早稲田大学審査学位論文(博士)
中国における消費者撤回制度の理論的基礎
―日本法との比較的研究を通じて―
早稲田大学大学院法学研究科
徐肖天
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中国における消費者撤回制度の理論的基礎
―日本法との比較的研究を通じて―
目次
序論
第一章 中国の消費者撤回制度の検討
第一節 「消費者権益保護法」の改正前の消費者撤回制度について 第一款 無因返品について
第二款 「消費者撤回制度」改正前の消費者撤回制度の立法概観 第二節 「消費者権益保護法」の改正と後悔権の確立
第一款 「消費者権益保護法」改正前の消費者権益保護法導入をめぐる議論の概観 第二款 「消費者権益保護法」改正と遠距離販売における後悔権の導入の背景 第三款 草案審議段階の討論
第三節 「消費者権益保護法」改正後の立法例の整理 第一款 「オンライン取引管理規定」16条
第二款 地方的法規
第三款 保険契約における猶予期
第四節 消費者撤回制度の理論化研究について 第一款 消費者撤回制度の正当化根拠について 第二款 消費者撤回制度の法的構成について
第五節 消費者撤回制度の適用上の問題点と任意的規定の消費者撤回制度の導入論 第一款 遠距離販売における後悔権の適用に関する問題点
第二款 任意的規定の消費者撤回制度の導入論について
第二章 日本における消費者撤回制度の検討 第一節 クーリング・オフ制度の立法沿革
第一款 訪問販売型割賦販売の適正化とクーリング・オフ制度の導入 第二款 特殊販売の適正化とクーリング・オフ制度の適用の拡大化 第三款 他の類型の取引におけるクーリング・オフ制度の概況 第四款 クーリング・オフ制度の効果と除外規定
第二節 クーリング・オフ制度の理論的検討 第一款 クーリング・オフ制度の正当化根拠 第二款 クーリング・オフ制度と民法理論について
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第三款 日本におけるクーリング・オフ制度の法的構成に関する学説 第四款 本節のまとめ
第三節 通信販売における法定返品権 第一款 通信販売に対する規制の始まり
第二款 2008年特定商取引法の改正と法定返品権の確立
第三款 通信販売にクーリング・オフ制度を導入する可能性に関する議論 第四款 法定返品権の法的構成
第五款 本節のまとめ
第三章 中国における消費者撤回制度のあり方について―日本法からの示唆 第一節 前章までのまとめ
第一款 第一章の検討内容 第二款 第二章の検討内容
第三款 日中両国の消費者撤回制度の理論化研究の異同について 第二節 中国における消費者撤回制度の理論的基礎について
第一款 消費者撤回制度の実際の機能――従来の意思表示論の補完
第二款 意思表示論の拡大化――精神的脆弱性と情報的脆弱性の危険性の対応 第三款 法的構成について
第四款 片面的な返還ルールについて
第三節 精神的脆弱性と情報的脆弱性に起因する弱い瑕疵のある意思表示の類型化につ いて
第一款 精神的脆弱性と情報的脆弱性の類型化
第二款 訪問販売型契約における消費者撤回制度について 第三款 継続的役務提供型契約における消費者撤回制度 第四款 金融商品取引における消費者撤回制度
第五款 遠距離販売における消費者撤回制度 第六款 本節のまとめ
結語
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序 論
2013年の「中華人民共和国消費者権益保護法」(以下「消費者権益保護法」)の改正をき っかけに、中国では、消費者撤回制度に関する研究は盛んになってきた1。消費者撤回制度 は、消費者に自ら締結した契約から離脱する権利を与え、契約締結後の一定期間内であれ ば、消費者が契約の締結を再考し、例え事業者が既に契約を履行したとしても契約の解消 が可能である。これは、現有の撤回権や取消権及び解除権とは違っており、短い期間内に 契約厳守の原則を破ることを可能にし、特定状況下の消費者保護を図る制度である。
中国においては、消費者撤回制度の理論的合理性について、最初は、経済法理論に基づ き解釈されたように見える2。消費者撤回制度は、消費者保護を目的とする法制度である以 上、消費者と事業者との間の構造的格差を解消するのがその根本的な機能であるとの理論 的前提に基づき、消費者撤回制度が契約厳守の原則の特殊状況として認容する余地がある と語られた。中国は、消費者保護に関する法規制を経済法上の問題とする傾向にあるが、
事業者と消費者との間の構造的格差を前提とする消費者法の理論をもって消費者撤回制度 の理論的位置づけを検討するのが当然なことである。
ところで、消費者保護の角度から消費者撤回制度を検討することは、消費者撤回制度に より対応する状況の内容を不明確にし、消費者撤回制度の理論的基礎を正確的に導き出せ ないとの批判が強かった。現在では、民法理論から出発し、消費者撤回制度を消費者の真 実の意思表示の保護手段とする認識が広く見受けられるように見える。これは、消費者撤 回制度が、契約厳守の原則を破るものではなく、意思表示の実質的保護(契約自由の実質 化)を実現するものと認識されているからである。そして、民法の意思表示の理論をもっ て消費者撤回制度の本質に対して解釈を行い、従来の意思表示論に新しい枠組みを加える 可能性を見せている。しかしながら、立法資料や関連する議論から見れば、消費者撤回制 度は従来の意思表示論の延長線にある制度として把握する見解が有力的であるとしても、
その理論上の整理が十分ではないと言わなければならず、既存の民法理論との関係が十分 に説明されないと思われる。消費者の自主的選択権と消費者の知情権により対応するのは3、 社会構造の変化によって顕在化した従来の意思表示論の限界にある問題である。これは、
従来の意思表示論との関連性がありつつも、独自の問題領域を有していると思われる。し たがって、この問題領域の内容をどのように特定すべきかについて、より詳しい検討が必
1 消費者撤回制度のほか、冷静期や後悔権及び猶予権などの呼び方もあるが、現在になっ ても統一されていない。本論文は、比較的に多用される消費者撤回制度という呼び方を採 用しようとする。ただ、遠距離販売における後悔権や保険契約における猶予期は、法定の 呼び方であるため、そのまま使用する。
2 経済法は、国家が市場経済へ積極的に介入し、社会主義経済関係を調整するための法律 の総称である。「反不正等競争法」や「消費者権益保護法」及び「独占禁止法」などの法 律は、経済法の典型例である。
3 知情権とは、「情報を知る権利」であり、「消費者権益保護法」により定める消費者基本 的権利の一種である。
4 要であると思われる。
なお、中国のこれまでの理論的検討は、消費者撤回制度の立法論とのつながりが見えな いなか、消費者撤回制度を意思表示論の延長線にあるという考え方に定着しつつも、それ が、立法論に直結しない理論的整理にとどまってきた。すなわち、中国の消費者撤回制度 の立法は、依然として政策的な判断に委ねるものである。これは、消費者撤回制度の立法 化が政策主導に依存する傾向があり、消費者撤回制度の対応する状況や概念内容が明らか にされていないからであると思われる。本論文は、消費者撤回制度の立法化が「政策主導」
から「理論主導」への転換の必要性があることを念頭に置き、消費者撤回制度の理論化の 視点から、中国の消費者撤回制度の立法論に対しても検討を試みたい。
