現 し、モニ ター し、ま とめる力 が必要 になるが、時間的 な前後 関係や接続表現に関わ る文法や語彙 に問題 が あれ ば、論理 的 な思考 にはな り難い。 こ とばが抽象的思考 を支 え、 それ が さ らに言語能力 を育 て るので あ り、文法や語彙 の問題 は、単 に読 み取 りや作文上の 問題 として捉 え るのではな く、個人 の知的能力 に も影響す る こ とを指導者 は把握してい な けれ ばな らない。 ところが、現在聴 覚障害児教育 の現場 で行 われ てい る聴 覚 口話 法、トー タル・ コ ミュニ ケー シ ョン(法)、 日本手話 を用 いたバイ リンガル教 育 のいずれ のプ ログラムにおい て も、 なお この よ うな問題 は解決 され てい ない。聴 覚障害児 の言語 能力 向上 を 目的 とした聴 覚障 害児 教育 の歴 史 の 中で、聴 覚 口話法 の欠 点 を補 うもの として トー タル・ コ ミュニケー シ ヨ

(11)

ン(法)が生 まれ 、 さらにそれ に対す る批判 がバイ リンガル教育 を発展 させ て きた。しか し なが らこの よ うな指導法 の変遷 はそれ 自体 、 これ までの指導法 のいずれ もが、聴覚障害児 の全体的 な言語 能力 を底上げに とつて、十分ではなかつた ことを示す もの と言 えよ う。 よ って今、これ までの指導法 とは考 え方の異なる、新 しい指導法が求 め られてい るのである。 以上 の こ とか ら、聴覚障害児へ の読 み書 き指導 には、既存 のプログラムに拘 らず、言語 教育 として文法 的知識 を確 実 に習得 させ る こ と、語彙 を増やすこ と、またその語彙 の意味 を深 める とい う作業 が不可欠 である と考 え る。 また、発達途上 の子 どもを対象 としてい る た め段階 を追 つて能力 向上 させ るた めの工夫 も必要 で あ る。 それ には当該の聴覚障害児の 言語 能力 に見合 つた教材や指導 が必要 であ り、言語 能力 の具体的 な評価 もな され るべ きで ある。 これ を可能 にす るのは 日本語 を外 国語 と して分析 的 に捉 えた外 国人に対す る 日本語 教育的手法 で はないか と考 える。

1.3

本論 の構成 について 本論 で は、 日本語教育的手法 を利 用 した聴覚障害児へ の読み書 き指導 に関 して述べ る。 第二章で は、聴 覚 が言語習得 に与 える影響 として、まず 、健聴児の言語習得期 の言語発達 につ いて触 れ 、聴 覚障害がそ の一次的障害 で あ る音声 の聞 き取 りや発音 に問題 をもた らす だ けでな く、二次的障害 として言語習得 に も大 き く影響す るこ と、ひいては聴 覚障害児に 文法や語彙 のみ な らず抽象概念 の理解 に も問題 が起 き るこ との原 因 を説 明す る。第二章で は、聴覚障害児 の読み書 き指導 に対す る 日本語教育的手法利用 の可能性につ いて論 じる。 従 来 の聴 覚 障害児教育 の概観 を説 明 し、そ の中のいず れ の指導法 において も、なお解決 で きない言語 的 問題 点が あるこ と、そ してそれ に対処す る新 しい手法 として、外 国人向 け 日 本語 教育的 手法 を応用す るこ との可能性 につい て述べ る。第四章では、外国語教育の評価 法 の一つ で ある

OPIを

援用 した、聴覚障害児 のた めの言語能力評価 基準 について述べ る。 聴 覚障害児 の言語能力 を発達 的視 点 に基づ いた指標 でのみ測 るので はな く、それ を踏 ま え つつ 、現時 点の言語能力 を語彙 の難易度、テキス トの型 とい つた分析的な言語能力段階で 捉 え る方法 につ いて説 明す る。第五章 では、外 国人 向 け 日本語 教育的手法 を用いた読み指 導 に関 して述べ る。 第四章で述べ た言語教 育プ ログラムの評価 基準に基づいて作成 した リ ライ ト教材 の実践 を中心 に、外 国人 向 け 日本語教育的手法 を応用 した指導法 を紹介し、聴 覚障害児 の読み指導 にその手法が効果的で あるこ とを示す。第六章 では、外 国人向 け 日本 語教育的手 法 を用 いた書 き指導 について述べ る。従来の書 き指導の問題点を探 り、第 四章 で述 ベ プ ログラムを利用 し、書 くこ とを通 じて語彙や 文法 を指導す る方法 について説 明す る。 また、 これ らの考 えに基づいた指導実践報告 を し、 日本語教育的手法の有効性 につい

(12)
(13)

人 の聴 覚器 官 は胎生期 に完成 し、正常で あれ ば子 どもが母親 の胎 内にい る ときか ら既 に 聴覚 は働 いてい る。新生児 の聴覚反応 は無条件反射 であるが、生後 三 ヶ月頃 には音 に興味 を示す よ うにな り、生後 六 ヶ月 頃までに聴覚 と発声の脳 内回路が強 く結合す る。ところが、 先天性 の聴覚障害児 は この頃か ら発声 量が増加せず 、言語 としての発 声がみ られ ない とい う (永渕 1986)。 この よ うに、聴覚は言語習得 に大き く関与 してい る。本章では、一般的 な言語習得及び言語発達 について述べ、聴覚障害がその一次的 な障害 である音 声の弁別 の 困難 さと発音 の不明瞭 さとい つた問題 に とどま らず 、二次的障害 と しての語彙や文法の習 得 に関わ る問題 を引き起 こ し、 さらにその問題 が二次的障害 と して認 知や思考 の発達 に及 び 、言語能力 としては比喩理解や抽象理解 の困難 さをもた らす こ とを説明す る。

