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瑕疵担保責任と債務不履行責任 ――

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瑕疵担保責任と債務不履行責任

――フランス法の視点から――

野 澤 正 充

                                  

は じ め に

日本における理論状況

フランス民法典の制定(ポティエ)

二元説と一元説 1980 年代以降の動向 フランス法のまとめ

総括と展望――再び日本法へ――

は じ め に

本日は,早稲田大学 21 世紀 COE「企業法制と法創造」の一環としての「比 較債務法・不法行為法研究会」の,栄えある第回の報告者としてお招きいた だき,誠にありがとうございます。後藤巻則先生から,フランス契約法につい て話をして欲しいとの依頼を受けまして,ちょうど 10 月 11 日(2009 年)の日 本私法学会において個別報告を行うものですから,それと同じテーマ(「瑕疵 担保責任と債務不履行責任」)の話をする予定です。ただし,本日は,決して私 法学会の予行練習ということではなく,私法学会では日本法を中心に話をする のに対して,本日は,フランス法を中心に話をしたいと思います。

ところで,これは全くの余談ですが,1999 年に,江国香織さんと辻仁成さ んが,『冷静と情熱の間』(角川書店)という小説を出版されています。これは,

組の男女のそれぞれの人生を,男性については辻さんが,女性については江 国さんが冊ずつにまとめ,最後に人が再会するという恋愛小説です。その

(2)

10 年後には,同様のコンセプトで,『右岸』(辻)と『左岸』(江国―集英社,

2008 年)という本を出版されています。本日の話も,瑕疵担保責任という法制 度が,日本とフランスのそれぞれにおいて,別個の「人生」を歩みながら,最 後に「再会」するというストーリーを考えています。つまり,本日の話が,フ ランスの側からみた瑕疵担保責任(左岸)であり,日本私法学会での報告が,

日本の側からみた瑕疵担保責任(右岸)ということになります。

ただし,本日はフランス法を中心に話をするといっても,次のつの点には 留意して下さい。第に,問題点を把握するために,まず,日本における理論 状況を,簡単にまとめておきたいと思います。また,第に,瑕疵担保責任に 関する,私自身のフランス法の研究は,いまだ細部においては不十分のままで す。したがって,内容的には,単行書『瑕疵担保責任と債務不履行責任』(日 本評論社,2009 年)に収めた「フランスにおける瑕疵担保責任の法理」を超え るものではありません。しかし,その内容そのものは,フランス法の概況を理 解するうえでは,正確であると思います。

なお,これから話をするテーマ自体は,古典的なものですが,現在進められ ている債権法改正における大きな論点のつです。そして,これまでの日本で は,瑕疵担保責任をめぐる理論が,かなり特殊な展開をしてきたため,問題の 本質が正しく理解されてこなかったという危惧もあります。その点を明らかに することも,本日の話のテーマのつです。

日本における理論状況

⑴ 問題の所在

周知のように,瑕疵担保責任の法的性質をめぐっては,法定責任説と債務不 履行責任説(あえて「契約責任説」とは,呼ばない)とが対立してきた。しかし,

その対立点は,時期に応じて異なっていることに注意を要する。

まず,1960 年代に債務不履行責任説が提唱された当時は,明らかに,「特定 物のドグマ」を認めるか否かが主要な論争点であった。すなわち,特定物の売 買においては売主の瑕疵なき物の給付義務がないことを前提に,特定物につい

(3)

ては法定責任である瑕疵担保責任を適用し,不特定物については債務不履行責 任で対処しようとする法定責任説に対し,債務不履行責任説は,さまざまな角 度からこれを否定した。

しかし,その後は,債務不履行責任説が学界に定着するにつれ,無過失責任 である瑕疵担保責任と過失責任主義に立脚する債務不履行責任とを一元化する ことの矛盾が明らかとなる。そこで,債務不履行責任説の多くは,瑕疵担保責 任の債務不履行責任に対する特則性を無過失責任である点に求めた。しかし,

債務不履行責任説は,瑕疵担保責任が特則であることの意味ないし根拠を明ら かにしていない。

ところで,瑕疵担保責任が無過失責任であることには,比較法的にも異論は ない。すなわち,瑕疵担保責任の特質は,債務者の不可抗力免責の主張が認め られないことにある。

では,なぜ瑕疵担保責任では,売主の不可抗力免責が認められないのか。こ の問題を考えることが,瑕疵担保責任の本質を明らかにすることとなる。

⑵ 従来の議論――法定責任説と債務不履行責任説

法定責任説の中にも,さまざまな見解が存在するが,その典型は,瑕疵担保 責任の適用領域が不代替的な特定物の売買に限られるとする見解(末弘・柚 木・下森)である。この見解によれば,不特定物(および代替的な特定物)の売 買においては,売主は完全な物を給付すべき債務を負い,給付した物に少しで も瑕疵があれば,買主は売主に対して債務不履行責任(不完全履行)を追及す ることができる。しかし,不代替的特定物の売買において目的物に隠れた瑕疵 がある場合には,債務の履行が部分的に不可能(原始的一部不能)であり,売 主は,瑕疵のない完全な物を給付する義務を負わない。それゆえ,売主が契約 で定められた物を給付すれば,債務の履行は完了し,債務不履行の問題を生じ る余地はない。しかしそうすると,買主は,売買代金に見合うだけの品質を有 した物の給付を受けられないことになる。そこで民法 570 条は,売買の有償性 に鑑み,瑕疵を知らなかった買主の利益を保護するために,法が特に認めた責 任であるとする。この見解は,要するに,原始的一部不能論と「瑕疵ある特定

(4)

物の履行は瑕疵なき履行である」との特定物のドグマを前提とするものである。

しかし,特定物のドグマに対しては,債務不履行責任説(五十嵐・北川・星 野)からの批判が妥当する。もっとも,その視点は,論者によって異なる。す なわち,五十嵐清は,アメリカ統一商法典とハーグの国際動産売買統一法を引 き,瑕疵担保責任を債務不履行責任に一元化することが国際的動向の主流であ るとして,両責任が「無関係な事柄」ではないことを明らかにした1)。また,

北川善太郎は,特定物のドグマを確立したドイツの学説(ショルマイヤー

〔Shollmeyer〕の見解)が,なおドイツでは「通説的地位をしめている」としつ つ,他の見解を引いて,それが「絶対的な論理的命題」ではないことを示し た2)。そして,星野英一は,「解除されてしまうような物を渡せば法律的には 売主の義務を果したことになる」という特定物のドグマが,「常識的には理解 し難い」3)とし,瑕疵担保責任を債務不履行責任として構成した。

ただし,現行民法の解釈論としての債務不履行責任説の問題点は,五十嵐自 らが認めていた。すなわち,「大陸法に従い債務不履行につき過失主義を採用 している」日本民法が,「無過失主義をとる瑕疵担保とは両立しない」という ことである。そして,この問題について五十嵐は,「瑕疵担保の場合の無過失 損害賠償責任は維持されるべきである」から,「むしろ,債務不履行における 過失主義の原則を問題とすることによって,解決の道を見出すべき」であると する4)。この指摘は,今日の立法提案を見越した卓見ではあるが,解釈論とし ての債務不履行責任説の難しさを示すものである。

⑶ 明治・大正期の通説的見解(岡松・横田・曄道)

