製造物責任の法理と実際
著者
浅野 裕司
著者別名
Yuji Asano
雑誌名
東洋法学
巻
35
号
2
ページ
1-42
発行年
1992-01
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00003517/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja製造物責任の法理と実際
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はじめに 製造物の欠陥により消費者が被害を受けた場合、生産者乃至製造者に法的な賠償を負わせる制度としての製造物責 任︵唱8身9江効ぴ旨受︶の法理は、米国において一九六〇年代から判例のなかで醸成され確立したといえる。E C諸国においても一九八五年の指令で導入が決まり、各国で立法化が進展している。わが国には製造物責任について の規定はなく立法的解決を図る以外にない。これまでの論議は、過失責任主義の現行法批判と製造物責任制度の導入 の正当化に終始している。実際上、製造者に欠陥を認めさせる難しさは周知の通りである。米国での厳格製造物責任 制度の弊害も認識し、批判されており、わが国への導入は時期尚早との声もある。これらの諸点を指摘、素描し、御 叱正を仰ぐことにしたい。 東洋 法 学製造物責任の法理と実際 二 わが国における製造物責任論の展開と最近の動向 製造物責任法の導入は、消費者救済拡充に一歩前進とされ、その立法化が注目されていたが、一九九一年一〇月 一一日、首相の諮問機関である国民生活審議会は消費者政策部会を開き、製造物責任法の立法化について、 ﹁消費者 を救済する一方策﹂として賛成する意見と、 ﹁時期尚早﹂として事実上反対する意見の両論を併記した中間報告をま とめた。中間報告は、商品の欠陥によって、消費者が被害を受けた可能性がある場合、企業と消費者との間で交渉や 裁判による解決は﹁消費者が事故原因を証明するのは困難﹂なうえ現状の賠償水準は十分とはいえない、として、法 律による救済が必要であるという意見を示している。しかし、一方で、 ﹁自主交渉による解決等、代替手段があるこ と、法律ができると乱用されたり、不当な損害賠償請求が提起されたりする﹂として、法制化は時期尚早とする意見 も紹介している。更に、被害者救済の現状について﹁過失の有無を問題とせず、産業界は消費者と個別交渉で賠償し、 消費者の納得を得ている﹂と十分に対応していると強調、法制化に消極的な考えも含ませている。こうした審議会の 中間報告は、製造物責任法の法制化問題について、 ﹁被害者救済の実効性確保の︸つの方策﹂とする一方で、﹁代替 手段の存在や乱用の恐れ等から時期尚早との考えもある﹂と慎重な姿勢も示し、導入是非、両論併記した結論となっ ている。これに対し、日本消費者連盟等で組織する﹁消費者のための製造物責任法の制定を求める全国連絡会﹂は、 ﹁現在の制度のままでは、欠陥商品があった時に、責任のありかを含め、真実が何時も隠されてしまう﹂と指摘、現 行制度では消費者被害は救済されないとして、今後も強く法制化を求めていく方針を明らかにしている。一方、 一九
九一年三月、独自の﹁製造物責任︵P﹂︶法要綱﹂を発表して、法制化を強く求めている日弁連も﹁被害者救済のた めには現行制度は不十分で、無過失責任を原則とする製造物責任制度へとルールの転換を図る時期である﹂という意 見を出している。産業界は、立法化の結論が先送りになったことを評価しながらも、何れは立法化されるとみて製造 物責任制度の検討を進める動きも出ている。今後の検討にあたっては、現行制度の改善による場合と新たな立法化に よる場合のメリット、デメリットを比較し、消費者救済のための有効手段を審議してほしいという意見と、製造物責 任法そのものに反対しているわけではなく、立証責任を被害者、企業の何れかに求めるか等、法的問題を探究し、合 ハまレ 理的な法律であるなら導入してもよいと、条件次第では立法化を認めるとの姿勢が産業界にはみえる。 国民生活審議会の中間報告に先行して、日本産業協会の製品安全対策研究会が論議を続けた報告書が、一九九一年 六月に発表されており、同報告書では、製品の欠陥と誤使用の概念等の問題点を指摘、導入に対する替否両論を併記 している。報告書の趣旨は、導入までには日本の実情に合った制度として広くコンセンサスが得られる必要があると 指摘し、今後の検討すべき事項として、9他の法令、紛争処理制度、製晶検査機関といった製品安全対策と有機的に 調和させる、口導入に伴う訴訟の多発によるコストアップが製品や産業活動に与える影響、口保険料の上昇等、既存 の保険システムとの関連、四国際的整合性、等を挙げている。また、自民党の経済・物価問題調査会も一九九一年一 〇月八日、 ﹁製造物責任制度を導入すると、企業の新製品開発意欲がそがれるほか、暴力団等による制度悪用の恐れ があると指摘、現行制度の改善によって消費者を保護していくことが先決である﹂と強調している。 過去における製造物責任論議については、一九七〇年代には、我妻栄博士を中心とした製造物責任研究会の手によ
東洋法学 三
製造物責任の法理と実際 四 る﹁製造物責任要綱試案﹂が発表され、わが国でも学者を中心に活発な製造物責任法についての議論がなされた。 一九八九年の東京弁護士消費者問題特別委員会試案、一九九〇年の公明党﹁製造物責任法案要綱﹂、社会党﹁製造物 責任法案要綱﹂等が続いた。一九九〇年の私法学会報告者による﹁製造物責任立法への提案﹂が中心となるが、同提 案第二条は﹁製造者は、製造物の欠陥によって生じた損害を賠償する責任を負うものとすること﹂としている。現在 の製品における製造から消費者までの過程は相当複雑で、被害者がメーカー等の過失を立証すること及びそれを認め させることは困難である。そこで、各試案は﹁過失﹂を要件とせずに﹁欠陥﹂を損害賠償の要件としている。こうし た点は、EC指令の人が期待する安全性を有しない製品が欠陥であるとするのと類似している。 パ レ 過去の製造物責任論議のなかで裁判例が常にといってよい程、論究されている。カネミ油症事件判決︵一九七七年 レ 福岡地裁、クロロキン訴訟判決︵一九七七年東京地裁︶を始めとして、各地でスモン訴訟判決が下された。これらの ハイレ 裁判例を通じて、製薬会社や食品会社に製造者としての重い注意義務が課されることになった。わが国においても、 厳格責任としての製造物責任の法理は裁判例を通じて既に一部実現されてきたと表現する論説や指摘があるのは、こ のためといえる。 るロ ここで、民法解釈論としての製造物責任について一応触れておくことにしたい。 損害賠償に関するわが国のこれまでの理論は、何れもそのままでは製造物責任に適用は難しい。従来の考え方を超 えた斬新な理論が一部にあることはあるが法廷論争に通用するか疑問が残る。こうした製造物責任につき、これまで の理論として考えられてきたものを検討してみると、璃疵担保責任、契約不履行責任、不法行為責任等が挙げられて