2.1健

聴児 の言語習得

2.1.1

健聴児 (乳幼児期

)の

言語発達 子 どもの言語発 達 は、最初 の有意 味語 が習得 され るまでの「前言語期」か らすでに始ま っ て お り、 そ の一 年 間 に言 語 習 得 の基 礎 とな る諸 能 力 を著 し く発 達 させ る。 Lise Menn(2002)に よれ ば、乳幼児 の言語発達 のためには①新生児 に とつては無意味 な音(連続) を聴 き取 り、記憶す る能力 ②聴 き取 つた音(連続)のパ ター ン と周 囲で起 こつていること が らや周囲の人間が行 つてい ることが らとを結びつける能力 ③音 のパ ター ンの再認 を可 能 にす る連続 した音 の中に類似性 を認識 で きる能力 の3つの能力 が必要 とされ るとい う。 また、音 に何 らかの意味が あることを学習す るためには、大脳 中枢 に学習過程 が起 こるの に必要 な刺激 を与 えるこ とを しなけれ ばな らない と E.ウェ トナル ら(1977)が述 べてい る よ うに、一般的な言語発達 には大脳への聴覚的刺激 は非常に重要 なのである。 言語習得期 の乳児 に とつて語 の認識 は他者 が発す る音 のみ に限定 され るものではない。 乳児 は 自分が偶然発 した哺語 に対 して「ママ」、「パパ」あるいは 「マンマ」な どの意味づ けがな され、 自分 の発 した音 が養 育者 によつて意味 あるもの として受 け取 られ てい るこ と を知 る。すなわ ち養育者 らとのかかわ りあいの中で、身近 な ものにはそれぞれ名前がある こ とを知 るのである。 その過程 で、例 えば最初は大で も猫で も動物 を見れ ば「ワンフン」 と呼んでいたのが、次第 に 「ワンワン」 とは犬の こ とである とい う概念 を形成す る。 自分 が発 した音声 とそれ に意味 させ るものが、養育者 のそれ と合 つてい るか合 っていないかを 養育者 の表情や こ とばのイ ン トネー シ ョンな どで判 断 し、 自分 の概念 を訂正 し、構築 して い くのであろ う。子 どもは身近 な大人か ら教 えられて ことばを覚 えるのではな く、 自分か ら試 しなが ら帰納的 に学ぶ のである。進藤(2006)も共 同注意1と ともに行 われ る音声 のや り と りが成立す ることによ り、 ものにはそれぞれ名前があることを知 り、言語習得期へ と移 行す ると述べてい る。 2.1.2健 聴児 の助詞・構文の発達 健聴児 の助詞 の発 達 に関 しては、綿巻(2005)は、最 も早 く出現す るのが終助詞 の 「ね」

(14)

や「よ」で、そ の後 、格助詞 、係助詞・副助詞 、接続助詞 の順 で発 達す るとい う。伊藤(1990) に よれ ば、終助詞 は

1歳

8ヶ 月の一語文の段階で出現 し、その後感情的色彩が濃 くな り、 「尋ね る」「訴 える」「依頼す る」 といつた社会的関係 に関わ る表現 として使用す るよ うに な る とい う。 また、格助詞 の 中で も早 く出現す るのが所有格 の「の」、行為者格 「が」、道 具格・ 場所格 「で」、 日標格「に」、仲間格 「と」であ り、

2歳

でそれ ぞれ を区別 して使 え るよ うにな る (綿巻2005)。 健聴児 の助詞 の定着 に関 して、斉藤(2002)は、主格 「が」を

5歳

前 半、場所格 「で」、付 着格 「に」、起点格 「か ら」、道具 。手段格 「で」を

6歳

前 半に習得 してい るこ と報告 して い る。 しか し、対象格 「を」 は6歳後 半で も全体 の半数 しか習得 していなかつた とあるよ うに、全 ての助詞 を誤 らず に使用できるよ うにな るのは学齢期 に入 つてか らで ある と思わ れ る。 また、助詞 の定着 が助詞の使用 よ りもかな り遅れ るのは、それ だけ誤用 を重 ねなが ら自己修 正す る過程 が必要 だか らであろ う。特 に、対象格 「を」の定着が遅れ るのは、会 話 中で最 も省 略 されやすい格助詞 であるた めで、書 き こ とば を通 して「を」に触れ ること に よ り定着 してい くと考 え られ る。 これ ら終助詞、格助詞 と比較 して、係助詞 、副助詞 、接続助詞 は遅れて習得 され る。「は」 や 「も」な どの係助詞・副助詞 は、「主題 」 として取 り立てた り、それ と類似す るものが存 在す るこ とを前提 として話す ときに使 うもので、物事 の関係性 の理解や広い視野 を持つて い ることを要求 され る。接続助詞 は理 由、原因、逆接 な どの働 きがあ り、関係性 の理解 だ けでな く、長 い文 を形成す る ときに必要 とされ るもので あ る。 つ ま り子 ども自身の知的発 達 とともに、主 に就 学以降 に定着す るものである。 一般的な言語発達過程 において、助詞や用言 の活用形 は、幼児期 にはよく間違われ る。 「これ、ハナ コちゃんにくれたの (これ、ハナ コちやんが くれ たの)」、「そんなのでき られ ない (そんなので きない)」 とい つた表現 をす ることは文法的誤用であるが、珍 しくない現 象 である。や りも らい文2において対象者 は 「に」で表現す る こ と、可能形 の否 定形 を作 る ときには 「られ ない」がつ くこ とといつた、文法的 な規則 を般化 させ てい る際 に起 こるこ の よ うな誤用 は