ところで,先の法定責任説が確立したのは,大正年に鳩山秀夫の見解が公 にされてから後(より具体的には,昭和年の末弘論文)のことであり,それ以 前の通説は,瑕疵担保責任を危険負担と解するものであった。その代表的な論 1) 五十嵐清「瑕疵担保と比較法」同『比較民法学の諸問題』(一粒社,1976 年)87 頁以

下。

2) 北川善太郎『契約責任の研究』(有斐閣,1963 年)177 頁。

3) 星野英一「瑕疵担保の研究――日本」比較法研究 23 号 35 頁(1963 年)。

4) 五十嵐・前掲注 1)108 頁。

(5)

者は岡松参太郎であり,岡松は,①『註釈民法理由』(明治 30 年)および②

『無過失損害賠償責任論』(大正年)において,一貫して次のように主張した。

すなわち,瑕疵担保責任は売主の無過失責任であって,その「唯一又ハ主要ナ ル」根拠は,「危険支配ニ基ク危険負担」であるとする。

もっとも,岡松は,②では,当時のドイツ法学説の影響を受け,特定物のド グマを認めて,瑕疵担保責任は不特定物の売買には適用されないと主張した。

しかし,①では,瑕疵担保責任の不特定物の売買への適用を認めるものの,特 定物については契約時に,また,不特定物は特定の時(401 条項)に買主に 危険が移転するため,その時までに存在した瑕疵について売主が担保責任を負 うとした。

このような見解は,瑕疵担保責任の母法であるフランス法の,当時における 見解と一致し,実際に,岡松が①において主に参照したのも,フランスの註釈 学派の見解であった。そして,この岡松の見解を踏襲したのが,横田秀雄と曄 道文藝である。すなわち,横田も,瑕疵担保責任と危険負担との関係を論じて,

目的物の危険が買主に移転する前に生じた瑕疵に関しては売主が無過失責任を 負い,その後の瑕疵については,売主は過失がなければ責任を負わないとする。

ただし,不特定物の売買において目的物が特定し,その危険も移転するのは,

民法 401 条項の場合に加えて,当事者が「目的物ノ協定」(合意)をした時 であるとした5)。さらに,曄道は,売主が瑕疵のある物を一方的に提供しても 目的物が特定することはなく,「常ニ当事者ノ合意」がないと,危険は買主に 移転しないとした6)

以上の明治・大正期における通説的見解をまとめると,次の点となる。

第に,瑕疵担保責任は売主の無過失責任であり,その根拠は危険負担に求 められる。

第に,特定物の売買においては契約締結の時を,また,不特定物の売買の 場合には,目的物の特定の時(401 条項)を基準として,その時に売主から

5) 横田秀雄『債権各論』(清水書店,1912 年)344-345 頁。

6) 曄道文藝「売買ノ瑕疵担保ヲ論ス」京都法学会雑誌巻号 93-94 頁(1910 年)。

(6)

買主に危険が移転し,それ以前に生じた瑕疵については,売主が危険(無過失 責任)を負う(岡松・横田)。

ただし,第に,曄道は,瑕疵ある不特定物が民法 401 条項によっては特 定せず,その特定には常に当事者の合意が必要であるとした。

⑷ 鳩山による通説の否定

危険負担の法理による理解は,大正期に原始的不能論が導入され,特定物に おける瑕疵が原始的一部不能であるとの理解が一般的になると,その理論的な 基盤が動揺した。というのも,民法の危険負担(534 条以下)は,契約締結後 に債務者の責めに帰することのできない事由によって目的物が滅失・損傷した 場合,つまり後発的不能を規律するものであり,原始的不能を規律するもので はないからである。

この点を意識的に論じたのが,鳩山であった。すなわち,鳩山は,瑕疵担保 責任が売買契約締結以前の特定物の瑕疵について適用される制度であり,「売 買当時瑕疵ナク,爾後瑕疵ヲ生ジタル場合」には,瑕疵が債務者の責めに帰す べき事由に基づかなければ,危険負担(534 条)の問題となるとした7)。つま り,危険負担は,後発的不能の場合にのみ問題となり,原始的一部不能に関す る規律である瑕疵担保責任とは無関係な制度である,ということになる。

ところで,瑕疵担保責任が危険負担と異なる制度であるとすれば,その無過 失責任の根拠を,別の点に求めざるをえなくなる。そこで,鳩山が強調したの は,瑕疵担保責任が,有償契約である売買を保護するための特別な無過失責任 であるという点であった。すなわち,鳩山は,瑕疵担保責任を,「取引上ノ信 用ヲ保護シ」動的安全を保護するための,過失責任主義に対する「例外」であ るとした8)。しかし,その見解は,瑕疵担保責任が無過失責任であることを理 論的に基礎づけるものではなく,なぜ無過失責任を採用するかという立法政策 の問題にかかわるものであろう。

いずれにしても,大正年に鳩山の見解が公にされると,その影響力は大き 7) 鳩山秀夫『日本債権法各論 下』(岩波書店,1920 年)351-352 頁。

8) 鳩山・前掲注 7)322 頁。

(7)

く,瑕疵担保責任を危険負担であると解していた当時の通説的見解(岡松・横 田・曄道)は,この時期を境として徐々に勢力を失う。半面,鳩山の見解は,

末弘厳太郎や柚木馨,そして我妻栄らに支持されて,不動の通説となる。しか し,判例が岡松説に依拠したことは,日本私法学会の報告で取り上げ,以下で はフランスへと目を転じることとする。

フランス民法典の制定

(ポティエ)9)

⑴ 問題の所在

フランス民法典の第章「売買」の第節は,「売主の義務」と題し,その 主たる義務(obligations principales)として,売主が売却した物の引渡義務(第 款)と担保責任(第款)とのつを定めている(1603 条)。そして,売主に よって引き渡された物が契約で定められた品質または性能を有していない場合 には,買主は,①売主の引渡債務の不履行を理由とする解除訴権(1184 条)お よび損害賠償訴権(1147 条),または,②隠れた瑕疵に基づく瑕疵担保訴権

(1641 条以下)を行使することとなる。

問題となるのは,その区別である。というのも,引渡債務は,単なる物の物 理的な引渡しを意味するのではなく,物の性質が契約に適合するか否かをも問 題としうる概念であり,同じく物の適合性を保証する瑕疵担保責任と,その基 盤において共通するからである。そしてこの問題につき,フランス法は,「瑕 疵」の概念を限定することによってその解決を図ってきた。すなわち,瑕疵と は,物の変質や損傷などの客観的な欠陥を意味し,そのような欠陥はないが,

引き渡された物が合意された物と異なる場合と区別される。そして,②瑕疵担 保責任は,瑕疵に関する法制度であり,物が契約に適合しない場合は,①引渡 債務の不履行(または物の本質の錯誤)によって買主が救済され,①と②とは 明確に区別される(二元説),と解されてきた。

この二元説に対しては,両責任をその区別に従い,異なって扱うのは妥当で 9) 野澤正充「フランスにおける瑕疵担保責任の法理」同編『瑕疵担保責任と債務不履行

責任』(日本評論社,2009 年)85-91 頁参照。

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なく,いずれも債務不履行の一場合にほかならないとする見解(一元説ないし 機能説)が有力に展開されてきた(1960 年代以降)。この見解は,瑕疵担保責任 と債務不履行責任とを二元的に把握するのではなく,両者を共通の基盤である 目的物の「適合性」という観点から一元的に理解し,その区別を時的区分に求 める。すなわち,売買目的物の瑕疵が隠れたものか否かによって,「受領時を 基準とする『引渡債務』の不履行訴権と瑕疵担保訴権との『時的区分』を行 う」とした。

