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聴 覚障害児 の作文 にお ける問題点 ̲¨

ドキュメント内 甲南女子大学学術情報リポジトリ (ページ 104-108)

第六章   聴覚障害児の書 き指導

6.2 聴 覚障害児 の作文 にお ける問題点 ̲¨

聴覚障害児 の作文 を実際 に分析す る と、現場 の教員 らが感 じてい るよ うに語彙・ 文法・

1アンケー トは2008年 6月 に実施

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構成 に関す る問題 点が見 られ る。学年 が進 んで も作文 に使 用 され る語彙 は比較 的平易 な も のに限 られ、文法 の誤 りもある。文章構成 も同様 に、低学年 の頃 と変わ らず 出来事 を中心 に単文 を並べ る書 き方が 日立つ。第四章のプ ログラムで示 した よ うに、語彙 と文法、構成 とはそれ ぞれ 関連 があ り、特 に接続詞 は構成 に、副詞や形容詞 は文法 に影響す る。作文全 体 の レベル が向上 し難 いのは、語彙力 と文法力 の伸 び に問題 が あるので あろ う。 以下に学 年 を追 つて作文例 を挙 げ、考察す る。

6.2.1小学校 中学年 の作文

作文例

1:平

均 的 と思われ る聴覚障害児 (小

3)の

文章例 (岩城 1986)であ る。

(例 1)

お父 さん とお母 さん と、ひ ろ しくん と、 ゆみ ちやん に じど う車 のつて行 きま した。

竹 の子 を見てい ま した。 お母 さんは 「まあきれ いなあ。」 と思いま した。

ひ ろ しくん と、 ゆみ ちやんは虫 と りに行 きま した。 ゆみ ちやん は虫か ごをもつていま し た。 ひ ろ しくんはアケハに とつていま した。 ゆみちやんはにこにこ していま した。アケハ はにけた しま した。

じど う車のそばにおべん と うをたべ ま した。ひ ろ しくん とゆみ ちやん とお母 さん とお父 さん はお しそ うに食べ ま した。

じど う車 にのつて山へいきま した。 く りと りを しま した。

上 の文章 を第 四章で提案 したプ ログラム段階で判 定す る とレベル 1程度で ある。文字 を 覚 えたばか りの頃 は、表記上 のルール が定着 してお らず 、発音通 り書 くことが多いため、

「を」が 「お」になつた り、長音の 「う」が 「お」になった りす ることは珍 しくない。話 しこ とばでは助詞 を使 わない こともあ り、作文 に助詞 が抜 けるこ ともよくある。 ゆえに低 学年 の聴覚障害児 の作文 に濁点が落 ちた り、長音 が抜 けた りす るこ とを問題視す る必要 は あま りないだ ろ う。 しか し、上の例 は小学3年で、濁音 が落 ちるのは正 しく単語 を記憶 し てい ないため と思 われ る。 また、助詞 の使用 に誤 りが見 られ る。 このほか筆者 が分析 した 小学校低 学年 の作文 には 「〜 しか

 

あ りま した。(〜しか

 

あ りませ んで した。)」 や 「寝て

しま した (寝ま した)」 な どの文法的 な誤 りが少 し見 られ た。

作文例

2:小

学校 中学年 の作文では漢字が増 え、接続詞 が使用 され てい るが、 これ に も濁 音 と助詞 の問題 が見 られ る。 以下の例 は小学4年生 の作文 (一部

)の

固有名詞等 を一部修

正 した もので ある。

(例 2)

今 日ぼ くが春 の遠足 に行 きま した。 たちばな公 園 に学校 のみんな とい つ しよに行 きま し た。春の遠足か らです。 また行 きたい と思いま した。

けい さつ ごつこを しま した。すべ りたい も しま した。 いままた行 きたいです。すべ りた いの前が土があつてのであぶなかったです。 またや りたいです。ず つ とあるいてつかれ ま

した。 で もがんばつてあるきま した。

上 の作文 も単文 。生活言語 の段階であ り、 レベル 1である。小学校 中学年 の作文の特徴 と しては、語彙 面では、副詞・ 形容詞 の使用 が少 ない こと、接続詞 の使 い方 がまだ うま く で きない こと、構成 としては経験 した事柄 だけを羅列 した形 であること、「また行 きたいで す 」 とい うよ うな短い感想 が述べ られ るこ とといつた ものが挙 げ られ る。作文 の内容 はシ

ンプル な ものになつてい る。

6.2.2小学校 高学年 の作文

作文例

3:高

学年 になる と、副詞や形容詞 な どを使用 し、表現 は豊 かになつて くるが、展 開 はあま りよ くない。 以下の例 は映画 の感想 文 を書いた小学6年生 のもの (一

)を

一部

修 正 した ものであ る。語彙 は増 えてお り、文法 の誤 りもあま り目立たないが、「人 々達」と い つた誤 つた表現がある。

(例 3)

映画 の主役 は、男の子 です。 戦争 が、起 こつだ場所 は、沖縄 です。焼夷弾 を、放 り込 ま れ て、一本24発くらい にな ります。沖縄 での戦争で、死亡 したのは、お よそ、何万人 も、

死 亡 しま した。 それ をそっ く りに、書 かれ た、映画 を見 ま した。

多 くの、沖縄 の人々達が、防空壕 の中に、集 ま りま した。 その中には、主役 の男 の子 も い ま した。小 さな トカギを連れてきていま した。その、主役の男の子は、家族 がいま した。