かかる中国の消費者撤回制度の立法及び理論研究の問題点に鑑み、本論文は、日本の立 法例及び先行研究を比較検討の素材とし、現在の中国の消費者撤回制度の理論化研究の問 題点を解決するための一助となると思われる。日本法では、中国法のように消費者撤回制 度を経済法上の問題として扱うことはないのであるが、日本の消費者撤回制度(クーリン グ・オフ制度と法定返品権)の立法沿革から見れば、それを業法上の規制とする時代もあ った。ただ、近時の消費者撤回制度の理論化に関する検討は、基本的には消費者撤回制度 と民法理論との関連性に重きを置いて展開していると見られる。とりわけ、ドイツ法の影 響を受け、消費者撤回制度は従来の意思表示論(錯誤・詐欺・強迫)を補完する、更に現 有の意思表示論の枠組みを拡張する制度との考え方が有力である。なお、その類型化に関 する理論的検討もかなり蓄積している。中国と同じくドイツ法の影響を受けているが、日 本の研究が自国の法制度と法理論に基づき新たな発展を遂げており、比較法研究として価 値のある素材であると思われる。
本論文は、消費者撤回制度を現行法において確立している意思表示論の限界を克服する ものと理解した上で、中国の消費者撤回制度と従来の意思表示論との理論的整合の視点か ら検討していくこととする。
以上のような課題設定に基づき、本論文は、中国における消費者撤回制度の立法沿革や 理論研究の現状を考察・分析した上で、その特徴と問題点を示したい。また、日本の消費 者撤回制度の立法沿革や関連する議論を参考にしながら、現行法の重大な誤解(日本法の 錯誤に近い)・詐欺・強迫等の諸制度にぴったり当たらない状況の存在(弱い瑕疵のある意 思表示)及びその類型化をめぐって、分析を試みたい。
まず、第一章においては、中国立法や先行研究を検討する。
第一節では、2013年「消費者権益保護法」改正前の消費者返品手段の無因返品と消費者 撤回制度の早期立法を紹介する。
第二節では、2013年の「消費者権益保護法」の改正及び遠距離販売における消費者撤回 制度の後悔権の導入に関する議論と全人代の審議を紹介する。
第三節では、2013年以降の消費者撤回制度の立法状況を整理して紹介する。
第四節では、中国の消費者撤回制度の理論化研究を紹介し、消費者撤回制度の正当化根
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拠や法体系上の位置づけ及びその法的構成を明らかにしたい。
第五節では、消費者撤回制度の立法ブームに伴う実際の適用上の問題点の明らかにする、
なお、現行法の適用上の問題の発生は、消費者撤回制度の立法モデル(強行的規定)の問 題と認識し、任意的規定の消費者撤回制度の導入を提唱する学説を紹介する。
次に、第二章においては、日本の立法例や先行研究を検討する。
第一節では、日本の典型的な消費者撤回制度のクーリング・オフ制度の立法沿革を紹介 する。
第二節では、日本のクーリング・オフ制度の理論的検討を整理する。具体的に言えば、
クーリング・オフ制度の正当化根拠、クーリング・オフ制度と民法理論との関連性及びク ーリング・オフ制度の法的構成に関する検討を紹介する。
第三節では、日本特有の消費者撤回制度の通信販売における法定返品権の立法沿革を整 理し、遠距離販売のクーリング・オフ制度の導入に関する議論や法定返品権の法的構成を 含めて検討を行う。
続いて、第三章は、比較的な検討をする。
第一節では、前章までの内容を再び整理し、検討の内容を集約する。
第二節では、消費者撤回制度と民法理論との関連性について、日本法との比較を通じて、
消費者撤回制度を従来の意思表示論の限界にある問題の精神的脆弱性(一方的・攻撃的・
技術的な勧誘を受け、自分のニーズを冷静に判断できない人間の脆弱性)と情報的脆弱性
(情報不足であるから、商品又は役務が自分のニーズに応えるかどうかを正しく判断でき ない人間の脆弱性)に起因する現行法上の瑕疵のある意思表示までに至らない弱い瑕疵の ある意思表示の対応制度とした上で、従来の意思表示論の拡大化の角度から消費者撤回制 度を位置づけようとする。
第三節では、現行法の弱い瑕疵のある意思表示の類型化の存在を前提として、立法論と の関連を提示しようとする。
本論文は、上述した検討を通じて、新たな理論を構築しようとするものである。
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第一章 中国における消費者撤回制度の検討
第一節 「消費者権益保護法」の改正前の消費者撤回制度について 第一款 無因返品について
1995年、アメリカの世界最大手のダイレクトセリングカンパニー(直販会社)のアムウ ェイ(Amway、中国名「安利」)が中国に進出し、中国での営業を展開したときに、同時に、
アメリカ流のマーケティング手法としての返品ルールも中国に持ち込まれた。アムウェイ は、消費者が商品に満足しなければ、その商品が使い切ったとしても返品できるという現 代的マーケティング手法を中国で実施したが、これは、中国で現れた最初の消費者無理由 返品ルールである4。しかし、アムウェイの返品ルールが中国で悪用されて、返品率が一度
に32%(同時期のアムウェイ返品の平均返品率が8%)になった。
当時の報道によると、消費者だけではなく、不当な個人利益を得るためにアムウェイの 販売員も無理由返品ルールを悪用したことがあり、上海や杭州のアムウェイ専門店の前に は、常に「返品長列並び」であり、上海アムウェイ専門店だけでも毎日 100 万人民元以上 の損失を蒙った。こうした不正利用にブレーキをかけるため、1997年に、アムウェイは「お 客様が商品を購買してから 7 日以内に、再販売の価値のある商品を返品する場合に、全額 の代金を返還する」と返品ルールを修訂し、そのブームがようやく抑えられることになっ た5。ただし、返品できない消費者や販売員がアムウェイ専門店の担当者らと激しく衝突し た事件もあった6。それが、いわゆる「1995 年アムウェイ返品ブーム」であった。「アムウ ェイ返品ブーム」は、アムウェイに大きな損失を蒙らせたが、客観的には、消費者無理由 返品ルールの存在を中国社会に広く伝播する作用もあったと思われる。
アムウェイの返品サービスは、中国国内で「無因返品」と呼ばれている。無因返品は、
①消費者と事業者との間に書面あるいは口頭で、②消費者契約が履行してから一定の期間 内に消費者が受領した商品を返品する権利を有することを約定し、③消費者が当該権利を 利用するときに、事業者がその商品の全額代金を消費者に返還する、という仕組みである。
無因返品の特約には、消費者の利益に反する内容がない限り、無因返品期間が経過して消 費者が返品をしなければ、契約が確実に有効なものになるが、一種の契約自治によるもの と見られる。
現行の法律の中には、無因返品の提供を促す規定がある。例えば、「衢州市工商行政管理 局の市内酒類企業経営行為の規範化に関する実施意見」(2012 年公布)の 3 条(経営主体
4 金励「消費者商品取引における反悔権の研究」重慶交通大学学報(社科版)7巻1号(2007 年)、38頁を参照。
5 http://www.dsblog.net/article/view/id/29923、2014年11月26日に最後閲覧。
6 陸震「アムウェイ返品ブームの背後に」社会1998年1号(1998年)、11頁を参照。
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義務の着実化)の3は、「各種の自律行為の着実化を図り、酒類経営者は情報開示、代行賠 償、無理由返品等の自律制度を自ら確立しなければならなく、消費者や社会からの監督を 自発的に受け入れる。」と定め、酒類経営者の無因返品の提供を要求している。なお、海南 省の「わが省の内装材市場の発展に関する指導的意見」(2013年公布)の4条(主要任務)