いる。なかでも、民法七〇九条を中心にして推考する説が多く、すなわち、過失や因果関係の立証を軽減乃至転換し ながら同条を利用する手法が、最も有効且つ現実的であると考えられている。裁判例も、理疵担保責任や契約不履行 責任を認める例がなくもないが、多くは七〇九条に基づいている。 ロ そこで、従来の責任説を一応概観することにしたい。まず、毅疵担保責任説であるが、これは民法五七〇条を中心 とした考察で、売買の目的物の理疵︵欠陥︶について売主が責任を負うという鍛疵担保責任の規定においている。し かしながら、この場合の理疵とは、目的物の価値を減少・喪失させるような品質不良を指すわけであって、製造物責 任での商品の欠陥とは異なる。また、蝦疵担保責任が補おうとするのは信頼利益であって、欠陥商品から生命や健康、 財産に及ぶ拡大損害は本来この責任の守備範囲にないといえる。そこで、伝統的な考え方に固執する限り、鍛疵担保 責任を製造物責任に転用するのは難しいということにもなる。その反面、この責任が無過失責任であり、責任追及の 期間が一年であって、紛争の短期解決を促す等の利点もある。 契約不履行責任説は、欠陥商品による事故を不完全履行、そのなかでも特に積極的債権侵害に当るとみている。こ のように考えれば、欠陥商品から拡大する損害も当然に損害賠償の対象になるし、被害者が過失を立証しなくてもよ く、製造物責任を契約不履行責任と考える最大の利点はここにある。但し、それ程、被害者にとって有利なわけでは ない。それに蝦疵担保責任の場合も同様、この場合、免責特約が有効視されており、また被害者との契約関係が必要 になるわけで、果たして生産者にまで遡って責任を追求できるかといった問題がある。このようなことからこの考え 方だけでは製造物責任の根拠にしにくいといえる。 東 洋法 学 五
製造物責任の法理と実際 六 不法行為責任説は、民法七〇九条の一般の不法行為責任と考えれば、契約関係の有無を問わず因果関係の及ぶ全損 害を製造者や販売者に賠償請求できるという利点はあるが、被害者は過失を立証しなければならなくなる。しかし、 欠陥商品事故において製造者等の過失を立証することは、因果関係のそれと並んで極めて難しく、ときには不可能に 近い。 そうしたことから製造物責任の無過失責任化が要請され、使用者責任︵七一五条︶と土地工作物責任︵七一七条︶ の活用が考えられてきた。しかし、使用者責任では、被用者の不法行為が前提となっているために、かえって被害者 に不利になる場合が多く、土地工作物責任もまた、土地工作物性や責任主体が所有者・占有者であるという制約があ ることから製造物責任の根拠にすることは難しく、極く稀な事案について利用可能であるに過ぎない。 わが国における進歩的理論の中心は、判例を通して表われているといえる。そこでは、製造物責任とは、商品の生 産・流通・販売の一連の過程に関与した者がその物の欠陥によって惹起された生命・身体・財産権その他の権利に対 アヤ する侵害から生じた損害を最終消費者利用者若しくは第三者に対し賠償すべき義務を負うことをいう、とされ、製造 業者及び販売業者の過失責任の根拠となる物の欠陥には、ω設計士の欠陥︵所謂デザイン欠陥といわれるもの︶、⑭ 製造若しくは管理上の欠陥、③説明、指示若しくは警告についての欠陥︵所謂表示欠陥︶、㈲科学技術の発展に伴う パ レ 開発途上の欠陥︵所謂開発危険︶の四つの類型があるとされている。製造物責任の多くは、医薬品を巡って、取り上 げられ、多くの裁判例がある。製薬会社のように、消費者と直接の契約関係はないけれども﹁危険な薬﹂を製造した こと自体に責任の根拠を求めて、賠償請求を認めようという考えである。新しい判例としては、クロロキン薬害に対
レ する東京高裁判決がある。製薬会社は﹁その時々の最高の医学、薬学等の学問技術水準に依拠して、医薬品の最終使 用者である医師や患者らを含む一般国民に対し、その本来の使用目的︵治療効果︶以外の働き、作用による危険を防 止するよう努めなければならない﹂と製薬会社の責任を認めている。このため、製薬会社に対しては不法行為責任を 追求することは可能と考えられる。但し、何時の時点から薬害発生防止の注意義務が発生するかということは、別個 に検討を要する問題といえる。また同様に、輸入・販売業者は輸出製造元に対して、薬の安全性に関する資料の開示 を求める等して安全性を保証すべきであるから、製薬会社と同様の注意義務を負うといってよいと考えられる。関連 して、医師に対する責任追求については、医師は人の生命及び健康を管理する立場にあり、患者と診療契約を締結し ているので契約責任も問い得ることになる。医師の注意義務の内容は、診療当時の所謂臨床医学の実践における医療 水準を基準とするものとされているから、この基準からみて、薬害を予見することが可能であった場合は、医師に過 失が認められることになり責任追求が可能である。 法的構成の一般的考え方としては、ω民法第七〇九条等の不法行為責任、⑭品質保証に反する債務不履行責任、㈹ 信義則に基づく注意義務・保持義務違反に大別できるが、何れの考えも、現代の生産・流通システムの中にあって、 危険な製品を製造しあるいは販売して利益を挙げたものに対して、その製品に内在した危険が発現したときは、無過 失的に責任を負わせるべきであるという方向を目指しつつ、現在の法律体系の中で構成しようとしている。製造物責 任の要件としては、前にも少し触れたが、製造者の過失、製造物の蝦疵、損害の発生、鍛疵と損害との因果関係であ る。過失の有無の前提として、製造者に課せられる注意義務の内容については、類型化して考慮する方法がよいもの 東 洋 法 学 七
製造物責任の法理と実際 八 と思われる。例えば、医薬品や日常の食品のように生命・身体に対する侵害を、比較的広範囲で惹起される危険性の ある製造物に関しては、かなり高度な注意義務を負わせてよく、危険性が余りなく被害が発生しても狭い範囲での侵 害に留まるものについては、平均的・具体的な注意義務違反があるときに限り責任を認めれば足りるとも考えられる。 因果関係については、所謂相当因果関係が必要であるが、被害をもたらした製品の特定、経路等について、公害事件 の裁判で用いられる疫学的因果関係論の応用は考慮の余地があろう。 ︵王︶ 日常生活の身辺には医薬晶、洗剤、殺虫剤、化粧品等誤った使い方をすれば危険を伴う商品があふれている。 製造物責任は、商品の欠陥によって起きた人的、物的損害の賠償責任をメーカー側、または販売業者等に要求することで あり、米国における製造物責任法は各州によって定められている。その特色を二 薦でいうと、商品の欠陥によって消費者の 身体等が損なわれた場合、メーカーに厳しい責任を課し、メ:カーが欠陥でないことを立証しなければならない。わが国に はそうした法律がないため、民法に則って、消費者が商品の欠陥と被害の因果関係や企業の過失を立証しなければならない。 商品の安全性を追求する上では、消費者側に立証責任を課しているわが国の消費者の方が不利なことは明らかである。これ に対し、米国では消費者がメーカー側の賠償責任を問う訴訟を提起しやすくなる。このため米国では、一般に商品の安全性 により配慮が行きわたり、事故予防対策も進んでいる。商品の表示についても、それが適切でなく、それにより事故が発生 すれば、欠陥商品となる。米国では、洗浄剤等の化学物質商品は毒性の程度を﹁注意﹂、︸、警告﹂、﹁危険﹂、﹁有毒物﹂と四段 階に分けて書き方を変えている。 わが国でも、最近、洗濯機に﹁脱水槽のふたを開けて一五秒で止まらない時は使用を中止し、修理してください“と表示 されるようになった。高速で回っている脱水槽のタオルに手を巻き込まれ、東京都内の主婦が右手中指を無くした。ブレー