3歳

ごろに頻 出す る。だが、小学校 に入学す る頃になると次第 に消滅す る。 これ は、子 ども自身が成長 の過程 において、周 りの大人の言い直 しや、他者 の会話 を聞 く こ とで 自分 の発話 を修正す る とい うモニター機能が働 いてい るためである。 このよ うな他 者 の発話 をモ ニ ターす るこ とと同時に、 自分 自身 の発話 について も、話 しなが らモニター が行われてい ると思われ る。 このよ うなメタ言語能力3は Lise Menn(2002)に よる と、

5歳

ごろに出現す る といわれてお り、特定の音 の系列や語 の連合(特に熟語)か ら音韻や形態、 統語 のパ ター ン4を抽 出す るこ とか ら始 ま り、徐 々に よ り複雑 で適切 な規則 の集合 を習得 し、 発達 してい く とされ てい る。 上記 の よ うに助詞や活用形 は聴覚か らの経験 を通 して習得 され、それが学齢期 に確実な 文法 となつて定着す る。構 文 の発達に関 して も、進藤(2006)は健聴児 を対象 とす る実験 か ら①理解力 においては、非可逆文は

4歳

、可逆文 。授受動詞構 文 。使役態は

6歳

で通過す 2ゃりもらい文 :「あげる」「くれ る」「もらう」 とい う授受動詞 を使用す る文の ことをい う 3メ タ言語能力:言語そのものを意識の対象 とした り、言語や言語活動 について言及できること、言語 を客観的・分析 的に捉 える能力 4統語のパ ター ン:日本語で言 えば、助詞 を含む名詞句、動詞句、用言の活用 な ど

(15)

るものの、受動態 は6歳で も完全 には通過 できなかつた。②構文産出においては、非可逆 文 は

4歳

、可逆文 は

6歳

、受動態 と授受動詞構 文では6歳で も完全 には通過 できず、使役 態 は

6歳

で も通過できなか つた。③受動態や使役態の よ うに構文が複雑 になる と、

6歳

以 降 の学齢 期 になつて習得 され るこ とが推察 され ることを導 き出 した。斉藤(2002)も受動態 、 使役態 は

6歳

前 半で習得す る とい うデー タを出 してい る。受動態や使役態 は 自己の要求や 意志 な どとは異 な り、他者 に何 らかの状況 を説 明す る場面で用い られ るものであるため、 そ の必要性 が高ま る集団生活 の場 において習得 が進み、助詞 を含 んだ正確 な文 は読 み書 き を通 じて学童期 に習得 され る と推測で きる。このほか「∼か ら」「∼た ら」な どの従属節 を 持 つ複 文や、接続形 「だか らね」を使 つた談話 も

6歳

ごろに出現す る とい う(新藤2006)。 この よ うに、健聴児は文法 を教 え られ るのではな く、経験か ら習得 し、発達 させ てい るの で ある。

2.1.3

健聴児 (学齢期

)の

語彙 の習得 平L幼児 の語彙習得 は聴覚依 存である とい うこ とは、

2.1.1で

述べた。一方 、学齢期 の語 彙 の習得 は乳幼児期 とは異 な り、読み書 きを通 して多量の語彙習得 がな され る とい う。 高 橋(2006)に よれ ば、健聴児 において、低学年 では読むス ピー ドと読解の能力 との相 関が高 いが、学年の上昇 とともに関係 はな くな り、一方で学齢期 の子 ども達の読解 の能力 と一貫 して関係 が深 いのが、語彙 の能力で ある とい う。その語彙 の習得方法 は読書 に よるもので、 文脈 か ら新奇 な語彙 が習得 され 、学年 が高 くなるほ ど文脈 か ら学習 され る程度 は高 くな り、 また、一定の語彙 を習得す る と、その要素(形態素:学齢期 の 日本語 であれ ば漢字)の知識 に 基 づいて、それ を組み合 わせ た新 しい語 の意 味 を推測 に よつて知 ることがで きるよ うにな る。この よ うな語彙 の知識 それ 自体が新たな語彙 の知識 を生み出 してい くとい うのである。 つ ま り、低学年では音声的 な記憶や知識 を元 に読解がな され るが、高学年 になる と読み書 きで得 た語彙知識 を元 に した読解 が行 われ 、読解 に よ りさらに語彙知識 が増 えることを表 してい る。語彙習得 に関 しては、学齢期 には何 よ りも読む経験 が重要だ とい うことである。

2.1.4

健聴児 の音韻操作能力 と読み書 き能力 健聴 児 の言語 習得 においては、文字 と音韻 とが結びつ く以前 に、音韻 を分析 し、認識す る とい つた 「音韻操作能力」が発達す る とされ てい る。 この「音韻操作能力」 とは、例 え ば

3音

節 の こ とばか ら真 ん 中の音 を抜 き出す こ とがで きる能力であ り、子 どもの遊びで言 えば、 しりとりを した り、階段 を 「チ ヨコレイ ト」 と一音節ずつ数 えなが ら上 った りす る こ とができる能力 がこれにあたる。 この よ うな音韻 を分析 し、認識す る能力 は音節分解能 力 とな り、 これ が助詞や活用 といつた面にお け る文法解析 能力 に もつなが つてい くのであ る。 学 習 障 害児 の読 み書 き障 害 の基盤 に、音 韻 操 作 能 力 の不 足 が指 摘 され てい る と石 坂 (2001)が言 うよ うに、音韻操作能力 と読み書 き能力の関連性 はす でに多 くの研 究者 に よつ て指摘 されてい る(原 2001,中 原 ら 2006な ど)。 例 えば原(2001)は健聴児 の音韻操作能力 は、①就学前の