の3は、「品質保証、価額明示、公平合法、無理由返品や代行賠償等の制度を確立すること により、信用性の高い経営体系を作り、信用性の高い企業ブランドを立ち上げる」と規定 し、無因返品の提供を促している。これらの規定は、事業者の無因返品の提供を強要する ものではないが、政府の要請が行政法規に書き込まれた以上、このような無因返品の促進 に関する規定もある程度の強行性があると思われる7。ただ、上述した地方的規定は、あく までも事業者の協力を要請するものであり、事業者が無因返品の提供を拒否することがで きるが、本論文で検討する法定の消費者撤回制度とは違うものである。
第二款 「消費者撤回制度」改正前の消費者撤回制度の立法概観
1、「遼寧省中華人民共和国消費者権益保護法の実施に関する規定」の12条
1996 年の「遼寧省中華人民共和国消費者権益保護法の実施に関する規定」の 12 条は、
中国最初の法定の消費者撤回制度である。「遼寧省中華人民共和国消費者権益保護法の実施
7 ウェストローチャイナで「無理由返品」をキーワードで調べたところ、消費者取引の無 因返品に関する裁判例は一つしかないのである。それは、消費者が自ら無因返品の効力を 無効と主張する戴銀河と百麗電子商取引(上海)会社との売買契約紛糾事件である(上海 第二中級人民法院2014年6月20日判決)。
戴銀河は、2012年5月24日に中国最大手オンラインショッピングモール淘宝網を利用し て被上告人の百麗会社の牛革シューズ五足を購入した。同年6月2日、戴銀河は商品を受 け取った。その後、戴銀河は、①5足の中の2足のシューズの素材が牛革でないこと、②シ ューズの色とサイズが注文したものと違うことを理由として、商品の返品や賠償(交通費、
材料費など)を請求し、訴訟を提起した。
一審裁判所は、「百麗会社は、…消費者に7日無理由交換・返品の保障サービスを提供し、
消費者が商品を受領した7日以内であれば、…商品の二次販売を妨害しない限り、返品や 交換を要求することができる。」と百麗会社の無因返品の効力を肯定し、「戴銀河は、…返 品や交換を要求することができるにもかかわらず、当該権利を行使しなかった。したがっ て、戴銀河は、…商品の品質を認可すると看做す」と判断し、戴銀河の主張を認めなかっ た。
戴銀河が一審判決を不服して上告した。戴銀河は、「上告人(戴銀河)はアレルギー体質 であり、…牛革のシューズでなければ履けないのである。なお、係争ブランドの商品を数 年前から購入し始めたとはいえ、オンラインショッピングを利用して同ブランドのシュー ズを購入するのが初めてである。…そのため、本件は、いわゆる有理由返品と言えるが、
無理由返品の7日間返品特約の適用が不当である」と主張した。戴銀河の主張について、
上海市第二中級人民法院は、「被上告人の広告について、商品素材欄には記入の間違いを認 めるが、その間違いが民法上の詐欺ではない。…消費者が7日間の無理由返品権利を有し、
係争ブランドのシューズに一定の購買経験があり、新しい事実と証拠を提供しないかぎり、
上告人の請求を認容することができない。」と判断した。
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に関する規定」の 12 条は、「消費者の購買した商品(食品、薬品、化粧品を除く)が原状 のままに維持する場合においては、消費者が当該商品を購入してから 7 日以内に返品する ことができる。事業者が他の費用を要求することなく全部代金を返還しなければならない。」 と定めた。この規定は、強行的規定で消費者に返品権利を付与する先例を開いたものとい うのが、先行研究により明らかにされた。ただし、「遼寧省中華人民共和国消費者権益保護 法の実施に関する規定」12条は、2004年8月1日に公布された「遼寧省消費者権益保護規 定」に置かれていないが、削除されることになった8。削除の主要原因は、当時の「消費者 権益保護法」には類似の規定がまだ導入されていないが、地方レベルでの立法条件も成熟 しているとは言えないからだ、と言われている9。ただ、後述する 2013 年「消費者権益保 護法」の改正で消費者撤回制度が導入されたから、2016年3月23日遼寧省第十二届人民 体表大会常務委員会24回の会議で可決した新しい「遼寧省消費者権益保護条例」に、消費 者撤回制度が再び導入されることになる10。
1996 年の「遼寧省中華人民共和国消費者権益保護法の実施に関する規定」の 12 条の以 外、行政法規や中国の各地の地方的規定にも、消費者撤回制度が置かれていた。これから は、2013年「消費者権益保護法」改正前の行政法規や地方的法規レベルの法律規定を整理 し、その規制の方式や規制の範囲を分析したい。
8 「遼寧省消費者権益保護規定」20条 事業者は郵便、テレビ、インターネット電話等の 方式により商品を販売する場合に、事業者及び関係担当者の名称、経営場所、経営範囲、
営業許可ナンバー、購買条件、連絡方式等の情報を消費者に告知しなければならない。商 品及びその質は、約定の内容と違うときに、消費者が商品を受領した7日以内に返品する、
又は事業者に解約を要求することができる。事業者は消費者の支払った代金を返還しなけ ればならない。また、消費者の支払った郵便料金や通信料金等の費用も負担しなければな らない。事業者は約定(承諾)の期間内に商品を提供しないときに、消費者は購買契約を 解除する権利を有し、事業者が素早く全部代金を返還しなければならない。
9 王悦「消費者後悔権に対する検討」法制博覧2014年6号(2014年)、260頁を参照。
10 「遼寧省消費者権益保護条例」(2016年6月1日から実施)18条 経営者はインターネ ット、テレビ、電話、郵送、訪問販売等の方式で商品を販売する場合においては、消費者 が商品を受領した7日以内に理由を説明することなく返品することができる。経営者は3 日以内に消費者の返品要求を確認した上で返品手続を完了しなければならない。ただ、法 律や法規規定に関連する規定がある場合、及び消費者が返品権利を放棄する場合、無理由 返品の適用ができない。無理由返品に適しない商品について、経営者は事前的に消費者に 明確的に告知しなければならなく、かつ、消費者が支払いをする前に当該告知を確認でき る手続きを設定しなければならない。
返品する商品は、損傷を受けていないものでなければならない。ただ、消費者は検査、
試用のため商品を開封する場合には、商品本体が汚損していなければ、損傷を受けていな いものと看做す。
経営者は、返品を受け取った7日以内に消費者に商品代金を返還しなければならない。
消費者は、商品購入により得られた賞品や景品及びこれらと等価の代金を返還しなければ ならない。返品に関する運賃は消費者により負担するが、経営者と消費者との間に特約が ある場合、その特約に従う。
9 2、「直接販売管理条例」25条
「消費者権益保護法」改正前に、中国国内でもっとも広く知られ、そして効力等級が最 も高い消費者返品に関する規定は、2005年に公布した「直接販売管理条例」25条の規定で ある。「直接販売管理条例」は、ダイレクトセリングや訪問販売に類似する「直接販売」を 規制する行政規定であり11、その規制対象の直接販売が一般的なダイレクトセリングや訪問 販売とやや差異が見られるが12、基本的には同じものと考えてよいである。
直接販売は中国で現れた最初の時に、連鎖販売取引とは明確に区別されなかったが、関 連する消費者紛糾が多発していた。連鎖販売取引の社会的悪影響を断絶するために、中国 公安部と工商総局は、1997年に「連鎖販売取引活動の厳格禁止に関する通知」を公布した。