では,民法典はどのように考えていたのか。

⑵ ポティエの見解

フランス法の瑕疵担保責任について,民法典の制定およびその後の学説に大 きな影響を与えたとされるポティエ(Pothier)の著作においても,すでに,瑕 疵担保責任と危険負担の関係が論じられている。すなわち,ポティエは,瑕疵 担保責任の要件として,瑕疵が重大であること,契約の時に買主に知られてい ないこと,特約によって善意の売主の免責が認められていないことに加えて,

瑕疵が「契約の時に存在したこと」のつを挙げている。

このうち,最後の要件は,瑕疵が契約の時「以降に生じたのであれば,契約 によって物の危険は買主に移転しているので,売主は,もはやその責任を負わ ない」ことに基づく。そして,同著作に付されたビュネ(Bugnet)の脚注では,

1838 年月 20 日 の法律第条が参照されている。すなわち,同条は,「売主 は,馬,ロバ,ラマの鼻疽と皮疽,および,羊類の羊痘から生じた担保責任に ついては,その動物が引渡しの後に,これらの病気にかかった動物と接触した ことを証明すれば免責される」と規定する。この規定は,物の引渡しを基準と して,買主への危険の移転を認めるため,契約時を基準とするポティエの見解 とは異なる。しかし,いずれも,一定の時期に買主に危険が移転し,それ以前 の瑕疵については売主が担保責任を負い,その後に生じた瑕疵については買主 が危険を負う,と解している点では共通する。

ところで,ポティエは,この要件に続けて,瑕疵担保責任の範囲について次 のように述べている。すなわち,「売主が解除原因となる瑕疵を知らない場合

(9)

と,それを知っていた場合とを区別しなければならない」とする。

① 売主が善意の場合には,「担保責任は通常は売却された物に対してしか 及ばず」,売主は,買主が支払った代金を返還する義務を負うが,その瑕疵に よって買主の他の財産に生じた損害を賠償する義務はない。

② 売主が悪意の場合には,「買主に知らせなかった瑕疵から生じたすべて の損害の賠償」をしなければならない。なぜなら,「このような売主による事 実の隠蔽(réticence)は,買主に対する詐欺(dol)」であり,売主は,それに よって生じたすべての損害を賠償しなければならないからである。

また,売主が瑕疵の存在を明確に知らなかったとしても,「その瑕疵を疑う べき正当な理由がありながら,そのことを買主に何も告げなかった場合」には,

「売主は悪意とみなされる」。

さらに,売主が瑕疵を全く知らなかったとしても,売主がその物を売ること を職業とする商人であるときは,瑕疵によって買主に生じたすべての損害を賠 償しなければならない。そして,ポティエは,職業的な売主を除くと,「解除 原因となる瑕疵を知らず,かつ,瑕疵を疑うことさえしなかった売主は,買主 に対して,代金を返還する以上の義務を負わず,買主はその物を売主に返し,

たとえ瑕疵が買主の他の財産に損害を引き起こしたとしても,売主がその賠償 義務を負うことはない」と結論する。

結局,ポティエによれば,売主が瑕疵の存在を知りまたは知ることができた 場合,および,売主に重い注意義務が課されている場合(職業的な売主)には,

売主が瑕疵から生じたすべての損害を買主に対して賠償しなければならないが,

売主が瑕疵を知ることができなかったとしても,売主は瑕疵担保責任を負わざ るをえない。ただし,このような善意の売主の損害賠償の範囲は,代金の返還 に限られることとなる。そうだとすれば,瑕疵担保責任は,基本的には売主の 無過失責任であり,売主に過失がある場合にのみ,その損害賠償の範囲が瑕疵 から生じたすべての損害に及ぶ,と解される。

⑶ 民法典の規定

ポティエの見解は,カンバセレス(Cambacérès)およびポルタリス(Porta-

(10)

lis)の各草案に「再現」され,制定過程においてはさしたる議論もなく,民法 典に以下のように規定された。

1641条[瑕疵担保責任] 売主は,売却された目的物が予定した用途に 適さないような,又は買主がそれを知っていた場合には取得しなかったか,

より低い価格しか与えなかったであろうほどにその用途を減ずるような隠 れた欠陥を理由として,担保責任を負う。

1642条[明白な瑕疵の不担保] 売主は,買主が自ら確認することがで きた明白な瑕疵については,担保責任の義務を負わない。

1643条[善意の売主の担保責任] 売主は,隠れた瑕疵を知らなかった ときでも,それについて担保責任を負う。ただし,この場合において,売 主が何ら担保責任の義務を負わない旨を約定していたときは,その限りで ない。

1644条[買主の選択権] 1641 条及び 1643 条の場合には,買主は,物 を返還し,その代金を返還させるか,又は物を保持し,鑑定人によって裁 定される代金の一部を返還させるかの選択権を有する。

1645条[悪意の売主の担保責任の範囲] 売主は,物の瑕疵を知ってい た場合には,売主が受領した代金の返還のほかに,買主に対してすべての 損害賠償の義務を負う。

1646条[善意の売主の場合] 売主は,物の瑕疵を知らなかった場合に は,代金の返還及び売買によって生じた費用の取得者への償還についての み義務を負う。

1647条[滅失の場合の瑕疵担保責任] ① 瑕疵を有した物が,その劣 悪な質の結果として滅失した場合には,その滅失は,売主の負担に帰す。

売主は,買主に対して,代金の返還及び前条において言及されたその他 の損害賠償について義務を負う。

② ただし,偶発的な事態によって生じた滅失は,買主の負担に帰す。

1648条[出訴期間の制限] 解除の原因となるべき瑕疵に基づく訴えは,

(11)

取得者によって,瑕疵の発見から年以内に行使されなければならない。

1649条[競売についての特則] 瑕疵に基づく訴えは,裁判所が行う売 却においては認められない。

民法典の規定によれば,売主は,瑕疵について善意であっても担保責任を負 う(1643 条)が,その場合には,買主は,契約を解除するか,または代金の減 額を請求することとなる(1644 条)。そして,買主が契約を解除した場合には,

売主に対して,代金の返還と「売買によって生じた費用」のみを請求すること ができる(1646 条)。これに対して,瑕疵について悪意の売主は,「受領した代 金の返還のほかに,買主に対してすべての損害賠償の義務を負う」こととなる

(1645 条)。このように売主の善意と悪意とを区別し,善意の場合にはその損害 賠償の範囲を制限する(代金減額または解除のときにおける「売買によって生じた 費用」の償還)ことは,ほぼポティエの見解に従うものである。

やや問題となるのは,危険負担との関係である。この点を規定しているのは,

1647 条であり,その当初の政府草案は,次のようであった。

68条 物が偶発的な事態により又はその劣悪な質の結果として滅失し た場合には,その滅失は,売主の負担に帰す。売主は,買主に対して,代 金の返還及び前条において言及されたその他の損害賠償について義務を 負う。