お母 さん、妹 、祖母、弟 の小ヤギ、6人家族 です。

中略

で も、主役 の男の子は、ある年 に、不幸の どん底 に、落ちま した。それ は、なぜかつて? そ の原 因は、男 の子 が、一 日ばれ を した、女 の子 が、ば くだんに、まぎれ こんで死んで し ま つたか らです。 で も、女の子 は、生きていたので した。たまたま、少 し、 とば されて、

どつかい つて しまつただけだか らです。

とて も、感動 しま した。私 も、 この世 に、戦争 を、な くして、 とて も、平和な、世に、 し たい、 といつ も思いま した。

この作文の構成 は、あ らす じとして最初 の段落で 「何 の話 か」 を述べ、次の段落か らス トー リー の説 明が あ り、最後 の段落で感想 を述べ る といつた もので、ま とま りはある。 し か し、感想部分はわずか3行で、気持 ちを伝 えるに しては不十分であつた。おそ らく、気 持 ちを伝 える語彙や表現が身 についていなか つたのではないか と思われ る。 また、書 きこ

とばが定着 してお らず 、「それ はなぜ かって?」 とい うよ うな表現が文中に見 られ る。

接続詞や副詞 の種類 が少 な く、 また読点の多用 か らも論理展 開や表現力 とい つた ところに 問題 点が見出せ る。 レベル2〜3の段階だ とい える。

6.2.3中学生(中学部)の作文

作文例

4:中

学生 の作文では、副詞 は少 し増 えてい るが、 ところ どころに話 しこ とばが混 在 し、具体的 には表現 できて も、それ を抽象的 な表現 でま とめるこ とができない。 以下の 例 は中学一年生 の作文の一部 を修 正 した もので ある。 学習言語 を使用 してはい るものの、

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伝 えたい ことを正確 に伝 えるこ とは難 しい。 レベル3〜

4程

度 だ と判 定できる。

(例 4)

わた しは、「水 について考 える。」 を下水道 と下水処理場の仕組みについて考 えま した。

まず下水道 か らいきます。 下水道 は明治時代か らあつたのですが、 この時 は処理 しない で、汚水な どを排除す るだ けだつたのです。

で も今 は近代的な下水道 があつて、下水処理場 もあるか ら水 を リサイ クル できるけ ど、

時代 が過 ぎて、科学が進歩 して、川や海 に汚水 を流す事で川や海 が汚 くな るこ とが今 の間 題 です。(以下略)

作文例

5: 

この学年 あた りか ら、作文能力 に個人的な差が 目立って くる。以下の例 も中一 の作文 (一部

)を

修正 した ものである。文法的 な誤 りはほ とん ど見 られ ないが、名詞 を修 飾す る形容詞や副詞 が使用 されず、単調 な文が続 いてい る。表 出 された もの を見 る限 りで

は レベル1程度 で ある。

(例 5)

ついに レス トランに着 きま した。着いた時 き高級みたいな と思いま した。

食べた時はおい しかつたです。

で も野菜 はキライ !!

終わつた ら記念写真 を と りま した。

次 に美術館 へ行 きま した。

つまんね ぇ―。5分で終わった。

6.2.4高校生(高等部)の作文

高等部 の生徒 において も同様 の問題 点が見 られ る。柳瀬・井坂(2003)が聴 覚特別支援学 校 高等部 の作文 と高等学校 生徒 の作文 とを比較分析 した資料 に よる と、聴覚特別支援学校 の生徒 は出来事 を客観 的に対比 しなが ら文節 をつな ぐことが少 な く、体験 を1贋番通 りに書 いてい く傾 向が強い と述べてい る。 また、時間の順序 に したがつて

"〜

て〜て

とつ な

ぐ単純な接続 が多い理 由 として、関係性 をつかむ には前後や全体 を広 く見 る視 点の獲得 が 必要であるが、その視点の獲得が十分 ではない結果 であろ うと推測 してい る。動詞以外で もこの 「関係性 の弱 さ」 を見 出 し、副詞 においては、指示・陳述 の副詞 の割合 が高等学校 生徒 の半分程度 であ り、連体詞 の使用 も少 な くなつてい ること、前後の関係性 を正確 につ かみ描写す ることの困難 さは、接続詞 の誤用の多 さにも現れてい るこ とを指摘 してい る(柳 瀬・井坂 2003)。 これ らを踏 まえて今後は全体 を関連づけ、整理 してみ る視点 を獲得 させ る学習 を聴覚特別支援学校教育の中で行い、 自己を軸 とした見方か ら視野 を広 げてい くこ とが重要 であ る としてい る(柳瀬・井坂 2003)。 作文能力 としては高等部

3年

になつた こ ろに よ うや く一般 の高校生 との差が縮 まる とされてい るが、それ で も客観 的 、論理的 とい う作文 に必要 な要素はまだまだ不十分 とい つた ところである。

全体的 に見て、聴覚障害児 の文法 の誤 りは外 国人の作文 と比較すれ ばず いぶ ん少 ない。

しか し、使用できる語彙や表現 に偏 りがあ り、書 きこ とば的な表現 は、話 しことば的な表 現 と比較す る と、かな り少 ない。生活言語 か ら学習言語へ 、具体 か ら抽象へ と、語彙や表 現 を広 げ るこ とに対 して教員 が問題意識 を持つ こ とが重要 であ る。

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