なお、中国国務院は、1998年に「国務院の連鎖販売取引の禁止に関する通知」を公布した。
更に、中国の「刑法修正案(七)」は、連鎖販売詐欺罪を新設したが13、連鎖販売取引を完 全に禁止する方針を採用した。これに対して、直接販売は、連鎖販売取引でないために禁 止の対象としないが、その適正化が社会的に要請された。これに加えて、中国のWTOへの 加入決定(2001年)にしたがって、直接販売の対外開放も決定したが、直接販売に関する 立法がWTO組織に要求された。このような直接販売の対外開放や国内直接販売の適正化の 要請を受け、2005年に「直接販売管理条例」が制定されることになった。その「直接販売 管理条例」25条は、消費者に無理由返品の権利を規定している。
「直接販売管理条例」25条は、「直販企業は完全な製品交換と返品制度を確立し、実行し なければならない。消費者は直販製品を購入した日から30日以内において、製品を開封し ていない場合、直販企業が発行する発票或いは製品販売証書をもとに直販企業及びその分 支機構、所在地のサービスネットワーク地点或いは製品を販売した直販員に製品交換と返 品の手続きを行うことができる。直販企業及びその分支機構、所在地のサービスネットワ ーク地点や直販員は消費者が製品交換或いは返品要求した日から 7 日以内に、発票或いは 製品販売証書に標記した価格に基づき製品交換と返品を行わなければならない。直販員は
11 「直接販売管理条例」3条 本条例でいう直接販売は、直接販売企業により採用した販 売員が固定の営業所以外の場所で消費者に直接的に商品販売を勧誘する販売方式である。
本条例でいう直接販売企業は、本条例の規定に基づき批准を得られる直接販売方式で商 品を販売する企業である。
本条例でいう販売員は、固定の営業所以外の場所で商品を消費者に販売する従業員であ る。
12 趙学清=楊蜀雲「直接販売の法律法規とそれに対する分析」知識経済(中国直販)2013 年7号(2013年)、66-67頁を参照。
13 「刑法」の第224条の後に一条を追加し、第224条の一とする。
商品の販売、サービスの提供など経営活動の名義で、参加者に費用の納入、商品の購入、
サービスの提供などを参加条件とし、かつ一定の順番により階級を組成し、直接または間 接に参加者の人数を報酬もしくは利益返還の根拠とし、誘惑・脅迫する方法により継続的 に他人の加入を勧誘し、これによって財物を騙し取り、経済と社会秩序を混乱させる連鎖 販売活動を組織または指導した場合、五年以下の有期懲役または拘役に処し、罰金を併科 する。情状が重い場合は、五年以上の有期懲役に処し、罰金を併科する。
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直販製品を購買した日から30日以内において、製品を開封していない場合、直販企業が発 行する発票(領収書)或いは製品販売証書に基づき直販企業及びその分支機構或いは所在 地のサービスネットワーク地点に製品交換と返品の手続きを行うことができる。直販企業 及びその分支機構と所在地のサービスネットワーク地点は直販員が製品交換或いは返品要 求をした日から 7 日以内に、発票及び製品販売証書に標記している価格によって製品交換 と返品の手続きを行わなければならない。前二項の規定に属さない情況で、消費者、直販 員が製品交換および返品を要求する場合、直販企業及びその分支機構、所在地のサービス ネットワーク地点や直販員は関連法律法規の規定或いは契約約定に基づき、製品交換と返 品の手続きを行わなければならない。」と定めている。
「直接販売管理条例」25 は、直接販売の場合に、消費者は販売員の高圧的販売手段(強 迫、欺瞞、付き纏う)により動揺され、商品を購入することがよくあるため、消費者に再 考するチャンスを与える必要があるとし14、消費者は直接販売で商品を購入してから30日 以内に、未開封の商品及び領収書(発票)或いは製品販売証書をもって返品を要求する権 利を付与する。「直接販売管理条例」は、その後の一連の消費者保護に関する地方的法規に 立法上の根拠(効力的に高い法律規定)を提供したが、無理由返品の規制方も下級の地方 的法規により受け入れた。
3、地方的法規により定める消費者撤回制度
「消費者権益保護法」改正がなされた前、上海市、北京市及び河南省などの各地の消費 者保護に関する地方的法規には、消費者撤回制度が導入された。これらの規制は、その規 制の方法や規制の範囲が違っていたように見える。
(1) 「消費者権益保護法」が改正される前の地方的法規レベルの消費者撤回制度は、無 理由返品と有条件返品と分けられていた。無理由返品の消費者撤回制度の典型例として、
「上海市消費者権益保護条例」(2002年10月28日審議可決)28条3項と「北京市電子商 取引監督管理暫定規定」(2002年公布)の 26 条がある。「上海市消費者権益保護条例」28 条3項は、直接販売の場合に、「消費者は、商品を受領した日より7日以内に理由の説明な く返還することができる。ただし、商品の品質保存期間が 7 日より短い場合を除く。商品 に汚れ、損害がないとき、返還時に消費者が一切の費用をも負担しない。」と規定していた。
なお、「北京市電子商取引監督管理暫定規定」の26条は、「消費者は、品質上問題のない 未使用の商品を受領してから 7 日以内に、商品交換または返品することができる。交換又 は返品に生じた運送、包装、郵送などの費用は、消費者が負担する。次に掲げる場合に、
事業者の無条件返品責任が免除される。①商品価格が市場動向により下落し、かつ、その 下落が経営者によるコントロールできないとき。②簡単に複製できる有形の商品。③消費
14 胡悦=富瑶「我が国における反悔権制度の構築に対する試論」長白学刊169巻(2013年)、 84頁を参照。
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者のオーダーメードに応じて特別に製作した商品。④新聞と雑誌。⑤生鮮商品。⑥デジタ ル化商品(厳重なミス、ウィルスなどの破壊性プログラムが入っているものを除く)。前項で いうデジタル化商品は、ネットにおいて使用権授与の方式で取引を行い、ネットで転送で きる電子書籍、映像音声資料、PCソフトなどの商品を指す。」と規定している。
これに対して、有条件の消費者撤回制度とは、法定の条件を満たせば消費者が返品でき ると定める規定である。「河南省消費者権益保護条例」(2009年公布)27 条、「成都市工商 局商品品質管理意見に関する通知」(2005年公布)3条の3などがその典型例である。「河 南省消費者権益保護条例」27条は、「経営者は、郵送、テレビ、インターネット、電話など の方式により商品を提供した場には、約定に従って商品を提供しなければならず、かつ、
経営者の名称、連絡方法などの状況を如実に消費者に告知しなければならない。約定通り に提供しなかった場合には、消費者の要求に従って約定通りに履行し、又は返金をしなけ ればならず、かつ、これにより生じた消費者が支払った通信費用、郵送費用などの合理的 な費用を負担しなければならない。」と規定していた。
なお、前に紹介した 2004 年の「遼寧省消費者権益保護規定」20 条も有条件返品を規定 し、「事業者の販売する商品及びその質は約定の内容と違うときに、消費者は商品を受領し た7日以内に返品する」と定めている。また、成都市人民政府事務庁により作成された「成 都市工商局商品品質管理意見に関する通知」3条の3は、「強制的基準に達しない商品を提 供する場合には、消費者からの返品を無条件で受け入れる」と規定している。