草案と現行民法典 1647 条との違いは,草案によれば,売買の目的物が「偶 発的な事態」によって滅失した場合にも,瑕疵による滅失と同様に,「売主の 負担」となることである。そして,同草案に対する批判も,この点に集中した。

すなわち,この政府草案は,国務院における審議に付される前に,破毀裁判所 と全国の控訴裁判所に送付され,実務的な観点からの意見が徴収された。その 際に,68 条について,リモージュ控訴裁判所は次のように述べている。

「売却された物の滅失であっても,偶発的な事態による場合と,売買契約

(12)

の時に存在した劣悪な質による場合とでは,全く異なる。後者〔瑕疵〕の場 合には,滅失は,その物の欠陥を知りながら売却した売主に帰責されなけれ ばならず,売主が負担する。しかし,偶発的な事態による物の滅失は,常に その所有者が〔危険を〕負担しなければならない。物の所有者が危険を負担 する(Res sua domino perit)〔という原則である〕。したがって,売買によって その所有権を奪われた売主が〔偶発的な事態による〕滅失の危険を負担する という〔規定案〕は,唐突であるように思われる」。

この意見は,売買契約時の瑕疵による物の滅失は売主の負担となるが,そ の後における偶発的な事態による滅失は,すでに物の所有権とともに危険が 買主に移転しているため,買主の負担とすべきであるとする。そして,同様 の意見が,カーンとコルマールの両控訴裁判所からも寄せられた。そこで,

起草委員は,草案 68 条を修正し,「ただし,偶発的な事態によって生じた滅 失は,買主の負担に帰す」との第項を規定した(草案 66 条(23))。この修 正草案 66 条が,現行民法典 1647 条である。

⑷ 小 括

以上の検討からは,フランス民法典が,瑕疵担保責任について,次のよう に解していたことが明らかとなる。

第に,瑕疵担保責任は,売主の無過失責任であり,たとえ売主が瑕疵の 存在を全く知らなかったとしても,買主は,売主に対し,契約を解除して代 金の返還(および売買によって生じた費用)を請求するか,または代金の減額 を請求することができる(ポティエ,1643・1644・1646 条)。

第に,売主が瑕疵について悪意であるか,またはそれを知らないことに 過失がある場合には,買主は,売主に対して,瑕疵によって生じたすべての 損害の賠償を請求することができる(ポティエ,1645 条)。

第に,瑕疵担保責任は,危険負担の法理に基づく制度であり,瑕疵が売 買契約の締結までに存在していれば,所有者が危険を負担するため,瑕疵に よって生じた損害は売主の負担となる。しかし,瑕疵が売買契約の後に生じ たのであれば,売買によって物の所有権とともに危険も買主に移転している

(13)

ので,売主は,瑕疵担保責任を負わない(ポティエ,1647 条項)。したがっ て,偶発的な事態による物の滅失も,買主の負担に帰すこととなる(同 項)。

ところで,ポティエの見解は,特定物と不特定物とを区別せず,売買契約 の時に瑕疵が存在したときは,売主が瑕疵担保責任を負うと解していた。し かし,これは,ポティエ(1699〜1772 年)の活躍した当時における売買が,

主に特定物を対象としたことによるものであり,ポティエ自身も特定物の売 買を念頭に置いていたことがうかがわれる。しかし,産業革命と資本主義の 進展によって不特定物の売買が頻繁に行われると,瑕疵担保責任に関する体 系書の記述も,その点を意識したものとなる。その間の事情を示すのが,註 釈学派の見解である。

二元説と一元説

10)

⑴ 註釈学派の見解

19 世紀の半ばから後半にフランスの法学界を支配した註釈学派は,その

「生成期」(1804〜1830 年)を除くと,次のつの時期に分けることができる。

すなわち,資本主義の最初の発展期において,法律家が「新しい状況に法典を 適応」させようとした「最盛期」(1830〜1880 年)と,資本主義が飛躍的に発 展し,資本の集中や工業生産の大規模化など,新しい経済社会の中で,註釈学 派の論理主義が「激しく動揺」した「衰退期」(1880〜1900 年)である。そこ でここでは,最盛期と衰退期の各期を代表する見解を紹介する。

まず,最盛期に詳細な体系書を著したローラン(Laurent)は,ポティエの 見解に従い,「瑕疵が契約時に存在したこと」を要件とする。その理由は,「売 買契約が完全であるから,物は買主の危険となる」ことによる。また,ローラ ンとほぼ同時期に活躍したオーブリー(Aubry)= ロー(Rau)も,「すでに契 約時に存在した瑕疵についてしか,売主は責任を負わない」とする。そしてこ

10) 野澤・前掲注 9)91-95 頁参照。

(14)

の見解が,明治期のわが国に,岡松参太郎によって紹介されている。

しかし,その見解はいずれも,特定物の売買に関するものであり,その後の フランスにおける学説は,一般に,不特定物の売買(vente de choses in genre)

においては,特定(individualisation)の時に目的物の所有権が売主から買主に 移転し,それに伴って危険も買主に移転すると解していた。例えば,衰退期を 代表するボードリー・ラカンティヌリー(Baudry-Lacantinerie)= セニャ(Sai- gnat)は,次のように述べている。

「買主が売主に対して担保責任を追及するためには,隠れた瑕疵は,どの 時点で存在しなければならないであろうか?

一般的には,解除原因となる瑕疵(vice rédhibitoire)であるためには,隠 れた欠陥が売買契約の時に存在したことが必要であり,買主は,解除訴権を 行使する時に瑕疵の存在を立証するだけでは十分ではない。

このことは,売買の目的物が特定されている場合には,適切である。とい うのも,売買の時から,危険は買主が負担し,買主は,売買契約時以降に目 的物に生じた欠陥の結果を売主に負わせることはできないからである。それ ゆえ,買主は,買った当時に瑕疵が存在していたことを立証しなければなら ない。

しかし,この解決は,不特定物の売買には適用されない。売買をした時点 では,売主は,その目的物を有していなかったであろうし,買主もそれを検 査することはできなかったからである。では,解除原因となる瑕疵であるた めには,どの時点で,隠れた瑕疵が存在しなければならないのであろうか?

引渡し(livraison)の時である。なぜなら,引渡しの時に,売買の目的物が 特定され,かつ,その所有権も買主に移転するからである。危険が売主に帰 せしめられるのをやめ,買主が引き渡される物を検査するのも,まさにこの

(引渡しの)時である。それゆえ,売主は,その目的物について生じたあら ゆる欠陥について,たとえその欠陥が売買契約以降に生じたものであっても,

責任を負うこととなる。すなわち,その欠陥が明白であった場合には,買主 は引渡しを拒むことができ,欠陥が隠れている場合には,買主は,引き渡さ

(15)

れた後に,解除訴権を行使することができる」。

以上のように註釈学派は,19 世紀後半には,不特定物の売買をも考慮する。

そして,瑕疵担保責任は,特定物と不特定物とを問わずに適用されるが,それ が債務不履行責任とは異なる,危険負担の法理に基づくものであることを明ら かにしている。

⑵ 国際的動向――国際動産売買統一法 1950 年代における統一法

以上ように,フランスでは,伝統的には,瑕疵担保責任と債務不履行責任と は区別され,二元的に理解されてきた。しかし,20 世紀の半ばから後半にか けて,瑕疵も「契約の適合性の欠如(欠缺)」の一場合であるとし,瑕疵担保 責任を債務不履行責任の中に位置づける一元説が有力となる。その契機となっ たのが,1952 年のアメリカ合衆国統一商法典と 1964 年に条約として成立した ハーグ国際動産売買統一法であり,「いずれにおいても,瑕疵担保という名称 が姿を消し,それに相当する制度は債務不履行の一環として規定」されてい る11)。以下では,統一商法典を簡単に紹介し,ハーグ条約をより詳しく取り 上げる。