︵2︶ ︵3︶ ︵4︶ キがさびついて利かなかったのであるが、その犠牲があって初めてこの表示が実現した。主婦の中指には、見舞金一〇万円 が支払われただけである。また、浴室を掃除するため二つの洗剤を混ぜて使用したところ、有毒ガスが発生して主婦が死亡 した。中毒症状の被害者も多い。しかし、一九八八年春に﹁まぜるな危険しと大書した警告ラベルを洗剤業界がはり始めた のは、長野と徳島で二人の主婦が命を失ってからである。 お客は神様といった人がいるが、現代の消費者は、ある面で無力な王様である。高度な生産技術、複雑な流通過程から生 み出されてくる製品について、個人の力で企業の過失責任を立証するのは極めて困難である。米国的な製造物貴任の考え方 からすると、消費者は警告ラベルが欠けていることで﹁欠陥商品﹂として賠償金を求めることも可能である。そうした考え 方が事故の抑止効果も生むことになろう。米国における製造物責任についての賠償額は一般に厳しく場合により企業の倒産 も招くことがある。賠償のコストが軽くてすむ日本の企業とは公平な競争はできない、と欧米各国から新たな国際摩擦が到 来する気配さえでてきている。 わが国における製造物責任に関する学説と裁判例の発展については、長尾治助﹁製造物責任﹂民法講座6六三九頁以下、 竹内昭夫編﹃わが国の製造物責任法臨八頁以下。また、製造物責任に関する文献については、加藤雅信・浅井尚子﹁製造物 貴任関係文献年表﹂判タ六七三号ご二九頁以下。 カネミ油症事件︵福岡地判昭五二二〇・五判時八六六号二︸頁・判タ三五四号一〇頁。 ﹁蝦疵︵欠陥︶ある食品を摂取 したことによって人の生命、身体に被害が及んだ場合には、それだけで暇庇︵欠陥︶ある食品を製造、販売した者の過失が 事実上強く推定﹂︶。 福岡スモン事件︵福岡地判昭五三・一一・一四判時九一〇号三六頁・判タ三七六号五八頁。 ﹁自ら製造した欠陥医薬晶の 服用によって消費者の生命・身体に副作用被害を及ぼしただけで、その医薬品を製造した者の過失が事実上強く推定砿︶、 北陸スモン事件︵金沢地判昭五三・三二判時八七九号二六頁・判タ三五九号一四三頁。 ﹁或る重大な被害が、特定医薬品 を原因として発生したという相関関係が認められれば、その被害について、製薬業者らに予見が可能であったと推定⋮⋮無
東洋法 学
九︵5︶ ︵6︶ ︵7︶ ︵8︶ 製造物責任の法理と実際 一〇 過失責任に近づけて判断している﹂︶。 製造物責任・生産物責任について触れた著書・論文は数多いが主なものを以下に挙げることにしたい。日本私法学会民法 部会シンポジウム資料﹁製造物責任の現状と展望①②③﹂NBL闘五、六号、四五七号、四五八号。有泉亨﹁生産物責任論 序説﹂内田力蔵外編﹃市民生活と私法﹄。加藤一郎編﹃注釈民法!9﹄。竹内昭夫編﹁わが国の製造物責任法﹂。川井健﹃製 造物責任の研究﹄。乾昭一下平井宜雄編・企業貴任。有泉亨﹁生産物責任﹂現代損害賠償法講座。北川善太郎﹁担保責任﹂ 新民法演習4。森島昭夫・不法行為法講義。長尾治助﹁製造物責任﹂民法講座6。前田達明・不法行為法。平野裕之・製造 物責任の理論と法解釈。加藤雅信﹁製造物責任規範とその問題点ω﹂判タ三六一号六頁以下。安田総合研究所・製造物責任。 椿寿夫﹁欠陥車と民事責任﹂ ︵同﹃民法研究臨二〇五頁以下所収︶。森島昭夫﹁自動車の製造者責任﹂ジュリスト四三二号 三二頁、四三九号六一頁。小林秀之﹁製造物責任訴訟﹂。朝見行弘﹁製造物の現状と展望﹂NBL四五七号。松本恒雄﹁製 造物責任の現状と展望﹂NBL四五七号。安田火災海上保険・PL“製造物貴任。千代田国際経営法律事務所編・製造物責 任。平野晋−厳格製造物責任の弊害と訴訟に頼らない賠償制度の提案﹂国際商事法務 <○ご。20馬︵這逡︶。伊藤進﹁民 法解釈論としての製造物責任﹂法セミ、一九九一年二月号三二頁以下。浅岡美恵﹁いまなぜ製造物責任かし法セ・・、、一九九 年二月号二五頁以下。松本恒雄﹁日本における立法のゆくえし法セミ、一九九一年二月号四四頁以下。浦川道太郎﹁製造 物責任をめぐる最近の動向﹂法律のひろば・一九九一年二月号四頁以下。小林秀之﹁製造物責任における責任と因果関係し 法律のひろば・一九九一年二月号一三頁以下。経済企画庁﹁製造物責任の新しい視点﹂。PL制度研究会﹁最新P﹂︵製造 物責任︶レポート﹂。経済企画庁﹁製造物責任法の論点し。 明確には﹁何々説しとして説明はされていないが、一応、発表されたものを推考して以下にとり挙げておいた。 北川・植木﹁現代損害賠償法講座4﹂二七九頁。 東京高裁昭和六一年㈱六三〇号、平成元年二年六日民三部判決、一部変更︵上告︶。本件は、高度さらし粉が外国籍貨物 船の下部船倉に積付けられて運送されている間に別の積荷である有機物と混触したことが原因で発生した船舶火災につき高
度さらし粉の製造業者及び販売業者の不法行為責任が認められた事例である。また、本件は特に警告についての欠陥が問題 となった事例であり、この点については、判決は、危険物を製造、販売する者は、その製品たる危険物の流通経路において、 その危険が現実化することを避けるために、その危険性の内容、程度及び適切な運搬、保管方法等の取扱上の注意事項をそ の流通に関与する者が容易に知り得るようにする義務、すなわち危険性及び取扱上の注意事項を周知させる義務を負うと解 すべきである、と説示している。 ︵9︶ 昭六三・三・二判時二一七∼号。 二 米国における製造物責任制度の素描 欧米諸国においては、消費者運動の高まり等と共に、製品の欠陥によって生じた人身または財産に係る損害につい ての企業の賠償責任、すなわち製造物責任︵呼○身9ぼ筈島受︶の問題が論争されている。特に、米国では一九 六〇年以降、呼○倉9ぼ菩萄受に関し企業に厳格な責任を課す傾向が年々高まり、一九八O年代半頃には、単に製 ヱロ 造物責任だけではなく、医療過誤等、賠償問題全般にわたって波及するようになった。 米国では、一般に、汐○身9ぽぎ島受法制は四つのメリットがあるとされる。ω﹁損害賠償し⑭﹁情報公開︵ディ スクロージャ︶﹂③﹁安全への抑止力﹂㈲﹁企業倫理の向上﹂である。また、企業が恐れるのは、賠償金だけではな く、企業情報が開示され、欠陥を隠していたことがマスメディアを通じて一般に知れ渡ることによるイメージの低下、 信頼の失墜を企業は最も恐れることである。その恐怖が、より安全な製品を作ろうという抑止力として働き、企業倫 東洋法学 二
製造物責任の法理と実際 一二 レ 理も高まるものであるとする意見も強い。 レ 米国の製造物責任法は、一九六〇年代に入り、判例の積み重ねによって確立された。画期的なのは、被害者は企業 の過失責任を立証する必要がなく、単に製晶の欠陥だけを証明すればよいことになっている。ケースによっては、製 品に何等欠陥がなくても、警告ラベル一枚欠けているだけで、その製品が裁判所から﹁欠陥﹂と認定される場合さえ ある。米国は元来、訴訟社会であり、製造物責任訴訟は日常茶飯事になっている。︸九八八年度、連邦地裁に提訴さ れたものだけで約一万七千件に上っている。これに対し、米国企業は企業の活力を損なうとして、原告側に過失立証 ゑロ を求めるよう法改正を働きかけているといわれている。雨に濡れた犬を電子レンジで乾かそうとした米国人がいた。 そして愛犬が死んでしまったのはレンジメ⋮カーの責任と訴えた。注意表示が無かったのは手落ちであるという主張 であった。この例は行き過ぎとの批判もあるが、米国の訴訟社会ぶりを物語る話として知られている。流石にこの提 訴は退けられた。しかし、メーカーが消費者の身になって配慮しなければならない責任の重さについて、米国の社会 がどれほど厳しく考えているか、垣間見ることはできると思う。法律的にその考えを支えているのが製造物責任 ︵ギ○身9口筈萄ξ︶といわれる制度である。 一九六〇年代に入ると、重要な連結点︵。 ・一讐難$馨8導釣9︶により準拠法を決定するという考え方、すなわち、 不法行為地という連結点を挙げ、それらを論点に照らして評価し、重要な関係を有する地の法を準拠法として決定す パさロ るという比較考量の理論が生まれてきた。この理論は一九七一年のリステートメント第二版︵即。馨9Φ簿Φ暮︵留8− &︶900議一§9U頭毛ω︶に採用された。次に若干のケースを見てみると、一九七四年三月、パリ郊外で墜落し、