これらの規定は、①事業者が約定に従って商品を提供しないこと、又は②事業者に関す る特定の情報が消費者に告知しないことを消費者撤回制度の適用条件としている。
無理由返品にしても有条件返品にしても、強行法規により消費者の返品権利を確保する のが同じである。ただ、有条件返品の規定は、事業者の債務不履行(約定に従って商品を 提供しない、強制的基準に達しない商品を提供する)や法定の告知義務の違反(名称、連 絡方法などの状況の不告知)を返品の条件とする。これらの条件は、契約法60条や製品品 質法35条、及び消費者権益保護法16条等の法規に依拠して消費者を保護することができ る15。それゆえ、有条件返品は、あくまでも法令違反の対処方法の明確化にすぎないであり、
実質的には消費者撤回制度ではないと思われる。
15 契約法60条 当事者は約定に従って自分の義務を全面的に履行しなければならない。
製品品質法35条 販売者は、国家法令により販売を禁止される商品、効力を失う商品、
品質が悪化した商品を販売してはならない。
消費者権益保護法16条 経営者は、本法及び他の関連法律、法規の規定により定める履 行義務に従って商品や役務を提供しなければならない。
経営者と消費者との間に約定をした場合には、約定に従って義務を履行しなければなら ない。ただし、双方の約定は法律や法規の規定に反してはならない。
経営者は、社会的道徳に厳守し、信義をもって経営活動を行い、消費者の合法的権益を 保護することを前提として商品や役務を提供しなければならない。不平等、不合理の取引 条件を設定してはならない。強制的取引をしてはならない。
12
(2) 続いて、これらの立法例の適用範囲を整理する。1996 年の「遼寧省中華人民共和 国消費者権益保護法の実施に関する規定」12 条の適用範囲は、最も広いものと見られる。
すなわち、消費者が食品、薬品、化粧品以外の商品を購入した場合においては、消費者が 消費者撤回制度の適用が認められる。ただ、それ以外の立法例は、「遼寧省中華人民共和国 消費者権益保護法の実施に関する規定」12 条のような消費者商品売買契約の全般的適用を 認めるものが見られなく、消費者取引類別的に消費者撤回制度の導入を決めるのが主流的 である。当時の立法例の適用範囲から見れば、①直接販売又は遠距離販売の一種類の消費 者取引に適用するものもあるし、②直接販売と遠距離販売との両種類の消費者取引を適用 対象とするものもある。
直接販売又は遠距離販売の一種類の消費者取引を規制対象とする立法例として、前に紹 介した「上海市消費者権益保護条例」28条3項(直接販売)や「北京市電子商取引監督管 理暫定規定」26 条がある。直接販売と遠距離販売との両種類の消費者取引を適用対象とす る立法例の典型例として、「四川省消費者権益保護条例」(2007 年公布)10条がある。「四 川省消費者権益保護条例」10条の後段は、「消費者は、郵政、テレビ、電話、オンラインシ ョッピング、直接訪問等の無店舗販売を利用して商品を購入する場合には、商品を受領し た 7 日以内であれば、未開封の商品を返還することができる」と定め、直接販売と遠距離 販売を合わせて無店舗販売として規制を行う。
4、本節のまとめ
第一節では、「消費者権益保護法」改正前の消費者撤回制度を概観した。「消費者権益保 護法」改正前の立法例は、多様な規制の方法で定めており、①半強制的規定の無因返品に 関する規定や②有条件返品の強行的規定及び③無理由返品の強行的規定がある。有条件返 品の消費者撤回制度には、①遼寧省や四川省成都市の地方的法規のような事業者の不当行 為を規制するものもあるし、②「河南省消費者権益保護条例」のような遠距離販売を規制 対象とするものもある。ただ、全体的に見れば、有条件返品の強行的規定が例外的なもの と言わなければならない。それらの規定の主たる機能が特定の消費者取引の危険性の排除 ではなく、「契約法」や「製品品質法」及び「消費者権益保護法」により定める事業者の不 正行為を特定化した上で、簡易な解決法を消費者に提供するに過ぎないと思われる。「直接 販売管理条例」の公布にしたがって、その25条の無条件返品の強行的規定が立法の基本モ デルとなり、その後の消費者撤回制度に関する規定の殆どが無理由返品の強行的規定の立 法モデルを採用するように見える。
第二節 「消費者権益保護法」の改正と後悔権の確立
第一款 「消費者権益保護法」改正前の消費者権益保護法導入をめぐる議論の
概観
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2008年10月、「消費者権益保護法」の改正が全人代常任委員会の5年立法計画に入れら れてから、数多くの学者は「消費者権益保護法」の改正で消費者撤回制度を導入すること を唱え始めた。当時の議論からすると、消費者撤回制度を導入することを支持するのが有 力的であるが、消費者撤回制度の適用範囲について、見解が分けられていた。特に、不動 産(分譲住宅)取引は、消費者撤回制度の適用対象とすべきであろうかという点について、
対立が非常に激しかった。2010年前後、不動産投資ブームの影響で、中国国内の不動産取 引は急増した。当時は、不動産の価額が高騰していたため、不動産の価額がより高くなる 前に購入すべきだという考え方が中国全土で広がり、居住を目的とする不動産(分譲住宅)
の購入件数が急に多くなった。一方、不動産取引の繁盛に乗り、大量の不動産を投資目的 で購入するのもあった。このような背景において、大量の不動産取引にともなって、不動 産取引にかかわる紛糾数も増えてきた。
そのため、不動産を購買する場合には、消費者に「頭を冷やすチャンス」、すなわち消費 者撤回制度のような契約解消の権利を付与すべきであるという考え方が、学者の中に流行 っている。例えば、中国人民大学商法研究所所長・劉俊海教授は、①不動産売買、②オン ラインショッピング、③商品を見る前に、又は契約を締結前に、代金を支払う場合、④直 接販売の 4 種類の取引を消費者撤回制度の適用対象とすべきであると語り、不動産売買に おける消費者撤回制度の適用を強調した16。
しかしながら、不動産取引をはじめとする消費者撤回権制度の設立について、消費者側 は圧倒的に支持した一方、事業者側は予想通り強く反発したが、法学界の中にも懸念の声 があった。劉俊海教授は、「まず、今日売ったばかりの商品は、明日に返品するという行為 は、自由市場に混乱をもたらすおそれがあり、事業者に対しても過重な負担になるのであ る。また、事業者は当該制度を悪用する可能性もある。事業者は、どうせ消費者が撤回権 を有するから、そのコストを防止するため、多重販売をし、消費者が逆に不利益を受ける ことになる。」17と、当時の法学界の反対理由をまとめた。その影響を受けて、不動産のよ うな高額的商品の購入取引における消費者撤回制度が、消費者撤回制度の適用対象から外 されたように見える。
2013年4月の立法審議段階に入る直前に、中国人民大学・楊立新教授は「消費者権益保 護法の改正における注意すべき10ポイント」を公表した。楊立新教授の紹介によると、「消 費者権益保護法」改正に対する論証の過程において、数多くの法学学者は、消費者撤回制 度を「消費者権益保護法」に導入し、消費者の合法的権益へ保護を与える必要性を唱えて
16 ただ、これらの消費者撤回制度は特別法(業法)による規定するのか、それとも「消費 者権益保護法」による規定するのかについて、明言されなかった。
http://house.sina.com.cn/chat/2009-06-12/1752315576.html、2013年10月5日に最後閲 覧。