アメリカ合衆国統一商法典(1952 年)

⒤ 沿 革

アメリカ合衆国においては,各州がそれぞれ独自の商事法を形成していた。

そのため,商事法の不統一が,各州間の商取引を阻害することとなり,19 世 紀の末頃から,その統一が図られてきた。そして,統一商法典の制定は,1940 年代以降に本格化し,1952 年に採択されるに至った。

統一商法典の中の「売買」(第編)に関する規定は,1906 年に制定された 統一売買法(Uniform Sales Act)を修正したものである。すなわち,この統一 売買法は,1894 年のイギリス動産売買法(Sale of Goods Act of 1893)にならっ たものであるため,瑕疵担保責任も,イギリス法におけると同じく,ワランテ

11) 五十嵐・前掲注 1)83 頁。

(16)

ィ(warranty =保証)条項に対する違反として構成されていた。しかし,統一 商法典は,ワランティの要件については特別の規定(2 - 312 条以下)を残した ものの,その違反の効果は,不適切な引渡し(Improper Delivery)に対する買 主の権利の問題として,「契約違反,拒絶及び免責」(Breach, repudiation and excuse)の章(第章)に規定した。かくして,統一商法典においては,ワラ ンティと瑕疵担保責任および債務不履行責任の区別は,「完全に消滅した」と される。

瑕疵担保責任に関連する規定――要件

統一商法典は,イギリス法に従って,売買の目的物の品質,性能または適合 性については,売主が保証(ワランティ)しない限り,売主が責任を負わない との前提に立つ(「買主をして注意せしめよ」〔caveat emptor〕の原則)。そして,

売主によるワランティは,明示による場合(express warranty = 2 - 313 条)と 黙示による場合(implied warranty = 2 - 314,315 条)があることを規定する。

2-313条 確言,約束,説明,見本による明示のワランティ

⑴ 売主による明示のワランティは,次のようにして生じる。

⒜ 売主が買主に対してなした事実の確言または約束であって,その 物品に関連するものであり,かつ,取引の基礎の一部をなすものは,そ の物品が確言または約束に合致する旨の明示のワランティを生ぜしめる。

⒝ 物品についての説明で取引の基礎の一部をなすものは,その物品 がその説明に合致する旨の明示のワランティを生ぜしめる。

⒞ 見本(サンプルまたはモデル)で取引の基礎の一部をなすものは,

その物品の全体がその見本(サンプルまたはモデル)に合致する旨の明 示のワランティを生ぜしめる。

⑵ 明示のワランティの発生には,売主が「担保する(warrant)」もし くは「保証する(guarantee)」といった形式的文言を使用することも,ま た売主がワランティをする特別の意思を有していることも必要でない。し かし,物品の価値のみについての確言または物品についての売主の意見も

(17)

しくは推奨にすぎないような表示は,ワランティを生ぜしめない。

2-314条 黙示のワランティ・商品性・取引の慣行

⑴ 物品に商品性があるというワランティは,売主がその種類の物品に 関する商人であるときは,その売買契約中に黙示に包含されているものと する。ただし,当該ワランティが排除または変更される場合(2 - 316 条)

を除く。本条においては,飲食物の有償サービスは,消費される場所のい かんを問わず,売買とする。

⑵ 物品に商品性があるというためには,少なくとも,次の要件を満た していなければならない。

⒜ 契約上の説明に合うものとして取引上異議なく通用するものであ ること。

⒝ 代替性のある物品の場合には,説明の範囲内で公正にみて平均的 品質といえるものであること。

⒞ そのような物品が使用される通常の目的に適するものであること。

⒟ 契約に含まれている各単位内でも,各単位を比較しても,合意に よって許容されている偏差の範囲内で,均一の種類,品質および数量の ものであること。

⒠ 合意上の要求に充分に合致する内容,包装および内容表示がある こと,かつ,

⒡ 容器または内容表示に示されている約束または事実の確言がある ときは,それに合致すること。

⑶ その他の黙示のワランティが,商談の経過または取引慣行から生ず ることもある。ただし,当該ワランティが排除または変更される場合を除 く。

2-315条 黙示のワランティ・特定の目的に適合していること。

契約締結当時において,その物品が求められている特定の目的を売主が 知るべかりし場合であって,かつ,買主が適切な物品を選択し,または供 給するについて売主の技能もしくは判断に信頼していることを売主が知る

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べかりし場合には,次条(ワランティの排除または変更――筆者注)によっ て排除または変更されないかぎり,その物品は,そのような目的に適合す るものであるという黙示のワランティがある。

このほか,ワランティには,所有権(Title)が完全に譲渡され,その移転が 適法であり,いかなる担保権や負担を伴うことなく買主に引き渡されることを 担保する旨のものがある(2 - 312 条)。このワランティも黙示のものであり,

日本民法の追奪担保責任(561 条)や制限物権・抵当権等がある場合における 売主の担保責任(566・567 条)に相当しよう。

ところで,日本民法の瑕疵担保責任(570 条)に相当するのは,「瑕疵」の定 義によるものの,黙示のワランティ(2 - 314 条⑵⒞)である。しかし,そのワ ランティ違反の効果は,統一商法典においては,特別なものではなく,一般の 契約違反(債務不履行)と同じである。

国際動産売買統一法草案(1956 年)

沿 革

私法の国際的統一のための組織として 1926 年に設立された私法統一国際協 会(UNIDROIT =ユニドロワ)は,その最初の仕事として,動産売買法の統一 を計画し,その任務を,当時ミュンヘン大学の教授であったエルンスト・ラー ベル(Ernst Rabel)に委ねた。この協会において,ラーベルは,ヨーロッパ各 国の研究者と共同で作業をし,「国際間の動産売買のみに関する統一法が可能 であり,また必要であるという立場」から,1935 年に「売買に関する国際的 法律草案」を作成した。その後,1939 年に「有体動産の国際売買についての 統一法草案」(第草案)が作成され,さらに 1956 年に第次草案が成立し,

この 56 年草案が修正されて,1964 年 4 月,ハーグにおいて,「有体動産の国 際売買についての統一法」(以下,「国際動産売買統一法」)が条約として成立し た。

ところで,この条約を作成するための資料となったのが,ラーベルによる

『商品売買法』(Das Recht des Warenkaufs)であり,その第部「瑕疵担保責任

(19)

および類似の理論」では,「瑕疵担保の特殊性がことごとく否定され,債務不 履行責任として捉えられるべきことが主張されている」。そして,国際動産売 買統一法においても,このラーベルの主張に従い,39 年草案には存在した

「物の瑕疵による担保」という名称が,56 年草案では姿を消し,「瑕疵担保に 相当する事項を『物の適合性(conformité)に関する売主の義務』の一場合と して」規定している。