2年

間か ら小 1に か けて大 き く伸び るこ と②小 1から小

2に

か けて、3・ 4

(16)

の経験 を重ね る中で発達が促進 され、反応時間の短縮化が もた らされ ると言 えよ う。 これ らの結果か らわか ることは、音韻操作能力は幼児期で完成す るのではな く、学齢期 に入 り日常的 に文字 を使用す るよ うになつてか らさらに伸長す る とい うこ とで ある。読み 書 きをす るこ とで、複数 の文字列 を単語 として認識す ることにな り、単語 と意 味 とのつな が りが強化 され るのである。文 を読むためには音 をひ とつひ とつ読 んでいては理解 できず、 連続 した複数 の音 の操作能力 が発達 して、は じめて意味の理解 を伴 つた読みが完遂す る。 つま り、単語や文の理解 には音韻操作能力が大 きく関与 してお り、健聴児 はその音韻操作 能力 を利用 した読み書 きの経験 を積む ことによつて、読み書 き能力 を向上 させ てい るので ある。

2.1.5

音声 の情報 と文理解 一般的に発話 は、有意味な ことばや表現その ものの意味情報 のほかに、表 出 された音声 の ピッチの高低、音調、抑揚、発話速度な ど、すなわちプ ロソデ ィ とよばれ る語の意味的 側 面以外 の要素に も、発話 の意味や話者 の感情 に関す る情報 を含 んでい る。健聴者 は、い わゆるこれ らの音 =「 声の表情」か ら、言語外 の意味な どを敏感 に読み取 ることができる。 例 えば「え―」とい う文字 で表現 され る音 に、発声 の されかたに よつて「驚 き」「嘆き」「間 合い」「不満 」「疑問」 とい つた意味の違 い を聞き取 るこ とがで きる。 この よ うな音声の情 報 は、話者 の表情や場面 とい つた視覚 的情報 と重ね合 わせ なが らそ の意 味が定着 してい く ので あ り、社会性 の発達 とともに細や かな情報 もくみ取れ るよ うになる。理解不能な単語 があつて も、文全体 の感 覚的 な意味 を理解す ることに よつて、単語 その もの を理解す るこ ともある。例 えば 「雨で 中止 になつた」 と残念そ うに話 されれ ば、「中止」がネガティブな 意味 を有す ることを理解 し、その状況 によ り「中止」 の意 味 を理解す る とい つた こ とであ る。 この よ うな経験 を積みなが ら、健聴者 はそれが音声ではな く書かれた もので あつて も、 身 につ けた知識 に基づいてその意味 を理解 できるよ うにな る。文章 中に「困つたなあ」 と い う台詞 があつた として、それが困難 に遭遇 してい るのか、喜んでいるのかが判断できる のは、実際に 「困つたなあ」 とい う表現が大 した困難 に遭遇 していない場面において喜び のイ ン トネーシ ョンで表 出 され ることも経験 してい るか らである。 上記の よ うな文全体 の意味や感情 の読み取 り以外 に も、複文構造 の理解 な どで も、音声 情報 はかな り有効 であ る。「その医者 は黒い服 を着てい る」とい う文 と「黒い服 を着てい る 医者 」 とを比べてみ る と、前者 では「医者 は」の ところで一旦イ ン トネーシ ョンが切 り替 わ る。「は」は 「提題」の働 きがあ り、イ ン トネーシ ヨンに切れ 目を作 りやすい。単文では 目立たない 「は」の切れ 日も、複 文にな る とかな りはつき りす る。「顔 に大きな傷のある医 者 は黒い服 を着てい る」とい う文では、「顔 に大きな傷のある医者は」で一旦立て直 し、少 し高い音か ら「黒い服 を着てい る」と発声 され るであろ う。この よ うに、語や文の切れ 日(あ るい はま とま り)を音声が表現 してい る。この よ うに音声情報 は文法的 な理解 も促 す働 きが ある。未熟 な読み手がやや複雑 な文 を無 自覚に音読す ることは、声 に出 して読む ことで身 につ けた音声情報 の知識 を読 み に利用 し、理解 しよ うとしてい るのであ る。

2.1.6聴

覚主導の言語習得 9

(17)

健聴児 は聴 覚 を通 して音声言語 を理解 し、 コ ミュニケー シ ヨン場面 を通 して言語 を習得 してい く。習得す るのは単語 だけではな く、基本的な文法 も音声言語で習得 してい るので ある。特 に助詞 な どの機能語 の習得にはこの よ うな言語経験が重要である。機能が理解で きるだけの言語経験 を要す るか らである。 また、語や表現の意味 について も、イ ン トネー シ ョンやア クセ ン トといつた音声の情報 によつて意味や文構造 を理解 してい る。以上のよ うに聴覚 は語彙・ 表現 とい つた部分的 な言語理解 。習得か ら、文全体の意味や構造な どの 理解 と生成 にも関わ る重要 な感覚器官なのである。