17 http://house.sina.com.cn/chat/2009-06-12/1752315576.html、2014年11月25日に最 後閲覧。
14 いた。
この提案に対しては、事業者が強く反発した。その反対理由は、主に「消費者撤回制度 が契約信頼原則に違反するものである。我が国の市場秩序の現状はそもそも整っていなく、
消費者撤回制度の導入は不信な悪風を煽り、現状を一層悪化させるおそれがある」という 点にある。
このような反対意見を配慮し、消費者撤回制度を導入するにあたっては、①消費者撤回 制度は「消費者権益保護法」に導入し、②その適用範囲が、インターネット、テレビ、電 話、郵便等の方式で行う遠距離通信販売に限られた。適用範囲の制限について、新型消費 方式を利用する際に、消費者が情報的劣位に立ち、事業者・経営者の提供するサービスが 不完備であることもよく見られる。そのため、消費者に消費者撤回制度を付与するのは完 全に合理的だと思われる;③消費者撤回制度の適用期間は 7 日という期間内に限定するの は適当であり、その 7 日間の期間に、消費者は返品できる;④消費者に消費者撤回制度を 付与しても、例外の存在も許されるべきである。例えば、すぐに腐敗する海鮮、食品など の商品は、遠距離通信販売の場合にも、消費者撤回制度に適用できない18、という当時(2013 年3月まで)の消費者撤回制度の導入作業の進み具合を紹介した。
第二款 「消費者権益保護法」改正と遠距離販売における後悔権の導入の背景
2013年4月23日、「消費者権益保護法」改正案(草案)第一稿が、中国全人代に正式的 に提出された。これは、「消費者権益保護法」公布された以来、初めての改正である。2013 年4月23日の第十二届全国人民代表常務委員会第二次会議では、全人代常務委員会法制工 作委員会主任・李適時は、「中華人民共和国消費者権益保護法改正案(草案)に関する説明」
の中で、「消費者権益保護法」改正の必要性について、「『消費者権益保護法』は 1993 年に 制定した法律である。すでに20年に近く施行されており、消費者の合法的権益の保護、社 会経済秩序の維持、社会主義市場経済の健全な発展の促進に対して、重要な役割を果たし た。しかし、社会経済の絶え間のない発展に伴って、我が国の消費方式、消費構造及び消 費理念が大きな変化が生じ、消費者権益保護分野では少なくない新たな状況や問題が現れ ているため、この法律を適時に改正し、消費者権益保護の法制度を整備する必要がある。」
19と、フォーマルな改正理由を述べた。
実際は、第11回全国人民代表大会常務委員会の立法業務計画と年度立法業務計画に基づ き、「消費者権益保護法」の改正作業は、2011 年10 月から既に始まっていた20。法制工作
18 楊立新「消費者権益保護法の改正における注意すべき10ポイント」を参照。
http://www.law-lib.com/lw/lw_view.asp?no=23825、2014年11月25日に最後閲覧。
19 「『中華人民共和国消費者権益保護法』改正案(草案)に関する説明」の全文は、
http://www.npc.gov.cn/npc/lfzt/xfzqybhfxza/2014-01/02/content_1872487.htmで閲覧 できる。
20 白出博之「「中華人民共和国消費者権益保護法修正案(草案)」について」国際商事法務
15
委員会は実際の消費生活中に多発する消費者問題を鑑み、最終的には、①消費者権益保護 に関する規定の充実と細分化、②事業者の義務と責任の強化、③オンラインショッピング 等の新型消費方式の規範化、④消費者協会の作用を一層発揮、⑤行政機関の監督管理の職 責を一層明確化、という「五つの方面」に改正を行うことにしたが、本論文で検討したい 消費者撤回制度は、その第三部分の「オンラインショッピング等の新型消費方式の規範化」
にある。当時の議論内容と消費者の関心から見れば、この部分内容が一番注目されている とも言えるが、その背景について少し説明を加えたい。
近年、インターネット、テレビ、電話等の方式で商品販売及び役務提供を行ういわゆる 遠距離通信取引が中国で迅速に普及しており、特にオンラインショッピングが爆発的な発 展期を迎えた。中国インターネットネットワークインフォーメーションセンター(CNNIC)
が公布した「2013年度中国オンラインショッピング市場研究報告」により、2013年度12 月まで、PCやスマートフォンなどを通じてオンラインショッピングを利用した人数が3.02 億人に至り、オンラインショッピングの取引金額が全体社会消費総額の7.9%まで占めてい た21。一方、近時のデータを見てみれば、オンラインショッピングの繁盛にともなって、消 費者紛糾の多発化も無視できない社会的問題となってきた22。この点について、「改正案(草 案)説明」には、「通信技術の広範な応用に伴って、インターネット、テレビ、電話等を通 じた商品販売またはサービスを提供の方式が次第に広がっている。これらの新型消費方式 は従来の消費方式と違い、消費者は主に事業者が提供する写真、画面又は文字などを通じ て商品を選ぶため、商品の真実性を見分けにくく、不当な宣伝の影響を受けやすい。新型 消費方式の特徴に対し、中国におけるオンラインショッピングの実情に基づき、海外の良 法を参考にして」23規範化を行うという改正の意向を表明した。
「オンラインショッピング等の新型消費方式の規範化」は三つの部分、㋐消費者の情報 を知る権利の保護(草案第8条)、㋑消費者の選択権の保護(草案第9条)、㋒消費者の損 害賠償請求権の保護(草案第16条)による構成されるが、その中心問題はまさに草案第9 条の「消費者の選択権の保護」にあるようであった。一点注意すべきなのは、当該権利の 用語について、草案には「撤回権」や「冷静期(クーリング・オフ)」という海外での一般 的な用語や、その後に通称になった「後悔権」との呼び方が使われなく、「消費者の選択権」
41巻8号(2013年)、1167頁。
21 「2013年度中国オンラインショッピング市場研究報告」中国インターネットネットワー クインフォーメーションセンターのホームページ(www.cnnic.net.cn)の報告センターに よりダウンロードした資料である。
22 中国電子商取引研究センター(CECRC)が作成した「2014(上)中国電子商取引利用者 体験と苦情報告」によると、2014年度前半において中国電子商取引権利保護公共サービス プラットフォームが受理したオンラインショッピングにかかわる苦情申立が5万件以上に 至った。
23「『中華人民共和国消費者権益保護法』修正案(草案)に関する説明」
http://www.npc.gov.cn/npc/lfzt/xfzqybhfxza/2014-01/02/content_1872487.htm、2014年 11月20日に最後閲覧。
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という用語が使用された。ただ、後の審議段階では、「消費者の選択権」との用語が滅多に 使用しないが、後悔権や冷静期間などの用語が広く使われるように見える。
第三款 草案審議段階の討論
「消費者権益保護法」改正案(草案)第一稿第9条は、「事業者がインターネット、テレ ビ、電話、郵便等の方式により商品を販売する場合に、消費者は商品を受領した日から 7 日以内に返品する権利を有する。ただし、商品の性質により返品に適さない場合を除く。