この 56 年草案が五十嵐によって紹介され,わが国の瑕疵担保責任の債務不 履行責任説の支柱となった重要なものである。そこで,以下では,国際動産売 買統一法の瑕疵担保責任に関する規定を概観する。

瑕疵担保責任に関連する規定――要件

(α) 引渡しと「適合性の欠如」(défaut de conformité)

国際動産売買統一法では,引渡しとは,「契約に適合する物品を交付するこ とをいう」と定義され(19 条項),瑕疵のある物品,すなわち,契約に適合 しない物品が交付された場合には,売主の引渡義務が履行されたことにはなら ない(33 条)。

33条 一 次のような物品の交付がなされた場合には,売主は物品の 引渡しに関する義務を履行したことにはならない。

⒜ 売却物品の一部分のみ,または売却すべく契約された物品の超過 量または不足量。

⒝ 契約に定めたものでない物品または異なった種類の物品。

⒞ 売主が買主に交付もしくは送付した見本またはモデルの有する品 質を欠く物品。ただし,物品がそれに適合しているという明示または黙 示の保証なしに売主がそれを提供した場合は,この限りでない。

⒟ 通常のもしくは商業上の使用に必要な品質を有しない物品。

⒠ 契約により,明示的もしくは黙示的に期待されている特定の目的 のための品質を有していない物品。

⒡ 一般的に,契約により明示的もしくは黙示的に期待されている品

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質もしくは特性を有していない物品。

二 数量的差異,物品の部分的不足,または品質もしくは特性の欠如は,

それが重要なものでない場合には,考慮されるべきではない。

アメリカ統一商法典では,ワランティの要件についてはなお,特別の規定が 存在した。しかし,国際動産売買統一法では,明示または黙示のワランティも,

すべて契約の「適合性の欠如(欠缺)」の一場合とされ(33 条項⒡),引渡債 務の不履行責任に解消されている。そして,権利の瑕疵についても同様の規定 が置かれ(52 条),「『統一法』における契約責任の構造は簡明」である。

なお,契約締結時に,買主が適合性の欠如を知り,または知ることができた 場合には,売主は,33 条項⒟,⒠,⒡に規定する適合性の欠如については,

責めを負わない(36 条)。 (β) 危険負担との関係

国際動産売買統一法では,「物品が契約に適合しているかどうかは,危険が 移転する時点における物品の状態により決定される」(35 条項)。ただし,適 合性の欠如が,売主の行為によって生じたときは,「危険が移転する時点」以 後に生じた「一切の適合性の欠如の結果につき責めに任ずる」とする(同 項)。いずれにしても,物品が契約に適合しているか否かは,売主から買主に

「危険が移転する時点」が基準とされている。

では,「危険が移転する時点」はいつか。国際動産売買統一法 97 条項によ れば,「危険は,物品の引渡し(delivery)が,契約および本法の条項に従って なされる時に買主に移転する」とされる。つまり,危険は,物の引渡しによっ て買主に移転される。ただし,その物が契約に適合していない場合には,危険 は,「交付(handing over)がなされた時から買主に移転する」とされる(97 条 項)。これは,売主が契約に適合しない物品を提供しても,「引渡し」となら ないため,「交付」の時から危険が買主に移転するとしたのである。

このように,国際動産売買統一法では,契約の不適合(瑕疵)と危険負担と を相関させ,売主は,危険が買主に移転する前,すなわち,物を買主に「交

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付」する前の契約の不適合につき責任を負う旨を定めている。

(γ) 買主による検査・通知

適合性の欠如に関して,国際動産売買統一法は,買主に検査を要求し,売主 に対する通知義務を課す。すなわち,買主が物品の交付を受けたら,「買主は すみやかに物品を検査し,または検査させなければならない」(38 条項)と し,適合性の欠如を発見したときは,売主に対して通知しなければならないと する(39 条項)。

39条 一 買主は,適合性の欠如を発見した時,または発見すべかり し時の後すみやかにそれについての通知を売主に対して与えないときには,

物品の適合性の欠如を援用する権利を失う。第 38 条に規定する物品の検 査により,明らかにされえなかった瑕疵が,後日発見された場合において,

買主がその発見後すみやかに,瑕疵についての通知を売主に対して与えた ときは,買主は,なおその瑕疵を援用することができる。いかなる場合に も,物品が交付された日から 2 年以内に,売主に対してそれについての通 知が与えられないときには,買主は,物品の適合性の欠如を援用する権利 を失う。ただし,適合性の欠如がより長期にわたる保証の違反(breach of a guarantee)となる場合は,この限りでない。

二 適合性の欠如について売主に通知を与える場合には,買主は,その 性質を明示し,かつ,売主に物品の検査をし,もしくは,その代理人によ る検査をなさしめるよう求めなければならない。

三 本条第一項に規定する通知が,文書,電報,その他適当な手段によ って送付された場合において,その通知が,目的地に到達しないか遅延し て到達したことは,それを援用する買主の権利を奪うものではない。

ただし,売主は,適合性の欠如を知り,または知ることができたにもか かわらず,その事実を買主に告げなかった場合には,38 条および 39 条は 適用されない(40 条)。

(22)

瑕疵担保責任に関連する規定――効果 (α) つの救済方法

物品が契約に適合しない場合には,買主は,売主に対して,①履行の請求,

②契約の解除,③代金減額,および,④損害賠償を求めることができる(41 条)。

41条 一 買主が,物品の契約への不適合につき売主に正当に通知し ているときは,買主は,第 42 条ないし第 46 条に定めるところに従い,次 のことをすることができる。

⒜ 売主による契約の履行を請求すること。

⒝ 契約を解除すること。

⒞ 代金を減額すること。

二 買主はまた,第 82 条または第 84 条ないし第 87 条に定めるところ に従い,損害賠償を請求することもできる。

(β) 履行の請求

履行の請求との関連では,買主の売主に対する瑕疵修補請求権や代物請求権 が認められている(42 条)。

42条 一 買主は,次の各場合には,売主に契約の履行を請求するこ とができる。

⒜ 売買が,売主により製造もしくは生産されるべき物品に関する場 合には,売主が瑕疵を修補すべき地位にあるならば,物品の瑕疵を修補 することによる。

⒝ 売買が特定物に関する場合には,契約に表示されている物品また は,その欠けている部分の引渡しによる。

⒞ 売買が不特定物に関する場合には,代品買入れが慣行に適合して おり,かつ,合理的に可能な場合を除き,契約に適合している他の物品

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の引渡しまたは欠けている部分ないし量の引渡しによる。

二 買主が,合理的期間内に売主による契約の履行を得ない場合には,

買主は,第 43 条ないし第 46 条に定める権利を有する。

(γ) 契約の解除

契約の解除は,重大な契約違反(fundamental breaches of the contract)があ る場合にのみ,認められる(43 条)。

43条 買主は,物品の契約不適合および確定期日における引渡しの懈 怠が,重大な契約違反であるときは,契約を解除することができる。買主 は,適合性の欠如について売主に通知した後,または第 42 条第項が適 用される場合に,同項に規定する期間の経過後,すみやかに行使しない限 り,契約を解除する権利を失う。

なお,債務者が契約違反に対する免責事由を有する場合にも,債権者は,解 除権,および,次の代金減額請求権を行使することができる(74 条項)こと には注意を要する。

