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シロイヌナズナ

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 尾 本 大 輔

学 位 論 文 題 名

シロイヌナズナADP‑glucose pyrophosphorylase サブユニット遺伝子およびタンパク質の発現特性

.学位論文内容の要旨

  ADP‑glucose pyrophosphorylase (AGPase,EC2.7.7.27)は,グルコース1‐リン酸とATPから ADPグ ル コ ー ス お よ び ピ ロ リ ン 酸 を 生 成 する 反応 を触 媒す る酵 素で ある . このADPグル コ ー スは デン プン 生合 成における唯一の基質となり,様々 なデンプン生合成関連酵素の働きで デ ン プ ン が 合 成 さ れ る . .AGPaseは 大 小の サ ブユ ニッ トが2っ ずっ 会合 し たへ テロ4量 体 で あり ,両 サブ ユニ ットの担う役割は異なると考えられ ている.小サブユニットは主に触媒 作 用を 担い ,大 サブ ユニットは主にアロステリック調節 を担うことが明らかにされてきた.

高等植物の場合, アロステリック調節を受ける際の活性化因子は3―phosphoglycerateであり,

阻 害因 子は 無機 リン 酸である.各サブユニットはそれぞ れ別の遺伝子にコードされている.

一 般に ,植 物で は各 サブ ユニ ット を コー ドす る遺伝子は複数個存在するため,ヘテ ロ4量体 で あるAGPaseに は多 くの アイ ソザ イ ムが 存在 する と考 えら れて いる .デ ンプンは光合成器 官 に お い て 合成 さ れる 同化 デン プン と貯 蔵器 官で 合成 され る貯 蔵デ ンプ ン の2種に 大別 さ れ るが ,両 者の 役割 は異なると考えられるため,関与す るAGPaseアイ,ソザイムも異なるこ と が予 想さ れる .し かし なが ら, あ る植 物種 にい くつ のAGPase遺伝 子が 存在するのか,あ る いは それ ぞれ の遺 伝子ないしはタンパク質の発現特性 が,網羅的に解析された例はない.

AGPaseの活 性は デン プン 量に 大き な 影響 を及 ばし ,炭 素源 の振 り分 けに 関与する重要な酵 素 で あ り , 本 酵 素 の 植 物 体 全 体 で の 機 能 を 解 析 す る こ と は 重 要 で あ る .   シロ イヌ ナズ ナに おいては全ゲノム配列がすでに解析 されている.データベースから,シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ に はAGPase大 サ ブ ユ ニ ッ ト を コ ー ド す る 遺 伝 子 が4個(ApH,Apl2,Apl3お よ びApl4), 小 サ ブ ユ ニ ッ ト を コ ー ド す る 遺 伝 子 が2個(Apslお よ びAps2)存 在 す る こ と が 明ら かと なっ ナこ .本研究では,シロイヌナズナのAGPase全てのサブュニットの発現特性 を ,遺 伝子 レベ ルお よび タン パク 質 レベ ルで 詳細 に解 析し ,そ れぞ れのAGPaseアイソザイ ム の機 能を 明ら かに する こと を目 的 とし た. 遺伝 子発 現レ ベル の解 析に は,リアルタイム PCRを 利 用し ,夕 ンパ ク質 レベ ルで の解 析で は,個々の サブユニットに対する特異的ポリク ローナル抗体を作 製し,それら抗体を用いたウェスタンブロット解析を行った.植物体には,

シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ 野 性 株 の 他 に ,ApL1夕 ン パ ク 質 欠 損 株 で あ るTLA6株 あ る い はApSl夕 ン パ ク質 欠損 株で あるTL25株を 使用 し ,欠 損に よる 影響 も検 討し た. また ,Apll,Apl3およ びApsl遺 伝 子 に 関 し て は , 各 プ ロ モ ー ター 領 域の 下流 にレ ポー ター 遺伝 子(GUS遺 伝子 )

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を連結したプラスミドを植物体に導入した変異体を作製し,さらに詳細な発現特性を解析し た|

