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作 文 の課題 と評 価 ̲̲…

ドキュメント内 甲南女子大学学術情報リポジトリ (ページ 119-141)

第六章   聴覚障害児の書 き指導

6.4  対策一 日本語教育的視′ 点を含 んだ指導 ̲

6.5.3 作 文 の課題 と評 価 ̲̲…

一般的な学校での作文 といえば行事作文であるが、行事をテーマに据えると時系列で出 来事を並べる構成にな りがちである。その行事でどのようなことを学び、どう感 じたかを 書かせたいのであれば、それ をどう表現す るのかを教える必要がある。

B校

の教員 らへの インタビューによれば、学校行事な ら本人が体験 していることであるか ら、書 くことはあ るはずだ と行事のたびにそれ を書かせてきていると語 つた。 しか し、その作文がパターン 化 し、表現力 が伸びない こ とや 、モチベー シ ヨンが低 く内容 の深 い作文にな らない ことも 感 じていた。教員 らに とつて、作文 は児童・生徒 らが保持 してい る語彙や表現 を文章 とし

て表出 させ るこ とが 目的 となってお り、語彙や表現 を事前 に教 えることはむ しろ良 くない こ とだ との認識 であつた。そ こで、日本語教育では指導者 が書かせ たい もの をイメージ し、

それ に必要な語彙や表現 を導入 。練習 し、構成 も併せ て学べ るよ うに工夫 してい ることを 告 げた。 また 目的 に応 じてテーマ設 定す るこ ととその具体的 な指導例 も紹介 した。 出来事 を羅列す る行事作文では使 用す ることのない語彙や表 現 も書 けるよ うにな らな けれ ば、総 合 的な書 き能力 は伸び ない のである。特 に、言語 で描 写す るこ とと意見 を述べ ることが初 級後 半以降 に重要 になる こ とを強調 した。 これ に よ り、作文指導 に対す る大きな認識の転 換 が起 きたので ある。

B校

の中学二年では描写力向上のために 「動画 を文章で表す」 ことに取 り組 んだ。動画 を見て、その動作 を文で表現す るのであるが、動画 には現れ ない「想像」部分について も 生徒たちは楽 しんで作業 を した。経験 した ことや事実ではな く文 を 自由に書 くことは、創 造的であ り、「お も しろい こ とを書いてや ろ う」と意欲 的 になれ たのだろ う。その評価 は文 の数 でな され、文の正確 さは無視 された。その単純な評価方法 も生徒 らの心理的抵抗 を弱 め、書 くことに積極的になれた要因だ と教員 らは分析 してい る。 また、その年度の三学期 には意見文や 主張文 に取 り組 んだ。 自分 の考 えを述べ るこ と、そ してそれ を皆 に読 んで も ら うこと、友達 の意見 を知 り、 自分 もまた考 えることな どを経 て、生徒 らも文章の伝 える 力 がお も しろい と感 じた よ うである。 その内容 も 「い じめ」 か ら「字幕 スーパー」 まで社 会 的な視 点で展 開 してい る。担 当教員 は「働 きかけ次第で意欲的に書 く生徒の姿を目の当 た りに し、改 めて書 きたい ことが正 しい 日本語で表せ るよ うに指導 を工夫 しなけれ ばな ら ない と感 じた」 と語 つてい る。

その生徒 らが三年生 に上が ってか らは事前 、事後指導 を丁寧 に行 つた。 テーマ はスキ 旅行や文化祭 とい つた行事 ではあ るが、教員 が実際 に見本 を作成 し、構成 を意識 させ るた めに 「は じめ」「なか」「お わ り」 な どの段落 を予 め示 し、必要 な語彙や表 現な どをま とめ て提示、 目標 を明確 に して書 く取 り組み を行 つた。新 しい ことばを導入すれば、難 しくて も使 お うとす る生徒 らに手 ごた えを感 じてい る。 その教員 は今 まで作文 のスキル を教 えて こず、生徒 らの力 を引き出せ ていなかつた と反省 していた。書 くテーマ に よつて構成が異 な ること、い ろい ろな構成 が あることを知識 と して持 つていれ ば、 スキーマ として蓄積 さ れ る。 それ を指導す る必要性 が実践で示 され たので ある。