三四六名の死亡者を出したトルコ航空のDCi10型機の事故に関する訴訟は、重要な連結点による準拠法選択という 問題を含んでいた。同事故に関し、カルフォルニア州を中心として提起された二〇一件の訴訟が複数地区訴訟制度の 下にカルフォルニアの連邦地方裁判所にまとめられた。被告側は、事故機を製造したマクダネル・ダグラス社、エン ジンを製造したゼネラル・ダイナミックス社、事故機に耐空証明を与えた米国およびトルコ航空であった。訴訟の進 展にともない、ダグラス社、ダイナミックス社及びトルコ航空の三者は、損害賠償の分担方法について合意し、原告 側が懲罰的損害賠償︵讐巳馨①霞震ΦB℃ぼ蔓量目お霧︶の請求を放棄することを条件として責任を争わずに原 告と和解することを申し出た。裁判所は、強力に和解の推進を図り、和解の早期成立のためには裁判所が損害賠償の 基準につき準拠法を判定することが有益であると考えてこの点につき判断を下した。これが一九七五年八月一日のカ らレ ルフォルニア中央地区連邦裁判所の判決である。裁判所は、死亡者は三六の法域に跨がっているが、さらに一死亡者 について住所を異にする複数の原告が表われている場合もあり、死亡者または原告の住所の法に拠るとしたら相当数 の法域が関係することになり、それ程多数の法を個別的に適用すると却って正義に反する不統一な結果になるとし、 一元的にカルフォルニア州の法を適用することが、同州に居住する被告の不法行為を制御すると同時に被告に過大な 経済的負担が課されることを防ぎ、且つ、カルフォルニア州の厳格責任に基づく製造物責任の法理の下で統一的な賠 害賠償責任のルールをひくことになり、カルフォルニア州の統治的利益︵閃○<Φ暴揖露鐙コ暮霞Φ馨︶に適うとの判 断を下した。また、米国で製造された航空機が惹起した事故には自国の法を適用することが米国の利益に適うとの意 見が述べられている。一九七八年五月に、わが国で墜落したヘリコプターに関する訴訟がテキサスの連邦地裁に提起
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一三製造物責任の法理と実際 一四 マレ された。このヘリコプターは、デラウェア州法によって設立されテキサス州に本社のある被告によって、事故の約二 年前に製造された。製造後、わが国のリース会社に売却され、使用されていたヘリコプタ⋮会社に賃貸されていた。 事故原因については、わが国の航空事故調査委員会が調査し、事故機の減速ギヤボックスに欠陥があったためエンジ ン出力と翼の連携が悪かったとの結論を下した。原告は、製造物責任を追求して、テキサスの連邦地裁に保険代位に 基づく損害賠償請求訴訟を提起した。そこで被告は、フォーラム・ノン・コンビーニァンス︵不便宣法廷8凄9⇒8 レ 8︿①巳Φ霧︶に基づく訴訟却下を申し立てた。テキサス連邦地裁は、日本法の下では不法行為上の厳格責任︵の9g 壁菖一身ぎ8詳︶は認められておらず、また、民法第五七〇条に定められた黙示の蝦疵担保責任︵一9覧陣&罰鱒壕聾身︶ は契約関係を前提とするところ、原告は被告と契約関係にないのでこれによることができないが、原告にはなお過失 に基づく不法行為責任を追求する途があり、しかも被告は日本が訴訟地となった場合には時効の抗弁を放棄すること に同意しているから、日本が訴訟地となり日本法が適用されても原告には救済が与えられる余地があると認めた。そ して、前二者の理論に基づく責任追求の途がない点において日本法の方が原告にとって不利であるといえても、係る 要素は、一九七六年にスコットランドで起きた米国製の航空機墜落事件において判示されたようにフォーラム・ノン ・コンビーニァンスを否定する論拠とはなり得ないとした。しかし、テキサス連邦地裁は私的利益と公共的利益を分 析した結果、フォーラム・ノン・コンビーニァンスの申立を却下した。以上見てきたように航空運送に伴う事故にお いては、旅客、航空会社、航空機製造者等の国籍、州籍、住所、所在地が多岐に亙り、訴訟における当事者の関係が 複雑になると共に、法の適用関係も複雑になる。
米国における連邦製造物責任立法化は、商務省が一九七九年一〇月、統一製造物責任モデル法︵弓ぎ罵&巳 d巳騰曾露汐○身9瓢暮凶陣蔓卜9︶を公表したことに始まる。その後、一九八二年にカステン上院議員が法案を提 案し、また、ダンフォース上院議員による法案が一九八五年に提案され、共に修正されつつ一九八六年六月、一本化 の合意が成立して、上院商務委員会原案としての﹁製造物責任改革案︵日ぎ即○倉9¢書箪身即Φ♂擁露ω旨︶﹂ がまとめられた。一九八八年、リチャ⋮ドソン下院議員の修正法案が審議されるという経過を辿ったが、ダンフォー ス法案以降の連邦製造物責任が、非経済的損害の制限、懲罰的損害賠償の制限、共同責任者間における連帯責任の制 限、訴訟外紛争解決制度の確立等いわば理論的側面より直接的効果を期待した内容を有していることにも不法行為制 度改革の主要な一部として捉えることが明確に表われている。 米国においては、不法行為法リステイトメントも重視する必要がある。これは、判例法を条文の形に再記述︵ 奉馨讐Φ︶し、注釈と設例を付して編纂したもので米国法律協会が発行している。法典と異なり、直接の法的拘束力 はないものの全米のその後の判例をリ;ドする点で事実上、大変重要な意義を有している。一九六五年の不法行為法 リステイトメント四〇二条Aは、利用者または消費者に対する有形的損害についての、製品売主の特別責任を規定し、 その趣旨は、その後の全米殆どの州において採用され、製造物責任法理における最も重要なル!ルとなったといって も過言ではない。米国において初めて厳格責任を製造物責任訴訟に導入したカリフォルニア州で、一九八八年三月、 一定条件下ではあるが厳格責任を排し、事実上製造者の過失に責任根拠を求めた判決が下された︵㌍○壌⇒<あ琶鉱 簿OO弩け︶。これは、処方医薬品の製造者はその製品が販売される際に欠陥を知っていたか、または当然知るべき 東洋 法 学 一五
