A. 研究目的
平成 25 年度に患者の掘り起こしを行い検診率が向 上し、 さらに平成 26 年度は検診データを分析するこ とにより、 福祉サービスの地域格差や特定疾患治療研 究事業の適用の判断の差が明らかとなった。 今年度は、
平成 26 年度からの 2 年間の推移を検討し、 現状と課 題を把握することを目的とした。
B. 研究方法
平成 28 年度スモン検診の案内を通知し希望があっ た 9 名 (男:女=3:6) の訪問検診と併発症のため当 院に入院した患者 1 名 (女) の検診を行い、 スモン現
状調査個人票をもとに ADL・介護状況・問題点等を 過去のデータと比較検討した。
(倫理面の配慮)
本研究は長崎川棚医療センター倫理審査委員会で承 認を受けた。
C. 研究結果
長崎県においては、 平成 26 年度から 2 年間で 6 名 (検診受診者:未受診者=3:3) の患者が死亡し、 今 年度の受診率は 83.3%であった。 受診者 10 名全員が 75 歳以上の後期高齢者となり平均年齢は 83.1 歳であっ た。 平均罹病年数は 49.9 年、 平均 Barthel index は 59
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長崎県におけるスモン検診の動向
松尾 秀徳 (国立病院機構長崎川棚医療センター神経内科) 福留 隆泰 (国立病院機構長崎川棚医療センター神経内科) 権藤雄一郎 (国立病院機構長崎川棚医療センター神経内科) 成田 智子 (国立病院機構長崎川棚医療センター神経内科) 前田 泰宏 (国立病院機構長崎川棚医療センター神経内科) 中野千加子 (国立病院機構長崎川棚医療センター医療秘書)
研究要旨
平成 25 年度に患者の掘り起こしを行い検診率が向上し、 さらに平成 26 年度は検診データ を分析することにより、 福祉サービスの地域格差や特定疾患治療研究事業の適用の判断の差 が明らかとなった。 今年度は、 平成 26 年度からの 2 年間の推移を検討し、 現状と課題を把 握することを目的とした。
受診患者数は 10 名 (男:女=3:7) で受診者 10 名全員が 75 歳以上の後期高齢者となり平 均年齢は 83.1 歳であった。 平均罹病年数は 49.9 年、 平均 Barthel index は 59 点であった。 平 成 25 年度以降は 85 点以上の機能良好な患者の受診増加と 25 点以下の患者の死亡減少により 平均 Barthel index は上昇していた。
医療・福祉サービスの状況では、 平成 26 年度に判明した 「福祉サービスの地域格差」 は 解消していたが、 特定疾患治療研究事業の適用状況については 「整形外科などで支払いを求 められる」 など改善がみられていないことが分かった。
今年度の受診率は 83.3%で過去最高となった。 今後は、 未受診者の状況把握に関してアン ケート調査実施と患者のかかりつけ医と当研究班との医療連携体制を構築することを検討し たい。
点であった。 平成 19 年度からの平均 Barthel index の 推移をみると、 平成 20 年度から 22 年度にかけて 66.7 点→45.0 点→33.0 点と急激に低下していた。 低下の原 因を調査した結果、 大腿骨骨折や肺炎・認知症の進行 から寝たきり状態に移行した患者が 3 名おり、 何れも 併発症が低下の原因となっていたことが分かった。 平 成 25 年度以降は 85 点以上の機能良好な患者の受診増 加 と 25 点 以 下 の 患 者 の 死 亡 減 少 に よ り 平 均 Barthel index は上昇していた。 (図 1)
1 . 居住状況について
平成 28 年度は、 在宅 7 名、 長期入院・入所、 小規 模多機能型居宅介護住宅 3 名で、 平成 26 年度の在宅 8 名、 長期入院・入所 3 名と在宅療養の割合はほぼ変わ りはなかったが、 自宅にて 3 人以上の世帯が減り二人 暮らしの世帯が増えていた。 (図 2)
2 . 介護保険の認定状況について
平成 26 年度とあまり差がなく、 受診患者の 60%が 認定を受け半数の患者は認定結果を 「妥当」 と思って いた。 前回 「介護サービスを受けたくても適当な提供 機関がない」 としていた患者は 「要支援 2」 の認定を 受けていたが、 認定結果が自分の状態と比べて 「低い」
と満足していなかった。 要介護認定患者のうち、 診察 時の障害度は軽症で Barthel index が 100 点の患者が
「要介護 1」 と認定され、 認知症と廃用による歩行障 害があり診察時の障害度は中等度で Barthel index が 25 点の患者が 「要支援 2」 の認定を受けているケース があり、 判定基準に差があることが分かった。 (表 1) また、 要介護 3 以上の患者が減少していた。 減少の理 由を調べたところ、 平成 26 年度には要介護 5 の認定 を受けていた患者が療養型病院に長期入院により介護 保険が未申請になったものと、 要介護 3 の認定を受け ていた患者が死亡した結果であった。 (図 3)
3 . 医療・福祉サービスの状況について
平成 26 年度に判明した 「福祉サービスの地域格差」
は解消していたが、 特定疾患治療研究事業の適用状況 については 「整形外科などで支払いを求められる」 な ど改善がみられていないことが分かった。 また、 「難
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図 1 検診受診者の Barthel index の推移
図 2 居住状況
図 3 介護区分
表 1 介護保険認定の状況
視力 歩行 診察時の障害度 Barthel index 介護度 認定の結果について
患者 E 軽度低下 一本杖 軽 度 100 要支援 1 妥当な結果
