薄型合成橋まくらぎの性能検証
東京地下鉄株式会社 正会員 ○阿部 正和 東京地下鉄株式会社 正会員 小林 実 東京地下鉄株式会社 河野 陽介 東京地下鉄株式会社 森 信治
1.はじめに
東京地下鉄(株)(以下,東京メトロ)日比谷線南千住駅-三ノ輪駅間の南千住第一架道橋は,経年とともに 木製橋まくらぎが劣化してきており,合成橋まくらぎに改良を予定している.無道床橋りょう区間は,振動・
騒音対策として,弾性型の締結装置を推奨している.しかし,弾性型の締結装置は,タイプレートが厚くなる が,本区間では,縦断勾配の逓減距離を確保することができないので,タイプレートが厚くなった分,橋まく らぎを薄くする必要がある.本区間は,曲線半径が 171m と急曲線なので,カント量を確保するため,一部の 内軌側でまくらぎ厚が鉄道構造物等設計標準・同解説 軌道構造(以下,設計標準)1)に示されている 140mm を下回る箇所が発生する.そこで,薄型合成橋まくらぎの性能検証を行った.
2.薄型合成橋まくらぎの解析
薄型合成橋まくらぎの性能検証をするために解析を行った.解析 条件を表1に,解析モデルを図1に示す.実際に敷設する合成橋ま くらぎは,カントがあるため,内軌側のみ薄くなるが,解析では簡 易的に左右同じ形状とした.過去の知見から片側レールのみに輪重 と横圧が作用するより,両側レールに輪重のみが作用した場合の方 がレール沈下量及び橋まくらぎの発生応力が大きくなることが知ら れていることから3),ここでは,輪重のみを作用させることとした.
また,軌道パットの支持ばね係数を考慮しない場合の方が荷重条件 として厳しくなるため3),軌道パットは考慮しないこととした.荷重 条件は,日比谷線の車両重量から輪重を 77.5kN とし,これに普通継 目の速度衝撃率を乗じて算出した.
速度衝撃率
i = 1+ 0.5V 100
・・・・ 式1 3.解析結果
レール沈下量及びまくらぎに発生する曲げ応力を表2に示 す.橋まくらぎ区間におけるレール沈下量の限度は明らかにさ れていないため,橋まくらぎの厚さ 200mm,幅 200mm で,主桁 間隔 2.0m の場合のレール沈下量から,4.0mm を目安とされてい る3).本解析結果では,わずかに超えているが,東京メトロの
防振軌道区間では,レール沈下量が 5.0mm 程度で設計されている実績もあることから,4.4mm でも,性能上問 題ないと考えられる※.
まくらぎに発生する曲げ応力は,100 万回の疲労試験で破壊しない 75MPa に対し,安全率を 3 とした 25MPa を目安値とすると,解析結果は 14.1MPa であり,目安値以下であった.
キーワード 合成まくらぎ,強度試験,疲労試験
連絡先 〒110-0015 東京都台東区東上野3丁目 19 番 6 号 東京地下鉄株式会社
表1 解析条件 列車速度 V 35km/h 列車輪重 77.5kN 速度等の割増込輪重 91.1kN 主桁間隔 1800mm まくらぎ間隔 440mm まくらぎ幅 200mm 曲げヤング率 7,590MPa
表2 解析結果
解析結果 目安値 判定 レール沈下量 4.4mm 4.0mm ※
曲げ応力 14.1MPa 25MPa ○ 図1 解析モデル
土木学会第71回年次学術講演会(平成28年9月)
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4.薄型合成橋まくらぎの材料試験概要
薄型合成橋まくらぎを採用するにあたり,設計標準及び JIS E 1203 に準じて,耐曲げ荷重試験及び耐疲労性能試験を行った.
耐曲げ荷重試験の供試体は,まくらぎ厚が最小で 110mm 程度に なることから,厚さ 110mm とし,図2に示すように,供試体スパ ンの中央部に集中荷重を加えて,供試体が破壊した時の最大荷重 を読み取った.載荷速度は 2.0±0.5mm/分とし,測定項目は,最 大荷重及び最大荷重時のたわみ量とした.
耐疲労性能試験は,実際に敷設する区間の主桁 間隔(1800mm)となるように,供試体寸法を幅 200mm×厚 110mm×長 2200mm とした.そして,図 3に示すように支持スパンの中央に 2~5Hz で 100 万回載荷した.JIS では,繰り返し荷重の大 きさは,最大曲げ応力が 28.0MPa 発生する荷重と
されているが,試験機の性能から曲げ応力を定常的に与えることは難しいため,応力発生条件のたわみ量を求 めて,変位制御により載荷を行った.測定項目は,試験後の損傷状態及びたわみ量とする.
5.材料試験結果
耐曲げ荷重試験,耐疲労性能試験の試験結果を表3に示す.耐曲げ荷重試験では,196.5kN 載荷した時点で 上部が圧壊し,破壊に至った.設計標準では,耐曲げ荷重は 170kN 以上としているため,十分な強度を有して いることが分かった.
耐疲労性能試験は,10 万回載荷した時,破壊してはならないとされているが,10 倍の 100 万回載荷したが,
ひび割れも発生せず,健全な状態であった.また,試験後のたわみ量も 0.877mm とごくわずかなものであった.
表3 試験結果
試験結果 設計標準 判定
耐曲げ 荷重試験
最大荷重 196.5kN 170kN 以上 ○
たわみ量 40.3mm ― ―
耐疲労 性能試験
試験後の状態 100 万回載荷後 破壊しない
10 万回載荷後
破壊しない ○ たわみ量 0.824mm 平均
0.877mm ― ―
0.930mm 6.まとめ
薄型合成橋まくらぎに対して,解析,耐曲げ荷重試験及び耐疲労性能試験を行った.解析の結果,レール沈 下量は,他区間の防振軌道と変わらないことが分かった.また,曲げ荷重試験及び耐疲労性能試験では,十分 な曲げ強度及び耐疲労性能が得られ,設計標準を満足することが分かった.以上のことから,薄型合成橋まく らぎが理論上の性能を満たすことが確認できた.しかし,まくらぎ厚 110 ㎜のものを採用すると,まくらぎと 締結装置を締結するねじくぎを加工しなければならない等,140 ㎜の標準品を使用する場合と比較し,施工上 のデメリットが存在する.そのため,本区間では薄型合成橋まくらぎが必要な箇所に限り 110 ㎜のものを使用 するが,標準は 140 ㎜の合成橋まくらぎを使用していく方針である.
参考文献
1)鉄道総合技術研究所:鉄道構造物等設計標準・同解説(軌道構造)
2)JIS E 1203 合成まくらぎ
3)長藤敬晴,阿部則次:合成まくらぎ 15 年の経験
200
1400
1120 110
図2 耐曲げ荷重試験
200
2200
1800 110
図3 耐疲労性能試験 土木学会第71回年次学術講演会(平成28年9月)