2.2

聴 覚障害 に よる二次的障害 としての言語能力 の問題 2009年 5月 20日 の東京新 聞に以下の よ うな記事 が掲載 され た。「聴覚障害者の聞こえな い、聞きに くい状態 は、書 くことにも影響 してい る。社会人で も文法や表現 を誤 つて しま う人 もいて、周 囲か ら本人 の能力 自体 を疑問視 され るこ とが ある。 文章カア ップを 目指 し 講座・教室が開かれ てい る」。この ことについて記事 の中で筑波技術 大学 の石原 は、生 まれ つ きの聴覚障害者 は聴覚 を通 じて聞いて話す コ ミュニケー シ ヨンが困難 で、書 きことばを 支 えるための こ とばのベー スが十分 に育 たない まま、読み書 きに入 つて行 か ざるを得 ない 状況 があ り、書 くこ との問題 は聴覚障害 に よる二次的障害 なので ある、 と説 明 してい る。 この こ とは乳幼児期 にお ける養育者 と子 どもとの コ ミュニケーシ ョン上の聞き取れ ない、 聞 き取 つて も らえない とい う状態 は、意思疎通 の問題 のみ な らず 、語彙や文法習得 の機 会 を減 らす原 因 とな るこ とを示 してい る。 聴覚障害 は、外 耳道 を通 つて きた音波 が、鼓膜 の振動 として内耳の神経細胞 を刺激 し、 それ を大脳 が音 と して感知す る、その機 能が損傷 され てい るこ とを言 う。損傷 され てい る 部位 に よって、伝 音性難聴 、感音性難聴 あ るいは混合性難聴 と呼ばれ る。外 耳か ら中耳に 何 らかの問題 が ある伝音性難聴 と比較 して、内耳の神経系の どこか に問題 があ る感音性難 聴 のほ うが先天 的 な障害で あるこ とが多 く、特 に子音 の間 き取 りに必要 な高い周波数 の音 が聞 こえに くく、話 しことばの受容 に重大な障害 を呈す るため、言語発達 に重大な悪影響 を及 ぼす (我妻2003)と され てい る。 具体的 には、聴覚障害児 が産 出す る 日本語 文 について、教育現場 か ら「助詞 の誤 りが多 い」「重文や複文では誤 りが多い」「語彙が少 ない」「主述が噛み合わないね じれ文が多い」 な どの問題 点が指摘 され てい る。我妻 (2003)の 指摘 も「絶対的 な語彙量が少 ない」「知つ てい る単語 に凸凹がある」 といつた問題点である。聴覚障害があつて も健聴児 と変わ らぬ 日本語能力 を身 につ ける児童 がい る一方 で、上記 の よ うな問題 を抱 えてい る聴 覚障害児 は 少 な くない。本項 では聴覚障害が起因 となつて起 きる言語習得上 の問題 について述べ る。

2.2.1

語彙 の問題 言語習得期 において音 を正確 に聞 き取 るこ とがで きない聴 覚障害児 は、音声言語 の習得 は進み に くい。 聞 こえる子 どもの よ うに 自発的 にその確認す ることが難 しいため、視覚 を 伴 つた共 同注意 の場 面で も養育者 の意識 的 な働 きか けがなけれ ば、平L幼児期 に音声言語 を 習得す るのは困難 で ある。周知 の よ うに聴覚障害 は発話 。発音にも問題 を引き起 こす。一 般 的な言語発達 において、哺語期 に発せ られ る音声 に伴 う運動機 能 は、 ある音 の連続 が意 味 を有す るこ とを知 ることに よつて、 さらに強化 され 、正確 に発音 され るよ うに 自己修正

(18)

が行 われ る。母親や食べ物 といつた乳児が必要 とす るものに対 して、発音が確定 され 、そ の上 に必要な ものを引き寄せ るために新たな音素を含 んだ ことばが発音 され、語彙が増加 す る とい うよ うに発達す る。 しか し、聴覚 に障害があ る と、 自分 の発 した音声 が十分 にフ ィー ドバ ックで きないため、発話 のための運動が確 定 され に くく、誤 つた発音 の仕方 が定 着す るこ ともあ る。 また聞 き取 りに くい音素 の区別 ができない こ ともあ る。子 どもの 自発 的 な発話 の意 図や意 味 を大人 が理解 し、共感 した り共有 した りす る ことでコ ミュニケー シ ョンが活発 になる (小山

2000)の

で あれ ば、 この発音 の問題 は、乳幼児期 の コミュニケ ー シ ョン中心の話 しことば習得 に多大な影響 を与 えることとなる。 語彙 に関 して、聴 覚障害児 の場合 、乳幼児期 に生活語彙 が定着 しに くく、絶対的な語彙 量が少 ない、 あるい は偏 りが ある とい つた問題 となつて表 出す る。小学部

4年

生 に対 して 行 つた書 き取 り語彙調査 (B聴覚特別支援学校

19年

度資料

)に

よる と、「キ リン、カニ、 ね こ、イ ヌ、ハサ ミ、 とけい、 めがね、 こたつ、スキー、バ レー ボール」 とい つた文字 と して もよ く目に触れ る単語 の正答率は高 くいが、「でんた く、ポ ッ ト、ち よ うしんき、か と りせ ん こ う、へい きんだい、ア コーデ ィオ ン、アジサイ」 な どの語彙 は

0-20%の

正答 率 で あつた。物 自体 は 目に していて も文字 として見 る経験 がなけれ ば正確 に表記す る こと はで きない。調査 では上 の例 のほか、学齢期以降 に使 用す る道具類 、鳥や 昆 虫、植物 、楽 器 の名称 な どは総 じて正答 率が低 かつた。 我妻 (2003)も 、聴覚障害児 は