(δ) 代 金 減 額

代金の減額については,次の 46 条が規定する。

46条 買主は,売主による契約の履行を得ないか,または契約を解除 しない場合には,契約締結時における物品の価値が契約への適合性の欠如 のゆえに減縮されたと同一の割合において,代金を減額することができる。

この代金の減額についても,通常の損害賠償におけると異なり,債務者の免 責は認められない(74 条項)。

(ε) 損 害 賠 償

国際動産売買統一法は,ドイツ民法やコモン・ローにおけるとは異なり,契

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約の解除と損害賠償の重畳的な請求を認めている。すなわち,損害賠償の算定 については,契約が解除された場合(84 - 87 条)と解除されない場合(82 - 83 条)とで区別し,それぞれに明確な規定を定めている。

また,「損害賠償に関する一般的条項」として,次の損害軽減義務が定めら れている。

88条 契約違反を主張する当事者は,違反から生ずる損失を軽減する ため,一切の合理的な手段をとらなければならない。その者が,そのよう な手段をとることを怠った場合には,違反当事者は,損害賠償額の減額を 請求することができる。

(ζ) 免 責

国際動産売買統一法によれば,契約違反をした当事者は,次の規定(74 条 項)により免責される。ただし,その場合においても,前述のように,買主が 代金減額を請求することは可能であり,また,契約違反が重大であるときは,

契約の解除も認められる(同項)。

74条 一 一方の当事者が,その義務の一を履行しなかった場合にお いて,契約締結時における両当事者の意思によれば,その不履行がその当 事者が考慮に入れ,回避し,または克服すべき義務を負わない状況によっ て生じたものであることをその当事者において証明しえたときは,その当 事者は,そのような不履行について責めに任じない。当事者の意思表示が なされていない場合においては,同一の状態において,合理的な人ならば どのように意図したであろうかということが考慮されなければならない。

二 (省略)

三 当事者の一方のための本条に定めた免責は,免責を正当づけた状況 が,相手方当事者またはその者が責めに任ずべき者の行為により生じたの でない限り,本法その他の規定に基づく契約の解除を排除するものではな

(25)

く,また,本法に基づいて有する(代金)減額請求の権利を相手方当事者 から奪うものでもない。

この規定によれば,売主が瑕疵のある物を買主に「交付」した場合には,次 のようになる。すなわち,売主の代金支払請求に対して,買主は,物品の適合 性の欠如を理由に,それが重大な契約違反であれば,契約を解除して,代金債 務不存在の抗弁を提出しうる。これに対して,売主が免責(74 条項)を再抗 弁としても,契約解除の効果は残るため(74 条項),売主の請求は棄却され る。また,買主が契約を解除しないで,代金減額請求をすれば,売主の請求は 一部認容となろう。

このように,国際動産売買統一法においては,契約の解除と代金減額請求権 については,免責が認められない。

小 括

以上のハーグ国際動産売買統一法は,国際間の動産売買に関して,大陸法と 英米法との調和を試みた,「現代比較法の成果と称しうる」ものである。その 最も顕著な点は,「瑕疵担保責任の取扱い」にある。すなわち,国際動産売買 統一法では,瑕疵担保責任は,「物品の適合性に関する売主の義務」(第章第 節第款)の中で,数量の過不足,異種物の給付,明示または黙示の保証違 反と並べて規定され(33 条),債務不履行責任に解消されている。

また,国際動産売買統一法では,解除の要件として,英米法上の制度である

「重大な契約違反」(fundamental breach of contract)を要求し,かつ,損害賠償 の要件としても,大陸法におけるような,債務者の責めに帰すべき事由(過 失)を必要としないことも注目に値しよう。ただし,不可抗力による免責は認 められる(74 条項)が,代金減額と解除には免責が認められない。

ま と め

イギリス法(イングランド法)においては,「買主をして注意せしめよ」の原 則により,売買の目的物が買主の要求を満たすか否かは買主の問題であって,

売主は責任を負わないとされてきた。ただし,目的物に瑕疵があった場合には,

(26)

当該売買契約における売主による明示または黙示の保証(ワランティ)に違反 するとされ,「買主をして注意せしめよ」の原則が修正されている。それゆえ,

イギリス法では,瑕疵のある物を引き渡した売主の責任は,「すべて契約違反 の問題として処理され」,債務不履行責任となる。

このようなイギリス法に従うアメリカ統一商法典も,売買目的物の品質に関 しては,なお黙示のワランティの問題としていた。しかし,ワランティ違反の 効果に関しては,通常の契約違反と大きく異なる点はなく,「契約の不適合」

の一場合と解されていた。そして,ハーグの国際動産売買統一法では,要件の 点でもワランティの特殊性はほぼ完全に失われ,瑕疵担保責任は,債務不履行 責任へと解消されている。

ところで,国際動産売買統一法は,アメリカがこれに加入しなかった。その 背景には,「ほぼ時を同じくして統一商法典(UCC)の編纂」が行われたこと が指摘されている。しかも,社会主義国や発展途上国の多くも国際動産売買統 一法に加入せず,真に実効性のある国際売買統一法は,1980 年のウィーン売 買条約(国際物品売買契約に関する国際連合条約)を待たなければならなかった。

ただし,ウィーン売買条約は,ハーグの国際動産売買統一法を前身とし,その

「根幹」を「そのまま維持」している。

⑶ 一元説に対する評価

以上のような国際的動向を背景として,フランスでも一元説(債務不履行責 任説)が主張される。これに対して,当時のフランス民法学界を代表するプラ ニオル(Planiol)= リペール(Ripert)= アメル(Hamel)は,次のように述べて いる。なお,アメルは,ラーベルとともにハーグ条約の起草に携わり,国際的 動向を熟知している。それゆえ,その見解は,とりわけ重要である。

「瑕疵担保責任は,アメリカ商法の新しい傾向において認められた別の考 え方によれば,引渡しの一つの適用でしかない。すなわち,売主は,(買主 に)引き渡された物が,買主の予定していた用途に適合しないものとなるよ うな瑕疵を内包している場合には,その引渡債務を履行していないことにな る。

(27)

(しかし)そのような考え方は,フランス民法典の体系ではない。すなわ ち,民法典の起草者たちは,(引き渡された物に隠れた瑕疵がある場合に),民 法典が,特有な規定に服し,かつ,一定の特別な効果を生じる,特別な訴権 を用意するのが適切である,と考えたのである」。

そして,プラニオル = リペール = アメルは,「瑕疵担保責任が,債務の不履 行を理由とする解除訴権と容易に区別される」とする。すなわち,債務不履行 に基づく解除訴権は,「売主が約束した物を引き渡さないとき,つまり,売主 が物を引き渡す義務を負っているにもかかわらず,約束した物を引き渡さない ときに買主に認められるものである」。これに対して,「売主にいかなる義務の 不履行もなければ,瑕疵担保責任のみが援用されうる。つまり,売却された物 が隠れた瑕疵を内包しているが,売主が引き渡すことを約束した物はその物で 間違いない」という場合には,瑕疵担保責任の問題となるとする。この点は,