  Apllおよび卸口遺伝子は,全ての器官(ロゼット葉,茎生葉,花茎および長角果)にお

いて強く発現しており,夕ンパク質レベルにおいても各器官で協調的に発現していた.また,

GUS染色の結果から両遺伝子は,植物体全体,特に光合成器官における強い発現が認められ,

同部位にデンプンの蓄積が認められることから,ApLl/ApSl AGPaseアイソザイムは光合成 器官における同化デンプン合成に強く関与していることが示唆された.貯蔵器官である種子 における発現は光合成器官に比ぺると低いものの認められることから,ApLl/ApSl AGPase アイソザイムは貯蔵組織における貯蔵デンプン合成にも関与していると考えられた.Apl2遺 伝子は,Apll遺伝子と同様な発現パターンを示し,夕ンパク質レベルにおいてもApLl夕 ンパク質と類似した発現特性であった(長角果においては発現が認められない).しかしなが ら,遺伝子発現レベルの低さから,ApL2夕ンパク質を構成因子とするAGPaseアイソザイ ムのデンプン生合成に関する寄与は少ないと考えられた.ApLA夕ンパク質は生育初期のロ ゼット葉にのみ存在が確認された.Apl2遺伝子と同様に発現量が非常に小さいことから,

ApIA夕ンパク質を有するAGPaseアイソザイムの量は少なく,デンプン生合成への関与も 少ないと考えられた.Apl3遺伝子はロゼット葉,茎生葉,花茎,長角果の順に発現量が大き く増加し,この増加はタンパク質レベルにおいても確認された.さらに,ApL3タンパク質 は種子において強く発現していることが示され,貯蔵器官におけるデンプン生合成への強い 関与が示唆された.

  ApLl夕 ンパ ク 質欠 損 株(TLA6株)お よびApSl夕ンパ ク質欠損 株(TL25株)に おいて は,Apll遺伝子は野性株と同様のレベルで転写産物を蓄積するが,他の遺伝子発現レベルは 野 性株に比 べてTLA6株,TL25株の順に増 加した. この遺伝子発現量増加は,AGPase活 性およびデンプン蓄積量と負の相関を示し,ApLlあるいはApSl夕ンパク質欠損に伴う何 らかのシグナル応答の存在が示唆された.TL25株においては,小サブユニットタンパク質 が存在しないため,多くの大サプユニットは速やかに分解されたが,ApL3夕ンパク質は単 独で安定して存在し,AGPaseとしての機能以外にも何らかの役割があることが考えられた,

  ApS2夕ンパク質のアミノ酸配列には,触媒活性に重要とされるアミノ酸残基が欠如して

お り,活性 を有する4量体を構成できないと考えられた.他にも,系統樹からApS2夕ン パク質の推定成熟夕ンパク質の一次構造は,他の植物種由来のAGPase小サブユニット一次 構造と相同性が低いこと,遺伝子発現レベルは他のサブユニット遺伝子と比較して著しく低 いこと,特異的抗体を用いてもApS2夕ンパク質を検出できないことから,Aps2遺伝子は 擬遺伝子であると考えられた.

  以上のように,シロイヌナズナのAGPaseサブユニットはそれぞれ特異的な発現特性を有 することが明らかとなった.これらサブユニットからなる様々なAGPaseアイソザイムが存 在することが考えられたが,シロイヌナズナにおいてはApL1およびApSl夕ンパク質が主 たるAGPaseアイソザイムを構成し,同化デンプン合成・貯蔵デンプン合成の両方に寄与し ていると考えられた.ApL3夕ンパク質に関しては,貯蔵デンプン合成に関する寄与の他に 何らかに機能を有している可能性が示唆された.他のサブユニットからなるAGPaseアイソ

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ザイムも存在するが,デンプン生合成に関する寄与は少ないと考えられた,しかしながら,

個々のAGPaseアイソザイムは異なる酵素学的性質を有すると考えられ,生体内の環境の変 化に対応し,複数のAGPaseアイソザイムがデンプン生合成に関与していると考えられた.