6.6 

考察

学童期 の健聴児 に とつて書 くとい うことは、文法的 な知識 を含 めて話 しこ とばで得 た さ ま ざまな知識 を書 き ことば に変換す る とい う作業 が中心 となる。 だが、聴 覚障害児 は幼児 期 の話 しことばに よる入 力 が不足 しがちで、書 くためには文法や こ とばや その他 さま ざま な知識 を学習す る と同時 に書 きこ とばのルール をも習得 しなけれ ばな らず 、負担が大 きい。

聴 覚障害児 は、聴 覚か らの刺激 が少 ない分 だけ、視覚 を利用 した こ とばに関す る知識 の学 習 を積極的 に進 め る必要 が あろ う。 この よ うな視覚的 に文法 を指導す る方法は一般 の国語 教育 には少 な く、外 国語教 育 に倣 う意義 は大 きい。

健聴児 が 自然 に身 につ ける母語 を、発達段階 において 自然 には習得 で きない聴覚障害児 には、外 国語 としての視 ′点で 日本語 を とらえ、習得 を促す手法 が有効で あろ う。現場 の教

109

員 らに行 つたイ ンタ ビュー に よれ ば、彼 らも文法指導 の重要性 は感 じてお り、国語 の時間 だけでな く、 自立活動 の時間な どを利用 して市販 の ドリル教材や 自主制作 の練習 問題 に取 り組 んでい る。特 に、用言 の活用や助詞 の指導 の必要性 を認識 していた。 その時間 を さら に有効活用す るためには、教員 自身が ある程度 は 日本語指導 に対 して外国語教育 としての 視 点 を持 ち、文法や表現 を明解 に説 明で きるよ うにな る必要 が ある。文法 を意識す るこ と、

評価 と教育 に具体的 な 目的意識 を持つ こ とに よ り、指導 内容 は大 き く改善 され る と思われ る。

現状 では、学校 内 で文法指導 に費やせ る時 間は少 な く、十分ではない。教員 らが効率 よ く指導 でき、 また生徒 らが 自習で きるよ うな教材 も望 まれ る。市販 の文法 ドリル では例 文 の語彙 が難 しい ものや 、文その ものの抽象度が高 く、文理解 に時間を割かれて しま うもの も多い。第 四章で提案 したプ ログラムに沿 つて、生徒本人 の段階 に応 じた語彙や文法 を用 いた例文や問題 を作成 してい くことも求 め られ る。

「自分 ノー ト」の取 り組みは、教員 に とつて も児童 にとつても面倒な作業ではあるが、

言語 の経験 とフイー ドバ ックを視覚的 にす るこ とで、習得 が促 され るはず である。 また作 文の事前指導 は、教員 の負担 は大 きいが、書 く材料 が与 え られ るため、児童・ 生徒 らが安 心 して作業 にかかれ る方法で、効果 は高い。聴覚障害児の言語的経験が健聴児 と比較 して 少 ない ことは周知 の事 実で あるか ら、今 までの書 き指導の よ うに、表 出 され た ものだけを 扱 うのではな く、表 出 させ るべ き もの を与 え、定着 させ る とい う考 え方 を持つて指導 に当 た っていかね ばな らない と考 える。

資料 6.3  アンケー ト調査用紙

「書き指導に関す るアンケー ト」

(ご自身 の所 属 に○ をつ けて くだ さい

)  

小学部

  

中学部

  

高等部

1。 今 まで どの よ うなテーマで作文 を書 かせ ています か。思いつ くものを挙げて くだ さい。

(例 :「体育大会」)

2.作

文 を書 かせ る 目的 は何 です か。(例

:書

くこ とに慣れ るため)

3.そ

の 目的 を達成 させ めために どの よ うな工夫 を しています か。(例:と にか く書かせ る)

4.作

文 について、具体的 に どの よ うな指導 を してい ます か。(例 :赤で修 正 して子 どもに 示す)

5.作

文 の評価 は どの よ うに しています か。(例 :「よくで きま した」スタンプを押す)

6。 日記指導 は どの よ うに してい ます か。頻度 と量 について教 えて くだ さい。(例 :毎 日/100 字程度)