1対

1の対話で も明瞭 な音声 に よる音像 がな く長期記憶 に残 りに くく、他者 の会話 を聞いてそ こか ら新 しい ことばを学習す ることは さらに困難 で ある と述べてい る。 また、上で述べた問題 を抱 えた状態で学齢期 の読書 を して も、理解 可 能 な語彙・表現 が少 な く、読む こ と自体が困難 であ る。 あるいは既知の単語 を頼 りに適 当 に結びつ け、誤読す ることも少 な くない。 このため読む経験が積 めず、学齢期 にふ さわ し い語彙習得がな され に くいのである。

2.2.2

文法 の問題 言語習得期 の乳幼児 に、終助詞 は コ ミュニ ケー シ ョン場面 にお ける感情表現 として捉 え られ、使用 され る。 同様 に周 囲 との コ ミュニケー シ ョンにおいて「どこ」や 「だれ」 とい つた質問に対応す るため、あるいは 自分 中心の視 点で話すための格助詞の使用が増加す る。 ところが聴覚障害児 の場合 は、音声 に よるコ ミュニケー シ ョンが十分 に取れ ない ことが多 く、助詞 の習得 も進 み に くい。助詞 は前後 の語 の関係 を把握す るこ とで定着 してい くもの で あるが、聴 覚 に障害が ある場合 、場面依存的であ り視覚 中心の理解 を しがちであるため、 話 しことばでの コ ミュニケー シ ョンにおいて、語 と語 の関係 を示す助詞 その ものについて の意識がな され に くい。加 えて話 しことばでは助詞 が省略 され ることも多いため、聴覚障 害児 が助詞 を 自然習得す るのは困難 な こととな る。 健聴児 は2.1の項 で述べ た よ うに、音声か ら単語や助詞・構文 を掴み、学齢期 に入 つて か らは音声情報 をも利用 しなが ら読み書きす ることによ り文法処理能力 と語彙力 をなお発 達 させてい る。 これ に対 して、聴覚障害児 では音声か らの入力 が期待で きないため、 日常 生活 においてそれ ぞれ の助詞 の機能が帰納的 に理解 できるほ どの経験 を積 めず 、助詞 に誤 りの ある文 を産 出 しやす い。 また、助動詞 、指示詞 、接続詞 な どの、内容語 の よ うに具体 的 な意味 を持 たない機能語 も、助詞同様 に経験的 に学べ ないため、理解 しに くく、使用 に

(19)

も誤 りが起きやすい。 このほか、用言の活用 も健聴児は聴覚的な経験によつて学ぶ もので あるため、聴覚障害児に とつては複雑で定着 しにくいもの となつている。即ち聴覚的な経 験の不足が原因 となって、助詞 をは じめとす る機能語や用言の活用に誤 りが見 られ るよう になるのである。 このほか 自動詞文も健聴児は経験的に学ぶが、聴覚障害児には定着 しにくい表現である。 自動詞文は、 日に見えることが らを描写す るときに使用 されることが多 く、幼児期の養育 者 とのコミュニケーシ ョン場面ではよく見 られ るものである。聴覚障害児では、 日に見え る状態は視覚的な認知にとどま り、それをあえて言語化す る、あるいは言語化 して与えら れ る機会が少 なく、 自動詞文の表現が経験 されにくいためだろ うと思われ る。 自動詞・他 動詞の理解に関す る実際のデータ (相澤・佐藤・四 日市

2007)で

は、「おゆをわ く」「じゆ ぎょうをつづ く」 といつた非文を正文 として捉 える傾向があることを示 している。 このような聴覚的な経験の不足によるものだけでな く、説明文でよく使用 される受動態 や授受動詞構文など、主に読み書き経験の不足によるものもある。授受動詞構文、受動態、 使役態な ど助詞一つを違 えると異なる意味になる構文や、従属節を含む複文は、助詞の機 能や活用形を習得 した上で行わなければ定着は図れないため、文全体を助詞 を含めて捉え る経験が必要である。文のね じれの問題 に関 しても文法の不確か さと読み経験の少なさが 最 も大きな要因であると思われ る。

2.3

聴覚障害による三次的障害 としての言語能力の問題 中村(1996)は、聴覚障害児の問題を以下のよ うに分類 してい る。 一次的問題=周囲の音や 声 な どの聴 覚刺激 が聞 こえない、聞 きに くい 二次的問題=コ ミュニケー シ ョン、心理 面・ 情緒 面 、 自己 と環境 との調整 、言語習得 な どの問題 二次的問題=認知や思考 の発達 、教科 学習 、家庭 や 学校や職場 へ の適応 、 自立や 自己実現 な どへ の影響 この よ うに、聴覚の問題 は一次的、二次的問題 を経 て認知・ 思考の問題 として表出す るの であ る。 我妻(2003)は聴 覚障害児 の言語的な問題 点 の一つ として「抽象的な意味を表す単語 をあ ま り知 らない 」 こ とを取 り上げてい る。抽象語 は、い ろい ろな場面で同 じこ とばを経験す る うちに個 々の場面に即 した意味か ら共通で普遍的 な意味あるいは概念 が、頭の中に形成 ・ され るもので ある と説 明 してい る。聴 覚障害児 の場合 、概念が形成 され るだ けの経験 が不 足 してい るた め、抽象語 の習得 が進 まない とい うので ある。 抽象語 の習得 が単なる語彙習得 と異 な るのは、普遍 的な意味 を抽 出す る能力 と経験が必 要 で ある とい うこ とである。 この普遍 的 な意 味の抽 出は、抽象 理解 だけでな く、比喩 の理 解 に も必要 な もので、逆 に一つの単語 の多義性 の理解 とも関連す る。普遍的 な意味の抽 出 に伴 うイ メー ジ形成 は一旦記号化 され るこ とに よつて行われ るが、 この記号化 に用い られ る言語 が未熟 である場合 、不完全 なイ メー ジ とな り、普遍的な意味にた ど り着 けない可能 性 が ある。意 味や概念抽 出 とい つた深 層 に あるメタ言語能力が、現前 にない事柄 について 考 えた り述べ た りす る場合 には重要 なので あるが、場 面依存的 な言語使用 に留 まることが 多い聴 覚障害児 はその能力が引き出 され ない まま学齢期 に入 り、読み書 きす る段階 には さ