事業者は、商品の返品を受けた日から 7 日以内に消費者に対して代金を返金しなければな らない」とし、改正作業の成果を法令化した。しかしながら、第9条は7日間の後悔権を 基本原則として規定したにとどまり、後悔権の例外規定の具体化や 7 日の返品期間の計算 方式等の問題については言及されなかったため、電子商取引の発展現状及び事業者の負担 能力をも十分に考慮し、また、権利の濫用を排除するため、後悔権に適用しない状況や返 品における運賃負担を明確にし、後悔権の確定性と操作性を向上させるべきだという意見 が現れた24。
これらの問題点に対して、2013年8月26 日に開かれた十二届全人大常任委委員会第四 回会議の第一次全体会議で、全人代法律委員会副主任・蘇澤林は、「一回目の審議と意見聴 取の過程において、常任委員会委員、人大代表、地方と部門は自分なりの意見を述べた。
法律委員会は討論を重ねて、第二稿では返品に適していない商品の範囲を規定し、例えば、
すぐに腐敗する商品、開封した音像製品、PCソフト、又は交付された新聞、定期刊行物等 を除外商品とする。なお、『事業者が7日以内に消費者に料金を返還する』にいう『7日』
という期間を、『事業者返品を受け取った日から7日以内』として明確にされた。事業者は 消費者に返還すべき金額は『商品の金額に限り、運賃が返金項目ではない』と修正案(草 案)第一稿に対する一部修正を説明した。
第二稿の修正内容に対して、消費者と事業者との間のバランスを維持するため、後悔権 に対する制限、特に除外規定と運賃負担をより明確にすべきだという観点を持つ人大委員 や学者が現れてきた。例えば、華東政法大学の金可可教授は「無理由返品制度と冷静期間 の導入は、消費者権益の保護に良い措置であるが、無理由返品の除外規定を定めること及 び運賃が返金の対象にならないことをより明確化することは、事業者に対する公平を図っ ているものである」と主張した。さらに、全人代予算工作委員会副主任・馮淑萍は、「消費 者権益保護法」は消費者権益を守る法律であっても、消費者と事業者との関係も合理に対 応すべきであろう。消費者に商品保存義務を課させ、双方の権利と義務を適当にすべきで はないか」と、返品前の消費者義務の明確化について発言した25。
24 http://www.npc.gov.cn/npc/xinwen/lfgz/2013-10/22/content_1810536.htm、2013年 11月3日に最後閲覧。
25 http://www.npc.gov.cn/npc/xinwen/lfgz/2013-10/22/content_1810536.htm、2014年
17
これらの提言を参考にして、2013年10月21日に提出された改正案第三稿には、「返品 に関する費用は消費者が負担する」ことを明言し、また、「消費者が開封した又はダウンロ ードした音像製品、PCソフト等のデジタル化商品」も除外事項として定めることになった。
更に、事業者の債務不履行による返品と区別するため、改正案第三稿には、事業者の提供 する商品やサービスは質的な要求を満たさない場合の返品費用負担について、「経営者が運 賃等の必要費用を負担する」と定められた。
草案議論の論調から見れば、後悔権導入に支持するのが主流的であったというのは間違 いない。その一方、後悔権導入に反対する声も絶えないのである。その理由は、主に、中 国の新型消費方式、特に電子商取引の発展は始まったばかりであって、オンラインショッ ピングの事業者の大部分は小会社や個人経営者であり、電子商取引がいくら迅速に発展し ていると言っても、電子商取引を業とする数多くの小会社や個人事業者のコスト負担能力 がまだ弱いと言わざるを得ない。そういう実情を無視して、無理やり後悔権を導入するの は、発展の萌芽階段にある小会社や個人事業者に多重な負担を負わせるおそれがある。ま た、オンラインショッピングの特性を鑑み、強行的規定の介入に後悔権の修正を要望する 見解もある。たとえば、国務院発展研究センター技術経済研究部部長・呂薇は「オンライ ンショッピングは電話、テレビ等の販売方式と違う。消費者はインターネットで買い物を しようとするとき、商品の写真や他人のコメントを見られるのは普通であるため、電話、
テレビ販売のような欺瞞性の高い通信販売と一括的に規制するのは合理的とは思えない」
と指摘し、また、「(後悔権)規定から見れば、オンラインショッピングに対する要求は実 体店舗商売より高い基準を設定するものと見られる。現階段では、電子商取引の発展を促 進し、事業者にも公平な競争環境を作るべきだ」判断した。更に「7日間の無理由撤回権が 実施すれば、一部の小会社は大きな影響を受け、営業を中止せざるを得ない状況になるお それがあるから、悪意返品等に対する規制が非常に重要であろう」という理由をもって、
改正案に「国の規定や(返品しない)合意のない限り、消費者が返品できる」又は「オン ラインショッピングを後悔権の適用範囲から除外する」という修正の必要性を主張した26。
賛否両論を浴びながら、後悔権は「消費者権益保護法」修正案の可決(2013年10月25 日、)に伴い、ようやく確立することになった。三回の審議を経て、後悔権の規定は「消費 者権益保護法」第 25 条に置かれ、「事業者がインターネット、テレビ、電話、郵便等の方 式により商品を販売する場合においては、消費者は商品を受領した日から 7 日以内に返品 する権利を有する。但し、以下の商品が除外される、①消費者のオーダー・メード(個人 注文)によって作られた商品、②腐敗しやすい生鮮品、③オンラインよりダウンロードし た又は開封したオーディオ製品、コンピュータ製品等のデジタル商品、④交付した新聞、
雑誌。前文に列挙した商品以外、商品の性質に基づいて、かつ、消費者が購入時において
111月25日に最後閲覧。
26 http://www.npc.gov.cn/npc/lfzt/xfzqybhfxza/2013-10/24/content_1811894.htm、
2014年11月25日に最後閲覧。
18
返品に適さないことを既に確認した商品は、無理由返品の対象としない。返品の商品は完 全でなければならない。オンライン販売事業者は返品した商品を受け取った 7 日以内に、
商品の代金を消費者に返還しなければならない。別途の約定のない限り、返品に生ずる運 賃は消費者が負担する。」と定めている。
第三節 「消費者権益保護法」改正後の立法例の整理
「消費者権益保護法」の改正と遠距離販売における後悔権の確立の影響を受け、消費者 撤回制度を規定する立法例は、法改正がなされた後の二年余りに急速に整備してきたよう に見える。「消費者権益保護法」改正後の立法例は、国家工商総局の「オンライン取引管理 規定」や各地の地方的法規がある。これらの規定は、基本的には「直接販売管理条例」25 条と「消費者権益保護法」25 条をそのまま受け入れているものと見られ、その規制方式や 適用範囲が前の立法例に完全に一致している。それ以外に、金融商品取引に関する消費者 紛糾の多発を受け、人身保険における猶予期という消費者撤回制度の導入も「中華人民共 和国保険法」(以下「保険法」という)の立法草案に入った。第三節においては、これらの 法律規定を整理しようとする。
第一款 「オンライン取引管理規定」16 条
改正後の「消費者権益保護法」正式実施の同日(2014年3月15日)に、「オンライン取 引管理規定」も実施することになった。「オンライン取引管理規定」16 条は、「オンライン 取引の経営者は商品を販売する場合、消費者が商品を受領した日から 7 日以内に返品する 権利を有する。但し、以下の商品が除外される、①消費者のオーダー・メード(個人注文)