必ずしも明確ではないが,「特定物のドグマ」に基づくものであろう。

ところで,瑕疵担保責任と危険負担との関係については,瑕疵担保責任の要 件として,「瑕疵が所有権の移転より前」に存在したことが,「民法典に明文は ないが,不可欠」であるとする。すなわち,「売主は,買主が物の所有権を取 得した日より後の瑕疵については,担保責任を負うことはない」とし,その基 準時は,特定物の売買においては,「通常は売買の日である(1138 条参照)」と する。この民法典 1138 条は,物の引渡債務につき,引渡しがなされなくても,

合意の時から「直ちに債権者を所有者とし,その物を債権者の危険におく」

(同項)と規定する。そして,不特定物の売買においては,「所有権の移転は 特定(individualisation)の時である」とする。

以上のようなプラニオル = リペール = アメルの見解は,今日のフランスでも なお,多くの学説によって支持されている。

1980 年代以降の動向

12)

⑴ 判例の転回――第ラウンド

二元説に対して,1980 年代になると一元説が次第に有力となる。その原動

(28)

力は,ウィーン売買条約などの国際的動向もあるが,主としてゲスタン

(Ghestin)の著作とその影響力にあったと解される。その見解は,すでに詳細 かつ的確に紹介されている。

要点は,瑕疵担保責任と債務不履行責任の区別が明確でなく,両責任は「重 なり合う」ため,一元的に解し,その区別を「時的基準」(critère chronolo- gique)に求めることにある。すなわち,物の「受領」(acceptation)は,「買主 にとっては,法的に弁済を受け入れたこと」になる。それゆえ,物が契約に適 合しないときは,買主は,「引き渡された物を正当に拒絶する」ことができる が,受領した場合には,「表面的には,物の適合性を認めたこととなり,その 引渡しによって,売主は引渡債務から解放される」。そこで,買主は,物の受 領までは,売主に対して債務不履行責任を追及することができる。しかし,そ の受領後は,「瑕疵が明白であったか否かによって区別」され,瑕疵が明白で あったときは,買主の「すべての請求は排除される」が,「隠れていた場合に は,買主は,瑕疵担保責任を追及することができる」。したがって,ゲスタン によれば,瑕疵担保責任は債務不履行責任と同質であり,「瑕疵担保訴権は,

引き渡された物の受領にもかかわらず,その受領(自体)に瑕疵があったとい う錯誤を理由として,債務不履行に基づく解除訴権を延長するものである」と いうことになる。

そして破毀院も,この一元説の影響を受け,1986 年月日のつの全部 会(大法廷)判決において,瑕疵担保訴権の短期の出訴期間の制限を定めた 1648 条の適用を回避するために,隠れた瑕疵の存在する物は契約に適合しな い(non-conformité ou défauts de conformité)物であるとし,30 年の消滅時効

(2262 条)が適用される引渡債務の不履行に基づく訴権(1184 条)が認められ るとした。しかし,この全部会判決に対して,学説の多くは次のような批判を 展開した。すなわち,判旨のように解すると,瑕疵担保責任が問題となる場合 がすべて引渡債務の不履行責任の問題に解消され,1641 条以下の瑕疵担保責

12) 野澤・前掲注 9)96-99 頁参照。

(29)

任の規定が無用なものとなり,民法典の体系に反する。

そこで破毀院も,学説の批判を容れ,二元説へとその立場を転回した。すな わち,破毀院第民事部 1993 年月日判決は,「隠れた瑕疵とは,物をその 通常の用途に適さないものとする欠陥であり,契約責任(債務不履行)訴権で はなく,民法典 1641 条以下に規定された条項に基づく担保訴権を認めるもの である」と判示し,引渡債務の不履行を主張して 1648 条の期間制限に服しな いとした当事者(買主)の上告を棄却した。そして破毀院は,この 1993 年に 相次いで二元説に立脚する判決を公にし,その後も同じ立場を維持している。

そこで,一元説を支持する学説は,1986 年判決を評価し,瑕疵担保責任と 債務不履行責任の区別が難しく,両者は重なり合うとして,その区別を維持す る 1993 年以降の判例を批判した。そして,一元説こそ国際的動向に合致して いるとし,「1999 年の EC 指令の転換を機会に,フランス法が,グローバルに,

国際的要請に基づく制度に合わせること」を待ち望んだ。

⑵ 立法論における対立――第ラウンド

「消費財の担保責任および売買の一定の側面について」の 1999 年月 25 日 の EC 指令第 44 号は,動産の売買契約において,事業者である売主が,目的 物の引渡しの時に存在した適合性の欠如(défauts de conformité)につき,消費 者に対して責任を負う(条項)とする適合性の法定担保責任(garantie légale de conformité)を認め,瑕疵担保責任を債務不履行責任に一元化するも のであった。しかも,同指令は,2002 年月日までに加盟国の国内法に転 換されなければならないとされていた(11 条項)。そこで,加盟国において は,EC 指令による適合性の法定担保責任と民法典の瑕疵担保責任とをどのよ うに調和させるかが大きな課題となった。すなわち,一方では,「大きな構想」

(拡張的見解――conception large)に基づき,民法典を改正して,瑕疵担保責任 と債務不履行責任とを一元化し,適合性の担保責任を創設する方向がある。そ して実際にドイツでは,この「大きな構想」に従い,2001 年 11 月 26 日法律 により,債務法を根本的に改正するに至った。これに対して,フランスでは,

「小さな構想」(限定的見解――conception étroite)に基づき,民法典の瑕疵担保

(30)

責任を維持しつつ,右の EC 指令を,2005 年月 17 日のオルドナンスによっ て,消費法典(L. 211 - 1 条以下)へと転換した。

しかし,その消費法典への転換までには,フランス国内において激しい議論 が な さ れ て い る。す な わ ち,2000 年 10 月 13 日,司 法 省 は,ヴィ ネ イ

(Viney)教授を座長とする EC 指令の国内法化のためのワーキンググループ

(groupe de travail)を設置した。このグループは,ゲスタンをはじめとする一 元説の論者で固められ,2002 年月に提出された草案(ヴィネイ草案)も,当 然のことではあるが,ドイツにおけると同じく「大きな構想」に基づき,民法 典の瑕疵担保責任を改正して,瑕疵担保責任と債務不履行責任とを一元化した 適合性の担保責任の新設を提案するものであった。しかし,ヴィネイ草案をめ ぐっては,学界および実務界の意見が分かれ,激しい論争が展開された。そし てフランス政府も,ヴィネイ草案を採用せず,EC 指令の消費法典への転換を 行っている。

したがって,フランス法においては,立法論としても,一元説ではなく二元 説が支持された,と結論づけることができる。

フランス法のまとめ

これまで,世紀以上にわたるフランス法の瑕疵担保責任をめぐる議論を,

かなりの駆け足で概観した。その概観のまとめとして,次の点を指摘するこ とができる。

第に,瑕疵担保責任は,ポティエの時代から,危険負担と関連づけられて 論じられてきた。すなわち,特定物の売買においては,所有権が移転し,かつ,

危険も買主に移転する契約締結時までに瑕疵が存在していたことが要件となる。

また,不特定物の売買においては,特定の時(=引渡しの時)に所有権ととも に危険が買主に移転するため,その時までの瑕疵が対象とされた。そして,買 主に危険が移転した後に,偶発的な事態によって目的物が滅失した場合には,

買主の負担となるが,瑕疵に基づく損害については,売主に対して責任を追及 することができ,これが瑕疵担保責任である,ということになる。つまり,瑕

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