患者 G 軽度低下 不能 中等度 25 要支援 2 分からない (認知症)
患者 H 正 常 不能 重 度 55 要支援 2 自分の状態と比べて低い
患者 J 軽度低下 要介助 重 度 40 要介護 3 妥当な結果
患者 L 正 常 不安定独歩 中等度 90 要支援 2 自分の状態と比べて低い
患者 M 軽度低下 不安定独歩 軽 度 100 要介護 1 妥当な結果
病見舞金・手当を申請したが却下された」、 「福祉サー ビスを利用するための選択肢の提示が少ない」、 「スモ ン申請がなされていない」 という新たな事案が判明し た。 (表 2)
4 . 医学上、 家族や介護、 福祉サービス、 住居・経 済の問題点の特記事項について
平成 28 年度の調査では、 長崎県の場合、 介護者が
一人で介護しているスモン在宅療養患者は 85.7%で平 成 26 年度の 75%から増加していた。 その介護者は配 偶者または娘で、 高齢の 「家族や介護」 について 「問 題があり〜やや問題あり」 とされた割合が平成 26 年 以 降 引 き 続 き 増 加 し て い た (54.6% → 70%)。 介 護 者 に関する問題点としては、 ①二人暮らしで介護者が単 身である (他に介護者がいない) ②介護者の高齢化
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表 2 平成 28 年度スモン検診の状況 患
者 年齢/
性別 罹病 年数
Barthel
index 介護度 居所/同居 家族数
主な 介護者
介護についての
不安理由 問題点等の特記事項
A 94/F 48 0 申請なし 福祉施設 施設職員 人間関係 歩行障害・視力障害
C 94/F 54 0 申請なし 医療施設 施設職員 不安に思うことはない 寝たきり状態、 経腸栄養 (胃瘻) E 75/F 52 100 支 1 自宅/2 名 ホーム
ヘルパー 炊事 難病見舞金・手当を申請したが却下され た
G 82/M 51 25 支 2 小規模多機能型
居宅介護住宅 配偶者 金銭面と体のこと (誰が介護するのか)
加齢による ADL の低下あり (現在歩行 不能)、 介護者がいない、 経済的問題
H 82/F 48 55 支 2 自宅/2 名 配偶者 介護者の高齢化、 介護 者の疲労や健康状態
スモンによる歩行障害、 整形外科などで 支払いを求められている、 介護者が肺癌 となり治療中
I 79/M 47 85 申請なし 自宅/2 名 配偶者 不安に思うことはない 歩行が不安定、 両難聴、 家族の高齢化
J 84/F 47 40 介 3 自宅/2 名 娘 病状が悪化しないかど うか不安
疼痛コントロール不良、 介護者が単身で ある、 福祉サービスを利用するための選 択肢の提示が少ない
L 79/M 47 90 支 2 自宅/2 名 配偶者 介護者の高齢化、 介護 者の疲労や健康状態
転倒・転落が多い、 夫婦二人暮らし、 自 宅が高台にあり階段を昇る必要があり M 84/F 54 100 介 1 自宅/5 名 娘 不安に思うことはない 異常知覚、 消化器症状
N 78/F 51 95 申請なし 自宅/2 名 配偶者 介護者の高齢化、 介護 者の疲労や健康状態
介護保険未申請、 スモンの認定 (未?)、
自宅が高台にあり交通の便が悪い
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図 4 問題点の特記事項
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③介護者の病気、 が挙げられていた。 また、 「住居 や経済」 についても 「問題があり〜やや問題あり」 と さ れ た 患 者 が 今 年 度 増 加 し て い た (27.2% → 40%)。
これは、 長崎県内で傾斜地や高台に居住している患者 が検診に参加するようになったことが要因と考えられ た。 最寄りの駅からも遠く通院等の移動手段としてタ クシーを利用するため、 料金が月に 10 万円以上かか り経済的負担となっている患者も見られた。 (図 4)
D, E. 考察と結論
平成 26 年度からの 2 年間の推移を検討し、 長崎県 における患者の現況を明らかにした。 今年度は、 当院 に入院を契機に新規の患者が受診されたことと、 平成 2 年 度 の 検 診 後 26 年 ぶ り に 受 診 し た 患 者 が あ っ た こ とで、 受診率は過去最高となった。 26 年ぶりに受診 された理由を伺うと 「これまでは検診を受けても結果 が出ていないので何とも言えなかったが、 高齢になり 身体が弱ってきたから検診を受けようと思った。」 と 述べられた。 一方、 未受診者 2 名はこれまでに一度も 検診に参加されておられず 「病院に通院しているので 検診を受ける必要が無い」 と受診しない理由を挙げら れていた。 今後は、 未受診者の状況把握に関してアン ケート調査実施等を検討していきたい。 また、 患者の かかりつけ医と当研究班との医療連携体制を構築する ことにより、 かかりつけ医からの検診の勧奨などで検 診率の向上が期待できる。 また、 「福祉サービスを利 用するための選択肢の提示が少ない」 とされる患者も いることから、 検診結果をかかりつけ医、 担当保健師・
介護支援専門員等と共有し、 多職種で連携してタイム リーな支援の提供に繋がるのではないかと思われる。
G. 研究発表 なし
H. 知的財産権の出願・登録状況 なし
I. 文献
1 ) 松尾秀徳, 他:長崎県における平成 26 年度スモ ン検診:5 年前との比較. スモンに関する調査研究
平 成 26 年 度 総 括 ・ 分 担 研 究 報 告 書 . P 104-106.
2015
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