によって作られた商品、②腐敗しやすい生鮮品、③オンラインよりダウンロードした又は 開封したオーディオ製品、コンピュータ製品等のデジタル商品、④交付した新聞、雑誌。
前文に列挙した商品以外、商品の性質に基づいて、かつ、消費者が購入時において返品に 適さないことを既に確認した商品は、無理由返品の対象としない。返品の商品は完全でな ければならない。オンライン販売事業者は返品した商品を受け取った 7 日以内に、商品の 代金を消費者に返還しなければならない。別途の約定のない限り、返品に生ずる運賃は消 費者が負担する。」と定めている。「オンライン取引管理規定」16条の規制主体は、「オンラ イン取引の経営者」であるが、それ以外の内容が「消費者権益保護法」25 条と完全に同様 である。「オンライン取引管理規定」は、専らオンラインショッピングを規制する業法であ り、その16条が、業法規制の側面からオンライン取引の場合の消費者撤回制度の適用可能 を強調するものにすぎないと思われる。
第二款 地方的法規
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つぎに、「消費者権益保護法」改正後の消費者撤回制度を導入する地方的法規を整理する。
「消費者権益保護法」の改正がなされた後、その影響を受け、上海市、甘粛省、江西省及 び吉林省吉林市等の省市の消費者保護に関する地方的法規にも、消費者撤回制度が導入さ れた。これらの立法例は、異例なく全部強行的規定として確立したが、適用範囲について 一定の差異が見られる。
1、直接販売・遠距離販売を適用対象とする立法例
直接販売・遠距離販売をともに適用対象とする立法例の典型例として、前述した2016年 の「遼寧省消費者権益保護条例」のほかに、「江蘇省消費者権益保護条例」の審議草稿も同 じ適用範囲を採用している27。
なお、遠距離販売における後悔権の影響を受け、本来の適用範囲を拡大し、インターネ ット、テレビ、電話、郵政等の遠距離取引を消費者撤回制度の適用対象として追加する立 法例もある。「上海市消費者権益保護条例」30条がその典型例である。
新しい「上海市消費者権益保護条例」(2014年公布)30条は、「事業者がインターネット、
テレビ、電話、郵便、訪問販売等の方式により商品を販売する場合においては、消費者は 商品を受領した日から7日以内に返品する権利を有する。但し、以下の商品が除外される、
①消費者のオーダー・メード(個人注文)によって作られた商品、②腐敗しやすい生鮮品、
③オンラインよりダウンロードした又は開封したオーディオ製品、コンピュータ製品等の デジタル商品、④交付した新聞、雑誌。前文に列挙した商品以外、商品の性質に基づいて 返品に適していない場合には、事業者は消費者に明確的な告知をし、提示プロセスを設置 し、消費者の確認プロセスを設置しなければならない。消費者が購入時において返品に適 さないことを既に確認した商品は、無理由返品の対象としない。返品の商品は完全でなけ ればならない。事業者は返品した商品を受け取った 7 日以内に、商品の代金を消費者に返 還しなければならない。別途の約定のない限り、返品に生ずる運賃は消費者が負担する。」
と定めている。この中に、インターネット、テレビ、電話、郵便等の取引類型は、「消費者
27 江蘇省人民政府法制事務所が2016年2月に公布した「江蘇省消費者権益保護条例第一 次意見募集稿」27条(無理由返品制度)は、「事業者がインターネット、テレビ、電話、郵 便、訪問販売、会議販売等の方式により商品を販売する場合においては、消費者は商品を 受領した日から7日以内に返品する権利を有する。但し、以下の商品が除外される、①消 費者のオーダー・メード(個人注文)によって作られた商品、②腐敗しやすい生鮮品、③ オンラインよりダウンロードした又は開封したオーディオ製品、コンピュータ製品等のデ ジタル商品、④交付した新聞、雑誌。前文に列挙した商品以外、商品の性質に基づいて返 品に適していない場合には、事業者が消費者に明確的な告知をし、提示プロセスを設置し、
消費者の確認プロセスを設置しなければならない。消費者は、商品を購入する時に、返品 に適さないことを既に確認した商品が、無理由返品の対象とされない。返品の商品は完全 でなければならない。事業者は返品した商品を受け取った7日以内に、商品の代金を消費 者に返還しなければならない。別途の約定のない限り、返品に生ずる運賃は消費者が負担 する。」との規定である。
20
権益保護法」の影響を受けて加えるものであると思われる。
2、遠距離販売のみを適用対象とする立法例
遠距離販売における後悔権の影響を受け、「消費者権益保護法」25条の規定をそのまま地 方的法規に導入する立法例もあるし、「消費者権益保護法」25条の規定に一定の修正を加え た上で消費者撤回制度を導入した立法例もある。前者の典型例として、「甘粛省消費者権益 保護条例」35 条があり、後者の典型例として「江西省の中華人民共和国消費者権益保護法 の実施に関する規定」や「吉林市工商行政管理局のオンラインショッピングモール経営サ ービス規範」がある。ここでは、主に「消費者権益保護法」25 条の規定に一定の修正を加 える立法例を紹介したい。
「江西省の中華人民共和国消費者権益保護法の実施に関する規定」(2005年公布)22条 は、「事業者がインターネット、テレビ、電話、郵便等の方式により商品を販売する場合に おいては、消費者は商品を受領した日から 7 日以内に返品する権利を有する。但し、以下 の商品が除外される。①消費者のオーダー・メード(個人注文)によって作られた商品、
②腐敗しやすい生鮮品、③オンラインよりダウンロードした又は開封したオーディオ製品、
コンピュータ製品等のデジタル商品、④交付した新聞、雑誌、⑤薬品。前文に列挙した商 品以外、商品の性質に基づいて返品に適していない場合には、事業者は消費者に明確的な 告知をし、提示プロセスを設置し、消費者の確認プロセスを設置しなければならない。消 費者が購入時において返品に適さないことを既に確認した商品は、無理由返品の対象とし ない。返品の商品は完全でなければならない。事業者は返品した商品を受け取った 7 日以 内に、商品の代金を消費者に返還しなければならない。別途の約定のない限り、返品に生 ずる運賃は消費者が負担する。消費者は、商品を検査、使用するために商品を開封した場 合には、商品に汚損がないのであれば、前項の完全状態と看做す」と定めている。「江西省 の中華人民共和国消費者権益保護法の実施に関する規定」22条の規定は、「消費者権益保護 法」25 条に一定の修正を加え、①薬品を返品不可とするほか、②商品の検査権をも明確的 に認めている。
また、吉林省吉林市の「吉林市工商行政管理局のオンラインショッピングモール経営サ ービス規範」(2014年公布)18条は、「オンラインショッピングモールの経営者やオンライ ンショッピングモールに出店する事業者が商品を販売する場合においては、消費者は商品 を受領した日から 7 日以内に返品する権利を有する。但し、以下の商品が除外される、① 消費者のオーダー・メード(個人注文)によって作られた商品、②腐敗しやすい生鮮品、
③オンラインよりダウンロードした又は開封したオーディオ製品、コンピュータ製品等の デジタル商品、④交付した新聞、雑誌、⑤薬品。前文に列挙した商品以外、商品の性質に 基づいて返品に適していない場合には、無理由返品が適用できない。返品の商品は完全で なければならない。事業者は返品した商品を受け取った 7 日以内に、商品の代金を消費者 に返還しなければならない。別途の約定のない限り、返品に生ずる運賃は消費者が負担す