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学 位論文 審査の要旨

学 位 論 文 題 名

シ r:i イヌナズナ  ADP‑glucose  pyrophosphorylase サブユニ ット遺 伝子およ びタンパク質の発現特性

  本 論 文 は , 図41, 表4, 引 用 文 献272を 含 み ,5章 か ら な る 総 ペー ジ144の和 文論 文で ある .別に参考論文2編が添えら れている。

  植 物が合成するデンプンは人類に欠くことのできない物質 であるが,その生合成経路の詳 細は 明らかになっておらず,不明な点も多い.本研究ではシ ロイヌナズナ植物を対象とし,

デ ンプ ン 生合 成における鍵酵素ADP‑glucose pyrophosphorylaseの全サブユニット の網羅的 な発 現特性を遺伝子レベルならびにタンパク質レベルで詳細 に検討し,デンプン生合成経路 のよ り深い理解を目指して行われた.

  ADP−glucose pyrophosphorylase (AGPase,EC 2.7.7.27)は,デンプン生合成における唯一の基 質ADP‑グ ル コ ー ス を生 成す る反 応を 触媒 する 酵素 であ る. 高等 植物 のAG?aseは 大小 のサ ブ ュ ニ ッ ト が2っ ずつ 会合 した へテ ロ4量 体で あり ,両 サブ ユニ ット の 担う 役割 は異 なる と考えられている.各サブユニットはそ れぞれ別の遺伝子にコードされている.一般に,植 物 で は 各 サ ブ ユ ニ ッ ト を コ ー ド す る 遺 伝 子 は 複数 個存 在す るた め, ヘテ ロ4量 体で ある AGPaseには多くのアイソザイムが存在す ると考えられている, しかしながら,ある植物種 にい くつ のAGPase遺伝 子が 存在 する のか ,あ るい は それぞれの遺伝子ないしはタンパク質 の発 現特 性が 網羅 的に 解析 され た例 はな い.AGPaseの活性はデンプン量に大きな影響を及 ばし,また,炭素源の振り分けに関与す る重要な酵素であることから,本酵素の植物体全体 での機能を解析することは重要である.

  シロイヌナズナにおいては全ゲノム配歹IJがすでに解析されている.データベースから,シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ に はAGPase大 サブ ユニ ット をコ ード する 遺伝 子が4個(Apll,Apl2,Apl3お よ びApl4), 小 サ ブ ユ ニ ッ ト を コ ー ド す る 遺 伝 子 が2個(Apslお よ びAps2)存在 する こと が明らかとなった.

Apllお よ びApsl遺 伝子 は, 全て の器 官( ロゼ ット 葉, 茎生 葉, 花茎 お よび 長角 果) にお いて強く発現し.ており,タンパク質レベルにおいても各器官で協調的に発現していた,また,

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蔵 哲

行  

  浩

井 野

藤 藤

松 浅

内 伊

授 授

授 授

   

   

教 教

教 助

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

GUS染色の結果から両遺伝子5ま,植物体全体,特に光合成器官における強い発現が認められ,

同 部位 にデ ンプ ンの 蓄積 が認 め られ るこ とか ら,ApLl/ApSl AGPaseアイソザイムは光合成 器 官に おけ る同 化デ ンプン合成に強く関 与していることが示唆された.同様に,ApLl/ApSl AGPaseアイ ソザ イム は貯 蔵組 織 にお ける 貯蔵 デンプン合成にも関与 していると考えられた Apl2遺伝 子は ,Apll遺 伝子 と 同様 な発 現パ ター ンを 示し ,タ ンパ ク質 レペ ルに おい て も ApLI夕ンパク 質と類似した発現特性であった(長角果においては発現 が認められない).し か し なが ら, 遺伝 子発 現レ ベ ルの 低さ から ,ApL2夕 ンパ ク質 を構 成因 子と するAGPaseア イ ソザ イム のデ ンプ ン生 合 成に 関す る寄与は少ないと考えられた.ApIA夕 ンパク質は生育 初期のロゼッ ト葉にのみ存在が確認された.Apl2遺伝子と同様に発現 量が非常に小さいこと か ら ,ApIA夕 ンパ ク質 を有 す るAGPaseアイ ソザ イム の量 は少 なく ,デ ンプ ン生 合成 へ の 関与も低いと 考えられた.Apl3遺伝子は各器官で発現量が異なり,特 に長角果における強い 発現が確認さ れた.夕ンパク質レベルでの発現特性は,遺伝子レベル における発現特性と相 関 を示 した .ApL3夕 ンパ ク 質は 種子 において強く発現していることが示さ れ,貯蔵器官に おけるデンプ ン生合成への関与が示唆された,

