分岐型ポリアミンが超好熱菌の遺伝子発現に及ぼす 影響
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(2) 2014 年度 修士論文要旨. 分岐型ポリアミンが超好熱菌の遺伝子発現に及ぼす影響 関西学院大学大学院理工学研究科 生命科学専攻 藤原研究室. 井上貴央. 【研究目的】ポリアミンとは、アミノ基を分子内に二つ以上もつ炭化水素の総称で、様々な生命現象に 関与している低分子の塩基性物質である。85℃など高温環境で生息する好熱菌では、一般的なポリアミ ンの他にも、長鎖分岐型構造の N4-ビスアミノプロピルスペルミジン[3(3)(3)4]が見出されており、これ らは高温での核酸の構造維持に関与していると考えられている。超好熱菌 Thermococcus kodakarensis の培養温度の上昇に伴い、分岐型ポリアミンの割合は上昇する。このため分岐型ポリアミンは、転写や 翻訳など遺伝子の発現制御にも関わっていると考えられる。本研究では、分岐型ポリアミンの機能解明 を目指し、細胞内の局在性と遺伝子発現に及ぼす影響を検証した。 【実験方法】DBP1 株(pyrF, bpsA)は超好熱菌 T. kodakarensis の KU216 株(pyrF)から分岐型ポ リアミン合成酵素遺伝子 bpsA を欠損させて構築された。今回、DBP1 株(pyrF, bpsA)からキチナー ゼ遺伝子を欠損させた DBP2 株(pyrF, chiA, bpsA)を構築した。KC2 株(pyrF, chiA)、DBP2 株の培 養温度変化に伴うポリアミン組成変化を調べるとともに、これら 2 株から、S30 画分(細胞抽出液)、S100 (細胞質)画分、リボソーム画分を抽出し、各画分のポリアミン組成の培養温度変化に伴う変動を調べ た。また、分岐型ポリアミンが翻訳に及ぼす影響を調べるために、異なる培養温度の細胞から得られた S30 画分を用いた無細胞翻訳系で、異なる温度でのキチナーゼ合成活性を評価した。次に、長鎖・分岐 型ポリアミンのもつ高温下での核酸安定化能を調べるために、分岐型ポリアミンの存在量の少ない 60℃ で培養した細胞から得られた S30 画分を用いて、種々のポリアミンを添加し、高温下の翻訳活性を測定 した。また、T. kodakarensis は、硫黄の存在の有無に応じて呼吸が変化する。この呼吸の制御に分岐 型ポリアミンが関与しているかどうかを、KU216 株及び DBP1 株の生育特性解析を行い検証した。ま た、分岐型ポリアミンが転写に及ぼす影響を調べるために、KU216 株及び DBP1 株を、90℃において 硫黄非存在下で培養し、マイクロアレイ解析を行った。 【実験結果と考察】DBP2 株は、培養温度が上がるにつれ、対数増殖期に移るまでの誘導期が長くなり、 最終菌体収量、及び比増殖速度は低下した。85℃で増殖した DBP2 株細胞には N4-ビスアミノプロピル スペルミジンは蓄積せず、高濃度のスペルミジン[34]が蓄積した。DBP2 株では長い誘導期の間にスペ ルミジンが蓄積し、N4-ビスアミノプロピルスペルミジンの機能を代替したと考えられる。また、KC2 株で細胞質画分、及びリボソーム画分当たりの N4-ビスアミノプロピルスペルミジンの割合は、ともに 高温で高くなった。これは、高温下で分岐型ポリアミンがリボソームを安定化するとともに、細胞質中 では何らかの機能(遺伝子の発現調節等)を有することを示唆する。実際、KC2 株を 90℃で培養した 細胞から取得した S30 画分は、高温で高い翻訳活性が得られた。また、種々のポリアミンの高温下無細 胞翻訳系への添加効果を検証したところ、N4-ビスアミノプロピルスペルミジンで高い翻訳活性が検出 できた。さらに、DBP1 株は、硫黄非存在下の生育が高温下(90℃)で低下した。また、硫黄非存在下で 培養した DBP1 株のマイクロアレイ解析の結果より、多くの遺伝子の転写量が DBP1 株で変動してい た。特に、T. kodakarensis は、硫黄非存在下で生育する際に必要な遺伝子(NiFe-hydrogenase)の転写 量が、高温下で著しく低下していた。一方、SpeE(アミノプロピル基転移酵素)の転写量が著しく上昇し ていた。これにより、高濃度のスペルミジン[34]が、DBP2 株において蓄積したと考えられる。以上の 結果より、分岐型ポリアミンは、超好熱菌 T. kodakarensis の細胞内において、高温下で翻訳だけでな く、転写に関与することで遺伝子発現を制御していることが考えられる。.
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