製造物責任の法理と実際 一六 であった場合において、製造上合理的な注意をなしていたこと、及び製品の危険性について相当な警告をなしていた ハきロ 場合には責任を課されないこととされた。なお、カリフォルニア州では、一九八七年に不法行為法の改正が行われ、 懲罰的損害賠償の認定に関わる変更、危険が内在する製品に対する責任の排除が規定された︵9良営答鶏身 閃90盤B︾90馬おG o刈︶。 実際上、 ﹁取扱い説明書の警告表示が不十分し等の理由だけでも、訴訟を提起することができる。このため、極く 普通のビニール袋にも﹁窒息死の危険あり。子供の手の届く所に置くな﹂という表示がある。警告表示は微に入り細 に入り行われており、製品によってはラベルを貼ろうにも、製品の物理的スペースがない場合には﹁留意・取扱説明 書を参照せよ︵ZO8国一の①Φ言ω霞ぎ江9露鋤言巴︶しと書かれた警告ラベルを貼付しなければならない。現在、 二万件近いP﹂訴訟があり、この内、数百件は日本企業が被告になっている。PL法理として多く用いられる ≦餌壕9誉賓︵保証責任︶は、製品の売買契約に伴う売主の買主に対する契約違反を追及するものであり、売主の過失 の有無は関係ない。保証責任は、明示の保証と黙示の保証に大別され、統一商法典︵C鼠8目蓉OO目旨霞9巴OO号︶ に定められている。明示の保証とは、製品の売買にあたり、その製品の性能・品質・安全性について約束がなされ、 または製品の見本に基づいて取引が行われ、その約束、見本がその取引の基礎となっている場合に、これらの約束、 見本に合致した性能・品質・安全性を有することの保証をいう。黙示の保証とは、製品が販売された場合に製品が一 定の性能・品質・安全性を有するという暗黙の保証のことである。保証の内容は消費者の合理的な期待に合致するか 否かによって判断され、製品が本来の目的・方法によって使用されている場合だけでなく、それ以外に予想される目
的・方法で使用される場合にも安全であることが含まれる。前に触れたように、製造物責任を追求する場合、過失責 任・保証責任・厳格責任の三つの法理があるが、被害者が訴訟を提起する場合は、複数の法理を併記することが一般 的である。これは、それぞれの法理を比較した場合、他の法理よりも有利な部分があるためである。保証責任は、∼ 般的には不法行為︵過失責任・厳格責任︶よりも出訴期限が長いことが有利な点である。過失責任については、加害 者の過失が主張できる場合には賠審に与えるインパクトが大きく、訴訟を有利に展開できるという実際的な判断もあ り、実務上の重要性は失われていない。しかし、他の法理の方が有利なこともあるとはいえ、加害者の過失を立証し なくても、訴えることができる厳格責任は被害者の負担を大幅に軽減したことになり、被害者にとっては極めて有利 へれロ な法理といえる。 米国における連邦製造物責任立法の動きは、一般に、EC指令の採択を契機として生じたヨーロッパにおける製造 物責任の立法化傾向と対比して捉えられがちであるが、米国における連邦製造物責任立法とヨ⋮ロッパにおける製造 物責任の立法化とは、基本的にその方向を異にするものである。米国における連邦製造物責任立法は、前述した厳格 責任理論と共に急速に発展した消費者保護の傾向に一定の歯止めを掛けようとするものであるのに対し、EC指令は、 消費者保護の強化を目的とした製造物責任原則の立法化を図っているのである。現時点でのヨーロッパにおける無過 失責任の導入は、訴訟件数を緩やかに上昇させる可能性を秘めてはいるが、EC域内では、米国と異なり、一般に、 ①弁護士の成功報酬制度が存在しない、②民事の陪審制度が採用されていない、③開示手続が基本的には存在しない、 ④懲罰的賠償︵勺蕉巳鉱くΦU頭簿認霧︶が採用されていない、⑤弁護士の数が少ない等、米国のPL制度の背景となっ 東 洋 法 学 一七
製造物責任の法理と実際 一八 ている風土と異なることから、米国型の製造物責任危機︵写&き江㌶げ鼠身R邑ω︶と呼ばれる状況はそのままの むロ 形ではヨーロッパにおいては発生しないものと予測されている。 なお、一九九一年八月、クエ⋮ル米国副大統領は、米国法曹協会の全国大会で講演し、訴訟の増加に歯止めを掛け るため、五〇項目からなる民事裁判制度改革案を提案し、PL訴訟等、高額な賠償金が問題となっている懲罰的損害 賠償に上限を設ける等、裁判の簡素化によって企業の競争力強化と消費者保護を推進する目的を発表した。その背景 となっている米国の企業や国民は訴訟費用と保険料に年間八百億ドルも支払っている事実を指摘した。 ︵ま︶田,9ぴ謹霧\︾●閃.o Q巨葺︾・含。駐濫ぎ葺身臣8器8ロ。。 。趨 ︵2︶邦≦,麟讐纂○ン汐○費。畠目帥琶一蔓霊≦き瑛奉ごお。 。c 。∼お。。。。 ︵3︶米国の製造物責任法は、エスコ⋮ラ対コカコーラ・ボトリング社事件での︸九四四年に始まる一連の判決を通じて劇的に 変容した。同事件では、コーラの瓶が爆発し、それを握っていた女性がケガをした。その女性は、爆発するようなデザイン 上の欠陥のある瓶を売ったボトリング社に過失があったと主張したが、ボトリング社側の具体的な過失行為を証明すること はできなかった。それにも拘わらず、伝統的な法理に反し、裁判所はボトリング社から女性が損害を回復することを認めた。 この画期的な判決において、カリフォルニア州最高裁判所は、メーカーの損害賠償責任を認めた事実審裁判所の判決を肯認 した。この一九四四年には言語道断と考えられた判決がどうして一九八O年迄に米国の法律になったのか不思議に思われる のは当然であろう。この変化は消費者運動の結果として理解することができる。そして米国の陪審制度の故に、個々の製造 物責任裁判の中で、一般大衆の態度の変化は広範囲に亘る諸々の結果をもたらした。製造物責任法への適応が除々に積み重 なり、遂には、メーカーが市場へ出した製品から生じた損害については、メーカーに厳格責任を負わせるという現在の法律
状況にまで至った。現在、メーカー側に与えられる主な抗弁が幾つかある。基本的には製品に欠陥があるかまたは不合理に 危険であり、且つ、製品のそうした状態が被害を発生させた場合には、賠償請求がなされる。この場合、メーカーは次の四 つの主な抗弁を有する。ω製品の改造や誤用が被害を発生させた場合の被害者による製品の改造や誤用の立証、③そのメー カーの製品が被害を発生させたのではないことの立証、③その製品の危険性は避けがたいものであり、その本来的な危険性 について被害者は十分な警告を受けていたことの立証、翰被害者が被害を受けた後、規定された出訴のための期間︵出訴期 間︶内に訴訟を提起しなかったことの立証、がそれである。社会的に有益だが危険性を避けることのできない製品は、警告 が十分になされれば、責任を負うことはなく販売することが可能である。現行の製造物責任法は、メーカーが、実質的には、 消費者の製品使用から生じた被害に対する保険業者として行動することを要求している。他の当事者への被害に対して製品 メーカーに責任があることが立証されると、今度はその被害に対する救済方法が決定されなければならない。製造物責任訴 訟における裁判で最も一般に認められる救済方法は、填補賠償である。墳補賠償は、当事者にその被害の補償をするもので あり、不法行為後に置れた当該被害者の立場を不法行為または被害前の立場と比較して、その差に基づいて算定されるもの である。堰補賠償は、被害者を被害前に当人が享受していた状態と同じ状態に置うとするものである。堰補賠償を求めるた めに、被害者は単に現実の損害の額だけを証明すればよいことになる。こうした壕補賠償に加えて、現在、五〇州の内、四 七州で懲罰的賠償が認められている。懲罰的賠償は、当事者を罰し、またその当事者と同様の立場にある他の者が同じよう な行為をしないようにするために与えられる。懲罰的賠償は墳補賠償に加えて与えられるものであり、被害者の経済的状態 によるものではなく、どちらかというと悪意あるいは虚待的に行動した不法行為者側の資力・財力に基づくものである。裁 判において認められる懲罰的賠償額は、不法行為を罰するまたは不法行為を思い止まらせると認められる額に基づくもので あると一般にいわれている。金額は、被告の財政的規模、財力、社会や陪審員たちの怒りの程度、その他の要因にもよる可 能性がある。従って、懲罰的賠償を受ける側は、被害を受ける前に享受していたよりもより良い状態に置れる範囲で思いが けない利益を得たことになり、懲罰的賠償を受け取る側を裕福にすることになる。例えば、ワシントンDCにおいて、陪審 東 洋 法 学 一九