  ApLlタ ン パ ク 質 欠 損 株(TLA6株 ) お よ びApSl夕 ン パ ク 質 欠 損 株(TL25株 ) に お い て は,Apll遺伝 子は野性型株と同様のレベルで転写産物を蓄積するが, 他の遺伝子発現レベル は 野 性株 に比 べてTIA6株,TL25株 の順 に増 加し た, この 遺伝 子発 現量 増加 は,AGPase活 性 お よび デン プン 蓄積 量と 負 の相 関を 示し ,ApLIあ るい はApSl夕 ンパ ク質 欠損 に伴 う 何 ら かの シグ ナル 応答 の存 在 が示 唆さ れた.TL25株においては,小サブユニ ットタンパク質 欠 損の ため ,多 くの 大サ ブ ユニ ット は速やかに分解されたが,ApL3夕ンパ ク質は単独で安 定 し て 存 在 し ,AGPaseと し て の 機 能 以 外 に も 何 ら か の 役 割 があ るこ とが 考え られ た .   ApS2タン パク 質の アミ ノ 酸配 列に は,触媒活性に重要とされるアミノ酸 残基が欠如して お り, 活性 を有 する4量体 を構 成で きな いと 考え られ た .加 えて,ApS2夕 ンパク質の一次 構 造は ,他 の植 物種 由来 のAGPase小 サブユニット一次構造と相同性が低い こと,遺伝子発 現 レベ ルが 著し く低 いこ と ,特 異的 抗体を用いてもApS2タンパク質を検出 できないことか ら,Aps2遺伝 子は擬遺伝子であると考えられた,

  以上 のよ うに ,シ ロイ ヌ ナズ ナのAGPaseサブユニットはそれぞれ特異的 な発現特性を有 す るこ とが 明ら かと なっ た .こ れら サブュニットからなる様々なAGPaseア イソザイムが存 在 す るこ とが 考え られ たが , シロ イヌ ナズ ナに おい てはApLlおよ びApSl夕 ンパ ク質 が 主 た るAGPaseアイ ソザ イム を 構成 し, 同化デンプン合成・貯蔵デンプン合成 の両方に寄与し て いる と考 えら れた .ApL3夕ン パク 質は,貯蔵デンプン合成への寄与に加 え,何らかの機 能 を有 して いる 可能 性が 示 唆さ れた .他のサプユニットからなるAGPaseア イソザイムも存 在するが,デ ンプン生合成に関する寄与は低いと推定された.しかし ながら,個々のAGPase アイソザイム は異なる酵素化学的性質をもち,生体内の環境の変化に 対応し,複数のAGPase アイソザイム がデンプン生合成に関与すると考えられた.

  本 研究 では ,シ ロイ ヌナ ズ ナを 用い植物体全 体におけるAGPaseサブユニットの発現特性 を明 らか にし た. また ,同 時 に変 異株を解析す ることにより,AGPaseサブユニットタンパ ク質 の欠 損に 伴う シグ ナル 伝 達経 路の 存在 を示 唆し ,さ らに ,AGPaseサプ ユニットの1種 が,AGPaseと して の機 能以 外 に何 らかの機能を もつ可能性を示した.これらの知見は学術

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的のみならず,植物体内における 炭素源を有効に利用し,デンプン量を増加させるなどの応 用面においても大いに貢献するも のと判断される.

  よって,審査員一同は,尾本大輔氏が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有する と認めた.

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参照

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