(20)

らに重要 となるその能力 を生かせず 、学齢期 にふ さわ しい言語発達 か ら遅れ て しま う。 そ して言語 は相手のい る対他的なコ ミュニケー シ ョンに用い るだけの ものではな く、対 自的 コ ミュニケー シ ョン、す なわち思考の道具で もあるが、そ こにも問題 は及んでい く。文法 や語彙習得 の問題 は、表 面的 な言語能力 の問題 として、正 しい文が書 けない、文章が正確 に読み取れない とい うことが挙 げ られ るが、そのことが意味す るのは単 に未熟 な書 き手や 読 み手で ある とい うこ とではな く、思考 のた めの言語 が十分ではない とい うこ とで ある。 本項 では聴覚障害 の二次的問題 として表 出す る比喩理解及び抽象理解 の問題 と、思考力の 問題 について述べ る。

2.3.1比

喩理解 の問題 比喩理解 について澤(1999)は、特 に意 味内容 が複雑 な概念的比喩 の理解 においては、事 物 に関す る豊富な知識 を有 してい なけれ ばな らず 、比喩 に よる意 味の伝達 が可能 とな るた めには、それ らの知識 が一般化 され た客観性 を持つ こ とが必要 にな る と して、意味的知識 を蓄積す ることの重要性 を訴 えてい る。意味的な知識 は経験 を通 じてイ メー ジ形成 をす る こ とに よつて増幅 され るが、聴覚障害児 は視覚的な経験が主であるため、何 かを多角的に 捉 えた り、あるこ とか ら何 か を連想 した り推測 した りとい つた柔軟 な思考が成 り立 ちに く い。 そのため、意味的な知識が広がつていかないのである。例 えば、私 たちは 日常生活 の 中で 「蛸足配線」だ とか、「猫 の額 ほ どの庭」 とい つた比喩的な表現 をす る。 この中にはい ろい ろな情報が含 まれ てい る。「蛸」か ら連想 され る「蛸は足がた くさんあること」や 「蛸 の姿」、「配線 とは電気回路 をつな ぐこ とである」「本来はコンセン トひ とつにコー ドー本が 安全 で望 ま しい」 な どの情報 である。 ところが、視覚的 な情報は見 た通 り、コー ドが何本 もささつた コンセ ン トで あ り、蛸 は どこに も見 当た らない。 この よ うな比喩 的表現 を 日常 で触れ、比喩の経験 を重ね ることが重要である。 さらに澤(1999)は、聴 覚障害児 は事物や事象 に関す る意 味的知識や その活用力 の発達が 遅滞す ることに起 因 し、事物 の知覚的属性 について言及 した知覚的比喩 よ りも、概念的属 性 について言及 した概念的比喩 の方 が理解 が よ り困難 で ある と述べ てい る。「おい しい仕 事」 よ り 「先生のたま ご」 のほ うが理解 困難 で ある とい うことで ある。 聴 覚障害児は 「ことば」 とい うのは一義的 な もので ある、 と捉 えが ちで ある。言い換 え れ ば、最初 に理解 した意味か ら離れ難 く、 ことばの広 が りを理解 しに くい とい うこ とであ る。「先生のたまご」 とい う比喩表現 を例 に とる と、「たま ご」は、最初 に習得 した意味で ある冷蔵庫 にあるニ フ トリの 「卵」で あ り、「先生のたまご」の 「たまご」の意味を 「未熟 な もの」 として捉 えるこ とが難 しく、既知 の意 味で ある「卵」 と結びつけ 「先生が持 つて い る卵」 と理解 しよ うとす る。 これ は、聴覚障害児 が視覚 に強 く、また、視覚 に頼 つた理 解 の仕方 をす るた め、 日で見 えるモ ノ と結びついた こ とばは、 日に見 え るモ ノ と同 じく具 体 を表象す るものである と捉 え、モ ノ とこ とば とがゆ るぎない一体 の もの とな る。このた め、 ことばの意味は視覚的、 あるいは体験的な もの として理解 され るのである。「たま ご」 を 「未熟 な もの」 として理解す るた めには 「未 熟」 とい う目に見 えない状態 について、「成 長」 といつた時間的経過 を客観 的 に捉 えることが必要 なのであるが、 この よ うな客観 的な 視 点 を持 ちに くいため、聴 覚障害児 は比喩理解 が困難 なのである。 この 自己の視覚や体験 とこ とば との強い結びつ きは、仮 定や 時制 とい つた今 ここの状態 か ら離れ た こ との理解 を 13

(21)

阻み、同様 に因果 関係や条件 とい つた客観 的 に時間的前後 関係 を表現す るもの も理解 され に くい要因 となってい る。算数 は数 の概念 が具象物 と結びついていて も、それ が現前 にな い状況での操作が要求 され るため、算数 の文章題 な どでは混乱 が起 きることがある。例 え ば 「りん ごが

5つ

あ ります。

2つ

たべ ま した。のこ りはい くつですか。」 といつた課題 の場 合 、その文構造 その ものは単純 で比較的理解 し易 い。 しか し、 日の前 に りんごはひ とつ も ない のに 「りん ごが