製造物責任の法理と実際 二〇 は、処方薬の使用に起因する被害についての懲罰的賠償として一千万ドルを与えたケ⋮スもある。被害者が懲罰的賠償の裁 定を得るために立証しなければならない行為は、管轄裁判所によって非常に異なる。しかし、証明されなければならない行 為は、一般的にいって四つのカテゴリーに分けられる。これらの一般的なカテゴリーは懲罰的賠償裁定を取得するために立 証すべき最低限の不法行為に重点を置いている。立証の最も難しいものから容易なものへ順次列挙すると、これら一般的な カテゴリーは、ω相手に損害を与える悪意または犯罪的意図、③厳格過失︵。 。簿糞器喰蒔露8︶といわれるもので極端な 不注意より程度が重いが意図的な侵害には充当しない行為、③璽過失または極端な不注意、㈲種々の法令上の要件、となっ ている。︸四州が悪意の証明を必要とし、二一二州が厳格過失行為の証明を必要とし、八州が重過失の証明を義務づけ、二州 が懲罰的賠償を得るために立証しなければならない行為を規定する種々の法令を制定している。一九八九年に入り、特定の 活動を楽しめなくなったことへの賠償︵鑓民o巳。U鋤讐お霧︶という新しいカテゴリーの損害が裁判に表われてきた。こ の新しい概念は、被害者が、毎日の散歩、水泳、野球等、ある特定の活動や被害者がもう参加することができなくなった他 の活動を楽しむ能力を喪失したことに対して補償を受けることを認めたものである。しかし、未だ直接的に控訴裁判所で審 理されたものではない。 勺3ωの霞餅渓88POづ弓○婦鼠8や刈8︵㎝葺&Dお。。鉢ごo ご一毎ぴ磐響”¢び簿餌葵汐閃夢Φ8Φω驚○胃UΦ巴鵯U亀Φ9”頃8き 2Φσq一蒔霧8︹8≦鷺鍔導巳δω嘗一9賦ぎ羨ξ8ZΦ胆戯窪。9。 。。 。<弩露じ閃。<6器︵お。 。。︶一ω。げ≦讐ド零○量9ωa①受” ︸8蜘仁9口ぎ陛蔓一窯節箆⇒鵬浮Φぎ8諏蓉ρ囲q9諮い貯霞r勾Φ︿.G 。︵お。。↓︶” アメリカ法の概観については、山口正久﹃欧米の製造物責任﹄第一部。安田総合研究所﹃製造物責任﹄第︸部。森島昭夫 門アメリカ合衆国統一製造物責任モデル法について﹂名大法政論集八八号二二二頁︵一九八一︶。土井輝生﹃アメリカ製品 責任法し三頁以下︵一九八三︶。松本恒雄﹁アメリカ合衆国における製造物責任法理の発展と立法の対応︵一︶﹂広島法学 七巻三号、﹁アメリカ合衆国における製造物責任法理の発展と立法の対応︵二ご広島法学一〇巻三号三五三頁︵一九八七︶。 朝見行弘﹁アメリカにおける製造物責任﹂ジュリスト九六一号一四一頁︵一九九〇︶、 ﹁入門製造物責任法﹂法セミ三六巻
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︵6︶ ︵7︶ ︵8︶ ︵9︶ ︵10︶ ︵U︶ 一二号。 ρ≦江讐ダギ○倉9瓢ぎ一導ざお。 。。●9 このような比較考量的アプローチを採用した画期的判決として、O ごぎ8良︿妬霧冨OP一い。乞磯愚傷鳶G 。口豫Z慮飴αb。お ︵お器︶が挙げられている。 ぎお−零δ>冒9器ぴ○騰窯拶蓉F。 。レ鷺♪。 。。 。⑩男の唇℃る。 。b。︵OUO鉢お刈㎝︶● 弓○獣○駕霞欝Φ讐匙密奉ぎω’<’ωΦ屡瓜Φ一一8営Φぴ嵩”諺く陣、︵OO類︶描。 。卜。一︵ωU弓①客お。 。熱。︶‘ o ご声仁魯Φさ臼竃闘8毫霞一①纂哨&霧巴司○歪Bふ。類胃く●い。菊①<D8。 。る8工。︵お奨︶“ 罫ω’竃跨&①芦汐○倉。蕃い一ぎ籏受砧&&お。。。。し’ピo≦Pギ○昏。鼠広暮聾受ピ㌶σq9陣oPお。 。。 。泌自ひ○器讐の︸汐9 倉o琶瓢筈鵠蔓瓢鶏撃鎌8お。 。。。︸≦始民Φ90P汐○&。箭㌶害臣受餌&ω縁。含﹂。。。曾≦房o⇒”鯉ω①さ鷺○のざ証貫 国号岬g睾霧傷9落さ、.dψ8曾腔切霞零濤..お。 。8安田総合研究所︹製造物責任し。 罫竃営麟霞餅q山2g郵ご③睡甜霧営↓○誉︾9・霧﹂。・ 。b。b。9露9亀帥聾 ご出乱ω①忌①匿︺汐・身g蒙餌菖ξ口。。9 い菊●司籍3①胃欝罫H畳孚一&蓉餌p零○含g臣筈一一ξ狐。。。脅 甲q民蔦一簿磐P℃8伽巳ハ些aεβ鱒おΦ。 QΦ廿押お8, 三 製造物責任に関するEC指令 欧州諸国は、伝統的に不法行為法または契約法により製造物責任を処理してきた。一九九二年にECが統合される が、製造物責任については、一九八五年に無過失責任を基盤とするEC指令が発せられ、加盟一ニカ国は、各々EC 指令を指針とする各国独自の法律を制定する予定をしている。一九九一年七月現在、英国、ギリシャ、イタリア、ル東洋法学 二︸
製造物責任の法理と実際 二ニ クセンブルグ、デンマーク、ポルトガル、ドイツ、オランダ、ベルギi、アイルランドが立法化され、フランスとス ペインが残されている。ECとして、法の統一が必要とされた理由は、消費者保護のほか、EC域内での市場競争条 件の同一化、流通の促進が挙げられている。 EC指令は、加盟国によって異なるEC各国の製造物責任原則をなるべく近いものにすることにより、ECにおけ る法の統一を図ることを主眼としている。一九八五年七月二五日、EC閣僚理事会によって、 ﹁欠陥製造物に対する 責任に係わる加盟国の法律、規則及び行政規定の近似化に関する一九八五年七月二五日閣僚理事会指令︵OO巨鼠 U樗。。野①03㎝傷巳図一。・ 。㎝8甚①碧鷲○江簿豊80囑讐Φσ誤㍉①讐H魯8ω窪α豊黛凱ω霞器く①鷺○く邑○霧Oh レ 簿。竃①簿び零望9霧8鷺Φ簿汐鋤獄書淳蔓門臼審33お篤○身9ω”。 。弩。 。隷茜国O︶﹂が成立した。同指令第一九条 において、指令通告日から三年以内、すなわち、︸九八八年七月三〇日迄に、加盟一ニカ国が国内法を施行すること を義務付ている。このEC指令は、製造物に欠陥が存在すれば、企業の無過失責任を認める厳格責任理論を採用して いる点が最大の特色となっている。 へ レ EC指令の目的は三つあるとされている。第一は、EC加盟国間の競争条件の均等化ということであり、欠陥製品 の製造者に課される責任がその厳格さの点で異なると互いに競争関係にある各加盟国の経済にとってコストの違いを もたらすことになる。第二は、商品の自由な流通の確保であるとされ、第三は、共同市場内の消費者の保護の均等化 とされている。。また、EC指令の特色は、①厳格責任の採用である。これは製造物の危険、すなわち﹁欠陥﹂を帰 責事由として製造者に責任を課す厳格責任を採用している。②消費者期待基準による欠陥認定である。これは、EC
