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大うつ病性障害のバイオマーカーとしてのアミノ酸および関連分子の探索 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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氏 名 小川 眞太朗 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 医科学 ) 学 位 記 番 号 医工博甲 第 305 号 学 位 授 与 年 月 日 平成26年12月18日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第 1 項該当 専 攻 名 人間環境医工学専攻(生体環境学コース) 学 位 論 文 題 名 大うつ病性障害のバイオマーカーとしてのアミノ酸および関連分子の 探索 (Searching for biomarkers for major depressive disorder in amino acid

and related molecules)

論 文 審 査 委 員 委員長 教 授 竹田 扇 委 員 准教授 手塚 英夫 委 員 客員教授 星野 幹雄

学位論文内容の要旨

大うつ病性障害 (以下うつ病) は罹患率の高い疾患であり患者や社会に大きな負担をもたらす。 しかし、その病態機序がいまだに不明であることからうつ病の生物学的マーカー (バイオマーカ ー) は確立されておらず、早期の診断および治療の大きな妨げとなっている。我々はうつ病のバ イオマーカーを探索するにあたり、中枢神経系の機能と深い関わりを持つアミノ酸およびその関 連分子に着目した。 研究1 では自験例でのうつ病患者 66 名 (DSM-IV) と健常対照者 82 名を共分散分析 (ANCOVA) で比較した結果、うつ病患者群は健常対照者群よりも有意に低い血漿中トリプトフ ァン値を示した (

P

=0.03)。さらに学術文献データベース PubMed 上でうつ病患者と健常対照者 で血漿中トリプトファン濃度を比較している先行研究を検索し、得られた24 報に自験例のデー タを加えた25 比較を用いてメタアナリシスを行なった結果、公表バイアス補正後の効果量 Hedges’s

g

は「小」とされる範囲の値を示した (Hedges’s

g

, -0.45;

P

=0.000059)。次に向精神薬 を非服用の患者のみに限定して再度メタアナリシスを行ったところ、効果量は「大」とされる範 囲の値を示した (Hedges’s

g

, -0.84;

P

=0.00015)。血漿中トリプトファン値とうつ病症状とのメ タ回帰分析においては弱いながらも有意な関連性が示された (τ2=0.068,

P

=0.049)。

(2)

研究2 ではうつ病患者群 52 名 (DSM-IV) と健常対照者群 54 名を ANCOVA で比較した結果、 脳脊髄液 (CSF) 中の 4 種類のアミノ酸の濃度に差違が見られ、特にエタノールアミン (EA) の 濃度はBonferroni 法による多重比較の補正後もうつ病患者群で有意な減少を示した (

P

=0.0000011)。健常対照者群での 5 パーセンタイル値を基準とした場合、40%のうつ病患者の CSF EA がその基準よりも低値を示した。また患者群で CSF EA 値と臨床的特徴との関連を検 討したところ、EA 低値群は EA 髙値群と比べて有意に高い HAMD-17 総スコア (

P

=0.0033) と’Somatic Anxiety’ サブスケールのスコアを示した (

P

=0.00026)。さらに非服薬の参加者にお いてCSF EA は CSF 中のドパミン代謝物質であるホモバニリン酸 (

P

=0.0030) およびセロトニ ンの代謝物質である5-ヒドロキシインドール酢酸 (

P

=0.019) と有意な正の相関を示した。患者 群においてCSF EA 濃度と各向精神薬の服用量とに有意な相関は認められなかった。 本研究の結果、メタアナリシスにおいてはうつ病患者、特に非服薬の患者で血漿中トリプトフ ァン濃度が低下している強いエビデンスが得られ、血漿中トリプトファンがうつ病のマーカーと なりうる可能性が示唆された。また本研究はうつ病患者におけるCSF EA 値低下についての世 界初の報告でもあり、得られた結果からはCSF EA がうつ病の類型化マーカーあるいは状態依 存的マーカーとなる可能性が示唆された。

論文審査結果の要旨

(博士論文審査の結果の要旨) 1. 本研究の学術的価値: 本研究では大鬱病性障害に関して変化すると考えられるバイオマーカーが 血漿、或いは脳脊髄液中にあるという仮説のもと、患者検体と健常者検体の比較を行い、多変量 解析を通じて検討した。また、血漿検体に関しては多数の先行論文データと博士論文申請者が収 集したデータを合わせたかたちでメタアナリシスを実施し、混乱していた情報を統合し、そこに 将来展開の支撐点を形成した。以上を通じて本研究から、(1) 血漿中トリプトファン値が健常対 照群よりも有意に低い鬱病患者群が存在すること、(2) 脳脊髄液中のエタノールアミンが鬱病患 者群で有意に減少していること、が明らかとなった。以上の結果は今後鬱病のバイオマーカーを 探索する上でも、病態生理を解明する上でも極めて重要な知見であることから、そこに大きな学 術的価値を認めるものである。 2. 研究内容俯瞰: 本研究は体液からの大鬱病バイオマーカー探索を企図したものであり、先行研究 の妥当性を自験例も含めた上で解析し、血漿中のアミノ酸の絞り込みを行なった。一方、申請者

(3)

が所属する研究所のバイオリソースとしての脳脊髄液を用いたバイオマーカー探索を行ない、エ タノールアミンをその有力候補として同定した。脳脊髄液からの鬱病バイオマーカーの探索と報 告は世界で初めてでああり、本論全体として大鬱病の病態生理解明に貢献した。 3. 実験系並びにデータの信頼性:本研究のメタアナリシスに用いた論文データの絞り込みは、バイア スをかけることなく検索したものの中から科学的妥当性が担保される基準によって適格なもの だけを採用している。またメタアナリシスのガイドラインとして PRISMA 声明に則っている。 更に自験例も含めることで、本研究の独自性と原著論文としての価値を高めている。データ解析 はヒト検体という多様な変数が伴うものを扱ったものとしてはよくコントロールされた条件下 で行なわれており、統計パッケージの使用に関してもその限界を理解した上での解析がなされて おり、全体として信頼性の高いデータであると判断される。 4. 質疑応答: 専攻分野に関する結果の要旨に纏めて記載。 5. 今後の展望:本研究で得られた臨床データには未だ解析されていない部分もあり、向後の発展が期 待される。また提出論文に書かれている様に、本研究の限界点に関しての検討がなされるならば、 大鬱病の病態生理解明にも資すると考えられる。更に本研究は単一分子マーカーとして同定する 方向性で実施されているが、変動の少ないデータも全て組み合わせて解析を行う例えば機械学習 の様な方向性を取るならば、新しい診断手法としての展開が可能となる。 6. 人物評価:小川氏の研究に対する姿勢は真摯であり、周辺領域に関連する知識を幅広く有し て おり、発表・質疑応答の際の態度も立派であった。人格・識見ともに博士 (医学) を授与するに相応 しい人物であると判断した。特にデータは所属研究室のものであるが、その取り纏めと解析、測定手 法の確立、更には研究内容構成に至るまで主体的、自律的かつ独立的に研究を進めていたことが強く 伺われ、高い評価に値する。

参照

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