5つ

あ ります」 と断定 し、誰 も食 べていないのに、「たべま した」とす る、その設定その ものが理解 できない とい う例 もあるほ ど、 自分の 日に見 えない ことを理 解す ることに困難 さが ある。計算 はできるが、文章題 が苦手だ とす る聴覚障害児が多いの は、文章構造や語彙理解 の問題 に加 え、仮 定的な こ とに対す る理解 の問題が あるのか もし れ ない。 漢字 に関 して も 日本語 では一つの漢字 で読 み方がい くつ もあるものがあ り、聴 覚障害児 がその意味の広 が りを概念 と して捉 えるのは難 しい。木偏 の漢字 は木 に関係 が あること、 サ ンズイ偏 は水 に関係 が あるこ とまでは理解 できた として も、その よ うに学んだ こ とが逆 に作用 し、「林」や 「森」が 「何 かがた くさんある ところ」(「木」の意味 はない

)と

い う意 味 を持つ こと、「潮」 が 「世 のながれ」(水の意味はない

)と

い う意味 を持つ ことになかな かつ なが らないのである。

2.3.2抽

象語理解 の問題 「聴覚障害幼児の発達的特徴」(佐藤 1998)の一つ に挙 げ られ てい るのが 「言語発達遅滞 を起 こ し、言語 に よる抽象的理解 が高ま らず 、知識 、情報 が偏 り、幼児期 の人格形成 に問 題 が残 る」 とい う問題 点で ある。抽象理解 とい うこ とがいか に重要であるかがわか る。健 聴 児 に とつて低学年 か ら理解容易 な抽象語 の うち、「秘密・競争」は聴覚障害児の低学年で も80%の正答率であるが、「無事・協力・親切 。好物」は 30%未満 の正答率である(国末2008) とい うことか ら、健聴児 と比較 して習得が遅れ るものだ とい える。後 に正答率が上が るこ とか ら、意味や概念 としては漠然 と持 ってい るが、言語記号 と してのラベルがない状態で ある とも考 え られ る。抽象語 の多 くは漢語 で、漢字 の習得 が進 めばその理解 も進むだ ろ う と予測 され、実際、国末 (2008)の実験で も高学年 にな る と理解 可能 な抽象語彙 が増加す る と導 かれてお り、読み書 きの経験量や漢字学習 が抽象理解 に影響す るものであろ うこと が想像できる。 子 どもの発達 において、抽象語理解 が進 むのは

9歳

前後 だ とされ てい る。 それ は恐 らく それ までの期 間 に多 くの言語 的 な経験 を積 む ことに よつて、十分 な語彙や意 味の蓄積があ り、 ことばの多義性 を理解 で きるよ うになつてい るか ら、具体的ではない もの ごとをこと ばで捉 えるこ とに よ リイ メー ジ形成 され るのであろ う。 そ うや つて得 た語彙 に よつて、生 活 の中で知識や情報 が増加 し、 さらに新たな語彙 が習得 され る とい つた、いわば らせん状 の発達 を してい る。 ところが、聴覚障害児 の場合、語彙や意味の蓄積が不十分 な状態で読 み書 き学習が進 め られ るた め、また、視覚 中心 とい つた特性 のため、一つの単語の多義性 も理解 しに くく、わか らない ことばが多い読 み物 を読 んで も適切 なイ メー ジ形成がな され ず 、抽象語理解 が進 まない。抽象語理解 は、多数 の事物 ・表象 か ら共通す る側 面や性質を 抽 出す るこ とに よつてその概念 が構築 され 、把握 され ることで あるか ら、比喩理解 と同様 に経験が重要であ り、十分 な経験量 を持たない限 り困難である。そ して抽象語彙が増加し

表 4.1.1「 oPIの 基 準 」 レハリレ 総合 タス ク と機 能 場面 /話 題 正確 さ テ キス ト の型 初 級 丸暗記 した型 通 りの表 現 、単語 の羅列、句 を使 って、最小限のコ ミュニ ケー シ ョンをす る 最 もあ りふれた、インフォーマルな場面/日常生活における、最 もあ りふれた事柄 母語話者 で ない人 との会 話 に慣れ てい る聞 き手 でさえ、理解す るのが困難で ある 単語 と句 中 級 自分 な りの文 を作 ること がで き、簡 単な質問を し た り相手
表 4.3.1「 言語 の発 達段 階 とその特徴 」 『 重度聴覚障害児の指導』   第Ⅲ章第 I節 「発達的言語指導の試み」 よ り I段 階 (0〜 1歳 ) 音・音声 の意 味 を知 り始 め、 また対話 の基礎が形成 され る。 子 どもを と りま く環境・・・ 言語 的 で あ り非言語 的 子 ども 。・・ 非言語 的活動 が主 言語 。・ ・ ほ とん ど音声 レベル にあ るが呼びか け、要求 、応答 、再認 、感情 な どを表 し始 める。 Ⅱ段 階 (1〜 4歳 ) 生活 の中では、
表 6.4  形容詞の活用表 (学 校文法 ) じゃなか つた 図 642.1形 容詞の活用 (普 通形の場合 ) 図 6.4.2.2形 容動詞の活用 (普 通形の場合 ) 図 6.4.23動 詞の活用 (ま す形の場合 ) た形 (連 用 形 ) う段 /る(終 止形 ) ない (未 然形 ) 図 6.4.2.4動 詞 の活用 (普 通形 の場合 )くなかった 青 い 語例あお語幹ウかろ 未 然形タくかつ連用形○終止形トキ連体形けれ仮定形○命令形ませ ん で した 101

参照

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