指令の下で、製造者は過失の有無を問わず、製造物の欠陥によって責任を負うが、欠陥の認定の基準として、消費者 期待基準が採用され、製品が通常の消費者が期待する安全性を欠如している場合に、欠陥とする考え方である。そし て、この結果、製造者が主観的に十分に安全性を確保した設計であると信じても、それが通常の消費者にとって不相 当に危険であれば、その製品は欠陥であるとされる。③開発危険の抗弁、第一次農産物及び狩猟物の取扱い、責任限 度の認定の三つのオプションを定めている。これは、EC指令は加盟国の法律の近似化を図るものであったが、検討 の過程で各国の法政策上の相違が生じ、これら三点に関し、加盟国の国内法制定上のオプションとしている。 ﹁開発 危険﹂とは、製造者がその製造物を流通に置いた時点における科学・技術の知識水準上、認識することができなかっ た欠陥によって生じた損害を意味する。この開発危険を製造者の抗弁として認めるか否かは、各国のオプションとさ れた。 ﹁第一次農産物及び狩猟物の取扱い﹂については、第一次農産物とは、農業、牧畜業及び漁業による産物で、 第一次加工が施されたものを除く︵指令二条︶と定義されている。EC指令の適用対象となる製造物に、第一次農産 物と狩猟物を含めるか否かは、各国のオプションとされた。 ﹁責任限度額の設定﹂については、指令一六条﹁死亡ま たは身体障害によって惹起された損害であって、同様の欠陥の存する同一の製造物によって惹起された損害﹂に基づ き、各国の国内法制上、製造者の責任限度額を七千万ECU︵約︸〇五億円二ECU︵欧州通貨単位︶一五〇円︶ を下回らない額で設定することができるとされた。この三つのオプションが認められた結果、各国の法の近似化とい うEC指令の目的が部分的に達成されない可能性が生じた。また、被害者が自己に最も有利な法延地を求めるという 帽○峯碁望○薯営的︵法延地漁り︶の発生が懸念されるとの指摘もなされた。
東洋法学
二一二製造物責任の法理と実際 二四 このEC指令は、加盟国が国内法化の手続きをとれば、国内法規範となるのは当然であるが、国内法化がなされな ハ レ くても、直接加盟国内で裁判規範として適用されるか否かという、直接適用性の問題がある。EEC条約一八九条三 項によれば、EC指令は、各加盟国に指令の内容を実現させる義務を負わせるが、どの様な形式・手段で国内法化す るかについては各加盟国に任せている。そこで、EC指令はEC加盟国に対しては強制力を有するが、各国の国内に 直接適用されるものではない、と一般に解されている。 EC指令の内容は、 ﹁責任理論﹂として、指令一条は﹁製造者はその製品の欠陥によって生じた損害に対して、責 任を負う﹂ ︵O貧顕零馨亀霞Φ汐①ω汐○倉葬ω鼠ま簿蜜村恥窪ω9&①Pα零勲霞魯鉱器⇒頴江霞島窃霧淳9 倉葬ω︿霞霞墨。算≦○鼠窪一診︶と定め、責任理論として無過失責任を採用している。 すなわち、製造者の行為における過失を問題とする過失責任ではなく、米国において広く用いられている製造物の 危険としての欠陥を問題とする厳格責任を採用している。﹁製造物﹂については、指令二条は、適用対象となる製造物 を、第一次農産物・狩猟物を除くすべての動産とし、それが他の動産または不動産に組み込まれている場合を含むと し、電気も製造物と定義している︵劇Φ一α霞︾昌毒①&量閃島霧霞即陣魯爵巳。αq導巴ω.、勺8含葬、、す号ぎ≦Φ胆陣3① 留魯ρ磐諮①8蓉目Φp一磐α&艮ω。鼠識一9①Z讐弩鷲○身葬①琶α鍬覧①護窪晦巳ωω9豊魯語暮ωδΦぎ雰 弓Φ出Φ貯①周弩留奉⇒び①語鷺魯窪ω蝉魯①a霧の営霧讐ぴ睾Φ鷺魯窪o Q餌9。巨α①げ一C讐Φ笠.︸磐α惹誘。富露陣9 び霞Z簿g暮胃&鼻8昌.、巴&閃&鶏﹂弓属聾9→量鳥田ω9Φ邑①嵩①夷該。 Q器建お巨魯①p窪。 。鴨8影騨窪 汐&爵けρ9ΦΦぎ零①邑窪く霞蝉誉籔§磯§§8鴨”≦ξα①鐸¢暮Φ鷹.、淳○身葬、、一馨磐畠曽魯嘗巨藝豊
<Φお富訂P︶。 ﹁責任主体しについては、責任主体たる製造者につき、第三条において定義されている。同条一項は、 へぐレ 完成品、原材料、部品の製造者及び何等かの形で自らを製造者として表示した者を製造者と定義する。その上で、同 条二項においては、EC域内に製品を輸入する者を製造者と看倣し、製造者としての責任を負わせるとしている。ま た、同条三項においては、製造者を特定できない場合、流通業者等その製品の供給者を製造者として取扱うとしてい る。これは、現代における複雑な製品の流通機構を配慮して、被害者の責任追及の途を明示したものといえる。 ﹁欠 陥概念﹂については、EC指令六条は、欠陥の定義を﹁人が当然に期待する安全性を備えない場合﹂製造物に欠陥が 存在するとし、米国における消費者期待基準を採用している。その判断にあたっては、①製造物の合理的に予期され 得る使用、②製造物の表示、③製造物が流通に置かれた時期を含む全ての事情を考慮するものとしている。 ﹁免責事 由﹂については、EC指令七条は、製造者の免責事由を定め、製造者が次の六項目の何れかを立証した場合、製造者 はEC指令に基づく責任を負担しない。①製造者が流通にその製造物を置いたのではないこと︵a号︶、②製造物が 流通に置かれた時点において、欠陥が存在しなかったか、またはその欠陥がその後に発生した蓋然性が高いこと︵b 号︶、③製造物が営利を目的としたものではなく、且つ、業として製造・販売されたものではないこと︵c号︶、④ 製造物の欠陥が、公的機関の定める強制的基準に合致させたことによって生じたこと︵d号︶、⑤製造物を流通に置 いた時点における科学・技術知識の水準によっては、欠陥の存在を認識することができなかったこと︵e号︶、所謂 開発危険の抗弁を認めるか否かであり、本規定を国内法上採用するか否かは加盟国の裁量に委ねられており、オプショ ンとして各加盟国は開発危険の抗弁を認めないこともできる︵一五条b号︶。なお科学・技術の水準とは何かは、科
東洋法学
二五製造物責任の法理と実際 二六 学及び技術の分野で一般に承認され、使用し得る専門的知識の総体とされ、特定国・特定業界における水準ではなく、 世界的に普遍的な水準であるとされている。⑥構成部品の製造者の場合には、その欠陥が、それが組込まれた製造物 の設計に起因し、または組込まれた製造者が与えた指示に起因すること︵f号︶。 ﹁立証責任﹂については、EC指 令四条は、損害、欠陥及び欠陥と損害との因果関係についての立証責任を被害者に課している。 ﹁損害﹂については、 EC指令一条の損害を九条で定義し、損害の範囲のみであるが、概念や賠償の方法については定義しないで各加盟国 の法律に委ねている。損害の範囲は、身体障害と財産被害に分けて規定され、財産被害については、個人的な使用ま たは消費が意図される種類のもので、且つ、被害者が主として自らの個人的使用または消費のために使用していたも の、の被害に限定される。さらに財産被害については、五百ECU︵約七万五千円︶の免責金額が設定される。EC 指令一六条は、死亡または身体障害によって惹起された損害であって、同様の欠陥の存する同一の製造物によって惹 起された損害について、加盟国は国内法制定上、七千万ECU︵約一〇五億円︶を下回らない額で、製造者の責任総 額の制限を行うことができるとしている。 ﹁期間制限﹂については、一〇条で出訴期間を定め、原告が損害、欠陥及 び製造者の身元を知り、または合理的にこれを知り得べかりし日より三年とされる。なお出訴期間の停止・中断につ いては、加盟国の国内法に委ねられた。二条は、米国において、法定責任期間︵ω鼠9欝OP88。︶と称される もので一定期間経過後は、当該製品による被害について、製造者を免責とする規定であり、損害をもたらした当該製 品を製造者が流通に置いた日から一〇年を責任期間としている。なお、これは絶対的な期間であり、停止・中断は認 められない。