7.日

記 の指導や評価 は どの よ うに してい ます か。(例:まちが えた ところは訂正 し、読ん だ感想 を必ず書いてい る)

8.作

文や 日記 を書 きたが らない子 どもに対 して、 どの よ うな工夫 を してい ます か。

(例 :「短 くて もいい よ、何 で もいいか ら書いて」 と言 う)

9.作

文があま り上手ではない子 どもには言語 的 に どの よ うな問題 がある と思い ますか。

(例:語彙 が少 な く、文法 の定着 が よくない)

表6.4.3.1 「作文のテーマ」

今までどのようなテーマで 作文を書いていますか

行 事 体育大会、文化祭、マ ラソン大会ほか 5

抱 負 年生になつて、自分の夢ほか 1

記念 日・感謝 お母 さん(保護者)へ、礼状 1 1

感 想 読書感想文 、映画等 の感想 ほか 2 1 3

生 活 好 きな食べ物 、テ ス ト反省 0 3 3

印象的なできごと 人生最大の感動 1 0 1

自己紹介 1 1

意 見 今言いたい こと 0 1 1

(複数 回答 を含 む)

表6.4.3.2「作文 の 目的」

表6.4.3.3 「目的を達成 させ るための工夫」

作文を書かせる目的 は何ですか

表現すること 思いや気持ちを表現す る、伝 える 4

書 くことに慣れ る、書 くことへの抵抗 を弱める 1 3 1

考 えや意見 を表現す る、伝 える 1

経験や事実を述べ る、伝 える、説明す る 1 2 1 4

描写力、表現力を高める 1 1 1

小 計

記憶 や整理すること 経験や その ときの気持 ちを振 り返 る 1 2

考えを整理す る、記憶す る、深 める 1

目標や 目的意識 をはつき りさせ る 1 1

小 計

文法や語彙、表現の 定着

文法 に注意 して正 しい文章 を書 く 1 5

ことばを増やす 1 1

小 計 6

その他 コ ミュニケー シ ヨンを深 め る 0 1 1

就職や進学 の小論 文対策 0 1 1

Jヽ2

(複数回答 を含む)

目的を達成させるために どのような工夫をしてい ますか

音同 計

表現すること とにか く書 きたい よ うに書 かtる 2 6

書 く回数 を増やす 1 0 1

記憶や心情の一番強い ところを深めさせ る 1 0 i

事実だけでな く感想 も書 くように指導す る 1 0 1

書 くための ヒン トを与 える 1 1

対話 によつて内容 を掘 り下げる 1 1

短冊 を利用す る l 1

小 計

記憶や整理すること 経験 を じゆ うぶんに話 させ る 3

写真 な どを見せ る 1 1 1

板書な どで経験 したことの流れ を説明す る 1 1

タイ ミングよく(行事にあわせ て)書かせ る 1 0 1

小 計

文法や語彙、表現の定 着

文法、文型 を指導す る 1 2 3

添削を(何回も)す3

参考になるよ うな表現方法を板書す る 1 1

小 計 7

気づきを促す、受容する 相互評価、相互添削 2

ポイ ン トをま とめた り、要約 な どをプ リン トに して配布す る 1 1

キー ヮー ドを考 え させ る 1 1

書いた内容 を否 定 しない、ほめ る 0 1 1

書いた もの を掲示す る 0 l 1

小 計

その他 音読 させ る 0 1 1

(複数回答 を含む)

表6.4.3.4 「具体的な指導法」

作文 について、具体 的にど のような指導をしています か

事後指導 修正 して示す 1 4

正 しい言い回 しや文法を教 える、直 させ る 2 3

内容 を掘 り下げるための質問をす る 0 1 1

修正 した文 を読 ませ る 1 0 1

正 しい文 をなぞ らせ る 1 0 0 1

助詞や漢字のまちがいを板書す る 1 0 1

悪文 の例文 を作 り、校正 の練習 をす る 1 1

何度 も推敲す る 0 1 1

小 計

校 了後の指導 友だちの作文を読んだ り聞いた りす る 1 2 3

短文 を手話表現 させ なが ら、覚 えこませ る 1 1

113

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