前述した三つのオプションの内、開発危険の抗弁及び責任総額の制限について、EC理事会はEC委員会の提出し た報告書をもとに、一〇年後にオプション条項の選択による法の不統︸がEC共同市場にどのような影響を与えたか を検討してその廃止等、再考する︵一五条三項、一六条二項︶ことになっている。 このEC指令については、EEC条約一〇〇条にあるように法の調和を課題とするものであるから、EC指令はよ り統一的なものにしなければならなかったが、各国の実情を踏まえて政治的妥協を図らざるをえなかったとされてお り、開発危険の抗弁、加工されない農産物等の適用除外、責任総額の上限の設定の三点について、加盟国のオプショ ハうレ ンを認めることになったのは、EC指令の弱点であるともされている。EC指令一五条、一六条で一九九五年には、 オプションの見直しが予定されており、少なくとも、開発危険の抗弁と責任総額の上限設定については、見直しの際 に取り外したいとの意向が示されているので今後の課題となろう。 一九九一年︸○月二二日、ECとEFTA︵欧州自由貿易連合︶は、一九九三年一月一8から両市場を統合した﹁欧 州経済地域﹂ ︵EEA︶を創設することで最終合意した。EFTAには、スウェ⋮デン、フィンランド、ノルウェー、 アイスランド、オーストリア、スイスが加盟しており、今後、東欧諸国がECに先駆けてEEAに参加し、欧州の統 合が進む可能性もある。EFTA加盟国においては、EC指令に従った製造物責任原則の立法化が進められており、 一九九〇年末では、オ⋮ストリア、ノルウェー、フィンランドにおいて無過失責任に基づく製造物責任原則が立法化 るレ されている。またスウェーデンとアイスランドにおいても同様の立法提案がなされている。 東 洋 法 学 二七
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U声嵩8霞絆ピ、Φ窓9象お9留鼠&弓Φ鼠<①の霞○審毒の讐工卿お。 の製造物責任﹂ジュリスト九六一号ニニ回頁。 安田総合研究所﹁製造物責任﹂、好美清光﹁EC指令と製造物責任﹂判例タイムス六七三号一六頁以下、能見善久﹁EC O唆● ○鯵鼠巴q8琶巴9参肇。︵罫5ざ︶馴呼80ω巴扇○ω象Φ§博ω唇豆①B霧江一ミ9弓器魯器さ汐○伽鼻浮践εおあω。 製造物責任の法理と実際 二八Q℃○錺ぎ雛鼠身壁騨侮のω冥○卿鉱誘象騰①。菖震霞響○騨 斯彗$グQ舘始巴りお。 。Φ畳ぷ鉢︵α○。導︶。 、、浮曇①Hζ.、糞α霞浮巨①一醇号。 Q国⇒号8傷爵けω︸ΦぎΦの9毒塗轡・詳&①門①貯霧臼Φ臨郊8α爵富。 。・惹ε&Φ勺零 。。Op象Φ巴9巴の缶。誘琶一震卿霧旭ぴダぎ留旨路跨3⇒Z伽BΦp一再≦鶏。欝Φ一魯窪○留弓Φぎ餌⇒α霞Φの浮ざ募彗鵯器− 一3窪Φ段号筥淳&q葬磐母置鴨, 浅岡美恵﹁製造物責任EC事情﹂金融法務事情29富器.四頁以下。 朝見行弘﹁欧米における製造物責任﹂法セミ乞9畠蒔四〇頁。 なお、航空機をめぐる製造物責任については、浅野裕司・野口明宏﹁改訂空法しニニ五頁以下。 四 EC諸国の製造物責任法について EC指令一九条は、一九八八年七月三〇日迄に、加盟一ニカ国が国内法を施行することを義務付けているが、一九 九一年七月迄に製造物責任に関する法律を制定したのは、英国、イタリア、ギリシャ、ルクセンブルグ、デンマーク、 ︵1︶ ドイツ、ポルトガル、オランダ、ベルギーアイルランド、であり、残るのはフランスとスペインである。このEC指
令の国内法化による法の制定が大幅に遅れてきた理由は、製造物責任に対する各国内の意見の調整に手間取っていた ためとしている。また、期限内に立法を完了した英国、イタリアの新法についてEC委員会はその内容の一部に、E C指令との乖離があるとして、その修正を要求している。 ω英国 一九八八年三月一日に﹁︸九八七年消費者保護法︵8ぎ08讐簿霞淳○鼠鼠○躊︾9お・。畷︶を加盟一 ニカ国の内で最も早く制定した。同法は、全五章からなる包括的な法で、その第一章がEC指令に対応した製造物責 任に係わる規定になっている。オプションに関しては、①第一次農産物は適用除外とする、②関発危険の抗弁を肯定 する、③人身損害についての責任総額の制限は設けない、ということになった。消費者保護法は、開発危険の抗弁に 関する規定︵指令七条㈲号に関し、EC委員会からその修正を要求されている。同法四条一項㈲号は、 ﹁問題の時点 における科学・技術の知識の状態が、当該製造物と同一種類の製造物を製造する者が欠陥を発見することができな かった﹂場合に製造者の責任を否定する。これは、EC指令が本来意図している﹁普遍的かつ最高度の科学・技術知 識の水準﹂を﹁同業者にとっての科学・技術知識の水準﹂に置換するものであり、製造者の抗弁が拡大されることに レ なった。EC委員会は、英国政府に条文の改正を要求し、場合によってはEC裁判所に提訴が予定されているとされ ている。EC指令は、EEC条約によって加盟国を拘束する。08讐箏霞呼08&8︾。げ第一条は、製造物責任 指令の遵守に必要な規定を定めるため、その努力を有するものであり、この目的に従って解釈するものである、と規 定しており、更に、同条二項@において、製造物責任指令︵爵Φ嘆&き江㌶ぴ淳身9お&お︶とは、欠陥製造物 に対する責任に係る加盟国の法律、規則、及び行政規定の近似化に関する一九八五年七月二五日付EC理事会指令
東洋法学
二九製造物責任の法理と実際 三〇 ︵29。 。鐸。 。謹\国国O︶をいう、としている。こうした英国の見解にもかかわらず、EC指令は、開発危険の抗弁 ︵号く鎮8日Φ誉漁許︶を七条㈲項で簿象葺①ω鼠$98♂暮注。窪αけ①3凱。巴ざ○註&鴨讐爵Φ鎮箏Φ≦げ露 ぎ℃g爵Φ隅○身。江馨○。貯。巳器g嬢器8訂¢9霧8。欝乞Φ導。Φ溢。 唾δb。Φ○障ざq9①。算○げΦ鼠。 Q。o︿。お曾 ︵製造物が製造者によって流通に置かれた時点における科学知識及び技術知識の水準によっては欠陥の存在を発見す ることができなかったこと︶と極めて限定している。英国の08鶏9霞淳○欝&8>。げは、この他にも、欠陥の 定義︵竃雷巳お9号獄9︶等、消費者保護の観点から問題とされている条項があり、EC委員会の今後の措置が またれている。 英語の消費者保護法が施行されて三年を経過したが、関連する訴訟は未だないとされている。しかし、勺費謄目 08聲日霞ω駄Φ身は、英国行政当局によって適用され、企業の安全対策や品質管理を改善も、被害を予防する観点 レ から重要なインパクトを与えているとされる。消費者用製品に関する一般的安全基準について、勺鐘け頃み。蕊︶は、 宣伝の有り方等も含む市場に出される際の方法や目的、指示・警告、公的安全基準等、全ての状況下で奉霧9暮ぐ 緯♂でない製品を、供給、仲介、所持するもの等に対する罰則を定めている︵男霞爵①要暮○ωΦ○障田ω8呂8 。8讐B霧閃○・留建=・。OB℃ぐ琶爵爵Φ鴨⇒簿巴の臥Φ身奉2富琴窪蔑岳3貰①⇒○茸①霧○鑓ぴζω鋒①3<汐的 お怨こ8巴=竃。嘗S騨馨器8碧⋮−︶。製造業者等が免責されるためには、安全確保のためにあらゆる合理的 手段をとったことを証明しなければならない。 ⑧ ドイツ 一九八八年六月九日に﹁欠陥製造者についての責任に関する法律案﹂とし、連邦議会における審議